破壊神の転生体に転生したそうです   作:ぴんころ

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第五話

 この世界に来てからの行動は、とても慎重なものになった。

 

 原作のそれとはまるで違う数々の行動。すでに死者が出ている事実が、斑鳩先輩を慎重にさせた。ものべーが存在していても、いつ何が起こるかわからない。今も苦しんでいる生徒を思えば、誰もが慎重にならざるを得なかった。

 まず、最初は神剣使いだけが出て、今この空間にいる神剣使いの中でもっとも価値の低い俺が毒味をして、そうしてようやくそれを食料として扱える。希美が死ねばものベーも消失するため、絶対に外に出すことはできないし、斑鳩先輩も校内のまとめ役をする関係上どうしても外に出られない。だからと言って俺と夕陽、ということになると少々厳しかったのだが。そこは多少の幸運に見舞われた。

 

 隠れ里を発見したのだ。

 

 そこで、この世界の詳しい情勢も聞くことができたので、今の状況にも多少の驚きは残っているが戸惑うこともない。

 

 ある時期、唐突に鉾……ミニオンの数が減ったらしい。そしてそれによってカティマ=アイギアス。つまりはこの国、アイギア王家の正当後継者がクーデターによって国を乗っ取ったダラバ=ウーザに対して攻勢を仕掛け、結果として敗北を喫したのか何か、理由はわからないままだが彼に従うようになったらしい。だからこそ、止められる人物がいなくなり、その暴虐の王政が続いている、とのこと。

 

 そして、それによって今も鉾による被害が出ているのだ、と。

 

 同時に、鉾が踏み込んできた。村人たちは笑う。俺たち……より正確には異邦人を捕らえるか、殺害するか、あるいは殺せないのであれば鉾へと通達することで自分たちを見逃してもらえるのだと、嬉々として笑っていた。直後に殺されたが。

 

 そうして、この世界での初戦闘が開始された。

 

 

 

 

 

 ーーー剣の理が戦場を支配する。

 

 ただ一度の剣閃によって、十を超える少女たちの首が空を舞う。その全てが一瞬の後にはマナの霧へと還り、生命活動を停止した肉体も塵となる。背後から己を狙うファイアボルトは全て左手の剣にマナを込めて斬りはらい、最小限の動きとスタミナで、全ての敵を屠る嵐となる。

 それは一太刀ごとに急激に成長する嵐だった。一匹目のミニオンの殺害には五秒。二匹目には四秒。少しずつだが、確かにかかる時間は短くなる。

 

 戦う相手のいない鍛錬でもなく、相手はいても殺してはいけない訓練でもなく。相手がいて、殺しても良心が痛むことのないミニオンという人形。人体をより効率的に破壊する方法を、そこに至る道筋を、確かに実感として身に付けることができる相手。その存在が、望のことをより高みへと導いていく。

 

 万象に対する破壊神(ジルオル)という神剣使いとしてではなく、人型特化の殺戮者(世刻望)として、彼が目指す極点へとまた一歩近づいた。

 

 ミニオンが死滅する。居場所が知られる。ミニオン……鉾とこの世界では呼ばれる存在の消失は、この世界を統べる王にとっては小さなことだが、それは無視してもいいことにはつながらず。ましてやそのスポンサーからすればこれは決して許し難きこと。

 

 結果、かつての敵であり、今はスポンサー……「光をもたらすもの」に加わった配下(死者)を投入する。

 

「こいつらは……」

 

 投入された二名を見て、望はわずかに目を見開く。けれどそれ以上の反応を見せることはなく、粛々とただ敵を排除することに戻る。

 

 投入されたのは爪型永遠神剣、第六位「荒神」の契約者たるソルラスカと薙刀型永遠神剣、第六位「疾風」の契約者であるタリア。

 

 たとえ原作における仲間だろうと、立ちふさがる以上は敵であることに変わりなし。そんな、現実として生きる人間としての二名と交流がないからこその割り切りで、目の前に立つ心臓を抉り抜かれた二人をただ戦う敵とだけ見なす。

 

「先輩に見られる前に、死んでくれ」

 

 共に戦う夕陽は、より強い神剣使いであることから望よりも多くのミニオンを差し向けられている。倒すことへの苦労はないが、ただ単純にその量に辟易としていた。その隙に、望は宣言して走り出す。それはただの言い訳。己を高めるために必要となる犠牲に、何かしらの理由をつけるもの。

 

 言葉にすれば陳腐なそれに、一切の頓着を見せることなく野獣の如き咆哮をあげながら向かってくる二人。

 

「緩いーーー遅い」

 

 そうして振るわれる、人間の目には捉えきれぬであろう爪撃と斬撃。しかしそれを遅いと断じて望は避ける。速度もキレも、彼が常に夢想し戦ってきた相手にははるかに及ばない。それを、現実のものとして夕陽に顕現してもらった以上は敗北などありえてはいけない。

 

 五秒。それだけの時間に五十を超える斬撃を二人が織りなす。当たり前に考えては受けきれるはずもないそれを全て最小の動きで躱しながら、剣の術理を持って砕きにかかる。込められたマナの量から見て、この世界の中でも上位に位置するであろう今の死体(二人)。神速を誇る二名を同時に相手しながらも一度も傷を負うことなく、翻弄するかのような動きは完全に上位者が何者かを示している。

 

 ように見えた。

 

 実際は一撃でも受ければ即御陀仏になりかねない致死性の連続攻撃。すでに死んだことで失われた理性と、生者特有の危機感。それらによって全ての攻撃が単純な代物となり、余裕をもって躱すことは速度が足りていれば何ら難しくはない。

 

 ソルラスカがもはや人語を解すことすらできないことを示すように咆哮をあげながら突進を敢行する。黒属性のマナの嵐を巻き起こしながら野犬と化して。幾重にも魔法陣が展開される。ダークインパクト。黒属性のミニオンが使用していたのと同じもの。それが望の逃げ道を塞ぎ、ソルラスカと正面衝突するしかないように仕立て上げる。そこにさらに頭上から降り注ぐタリアの放ったアイシクルアローは

 

「させません!」

 

 夕陽のライトバーストに砕かれる。望の思考に、そのままタリアを任せるという選択肢が出る。それをアイコンタクトで夕陽に伝えて、加速しながら特攻してくるソルラスカを正面から迎え撃つ。正面から迫る異様なまでの迫力に、されど深淵を宿したかのような瞳は無感動なまま。その瞳には、ソルラスカの死というゴールにたどり着くまでの過程がいくつも想起されては消滅している。

 放たれる連爪撃。その途中に剣を差し込む。止められた爪に、剣の柄を巧みに持ち替えて、その爪の合間に左手の昼の剣を嵌め込んだ。嵌め込まれた剣の位置は絶妙で、どうあがいても外すには一瞬の隙ができる。そこに横合いから夜の剣を叩き込み、反発する力を直に神剣に叩きつける。それによって爪が破損したことには見向きもせず、その力の流れに逆らうことなく体を回転。首を切り飛ばした。

 

 

 

 

 

 それを、戦いながらも夕陽は目撃していた。薙刀の一撃は確かに鋭く、速いけれども、それでも火力が足りていない。いくら力が制限されているからといっても、この程度の攻撃すら防げない、なんてことはない。けれど夕陽が見ている望は別だ。この攻撃を食らったら多分一撃で戦闘不能。運が悪ければ即死だろう。彼が受けるなどとは夕陽自身全く思っていないが、それとこれとは話が別。どうしようもなく集中しきれずに、結果的に望が倒しおえるまでハラハラとしながら戦いを長引かせてしまった。

 けれどそれももうおしまい。彼が倒し終えた。むしろこの状況で長々と時間をかけていたら、彼にとって用済みになってしまうかもしれない。そう思って夕陽は内に焦りを秘める。

 今ですら、彼が修行している時の仮想訓練の相手に夕陽は追いつけていない。それでも夕陽が望の修行の相手になれるのは、実戦経験が多く、彼が想定する敵の動きよりも効果的な動きを実践することができるからだ。彼が、戦士となったのなら、今のままの夕陽では用済みになるかもしれない。だから、もっと強く、もっと速く。彼がたどり着く頃には、もっと先に行っていないと捨てられるかもしれない。そんな恐怖が彼女の成長を後押ししていた。

 

 一閃。

 

 肉を切らずに、相手のマナ結合だけを切り刻む。触れてもいないはずなのに、空気中のマナを揺らして、相手の肉体を構成するマナの結合を掻き乱した結果として、タリアの肉体は崩壊する。

 

「……戻るか」

 

 望の視線はそもそも夕陽の方を向いていない。興味を抱いていないのか、それとも勝利できると信じていたのか。夕陽には判別がつかず、後者であればいいと願うばかり。そうして訪れた戦いの終焉。情報を得て、さらには敵対勢力に属すると思われる二名を処理し終えた。その情報もどこまで信用できる代物か不安が残るが、それでもあの情報を語ったタイミングを見るにわざわざ嘘をつくとは思えない。まあ、信用していいと判断して情報として持ち帰ることに。

 

「帰るぞ、夕陽」

 

「はーい」

 

 夕陽が望の方をちらりと見ると、これまでと態度は何も変わっていない。彼を失望させるような事態にはならなかったのだと一つ息を吐く。そんなことをしている間に歩き出していた望に追いついて、少し後ろを歩き始めた。

 

「望さん……」

 

 あなたの役に立てていますか。そう聴きたくなった。けれど聴いてはいけないと感じている。相反する二つの感情が夕陽の中で渦巻いている。役に立っていないと言われれば立ち直れる自信がなかった。今の状況下でただ飯ぐらいに成り下がるわけにはいかない。生徒たちを守る必要がある。そう思って、こちらを振り向いて言葉にするのを待つ望に対して苦笑いを向けた。

 

「いえ、なんでもなーーー」

 

 言葉はそこで止められた。大きなマナ振動。それがものベーの存在する方向から感知される。夕陽はとっさに走り出した。今の二人の生命線、この世界から全員揃って脱出するために必要となるものべーを失うわけにはいかない。どのようにして見つけたのかはともかく、見つかったのなら第一陣を撃破してから別の場所へと移動するだけの話だと。

 対照的に、望はわずかに遅れる。頭の中で得られる戦闘経験と自分がする苦労を損得計算しようとして、大前提として「ものベーが存在する」ことが、世刻望がこれから行わないといけない全てにおける足になるのだということを思い出した。

 

 もとより三位と五位。スペック差は徐々に、けれど如実に現れて、夕陽の姿を望は見失う。けれど居場所はわかりきっているために数秒遅れでものベーへとたどり着いた。

 

「うわぁ……」

 

 そこに広がる光景に、思わずといった様子で先にたどり着いていた夕陽が言葉を漏らす。望も口にはしないが内心舌を巻いていた。

 流麗に、舞うように、一人の少女がミニオンの首を絶っていく。放たれる神剣魔法をより強大な一撃で粉砕し、ものベーのことを守っている。その状況に夕陽はこの世界にも仲間がいるのかと喜び、望は幾ら何でも出来すぎだろと疑いの視線を強めた。

 

 その少女が、元の世界にいた頃にすれ違った女だと二人が気がついたのは、戦いが終わる数分後のことだった。




・イノシシ&空気読めない子

 まさかの死んでた。一体誰が予想したのか、一度も言葉を発することなく死ぬなんて……なんて……。
 ちなみに、沙月と合流しようとしていたわけだけど、今現在ジルオルがいるために、これ以上ジルオルの勢力を拡大させるわけには行かないし削れる時に旅団の戦力を削っとこうと考えたエヴォリアによって鉾で力を削られた後に、当時の全員がかりで倒したフルパワーダラバとついでにフルパワーカティマによって殺されました。

・カティマ

 皆の予想通り死んでた。「光をもたらすもの」が物部学園に大量のミニオンを向けた関係で鉾が減ったのでダラバの元にはたどり着けた。けどその分戦闘経験が少なくなったので、相打ち。見事にエヴォリアの手駒になってた。

・高嶺夕陽

 オリハルコンネーム的な意味での戦闘能力はまだ解放されてないけど、剣術で言えばオリムくんの無茶に応えていた数日間で上昇していたりする。永遠神剣に皆まとめて巻き込まれる事態にさえならなければ、捨てられるかもしれないなんて危機感は抱かなかった。つまり、「光をもたらすもの」のせい。だけどあいつらが攻めてきた理由を考えればオリムのせい。

・斑鳩沙月

 皆のまとめ役が戦場に出るはずがない。

・永峰希美

 死んだらその瞬間全員死亡確定なのに戦場に出せるはずがない。それに伴って一人は護衛が必要となり、今は斑鳩がそれを兼任している。
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