とりあえず第1話は5000字で
蘭陵王が主人公ですが本当は項羽狙いで来たのはここだけの話
「アイドルに興味はありませんか?」
「……は?」
今思えばこの時の一言が自分の運命を変えたのかもしれない
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少年は女性と疑われるような大層美しい顔をしてしていた
少年はその顔を親からの恵みだと理解し、感謝しながら日々を過ごしていた
両親はそれを笑いながら受け入れ、日々を過ごしていた
少年が原因で喧嘩が起きた
両親は耳を疑った
幸いにも少年が問題行動を起こしたわけでなく、少年をめぐっての喧嘩だったようで少年には罰は言い渡されなかった
ただ、これが少年の暗い過去の始まりだった
小中学校では嫉妬と好意に挟まれ、そこから来る人間関係の悪化に巻き込まれ、人を避けて過ごし、友と呼べる人間は裂け目の向こう側だった
高校は地元を離れ、火傷痕がひどいと偽り仮面をつけて顔を隠して過ごすことにした
仮面のため最初は距離があったクラスメイトとも少しの時が経てば、普通に過ごす分には問題ない程度の関係にはなった
そんな日々の中事件は起きた
「なあ、高長の素顔ってどうなってるんだ?」
背筋に冷たい何かが流れた
「だから火傷の痕がひどいと前に」
「大丈夫だってそういうの慣れてるから」
「い、いや、だから」
「いいから」
仮面に触れたその手を、拒んだ
「すまない。時が来たらちゃんと顔を見せる……」
「そうか。約束だぞ」
「ああ」
その優しさが、反転するのを恐れた自分は情けないと頭では理解しても心が受け付けなかった
「(気まずかった)」
時刻はすでに放課後になっており高長こと高長陵はゆっくりとだが自宅へ向けて歩いている
放課後とはいっても学校自体は少し早く終わり、季節が春ということもあり、まだ明るく人通りも多い
いつも使っている駅の近くに行くと何やら人だかりができていて遠目にだが中心には女子高生と思わしき少女とランドセルを背負っている小学生が泣きながらしゃがんでいた。その足元にはロボットと思しき物体が落ちていてざっと見た感じ泣いてるということは壊れたと考えられる
女子高生は一目で美人だとわかるが多少だが目つきがきつい
だが
「それだけで彼女が犯人ではなかろうに」
見かけたからには放っておけない。他人との距離は気にするくせに、どこかで他人と触れ合えるという自分の望みが叶うことを望んでる
「(まるで、ヤマアラシのジレンマみたいだな)失礼」
「ん?ああ、陵くんか。なんだい?」
「その子たぶん何もやってませんよ」
「どうしてだい?」
「何かやった人間がのうのうとその場に残ると思いますか?それに自分の仮面みたいに周りからの印象なんてほんの些細なことで大きく湾曲しますし」
「陵くんにそう言われると説得力が違うなぁ。ねえ、ぼく何があったんだい?」
なぜ少年が泣いていたかといえばおもちゃのねじを落としてしまい、踏まないように女子高生に止まってもらっていたという何とも言い難い真実だった
「助かったよ陵くん。誤解で女の子を連れてきてしまうとこだった」
「いいんですよ」
そう言うと駅の方へと向きを変え歩き始める
「じゃ、また何かあったらよろしくお願いします」
「ああ。陵くんも学校生活頑張ってね」
数歩歩いた時悲鳴が上がり、首を動かし視線を後ろにむける
何故か?ナイフを持った男が今自分をめがけて向かってきているからだ。勿論そんなことされる覚えもないし、した記憶もない。こっちはヤマアラシだぞ?
「ま、いっか」
ナイフが振るわれるより先に、カウンターのように男の顎先に強烈な上段蹴りを叩き込むと男は少しふらつくとそのまま地面に倒れ込んだ
「あとは任せました」
「勘弁してくれ……」
自分もあの女子高生もあの警察官も今日は厄日だな。
次の日も比較的早く学校が終わり昨日と同じように帰ろうとしたとき、不意に後ろから声をかけられる
「あの」
「はい?」
「アイドルに興味はありませんか?」
「……は?」
「自分こういう者でして」
「346プロダクションアイドル部門プロデューサーねぇ……」
「はい。どうでしょうか」
「どうでしょうかって言われても。俺、男ですよ?」
「だからです。新企画のシンデレラプロジェクトと同時進行で彼女たちの王子様になりうる人材を探していまして」
「だからってなぜ俺を?」
「笑顔です」
「……は?」
は?この人は何を言っているのだ?笑顔?自分が笑顔など
「あの時見てたんですか」
「はい。何事かと目に入りましたので」
「笑顔だけでアイドルになれるものなのですか」
「もちろん、笑顔だけでなくあの時彼女を救ったこと、暴漢を無力化したこともです。前者は優しさ、後者は強さです」
「だからってこんな仮面をつけた自分に何の価値が」
「より多くの人たちに笑顔になってもらいたい。あなたにはそれができる力がある。それほどの価値がある」
「自分がいるとお姫様たちに迷惑をかけてしまいますよ」
王子なんかにはほど遠い。過去の出来事からは簡単には抜け出せない
「(怖いだけなんだ。自分が知る人が自分の知らない誰かになることが。あの時から、今もずっと)すみません。この後用事がありまして」
嘘だ。そんなのない
「そ、そうでしたか。こちらこそ、引き留めてすみませんでした」
眩しい彼から逃げるように駅に入り込んだ。これが正しいのになんで辛いんだろう
「あの、すみません」
「はい?」
「この間の暴漢を倒した彼のことなんですが」
「お知り合い…ですか?」
「自分こういう者でして」
「プロデューサー。もしかして、彼をスカウトするつもりで?」
「はい。できればその、彼があの仮面をつけている理由を教えていただければと。知り合いの様でしたので」
「ああ、気になりますものね」
「はい。自分としてはすぐにでもプロジェクトに参加して欲しいぐらいなのですが。どうにもいい返事がもらえるような雰囲気ではないので」
「彼のあれね、昔の火傷痕を隠すためだってさ」
「!」
「2年前はびっくりしましたよ不審者がいるって言われて駆けつけたら仮面をつけた高校生なんですから。今ではここの駅を使う人の間では少し有名みたくなってますけど」
「火傷…そんな理由が…」
「ああ、でも」
「何か他にも?」
「彼をよく見るとそれっぽい痕らしき痕はないし、少し辛そうな顔をするんですよ」
「……ありがとうございました。あとはこちらで頑張ってみます」
「頑張ってください。彼の本当の部分を見てみたい自分もいますから」
「お疲れ様ですプロデューサー」
「お疲れ様です千川さん」
「調子はどうですか」
「まずまず、としか言えません」
「シンデレラの子たちはそろってきたんですけど、やっぱり王子様ですか」
「はい。素質としては全く問題ないのですが」
「何か問題が?」
「こちらとしては受けていただきたいのですが、彼自身の問題と言いますか。彼、仮面をつけて生活してるんです」
「仮面を?」
「火傷の痕を隠すためと本人は言っていますが、それらしい痕がみられないので、やはり彼自身に何か問題があるのかと」
駅に来る時間をずらしてからはあのプロデューサーとは顔を合わせてはいない
「……少し遠回りして帰るか」
街を歩くにしても、改めてよく見ながら歩くと今まで知らなかったものが見えてくるというのは何度味わってもよいものだ、そんなことを考えながら歩いていると
「城?」
城のような玄関口に大きなビル。会社に見えにくいそれを見ていると背中から誰かの重みを感じる。何かと思い振り返ると少女たちが申し訳なさそうにこちらを見ていた
「ご、ごめんなさい!後姿が知り合いと似ていたのでつい……」
「は、はぁ。制服だったからよほどのことがない限り気がつくと思うんだけど」
「ご、ごめんなさい!」
「いいって。怪我もないし」
そんな時会社の方から知った声が耳に入る
「りょ、陵さん!?」
「346のプロデューサー…じゃあ此処って346プロダクションか……」
向きを変えて帰ろうと歩き出そうとすると、やはりというか、声をかけられる
「ま、待ってください!話をさせてください!」
「ぷ、プロデューサー?」
今この場から逃げるのは容易い。だが本当にそれが正しいのか?
「俺を手に入れて何の得がある?」
自分でも驚くぐらいの拒絶の声を発する。女の子たちにいたっては怖がってるのか無意識だろうか自分から距離をとった
「もちろん、得はあります。あなたに我々の王子になってもらい、我々のシンデレラを導き、それを見た人たちを笑顔にする。そして、私はあなたの中の闇を消し去りたいと思っています!」
「俺の……闇?」
「あなたの仮面のことです」
「呪われたこの貌を晒せと」
「晒すのではなく、魅せるんです。あなたの、あなただけのやり方で」
「とりあえず言うが、周りの迷惑だ」
「……」
「話は中で聞きます」
「!ありがとうございます!」
なんでかは知らないが、女の子たちも自分とプロデューサーのあとについてくる
「この中でお待ちください」
「わかりました」
数分経っただろうか、数名の女の子とともにプロデューサーは部屋に戻ってきた、先ほどの女の子たちもいる。もちろんその間仮面は外してない
「お待たせしました高長さん。彼女たちがシンデレラプロジェクトのメンバーになります。そしてみなさん、彼が同時進行のプロジェクトの王子様の第一候補になります」
「第一候補?それ、今初めて聞きましたよ」
「今初めて言いましたから」
「それもそうか。ん?そこの黒髪の、あの時の女子高生か」
「あの時はありがとうございました」
「どういたしまして。にしても、君もアイドル、ね」
深呼吸してから言葉を発する
「これ何でつけてるかわかる?」
数名は首を振りわからない
「怪我でも隠してるの?」
「これはね火傷痕を隠してるんだ」
驚くように画面を見るのがわかるだからこそ
「嘘だよ。火傷の痕なんてない。それどころか傷一つない」
「じゃあなんで仮面つけてるの?」
「それは僕の貌が呪われてるからだよ」
「呪い?」
「そう、僕の貌を見た人間は人間関係が悪化して元に戻らなくなる。そんな呪いさ。小中とそんなクラスメイトを見てきた。だから、誰も傷つかないようにこの仮面をつけることにした」
「ですがそれでも、やっていただきたい。このままだとあなたが報われない」
「あなたもしつこい人ですね」
「ええ、わかってます」
「……いいですよ。アイドル、なっても」
「本当ですか!」
「ただ条件があります」
「なんでしょうか」
「宣材写真等の人目に触れるものにはこの仮面をつけたままのものをお願いします」
「にゃ、にゃにを言って」
「それからもう一つ」
人差し指を立て1を表しながら続ける
「本格的にデビューが決まったらこの仮面は外します」
「……」
「その時にはもう、これはいらないと思いますから」
仮面を撫でゆっくりと視線を外し、少ししてからまたプロデューサーを見る
「どうです?こっちとしては譲歩したつもりなのですが。仮面の件さえ飲んでいただければ僕は参加しますよ」
「わかりました。話し合って理解を得られるよう最善を尽くします」
その日からの彼の動きはすさまじかった。数回の会議で承認を得ると、すぐに連絡をしてきた。写真も撮り、ホームページのメンバー欄に名前と写真を載せられることとなった。もちろん、両親にこのことは話してあり、なぜか嬉しそうな声だった
当然このことは学校でも話題になったし、学校の方にも多少無理を言ってバイクでの登校を認めてもらった。免許はきちんと取ってあるぞ、中3の終わりごろから教習所に通い高1の時に普通二輪免許を取得した。車種はCBR400Rのグランプリレッドで父親のお古なのかはすごく怪しいが、すごい無理矢理な感じだが受け取った
仮面をつけたバイク乗り。いや冗談だ。さすがにバイクに乗るときは仮面を外して下に着けてた薄手のフェイスマスクにヘルメットだ
プロジェクトのメンバーもそろい、各々ゆっくりとだが活動を開始した。ただまあ、やはりというか仮面をつけた人物を使いたいというもの好きはいない
「陵さんにお仕事の指名が来ました」
嘘だろ
「な、何かの冗談じゃ」
「スポーツ番組とのことです」
「おそらくPR用に隠し撮りした陵さんの動画を見たのだと思われます」
「あれですか」
「はい。ただ、駅での事件の動画も拡散されてるのでそれもあるかと」
「……仕事の件は了解です。打合せ等は」
「それは後程連絡します」
「わかりました」
「一応アイドルだけど、最初の仕事がスポーツね。ま、いいか」
駐輪場に到着するとバイクの一通りの手順を済ませ、周囲を確認して家へ向けて発進する
久しぶりの夜の空気はとても気持ちがよかった
正直言ってこれヒロインポジが誰になるのか自分ですら想像できないんですが……