早坂愛の奇妙な恋愛   作:qqw

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早坂愛の奇妙な恋愛2

その晩、空条邸

 

トゥルルルルル…ピッ

 

ジョセフ『スピードワゴン財団の調査によると、第二次世界大戦のころ、ワシが柱の男たちとの戦いを繰り広げた数年後、占領下のフランスから日本にとある石が持ち込まれたとの記録が見つかった』

 

承太郎「とある石だと?」

 

ジョセフ『アメリカとの戦争のために持ち込まれたそれは、宇宙から飛来してきた隕石の一部であった』

 

ジョセフ『そして、その石に近づくものはその多くが苦しんだ末に怪死し、ごく一部の選ばれた者にしか触れることが出来なかったという』

 

ジョセフ『結局、その石が戦争に使われることは無かったが、当時の日本の研究によると、怪死した者たちは苦しんでいる間、お互いの背後を指さして「亡霊じゃ」と訴えていたという』

 

承太郎「亡霊…か」

 

ジョセフ『そうじゃッ! それこそがまさにスタンドッ! 怪死した人々は、ちょうどホリィと同じようにスタンドに蝕まれ、死んだのじゃ』

 

ジョセフ『そして、スピードワゴン財団の調査によると、まだその「スタンドの石」は日本にあるッ! そして、さらに調査を進めると、戦後、アメリカの接収から逃れる為に……、承太郎、お前の通っている学園のどこかに隠されたという事がわかった』

 

承太郎「……」

 

ジョセフ『花京院は死んだ。アブドゥルもイギーも死んだ。そしてポルナレフは故郷のフランスで別の活動に乗り出しておるし、ワシもアメリカでやらねばならない事がある。……承太郎、今回はお前一人でそのスタンドの石を見つけ、回収するのじゃ』

 

ジョセフ『いいな?』ピッ

 

承太郎「……」

 

ーーーーーーーーー

 

翌日、放課後、廊下

 

キーンコーンカーンコーン

 

承太郎「…やれやれだぜ」

 

承太郎(やっと普通に授業を受けられると思ったらこれだぜ…。ともかく、ジジイの言っている『スタンドの石』とやらに関する情報を集めるとするか)

 

承太郎(この学院は古い。資料室でも漁れば何かしらの情報が見つかりそうだが…)スタスタ

 

かぐや「空条くん、少し待ってもらえますか」タッタッ

 

承太郎「……また俺に用があるってのか?」

 

かぐや「ええ、生徒会副会長としてあなたにお話が」

 

かぐや「詳しい話は後ほどしますから、わたしと一緒に生徒会室に来てくれませんか?」

 

承太郎「…なに?」

 

かぐや「そんなに警戒しないでくださいな。あなたにとっても悪い話ではありませんよ」

 

かぐや「きっとね」ニコリ

 

ーーーーーーーーーーー

 

生徒会室

 

石上(空気が…)

 

千花(お…重い…)

 

承太郎「それで、なんの用だ?」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

白銀「あ、ああ…」

 

白銀(こぇえええ……)

 

白銀(近くでこの威圧感を受けると実際の身長以上に大きく見えるな…)

 

かぐや「詳しい話はすべて会長が話してくれますよ。…ね、会長?」ニコッ

 

白銀「あ、ああ…」

 

白銀(怖い…けど、もしここで怖気づいたら…)

 

ホワンホワンホワン

 

かぐや「あら会長、空条くんの威圧感が大きいからって、子犬のようにビビってしまっているんですか?」

 

かぐや「わたし、会長はもっと堂々としてて、どんな相手にも立ち向かえる男性だと思ってましたのに…」

 

かぐや「……お情けないこと」ペッ

 

ホワンホワンホワン

 

白銀(それだけは駄目だ!)

 

白銀(ここでビビったら男が廃る。気合入れろ、俺)グッ

 

ミコ「会長、貧乏ゆすりみっともないです」

承太郎「話をしないなら帰らせてもらうぜ。こっちもヒマじゃないんでな」

白銀「い…いや待ってくれ」

白銀「空条…、お前、生徒会に興味はないか?」

承太郎「…なんだと?」ギロッ

白銀(だからこえーよその目! 人の一人や二人殺してきたのかよ!)

白銀「お…俺は、生徒会長としてお前を生徒会にスカウトしたい」

承太郎「……」

白銀「もちろん、拒否権はある。無理にとは言わないが…」

白銀(頼む! 断ってくれ!)

承太郎「生徒会だと? 悪いが興味がな…」

白銀(やった!)

承太郎「……いや、そうだな、引き受けよう」

白銀「」

かぐや「そうですか、よかった。あなたは確か海洋学に興味があるとか、生徒会にいたという実績はきっとその足掛かりになるでしょうね」

かぐや(もし断ればそれを餌にしようと思ってたけど、杞憂だったようね)

かぐや(……こんな性格の悪い手を使わなくて)

かぐや「本当に良かった。嬉しいです」クスッ

白銀(し…四宮…。そんなに空条が生徒会に入るのが嬉しいのか…)ズーン

承太郎(生徒会になんぞ興味はねぇが…。この学園には生徒の中では生徒会だけが入れる場所がいくつかある。こいつはむしろ、僥倖だったか)

承太郎(まあ、この話が無くとも勝手に動いていたがな)

ミコ「それじゃあ、決まりですね空条先輩」

ミコ「その学ラン脱いでください」

承太郎「……」ギロッ

石上「伊井野、生徒会室はホテルじゃないぞ」

ミコ「そういう意味じゃない!」

ミコ「生徒会に入ったということは、生徒の模範となる生活をしなきゃいけないということ。手始めにその改造学ランを脱いでここにある新品の学ランを着てください」

石上「そんなもんどこで…」

承太郎「イヤだね。生徒会に入るとは言ったが、風紀委員の指図を受けるつもりはねぇ」

ミコ「…むぐぐ」

承太郎「……」

 

ミコ「……」

千花(…うーんこの空気、昔のかぐや様と会長を思い出すなぁ…)

千花「……」ウーン

千花「はっ!」ピコーン!

千花「それでは、ゲームで決めましょう。ゲームの内容は空条くんが決めるとして、空条くんが勝てば服についてはひとまず何も言いません。その代わり、会長が勝てば即座に服装を改める。それでどうですか?」

白銀「なんで俺!?」

千花「生徒会長ですから」

千花「空条くんもそれでいいですか?」

 

承太郎「…良いだろう。だが、第三者の公正な審判を用意しな」

千花「公正な審判ですか…」ウーン

千花「…あ!」ピコーン!

 

――――――――

早坂「えーっとぉ、それじゃあ、空条くん対会長の表面張力ゲームをはじめまーっす!」

承太郎「ルールは単純だ。紅茶を並々と張ったカップの中にコインを自分の好きな枚数だけ交互に入れていき、表面張力が耐えきれずに紅茶を零した方の負け」

承太郎「これだけだ」

白銀「なんだ、簡単だな」

白銀(ふっ…バカめ。表面張力が不確定な要素だとでも思ってるのか? この学園一位の頭脳を持ってすれば、グラスの大きさとコインの体積から、コインを何枚入れれば紅茶が溢れるかを割り出すことなど容易い!)

白銀は、承太郎に勝てそうな要素を見つけると手のひらを返したように強気になっていたッ!

白銀「先攻後攻はどうする?」

承太郎「ゲームの内容を決めたのは俺だ。先攻はそっちに譲ろう」

白銀(この勝負、勝ったッ!)

白銀「空条、俺にも生徒会長としての立場がある。悪いがこのゲーム、本気で行かせてもらう」

承太郎「……」

承太郎「…グッド。元より俺もそのつもりだぜ」ドギュンッ!

早坂「……?」

白銀(なんだ? 空条の周りの空気に妙な気配が混じったような…)

早坂「えっとぉ、それではまずは会長からっ。コインを入れてください!」

白銀(まあいい。計算通りにやるだけだ)

白銀「俺はまず、三枚入れよう」チャラ

千花「一気に三枚!」

白銀「静かにしてくれ藤原書記。振動で水面に波が立つ」シィー

 体がテーブルに触れないように気をつけながら、重ねた三枚のコインをカップの水面につける白銀。

白銀(俺の計算では溢れずにはいるのはせいぜい4、5枚程度。保険のために三枚だけにしておくが、初手で一気に追い詰める!)

 ソォー……チャリン

早坂「セーフ!」

 

白銀「……」フッ

 

白銀(どうだ四宮! 俺に惚れ直しただろう!)チラッ

 

かぐや「……」ケイタイポチポチ

 

白銀(ってあれ興味なし!?)

 

かぐや(空条くんを引き入れた後はもう割りとなんでもいいんですよね…)

 

早坂(会長、哀れだなぁ…)

早坂「続いて空条くん、何枚入れますか!?」

 

承太郎「……」

 

承太郎「俺も三枚入れよう」

 

白銀「……」ポーカーフェイス

 

白銀(フハハハハハハハ馬鹿め! ムキになって張り合っているのか? そんなに入れたら確実に溢れるぞ)

 

承太郎「……」ドッドッドッドッドッド

 

白銀「……」ニヤッ

 

 ソォー……、チャリン!

 

白銀「なに!?」

 

白銀「まさか、溢れないだと!?」

 

承太郎「……」

 

白銀「俺の計算では余裕であふれているはず…、早坂は何も見ていないのか?」

 

早坂「……」ジィー

 

承太郎「……」

 

早坂「うん、なにかイカサマをしている様子はなかったよ」

 

承太郎「……」ジィ…

 

承太郎「さあ、次はテメェの番だぜ白銀。早くコインを入れな」

 

承太郎「それとも、あと一枚でも入れたら溢れちまうって悟っちまったかな?」

 

白銀「……」タラー

 

白銀(空条承太郎…。見た目以上に侮れない奴だ)

 

白銀(こいつは何か俺でもわからない、とてつもない『何か』を持っている。そんな気がする…)

白銀(だが俺も、このまま負けるわけにはいかないんだ!)

 

早坂「そっれじゃー続いて会長! コインを入れてぇ!」

 

白銀「やれやれ…もう入れられるのは一枚だけかな」

 

白銀、ここで決死の一計を案じる。

 

白銀(空条から見てコインの死角になるようにして小さなティッシュの欠片を持ち、それを水面につけて紅茶を吸い取らせる! もちろん、早坂からも見えないようにして。これで一枚弱分くらいは稼げるはずだ…)

 

白銀(後は自分の運に任せるっ!)

 

白銀「……」ドドドド

 

承太郎「……」

 

早坂「……」

 

 ……チャポン

 

白銀「…は、入ったっ! 勝った!」

 

白銀は思わずガッツポーズをした。

 

 しかしっ!

 

承太郎「手段を選ばないというテメェの覚悟には敬意を表しよう」

 

承太郎「…だが悪いな。俺もこのファッションにはこだわりがあるんだ」バァーーンッ!

 

 っ! ……チャポン

 

白銀「そ…そんな…」

 

歓喜から一転、絶望的な顔になる白銀。

 

承太郎の入れた一枚のコインは、紅茶を一滴もこぼしていない。

 

白銀「…俺の負けだ」ガクッ

 

 白銀は、敗北を確信した。

 

白銀(空条は絶対に何かイカサマをしている。だが、その正体を見抜けなければそれを指摘することはできない…)

 

白銀「完敗だよ」

 

―――――――――

 

ミコ「これでは本末転倒じゃないですか! 会長のおたんこなす!」

白銀「す…すまん」

かぐや「まあまあ伊井野さん。会長も頑張ったんですから」

 

かぐや「それに、『服装を正さない』という約束に期限はありません。また明日からにでもゆっくり彼を更生させていけばいいのです」ボソッ

ミコ「はっ! 確かに」

白銀「ともあれ、生徒会へようこそ、空条。俺たちはお前を歓迎するよ」

 

白銀「空条には風紀管理部部長として、風紀委員でもある伊井野と一緒に生徒たちの風紀の取り締まりをしてほしい」

 

承太郎「…良いだろう。このファッションを変えるつもりはないがな」

 

白銀「伊井野も会計監査と兼任になってしまうが、それでもいいか?」

 

ミコ「はい、もともと風紀委員と掛け持ちでしたし、仕事内容にはそこまで変化はありませんから」

 

白銀「良かった。…だが今日はもう遅い。軽く空条の歓迎会をして、今日の生徒会の活動は終わりにしよう」

 

かぐや「それでは、もう一度紅茶を淹れますね」

 

ミコ「あ、手伝います!」

 

白銀(よし! 風紀管理部は学園中を走り回る役職。これで四宮と空条を遠ざけれるだろう)

 

千花「せっかくだから早坂さんもお茶していってください!」

 

早坂「まじ~?」

 

早坂「あ~でもごめーん。わたしこれからバイトあるんだぁ」

 

千花「そうですか~…それじゃあ残念です」

 

早坂「まじごめんねぇ。じゃ、急ぐから、まったね~!」ガチャタッタッタッタ

 

承太郎「……」

 

―――――――――――

 

その晩 四宮邸

 

かぐや「今日はわたしとあなたのことが会長にばれるんじゃないかと少しひやひやしたわ」

 

早坂「…対象Fには困ったものです」

 

かぐや「あなたも、適当な理由をつけて断ればよかったでしょう」

 

早坂「…申し訳ございません」

 

かぐや「……まあ、いいわ。ところで、今日のゲーム、空条くんは何をしたのかしら」

 

かぐや「あれだけの枚数のコインを入れたらどう考えても零れていたはず…。審判をしていた早坂の目から見ても、本当になにもわからなかったの?」

 

早坂「……」

 

早坂「…はい。彼に怪しい動きは何もありませんでした」

 

かぐや「…そう」

 

かぐや「ふあ…。そろそろ寝るわ。おやすみ、早坂」

 

早坂「はい、おやすみなさいませ、かぐやさ…っ」フラッ

 

 その時、がくんと膝を折って体勢を崩す早坂。頭に手を当てる彼女の姿に、かぐやは即座にベッドから飛び出して彼女の元に駆け寄った。

 

かぐや「ちょっとっ。大丈夫…?」

 

早坂「…は、はい。すみません、すこし立ち眩みが…」

 

かぐや「…明日、学校休む…?」

 

早坂「…いえ、大丈夫です。この程度…大したことではありません」

 

かぐや「早坂…」

 

早坂「失礼いたしました。それではかぐや様、おやすみなさいませ」

 

かぐや「早坂。……本当に、無理はしないで」

 

 部屋を出ていこうとする早坂の背中に、かぐやはそう呼びかけた。

 

早坂「…はい」バタンッ

 

早坂(頭が痛い…。寒気もする…。でも仕事は休めない…。休んだらきっと…わたしは嫌われてしまう)

 

早坂(視界も少しかすむな…。…そうか、きっと体調が悪いせいなんだ)

 

早坂(今日の表面張力ゲームの時、空条くんの体の後ろに、妙な人影のようなものが見えた気がしたのは)

 

早坂(だからあれはきっと…。わたしの見間違い)

 

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