回収回収♪
「リリティファさんを…放せ…!」
ヴォ…
「…!?」
自分の意にミリキャス・グレモリーを頷かせようと、彼の側に控えていた少女を質に捕り、暴に訴えようとした貴族悪魔。
しかし少年は それに臆する事無く、その外見からは想像出来ない様な低い声、そして光が消えた瞳を向け、逆に
両の手に、漆黒に光る魔力球を作り出した。
父親である魔王の代名詞だった、滅びの魔力で作られた球だ。
貴族は此処で、初めて過ちに気付く。
目の前に居る子供は、只の子供では無い。
魔王ルシファーの息子である事を。
自分如きが、チカラを振り翳す程度で どうにか出来る相手で無かった事を。
カラン…
「ま、待て…下さい、み、ミリキャス…様!」
その少年とは思えない
「リリティファさんから、離れろ…!」
「ひぃっ?!」
それでも尚、仕舞おうとしない重圧に、言われる儘、車椅子の人魚から距離を置き、その隙にミリキャスは彼女を守る様に その前に立つ。
「リリティファさん、大丈夫でしたか?
ごめんなさい…僕が この展開を読めなかったから…」
「いえ…」
そしてリリティファを気遣うミリキャス。
そんなミリキャスに頬を少しだけ、朱に染めて応えるリリティファ。
「み、ミリキャス様!今一度、考えては下さらぬか?
貴方様のネームと その御力なら、冥界を再び統べるのも決して夢では無い!」
「「…………………………。」」
そんな
「…そして何時の日かには、今の現状の元凶である、あの憎き【日本神話】にも裁きの鉄槌を降しまs
「はい、
「「「…??!」」」
そして その自分の理想と野望を織り混ぜた話の途中、第3者の声が。
ヒョコ…
「にゃ~ぉ…」
「ん?ネコ?」
「「…しゅばるつ?」
さん?」
ミリキャスと悪魔貴族の間に割って入るかの様に現れたのは、黒い猫。
ミリキャスが この館での生活を始めたと同時期、何処からか迷う様に入り込んできた野良猫?で、何時の頃からか『しゅばるつ』と名前を付けて、ペットとしていたのだ。
ぼんっ!
「「「???」」」
その
一瞬 周囲が その煙に包まれ何も見えない状況となり、その煙が晴れた時、
「だ、誰…?」
「くくく…もう、察しているじゃろう?
ミリキャス坊?」
其処には しゅばるつの姿は無く、その代わりに黒髪褐色肌の、妙齢の女が立っていた。
「「「………………。」」」
その女を見て、ミリキャス、悪魔貴族、リリティファは硬直してしまう。
とりあえずは この女が黒猫に化けていたのは理解出来た…にも拘わらずだ。
「…ふむ? 何をそんなに驚いた顔をしておる?
猫が人型に変わるのが、そんなに珍しいか?
「「「………………。」」」
いきなりの乱入者の登場、その姿に悪魔達は声を出せない。
「まあ良いわ。
とりあえず名乗らせて貰うぞ。
儂は…」
「「「服着ろーーーっ!」
着て下さい!!」」
「ん?」
それでも漸く…漸く その姿に突っ込めた悪魔達。
そう、この女は今、一糸纏わぬ姿だったのだ。
…因みにミリキャスは今、背後に回り込んだリリティファから、両手で目隠しをされている。
≫≫≫
「つ、つまり、夜一さん?は、【日本神話】の…」
「そうじゃ。『妖怪』に席を置く者じゃよ。
ほれ?」
ひょこ…
「「!!?」」
「…見ての通り、猫又じゃよ。」
…何処から取り出したのか、黒のアンダーに橙の上着な戦闘衣を着込んだ女は"四楓院夜一"と名乗り、黒い猫耳と2本の尻尾を出す。
「【日本神話】からの監視…だったのですか?」
「うむ、少しだけ違うかの?」
若い見た目とは不似合いな、年配者の様な口調で話す夜一。
「正確に言えば、ミリキャス坊が【
「「…………………………………。」」
そしてミリキャスの質問に、数分前迄はミリキャスに言い寄っていた
「坊を旗頭に悪魔の領地で貴族の復権を唱えるのは、勝手じゃな話じゃ。
しかし、【日本神話】に矛を向けようとする者は、見過ごせぬでの。
それで野良猫に化けて、この屋敷に居着いていたのじゃよ。」
自分の正体を、何故この場に こうやって居るかを明かすのだった。
「これで こんな阿呆が出てくるのが終わりとは思えんので、これからも宜しくな。
あ、もう正体が張れた後だが、今後も普段は猫の姿で生活させて貰うぞ?」
「……………………………。」
▼▼▼
数日後。
「危ない処でしたな…」
「「「「……………………。」」」」
悪魔領の僻地に位置する貧民街…その、更に外れに在る廃屋敷。
このリアス・グレモリー達が隠れ潜んでいる屋敷内に、無数の悪魔達の屍が転がっていた。
「よ、余計な真似を…!?」
それを実行した者達に対して声を荒げているのはリアス…で無く、彼女の
「…いや、この場合は素直に『ありがとう』と言うべきだと思いますよ~? 姫島先輩?」
それを窘めるのはサトル。
「ねぇ? アナタ達も そう思うでしょ?」
「「「…………………。」」」
そして実行者である、武装した
彼等は堕天使。
グリゴリ幹部の1人、バラキエル直属の部下達である。
彼等はバラキエルの命により、彼の娘である姫島朱乃の護衛の任に、彼女達に悟られぬ様に就いていたのだ。
そして今回、何処から情報を得たのか この廃屋敷にグレモリーが潜んでいるのを知った、貴族に対して怨みを持つ者達の襲撃の際、初めて その存在を曝した上で その者達を蹴散らしたのだった。
「大体 貴方達、此処は悪魔領よ?!
堕天使が勝手に入ってきて…」
「いや、既に悪魔は そんなの言える立場じゃないでしょ?
それに、ウチの大ボスの お姉さんが堕天使達に言ったのは、『勝手に
同じ冥界内の悪魔領の往き来は禁じてないから、問題無いと思うけど?
【日本神話】的に。」
「そう云う問題じゃ無いわよ!」
それでも堕天使が この場に居るのが納得出来ないかの姫島に、サトルがフォロー的な説明。
しかし それでも、彼女は感情的に納得が往かない様子だ。
「それに悪魔と堕天使。
それこそ今の堕天使が悪魔領に一斉に攻め込んでも不思議じゃない状勢にも それが無いってのは、
それ位、察しようぜ。
それとも何か? アンタも駄肉姫様同様に、脳味噌への養分を全~部その胸に
「わ、私は今は関係無いでしょうっ!?」
更に続く言葉に、今度はリアス・グレモリーが会話に割って入ってきた。
「大体 貴方が どうして、この場所に居るのよ?!
…ってゆーか、駄肉って言わないでよ!」
そしてサトルに、自分達に何用かを尋ねるリアス。
「俺が此処に来たのは、新学期も始まり、それと同時に決まったアンタ達の学園での処遇を報告に来たんだよ。」
「「「「!!?」」」」
そしてサトルの言葉に、駒王学園に籍を置く者達の顔が変わった。
「先に言っとくけど、俺が この貧民街の連中の襲撃と、それに対する堕天使の皆さんの迎撃…このタイミングで来たのは、はっきり言って偶然ですよ。
俺達はアンタ達の同族内輪揉めには…それで結果、アンタ等が どうなろうかも、興味も関係も無いからね。」
「か、神代君…」
その冷たいと云うかドライな言い回しに、クラスメートだった少年が悲しそうに彼の名前を溢す。
「先ずはギャー子と金髪先輩、それから駄肉先輩1号2号だけど…」
「だから、駄肉って言うなと言ってるでしょう!?」
「に…2号って、誰の事ですか?!」
サトルが説明を始めたと同時、約2名から突っ込みが入るが、サトルは それを無視。
「各々が其々の事情で、急遽 実家に帰らなければならなくなり、学園を退学する事になった…皆が同じ時期に そうなったのは偶々。
そういう
「そ、そんな、勝手な!?」
「仕方無いでしょ? 何時迄も行方不明、…って訳には往かないし。
それとも何か? 無断欠席が続いての、強制退学処置の方が良かった訳?
駒王学園は既に、悪魔の手からは離れているんだ。
何しろ
今は【日本神話】と
その他、悪魔だったり悪魔と関係してた教職員も、一般人だったり【
まさか これも、『勝手な事』かい?
ウチの お姉様は きっと、アフターサービス万全と言って欲しいと思ってるよ?」
「「………………………。」」
最初は一方的、勝手な処分に憤りを露にするが、言われてみれば確かに手際良いと言って良い対処に、リアス達は何も言い返せなくなる。
「…まあ、お陰で学園内、生徒間ではショック&大パニックだけどね。…ウチのクラス含めて。
良かったなギャー子。
クラスの連中 皆お前の事、心配してたぜ?」
「………………………。」
そして続く優しい笑顔込みのサトルの言葉に、ギャスパー・ヴラディは更に複雑な顔を見せる。
「それから其処の部屋の角、体育座りしながら
「ひぃっ?!」
「…アレは両親の願いも有り、今は休学扱いだとさ。
ついでに そっちの鎧…って、今は着てないか…カップルも、各々の家族が既に警察に捜索届を出しているそうだ。」
「「…………………………。」」
説明を続けるサトル。
兵藤一誠、スーザン・バックマイヤー、堀井大和の3人は、普通に人間の家族が居り、その各々が行方不明知れずとなっている身内の捜索願いを警察に届けている。
其れを聞いたスーザンと堀井も、家族に対する申し訳無さからか、複雑な表情を浮かべてしまう。
「因みに性犯罪者が消えた事で、そっちは女子中心、学園内 大ひゃっはー!!♪…してるぜ。」
≫≫≫
「…それから これは、余計な一言かも知れないけど…」
一通り、伝えるべきを伝え終えたサトルが、此の場を立ち去ろうと転移魔法陣を敷いた時。
「これから どうする心算だ?
既にグレモリーが この地に居るのは、このスラムの連中からすればバレバレみたいだけど?
また これから先も、さっきの奴等みたいなのが押し寄せてくるのは判りきっているぜ?」
「………………………………。」
そうなると、今の人間と何ら変わらない自分達に、悪魔と対抗する術は無い。
また堕天使を頼りにしながら、この地に居座るのか?
…全てを言葉には出さないが、その様に質問するサトルに、リアスは何も答えられない。
「まあ、此処は素直に、こっちの堕天使の皆さんに口添えして貰って、グリゴリに保護を求める方が良くね?
幹部の娘と その お仲間さんなら、それなりに あっさり通るだろ。
事実 今も、こうやって護衛を付けてる位だから。」
「だ、誰が堕天使なんかに!?」
「…黙ってろよ駄肉2号。
俺は今、グレモリー先輩と話してるんだ。」
「…っ!」
そして自分が考えている、唯一の選択肢をリアスに告げる。
「まあ、そっちの頑固な駄肉先輩2号を説得した上で、堕天使とコンタクトしてみるんだね。」
「……………………………………。
…待ちなさい。」
「はい?」
その後 改めて、この場から立ち去ろうとした時、リアスがサトルを呼び止めた。
「どういう心算かしら?
貴方は さっき、『私達が どうなろうか興味が無い』と言っていたわよね?
どうして そんな、助言みたいな事をいうのかしら?」
何かの企みが有ると考えたのか、厳しい目を向けて、リアスがサトルに尋ねる。
「あー、それね…。」
それに対して、サトルは苦笑。
「いや、大した理由じゃないよ。
確かにアンタ達が どうなろうと知らないけど、そっちのギャー子は…ね。」
「え?ぼ、僕??」
いきなり名前を出されて、ギャスパーが戸惑うが、サトルは それを見て、面白そうに話を続ける。
「何だかんだで、同じクラスで それなりに仲良かったからな。
多少なり気になる…ってのは有る。
只、それだけさ。」
「…………!!!
か、神代君ん~~っ!!」
「ふっ…」
ヴォン…
そのサトルの台詞に感窮まった様に泣き出す女装少年を見て軽く笑みを溢しながら、サトルは その場から姿を消した。
▼▼▼
…そして その数日後、この廃屋敷には誰も居なくなった。
四楓院夜一…四楓院夜一(BLEACH)のイメージで。
次回『平和で平常な日常』(予定)
感想よろしくです。