GATE 枢軸国軍 異世界にて、斯く戦えり   作:スパイス

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 アニメ版『GATE』を見返して、思わず書きたくなった作品です。
 続くかどうかは分かりませんが、他の作品との兼ね合いを考えつつ、書いていきたいと思っています。
 よろしくお願いします!!


プロローグ 1946年5月

 1946年5月8日 午前6時

 ドイツ ベルリン

 

 

 

「あれからもう5年か……」

 

 ベルリン中心部にあるブランデンブルク門――その向こうにある青く透き通った建造物を見ながら、男はそう呟いた。

 ブランデンブルク門よりも遥かに大きい「それ」が、朝日を受けてキラキラと輝きつつそびえ立っている光景は、ベルリン市民にとって今や日常風景となっており、市民はそれを『トーア(門)』と呼んで、ベルリンの新しい象徴として受け入れている。

 今日は5年前の『ベルリン攻防戦』における犠牲者追悼式典を行うということもあってか、早朝にも関わらず多くの人々が「6月17日通り」に詰めかけていた。

 ほんの一年前であれば、この大通りには数多くの鉤十字――ナチスの象徴であるハーケンクロイツの旗がいくつも掲げられていたが、今は一枚も掲げられていない。

 それもそのはずだ、と男は思う。

 1945年に決行された反ナチクーデターの成功と、それに伴う連合国側との講和交渉成功により、ナチスとその関連組織はドイツの政権内部から一掃されたため、ハーケンクロイツを掲げることは今は禁止されているからだ。

 替わって現在翻っているのは黒赤金の三色旗――新生ドイツ連邦共和国の国旗だ。

 通りを歩いている人々の表情も戦時中と比べると随分明るくなり、活気に満ちているような気がする。

 また通りを行きかう人々の中には『向こう側の世界』から来たと思しき服装の人間や、どう見ても人間ではない種族――ワーウルフやキャットピープル等の獣人やエルフ、ドワーフなどの亜人――もちらほらと見受けられるが、彼らは市民たちに混じってお喋りしたり、或いは一緒に買い物を楽しんでいたりと、ナチス時代に比べて平和で自由な生活を楽しんでいるように感じられる。

 男がそれを見て微笑んでいると、隣にいた銀髪の少女が話しかけてきた。

 

「どうしたのハンス? 何か考え事?」

「いや、何でもないよ」

 

 ハンスと呼ばれた男はそう言って、銀髪の少女――というより既に女性といえる年齢だが――のレレイ・ラ・レレーナに向き直る。

 

「ただ……いろんなことがあったなあ、と思ってね……」

「確かにいろんなことがあった。私たちの世界にも、あなたたちの世界にも。でもそれがあったから、私は今ここにいる」

「そうだな」 

 

 レレイの言葉を聞きながら、ハンス・シュミット退役陸軍大尉はこの5年間を頭の中で思い返す。

 

 

 異世界に派兵された時の興奮と高揚感――

 異世界での初めての戦闘――

 同盟国である日本軍との炎龍討伐作戦。

 ゾルザル率いる帝国軍や抵抗組織、そして最悪の敵である「蟲獣」との激闘――

 連合国軍との死闘――

 それらの戦いにおける、数多くの戦友の死――

 そして、新たな戦友や仲間との出会い――

 

 

「本当に、いろんなことがあった……」

 

 しみじみと思い返していると、後ろから声が掛けられた。

 

「御身、遅れて参上してしまって申し訳ない。長く待ったか?」

「やあヤオ、いま来たばかりだから大丈夫だよ。君こそ迷わなかったかい?」

「いや、此の身はこっちには何度か来ていたからな。問題ない」

 

 声を掛けたダークエルフ――ヤオ・ロゥ・デュッシはそう言いながら、ハンスに歩み寄る。

 

「しっかしヤオも見違えたなぁ、特に着ているGS(国境警備隊)の軍服が似合っているよ。退役軍人の私とは大違いだ」

「か、からかうな……///」

 

 顔を赤くして照れ隠しをするヤオに、レレイは少しばかりむっとしたオーラを放つと、さり気なくハンスの手を取って歩き出す。

 

「早く行こうハンス。そろそろ式典が始まる」

「お、おいおい……そう引っ張るなよ」

 

 ハンスはレレイに引っ張られながら、ふと遠い異国に居る戦友を思い返した。

 

(そう言えば、イタミは今どうしているだろうか?)

 

__________

 

 

 同日 午後2時

 日本 東京 銀座

 

 

「うわぁ……人が多い……帰りてぇ……」

 

 ハンスの言う『イタミ』――伊丹耀司は、自身の『帰りたい』という気持ちに抗いつつため息をついた。

 今回日独合同で開催される『犠牲者追悼式典』には政府や軍のお偉方ばかりでなく、皇族の方々や各国の大使も参列する予定である。そのような場に自分だけ欠席というわけにはいかないが、伊丹はどうしても気が進まなかった。

 

「というか俺、本当に前で話をしなきゃダメですか?」

「当たり前だろう。皆君の話を聞きたがっているんだから」

 

 伊丹の言葉をバッサリと切り捨てたのは、かつていっしょに戦った戦友である柳田明だった。1945年の大戦の終結と共に陸軍を退役した伊丹とは異なり、今でも軍に残っている一人である。

 

「でも俺、もう民間人ですし……」

「ゴチャゴチャうるさいぞ。さっさと壇上に上がれ。今日の式典にはピニャ皇太女殿下も参列なさるし、それにロウリィさんやテュカさんだって来ているんだろ。彼女達に恥をかかせる気か?」

「了解です……」

 

 伊丹が観念したようにそう言うと、柳田は満足そうな表情をして式典出席者が座っている列に戻っていった。

 それを見送りつつ、ふと伊丹は思った。

 

(ドイツは今、朝の6時か……ハンスはどうしてるんだろうな?)

 

__________

 

 

 事の始まりは、五年前の1941年まで遡る――    




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