アナザー・アクターズ   作:やーなん

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皆さん、こんにち令和。
新しい年号の元、私も心機一転頑張って更新していきたいですね!!



18.拠点内会話 その6

『VS こたつドラゴンその2 』

 

 

「ふぁぁ~、眠い……」

 その日、俺が拠点へと帰ってきたのは深夜になってのことだった。

 

 最近の俺は妖精王国にて護衛の仕事をしている。

 近々プリシラは業務拡大を狙っているらしく、出店予定地の候補を探す為に俺は護衛として連れ回されていた。

 何だかんだで妖精と言うのは世間一般から舐められる存在だから、俺のような護衛が居るのと居ないのとでは大分違うようだった。

 それに出自がハッキリしてる信頼できる外部戦力は貴重だ。

 

 傭兵の信用の無さは契約で逃げたら違約金が発生すると書いてあっても、責任を追及される前にドロンできるところにある。

 だから基本的に傭兵は頭数をそろえたい場合か捨て駒前提なのだ。

 だから俺が以前、律儀に違約金の話をしたのは……まあ、それなりにハグレ王国に愛着が湧いたからだろう。

 

 国が傭兵の貸し出しをする場合もあるが、俺の場合はこれに近い感じだろう。

 そんなわけで俺は妖精王国にも雇われてから大忙しだった。

 

 俺が眠気と戦いながら、ゆらゆらと自分の部屋へと向かう。

 そうして暗い廊下を歩いていると、共用スペースから灯りが見えた。

 

 ボーっとした頭がそちらに向くと、なんと暖かそうなこたつがそこにあるではないか。

 俺はこたつの放つ魔力に魅入られるままに、ふらーっとこたつの中へと入りこんだ。

 

「はぁ、こたつの中、あったかいなりぃ」

「えッ、ぎ、ぎゃーー!!」

「うん? あッ」

 事ここに至ってようやく、俺はこのこたつがこたつちゃんの物だと悟ったのだった。

 

 

 その後、大変な事になったのは言うまでもない。

 夜中も見回りをしているローズマリーがこたつちゃんの悲鳴に駆けつけ、基本的に睡眠をしないビルーダー様まで現れもう大変だった。

 

「マルースさん、もうこう言った騒ぎは勘弁してくれませんか?」

「悪い、マジで悪い」

 今回は俺も悪気が無かったことが幸いして、軽く注意だけで済んだ。

 すっかり俺はこの拠点で問題児筆頭である。自由奔放なことを問題児に含めないなら俺以外にももっといるが。

 

「こたつちゃん、いや今回はマジで悪かったって。

 もう夜中だったから君も寝ているかと思ってさー」

 俺はこたつちゃんを見つけると、申し訳なさそうに謝っておいた。

 

「ぶるぶる、強盗かと思ったじゃん……」

「なんでそうなるの!?」

 こたつちゃんはこたつの中で顔だけ出して震えながらそう言った。

 いや、なんでよ。

 

「普通、自分の家の中に知らない男の人が入ってきたら強盗って思うじゃん」

「あ、俺って知らない男の人ぐらいの親密度なのね……」

 その事実にちょっとショックを覚えながら、しかし俺は彼女とあんまり接点が無いことに気付いた。

 

「そこはまあ、強姦魔って思われなかっただけマシか。

 次からは自然に君のこたつの中に入れるように努力するわ」

「そこはもうしないっていう所じゃないの!?」

「こたつ=家=君、と言うことなら、これはもう自然にこたつに入れたら家の鍵を預かるも同然!!

 そのこたつを攻略すれば、君も攻略したも同じことなのだ。

 くくく、昨日俺に君のこたつの温もりを覚えさせてしまったのが悪いのだ」

「私のこたつが、とんでもない獣を目覚めさせてしまったじゃん……!!」

「さあ、こたつちゃん!! 俺と一緒にこたつの中で巣作りしようやッ!!」

 飛び掛かる俺、しかしすかさず必殺のこたつカウンターが炸裂!!

 俺の着地点を緻密に予測し、こたつの角が俺の膝を直撃!!

 

「おッ、おうふ!? こ、これが鉄壁のこたつ装甲……!!

 間近で見るのは初めてだが、これは攻略のし甲斐があるッ!!」

「やれるもんならやってみるじゃん!!」

 シャァ、と怪鳥の如き掛け声を上げ、めげずに俺は再びこたつに挑みかかる!!

 だが俺の歩幅を読んだこたつちゃんはこたつの角を先置きし、先ほどと同じところに角が見事に直撃した。

 

「ぐおッ、なんてことだ、完璧だと言うのか、こたつカウンターは……がくり」

 俺が倒れるのを確認すると、こたつちゃんはこたつの中からごそごそと台本を取り出した。

 

「……我は竜人アーマードドラゴン。

 貴様が瞬きを終える間に、骨ごと灰へと変えてくれる。……あ、違う場面の奴が良かったかな」

 竜に挑む愚者を下した彼女は、ドヤ顏で台本を読み上げたのだった。

 

 

 

『拠点内会話 マルース君のガチ恋愛相談 』

 

 

「マルースさん、聞いたわよ!! このエロ親父!!」

「はぁ?」

 開口一番にヤエから罵声が飛び、共有スペースでくつろいでいた俺は億劫になりながらもそちらを向いた。

 

「なんだよ自称サイキッカー」

「エステルから聞いたわよ、何がマジ無理よ!!

 そう言う目で見ないでくれる!? こっちの方こそあんたなんて願い下げだわ!!」

「はぁ? そう言う目で見れないからマジ無理だっつってんだろ。

 特にお前はハピコと違って肉体も好みじゃないんだから突っかかってくるなよ。自意識過剰かよ、見苦しいわ」

「なんですってぇ!!」

 その後、俺とヤエはデーリッチに諌められるまで醜い言い争いをしたのだった。

 

 

「まったく、ことあるごとにガキに叱られる身にもなってみろってんだ」

「それってことあるごとに怒られるネタがあるマルースさんにも問題があるんじゃ」

 俺はマッスルに愚痴っていた。

 彼は迷惑そうにしながらも律儀に付き合ってくれた。

 

「別にねぇ、俺はヤエちゃんのこと嫌いじゃないのよぉ~。

 ただ恋愛関係になるかどうか考えたら、マジ無理ってだけで。相性の問題なのよ~」

「酔っぱらってるんすか、マルースさん」

「俺にだってプライドはあるっての。

 多少は年上として敬ってくれてるマリちゃんを見習えっつうんだ」

「そうっすねー」

「いよっし、今日はモテないむちむち女の意趣返しに、よその女の家に転がりこむぞー。

 おじさん、朝帰りしちゃうからなー、見てろよー。ストレス以外にも色々発散してくるわ」

「…………はぁ」

 俺がそんな風に考えていると、唐突にマッスルが深い溜息を吐いた。

 

「どうしたよ、うし君。

 そんな辛気臭い溜息なんか吐いて」

「いやぁ、マルースさんはモテるんだなぁって思って」

 俺は愚痴に付き合ってくれたマッスルの肩に手を回した。

 

「なんだうし君。そんなことで悩んでるのか?」

「そんなことってなぁ、マルースさんには分からんでしょうけど」

「わかるわかる、分かるって。女ってのは基本顔でしか判断しないしな。

 私は性格が良ければ顔なんて~、なんて言ってるやつほど顔を気にするもんだ。

 俺もそんな見栄だけの口だけ女に何度引っかかったことか」

 俺は訳知り顔でマッスルの心に寄り添ったが、彼の心境はそう的外れではなかったようだった。

 

「俺に言わせれば、まだ女に貢いだこともないのにそんなに腐るなって話だ。

 俺がフリーの良い女知ってるからよ、試しに付き合ってみたらどうよ」

「えッ、女の子紹介してくれるんですか!!」

 俺がそんな提案をすると、単純なマッスルはあっさりと喜色満面になった。

 

「ああ、あいつならマッスルでもオーケーだろう。きっと」

 そして俺は知り合いのサキュバスをマッスルに紹介するべく、手紙を出すのだった。

 

 

 

 それから三日後、そのサキュバスとマッスルを引き合わせたわけだが。

 

「もう最悪ッ、なんなのあれ!!」

 俺とマッスルは彼女の背を見送ることしかできなかった。

 それはなぜか?

 空から泥水が降ってきて、俺達三人は泥まみれになったからだ。

 

 なぜこんなことになったかと言うと。

 

「おい、ハピコなんてことしやがる!!」

「あっはっは、マルっちがまたマッスルに不純異性交遊を進めてたんだから止めてやっただけだよー!!」

 そう、突如として空から現れたハピコの奴が、上空からバケツを足で掴んで俺達三人にぶちまけたのである。

 俺はせっかくの機会を邪魔されたのに怒り、空に向かって怒鳴ったわけだがあいつは飄々とそんな風に言い返してきた。

 

「ハピコ、降りて来い」

 だが、そんな彼女にマッスルはため息を吐いてそう静かに、上空のハピコにも聞こえるようにハッキリとそう言った。

 

「えー、マッスルあんな女が良かったの~?」

「いいから降りて来るんだ!!」

 もう一度彼がそう言うと、ハピコはマッスルの態度から悟るものが有ったようで、急にしおらしくなって彼女は地上に降りてきた。

 

「ほら、彼女に謝りに行くぞ」

 マッスルは怒っていた。

 他でもなく、初対面の女性に無礼を働いたことにだ。

 彼はハピコの腕を掴み、あのサキュバスを追って行った。

 

「あんな俺よりずっと良い男がモテないんだから、どいつもこいつも見る目が無いわな」

 俺は率先してあの女に頭を下げているマッスルを見て、そんなことを考えるのだった。

 

 

 そしてこれは後日談。

 

「マルっち~、あんたマッスルに変な遊び教えるなよ」

 ハピコの泥水爆撃から翌日、俺はハピコに会うなりそんなことを言われた。

 

「はぁ? どうしてだよ」

「だって相手が可哀そうだろ?

 あんな牛面の前に立つんだぜ~。昨日のサキュバスもちょっとビビッてたじゃん。

 マッスルに釣り合うような奴なんてそうそう居ないって」

「……そうだな、あいつに釣り合う女なんてなかなかお目に掛かれない」

 俺は軽口を叩くハピコを見据え、そう言った。

 

「そう言うお前はどうなんだ?

 お前はあいつと一緒に頭を下げて貰う価値はあるのか?」

 俺の言葉に、ハピコはサッと顔を逸らした。その仕草に彼女の本心が垣間見えた。

 

「お前がどういう気持ちで二度も邪魔しやがったのかは聞かないでおいてやる。

 だが今後どうするにしても、女磨きはしておくんだな」

 俺は黙り込んだハピコの脇を抜けてさっさと目的地に向かうことにした。

 

「そうそう、あいつ金髪の女が好みだそうだ。お前も伸ばしてみたらどうだ?」

「うるさいッ」

 少々やり過ぎたのか、ハピコはむくれて去って行ってしまった。

 まあこれぐらいの意趣返しは良いだろう。散々してくれたんだし。

 

 ……まったく、これだからハピコの奴をそう言う目で見れないんだ。

 

 

 

『拠点内会話 ビルーダー様の食卓 』

 

 

「ついに、この日が来てしまったでちか……」

 その日、デーリッチが共有スペースにある掲示板を見て、そんなことを呟いた。

 

「どうしたのよ、デーリッチ」

 彼女の様子が気になったエステルが掲示板を覗き込む。

 

「げッ」

 そこに書いてあったのは、『今日の料理当番 ビルーダー 』という文字だった。

 

 

「なあ、大丈夫なのか?」

「僕に聞かれても……」

 不安を露わにするニワカマッスルと、何とも言えない表情のアルフレッド。

 

 拠点の面々は席に着き、本日の朝食を待っていた。

 基本的に料理当番は持ち回りで、適性を見る為にティーティー様を除く全員が一度は経験していた。

 その結果、割と散々な目に遭ったりしたが、今では料理ができる面々がローテーションを組んで王国の食を満たしていた。

 

 ところがある日、当番表を見たビルーダーがこう言った。

 

「あら、私が入っていないじゃないの」

 と。

 そして今日が、彼女の初めての当番の日だった。

 

「だってあの女神様、料理できるのか?

 仮に出来たとして、まともなモノが出て来るのか?」

「一応、人々に文明を与えてきた女神様だし、きっと食文化も知り尽くしているよ、きっと」

 ロースマリーがフォローを入れるが、彼女自身あの女神のセンスがずれているのを承知なので説得力が皆無だった。

 

「お前ら失礼だぞ、ビルーダー様のご厚意を何だと心得る……」

「じゃあなんでそんなに必死に祈ってるんですか?」

 雪乃に指摘され、マルースはハッとなって祈りの姿勢を解いた。

 

「いや、実はだな……」

「できたわよ、みんな」

 彼が何かを言いかけた直後だった。

 トレーを持ったビルーダーが現れたのは。

 

「この世界の技術で何とか再現した我が食文化の究極の姿よ」

 彼女は自信満々でトレーの上に乗っている食べ物を皆に配った。

 

「……なんでち、これ」

 皆の前に配れたのは、一枚の皿とそれの上に乗る丸薬のような数種類の色が着いた物体だった。

 

「私が食事という文化を突き詰めて作り上げた究極の解答よ、食べなさい」

 こういう方向で来たか、とビルーダーの解説を聞いて誰もが思った。

 

「わ、わーい、懐かしいなぁ……」

 マルースは若干引き攣った笑顔でその数種類の丸薬を口の中に入れて、もしゃもしゃとし始めた。

 

「あの、食文化を尽き詰めた姿を仰ってましたが、どういう経緯でこんな味気ない姿になったんですか?」

 あまりに理解しがたい丸薬数個という食事に、耐えられずに福ちゃんがそんな言葉を投げかけた。

 

「ふむ、もしかして量が少ないのが不満なのかしら?

 私も最初は飽食こそ最高の食文化だと思っていたわ。

 貧困こそラスボスと言ったのは誰だったかしら、私の与える文化は決まって貧困との戦いの歴史だったわ」

「福ちゃん、またビルーダーの自分語りが始まったぞ」

「これが有るから似た者同士だって言われるの嫌なんですよ」

 他の二柱が若干うんざりしつつも、特に遮ることはしなかった。

 何だかんだで教訓話だったり、実体験の数が違うからだ。

 

「全ての人々に等しく満たされた食事を与えるのは大変だったわ。

 作物は文明レベルに関係なく与えられる数少ない代物なのよ、だから不毛の地でも育つ食物や農耕方法を確立するのにとても苦労したわ。

 だけどそれが叶った後、飢餓はラスボスどころかただの雑魚に成り下がった!!

 貧者すらも肥え太ると呼ばれた、飽食の黄金期の到来よ!!」

「それがどうしてこんなちんまいのになっちゃったんでちか?」

 スプーンで丸薬を皿の上で弄ぶデーリッチが、食べ物で遊ぶなと横からローズマリーから窘められる。

 

「人々が食べ物の感謝を忘れたからよ。

 特にコンビニとかいういつ訪れても店が開いているという店舗はダメね、悪と退廃の極みだったわ」

「えッ、いつでも開いているお店とか便利じゃないでちか、うちにも欲しいでち」

「便利すぎたのよ、その時の人々は道を挟んだ反対側に同じ店を出すくらい大量にそれを出したの。

 その結果、常時大量の食料品の廃棄、人員不足からのワンオペ、売れもしない季節モノの大量発注と大量廃棄、モラルの欠いた自撮り拡散、その他諸々。

 ……私は決めたわ。――これは滅ぼすしかない、と」

 そりゃあこの人ならそうするだろうなぁ、と皆は思った。

 

「次は量ではなく、質で人々を満足させることにしたわ。

 だけど今度は美食が重要視されすぎて、官僚の接待で賄賂代わりに使用されるようになったの。

 他の人々も、美食を求めることに価値を見出し始めたわ。

 そう言うの止めるように私の神官たちに下知したのだけど、誰も言うことを聞かなかったわ。

 稀少な食物を独占するギャングとかが幅を利かせ始め、それと繋がる官僚の腐敗は増すばかり。

 仕方ないから、私は決めたわ。これは滅ぼすしかないなって」

「またでちか、滅ぼしてばかりじゃないでちか!!」

 デーリッチの子供特有の歯に衣着せぬ物怖じしないツッコミだった。

 

「何かを作ると言うことは、最終的に壊れるってことよ。

 それが遅いか早いかの違いでしかないわ」

「あうう、神さまの視点こわい……」

「最終的に人々から食の楽しみを奪い、別の娯楽や嗜好品で補うことになったわ。

 これを食べれば一日の栄養分やカロリーを確保できるのよ、食事の時間を別の物事に充てられるし合理的だわ」

 それが神の判断、結論だった。

 

「ここに至るまで多くの失敗が有ったわ。

 それを噛み締めて食べなさい」

 そう言われては、面々は粛々と十数秒程度の食事をすることとなった。

 味は不味くも無く美味しくも無い絶妙なラインだった。

 

「あなた達が良ければこれからも作ってあげるけれど、どうかしら?」

「あー、ビルーダー様。

 何と言うか、デーリッチたちはもっと食事を楽しみたいんでち。

 ビルーダー様のご厚意は嬉しいんでちけど、美味しい食べ物を求めるのは人間の性っていうか。

 食べ物がこれだけならデーリッチはビルーダー様の作る楽園に住みたくないっていうか」

「そうだ、こんなんじゃ全然足りないぞ、もっと食べさせろ!!」

 善意100%の申し出にデーリッチは言いにくそうに答え、ヅッチーが追従した。

 

「そうだね、二人とも食べ盛りだもんね。

 ええと、だからビルーダー様。申し訳ないですが次からは普通の食事にしてもらえると嬉しいんですが」

 ローズマリーがそう言ってビルーダーを見やると、彼女はなぜかポカンとしていた。

 

「ビルーダー様? どうかしたんですか?」

「……いいえ、そんなこと言われたの久々だわ。私に意見を言う人間もね」

 その言葉から気に障ったのかと思われたが、なぜだか彼女は微笑んでいた。

 

「裸の王様にお前は裸だというのは子供だったわね。

 無知な子供や知恵とは遠いところに居る愚者の一言は、時に悟りを得た賢者の意見と一致するものだわ。

 本当に、この国に居ると初心を思い出させてくれる。

 ……ちょっと待っていて、普通の朝食を作ってくるわ」

 彼女はそう言って、調理場に戻って行った。

 そして程なくして。

 

「ハムと卵のガレットぐらいしか作れなかったけど、朝食だしこれで構わないかしら?」

 今度彼女が持ってきたのは、チーズの匂いが香ばしいガレッドだった。

 その芳しい匂いに、子供たちはゴクリと唾を飲む。

 ナイフとフォークで切り分け、ぱくりと口に放り込む。

 濃厚なチーズとハム、卵のハーモニーに子供たちだけでなく他の面々の顔にも笑みが浮かんだ。

 

「なんだかすみません、わがまま言ったみたいで」

「構わないわよ。いけないわ、私が食事を必要としないから、偶に忘れてしまうのよ。私が人間だった頃の感性をね」

「えッ、人間だったって……」

「言葉の通りよ、正確には私じゃなくて本体が、だけど。

 始めから神としてある分体の私にも、その記憶はあるの。

 すっかり、すっかり忘れていたわ……」

 その発言に言葉を失っていたローズマリーだったが、問いを投げかける前にビルーダーは子供たちのおかわりに答えて調理場に戻ってしまった。

 

「いやぁ、ビルーダー様が普通に料理できてよかったなぁ」

「誰だよ、大丈夫なのか、とか言った奴!!」

「お前らなぁ、俺は信じてたぞ、信徒としててな!!」

 安堵の余り好き勝手言い始める男たち。

 

「まったく、皆勝手だなぁ」

 そんな面々に苦笑するローズマリーだった。

 彼女の語った事実に、僅かな疑問を抱きながら。

 

 

 

 

『 プリシラ成長日記その1 』

 

 

「と言うことで、次の出店予定地はザンブラコに決定しましたー!!」

 プリシラがそう発表すると、妖精たちはイエーイと喜びの声を挙げた。

 努力が実を結んでいる実感が有るんだろう、ここ最近の妖精たちは精力的であった。

 

 ヅッチーがハグレ王国に留学している間も、自分たちはリーダー不在でも大丈夫だとヅッチーに心配掛けまいと一生懸命だった。

 俺はそんな彼女らに連れ回される毎日だった。

 

 そんなわけだから俺は彼女らに手を出す暇もなく、しかし何だかんだで充実した毎日を送っていた。

 女王代理として妖精王国の舵取りを任されたプリシラは、成果と結果を重視し多くの妖精たちからリーダー不在の不安を拭い去った。

 

 彼女は目標や仕事の成果を可視化できるようにし、向上心や連帯感を持って目的に向けて進めるような体制を打ちだし、皆はヅッチーが居ない寂しさを忘れるように働いていた。

 そんなこんなでプリシラが打ち立てた最初の目標、他地域への事業拡大。

 その矛先がザンブラコへの出店計画だった。

 

「みんな頑張ってるねぇ」

 俺はと言うと、妖精たち独自の自衛能力を持たせるべく彼女らを鍛えていた。

 普段の仕事は護衛だが、最近はマナジャムとかいう健康食品みたいなのを摂取して妖精の脆弱性を補いつつ、実戦を想定した陣形の訓練をし始めたのだ。

 これでそこらの魔物に後れを取らない程度にはなるだろう。

 

「ほーら、プリシラちゃん。

 もっと腰を据えろ。妖精なんだから常に自分より体格がデカい相手を想定するんだ。

 その場合、もっと体を低くして相手の力を受け流すんだ。相手の土俵で張り合うな」

「はいッ」

 そして俺はなぜかプリシラの剣術指導をしていた。

 戦闘訓練で一番熱心なのは彼女だ。

 

 彼女はいつか強くなってヅッチーと並び立ちたいらしく、こうして他の面々のように集団戦ではなく前に出て彼女を守るべく、俺から剣術を学び鍛えている。

 まあ俺の剣術なんてハグレ王国の面々の前じゃ滅多に披露する事も無い程度にすぎないが。

 

 しかし俺の技能が彼女らの役に立つのならばそれでいいのかもしれない。

 それにしてもプリシラは覚えが良い。何だか最近、鍛えてやってるからか背も伸びてきたし。

 

 これじゃあ俺より強くなるのも時間の問題かもしれんな。

 あっさり抜かれたら、それはそれでショックなので俺は俺なりに頑張らせてもらうとしよう。

 

 さて、ハグレ王国に戻ったら本格的に道場で鍛え直すとしようか。

 

 

 

 

 

 

 

 




実は十連休中にもっと更新したかったのですが、休みの直前に指を怪我してしまいできませんでした……。
皆さんも怪我には十分注意してくださいね。

今回もちょっとしたアンケートを催します。
アンケートの結果は小説の内容に反映するのでどうぞご参加ください。

次回は、いよいよストーリーが進みます!!

マルース君が相談所にアンケートを設置、結婚するならどの神様?

  • 1.福ちゃん
  • 2.ティーティー様
  • 3.かなづち大明神
  • 4.ビルーダー様
  • 5.某東の世界樹の女神
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