ガルーダDxD(仮)   作:挫梛道

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新年、明けまして おめでとうございます。
 


酸漿の冷徹!

▼▼▼

"裏"京都。

文化が数世紀程度 巻き戻った感のある街並み。

車も電柱(でんき)も無い空気は清んでおり、この地の妖怪達(ひとびと)は、それが当たり前とばかりに、所謂"和"の衣を普段着として纏い、のんびりと暮らしていた。

 

「……………。

テロに襲われたと云う割には、平常ですね。」

「だにゃ?」

サトル、白音、黒歌。そして彼等の師である妖狐・蔵馬は転移にて、その裏京都を訪れていた。

この裏京都を治める、【日本神話】派閥の1つ、『妖怪』の長であり、蔵馬の姉でもある九尾狐の八坂が禍の団(カオス・ブリゲード)に襲われたと聞き、この地に足を運んだ訳だが、少なくとも街の雰囲気からは、それによる緊張感等は見受けられなかった。  

 

≫≫≫

「ゼィゼィ…

な…何で、転移が出来なゃいにゃ?」

「ハァハァ…

テロリストが襲ってきた為、結界が強化されているみたいです?」

裏京都を見下ろすかの様な、高い山の頂に建つ屋敷。

『妖怪』の長である、八坂の屋敷だ。

普段は屋敷には、直接 転移で中に お邪魔していたサトル達だが、今は厳戒体制が敷かれている様で、徒歩での移動…サトルの実家以上の、気が長くなる程の石階段を上っていた。

そして漸く山頂へ到達。

屋敷の玄関をサトル達が潜ると、

「伯父上!お()ぃ!黒姉白姉(くろあねしろあね)!」

 

タタタタタ…

 

八坂の娘である九重が、駆け足で出迎えてきた。

 

「やあ~九重ぉ~、久し振りだね~。」

それを見た蔵馬(おじうえ)は笑顔で両手を大きく広げ、九重を受け止める姿勢に。

 

がばっ…

 

「黒姉~♪」

「よしよし九重、久し振りだにゃ~♪」

「…………………………。」

しかし九重は蔵馬をスルー、その隣やや後ろに立っていた黒歌に、ジャンピング・ハグ。

頭から胸元に飛び込み、黒歌も それを、優しく受け止めた。

 

「……………………………。」

「それで九重、八坂様は…大丈夫なのですか?」

姪っ子loveな蔵馬がorz状態になっているのを見て見ぬ振りをする白音が九重に、この裏京都に出向いた理由、八坂の安否について尋ねると、

「ほぇ? 母上? 母上が どーか、したのかじゃ???」

この金髪獣耳美幼女(9)は何の事か分からないのか、きょとんとした顔で右の人差し指を顎に当てると こてんと首を傾げ、周囲に大小様々色採々な、多数の疑問符を浮かび上がらせる。

 

「へ?」「はい?」「にゃ?」

これにはトル達も、頭上に疑問符を掲げるが、

「ふっ…、確かに俺は姉上が、『テロに襲われた』とは言ったが、『負傷した』とか『拐われた』とかとは、一言も言ってないが?」

此処で、orz状態から復活した蔵馬が、どや顔で この一言。

 

「「「き、き、き、狐がぁーっ!」」」

サトル&猫姉妹による、この日最大の突っ込みが響き渡った。

 

▼▼▼

「ふむ…よく来てくれた。

そして、心配を掛けたの。」

屋敷の奥の部屋で、髑髏柄の着物の…比べるならば黒歌でさえ、慎ましくみえる程の胸元部分を大きく開ける様に着崩した、金髪獣耳美女がサトル達を労う。

九尾狐の八坂。

『妖怪』の長である彼女曰く、事は屋敷に訪ねてきた客人をもてなしていた時に突如、屋内であるにも拘わらず、紫色の濃い霧が発生。

同時に10名程度の人間が姿を現したのが、始まりだと云う。

 

 

≪≪≪

「これは…いけませんね!」

しかし そんな中、訪ねてきたという客人が、この霧が何らかのチカラで作られた転移系結界術式の類い…しかも かなり厄介な代物であると即座に見抜き、

「他者に何かを要請するならば、先ずは きちんと顔を見せ、名乗りを上げる位、したらどうですか?」

 

ぶぅぉんっ!

 

手にした得物…無数の鋲が附いた、赤黒く光る巨大鋼棍のフルスイング。

 

「「「「「…!!?」」」」」

これで起きた突風で霧は文字通りに霧散、その効力を失ってしまう。

そして侵入者達の姿が露となった。

 

「……………………。

八坂殿…我々と同行、願おうか?」

「む?」

此処で顔が はっきりと確認出来る様になった、賊の中央(センター)に立つリーダーらしい青年が、八坂に呼び掛ける。

 

「…しかも この畳の間に、いきなり土足で現れるとは何事ですか?!

玄関で靴を脱いでから、出直してきなさい!」

「な?!」

しかし()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()客人は、この男の呼び掛けを無視、自分から一番近い位置に立っていた、逞しい体躯をした2㍍近い長身の男に詰め寄ると その脳天目掛け、

 

ガァンッ!

 

「…っ!?」

鋼棍の容赦無い一撃を振り降ろし、この巨漢は頭部を叩き潰され、血溜まりの中に沈む。

 

「な…何事?」

「「八坂殿?」」

「「「如何なされた!?」」」

 

どたどたどたどた…

 

…その後、部屋の外で待機していた護衛の妖怪達も漸く この異変に気付き、その場に押し寄せての乱戦に。

現状を不利と見たのか この招かれざる来訪者…後方で戦況を見守っていたリーダーと思われる漢服を羽織った男、そして その傍らに立っていた眼鏡を掻けた男は自分達他数名の身を先程と同じ物なのであろう、紫の霧で包んだと思えば、この場から姿を消したのだった。

 

…らしい。

 

≫≫≫

「申し訳有りません。

リーダー格の男を、捕り逃してしまいました。」

「いえ、姉上が無事だっただけで…」

「その通りじゃ。

今日の そなたは妾の客。

寧ろ事に捲き込んでしまった事を詫び、事無きを得たのに礼を言うのは此方ぞ。」

客人の男が、賊を逃がした事について頭を下げるが、これに対して八坂と蔵馬は逆に頭を下げていた。

 

「ん。街が全っ然、騒がしくなかった理由が、良~く分かったにゃ~。」

「結果、被害は、その客間が乱闘で荒らされただけですからね。

テロの襲撃が有ったなんて、その場に居合わせた者しか、知る筈も有りません。」

「…てゆーか、()()()()が来てる時にテロ仕掛けてくるなんて、もしかして【禍の団(カオス・ブリゲード)】って、バカの集まりか?」

 

コクコクコク…

 

「……。」

サトルの台詞に、その場の一同が頷く中、その当人…【日本神話】派閥の1つ、『日本地獄』にて"第伍地獄"裁判長補佐官を務めている酸漿(ほおずき)は、それには対したリアクションを見せず、静かに茶を啜る。

 

…尚、この押し掛けてきた賊だが、結果的に約半数は逃がしてしまったが、最初に酸漿が一撃を与えた男は その場で死亡。

残りの者 数名は酸漿と護衛の者達により捕えらえ、その後の尋問から、この襲撃者はテロリスト集団・禍の団(カオス・ブリゲード)の者だと判明したのだった。

 

▼▼▼

「やあ。今日、皆に集まって貰ったのは他でもない。

7月の終り頃にも話題に上ったテロ集団、禍の団(カオス・ブリゲード)についてだ。」

その翌日の昼過ぎ。

前日の夜、八坂から襲撃の報告を受けた【日本神話】のトップである天照大神は早速、各派閥の代表者や実力者、約50名を八坂の屋敷の大広間に集め、今後の対応について話し合う事に。

 

≫≫≫

「…以前、サトル君に接触した奴等は、この子が【日本神話(ウチ)】の所属と知らなかったみたいだし、結果、その場で返り討ちにのフルボッコにされたと言うから、とりあえずは それで勘弁してやった。

…しかし今回、初めから八坂ちゃんをターゲットにして ちょっかいを出したとなれば、これは もう話は変わってくる。

どういう理由、目的かは知らないが、連中、正式に【日本神話(ぼくたち)】に喧嘩を売ってきたと、そう解釈しても良いだろう。

昨日の襲撃の後に逃げた連中とやらは既に、『NIN-JA』に頼んで追跡させている。」

明るく軽い口調だが、その内容は至って真面目。

 

「よろしいですか?」

「はい、酸漿君!」

此処で酸漿が、何やら発言をしようと挙手。

天照が それを許可すると、彼は今回の事について書き込まれたレポート用紙を取り出し、語り出した。

 

「今回の八坂さんに対する襲撃ですが、捕らえた者達の中に1人、敵集団の幹部クラスの者が居りまして、その者を中心に徹底的に問い詰めた結果、連中の今回の目的が判りました。

…その内容は、

 

①とりあえず、『妖怪』の長である、八坂さんを拉致る

 ↓

②八坂さんを洗脳した後、"裏"京都の伏見稲荷神社にて妖力を暴走させる事により、次元の歪みを生じさせ、その歪みからグレートレッドを呼び寄せる

 ↓

③その後に自分達、禍の団(カオス・ブリゲード)の頭目であるオーフィスも呼びつけ、両者を戦わせる

 ↓

④その結果、どちらが勝つかは分からないが、間違い無く負けた方は死亡、勝った方も かなり疲弊している筈

 ↓

⑤其処を彼等"英雄派"が、その勝った方に集団でフクロ

 ↓

⑥そして最後に、

『俺達、TSUEEEEEEEE!!』

『人間、SUGEEEEEEEE!!』

…と、自己満足。

 

…だ、そうです。」

「「「「「「ざけんな!!」」」」」」

酸漿の説明に、この場に集められた一同…神、妖怪、人間関係無く、皆の声が1つになった。

 

「色々と突っ込み処、満載なのですが?」

「あの真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)を喚ぶって、正気か?」

「…ってか今、然気に奴等のボス、無限の龍神(ウロボノス・ドラゴン)って言ってたよな?!」

「大体あの、"世捨て"ドラゴンがテロ集団のボスなんて、どーゆー事なのよ?」

そして誰もが、今回の"英雄派"と名乗る集団に対して、様々な突っ込みや疑問をぶちまける。

 

パンパン…パン!

 

「あー、あー、皆。

気持ちは解るけど、少し黙ろうか?

はい、こっち注目!」

「「「「「「……!!」」」」」」

それを鎮めたのは天照。

甲高く柏手する事で、自分に注意を向けると、声高らかに宣言した。

 

「もうね…難しい話は抜きだ。

一言で言えば、『よろしい、ならば戦争だ!』ってヤツだよ。

"英雄派"だか"魔王派"だかは、知ったこっちゃない。

【日本神話】の主神として宣言、皆に言い渡すぜ?

我等に無礼を働いたテロリスト組織、【禍の団(カオス・ブリゲード)】を殲滅掃討せよ!

これは、勅命だ!!」

「「「「「「「「うおおぉ~~~~~~~っ!!」」」」」」」」

天照の声に、日本神話の者達は、勇ましい雄叫びを以て、肯で応える。

 

「うん。皆、良い返事だよ。

地上に点在する各派閥のアジトと、"旧魔王派"とやらが潜む、冥界の辺境に攻め込んでくれ。

素戔嗚尊(スサノオ)君は冥界、建御雷神(タケミカヅチ)君は地上の攻め、その指揮を頼むよ。」

「姉者、任されよ!」

「承知!」

それを聴いた天照は満足気に頷き、2柱の神に、進軍の指揮を依頼。

 

「ん、ん。良い返事だよ♪

それじゃあ早速、準備に取り掛かってくれ。

一応、悪魔の連中には、僕の方から冥界入りを書状で報せておくよ。

報連相は大事だからね。

尤も報せるだけで、一々奴等の了承を得る心算は、無いけど・ね。

あ、そうそう。昨日、捕らえたっていう奴等は とりあえず組織のアジトの位置等その他諸々、情報を得られるだけ得た上で、全員 処しとこう。」

 

バタン…!

 

「話し合いの最中、失礼致します!」

天照が話している途中、部屋の扉が勢い良く開かれ、入ってきたのは山伏の衣を着た、鴉頭の妖怪。

 

「昨日、捕らえた賊共が、地下牢から逃げ出しました!

今は外へ出ぬ様、その場で抑えておりますが、奴等は全員、神器所有者(セイクリッド・ギア・ホルダー)

特に1人は中々の手練れ!

失礼は承知で有りますが、連中の鎮圧、この場の皆様の御手を貸して頂きたい!」

「「「「「「「…………。」」」」」」」

この言葉に、一同は最初は沈黙。

 

「まぁ、別に、構わんが…」

「良いよ~♪」

「"処す"手間、省けましたか?」

「殺ってやるぜ!」

「…てゆーか、このメンバーが揃ってる時に脱走企てるなんて、もしかしなくても【禍の団(カオス・ブリゲード)】って、マジにバカの集まりか?」

「いやいや、奴等としても、流石に この集まりは想定外じゃね?」

「ふっ! 貴奴等を滅す大仕事前の、良い肩慣らしだ!」

「ま、待たれよ、スサノオ殿?!

そなたが此の場で出張っりしたら、屋敷が倒壊してしまうぞぇ!?

く、蔵馬!それとサトル!何とかせぃ!」

「は~い、八坂ちゃんの御指名だよ?

蔵馬君サトル君、行ってら~♪」

しかし再捕縛…いや、その場で処す事については皆、協力的な姿勢だった。

 

▼▼▼

「連中の中には、転移の使い手は、居ないみたいだね?」

「使えるなら、とっくに この屋敷から逃げてますよ、蔵馬師匠。」

八坂の屋敷内で、地下牢に繋がる階段は1つだけである。

つまり、其処に閉じ込められた者が逃げ出すならば、その長い階段を上るしかない。

 

「どうします?

この場で待ち受けますか? それとも…」

脱走した【禍の団(カオス・ブリゲード)】の面々を、再び取り抑える為に、その唯一の出口に足を運んだのは、屋敷の主、八坂に指名された蔵馬とサトル。

 

「とりあえずは私と蔵馬さんサトルさんの3人で、下に向かいましょう。

他の皆さんは、此の場で待機。

万が一の…取り零しが やってきた時の、対処をお願いします。」

「「「「はっ!」」」」

そして、酸漿と数名の『妖怪』所属の(モブ)だった。

 

≫≫≫

 

タンタンタン…

 

「この狭い階段なら、顔を会わせても上からヤ〇ザキックかましたら、一発ですね。」

「そういう場面にならないのは、下で確実に足止めしてくれているのでしょう。」

「兎に角、急ごう。」

そんな会話を交わしながら、一本道の階段を下るサトル達。

 

 

「待たせたな!」

「おお!蔵馬さん!酸漿殿!」

そして地下牢のフロアまで下りてみれば、八坂の部下の妖怪達が、脱走したテロリスト達と抗戦している最中だった。

強力過ぎる協力者の登場に、妖怪達の士気が上昇する。

 

「げ?! アイツわ?」

「ヘラクレス様を瞬殺で撲殺した…?」

逆に蔵馬とサトルは兎も角、酸漿の登場に、テロ集団は戦慄、士気が低下。。

尤も それは、自分達を圧倒的実力で捕らえ、尚且つ自分達の上司を文字通りに瞬殺した(おとこ)が現れたのだから、無理も無い話では あるが。

 

「き、貴様ぁっ!!」

 

スバァッ!

 

「ぐはっ?!」

しかし そんな中、この酸漿を見て、逆に戦意と殺気を高めた者が1名。

それは神器(セイクリッド・ギア)なのか、背中から4本の腕を生やし、合計6本の腕 其々に剣を持った白髪の青年が、対峙していた兵を斬り払うと酸漿を睨み付け、

「よくも、ヘラクレスを!」

 

ダダダッ!

 

仲間の仇とばかり、突進してきたのだ。

 

ス…

 

「サトルさん?」「サトル?」

「酸漿さん、師匠…ここは、俺が行きますよ。」

此処で それを迎え討つべく、一歩 前に出たのはサトル。

 

「それは構わないが…

サトル…? 顔、恐いよ?どうかしたのかい?」

「あの6本腕 見てたら、何だか凄くムカついてきた!」

「あー…(笑)」

「………………。」

サトルの台詞に何か心当たりが有るのか、蔵馬は苦笑。

酸漿も何かは分からないが、とりあえず何かが有るのだけは察したのか、蔵馬と共に一歩退き、サトルに任せる姿勢を見せる。

 

「余り、殺り過ぎないで下さいね?

あの男には、オーフィスの事や【禍の団(カオス・ブリゲード)】について、色々と問い質す必要が有りますから。

まぁ、殺ったら殺ったで、その時は地獄で聴取するだけですがね。」

 




 
①酸漿…鬼灯(鬼灯の冷徹)のイメージで
 
②江口先生、お疲れさまでした。
 
③ヘラクレス、死亡(笑)
 
④次回、戦闘(バトル)回です。
  
感想、評価、よろしくです。
…並びに、今年もヨロシク!
 
ついでに同時執筆中の『PhoeniX』『黒翼』も よろしくです。
 

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