私が霧島です   作:アサルトゲーマー

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一万UAご苦労だった…と言いたいところだが、君等にはゲーム脳になってもらう
とか考えながら書いた。今は感謝している。


7 夕立のフトモモは死の香り

 ざあざあと雨が窓を叩く中。金剛は秘書艦として提督とお客様に提供するお茶を淹れていた。

 金剛の好みはヌワラエリア。香りもさることながら渋みが強く、これが甘味とよく合うからだった。

 お気に入りの歌を口ずさみながら陶器のポットの中身を銀のスプーンで混ぜ、それから温めたカップに注いでいく。

 最後の一滴まで出し切ろうとしたところで、ふと金剛の脳裏にある記憶が浮かんだ。

 

「そういえば、ヒエイは紅茶を入れるのが苦手デシたネー」

 

 その記憶とは、ベストドロップを出すために比叡が全力で振って、勢い余ってポットをお星さまにしてしまった事柄であった。

 思わず金剛の頬が緩む。自分の姉妹はどこか抜けてはいるが、一緒にいれば退屈など感じなくなるからだ。

 入れた紅茶を冷まさぬよう急ぎ足で執務室に向かう。独りが少し物寂しいと感じるのはあの騒がしい妹たちのせいだろうな、と金剛の口から笑みがこぼれた。

 ああ、妹たちに逢いたい。そう考えた矢先の出来事である。比叡、榛名、霧島の三人が執務室の真ん前で円陣を組んでいたのは。

 

「これはまずいですよ、お姉さま」

「いやこれ榛名ちゃんと霧島ちゃんのせいじゃん。私悪くないよ?」

「悪くなくても一蓮托生です!」

 

 メイド、キャリアウーマン、巫女。よくわからない組み合わせだった。

 疑問に思いながらも金剛は姉妹に話しかける。

 

「執務室の前で何やってるノー?」

「あ、いえ、少し。お客様に盛大な粗相を」

「…少しって言わないヨ」

 

 金剛の問いに答えた霧島はしどろもどろといった具合で答えた。具体的に聞いてみるとなんと榛名と共にわっしょい(!?)してメイド比叡をお客様の目に晒したと言うではないか。

 そこで解決策を練るためにこうして話し合っているのだとか。そこで金剛がある解決策を提示した。…といっても金剛はこの妹たちの長女。その感性はズレている。

 

「じゃあ、ヒエイがお茶持って接待するデース」

 

 要するにお客に媚びて許してもらおう作戦である。それは名案だと榛名が手を叩き、霧島もそれに賛同した。比叡もかなり恥ずかしがりながらも同意し、紅茶を金剛から受け取る。

 それから金剛にあれこれアドバイスを貰い、やることを頭の中で繰り返して覚えた。

 

「猫…気合…根性…赤ふん健康法…」

 

 途中で謎の呪文が入るが金剛姉妹にはツッコミ役が居ないのでツッコミが入ることは無かった。

 

「ヒエイ、ファイトデース!」

 

 イギリスでイングリッシュを学んだ割には和製英語で元気づける金剛を尻目に、比叡は気合を入れる。

 ゴホンと咳払いをして喉の通りを良くし、扉に手を掛けて勢いよく押し開いた。

 ノック忘れてるヨー!などという金剛のささやき声が聞こえたがもはや後の祭り。比叡にはもはや突っ走るしか選択肢は残されてない。

 提督とお客様の視線が突き刺さる中、比叡は気合を入れながらぶりっ子をして言い放った。

 

「お茶を…お持ちしましたにゃん!」

 

 片足を上げ、お茶を持ってない手を軽く握って顔の横にそえる見事なまでのにゃんにゃんポーズ。比叡の顔は羞恥で茹で上がるように真っ赤になった。

 一瞬の沈黙の後、比叡を見たお客様は言う。

 

「ビューティホー」

 

 と。

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

 

 これは許された!心の中でぐっとガッツポーズをする私。見れば榛名もガッツポーズ。

 開いた扉から提督の絶望したような顔が見えたけどそれは気のせいということにして、あとは比叡に任せておこう。とにかく嵐は去った!

 

「マッタク…うちのシスターは手が掛かりますネー?」

 

 その通りでございます金剛姉さま。大変申し訳ないので体も自然としぼんでしまう。テンション上がってたとはいえ私は一体何してたんだか。猛省である。

 

「今後執務室に突撃するときはノックしてからにします」

「えっ、突撃自体がナンセンスデース」

 

 またも注意された。ううむ、うまくいかないものである。そんなしぼんだ私の耳に廊下から声が聞こえてきた。

 

「もー!びしょ濡れっぽいー!」

「もうやだ…帰りたい…」

 

 こ…この声は!

 

「夕立!?」

「ん?あ、霧島だー!元気してたっぽいー!」

「だれ…?」

 

 夕立&初雪!しかも夕立は改二だ!霧島の記憶では改造前だったはず!なんでウチの鎮守府に居なかったのかは憶えてないけど出会えたことに感謝!

 

「霧島ー!」

 

 しかも夕立はこちらに向かって全速力で駆けてくるではないか!そうかそうかそんなに私に逢いたかったか!感極まった私は両手を広げて受け入れるポ-ズを取る。

 

「っぽい!」

 

 そして夕立の謎の掛け声と共に私の顔は柔らかいものに包まれ、私はそのまま意識を失った。

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

 

「あれ?霧島ー?」

 

 今しがた霧島に手を掛けた下手人、夕立はフランケンシュタイナーを決めて首を絞めたままの格好で霧島に問いかけていた。

 当の霧島は気絶。いきなり投げられて首を絞められようなら殆どの人はそうなるだろう。流石の霧島もその域を出てはいなかった。

 このまま首を絞め続けるのは拙いと思ったのか、遅れてやってきた初雪が夕立と霧島を引きはがす。

 

「ん、だめ」

「あ、ごめん」

 

 一部始終を見ていた金剛はため息一つ。やってきた夕立に声を掛けた。

 

「ユウダチ、お久しぶりデース。相変わらずのようで安心したヨー」

「あ、金剛!」

「榛名もいますよ!」

「榛名も久しぶりっぽい!元気してたっぽい?」

「…だれ?」

 

 この中で唯一面識のない初雪が金剛と榛名を交互に見る。それに気が付いた金剛が胸を張って自己紹介をした。

 

「ワタシはコンゴーデース!」

 

 続いて榛名も胸に手を当てて自己紹介をする。

 

「榛名です!宜しくお願いします!」

「初雪…です。…よろしく」

 

 金剛と榛名が初雪の手を握って嬉しそうにブンブン振る。初雪は迷惑そうにしているが嫌ではないのか眉をひそめるだけだった。

 そして満足したのか金剛が手を離し、いまだ伸びている霧島を指して言った。

 

「で、こっちで伸びてるのがキリシマ。ユウダチのベストフレンドだから仲良くしてネー」

「ん、がんばる」

 

 一通りの自己紹介が終わった後、執務室の扉がガチャリと開かれた。出てきたのは例のお客様。

 

「では私はこれで。比叡さん、美味しいお茶をありがとう」

「……………はぃ」

 

 比叡の尻すぼみな返事が聞こえ、そのまま扉は閉じられた。そしてお客様は霧島の惨状を見て驚く。

 

「な…これは一体?」

「うーん、ただの愛情表現っぽい?」

 

 そんな夕立の生返事に目じりを押さえるが、いつもの事なのか早々に流した。

 

「夕立さん、いつも言っていますがやり過ぎはいけませんよ」

「はーい!了解っぽい!」

「それと」

 

 お客様が金剛と榛名に向かい、夕立と初雪を手のひらで指した。

 

「金剛さんに榛名さん。こちらの夕立さんと初雪さん。それと遅れて陸奥さんがこちらの鎮守府へと一時的に配属されました。詳しくは日下提督にお聞き下さい」

「ソロモンよ!私は帰ってきたっぽい!」

 

 ではこれで、とお客様は去って行った。見送りとして金剛が付いていき、残った榛名は霧島を抱えて執務室の扉を開ける。

 そこにはメイド比叡とお腹を押さえる提督が居た。比叡は真っ赤ではあるが提督は真っ青である。

 榛名の後ろについてきた夕立が比叡を見るなり大声を上げた。

 

「あっ比叡!久しぶりっぽい!」

 

 そして首狙いのフライングクロスチョップ。しかしそこはやっぱり比叡。体を逸らして腰を抱え、見事なフロントスープレックスを決めた。

 

「んぎゃ!」

 

 ドゴスと鈍い音と共に夕立が床に叩きつけられる。ちなみに比叡はブリッジをしている状態なのでパンモロであった。

 

「ふ、甘いよ夕立ちゃん!」

「いたた…でもそれでこそ比叡っぽい」

 

 二人は立ち上がり、ガッチリと上手で握手を交わす。

 

「おかえり、夕立ちゃん!」

「んふふ、ただいまっぽい!」

 

 さっきまでの羞恥はどこへやら。そこには拳で語った者同士で見られる美しい友情があった。気絶した霧島を抱えたままの榛名もニコニコしてそれを見ている。初雪は理解できなさそうな顔をしていたが。

 それを見ていた提督は自身のストレスが余裕でマッハ3を超えたのを自覚する。なぜか気を失ってるキャリアウーマン霧島、帰ってきた問題児夕立、ヒビの入った床。ストレスが溜まるのも無理は無かった。

 提督の口からポツリと、本当に無意識のうちに言葉が漏れ出る。

 

「悪夢だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 所変わって精神病錬。隼鷹は唐突に目を覚ました。

 

「連装砲はやめてえぇぇっ!!………んあ?」

 

 隼鷹が悪夢から覚めて初めて目にしたのはちっこい二人組、雷と電だった。いきなりの絶叫でポカンとしていたがすぐに気を取り直し、にっこりと笑う。

 

「起きたのです!」

「良かったー。気分はどう?」

 

 よく似た顔が隼鷹にずずいと寄せられる。気後れした隼鷹だったが、とりあえずの返答はしておくことにした。

 

「うーん。良くはない、かな」

「ならいっぱい食べて元気出しましょ!」

 

 雷が差し出したのは小さく切られたリンゴとナシだった。思わずごくりと喉が鳴る。

 

「ええっと、なんであたしはここで寝てるんだっけ?」

「それは後で説明するのです。はい、あーん」

 

 電がリンゴを隼鷹の口元に差し出す。ちょっと恥ずかしいが隼鷹はその厚意に甘えて戴くことにした。

 

「んぐ…。うう、おいひい」

「もっともーっとあるから、沢山たべていいのよ?」

 

 そう言いながら雷がナシを隼鷹の口元に差し出す。これも厚意に甘えて戴くことにした。

 しかし何度も食べさせられている内に胸やけがしだして断ろうとしたのだが、二人の純粋な厚意に抗うことが出来ず隼鷹はひたすらリンゴとナシを食べ続けた。 

 食べ切る頃には胸やけフェスティバル状態であった隼鷹だったが、気を使わせないよう表情に出さないようにして雷と電の話を聞いた。

 

 曰く、隼鷹は深海棲艦に取り込まれていた。

 曰く、雷が大海原を漂っているところを助け出した。

 曰く、霧島と金剛がボコった。

 

 最後は完全に蛇足だったがその言葉は隼鷹の記憶に深く刻まれた。

 しばらく自己紹介などの他愛の無い話を交わし、暫くたってから二人は退室した。なんでも、今はまだ病人扱いだからちゃんと休まなきゃダメらしい。

 寝る事以外にすることが無くなった隼鷹は、何となく立ち上がって窓の外を覗いてみた。そこはざあざあと雨が降っている。

 

「ん…?なんだありゃ」

 

 水煙の激しい中、隼鷹は向かいの建物で変なものを発見した。それは腋丸出しの巫女と超ミニスカメイドが眼鏡のキャリアウーマンを丸太のごとく運んでいる姿である。その後ろには小さな二人がトコトコとついて行っていた。

 

「やっぱ疲れてんのかな。寝よ」

 

 疲れているからあんな幻覚を見るのだ。やっぱり病人には休息が必要だなと現実から目を逸らしながら隼鷹は自分のベッドに戻った。できれば夢で連装砲が出てこないことを願いながら。

 




・ビューティホー
CoD4におけるマクミラン大尉の名言。ことあるごとに言ってくる。このゲーム自体名言(空耳)が多いのでよくネタにされる。
代表的な例に「あそこまで頑張っちゃダメ」「撃たなきゃ当たらないでしょう!」「ステンバーイ…ステンバーイ…ゴッ!」などがある。























自分は初雪派です(半おこ)
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