『王国会議 提案編 』
「会議を始めるでちよー!!」
デーリッチのいつもの掛け声と共に、王国会議が始まった。
「では、まず個別の活動内容の報告と行こうか」
続けて同じようにいつも通りの個別の活動に対して、ローズマリーが報告を求めた。
『大工としてのスキルを生かし、マルースが家具を作ったようです。
新しい家具で気分一新、みんなが喜んでいます。なんで傭兵やってるんだろう、この人。
余った素材をくれました。通常レアの素材を幾つか入手』
『ビルーダー様が王国の皆に健康診断を始めました。
ほら、子供たち、注射が怖いからって逃げない!!
一応病気の類は見つからなかったようです、一安心!!
参加者全員にお菓子が配られました。☆ビルーダーの健康お菓子セット をひとつ入手』
「活動報告はもうないかな?
では、次に進もう」
各々の活動報告を聞き終え、お店の状況や収入状況、探索場所の提案が終わった。
――ビルーダーの施設提案
「もう、我慢できないのだけれど」
「ど、どうしたんでちか、ビルーダー様」
デーリッチが目の前にやってくるなり、ビルーダーは不機嫌そうにそう言ったのだ。
「この国、いやこの世界の検疫や防疫対策についてよ。
これだけ数多の世界から多くの人種が流入しているのよ?
未知の病気やウイルスが持ち込まれていてもおかしくはないじゃない」
「あー、それ、私が召喚士協会に入る前に少し問題になったって聞いたわ」
ビルーダーの言葉を受け、エステルが言いずらそうにそんなことを口にした。
「こんなの不衛生よ、不潔よ。
今すぐこの世界を焼き払ってしまいたいくらいだわ、今の私の権限では出来ないのがもどかしい」
「この間、急に健康診断をやるとか言い出した理由はそれでちか」
デーリッチは怒りを露わにする女神を見て、その時の注射針の恐怖を思い出して涙目になった。
「仕方ないから地道に活動することにするわ。
いきなり病院って規模は無理だから、診療所を建てるの。
それがこれ、――ゴッドハンド診療所よ!!」
「そうだった、このひとセンスがずれてるんだったー!!」
今度こそ真面目な提案だと思ったローズマリーは、ビルーダーが手にしたイラストに描かれた某巨塔風な白衣の列を見てそう叫んだ。
「私の経営する診療所は完璧よ。
昨今の医者は些細な事で訴えられるけれど、私は神だから訴えられない」
「その理屈はオカシイですよ!!」
「それに、私、失敗しないので」
「それ別の医療ドラマのやつー!!」
「その上私に睡眠は必要ないから、どれだけ勤務しようと平気よ」
「ある意味、昨今のブラックな医者事情を皮肉っている……」
「更に、私なら霊媒手術で傷を付けずに腫瘍の摘出もお手の物よ、入院期間も短く、入院費の負担も短い患者に優しい医療施設になっているわ」
「まさにゴッドハンド!?」
自由すぎる女神の理想の病院経営予想図に、ローズマリーもツッコミが追いつかない。
「機材とかはどうせ王国の予算じゃ無理だろうし、私が用意する。
だから土地と建設費用だけ出してちょうだい」
「デーリッチ、これは最重要施設だ。
私の方からも少し出しておくから、ぜひ受理しておいてくれ」
二人の後押しを受け、デーリッチは少々お高い建築費用に迷わず「はい」を選んだ。
「賢い判断だわ。衛生は人類の発展に必要不可欠な要素よ。
誰にでも受診できるように、料金は少な目にしておくけれど良いわよね?」
「ええ、存在そのものが王国の発展に寄与しているので、気軽に来れる病院経営をお願いします」
「勿論よ、そもそも怪我や病気をヒールやキュアで治すって環境がまかり通るこの状況がおかしいのよ。
他にも見込みのある医者の見習いを私が超一流に育て上げ、最終的に私抜きで機能するようするわ」
「仰ってることは普通に素晴らしいんだけどなぁ……」
ゴッドハンドって、とローズマリーは遠い目になった。
「そう言うわけだから、ひとまず先に用意した機材を試運転するわ。
これから呼ぶ者は私の元へと来るように。――ニワカマッスル」
「ええッ、俺かよ!!」
「ははは!! 狂牛病でも持ってるんじゃないの!!」
「俺は牛じゃねぇよ!!」
「――ハピコ」
「えッ、私もですかい!?」
「ははッ、俺が狂牛病ならお前は鳥インフルエンザか?」
「うぐぐ……」
ニワカマッスルとハピコが漫才を繰り広げながら、ビルーダーの提案は終了した。
――マルースからの提案
「あのさ、思ったんだけれどよ、ハグレ王国が一つの国家なら掲げるべきシンボルが必要だろう?
だから国旗とか作ろうと思うんだけど、どうだ?」
「それは良い考えでち!! ハグレ王国のシンボルとして国旗があるというのは、ハグレの希望に繋がると思うでちよ!!」
「だろう? マリちゃんはどう思うよ?」
大賛成してくれるデーリッチから、ローズマリーにマルースは尋ねた。
「私も良いと思うよ、旗が有るのは自分たちの存在を示すのに有用だからね」
「マリちゃんならそう言ってくれると思ったぜ。
だからとりあえず、俺なりにこの国をイメージしたデザインを起こしてみたんだが、ちょっと見てくれよ」
そう言ってマルースが提示したのは、交差するキーオブパンドラの中心にデーリッチの王冠の意匠があるというデザインだった。
「おお、シンプルで分かりやすいですね。建国者としてデーリッチちゃんという象徴が記されていますし」
「でもこれ、国旗と言うより海賊旗みたいな感じだよなー」
「うるせー」
福ちゃんは素直な賞賛をくれたが、ハピコはニヤリとそんな茶々を入れた。
「どうだ、でち子。これは暫定に過ぎないから、他の皆から公募してどれか一つを採用するのもいいかもな」
「うーん、これはこれで良いと思うんでちよ。
せっかくマルちゃんが書いてきてくれたんでちから。
でも、この旗のデザインにはデーリッチ一人しかおらんでち。
デーリッチはハグレ王国を独りで作ったわけじゃないでち、ローズマリーとか、皆の要素も入れてほしいかなって」
「あー、なるほど、お前らしいな」
そう言う発想が出てくるデーリッチに、マルースは素直に感心した。
「あッ、そうだ、皆で一つずつなにか書き足していくのはどうでちか!!」
「おッ良いね、私にもやらせてくれよ」
「おうヅッチー、構わんでちよ!!」
そう言って、ヅッチーはペンを持ってマルースの持つデザイン画にイナズママークを書き足した。
「おッ、じゃあ俺も」
「何だかそう言うのも面白そうだね」
マッスルがモーモードリンクの絵を、アルフレッドがバラの紋章を。
「何だか国旗と言うより卒業式の時に書く色紙みたいになってるね」
「ジーナさんはハンマーですか。困ったな、書きたい物が被ってしまいました」
「別に同じだって構わないじゃない。そっちはデフォルメしたらどうだい?」
「それは妙案ですね」
ジーナが写実的なハンマーを、かなづち大明神がデフォルメされたハンマーを。
「ハオは槍にする!! ティーティー様はティーカップでいいよね!!」
「ああ、ハオに任せた」
ハオは槍とティーカップの絵を。
「私を象徴する物と言えばこれよね」
「じゃあ私はこれかな」
ヤエは頭のアンテナを、雪乃は雪だるまを。
「これ、私も書いて良いのよね? じゃあ私は召喚士らしく鍵にするわ」
「私はみかんにするじゃん!!」
エステルが自分の杖代わりの鍵を、こたつドラゴンはみかんの絵を。
「わたくしのような新参者にも許されるのならば、恐縮ですが」
最近仲間になったゼニヤッタは小さくピンク色のドレスを。
「私はこれにしましょう。ハピコちゃんはどうしますか?」
「ああ、悪いね福ちゃん。そうだなー、コインで」
「ふふふ、あなたらしいですね」
福ちゃんが自身の持つ袋とハピコの分のコインを描く。
「わうわう!!」
ベロベロスは器用に机に前足を乗せ、ポンとデザイン画に足跡を残した。
「えーと、次は私かな? じゃあこれで」
ローズマリーはささっと半分のパンらしきものを書き記した。
「私の紋章でいいかしら? はい、書けたわ」
ビルーダーは機械のような正確さでリンゴに絡みつく蛇を描いた。
「最後は俺か? 聖印の紋章はビルーダー様が書かれたし、学帽にしておくか」
最後に発案者のマルースが学帽を書いて、皆が書き記した国旗が出来上がった。
「ははッ、これじゃあ国旗と言うより落書きじゃないか。
しかもこれ、これから仲間が増える度に書き足すんだろ? そんなにちょくちょく更新されて国旗として認識されるのかねぇ」
完成した、いやこれからも完成し続ける国旗の無秩序さに、マルースは可笑しそうに笑った。
「いや、こんな素晴らしい国旗はもう二度と見れないかもな。
出来上がった国旗は俺の装備品とし扱えるようにしておく。
存分に旗持ちとして使ってくれよな」
☆ハグレ王国旗 を手に入れた。
「それじゃあ、提案は以上だね。
デーリッチ、会議を終わらせよう」
「オッケーでち、おつかれさまでしたー」
そうして、今回の王国会議も無事終了した。
『拠点内会話 マルースの基準 』
「ゼニヤッタちゃん、拠点の方は慣れたかい?」
「はい、お蔭さまで」
あくる日、最近次元の塔の攻略の際に仲間になった悪魔の少女ゼニヤッタにマルースは軽快に話しかけていた。
「しかし、この王国には神々の姿が数多く見受けられます。
わたくしのような悪魔がおりましては、王国の名に傷が付くのでは……」
「種族が何であろうと、関係ないよ。ゼニヤッタちゃん。
うちの王様を見ただろ? ああいうノリでいいんだよ」
そんな感じでアドバイスをするマルースに、彼女はこくりと頷いた。
「想像通り、国王様の治める王国は素晴らしいところなのですね」
「まあ、皆から国王様なんて呼ばれるような威厳は現在勉強中だがな。今後の成長に期待しようか」
「なるほど、国王様の威厳はなおも成長中というわけですね」
「成長してくれると良いがなぁ」
そういった会話を交わして、二人は別れた。
「あれ、口説くと思ったのに。スルーしたわね」
「まだまだですね、エステルさん。それじゃあ賭けは私の勝ちで」
「ちぇ、はい、最後のプチシュー」
「どうもです」
そんな二人の様子を見ていたのは、爆炎ピンクと巨大妖精だった。
何だかんだで仲の良い二人である。
「そう言えば、マルースさんってば私にも一言も口説き文句の類を掛けられた覚えが無いわね」
「おや、そうなんですか?
エステルさんの男好きしそうな肉体を目の当たりにして何も?」
「それ以上はフレイム案件だからね」
「ちょ、まだ会話の途中じゃないですか!?」
唐突なセクハラに冷静に返すエステルに、かなづち大明神は焦って手を押し出した。
「聞くところによるとマリーも口説かれたらしいし、ロリコンと言うことを一旦置いておいても普通に女好きみたいだし。
ゼニヤッタちゃんぐらいなら口説くと思ったんだけどなぁ」
「私も口説かれてませんしね」
「いや、かなちゃんは割とレベル高いからなぁ」
物理的に高い彼女を見やり、エステルはぼやいた。
「いったん、紙に起こしてみましょうか」
そう言ってかなづち大明神は紙とペンを用意して、マルースが口説いたという人物を名前を書き連ねた。
・ローズマリー
・雪乃
・ジーナ
・ハオ
・こたつドラゴン
・ヅッチー
「何か共通点は?」
「誰も彼も個性的すぎて共通点なんて見当たらないわねー」
「そうですねぇ」
こうしてみると拠点の女性陣は誰もが強烈な個性を持っていた。共通点を探すのが馬鹿らしいくらいに。
「反対に、口説かなかった人物はこうなりますね」
「あ、デーリッチは除外ね。あれはいい感じに成長するの待ってるわ、絶対」
・ハピコ
・福ちゃん
・ヤエ
・ティーティー様
・エステル
・かなづち大明神
・ビルーダー
・ゼニヤッタ
「まず神様組は除外。あの人は信心深いから神さま相手に欲情しないでしょう、流石に」
「そうなるとハピコさんやヤエさん、エステルさんが口説かれなかった理由はなんでしょう?」
「うーん、こっちもみんな共通点が見えないわね」
「ここまで全然個性が被らないのもすごいですけれどね……」
あらためて見なくてもバラバラな面子である。
これがある程度まとまっているというのだからすごい事である。
「二人とも、なんの話をしてるんだ?」
そこに話題の中心に居るマルースがやってきた。
「……はぁ? 暇かよお前ら」
そして二人が雑談している内容を聞いて、彼はあからさまに呆れたようだった。
「お前らがどういう目で俺を見ているか分かったわ。
まず俺が声を掛けるかどうかだが、性格的な部分を最初に見る。
ハピコやヤエとかマジ無理。俺にだって選ぶ権利はあるっての」
と、当人たちが聞いたら激怒するだろうことを言い放つマルース。
「神さま方も論外だ。そう言う目で見るのは罰当たりだろう」
「じゃあエステルさんやゼニヤッタさんを口説かない理由はどうしてです?
私が初対面の時に一目でセクシー担当として惚れ込んだこの肉体に見向きもしないとはどう言う了見です!!」
「あんたは何様のつもりでそんなこと言ってるのよ!!
っていうか、あの時のポッてそう言う理由かよ!!」
熱く語るかなづち大明神と熱くツッコミを入れるエステル。
「かなちゃんは言うまでも無いよな。
エステルちゃんの場合、単純に女として見れないっていうか、男友達みたいな?
この子の場合、肉体じゃなくて精神の方に股間の棒が付いているっていうか」
「あー、なるほど」
「なにが、あー、なるほどなのよ!!
悪かったわね、男みたいな雑な性格で!!」
「そう怒るなよ、その男前な性格で一体何人の乙女をそっちの道に引きずり込んだんだ、うん?」
「いい加減、怒るわよ!!」
マルースはフレイムを撃たれるギリギリのところを攻めつつ、にやにやとエステルをからかって笑っていた。
「ゼニヤッタちゃんを口説かなかったのは、単純に今声を掛けるのはつまらんと思ったからだよ。
男女の恋愛は駆け引きを楽しむもんだ。今のあの子を口説いたところで、俺の口八丁手八丁に騙されて終わりだ。
純粋な子を誑かして弄ぶのもそれはそれで楽しいが、不幸にさせたい訳じゃないしな」
「ふーん、じゃあマリー達を口説く理由は?」
「単純に劣情を催す以外の理由が必要なのか、お前は?
マリちゃんとかあの露出の無い恰好を剥かせたいとか、雪乃ちゃんとハオちゃんは健康的でエロいとか、こたつちゃんの無防備さに感じるエロさとか、ヅッチーペロペロしたい俺のジョークグッズになってとか思わんのけ?」
「言いたいことは分かるけど、あんたは今すぐ地獄に落ちるべきだわ、このエロオヤジ」
「そうですよ、仰りたいことは分かりますがヅッチーを候補に入れるのはマズイですよ。手を出したら覚悟しておいてください、このロリコン」
「お前ら時折妙に息が合うのなんなの?
言われなくてもすぐには手を出さんわ。今は好感度稼いでる最中だからな」
この時二人は、あっこれはガチで狙っているわ、このロリコン、と仲良く揃って思ったようだった。
「ちょっとビルーダー様のところに行ってくるわ」
「そうですね、一緒に行きましょう」
「なんでそうなる!? 止めて、マジで止めて!!」
そんな感じで、仲良し三人はわいわいがやがやと今日も拠点をにぎやかしていたのだった。
書きたい事が多すぎてゼニヤッタちゃんやこドラの出番が少ない……。
順番に書きたいものから書いていきますね。
次回は、
『 VSこたつドラゴン その2 』
『 マルース君のガチ恋愛相談 』
『 ビルーダー様の食卓 』
『 プリシラ成長日記 その1 』
の四本でお送りする予定です。
その後に、トゲチーク山岳地帯へと行く予定です。
では、また。