ガルーダDxD(仮)   作:挫梛道

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今回から、話が一気に動き出します?
 



悪手

▼▼▼

藤舞の来襲(笑)から3日目の夜。

彼女は"任務"で、明日の朝には地元である某県へと戻る為、この日は普段より少しだけ、豪華なメニューが東條家の食卓に並んでいたのだが、

 

ババババババババババ…

 

そのマンション上層階の白音達の部屋の様子を、1機のドローンが窺っていた。

 

「神代の野郎…

何で、白音ちゃんの部屋で飯なんて食ってんだよ?

てゆーか、あの お姉さん達は、誰なんだよ?」

「あ、あの黒髪の女の人は、白音ちゃんの お姉さんですぅ。

もう1人の派手な髪の人も多分、家族か親戚の人じゃないかと…?」

マンションの すぐに傍に在る公園で、機体に搭載したカメラ越しに、白音の部屋を視ているのは、兵藤一誠とギャスパー・ヴラディ。

 

「イッセー先輩ぃ~、もう、帰りましょうよ~?

こんなの神代君にバレたら、殺されちゃいますよぉ~?」

「バカヤロー! 何の為に高い金 出して、ドローン(コイツ)を買ったと思ってんだ!

何としても、何らかの証拠を、だな…!」

数日前の、冥界のナベリウス家襲撃事件。

兵藤は これを、ガルーダ=サトルの仕業と断定していた。

結論から云えば、それは正解。

しかし、その正解へと至らせる過程が、余りにも短絡的、且つ私情が混じり過ぎていた。

主犯である"黒服"と同行していた、レオタードの仮面の女。

その情報だけで、以前ガルーダと邂逅した時に一緒に居た、灯と螢と呼ばれていた2人だと、信じて疑わず。

それイコール、黒服の男はガルーダと断定。

…そして以前から、その女の内の1人を白音だと主張していた兵藤は、其処から彼女の恋人?のサトルを、ガルーダと結論付けていた。

だが周りは根拠が根拠だけに、その考えを支持する者は居らず。

故に兵藤は、自分の推測が正しいのを証明すべく、部活の後輩を無理矢理に巻き込んでの独断行動に出ていたのだった。

 

「それに、神代君を疑っているなら、どうして白音ちゃんの部屋を覗いて…」

「仕方無いだろ!? アイツが白音ちゃんの部屋に居るんだからよ!

それに白音ちゃんだって、怪しいんだ。

監視する必要は、あるんだよ。

…クソっ! どうして皆、信じてくれないんだよ…!」

…しかし やっている事は、どう見ても犯罪である。

 

「それに、あの黒髪の女、絶対に もう1人のレオタード女に間違い無いって!

これは もう、確定だろ?

…ついでに言えば、ヤローが白音ちゃんや あの お姉様達に、いかがわしい真似をしようとした時は…あ…」

「ひっ?!」

そして そんな遣り取りの途中、顔を硬直させる2人。

ドローンに取り付けられた撮影カメラと繋がっているディスプレイに、そのカメラのレンズに向けて、M16(エアガン)の銃口を構えているサトルの姿が映し出されたからに、他ならない。

 

pit…

 

「「あ…」」

そして次の瞬間、その画面に蜘蛛の巣の様な罅割れ模様が走ったと思えば真っ黒になり、何も映らなくなってしまう。

 

「あ、ば、バレた?!」

「ひぃいっ!?」

驚き戸惑う兵藤と、怯え狼狽えるギャスパー。

 

「ま、不味いぞ!早く、撤退を…」

慌てて兵藤がドローンを引き返えさせようとするが、今度は その操縦機の画面に、『machine trouble / inoperable』の表示が。

 

「こ、これって もしかして、撃ち落とされたんじゃないですかぁ?」

「く…! か、回収に行くぞ!」

「だ、ダメですよぉ!

今頃 神代君、絶対にマンションの屋上で、狙撃準備(スタンバ)ってますからぁ!

本当に蜂の巣に されちゃいますって!」

「ぐぬぬぬ…!

た、高かったのに…」

 

 

≫≫≫

 

ピシャ…

 

「久し振りの、覗き野郎だったな。」

「全くだにゃ~。」

ベランダのガラス戸を閉めたサトルが、銃の構えを解き、一言 呟く。

その口振りからして、どうやら過去に兵藤以外にも、似たような行動を取った者が居た様だ。

 

「ふぅん? 都会は覗きで、ラジコンヘリなんて使ってるの?

物騒ねぇ?…って、黒歌と白音、どっちが目当てだったかは知らないけど、モテモテねぇ?♪」

「ストーカーは御断りです。

…で、どうします?

今回はケーサツ、呼びますか?」

「ん~、任せるよ。

とりあえず、屋上 行ってくる。」

「スナイパー・サトルだにゃ!」

…そしてギャスパー、正解。

 

▼▼▼

この後、白音は しっかりと匿名で通報。

ドローンは証拠品として、警察に押収される事になる。

因みに この機体、日本製だったのだが、兵藤は これを冥界のルートで購入していた為、人間界(ちじょう)の警察機関の調べでは、持ち主の兵藤まで辿り着けず。

"未登録の所持者不明機による覗き事件"として、翌日に全国ニュースにて報じられた。

 

≫≫≫

「イッセー…貴方ねぇ…!」

「す、すいません…」

「解ってるの?!

それとも忘れたの?

仮に その神代君が、本当に()()()だとしたら、今回の行動は、悪魔全体(わたしたち)がアイツへ敵対行動を取ったと受け取られても…敵認定されても、仕方無いのよ!

そして、本当にナベリウス襲撃の犯人とも同一だとしたら、アイツは簡単に冥界に出入り出来て、テロ行為も容易く実践出来てしまう程の実力の持ち主と云う事…

それすら、思い付かなかったの?!

彼を疑っているなら、きちんと其処まで考えてから、行動しなさいっ!!

てゆーか女の子の部屋を覗くなんて、普通に犯罪じゃないの!」

「す、すいません~!」

…しかし、主であるリアスには、ギャスパーからの報告で しっかりとバレてしまい、散々と説教されるのだった。

 

▼▼▼

…数日後の、土曜日の正午前。

某県某市、全国にチェーン店が点在する このファミレス店の席は、揃いの黒のスーツを着た者達で埋められていた。

 

「こうやって見ると、本当に圧巻だね~?♪

あ、お姉さん、カルボナーラとサラダバーとドリンクバーを。」

その中で やはり黒服を着た赤髪の少年が、その光景に苦笑しながらメニューを開き、店員に注文。

…そして、店内中央のテーブル席では、

「さ・て、そちらの御要望通り、お話しの場を作ってあげた訳だけど…

()()()()()()は この僕に、一体どんな話をする心算なのかな?」

「「……………………………。」」

紺色を基調に、紅と金銀の糸で曲線模様が縫われた和服を着た、【日本神話】の主神・天照大御神、その隣には、やはり黒のスーツを着た少年が。

そして向かいの席には、ダークブルーの女性用スーツを着た若い女が2人、座っていた。

黒スーツの少年はサトル。

そして、その向かいに座っているのは悪魔政府にて、外交を担当している魔王セラフォルー・レヴィアタンと、彼女の戦車(ルーク)である、バイオレートである。

悪魔政府が、【日本神話(アマテラス)】に会談を求めてきたのが、5日前。

それに対して、アマテラスが その会談の席に指定したのが、今の時間の この場所だった。

因みにだが、このファミレスの店長も、一応は【日本神話】と縁の有る人物で有る。

 

≫≫≫

「…約1週間前、冥界の ある貴族の城に賊が侵入し、その時に城内に居た悪魔が、多数 殺害されました。

その中には純血の悪魔も1人、含まれています。」

周囲の黒スーツ達が視線を集中させる中、魔王は重たい口調で話し始めた。

 

「へ~? …で、それで?

それが僕と、何の関係が有るんだい?」

それに対してアマテラスは、如何にも それは初耳だと云う態度(はんのう)を見せ、質問を投げ掛ける。

 

「その賊と云うのが…黒のスーツを着た男だと、云う事…なのです!」

「ふぅん?…つまり、その犯人は、僕の処の『NIN=JA』だと、そう言いたいのかい?

今、この店に居る中の、誰か…だと?」

「………………。」

「いやいや、黙るなよ?

それって『Exactly(そのとおりでございます)!』って言ってるのと同じだぜ?

てゆーかさぁ、黒スーツを着てたってだけで『NIN=JA』…それ即ち【日本神話(ぼく)】の仕業って、少し発想が安直過ぎないかい?

大体 黒いスーツ着てる人間って、世界中に彼方此方に居るぜ?

もっと確固たる、証拠か何かを示さないと。」

そして続く魔王の言葉を、アマテラスは完全否定。

更には疑いの目を掛けられ、無礼失礼だと畳み掛ける。

尤も、実は その犯人は今、彼女の隣でチャイを飲んでいる人物なのだが。

 

「ならば逆に聞くけど、何の目的、理由が有って、『NIN=JA』…いや、【日本神話】は、態々 冥界に…悪魔の城を襲撃したって言うんだい?」

「そ…それは…」

「何だい? 話せない事なのかい?」

そして続くアマテラスの逆の問い掛けにも、セラフォルーは言い淀んでしまう。

 

「成る程。とりあえず、襲撃を受ける様な…受けて当然な心当たりは、有る訳だ。

…で、それって、何?

さあ、話してみなよ?」

「……!」

その反応に、全てを知っていながら、敢えて それを表には出さず、アマテラスは意地悪な笑みを見せ、更に問い質し続ける。

それに対して魔王は、ますますバツの悪い顔をして、口を閉ざす。

 

「アマテラス様、もう良いでしょう。

趣味が悪過ぎますよ?」

しかし此処で、それをサトルが窘めた。

 

「えー?」

「…ぢゃ、無いです。

茶番は止めて、ストレートに行きましょう。」

『もっと楽しみたかったのに』…と言いた気な顔の己の主を戒め、早く本題に入る様に、促すサトル。

 

「はいはい、分かったよ。

全く、()()()()()は、こーゆーのには真面目だなぁ。」

「が、ガルーダって!?」

「……!!」

そしてアマテラスの、『ガルーダ』の呼び名に、セラフォルーとバイオレートは驚きの顔を見せた。

 

「ああ、そうだよ。

この子はガルーダ。

君達 冥界の悪魔の、その一部の間では有名人な、あ・の、ガルーダさ。」

「あのガルーダが、日本神話所属ですって…?」

「そして、件の襲撃事件の、実行犯でもある。」

「なっ…?!」

「何だと!?」

そしてアマテラスのカミングアウトに、魔王と その眷属は、更に驚き。

 

「やれやれだよ。

もう少し、引っ張ってみたかったのに。」

「ふ、巫山戯ないで!

      るな!」

アマテラスの呟きに、セラフォルーとバイオレートが怒りの感情の儘に怒鳴り散らす。

 

「貴っ様!」

 

ぶぅん!…ガシッ!

 

「ぃ(いって)ぇ~~~~っ?!」

そして立ち上がったバイオレートが、サトルに向けて拳を振り翳すが、サトルはそれを、座った儘、掌で受け止める。

大事には至らなかったが、その一撃は、かなり重かった様だ。

 

ガタガタッ…!

 

そして次の瞬間、周囲の『NIN=JA』達が立ち上がるとアマテラス達が座っている席を囲み、臨戦態勢を取った。

 

「ひぃっ!?」

「大丈夫、大丈夫だから、落ち着きなさい。」

「て、店長ぉ~?」

それを見た、"裏"の事情を知らない、極々一般人な若いウェイトレスが、いきなりのバイオレンス的展開に驚いて上擦った声を上げるが、ファミレス店長は これを心配無用と諭す。

 

「…大丈夫。皆、戻って。」

「「「「「「「………。」」」」」」」

「キミもだよ、付き人君。

とりあえず、()()()()()。」

「……!?」

そしてアマテラスも、それを問題無しとして、殺気溢れる黒服の集団、そしてバイオレートを元の場に退がらせた。

 

「…それで、『巫山戯るな』って、何をだい?

事が起きたのを知っていて、それが僕達の仕業と知っていて、惚けていた事かい?

それとも、ナベリウス家を襲撃した事についてかい?」

「全部だよ!!」

「きゃ~ん♪ ガルーダ君、この性格のキツそうな お姉さん、怖~い~♪」

とりあえず一触即発は回避されるも、物怖じする事無く、飄々とした態度を崩さないアマテラスに、バイオレートが更に怒声を吐くが、アマテラスは動じない。

 

「どうして…

どうして、そんな事をしたの??!

どうして、ホリェッターちゃんを、殺したりしたの!!?」

「「はぃ?」」

しかし、続くセラフォルーの言葉に、サトル共々、目を点にして、一瞬フリーズしてしまう。

 

「ちょっと魔王ちゃん、それって本気で言っているのかい?

それとも、ナベリウス家とやらから、本当に何も知らされてないのかい?」

そして本当に、呆れ返った顔で、質問を質問で返すアマテラス。

 

「一応、伝言役は、残していた筈だけど?

スレの内容からして、理由、動機云々は一般には伏せていたとして、"上"の方には きちんと伝わっていたと思ったんですがね?」

「はぁ~~~~~~~~~~~~…

もう良いよ、ガルーダ君。

てゆーか、『どうして』…って、それ、悪魔(キミタチ)が先に言うかい?

そんなの、悪魔(オマエラ)が先に、"日の本(ぼく)(こども)"を拉致ったからに、決まってるだろ?

「「………!!?」」

心底 疲れ、諦めた様な溜め息を溢したかと思えば、今までの穏やかな雰囲気を一変、冷たい表情と口調で、目の前の悪魔達に、【日本神話】の主神は、その襲撃理由を言い放つ。

その変わり様、その迫力に、セラフォルーとバイオレートは、一瞬だが たじろいでしまう。

 

「ねぇ、それについては、どういう事なんだい?

いや、本当に、どうして襲撃を受けたか、理解出来てなかった訳?」

そして、アマテラスの口撃は止まらない。

 

()()()、悪魔の人口の事情は、一応は聞いては、いるよ。

でも だからって、本人の合意があったなら まだしも、他所から何の断りも無く、無理矢理に浚ったりして、良い訳が無いだろ?」

「そ、それは…」

「全く…自分達が先に した事 棚で、文句言ってきてんなよ。

しかも今回は、人口云々で無く、浚わった子が神器(セイクリッド・ギア)の持ち主だったから…戦力増強目当てに連れ去ったんだよな?

だから僕は このガルーダ君に、蜜柑ちゃん救出と、それを邪魔立てする者の、殺害許可を言い付けたんだ。

さあ、何か、言い訳が有るなら、言ってごらん?

ブーメランが飛ぶだけだぜ?」

「くっ…」

既にセラフォルーは、何も言い返せず。

それでもアマテラスの口撃は、止まらない。

 

 

 

 

こんな筈では…

 

 

サトルによるナベリウス家襲撃。

それを、【日本神話】の仕業と思った悪魔政府上層部は、外交役の魔王に、その件でコンタクトを取る様に命じた。

先ず、純血の貴族を殺害されたのは、赦される事では無い。

しかも、相手はマイナーの弱小神話。

だが…だからこそ、それを『ネタ』に少し此方が脅しを掛ければ、向こうは恐れ ふためき、謝罪は勿論、賠償として様々な金品を搾り獲れる…

そして上手く往けば、神話勢力毎に自分達の傘下に入れられる…と、そう考えていた。

それは、【日本神話】に対して同じ印象しか持っていなかった、セラフォルーも同じく。

だからこそ、その()()()()()()()()()から発せられる"圧"に、御付きのバイオレート共々、戸惑いを隠せないでいた。

そして、心に思っていた。

 

 

『こんな筈では…』…と。

 

 

≫≫≫

「何なの? お仲間さんが殺された事を突き付けて、謝罪や賠償を求める心算だった訳?

その原因が、自分の側に在ったにも拘わらず?

それは少し、厚かまし過ぎないかい?

寧ろ、謝罪や賠償を要求して良いのは、此方側だと思うんだけど、どうかな?

まさか、『こっちは殺そうとした訳じゃない』…とでも、言う心算かい?

馬鹿を言ってるなよ。

悪魔に転生させた時点で、それは()()()()()()()()と同じだろ?

お前等は どう思ってるかは知らないが、僕や、他所の神話連中は、そうは思っていないぜ。

そして それは、決して赦される事では無い。」

「そ、それは…」

 

ずず…

 

サトルが静かに2杯目のチャイを啜る隣、アマテラスの口撃は止まる事が無く、セラフォルーは、何も言い返せない。

 

「それに、【日本神話(ウチ)】だけの話じゃ無い。

知ってるかい?

他からも民は拉致るは神具や宝具は盗むはで、実は君達『聖書』って、他所の神話から凄く、評判悪いんだz

う、五月蝿いわね!

さっきから黙っていれば、何を偉そうに言ってるのよ?!

アナタ達は悪魔(わたしたち)の言う事やる事には文句を言わず、黙って従っていれば良いのよ!

弱小のマイナー神話の癖に!

…あ゙?

オマエ今、何て言った?!

 




 
次回予告。
 
※※※
 
◆スレ主◆
【?報】魔王熟女、ウチのトップ様の発言に逆ギレ。
…で、戦争勃発?
『聖書』終了の報せ?
 
※※※
 
感想よろしくです。
 

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