ヤマトの宅配便   作:黒っぽい猫

4 / 8
とりとめの無い前書きです。

・遅れてごめんなさい。早押しクイズにハマってました。(素直)
・前話に関して、聖龍連合って正しくは聖竜連合なのね……
・またイベント前のお話。退屈だから早よ進めろ(自戒)

では本編どうぞ。


4.たまに全く違う傾向の作品を書きたくなる

 見つけた。

 

 多分、あのプレイヤーだ。

 

 でも、確証が無い。

 

 顔が隠れていては分からない。

 

 それに、あの人がそう簡単にボロを出すはずがない。

 

 

 

 もしかしたら、違うかもしれない。

 

 けれど、もしこの考えが正しかったのならば。

 

 その時は────

 

 

 

 

 2023年5月14日

 

 第28層 西の街《セラン》 広場

 

 

 迷宮区に最も近い街の広場。四分円状の石造り広場には今、48人ものプレイヤーが集まっていた。

 

 ある者は青い鎧の騎士のような装備、ある者は侍のような和装、またある者は浮浪者のようにボロボロのコートを装備をしている。

 一見すると統一性のないプレイヤー群だが、目に見えない、しかし明確な共通点が存在する。

 

 それは『強者』であると言うこと。

 

 ここにいるのは全て、最前線で戦うプレイヤー。しかもその中でもトップクラスの戦力だけが集められている。言うまでもなく、この先に戦うことになるのは過去最強レベルの敵になるためだ。

 

 強者特有の余裕と重圧がその場を支配し、独特の緊迫感が張り詰めている。気軽に口を開く事も憚られ、近場にいる仲間達と小さく言葉を交わすことしか出来ない。まばらに集まるいくつかの集団から生まれたそのざわめきだけが聞こえる。

 

 

 

 

 そんなことにはお構いなく。

 

「おおお、あれが噂の《聖竜連合》第ニ部隊ですか! 中でも目を引く『鉄壁』と噂されるタンクのコンビ、生で見るのは初めてですが、いや流石装備がゴツい! 最近見つかった質の高い鉱石を使っていると聞いていましたが、あの重厚感ある見た目と体格のデカさはタンクとして頼り甲斐しか感じません!

 あ、あれは《ドラゴン・ナイツ》の聖騎士隊! 『青騎士』リンドさんを主軸とした抜群の安定感を誇るパーティじゃないですか! あの統一されたカラーリング、堂々たる居住まい、まさに騎士団!

 あっちには超少数精鋭ギルド《トラ・トラ・トラ(ワレ奇襲ニ成功セリ)》の『襲撃者』リュフィオールさんもいるじゃないですか! STR極振りのステータスと装備で、タゲ外からの強力な一撃で敵を沈めるまさに火力の権化! それをサポートするパーティの堅牢さも一級品、まさに攻略組のスター!

 おおお有名な実力あるプレイヤーばっかりです凄いです熱いです!

 クラインさんみてください! あっちにも──」

 

 俺の隣では、興奮冷めやらぬといった様子で熱く語る仮面がいた。当人もレベル的にも実力的にも劣っているわけでは無いが、それと無関係に憧れが強いらしい。初めてのボス戦参加に対する緊張感よりも攻略組上位層勢揃いの状況への高揚が勝っている様子で、歳相応──あくまでも背丈からの判断だが──の反応だなと、なんとなく微笑ましい気持ちになる。

 

 熱く語っているのが聞こえているのか、名前が挙がっている者達は恥ずかしそうに頬をかいたり、自慢気に鼻を鳴らしたりしていて、少なくともうるさくて悪印象を与えている、というわけではなさそうだ。

 

「落ち着けってヤマト。ほら、もう直ぐ始まるぞ」

 

 広場の中心の小上がりになっている部分に数人のプレイヤーが集まり、周囲のプレイヤーもそれを見て次第に静かになり、意識をそちらに向けていた。

 ヤマトも口をつぐみ周囲には一瞬の静寂が流れるが、それは中央にいる人物によってすぐさま破られる。

 

「会議を始めよう」

 

 何の、と言う必要は無い。二日前から迷宮区攻略に入り、昨日ボス部屋が見つかったこと、ボスの情報が得られたことはこの場にいる者にとっては周知の事実。

 そう、この会議は第28層フロアボスの討伐のために開かれている。

 

 前に立って情報を伝えるのは発見したパーティのリーダー、《ドラゴン・ナイツ》のギルマスのリンドだ。初のボス部屋発見だったためかやや自慢気で、声も生き生きとしているように聞こえる。

 

「ボスの名前は《ザ・ブレードパニッシャー》。この層の岩山に出てくる蟹《ヘヴィクラブ》を8メートルぐらいの大きさにして、鋏と脚が全て剣になったような見た目だ──」

 

 滔々と語られるボスの情報はあくまでも確認程度。ここにいるプレイヤーは既にボス情報の載った『アルゴの攻略本』を読んでおり、今のところ分かっているアルゴリズムと特徴は把握している。しかしそれでも命がかかった大きな戦いを前に、この確認が怠られてはならない。

 

 取り巻きのヘヴィクラブは時間湧きはせず、

 ゲージが削れるごとに一定の数が湧く。ヘヴィクラブは全身が固い殻で覆われているため、攻略法としては攻撃を弾き引っくり返して軟らかい腹を攻撃するのがセオリーだ。ちなみに打撃系の攻撃が最も効きやすいらしい。

 大型化したボスも基本的にその方針は変わらないらしく、鋏による振り下ろし攻撃をパリィや盾で受け切るとバランスを崩し、そこにもう一撃加えると10秒ほどひっくり返るとの事。

 また鋏の振り下ろし以外にも、泡吐き、片側の脚を軸に回転しもう片側の刃の付いた脚での攻撃にその他多数の攻撃があり、どうやら地味に攻撃パターンが多いらしい。予備動作を見極める重要性が大きい戦闘になりそうだ。

 

 耳に入ってくる情報と脳内の情報を照らし合わせること十数分後、軽い質疑などを挟みながら進んだボス戦の情報確認は恙無く終わる。隣のヤマトも特に疑問が無いようで、今は攻略本を手の中で弄んでいた。

 

「もう質問は無いようだから、これからパーティ毎に集まって貰って、各班から代表者を一人出してくれ。大まかな役の割り当てをする。ソロはあそこの柱を目安に集まってくれ」

 

 周りを見渡し一度区切っても大丈夫だと判断したようで、リンドの指示が飛びプレイヤーはぼちぼちと動き始める。

 ヤマトはソロプレイヤーが集まる場所へ向かうのか、後ろ向きで歩きながら俺達に手を振って去っていく。

 

「では風林火山の皆さん、行ってきますね。あ、クラインさんは後で紹介お願いしますねー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで、アスナさんに来てもらいましたー」

 

「お、お久しぶりです……」

 

『待て、思考が追いつかない』

 

 いえー、と拍手をするヤマトに頭痛を感じながら、少し前の時間に思考を戻す。

 

 ボス攻略会議が終わってヤマトを数人に紹介して別れた後、明日の戦闘に備えて昼間にアイテム補充等をしていると『晩御飯一緒に食べませんか?』とヤマトからメッセージが来た。特に都合の悪い事もなくパーティからの異議も無かったので、了承の旨を告げて夕方に集合場所に行くと、そこにはヤマトと何故かアスナさんが居た。

 

 よし、意味が分からん。

 

「えーと、ヤマトさん? とりあえずアスナさんがいる事にみんな理解が追いつかないので補足を」

 

 トーラスの言葉にうんうんと頷いて同意を示すと、アスナさんもヤマトに視線を向ける。どうやらアスナさんはヤマトが俺達には説明していたものだと思っていたらしい。

 

「あ、言うの忘れてました。こちら本日の蟹パーティーのシェフのアスナさんになります」

 

 さあもう何が何だか分からなくなった。蟹パーティー? シェフ? 一体ヤマトは何を言っている? そして結局アスナさんはなぜ?

 

「あーもう、ヤマトさんが話すとややこしくなるので私が話します。ごめんなさい、風林火山のみなさん」

 

「お嬢様の仰せの通りにー」

 

 ヤマトはカクカクとした動きで執事のような一礼をして、棒読みで恭しい言葉を言う。誰がどう見てもふざけている姿に俺達はため息をつき、アスナさんは無視を決め込んでいた。

 

 その後アスナさんが話してくれた事をまとめると、どうやらヤマトが狩りすぎた食材アイテムを消費するのに、料理スキル持ちのアスナさんに手を借りる事にしたらしい。しかし食材の量があまりにも多いため、アスナさんとヤマトの両名に面識のあり、明日に同じ戦線(ボス戦)で戦う俺達も呼ばれた、との事。

 

「昨日ボス情報入手してから、渓谷にいる『ロッククラブ』でずーっと練習とレベリングやってたら、なんか凄い量の《蟹肉》が溜まっちゃいまして。

 名前からして美味しそうなので売るのが躊躇っちゃって、料理スキル取ってる人いないかなーと思ってたら、ボス攻略で組む事になったアスナさんが料理スキル持ちだったのでお願いしました」

 

 ソロを集めた班では二人のコンビを三つ作って取り巻きの討伐に当たり、ヤマトとコンビを組むのがアスナさんだったらしい。つい先ほどまでは連携の確認のために二人でフィールドに戦闘練習に出ており、その際に仲良くなったとのこと。

 

「という事で喜べ野郎ども! 今日は蟹だ! さらに美少女のお手製料理だ!」

 

『お、おー?』

 

 レッツゴーと機嫌良さそうにスキップしながら移動し始めたヤマトのハイテンションに着いていけないまま、俺達はヤマトの後に着いて行った。

 

 

 

 

 

 その後、ヤマトが泊まっているというキッチン付きの十人以上入る大部屋に案内され、全員が楽な装備に切り替えて座り、アスナさんとヤマトはキッチンへ向かった。

 座っている間に次第にアスナさんの手料理という状況を理解して期待に胸を膨らませ、待つこと十数分。アスナさんお手製の見た目良し、香り良しな料理が出て来て、俺達の期待もピークに到達。

 

 全員が席に着き、いざ実食と料理に箸を伸ばし食事を口に運ぶ。

 

 沈黙が降りた。

 

「……美味しいですね」

 

 ヤマトが言った通り、味は間違いなく美味しい。

 だかしかし、俺達は困惑せざるを得ない。

 蟹肉がふんだんに使われた炒め物、天ぷらのような揚げ物、スープにもたっぷりと使われていて、素晴らしく美味しい。

 

 ただ一点、問題がある。

 それは、全員が思ったことだった。

 そしてそれは、全員が示し合わせたようにぽろっと口から零した一言に全てが凝縮されていた。

 

『……味、エビだ』

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみに。

 

「なあヤマト」

 

「はい、なんでしょうオブトラさん」

 

「お前、仮面着けてんのに食えるのか? その仮面口の部分空いてないだろ」

 

「はい、普通に食べれますよ? こうやって……」

 

「待て、お前どうやって食った」

 

「いやだからこう……」

 

「消えてるよね? なんか変な所から消えてるよね?」

 

「? なんの事ですか?」

 

「仮面の上から食ってるだろ。というか仮面で食い物消してるだろ」

 

「仮面で食べ物消せませんし、口も覆ってる仮面の上から物が食べられるわけないじゃないですか」

 

「いやそうだけど!」

 

「みなさんなんか変なこと言ってますよ?」

 

『変なのはお前だよ!』

 

 こんな一幕があったり無かったり。




・リュフィオール
プログレッシブで強化詐欺被害に会ってたプレイヤー。強化詐欺編後どうなったか全く知りません。詐欺にあって可哀想だったのでその後奮闘したことにして、攻略組に入ってもらいました。STR極振りっていない気がしたのでバ火力使いになっていただきました。ロマンありますね(雑)


30話ぐらいで終わらせようと大体の話数の割り振りをやったんですけど、原作SAO内の話でリズベット編だけ飛びそうな件。
あと月夜の黒猫団も壊滅していただくかどうかで閑話の内容が変わりそう。

次回はいつになるか未定。ついでに黒猫団の運命も未定。

最後に、お気に入り登録ありがとうございます。正直まだ殆どイベント始まってないのに10件以上もお気に入りしていただいて、嬉しいけど申し訳ない気持ちでいっぱいです。
次はボス戦やるつもりなので、どうかお付き合いくださいませ。
では失礼いたします。
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