アナザー・アクターズ   作:やーなん

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21.拠点内会話 その7

『拠点会話 ジーナの意地 』

 

 かん、かん、と今日も鍛冶屋のジーナは鉄を打つ。

 しかしここ最近の彼女は特に熱が入っていた。

 

「姉さん、仕事に打ち込むのはいいけどあんまり根を詰めるのはよくないよ」

 と、弟に苦言を投げかけられるくらいには。

 

「そっちだって依頼があればあっちこっちにパンドラで飛んでいくじゃないか。

 移動が時間が短縮されると人間は休むんじゃなくてもっと働くようになるのって変な生き物だよね」

「それを言われたら僕も何も言えないけど……」

 仕事を真面目に打ち込んでいるのはアルフレッドも同じなので、それを言われれば強く言い返せない彼だった。

 

「だが、私が来てから休みなしで仕事をしているように見えるぞ。

 アルフレッドもお姉ちゃんが心配で心配で堪らないようだし、少しは弟の意を汲んでやってはどうかな」

「ジュリア姉ぇ……」

 隙あらばイジってくるジュリアの登場に、アルフレッドは微妙そうな表情になった。

 

「装備なら次元の塔とやらで拾って来たりするようだし、ここでもそこまで装備の更新を頻繁にするわけでもないようだし、適度に休息を交えた方が何事も捗るものだよ」

「まあ、確かに四六時中かんかん煩かったら迷惑か。ちょうど切もいいところだし、このくらいにしておくかね」

 幼馴染と弟に諭され、ジーナは首に巻いていたタオルで汗をぬぐい店頭のカウンターにもたれかかった。

 

「やっぱり疲れ気味じゃないか。

 体壊してもしょうがないんだし、あまり無理しないでよ姉さん」

「……まあ、そうだね。焦りは鉄に出るって師匠も言っていたことだし」

 ジーナはそう言ってどこか遠くを見ながらため息を吐いた。

 

「もしかして、何か大型の発注でもあったの? 

 姉さんみたいなマイペースな人が焦りだなんて」

「マイペースで悪かったわね」

「べ、べつに悪い意味で言ったわけじゃ」

「ふむ」

 そんな姉弟の様子を見て、ジュリアは抱えていた荷物をカウンターに置いた。

 

「その焦りの理由はこれだろう、ジーナ。ジーナ宛てに届け物が来ていたよ」

「……」

「何だい、これは」

 それは長方形の包装された箱だった。

 厚みはそこまでないが、重量はそこそこだ。

 ジーナは黙ってそれを受け取ると、包装を解いて箱のふたを開けた。

 

「姉さん、これって」

 中に入っていたお届け物に、アルフレッドは目を丸くした。

 それは、銃であった。しかも明らかにこの世界の技術水準では作成不可能な代物だった。

 

「こんな銃、どこで手に入れたのさ」

「いや、割とあるんだよ。召喚される際に武器を持ち込んだハグレってのはそこそこいるものだからね。

 銃のように弾丸の補充ができない武器とかは資金調達の為に持ち主のハグレが売り飛ばしたりすることがそれなりにあるようだし」

「そうか、昔は戦うためにハグレが結構呼ばれたんだったね。

 召喚士たちはある程度召喚する対象を選べるらしいし、高度な武器を持った戦闘能力のあるハグレはそれなりにいるわけか」

「でもまあ、マナ不足で動かなかったり、高度すぎる技術の産物すぎて真似すらできないって話はよく聞くね」

「武器にも設計思想ってのがあるからね。

 僕らの思い浮かべる武器と、別の世界の武器はまた別だろうし」

 アルフレッドがそんな話をジュリアとしていると、ジーナは無言で届いたばかりの銃器をバラし始めていた。

 

「あれ、これバラバラにしちゃうのかい? てっきり自分で使うものだと」

「まさか。ちょっとどういう風になっているのか見てみたかっただけだよ」

 そうして、ジーナによってバラバラにされる異世界の銃。

 その仕組みはアルフレッドやジュリアからみてもさっぱりな未知の代物だった。

 

「……姉さん、これわかるの?」

「少しだけ、だけどね。たぶんこれ、ビルーダー様が見せてくれた銃より性能が良いよ。

 特にこれ、銃身の内側が螺旋状の溝がある。これはあの銃にも見られた構造さ。

 優れたエルフの射手は矢を撃つ時に回転を加えて飛距離を伸ばすっていうし、これはそれを技術的に再現しているんだろうね」

 そう説明されても、剣の腕一本で成り上がった二人にはやはりさっぱりだった。

 

「悔しいけど、何となくビルーダー様が剣と魔法の時代を終わらせる銃だといった理由がわかったよ」

「もしかして姉さん、自分の作った武器が無用になるような言われ方だったからムキになって仕事に打ち込んでたのかい?」

「ムキになってはないよ。ただ納得がいかなかっただけさ。

 でもあの時、口頭で説明されただけの武器を渡され、私たちは魔物を倒せてしまっただろ? 

 そしてこうしてこいつをバラして、これは魔法や弓矢の射程外から一方的に攻撃できると改めて理解したわけさ。

 そして改めてホッとしているのさ、この武器にも弱点はあって、私たち鍛冶屋が作る武器はまだまだ無くならないってね」

「射程距離か。戦いでも遠距離武器や魔法は花形だからなぁ」

 ジュリアは腕を組んで今度のジーナの説明には理解を示した。

 魔物退治の仕事でも、まずは後衛がどれだけ初撃で敵にダメージを稼ぐかが勝負の分かれ目になるのだから。

 

「……」

「どうしたさアルフレッド、自分の仕事を将来剣から銃に代わるのを予見して暗くなったのか?」

「いや、そうじゃなくてさ。

 ビルーダー様はあの銃が文明レベルの明確な基準だって言ってたじゃないか。

 人間の文化の基準ってのは、やっぱり優れた武器なんだなって」

「……明確な基準の一つ、だったろう? そんな暗い顔をするなって」

 ジーナは浮かない表情をしているアルフレッドにそう言ったのだが。

 

「いや、ローズマリーさんたちが話してたじゃないか。

 文明の進歩は痛みが伴うって。将来的に魔物がゼロキャンペーンのおかげで居なくなったとしたら、残った武器の矛先はきっと同じ人間に向けられるんだろうなって」

「──ああ、そうだろうね」

 ジーナは何となく、彼が自分の鍛えた武器が戦争の道具にされるのを嫌がっているように思えた。

 たが彼女は当然のように知っている。武器を持った相手から身を守るのも、また武器なのだと。

 

「そうなったら、いよいよ私も傭兵を廃業か。

 その時はこの国の警察として、治安維持などに力を入れるとしよう。人間同士の殺し合いなんて面倒すぎる」

「マルースさんのところに転がり込めばいいじゃないか、養ってくれって。

 あんた、なんだかあの人に懐いていたじゃない」

「ほうほう、私があの人の手綱を握るのも悪くはないが、それは最後の手段にしておこう。

 それよりジーナの方こそどうなんだ、仕事ばかり熱中していると婚期を逃すぞ」

「私はいいのさ、そっちこそいつまでも傭兵なんてしてないで身を固めた方がいいんじゃないの?」

「だから私の方は最後の手段があるからいいんだって。ジーナこそ──」

 なぜか話の方向性が変わったことを感じたアルフレッドは、急に居心地が悪くなった。

 

「そうだ、アルフレッド、お前はどうなんだ、彼女くらい居るんだろう? 

 居るなら私があいさつに行かねば、弟分がいつもお世話になってますって」

「居ないよ!! 居たとしてもジュリア姉には紹介しないから!!」

「そういえばこいつ、この間マルースさんに連れられて帝都の銀座で──」

「その話は止めてよ姉さん!!」

 アルフレッドは思った。自分は結局、この二人に勝てる日は来ないんだろうな、と。

 

 

 

 

『拠点内会話 秘密結社再始動 』

 

 ハグレ王国拠点内、普段は多くの住人がたむろしている会議室に、この世に混沌を齎す悪の尖兵たちが悪だくみをしていた。

 

「それでは、第一回秘密結社会議を始めます」

 そう宣言したのは、先日次元の塔三層で仲間になったヘルラージュだった。

 自身の名を関する悪の秘密結社を立ち上げ、曰く復讐の為に悪を成そうという女性である。

 そもそも復讐の為に悪である必要があるのか、と思った戦闘員二人だったがそこはデリケートそうなので突っ込まないことにした。

 

「王国で悪事を学んでいけばいいとは言ったものの、まずは何をするべきでちか」

 戦闘員一号であるデーリッチが腕を組み唸った。

 

「まずは簡単なことから始めればいいじゃないか。

 そうだね、最初は手ごろに山賊退治とかどうかな」

「山賊退治を手ごろと言ってしまうローズマリーさんの神経が恐ろしいですわ」

 戦闘員二号のローズマリーの提案を受け、恐れおののくヘルラージュだった。

 

「山賊退治なら次元の塔でもやったじゃないか。

 まずは経験を積んで、徐々にやれることを増やしていけばいいんじゃないかな」

「そうでちねー、じゃあ最初の秘密結社のお仕事は山賊を退治してため込んだ金品強奪ってところでちか」

「秘密結社の最初の作戦はそれで構わないのですけど、それよりお二人に聞きたいことがあるのです」

「うん? なんでち?」

「デーリッチさんが王国で悪事を学べばいいといった理由がよくわかりました。

 ハピコさんに羊羹をだまし取られたり、マルースさんに口説かれ自分の部屋に連れ込まされそうになったり」

「マルースさん、ヘルちんにも手を出そうとしたのかい……」

「いえ、寸前でこの娘に手を出すのは可哀そうすぎる、と勝手に引いていきました」

「あ、そうなんだ……」

 あの人もこのチョロくて畜無害なヘルちんに手を出すだなんて罪悪感が耐えられなかったのか、と変なところで感心するローズマリーだった。

 

「その上まさか、あのような邪悪な生物まで飼いならしているだなんて!!」

「あのような邪悪な生物?」

「拠点の外にいる、あの殻をかぶったウミウシみたいな軟体生物のことです!!」

「ああ、カタちゃんのことでちか!! 

 見た目は怖いでちが賢くて優しいでちよ、この間も食い逃げ犯をビームで気絶させたんでち」

「ビームも出すんですか!?」

「デーリッチ、それはたとえが悪いよ。

 よく子供達を頭の上に乗せて殻を滑り台みたいにして遊んであげてたりするんで、基本無害だからヘルちんもそう怖がらなくていいよ」

「そ、そうなの? じゃあ今度私もやってみようかしら」

「君は子供か!!」

 王国に潜む巨大生物にビビる悪の秘密結社の親玉に、ツッコミを入れるローズマリーだった。

 

「しかし温厚な生物なら秘密結社の怪人枠にはできませんわね」

「ああ、悪の秘密結社なら戦闘員だけじゃ物足りないよね」

「だったら、今度ビルーダー様に聞いてみるでち」

 デーリッチがそう提案した時である。

 

「ふふふ、話は聞かせてもらったわ」

「あ、ビルーダー様」

「あなた達、怪人が必要なのね。

 だったらこれを使いなさい」

 突如として会議室に現れたビルーダーは、何かを呼び出した。

 

「いでよ、我が使徒よ!!」

 そうして現れたのは、カマキリの上半身とザリガニの下半身を持ち、鎌と鋏を1対づつ持ち合わせた怪物である。

 

「「おおー!!」」

 そのシャープの見た目に、デーリッチとヘルラージュは目を見開き感嘆の声を上げた。

 

「これも使徒なんですか?」

「ええ、カマガニちゃんよ、カタちゃんと違って完全な戦闘特化タイプなの。

 汎用性は大きく劣るけど、近接戦闘も可能で移動も俊敏だわ」

「あの、思ったのですけど、これってビルーダー様が作ったんですよね」

「そうよ、当然じゃない。私の本体は生前、錬金術師だったのよ、キメラや人造人間なんてお手の物よ」

「なんてことなの、王国にはとんでもない悪のマッドサイエンティストが潜んでいたのですね!!」

「ふふふ、バレてしまっては仕方がないわね」

 戦慄しているヘルラージュとノリノリのビルーダーを見て、お互いに顔を見合わせる二人。

 

「ビルーダー様、なんだかノリノリでちね」

「悪の秘密結社なんだから止められると思ったのにね」

 なんてデーリッチとローズマリーが話していると、向こうの方にも話の進展があった。

 

「秘密結社にはマッドな科学者がいるものでしょう? 

 私の技術を提供してあげるから、困ったときは言いなさい」

 ふふふ、と意味深な含み笑いをするビルーダー。

 

「ビルーダー様、どうして協力してくれるんでちか?」

「わからないかしら、デーリッチ。秘密結社なんてロマンの塊じゃない。私そういうの大好きなのよ、私も混ぜなさい。裏方でいいから」

「女神様が悪の組織大好きって」

 それでいいのか、と思わないでもないデーリッチだった。

 

「大丈夫よ、私これでも邪神呼ばわりされたことなんて両手で数えきれないから」

「それは大丈夫な理由になりませんけど!!」

「でも前衛はほしいでしょう? あなた達、後衛ばかりじゃない」

「それはそうですけど……」

 痛いところを突かれ、口ごもるローズマリー。

 

「なんなら使い捨てにしても構わないわよ。

 怪人枠なんて毎週変わるものなんだし」

「それはさすがに可哀そうでちよ。

 ところでカマガニちゃんはわかるんでちけど、あっちはなんでカタちゃんなんでち?」

「見た目がカタツムリっぽいから」

「あれカタツムリだったの!?」

 どう見てもカタツムリという感じじゃない姿に、デーリッチもびっくりである。

 

「悪のマッドサイエンティストも仲間に……なんだか悪の組織らしくなってきましたわね!!」

「それ喜ぶべきところかなぁ」

 ローズマリーは純粋に嬉しそうにしているヘルラージュを見て率直な感想を述べる。

 そして、直立不動のままの新たな使徒を見やる。

 

「(これがあの時に出てきたら、きっと死人が出てたんだろうなぁ)」

 もう片方とは段違いな殺傷性のある見た目に、思わずそんなことを考えてしまうロースマリーだった。

 

「ビルーダー様にしては格好いい見た目でち!!」

「私にしてはってどういう意味かしら?」

「もしかして、きょ、巨大化とかできるのかしら!?」

「できるようにしてほしいの?」

「してほしい!!」

 しかし二人はキャッキャと大はしゃぎで、それを見ていてローズマリーも思わず頬が緩んだ。

 

「しかし、こうして使徒を借り受けてしまっていいんでしょうか?」

「いいのよ、プライベートってことにしておいて。

 他にも作ってほしいデザインの怪人とかいるかしら?」

「じゃあじゃあ、こういうのをお願いできませんかッ!!」

 すっかり悪の狂科学者に夢中のヘルラージュである。

 

「やれやれ、まさかビルーダー様まで参加してくるなんて」

「いいんじゃないでちか? ビルーダー様の神様のお仕事って大変みたいでちから、息抜きには丁度いいんじゃないんでち? 

 ここ最近ローズマリーも王国も大きくなってきて、デーリッチと遊べないでちから。

 人類全体の視点とその責任を持つビルーダー様も遊ぶ時間が必要なんじゃないかなって思うんでち」

「……そうだね、責任があると自由に行動する時間なんて無くなるからね」

「それに、ずっと神様として振る舞っているビルーダー様の雰囲気が最初の頃より柔らかくなって、少しずつ王国のみんなと打ち解けていっているのがデーリッチは嬉しいんでちよ。

 ビルーダー様は誰もが笑顔の楽園を作りたいって言ってるけど、そこにビルーダー様が居ないのならそれはきっと嘘なんでち」

「うん、それは私もそう思うよ」

 ローズマリーはデーリッチの頭を撫でながらそう呟いた。

 彼女も個人の範疇とはいえ、多くの貢献を齎してくれたあの女神様には感謝をしていた。

 

 彼女の言動は恐ろしく、そして超然としているが、理解はし合えていた。

 神としての我を通すことなど無く、それこそこの間のトゲチーク山での事件が初めてですらあった。

 為政者として知識だけの素人同然のローズマリーに多くの助言や経験談を話してくれたり、王国のみんなの健康を真剣に考えてもくれた。

 何より、彼女は他の誰よりもデーリッチを評価していた。

 

「デーリッチはビルーダー様が作ろうとする楽園は無理かもしれんでちけど、この国がビルーダー様にとっての居場所になってくれると嬉しいでち」

 ローズマリーに撫でられ、くすぐったそうに笑みを浮かべるデーリッチはまさしくこのハグレ王国の理念を体現していた。

 

「理想の楽園か……」

 それが自分とデーリッチが想像する場所であることを、ローズマリーは怪人のデザインについて話し合っている二人を見て思いを馳せるのだった。

 その視界の端で、直立不動だった使徒が腰を折って自分たちに頭を深々と下げていることに、くすりと彼女は笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

『 プリシラ成長日記その2 』

 

 

「いいかい、ヅッチー。マルースさんに変なことされたらすぐに大声を上げて近くの大人を呼ぶんだよ?」

「もうちょっと言い方があるんじゃないかねぇ、マリちゃん」

 俺はそんな辛辣なことを言うローズマリーに見送られ、ヅッチーと一緒に交易馬車に乗り妖精王国へと向かう。

 ヅッチーと二人きりになる機会などあまりないので、俺はここぞとばかり彼女にアピールする。

 

 俺はいかに妖精王国で頑張っているかを彼女に聞かせた。

 だが俺の話などつまらないのか、ヅッチーは最初こそ聞いていてくれたものの、程なくして口を尖らせて黙り込んでしまった。

 

 この前のリッピ―とリヴェエラと共闘してデーリッチ達と相対した時なんてすごく喜んでくれたのだが。

 やはり若い子には派手な話の方が盛り上がるのだろうか。

 

 そうして俺とヅッチーは妖精王国の事務所に到着し、交易品の詰め替えをする間ヅッチーの周りに集まってきた妖精たちに彼女はハグレ王国で学んできたことを楽しそうに語る。

 エステル提案のグラウンドやビルーダー様の診療所のことなど、妖精王国に無いものについて語り、留学の途中経過などを報告していた。

 しかし妖精たちはヅッチーの話が長くなるにつれ、早く彼女と遊びたいのか先ほどまでのヅッチーと同じようように口を尖らせ始めた。

 

 俺はそれとなくヅッチーにみんなと遊んだらどうだと促したのだが、彼女はまた別のところに交易馬車を走らせないといけないから、と積み荷を乗せたら稲妻のように去って行った。

 ちなみに俺はこのまま妖精王国でお仕事である。

 

 妖精たちはヅッチーの連れない態度にぶーぶーと可愛らしく不満を漏らしたが、プリシラが手を叩いて皆に呼び掛けると、彼女たちは仕方なさそうに仕事に戻った。

 

「ヅッチーが頑張っているのはみんなわかってるのよ。

 みんなただ、ヅッチーが居なくてさびしいだけ」

 というプリシラに、俺も頷いた。

 港町ザンブラコの出店に成功し、身も心も成長した彼女は一番寂しそうにしていたその姿をいつしか見せないようになった。

 

 俺は彼女の人として、女としての成長を喜んだが、弱音ひとつ吐かない彼女に少し危うさを感じていた。

 最近は俺の役職も上位のものに昇進し、ハグレ王国より稼がせてもらっているのだから今後も良きビジネスパートナーとして歩んでいきたい俺としては少しばかり彼女が心配である。

 

 王国にはジュリアの奴もいるし、デーリッチ達もだいぶ成長したし、俺はしばらくは妖精王国の方に専念させてもらっても大丈夫だろう。

 ……まったく、最初は下心しかなかったというのに。下手に愛着が湧いちまうのは、俺の悪い癖なのかねぇ。本当に、嫌になるわ。

 

 

 ──もっとも、俺が自分の馬鹿さ加減に嫌になるのはそう遠くない未来なのだが……。

 

 

 

 




ヅッチーたちの擦れ違いは書いていてツラいです……。

二章はマルース君が裏側に回るので、ビルーダーが主軸に物語が進んでいきます。
メインシナリオが着々と進んでいき、オリキャラが二人いる必要がある場面が近づいてきております。
もう一回拠点会話を挟みたいところですが、次はうちのメイン火力に登場して物語を進めてからにしようと思います。
それではまた、次回!!
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