バトル回!
▼▼▼
八坂が【
その報告を受けた天照大神が、緊急の打ち合わせとして、【日本神話】の関係者を"裏"京都に呼び寄せたのが翌日、土曜日の昼過ぎの話。
時は少しだけ巻き戻り、その日の昼前の京都…
≪≪≪
「さ・て・と…昼飯って、どーするよ?」
駒王学園の2年生達は、昨日の金曜日から、修学旅行で京都を訪れている。
旅行2日目の この日は自由行動。
ソーナ・シトリー眷属の2年生達は、クラス関係無く、『生徒会』として1つのグループとなり、京都の街をぶらりと歩き回っていた。
その男女比1:4。
端から見れば どう見ても
「「「「「???!」」」」」
土曜日の産寧坂。
周囲は溢れる観光客、人混みで溢れていた筈が、突然に沸いた紫の霧によって視界を奪われ、それが晴れたと思えば、周囲は自分達だけ。
観光客だけでなく、道の両脇に並ぶ、土産屋の店員までもが、その姿を消しているのだ。
「げんしろー?」
「元ちゃん?」
「…気は、抜くなよ?」
「「うん…!」」
5人の中の唯一の男子、匙元士郎が、突然の出来事に やや戸惑い気味な女子を落ち着かせ、周辺に注意を向ける様に言うと同時、自身も気を引き締める。
「どうやら結界か異空間に、閉じ込められたみたいね…」
「…! 皆、向こう側!」
坂の頂、数人の人影に1人の少女が気付き、指差したのは、その直後だった。
≫≫≫
「…もしかしなくても これって、テメー等の仕業だよな? 何者だ?」
互いに歩み寄り、産寧坂の真ん中辺りで対峙。
匙が他の女子達より一歩前に出て、謎の一団に話し掛ける。
「ふっ…」
それに対して、この集団の
「初めまして、ソーナ・シトリー眷属の皆さん。
我々は【
そして俺は、そのリーダーを務めている…今は、曹操と名乗っている。」
「そうそう?」
「その通り。古代中国・三國の時代に、魏の覇王と呼ばれた あの、曹操孟徳を遠い祖先に持つ…只の弱っちぃ人間さ。」
「「「「「そーゆー設定か?」」
ですか?」」」
「違う!…ってゆうか、何なのだ? その目わっ?!」
そして自らを【
「分かった分かった。…で、そのジショウ・ソーソー・カッコバク様が、一体 俺達に、何の用だ?」
「だ、誰が、『
これに対して、未だ信じていないのか、一応は信じてやった上で、わざと 逆撫でしているかは判らないが、 匙が、惚けた口調で対応する。
「…我等が
尤も今は組織とは関係無く、
ガザザッ…!
「ケッ! まぁ、んな
「…だとしても、よりによって、折角の修学旅行中に仕掛けなくても良いじゃない!」
「TPOって言葉、知らないの?」
「はっはっは! 俺達テロリストに、それを求めるのは間違っているぞ!」
「「いや、その理屈は おかしい!」」
そして この匙の煽りに、一瞬 釣られるが、直ぐに落ち着きを取り戻した曹操の言葉に更に二言三言交わした後、両者が臨戦体勢に入った。
ヒュヒュン!
「「「「「!!」」」」」
先制したのは、【
ボウガン型の
ダッ!
同時に、一般的に高校生女子としては やや背の高い蒼い髪の少女…ソーナの
「ちぃっ!」
飛び道具を封じられる程に、間合いを詰められた男は咄嗟に拳を振るうが、由良は それを振り払い、素早く背後に回り込むと がっちりと羽交い締めからの、
「はぁ~ぁあっ!!」
どどんっ!
「げはぁっ?!」
豪快なドラゴン・スープレックスを決めた。
これによって男は、地面に敷かれた石煉瓦に脳天を痛打し、のたうち回る。
しかし少女のターンは、これだけでは終わらない。
ダウンしている男の頭を持鷲掴み、無理矢理に引き起こすと次は手首を捕る。
その状態で再び背後に回り込んで腕を極めると、即座に その腕を独楽に巻いた紐の様に引っ張り、そうする事で男の体は反転。
両者は必然的に向かい合う形となり、
「でぇいやっ!」
バキィッ!
「どぴぇっ?!」
其処に間髪入れず、ショートレンジのラリアットを炸裂させた。
如何に少女と云えど、転生悪魔の…
うつ伏せで地面に叩き付けられ、石煉瓦にキスをする。
如何に
「良ぉっし!」
その結果に、由良は大きくガッツポーズ。
≫≫≫
ビシィッ!
「「「きゃあっ!?」」」
一方で、残る3人の少女は苦戦中。
彼女達に攻撃を加えているのは、身の丈 約5㍍、首から上は無く、胸元に大きな単眼を開いている、全身を黒い装甲で覆われた巨人。
その白い目から発せられる光弾は、悪魔にとっては毒同然な"聖光"。
遠距離から撃ち放たれる攻撃に防戦一方、
「ははははは!どうだ!!
このレオナルドは確かに幼く未熟だが、訓練によって、"対悪魔"の魔獣を作る能力に特化しているのだ!」
「……………………。」
曹操が誇らし気に言い放つ隣で、巨人…魔獣を己の
「草下!巡!花戒!」
それを見た匙が、3人の元に援護に向かおうとするが、
「させるかよ!」
「…ちぃ!」
黒い戦闘衣にサングラスの出で立ちの…先程から匙と戦っていた男が、それを赦そうとは しない。
「だったら先に、テメーを倒す迄だ!」
ヒュルル…パシィッ!
「…?!」
そう言って匙は、右手に装着している黒い手甲型の
プォン…
「なっ?」
そのロープが白く妖しく光ると、男の身体は突如、原因不明の脱力感に襲われてしまう。
グィ…
そして匙は それを引っ張り、男を引き寄せると、
「っらぁっ!!」
ガンッ!
「が…?」
顔面向けて、強烈な頭突き。
サングラスが砕け散り、鼻を押さえながら睨む男に対して、尚も匙が追撃。
どん!
「ぅ…っ!?」
男の鳩尾に籠手を嵌めた拳を突き刺すと、殴られたヵ所を両手で押さえ、この男は両膝を地に着ける。
「ほぅ…下級の転生悪魔にしては、なかなかやるな?」
「当ったり前だ!
シトリー家の副執事長はなぁ、戦闘指南の腕前は超一流なんだよ!…性格は最悪だけどな!」
「最悪だよな。」
「最悪ですよね。」
「最悪。」
「最悪です。」
これを後方で見ていた曹操が皮肉で無く、素直に称賛の言葉を贈ると、このシトリーの
…どうやら彼等を指導したと云う、シトリー家副執事長とやらは、かなり最悪な性格らしい。
「面白い…
ならば俺も、前に出よう。」
そして英雄派のリーダーが、遂に前に出る。
ぶんっ!
手には何も持っていなかった筈が、何処から取り出したのか、凝った装飾が施された長い槍を何時の間にか曹操は構え、
「行くぞ!」
ダッ!
「!?」
そして匙 目掛けて突進。
その速く鋭い動きに、匙は反応が遅れてしまい、
ズバァッ!
「…っ!」
穂先に腹を貫かれるのだけは辛うじて免れたが、それでも刃を脇腹に掠めてしまい、思わず表情を歪めてしまう。
「ふっ、よくぞ躱した!…しかし!」
ぶぅん!
「!!」
しかし間を置かず、曹操は苦痛で無防備となった匙の頭部を狙っての一閃。
「げんしろー!」
「「「元ちゃん?」」」
黒い魔獣が放つ聖光を阻む防護壁の内側、何時の間にか その中に入っていた由良を含む少女4人が、この回避不可のタイミングで繰り出された一撃に、思わず声を上げる。
ガシィッ!
「へ?」
「なっ…?!」
「…大丈夫か?小僧?」
しかし この一撃は、突如 両者の間に割って入った、黒いスーツ姿の男によって止められた。
「…貴様、何者だ?
どうやって、この空間に外から入ってきた?」
この槍の柄を握り締める男に曹操は、面白く無いと云う表情を隠す事無く、問い質す。
ヒュン!ヒュヒュン!…グザァッ!
「「「「「「!???」」」」」」
そして この時、これとは別方向から、無数の
ずどぉん…!
口が無い故の喋れない仕様なのか、この攻撃により、魔獣は断末魔を上げる事無く、無言で前のめりに倒れ、その儘 消滅。
「や♪ 久し振りだな、お嬢ちゃん達。」
「お、お前?」
「あ、アナタ?!」
そして由良と草下が、いきなり登場した…苦無を投げた、やはり黒いスーツ姿の若い男に驚きの表情を浮かべる。
目の前に現れ、声を掛けてきたのは、6月の聖剣騒動時、この2人が夜の駒王町を警備中、不審者認定した上で、職質する如く絡んでいた『NIN=JA』の1人…鈴木稔だった。
「ど、どうして、此処に…?」
「実は俺達も、ウチのトップから この京都に現れたテロリストの追跡を命じられてな。
…で、丁度
尤も、君達、いきなり異空間の中に取り込まれたからな。
俺達も その中に干渉、入り込むには少しばかり苦労したぜ。
ねぇ? 和尚さん?」
軽く笑いながら、鈴木は少女達にに説明。
「ふん…八坂殿の襲撃に失敗したならば、大人しくアジトとやらに戻れば良かった物を…
この
「だ、黙れぇい!!?」
そして曹操の槍を受け止めた…鈴木から『和尚』とよばれた…スキンヘッドに白の
「妖怪、悪魔…世の人外を討つのは、昔から人間と云うのが、世の常!
俺達は、その理に従っているだけだ!」
「「「「「「「いーや、その理屈は おかしい!!」」」」」」」
自分達の主義主張を力説するが、それは即座に、この場の生徒会の皆さん、そして『NIN=JA』の2人から否定、突っ込みを受けてしまう。
そして今、英雄派が匙達に攻撃を仕掛けている理由だが、実は この『NIN=JA』の男、庵丈安慈の言った事が、半分近く正解だった。
『妖怪』の長である八坂を捕らえるべく、裏京都に在る彼女の屋敷に攻め行ったは良いが、
更には その後の乱戦、劣勢による撤退時に もう1人、幹部を捕らえられてしまっていた。
本来なら八坂を拉致した後、京都に来ていた悪魔達に自分達の目的を伝え、儀式の場に誘き寄せた後、グレートレッド、そしてオーフィス共々に始末する予定だった。
…が、その計画は既に大きく破綻。
しかし この儘 何の結果も無く、素直に逃げ帰るのは曹操のプライドが許さなかったのか、せめて京都に訪れている悪魔達だけでも…と云うのが、シトリー眷属を異空間に呼び込んだ真相であった。
「…いずれにしても!」
そして それを誤魔化す様に、「敵対するならば…」と、曹操は庵丈に向けて槍での一撃を放つが、
「破ァッ!!」
バキィッ!
「な…!!?」
それは右の拳の迎撃によって、簡単に防がれるだけでなく、槍の穂先も粉々に破壊されてしまう。
「ば…馬鹿な?!
俺の この
「はっはっは! 見たか!!
和尚さんの拳は
柄だけとなった槍を、信じられない物を見るように わなわなと震える曹操に、鈴木が どや顔で説明。
ヒュヒュン!…ビシャッ!
「…!」
「あっら?」
…同時に、参謀格の様な眼鏡の男に、苦無を投げ付けるが、これは魔術から成る防護壁に阻まれる。
「ならば!」
「ちぃいっ!」
ダッ…ジュバァッ…!
この男を獲物と定めた鈴木は、投擲が駄目なら…とばかり、男が放つ魔力弾を躱しながら間合いを詰め、逆手持ちで構えた二刀流での短刀で攻めるが、眼鏡男は それを紙一重、バックステップで躱していく。
「仕方無い!」
「協力してあげるわ!」
これに、天敵であった聖光を操る魔獣が居なくなり、防護壁から出てきた由良と草下が追い撃ち。
ぶぅん!
「くっ…!」
草下からのスピードとパワーの支援魔法を受けた由良が、見た目に派手なハイキックを連続で繰り出すが、これも魔術師風のローブを纏う眼鏡の男は回避していく。
この時、丈が やや短いスカートが捲れ上がり、その内側が露となるが、
「詐欺だーっ!」
由良は日頃から、スカート内にスパッツを着用しており、それを見た鈴木が、魂からの
≫≫≫
バスゥッ!…どどんっ!
「くぁっ…?!」
一方では、匙と庵丈が、一時的に共闘。
匙が己の
そこに庵丈が、剛拳の一打を顔面に向けて放つ。
鈴木曰く、『マスター・ダブル・インパクト』と呼ばれる この破壊の一撃を、曹操は身体を縛られた状態でも、直撃だけは避けようと身体を捻り、辛うじて その
しかし そのタイミングで、匙がラインでの拘束を解除。
結果、身体が自由になった事で、逆に その拳圧だけで、派手に吹き飛ばされてしまう形となった。
「お…おのれぇ…!」
二転三転し、漢服を埃まみれにして、起き上がる曹操は、顔の左半分を押さえ、対峙している男2人を睨み付ける。
「げ…」
「………。」
その様に、庵丈は特に反応を見せないが、匙は思わず どん引いてしまう。
押さえている手は既に真っ赤に染まっており、恐らく その手の裏の左眼は、完全に破壊されているであろう。
「ちぃ…ここまでか…!
…ゲオルグ!退くぞ!!」
そして鈴木、由良と応戦していた、眼鏡の男…ゲオルグに撤退の指示。
コク…
これにゲオルグは、鈴木と由良の攻撃を避けながら小さく頷くと、
どっどぉん!
周囲に爆発系の魔弾を撃ち蒔らす。
「「ケホッ…?」」
「何なのよぉっ?!」
しかし どうやら これは、殺傷能力は然程無く、目眩まし、煙幕の意味合いが主だった様で、立ち込める煙で少女達が咳き込む中、最初に由良と匙に倒されていた2人の男も決してダメージが少なくない身体を無理に起こし、
タタタタ…バタン!
「わぁあっ?!」
そして先程まで、
「レオナルド?! 早くしろ!」
「ま、待ってぇ!?」
曹操が倒れているレオナルドに、自分達の下に走る様に急かすが、
「随分と余裕だな?」「…逃がさん!」
「ちぃい!」
鈴木と庵丈がレオナルドよりも早く、曹操達に迫り、
「曹操!この儘では…!」
「くそっ! やむを得ん…ゲオルグ!」
シュ…
眼鏡の男は
「和尚さん!」
「承知!」
シュゥッ…
それを追う様に、『NIN=JA』の2人も、その場から姿を消す。
「ぁ…あぁぁ…??」
そして その流れを目の当たりにして、レオナルドは茫然自失。
▼▼▼
「…マジに最悪だな!
いくらテメーが助かる為とは云え、仲間を…しかも、こんなガキんちょを、見捨てて逃げるか?!」
…曹操達が異空間から撤退した後、その場に残されたレオナルド、そして匙達シトリー眷属は、術者が居なくなる事で その空間が解除されたからか、元の、人混みで賑わう京都の観光地に戻っていた。
「…………………。」
「元ちゃん…この子、どうする?」
逃走を防ぐ様に5人で囲み…尤も当人は今、そんな発想に至る精神状態で無く、その場に、産寧坂の ど真ん中に しゃがみ込んでいるレオナルドの処遇を、その場で相談する生徒会メンバー。
「どうするって、放っておけないだろ?
…色んな意味で。」
確かに今 放置したとして…直ぐに彼の仲間であるテロリストと合流するとしたら、それは まだマシな展開なのだが、仮に一般の第三者に保護され、その者に【
「…とりあえず、会長に報告だ。」
▼▼▼
そして"刻"は、
…その頃の"裏"京都、八坂の屋敷の地下牢の間では、
ガィンッ!
「ば、馬鹿な?! おれの魔剣を?」
牢から脱していた白髪の青年と、黄金に輝く全身鎧を纏った人物…サトルが戦闘していた。
生身と
「伝説クラスのメジャー魔剣でも、俺の
「…くっ!」
既に この男以外の脱走者は、サトルと共に この場に来ていた蔵馬と酸漿、そして八坂の兵達によって再度 捕縛。
残るは この、6本腕の剣士だけとなっていた。
しかし この剣士の攻撃も、その6本の腕を見た時に何か思う事、感ずる事が有ったのか…異様な殺る気を滾らせたサトルには、通じる様子は まるで無く。
「以前 天照様が言われていた、"ロンズデーライトの数倍の硬度"とやらは、どうやら伊達じゃない様ですね。」
酸漿が呟く中、
「おらぁっ!」
ベキッ!
サトルは相手の左膝に、低空のドロップキックを放つ。
「ぐ…っ」
これにより剣士は片膝を床に着け、サトルは その反対側、立てた方の膝を階段の如く駆け上がり、
「
ドゴォッ!!
「ぐっはぅわぁっ?!」
強烈な正面蹴りを、顔面目掛けて撃ち放つのだった。
①今更ですが?作者、プロレス大好きです。
②性格最悪らしい、シトリー家の副執事長。
実は既に1回、登場?しています。
勘の鋭い人は察したかも知れませんが…そう、
③
④今回のサトルの鎧は、『天雄星ガルーダの
感想、評価よろしくです。