今日一日は書きっぱなしですが、何話かないと格好が付かないので頑張って書きました。
『遺跡裏にて』
――――時は少し遡る。
俺はフク様に連れられ、遺跡の裏側の森に連れて来られていた。
「どういうつもりですか?」
フク様は端正な顔立ちを顰められ、俺にそう仰られた。
「どういうつもり、とは?」
「盗賊の真似事をしたことです。
わざわざ貧乏農民まで雇って」
「それは勿論、フク様が身を置かれる組織とやらのトップの器を試す為ですよ。
俺の故郷じゃ王を試す為に貧者を装うのは定番でしてね」
「そんなこと、私がいつ頼みましたか?」
「主上が仰る前に意を汲むのが眷属の役目では?」
俺がそう答えると、彼女はハァと溜息を吐かれた。
「いつから私の眷属になったんです」
「え? 御自ら天上に召し上げられたのだから、とっくに眷属となったのかと」
「あの時は人手が足らなかったから地上から労働力を探していただけです」
それを聞いて俺はぽかんとなった。
「そんな、てっきり俺は選ばれたものだと」
「なんですかその、過剰な自意識は。
逆に聞きますけど、そう思っていたのならどうして大工の仕事を放り出して地上で傭兵なんてしていたんです?」
「それは……」
フク様がそれを問うのは当然のことだった。
俺は彼女の面目を潰してしまった形になるのだから。
「それは?」
「それは、その……」
俺は彼女の圧力に耐え切れず、たまらず土下座をした。
「親方の娘に手を出してしまったからですぅ!!」
俺の叫びを聞いたフク様は、目を閉じて天を仰いだ。そんな気配がした。
「お、お許しくださいぃ」
「呆れました。心底呆れました。
私があなたを拾った時も、女性関係で破滅してなかったですか、あなた」
「い、いやぁ、あの時は自棄になってて」
「もういいです。顔を上げなさい」
「は、はい」
俺はフク様に失望されていないか、恐る恐る顔を上げた。
「どうしようもないダメ人間には違いないですが、あなたは私の呼びかけに応じてくれました。
必要と感じた時に誰かが居てくれると言うのは嬉しいものです。それを以ってこのことは不問と致しましょう」
「ははぁ」
流石は天上にて最大の派閥を率いる御方だ。
器の大きさが違う。
「ところで、何故にこんな辺境の遺跡であんなガキどもに手を貸しておられるのです?」
俺はそもそもの疑問を彼女に投げかけた。
彼女の権威が有れば俺を必要とすることなどないはずだ。
「ここには、福の神の修行として来ています」
「え、福の神としてですか?」
神々は数多の側面を持つことを知っている。
だが彼女がそう言った側面を持っているとは知らなかった。
「その為に、破壊の力は捨てて来ました」
「そんな馬鹿な……」
俺はそれを冗談だと思った。天上であれほど恐れられ、畏怖されたフク様がその御力を捨てて地上で活動するなどと。
だが、フク様の表情と目は本気だった。
「……本当、なんですね」
「ここではハグレの福の神、福ちゃんとして通しています。
あなたもそうしてください。良いですね」
「は、ははぁッ。主上の御心を推察しようとした御無礼をお許しください。
全てそのように致します!!」
俺は片膝を突いて彼女に頭を下げた。
「そんな大げさに敬わないでいいですよ。
と言っても、あなたには難しそうですから、一つ弱音を言います」
「はい、どうぞ!!」
「貴方もすぐに分かると思いますが、このハグレの国を作ろうとしているデーリッチちゃん、あの王冠の子です」
「はい」
「あの子の純粋さを見ていると、何だか彼女たちを利用している自分が浅ましく思えるんですよ。
このまま神として力を貸すべきか、一人の仲間として振る舞うべきか」
俺は驚いた。
神とはその力の性質のままに迷わず振る舞うものだと思っていた。
なのに、フク様は迷っておられた。俺には、俺の故郷では信じられない事だった。
「神々の行いに善悪などありますまい。その良し悪しも。
フク様はフク様のなさりたいことをすればよろしいのでは?」
そもそも、自分の本来の力を捨て去るなど、神と言う存在からすれば有り得ない事。
もう既にそうしてしまったのだから、もう彼女の心は決まっているのだろう。
俺などに御心を露わにしたのは、ただ口にして確認したかっただけに過ぎないのだろう。俺などが意見を具申するだけ意味の無いことだ。
「なるほど、言ってほしいことを言ってほしい時に言えるから、あなたに世の女性は惑わされるのですね」
「な、なんのことやら」
俺は目を逸らした。視界の端のフク様はもう既に笑顔を取り戻されていた。
「あなたには働いて貰いますから、そのつもりで」
「はッ、全ては御身の御心のままに」
『拠点会話 マッスルとハピコ 』
「よう、マルースさんって言ったか?
正式に仲間になるらしいじゃないか。あんたが居ると頼もしい、よろしくな!!」
再び拠点内で出会ったミノタウロスの男は俺と会うなり爽やかにそう言った。
「いやぁこちらこそよろしくな、うし君!!
あんたみたいに強いハグレは昔戦場で見かけた雷バリバリ纏った獣人以来だよ」
俺とマッスルは再会するなり肩を組んでお互いの健闘を称え合った。
「なにやってるのこいつら、男臭ッ」
その様子をハーピーのハピコがテーブルに体を投げ出して呆れたように見ていた。
彼女は雑巾がけなど出来ないだろうから、こうして暇しているのだろう。
「男同士の友情を確かめ合ってたんだよ、えーと、ハピコだっけか?」
「まあ、壁役が増えればその分私が前線に出る割合が減るからいいけどさ」
「こいつナチュラルに俺らを壁扱いしやがったぞ」
だがマッスルには彼女の軽口は慣れたもののようだった。
「俺はあんまり前には出ないけどな。
あの小さい王様じゃあ前衛と後衛の切り替えが判断付かない事もあるだろうし、戦闘後の雑事とか後方警戒とか。まあ主に部隊指揮の補佐だわな」
「ふーん、まあ頑張りたまえ!!」
「何様だよお前!!」
何だか偉そうなハピコに軽快に切り返すマッスルを見て、俺は笑った。
「それにしてもお前みたいな詐欺師紛いがあんなガキの王国ごっこに付き合うなんて意外だな」
「おいおい、そんな言い方するなよ。ローズマリーの姉御に聞かれたらぶっとばされるぞ」
とマッスルは俺を諌める言葉を口にするが、本心は俺と大差無いのだろう。否定はしなかった。
「まあ、危ないところを助けられちまったしねぇ。
飯が食えているうちは付き合ってやろうかなって思う程度には」
そう言って肩を竦めるハピコは、この場所を止まり木程度にしか思っていないようだった。
「そう言うそっちも、私の時みたいにお節介焼きかい?」
「つうかお前らどういう馴れ初めだよ」
俺とハピコの接点が見えないのか、マッスルが会話に割り込んで尋ねてきた。
「聞いてくれよマッスル、このおっさんは私がお金に困ってるのを知ってて、お小遣いやるから一晩付き合えって言ったんだぜ?」
「言い方ぁ!! もっと言い方あるだろぉ!!」
えッ、という表情になっているマッスルを見て、俺は慌てて訂正を求めた。
「こいつの詐欺が酒場で話題になってたんだよ。
ハグレだからぶっ飛ばしてやろうって流れになるのは目に見えてたからな、忠告してやろうって思っただけだ。
まあ、俺の想像以上にあこぎな商売してたけどな!!」
「お前、俺の時と似たようなことになってたじゃねぇか、こりねぇな」
「うっせ!!」
マッスルの苦言に今度はハピコが笑いながら返した。
少なくともこの二人にとってこの場所は軽口を言い合って笑っていられる場所のようだった。
それが少しだけ俺の救いにもなった。
「まあ、恩ある福の神様があの子に手を貸せと仰ったんだ。
ガキの面倒を見るのは初めてじゃないし、あの子たちが危ない橋を渡らないように見ていてやるつもりさ」
「やっぱりお節介焼きじゃないか」
「うっせぇ」
すかさずハピコが茶化してくるので、俺は拗ねた振りをした。
『拠点会話 小さな王様とパンドラの鍵 』
「マジかよ……」
俺は目の前の景色が一瞬で切り替わるのを見て、度肝を抜かれていた。
「ふぉっふぉっふぉ、どうでちか。
これがキーオブパンドラの力でち!!」
目の前の小さな少女が、得意げになってその異様に大きな鍵を見せびらかした。
「マジでキーオブパンドラなのか。
最初聞いた時は冗談だと思ったが、最初の召喚士の遺物があの遺跡に転がってただって?」
「ええ、本当なんですよマルースさん」
俺の言葉を肯定するように、緑の参謀は頷いた。
「召喚術の知識があり、戦術顧問のあなたにはこれを実際に体験しておく必要がありましたから」
「……なるほどな、女子供だけで国を作ろうだなんて言えるわけだ。
これひとつで戦術的な敗北は有り得ない。やり方によっては戦略すら絵空事だ」
もしこの空間移動が使用できて部隊運用で敗走するなら、そいつは歴史に残る無能だろう。
「いや、恐れ入ったわ。
それひとつだけで召喚士協会はひっくり返りますよ。
どれだけの歴史的価値があるか……!!」
柄にもなく、俺は興奮していた。
伝説に存在し、既に遺失物となっていると思われていたキーオブパンドラが現存し、目の前に存在していることに。
「召喚士協会に伝手があるあなたはこの事を彼らに言いますか?」
「やめてくれよマリちゃん。俺は協会とは試験を落とされた時に縁を切ったんだ。
向こうも俺みたいなハグレなんて覚えちゃいないだろよ」
「マリちゃんて……」
ローズマリーの試すような物言いに、俺はやんわりと安心させるようにそう答えた。
「おやおや、ローズマリーがマリちゃんなんて呼ばれて恥じらってるでち、これはレアでち!!」
「茶化さないでくれよデーリッチ。
いきなりでちょっと驚いただけじゃないか」
彼女はデーリッチが可笑しそうに言うものだから、気を取り直してそう否定した。
「ふむふむ、あまり男には免疫はない、と。意外と押しに弱い感じかな?」
「あの、そういうのは止めてくれません?」
「まあまあそう言わず、せっかく買い出しに来たんだから。
ほら、でち子もお近づきの印にお菓子買ってやるよ。俺のことは好きに呼んで構わないからさ」
「わかったでち、マルちゃん!!」
「はっはっは、でち子は可愛いなぁ……あと二,三年ってとこかな」
「…………」
――――この時、彼の本性の一端を知ったローズマリーは誓ったと言う。この男の毒牙から、デーリッチを守らねば、と。
『 第一回王国会議、開催 』
拠点の改造工事が一段落し、ハグレの国の出発点となる最初の会議が国王様たっての希望により始まった。
最初だから雰囲気だけだったが、赤字が報告されたり、金策の為の活動を提示したり,
レベル上げ用ダンジョンが有ったりと、決してお遊びという調子ではなかった。
それだけ彼女らの、ハグレの居場所を作るという思いが確かなのだろう。
マッスルの何気ない一言により、国名も暫定的に“ハグレ王国”と決まったようだ。
そしていよいよ、王国の資金源となるだろう出店などの提案に移ったわけだが。
鍛冶屋を召致するというローズマリーの意見はすぐにデーリッチによって可決された。
問題はハピコの奴だった。
彼女は前回の天使詐欺は倫理的に問題があるとし、その反省を生かして新しく案を練って来たらしいのだが、それと言うのが。
「この『幸せ呼びまくり、開運福ちゃんキーホルダー』です!!」
と、満面の笑みで完成予想図のイラストを掲げたのだ。
「うおぉい、お前!! ちっとも反省してねぇじゃねぇか!!」
「なんだよマルっち、ノリ悪いなぁ。
マジモンの神様がバックに居れば誰も文句なんて言ってこないだろ?
仲間だから版権料も無視できるし、ちょろいもんよ!!」
「今目の前で文句言っている奴が目に入らねぇのかお前は!!」
「前回の反省とは一体……」
と、デーリッチにも呆れられる始末だった。
「お前これ福の神様から許可貰ったのかよ!?」
「いやだから、さっさと製造ラインに製品を乗せちまってからでいいじゃん!!
その後からもう引けないって半泣きで訴えれば行けるって!!」
「そんなこと俺が許すと思ってんのか、このアホウドリが!!!」
俺がハピコの奴を憤りのままに揺さぶっていると。
「こらこら、聞こえてますわよー」
「ああ、福の神様!! このアホウドリに天罰を下してやってくださいよ!!」
「アホウドリ言うなし!!」
福の神様が席を立ってこちらにやってくるのを見計らって、ハピコは俺の手から抜け出した。
まあ同じ会議室で会議をしているわけで、彼女に聞こえない筈も無いわけで。
「ふ、福ちゃん、丁度良いところに!!
マルっちが福ちゃんを利用した新しい商売を――」
「てめぇ、俺まで巻き込むつもりかよ!!」
今度はアームロックを仕掛けてオシオキしてやると、ばさばさと翼で俺の腕を叩いてギブアップを宣言し始めた。
「だから全部聞こえて……。あら?」
福の神様は床に落ちたキーホルダーのイラストを拾い上げた。
「思ったよりしっかりしたデザインですね。
うーん、やる気はあると見ましたわ。そうですね、これなら売っても良いですよ」
「良かったなアホウドリ。福の神様の許可が出たぞ」
「げほげほ、あとで覚えてろよ……え、本当!?」
ハピコは俺を恨みがましく見た後、彼女が販売許可を出したことを頭で処理し終えたようだった。
「ええ、福を感じさせるデザインです」
「ううん……どんな流れかよく分からんが、許可が出てしまったでち」
とは言え、店舗の出店許可を最終的に出すのはデーリッチである。
彼女は少しだけ逡巡すると、所持金を確認して選択肢で「はい」を選んだ。
「ありがとうございます!!
手作り、手渡しをウリにして頑張りますよ!!」
「よかったな。まあとりあえず製品第一号は俺に売れよな? 御神体にするわ」
「ここに私が居るのに御神体にする意味とは……」
「それじゃあ、マルっち早速店舗の設計についてだけど」
福の神様が疑問を抱くのを横目に、俺はハピコと店舗の建築について話し合いを始めるのだった。
その後何だかんだでマッスルの提案した店舗も許可が下り、俺たち三人は記念すべき第一回目の会議が終わると仲良く店舗の設計ついて決める為、夜まで語り合うのだった。
オリキャラのマルース君は魔法以外何でもできるようにこれから見えるかもしれませんが、実際器用貧乏でデーリッチ達が出来ない事などを穴埋めするだけの存在です。そのようにキャラを練りました。
ハグレ王国に、これは足りないなと思ったことだけをさせます。ストーリー全体を変えるような出しゃばりはしないしできません。今のところは、彼もそうするつもりはないでしょう。
あと訂正事項。
一話の最後にマルース君はハグレ王国にいくと言ってましたが、この時点でハグレ王国の国名は決まってなかったので、ハグレの国に行くと訂正しておきました。
私としたことがこんな初歩的なミスを、お恥ずかしい限りです。
そろそろあとがきのネタが無くなってきましたが、これからは更新は少し緩やかになると思うので悪しからず。
それではまた、次回!!
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原作の綿密な描写
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キャラ同士の掛け合い