アナザー・アクターズ   作:やーなん

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今回は新キャラの紹介を兼ねて彼女を中心。
次回については新たなアンケートをどうぞ。



EX.拠点内会話編

『拠点会話:女神様の価値観 』

 

 

 それは、あのヘンテ山での戦いから二日後のことだった。

 

 拠点の消灯時間がやって来た為、ローズマリーが灯りを消して回っている時のことだった。

 彼女は図書室で今話題のあの女神、ビルーダーが読書をしているのを見かけた。

 

「精が出ますね、ビルーダー様。

 ですがそろそろ消灯時間なのでお休みになっては?」

「この体が石像なのは知っているでしょう?

 食事も睡眠も入浴も必要無いのよ。勿論、灯りもね」

 絹のように白い髪と肌を持つ幼げな見た目をしているのに、それが石像を動かしているだけというのだからローズマリーも驚きである。

 

「じゃあ、その眼鏡も伊達なんですか?」

「知恵の女神してイメージは大事だもの」

 彼女は如何にも、と言った仕草でメガネのフレームをくいっとやって見せた。

 

「……だから熱心にこの世界の知識を吸収しているんですね」

「いつになるかはわからないけど、私の教団を設立していずれこの世界も統治して見せるわ。

 恐らくあなたが生きているうちにそれを見ることは無いでしょうけど」

 それは気の長いスパンの話だ、とローズマリーは思った。

 福ちゃんも神としての視点を持っていたが、彼女の視点は更に巨大だ。

 

「そして、意にそぐわぬ結果になれば滅ぼすのですか、この世界も」

「そうなるわね。残念な事だけど」

 相変わらず歯に衣着せぬ物言いに、ローズマリーは怒りすら湧かなかった。

 彼女の言葉は神話の出来事を語り聞かせているかのようで、まるで実感がわかないのだ。

 そしてきっと、その実感を持っているのはマルースただ一人だけなのだろう。

 

「楽園を創る、とのことでしたが今まで成功はしなかったのですか?」

「いくつか成功例は報告されているけど、幾つかという程度よ。そしていずれも二百年程度で崩壊しているわね。

 もっと試行回数を増やして、トライ&エラーで欠点を修正し次へと生かさないと」

「……気の遠くなるような話ですね」

「そうね。私たちも数えるのが馬鹿らしくなるくらいそれを繰り返したわ。

 この世界での、この国での経験が結果に反映されるといいのだけど」

「…………」

 ローズマリーはこの超然としている女神のことがよく分からなかった。

 だが不理解こそが恐怖を生むのを知っているので、彼女は会話が途切れてももう一度話しかけた。

 何より、自身の知識欲を満たす為に。

 

「どれだけ創造と破壊を繰り返したのかはわかりませんが、私たちの王国で得た経験がビルーダー様のお役に立つとは思えませんけれど……」

 ローズマリーは思い出す。マルースの時折語る自分の世界での常識との引き合いを。

 あれが彼女らの統治の最適化の結果なら、今更多種族の入り混じった非効率的な統治方法を模索する理由が分からなかった。

 

「それは実際にやってみなければわからないわ。

 世界によっては愚策が意外と嵌って長続きしたり、定石が三日も持たない時もあった。

 私が統治しにくいという理由で新たに降り立った世界を滅ぼすのも野蛮だし」

 それを聞いて、ローズマリーは少し安心した。

 彼女が武力で世界を滅ぼすのは、本当に最終手段なのだと理解したからだ。

 

「ビルーダー様から見て、ハグレ王国はどの程度存続すると思われますか?」

「あなたが過労死するなら50年、長く持っても150年程度かしら」

「い、意外と生々しい数字で反応に困るんですが!!」

「あなたもわかっているでしょう?

 ハグレだのなんだと言う差別意識や疎外感での団結も、長くは続かないって」

「それはまあ……」

 彼女に微笑まれて、ローズマリーは頬を掻いた。

 

 今でこそはハグレが迫害されているが、召喚魔法で生物の呼び出しが制限されている以上、将来的にハグレは減少傾向に落ち着くだろう。

 そして十年後、二十年後には世間に忘れ去られていくのだ。当事者たちを置き去りにして。

 

「もし、将来この国が最盛期を迎え、ハグレやその子孫が増長した時は私が責任を以ってこの国を終わらせてあげるわ」

「できればそう言う結果にならないように努力したいとは思いますけど……」

 デーリッチが居る間は大丈夫だと、ローズマリーは考えていた。

 だが彼女もまだ子供で、これからの成長次第でこの国はどのようにも転ぶのだ。

 

「私はあの子を気に入っているわよ。私の経験でも滅多に見ないタイプの君主だもの。

 幼い王は幾らでも居たけど、その殆どが傀儡に過ぎなかったから」

「では将来デーリッチが暴君となり、ビルーダー様が目に余ると判断したのならどうなさるのですか?」

「滅ぼすわよ。私は躊躇わないわ」

 女神ビルーダーは世間一般ではアルカイックスマイルと呼ばれる様な、まさに女神像の如く微笑んでそう答えた。

 

「なぜ、人は法によって裁かれるか分かるかしら?

 人間は他者を裁くのに耐えられないからよ。だから王は法を敷き、自身はその外側に居る。

 では法が正しいか否かの基準とは何か? ――それが私なのよ」

 人間が語れば傲慢に過ぎないそれを、幾星霜もの時を破壊と創造に費やした女神が超然とした態度で言うのだから説得力が違う。

 

「私の言葉が、私の思考が、全ての基準となるの。

 私の統治下では私こそが絶対であり、私こそが正気なのよ。

 だから破壊も創造も、私の責任で全て遂行されるわ。

 あなたも、いざとなったら私を頼りなさい」

 彼女のその言葉に、ローズマリーは息を呑む。

 彼女は分かっているのだ、いずれハグレ王国が大きくなるにつれ、明文化した法律が必要となる事に。

 だがもし、それまでに仲間やいずれ王国に参入する誰かが庇いきれない罪を犯した時、それを裁くのはローズマリーの判断となるだろうことを。

 その際に苦しむ必要は無いという、女神の愛だった。

 

「ビルーダー様の使命の偉大さと崇高さに、私はただただ感服するばかりです。ですが……」

 それはローズマリーの本心だった。

 彼女は彼女の価値基準であるとはいえ、人間に出来ない事を神として責任を以って実行している。

 しかし……。

 

「貴女の行動の結果、貴女に見放される人間が出るのが悲しいです」

「私は知恵を司る者よ。誰かに新技術を授け、技術の発展によってこれまで生計を立てていた人間が首を括るのなんて星の数ほど見てきた。

 公害によって世界が取り返しの付かないほど汚染されたり、生まれによって貧富の格差が生まれたりね。

 私は傲慢よ、自覚はあるわ。だからこそ、私は創るの。我が全知全能の及ばぬことなど無い、理想の楽園を」

 そう言って、彼女は読書に戻った。

 

「貴重なお話をありがとうございます。灯りはつけたままにしておきますね」

 返事は無く、ローズマリーは図書室を後にした。

 

「理想の楽園か、そんなの絵空事だって誰よりも分かってるだろうに……」

 そこまで言ってから、それは自分たちも同じかと彼女は苦笑を浮かべたのだった。

 

 

 

『拠点会話:女神さまのスタンス 』

 

 

「きゃッ」

「あッ、悪い雪乃ちゃん」

 マルースが廊下から現れた雪乃とぶつかった。

 しかしそれは両者が直前で気づけば回避できるものだった。

 

「なんだかあれ以来、マルースさんが上の空だよな」

「まあ、ビルーダー様にあんなことを言われちゃねぇ」

 そんな光景を見ていたニワカマッスルとアルフレッドが心配そうにそう言った。

 

「俺にはあの女神様の行いがどういうものなのかは分からねぇ。

 だからってもうちょっと言い方ってもんはなかったのかねぇ」

「僕も自分の世界の神様が目の前に現れて、デルフィナ様の魔王討伐は何の意味もありませんでした、なんて言われたらしばらく立ち直れないよなぁ」

 と、男二人は同情的だった。

 

「何とかしてやれないものかね。あの人には結構世話になってるし」

「うーん、じゃあこうするのはどうかな」

 そこでアルフレッドがニワカマッスルにある提案をした。

 彼もその提案に、それだ、と手を打ち、二人は他の協力者を募るのだった。

 

 

「あ、エステルさんだぜ」

「ビルーダー様とその信者たちもいるよ」

 二人が色々と手配したり許可を取って回っていると、拠点の前でビルーダーが信者たちに一人一人言葉を掛けていた。

 その光景をエステルは遠巻きで眺めている。

 

「エステルさん、何してるんです」

「ああ、二人とも。ちょっと考え事」

 ニワカマッスルが声を掛けると、エステルは視線だけを彼らに一度向けた。

 

「二人はさ、頭が今よりずっと良くなったらどうしたい?」

「えッ、頭が良くなったらですか?」

 その問いに、アルフレッドは驚いた。

 彼女はそう言うことを気にしなさそうだったからだ。

 

「あの連中、ビルーダー様に大分頭を良くしてもらったらしくでさ。

 試しに計算とかで勝負してみたんだけど、全員に完敗して今へこみ中なの」

「へぇ~、あの傭兵連中にもですかい?

 そいつはすげぇや」

 自分があまり賢くない事を自覚しているニワカマッスルはその御利益を超えた神の力に感嘆の意気を漏らした。

 

「私も勉強は得意じゃないけどさ、数日前まで無学だった傭兵にまで負けるって……。

 シノブや後輩が聞いたら笑われそうで……」

「でも、エステルさん、その割には彼らにあやかろうって感じじゃないよね」

「いやだって、あれ、ほとんど洗脳かマインドコントロールだぜ?」

 エステルが気だるげに顎をしゃくる方を二人は見ると、こんな光景があった。

 

「ビルーダー様!! 私は御身の素晴らしさを説いて回り、いずれこの世界に貴女様の齎す統治の下地を作り上げて御覧に入れます!!」

「ならば同時に善行をなさい。その過程で金銭を得ることを許します。

 そうして得た物を幾ばくか弱者救済に充てなさい」

「ビルーダー様ッ!! 私は愚かにも自分を切った召喚士協会を恨み、御身から得た叡智で報復を考えておりましたが、もはやそんなことどうでもいい!!

 貴女様から授かったこの叡智で人々の為に働き、それをもって御身の偉大さを示そうと思います!!」

「その心を忘れてはいけないわ。もしその志を忘れた時、あなたに与えた知恵は手のひらの水のように滑り落ちるでしょう。私はいつでもあなたを見ているわ」

「お、俺達傭兵一同はそれぞれ故郷に帰って、ビルーダー様に授かった知識を生かして親孝行したり村の発展の為に尽力したいと思ってます!!」

 

 

「……」

「…………」

 その熱狂的な光景に、二人も口を噤んだ。

 彼らの以前の人となりは知らないが、少し前まで見知らなかった女神をああも崇拝することに喜びを感じるようではなかっただろう。

 博愛と正義を説いているのに、傍から見ると薄ら寒く見えるのだ。

 

「あの人、ああやってこれから信者を増やすかと思うと、怖くてさ」

 恐怖。それは今一番二人が彼女に共感できる感情だった。

 

「心配しなくてもいいわよ。彼らは特別コースを自ら志願しただけだから。

 私の方から望まぬ者にああいった教育はまずしないわ」

 すると、召喚士くずれと傭兵たちを解散させたビルーダーが三人の元にやってきた。

 

「特別コース?」

「どんなことでもするから今よりずっと頭が良くなりたいって人向けの特別コース。

 大抵が鬱屈したコンプレックスを持ってたり、邪な考えで金儲けしたいって人たちに施すの。

 もっと切羽詰った人間にはもっと別の道を示すわね」

「まああんまり柄の良さそうな連中じゃなかったですけど……」

 それを聞いても三人の心境は複雑だった。

 

「私は努力を尊ぶ者よ。そしてどんな者にも公平にチャンスを与えるべきだと思っているわ。

 私は成功を約束はしないわ。これから彼らは今までの自らの行い故に苦労をするでしょう。知力が上がった分、余計にね」

「じゃあ私がもっと頭が良くなりたいって言ったらどうします?」

 エステルがそんなことを言うので、男二人はギョッとした。

 

「それ、本当に必要なの?」

 だが逆に、女神は彼女に問い返した。

 

「私は叡智の女神だからよく勘違いされるのだけど、我が真の恩恵は閃きよ。

 何かを成すための閃き、発想、工夫。知力が上がるのなんてその結果を得ようとする為の前提に過ぎないわ。

 現状では突破できない壁を、打ち破るきっかけを与えるに過ぎない。

 貴女にそれを必要としているとは思えないわ。貴女は目の前の壁を壊す術を既に心得ている」

「そう言われると何だか私がいつも無理やり壁をぶち破ってるように聞こえるなぁ」

「生き方なんて人それぞれよ。

 人は時折私の予想を超える方法で壁を壊すから、見ていて飽きないのよ」

 何はともあれ、彼女がありのままの人間を愛していることが分かりホッとする三人。

 

「ビルーダー様ぁ!!」

 その時である、拠点の玄関出入口からデーリッチが飛び出してきたのは。

 

「デーリッチの頭を良くしてくれでち!!

 頭が良くなれば、デーリッチが勉強せずに済むでち!!」

「なに言ってるんだこの子は!!」

 ビルーダーに縋り付くデーリッチを後からやってきたローズマリーが引きはがし、拠点内へと引きずっていく。

 

「ぷっふふ、あははは!!」

 そんな涙目で引きずられていくデーリッチを見て、ビルーダーは大笑いだった。

 

「すげぇなぁ、デーリッチのやつ」

「いやぁ、あれはただ単に後先考えてないだけだよ」

 これには男二人も苦笑い。

 

「ところで二人こそこんな所で何してるの? 暇なの?」

「えッ、あー、いや……」

 エステルにそんなことを問われたニワカマッスルは分かりやすくビルーダーの方を見て口籠った。

 

「なになに? 私を除け者にするつもり? 仲間でしょう、私達」

「マッスルさんったら……ええと、実は」

 結局男二人は彼女らにも何をするか話す羽目となった。

 

 

 

「マルースさん、ちょっと来て貰っていいですか?」

 拠点の団欒スペースで何するでもなく、ぼうっとしていた彼にアルフレッドが声を掛けた。

 

「うーん、……どうしたよ」

「ちょっと見て貰いたい物があるんです」

「ったく、なんだよ」

 彼は面倒そうにアルフレッドに付いて行く。

 二人は拠点の玄関を出て、裏手に回った。

 

「まったく、拠点の裏まで来てなんだ……!!」

 その先に有ったモノを見て、マルースは言葉を失った。

 拠点の裏にひっそりと立っているそれは、お墓だった。

 

 そして『終末に立ち向かいし勇気ある四英雄の魂、ここに眠る』と、そこに刻まれていた。

 

「あ、アルフレッド、あれは……」

「あの文字、ビルーダー様が刻んでくれたんだよ」

「本当か、本当なのか!!」

 マルースは震えた声でアルフレッドの肩を揺すり、そう叫んだ。

 

「うん。結局、マルースさんたちが神様に立ち向かったのは無駄に終わったかもしれないけど、こうして残る物はあったんだと、僕は思うよ」

「う、ううッ、ありがとう、ありがとうぅ」

 アルフレッドは泣き崩れる彼に、しばらくの間肩を貸すことにした。

 

 

 

「人間ってのは不思議な生き物でね、私が教えずとも死者を弔おうとするのよ」

「そうなんですか?」

 二人の様子を遠巻きに見ていた面々。

 その中でビルーダーの呟きに、予算を融通したローズマリーが応じた。

 

「お墓を建てるなんて費用的に負担になるし、建てる場所の問題もある。

 その結果得られるのは生者の納得だけ。墓と言う建造物そのものに、死者を慰撫する効果なんてないもの。

 だから私はそう言った文化を人々に授けない。それでも人間ってのは死者を弔い、形に残そうとする。不思議だわ」

「私はそう思わないけどね」

 主に石材の加工をしてお墓を作ったジーナが、ぽつりとそう返した。

 

「これはアルフレッドの受け売りだけど、あいつってばゴースト退治した後はその幽霊が依頼主の縁者ならお墓を建てるように言うそうなんだ。

 依頼主に金銭的に余裕が無い時は、自分の報酬を減らしてまで。

 人間には必要なんだよ、前に進むためにはさ」

 そう言って、ジーナは一人立ち去った。

 

「うん、きっと意味のある事でちよ。

 マルちゃん言ってたでちよ、自分の全ては、文化もビルーダー様に与えられてたものだって。

 でもお墓を作って死者を弔うことがそうではないのなら、それはビルーダー様の恩恵の元で育ったマルちゃんには特別な事になると思うんでちよ」

 デーリッチは無邪気に笑ってそう言った。

 

「そうだね。私は自分たちが亡くなった後、何も残らず忘れ去られてしまうのは虚しいからね」

「少なくともあなた達に関しては大丈夫よ。

 この世界が滅亡するまでは私が語り継いであげるから」

「いや、この世界を滅亡させる要因の一つに言われても……」

 ローズマリーは、やっぱりこの神様ちょっとズレてるなぁ、と思いながらも他の面々と共にその場を後にした。

 

「ふふふ、やっぱり興味深いわ、あなた達」

 女神ビルーダーは値踏みするように彼女らを見続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 





もうお気づきかもしれませんが、この作品では福ちゃんやアルなんとかさんみたいな出番の少ないキャラをなるべく出番が有る様に頑張っています。
そこで最近、水着イベントを最後まで進めたのですが、イリス様とかどうやって絡まそう。私英語とっても苦手なので。
書き始めてから気づく己の浅はかさ!! でも何とか頑張りますね!!
ああ後、アンケートにご協力くださると幸いです。それではまた次回。

色々吹っ切れた主人公のマルース君、彼の次の行動派?

  • ローズマリーに求婚する
  • こたつちゃんのこたつに入ろうとする
  • 性欲を爆発させ手当たり次第に抱き着く
  • もういっそ全部やる
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