アナザー・アクターズ   作:やーなん

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名作フリーゲーム『ざくざくアクターズ』の二次創作です。


一章 ハグレ王国編
1.ある一人のハグレの男


 この世界は、召喚された物が溢れていた。

 

 昔、と言っても十年経つか経たないかぐらい前に、異世界から物や人を呼び込む召喚と言う技術が出来上がった。

 この画期的な技術に、人々は浮かれ、湧いた。

 

 この世界とは全く別の発展を遂げた技術や魔法で作られた物や、人間種とは全く別の種族は大変物珍しかった。

 だから人々はテンプレじみたお話よろしく、別に魔王に人類の生存圏を脅かされたり、滅びの危機に陥ったりしたから勇者を異世界から呼ぼう、と言うわけでもなく、無遠慮に、無秩序に、そして無責任に多くの召喚を行った。

 

 この召喚と言う技術は確かに画期的であったが、ひとつ重大な欠点が存在していた。

 それは、召喚が一方的なものであることだった。

 

 彼らは呼び出されたら呼び出されっぱなしであり、二度と元の世界に戻れなくなってしまったのだ。

 当時の人々は、そんな召喚される側のことなど考えず、次から次へと新しい人や物を呼び込んだ。

 

 そんな価値観からして違う召喚人たちはこの世界に馴染めず、ヒトが溢れたことで仕事も無い。

 それどころか飽きたら別の新しいモノを呼び込むこの世界の住人は、呼びだした召喚人を人として扱わなかった。

 召喚人たちも最初は物珍しさから煽てられ、騒がれ、持ち上げられたが、興味が無くなればあっさりと捨てられ、自分たちが所詮パンダに過ぎないと悟ると我慢の限界を超えた一部の召喚人たちは反旗を翻した。

 彼らは最初こそ元の世界への諦めを胸にしまいこみ、何とかこの世界で暮らす努力をしてみたが、その不満が爆発したのだ。

 

 多くの市街地で暴動が起き、多くの人々が犠牲になった。

 やがて暴動を鎮圧する召喚を行う召喚士たちも召喚人たちの人権を訴え始め、彼らの側に付く者も出始めたのだからこの召喚人たちの暴動は大規模なモノへと発展した。

 それが、後にハグレ戦争と呼ばれる争いのあらましである。

 

 結局のところ、召喚という技術は拉致と置き引きに過ぎなかったと言うことだろう。

 

 俺はそのハグレ戦争の真っ只中に、召喚士協会側――――つまり暴徒と化した召喚人たちを鎮圧する側として異世界から呼ばれた口だった。

 戦力として呼び出された俺は、まあそのあたりの発端はともかくとして、お互いの戦いに巻き込まれた形だったがとりあえず傭兵として雇用された。

 当時はまあ、ほかの召喚人みたいに裏切られたら困るからだろう、それなりに吹っかけて儲けさせてもらったものだ。

 

 結果的に勝ち馬に乗った形の俺だったが、まあ……気分は爽快とはいかなかった。

 

「このクソ犬どもが!! ハグレの分際で俺たちに逆らいやがって!!」

 戦後処理の為に俺が捕えた暴徒たちを拘束していると、お行儀の悪いお味方が戦闘中の興奮のままに捕虜に暴行をし始めたのだ。

 

「やめて、やめて、痛いよ!!」

 その中には明らかに暴動に参加していないような子供まで居た。

 怪しい召喚人たちは手当たり次第捕まり、兵士や傭兵たちの暴力の捌け口となっていた。

 

「おい、止めろ。報酬が減るだろ」

 感情に訴えてもこの手の連中は通じないので、俺はそう言ってそいつを止めた。

 

「黙れ!! 俺はこいつらに弟を殺されたんだ、お前もハグレだからって、同情してんのか!!」

 しかし、その兵士は俺の言葉でむしろ逆上し、狂気に瞳をぎらつかせるだけだった。

 

「お前たちハグレがもう二度と俺たちに逆らえないように、こうしてやるよ」

「おい、止めろって」

 ついには大振りのナイフまで取り出したそいつを制止させようとしたが、俺は至近距離から思いっきりそいつに殴られて倒れちまったのだ。

 その直後だった、そいつが捕虜の獣人の子供の耳を削ぎ落したのは。

 

 獣人の少年の絶叫が、痛みでもだえ苦しむ声が、そしてこれが召喚人――――ハグレと蔑まれる俺たちの扱いだった。

 

 まるでハンティングの証のようにハグレを扱う狂気は伝搬し、このような耳狩りは多く行われたと聞いている。

 ああ、俺? もちろんそのクソ野郎は半殺しにしたよ。どういうわけかハグレってのはこの世界の住人より強いからな。

 種族にもよるが、少なくとも同じ体格と同じ性別と同じ年齢で喧嘩したら、ほぼ確実にハグレが勝つだろう。

 

 元の世界じゃ大して強い部類じゃなかった俺がそんな連中と戦うことになったんだから毎日冷や汗ものだったが、何とかそんな強靭な種族たちと渡り合っていけたんだから自分でもすごいと思う。

 

 

 

 §§§

 

 

 それから年月が経ち、ハグレ戦争後のハグレは一応人権が認められることとなった。

 勿論それは法律上の話で、この世界の住人とハグレ達の摩擦は明らかだった。

 ハグレはヒトにはなったが、国民には成れなかったのだから。

 

 自分たちで多くの流民を呼んでおきながら無責任だと思うが、世の中そんなものだ。

 ハグレの召喚には大幅な制限が掛けられたと言うが、ハグレ戦争で時代の絶頂にいた召喚士たちの地位は失墜し、召喚士の総本山たる協会から離れた者も多い。

 そうした召喚士くずれが今もどこかでハグレを違法に召喚しているとも限らない。

 

 時代はまだ、混迷を抜け出せないでいた。

 そんな中で俺はと言うと……。

 

 

「マスター、もう一杯くれ!!」

「マルースさん、もう五杯目ですよ」

 俺は辺境にある村の酒場で飲んだくれていた。

 

 勝ち馬に乗ったとはいえ、所詮は俺もハグレに過ぎない。

 前のハグレ戦争で儲けた金は、この世界に馴染むために使い切った。とっくの昔に底を付き、俺も他のハグレと同じようにこの世界の荒波に揉まれていた。

 今は昔と同じ傭兵稼業だが、正直儲からない。

 

 この世界の人間はハグレと言うだけで足元を見る。

 平気で使い捨てにされるし、囮にもされる。

 それが嫌で個人護衛専門の傭兵として売り出したのだが、今度は雇い主の要らない秘密を知って始末されかけた。

 当然、支払いなどされない。元より傭兵稼業など、二回に一度は料金未払いが普通だ。これはハグレであろうとなかろうと関係ない。

 

 仕事内容に難癖付けてくることなど日常茶飯事だ。

 傭兵に社会的信用などあろうはずもなく、雇い主は騒がれたって痛くも痒くもないのだ。

 

 そんな風に俺が飲んだくれていると、酒場には冒険者たちが集まり始めていた。

 もうそんな時間か、と考えてながら俺もそろそろ冒険者に鞍替えの時かと思い始めていた。

 

 何やら共通の話題が有るのか、柄の悪い冒険者たちは集まって盛り上がっているようだった。

 その姿を見て、こいつらも所詮ごろつきと変わらんか、と思い直した。

 

「マスター、金は置いていくぞ」

 俺は酒代をカウンターに置いた。

 何か言いたそうな酒場の主人の視線を感じながら酒場から立ち去った。

 

 酔い覚ましにその辺をぶらついていると、村の一角に村人相手に商売をしているガキが目に付いた。

 興味を引かれた俺は、ふらふらとそちらに近づいて行った。

 

「さあさあ皆さん、お立合いお立合い。

 わたくし今はハグレの身の上ですが、前の世界では神のしもべをしておりまして、この度幸運なる皆様にご利益ある守護石を格安でお譲りしようとする次第であります!!」

 そのガキは確かにハグレらしい、この世界の人間種とは違う姿をしていた。

 両腕は猛禽類の翼であり、天使のような白いワンピースを着た少女だった。

 ただ、その姿はどう見ても天使と言うよりハーピーのそれだった。それに良く見れば頭上のエンジェルハイロゥも張りぼてだ。

 

 ハーピーはハグレでも珍しい種族であり、無知な村人や学の無い冒険者などは天使と言われれば信じてしまうかもしれなかった。このガキも弁舌が巧みなのもそれを後押ししていた。

 無論、それを指摘してやるほど俺はお人好しでもなかったが。

 

 彼女がそれっぽい石ころを1500ゴールドというバカみたいな金額で売りさばいているのを遠目に見ながら、客が捌けてハーピーのガキが片付けを始めた頃、俺は興味本位で近づいてみた。

 

「なあ、お前」

 俺が話しかけると、ハーピーのガキはびくりと震えてこちらを見た。

 どうやら、そろそろ詐欺が発覚する頃とみて撤収しようとしたところを俺に見咎められたと思ったのかもしれない。

 

「はいはいなんでしょう、お客さんですか?

 お客さん見たところ冒険者? それともこの村の自警団とかだったりします?」

「いいや、ただのしがない傭兵だよ。

 ハーピーのガキが面白い見世物をしてるもんだから、ついつい見入ってたんだ」

 俺がそう皮肉ってやると、にこにこと笑っていたハーピーのガキは顔を顰めた。

 

「なーんだ、客じゃないのか。なら、さっさとあっち行った行った。

 こっちは忙しいんだからね」

「いや、だからお前さ」

 俺は使いにくそうな翼で商売道具を風呂敷に畳んでいるのを見ながら、疑問を投げかけた。

 

「そんな商売して、罪悪感とか無いの?」

「はぁ?」

 そのガキは、何を言ってるんだこいつ、という表情をこちらに向けた。

 

「いやね、俺もハグレの身の上だが真っ当に稼がせてもらっている身だ。

 お節介だと思うが、こういうの見ちまうと一言言ってやりたいと思うのが人情だろう?」

「おっさん、もしかして私に説教垂れるつもり?」

「おっさんって……いやまあ、そうなんだけどさ。

 それより、一晩付き合ってくれるんならお小遣いあげてもいいぜ?」

「まだ体を売るほど落ちぶれちゃいないつもりなんですけどねー」

 ガキの視線が警戒から敵意を帯び始めていた。

 

「そうか。まあハーピーは強靭な種族でもないし、魔物を狩って生計を立てられんだろうし、そういう商売も止む無しか。

 お前が何とも思わんのならそれでいいさ、痛い目を見るのはお前だしな」

 俺が一歩近づくと、そいつは一歩退いた。がめつい事に金の入った袋は抱えたままだったが。

 

「ほら、これで飯でも食え。ついでだからこいつを貰っとくぞ」

 俺は千ゴールドの硬貨を置いて風呂敷の中から石ころを拾い上げる。

 

「あのさ、おっさん」

 立ち去ろうとする俺に、なにを思ったのかガキが声を掛けてきた。

 

「あと500ゴールド足らないよ」

「うるせぇ!! どうせこんなのそこらへんで拾った石ころだろうが!!」

 せっかくキザっぽく立ち去ろうとしたのに、このガキは!!

 

「まあいいか、どうせそろそろ潮時だったんだ。

 こいつはありがたく貰っておいてやるよ」

 ガキが器用に素足で硬貨を弾いて売上金の中に入れるのを見て、俺はため息を吐いた。

 

「そう言えばさっき、柄の悪そうな冒険者どもがハーピーのガキに騙されたとかなんだとか酒場で騒いでたなぁ。まあ、健全な商売をしている天使様には関係ないか」

「そうそう、関係ない関係ないね」

 まだ酔いが抜けない俺は突然そんなことを言いたくなったので口にすると、ハーピーのガキはそう言ってさっさと両足で金と風呂敷を掴んで飛び去って行った。

 

「ああくそッ、遅かったか」

 その少しあと、彼女が飛び去った姿を見上げていると、柄の悪そうな二人組の冒険者が険しい表情でやってきた。

 

「兄貴、あいつてこてこ山の方に逃げやしたぜ」

「あの辺はあまり人が来ないからな、身を潜めるには好都合だろうからな」

 二人の冒険者は忌々しそうに舌打ちしてそう言った。

 

「その石、あんたも騙されたのか?」

「うん? ああそうだな」

「俺たちがあんたの分まであのクソガキをとっちめて来てやんよ!!」

 そう息巻いて、二人組の冒険者たちはあのガキを追っててこてこ山の方に向かって行った。

 

「…………そこまでしてやる義理も無いか」

 俺もそのてこてこ山の方に足を引っ張られかけたが、思い直して足を踏みしめた。

 

「問題は、俺の所持金がいよいよヤバイってことだな」

 さて、真面目な俺様はどう稼ごうかねぇ?

 

 とりあえず俺は、この辺に居るたかれそう女の名前を思い返すことから始めた。

 

 

 

「やべぇ、マジでもうカネがねぇ」

 それからしばらく各地の女たちのところを転々とした俺だったのだが、女どもの対応ときたら冷たいもんだった。

 

「ああ、夜風が冷たいぜ……。もう宿に泊まるカネも惜しい」

 カネもなければ仕事も無い。物乞いになるのだけは嫌だなぁと月夜を見上げる。

 

「うん?」

 闇夜の屋根の上に、何かが蠢くのを俺は見た。

 もう時刻は真夜中だ。泥棒が入り込むには打ってつけの時間だろう。

 そう思って近づくと、自分の考えが思い違いだと気付いた。

 

「おッ、サンタさんじゃーん!! おーい!!」

 俺が屋根の上の煙突に入り込もうとしているサンタガールに手を振ると、ちょっとした顔見知りである彼女は手を振って来てくれた。

 まったく、クリスマスでもないのに仕事熱心な事である。

 

 そんな彼女はふと何か思い当たったのか、プレゼント袋の中に手を突っこむと何かをこちらに向けてシュッと手裏剣のように投げてきた。

 

「よっと、……手紙?」

 彼女が投げ渡してきたのは一通の封筒だった。

 中から手紙を取り出してみると、差出人を見て俺は驚いた。その内容にも。

 そして納得した。俺と連絡を取るには、このような手段を用いるしかないだろうとも。

 

「行ってみるか、ハグレの国とやらに」

 俺は、差出人のあの方に誘われるままにもう一度辺境に足を踏み入れることとなった。

 

 

 

 




どうも、あとがきを読んでくださる皆様。やーなんです。

この作品を書くにあたり設定資料集を購入したのですが、付属の公式小説のクオリティがヤバいのでこんな拙い小説を世に出してしまっていいのか? と思いましたが、創作意欲を抑えきれませんでした。
昔途中で投げてた原作フリゲーを最近100時間ほどプレイし、深い感銘を受け筆を執った次第であります。作者に絵心が有ったらそっちで支援できたんですが。

某渋の方ではざくアクの二次小説は結構見かけ、名作と思えるのも幾つかあったのですが、こちらでは殆ど見かけなかったので、増えないかなぁ、と考えていた所。

「増えるさ、私が増やす。私はいつだってそうやって生きてきた」
と脳内の爆炎ピンクさんが言い、二話ぐらい書いてから投稿しようかなと思ったのですが、

「先手を取って一話を出す。それだけでいい」
と脳内のイケメンピンクさんが仰ったので、こうして機を待たず投稿いたしました。

今作はオリキャラのマルース君の視点でざくざくアクターズの世界を見て回り、独自の視点でストーリーを肉付け原作沿いの物語にしようと思っています。
最初こそ傍観者にすぎない彼ですが、あの騒がしい面々とそしてあの原作主人公デーリッチとの交流で原作の物語の合間に独自のエピソードや設定を挟んだりしたいと考えています。

そう言うわけで、作者の新作『アナザー・アクターズ』をよろしくお願いします。

この作品で期待している今後の話しの内容は?

  • オリジナル展開
  • 原作の綿密な描写
  • キャラ同士の掛け合い
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