『本編進行イベント 失楽園 』
その日の妖精王国の定例会議では、妖精たちは荒れに荒れていた。
先日のヅッチーのザンブラコでの対応が今まで溜めていた鬱憤を爆発させたのだ。
「…………」
俺は先ほどから何も発言をせずに黙っているプリシラを見て心底ハラハラしていた。
この場にヅッチーが居ればリンチにでもされそうな雰囲気だった。
仮に彼女を擁護しようものなら同様に袋叩きにされそうだ。
そういう空気に、いつの間にかなっていた。
「ヅッチーはもうハグレ王国の妖精になっちゃったんだよ!!」
「ヅッチーは私たちを裏切ったんだ!!」
「そうじゃなきゃあザンブラコであんなこと言わないよ!!」
そして会議は、会議とは名ばかりの罵倒の場となっていた。
「裏切り者は殺さなきゃ!!」
「そうだ、処刑だ、処刑しよう!!」
「私たちを裏切るなんて絶対に許せない!!」
俺は現実逃避気味に故郷での妖精の伝承を思い出していた。
「プリシラはどう思うの!!」
やがて、彼女たちの視線は彼女へと集中した。
沈黙が舞い降り、プリシラは静かにこう言った。
「分かりました。ヅッチーに対する処罰は、次に彼女が帰ってきた時に彼女を交え検討しましょう」
「そんなんじゃ遅いよ!!」
「そうだそうだ、ヅッチーはもうハグレ王国の妖精なんだから!!」
「ハグレ王国に攻め入ってヅッチーを引き渡してもらわないとッ!!」
彼女らの言葉を聞いて、俺は思った。
こいつらはヅッチーを追放したいんじゃない、ただ子供なのだ。
子供が自分たち以外のグループと仲良くしているから、ムキになって排斥しようとしているだけなのだ。
そして自分たちが得た力を誇示したいだけの、子供の集まりだった。
「…………わかったわ」
やがて、プリシラは様々な感情をそぎ落とした声音でこう言った。
「ハグレ王国に直接出向いて、ヅッチーの引き渡しを要求しましょう。
当然向こうはこちらの要求に応じないでしょうから、武力での交渉も視野にいれるべきだわ」
先端の尖った氷柱のように、冷徹な声だった。
「お前らは本当にそれでいいのか?」
俺は糾弾されるとわかっていながら、彼女たちに言った。
この場で俺がすることは、俺の保身ではないのだ。
「それは戦争になるってことだぞ?
つまり、殺し合いだ。お前らは知り合いが、友人が、死ぬ光景を見たいのか?」
「マルちんはハグレ王国の人間だからそんなこと言えるんだよ!!」
「そうだよ!! 自分の仲間が殺されるかもしれないから反対してるんでしょ!!」
「マルースさん」
俺の言葉にヒートアップする妖精を諌めるように、プリシラが俺の名を呼ぶ。
「あなたはどうするのですか?
ハグレ王国に付くか、妖精王国に付くか、今すぐ決めてください。
返答の如何によっては、この場であなたを拘束しなければなりませんが」
「…………」
「今すぐ、決めてください」
「……良いだろう、俺は君らに付く」
俺は、プリシラにそう答えた。
「もちろん言葉だけでは信用できないだろう。
監視を付けても良いし、ヅッチーの引き渡しが終わるまで向こうに手紙も出さない。
交渉役を引き受けてもいいし、なんなら捕虜という形で交渉材料として使ったって構わない。
だから戦うという選択肢は最後の、本当の最後にしてくれ」
「わかりました、みんなもそれでいいわね?」
プリシラはみんなに確認を取って、彼女らが頷くのを見てこう続けた。
「では警備長としての役割は継続、あなたの経歴を生かして前線で部隊を率いてもらいます。
役職もより上位の物を用意しましょう。ハグレ王国を裏切るのですから、それくらいはしませんと」
「そりゃあ最高だ、身も心もこの国に捧げさせてもらおうか」
俺はわざとらしい下卑た笑みを浮かべたのだった。
そして俺はプリシラと待遇の相談をするという名目で、二人きりになった。
俺が先に部屋に入り、後ろを振り向くと彼女はドアを背にずるずると床へと座り込んでしまった。
「どうして、どうしてみんな、ヅッチーが大好きなはずなのに……」
自分が背負ってしまったものの重さを吐き出すように、彼女は涙を溜めてそう呟いた。
「ガキなんだよ、揃いも揃ってあいつらは。
手にした玩具を見せびらかして力を誇示したいだけなんだ。
本当にヅッチーを処刑したいなら、彼女が帰ってくるのを待てばいいだけなんだからな」
俺は吐き捨てるようにそう言った。
「ごめんなさい、ごめんなさい、マルースさん。みんなが、みんなが酷いことをしようとしてる」
「気にするな、攻め込まれたぐらいでどうにかなる連中じゃない」
ぼろぼろと涙を零して謝る彼女を慰め、俺は何とか彼女を安心させようと必死だった。
そうしていると、プリシラは突然俺に抱き着いてきて胸元に顔を埋めた。
「お、おい……」
「お願いです、少しだけこうさせてください……」
「……」
俺は黙って彼女の体を抱きしめた。
体温は低く、華奢な体だった。こんなにも細い体で、誰にも甘えられずに重責を背負っていたかと思うと俺は居た堪れなかった。
そして彼女は、親友を殺すという選択をしてしまった。
なぜ、どうしてこうなったのか。
俺の胸元で嗚咽を漏らす少女はただ、みんなの為に頑張っていただけだというのに。
だがここで彼女が妖精たちのリーダーを放棄したら、彼女たちの暴走は歯止めが利かなくなる。
それがわかっていたからこそ、プリシラはこんなつらい役目を引き受けたのだ。
「俺の故郷の世界には人間以外の種族はいなかったが、ほかの種族の伝承は存在していた。
曰く、妖精は気まぐれで飽きっぽく、いたずら好きで嫉妬深く、嘘つきや約束を破る者には恐ろしい報復をするという。
……楽園なんて、初めから無かったんだな」
妖精たちは無垢で無邪気で優しく、確かに可愛らしかった。
だがそれは、子供特有の残酷さを持ち合わせるという意味でもあったのだ。
あの醜悪なゴブリンのような魔物が、妖精としての側面があるのはそういうことなのだろう。
俺はふと、デーリッチが恋しくなった。
彼女がどうして王様なのか、痛いほど理解させられていた。
ローズマリー、君は本当にすごいな。ビルーダー様の慧眼に、心底恐れ入った。
「マルースさん」
「どうした、プリシラ」
プリシラは弱弱しく、俺を見上げる。
彼女の息遣いや泣きはらした表情がよく見えた。
「お願いだから、今だけはヅッチーや辛いこと全部、忘れさせてくれませんか」
「えッ……それは」
俺は。
……俺は。
おれ、は……。
ぷつん、と理性の音が切れるまで数秒と無かった。
§§§
翌日、ハグレ王国拠点にて。
「物事にはいくつもの側面が存在するわ。
自身の短絡的な思い込みで行動することは許されない。
もちろん、国家の主宰する者は決断力を必要とされるわ。王が迷えば、その分だけ民が苦しむの。
それ故に国王の発言は容易に撤回することができない責任が伴うのよ。
もしあなたが仲間を糾弾したことに責任を感じるのなら、判断力を養いなさい」
ビルーダーは拠点東の談話室にてヅッチーに講義をしていた。
「あなたもわかっていると思うけど、王は絶対ではないわ。
国家の主体とは国民であり、采配を振るう者は敬われはされども決して特別では無いのよ。
そして永遠に続く組織や国家は存在しないわ。どんな優れた組織も代替わりで当初の理念を失い、腐敗し、崩壊する。
自浄作用を持たせ改革を繰り返すことが組織を長続きさせるコツだわ」
「ふむふむ、なるほど」
ヅッチーは真面目にノートに彼女の言葉を書いていく。
「なんだかヅッチーの奴、急に真面目に勉強しはじめたな。
どういう風の吹き回しなんだ?」
「マッスルさん、そういう言い方は失礼よ。
ヅッチーは学ぶことへの喜びを見出したんですよ、きっと。
一国の主ということが成せる責任というやつですわ」
その光景をニワカマッスルとヘルラージュが珍しそうに見ていた。
「その意気込みをうちの王様にも分けてほしいもんだな。
まあ、子供のうちは遊ぶのが仕事だと思うけどよ」
「まあまあ、子供の成長を見守るのも大人の仕事ですわよ」
「ヘルさんはもうちょっと大人っぽさを見せてもいいんじゃないんですか?」
「その言い方はちょっと無神経じゃありませんの!!」
二人が邪魔にならない程度に遠巻きに漫才を繰り広げていると。
「たたたた、大変ですぅ~!!」
大慌てで雪乃が駆け込んできたのだ。
「奴らが、奴らが攻めてきたんですぅ!!」
「攻めてきた? え? 何が? どこに?」
「ハグレ王国に、妖精王国がッ!!」
よく意味が分かっていないヘルラージュに雪乃は精一杯の声音でそう主張した。
「な、なんだって!?」
ぺきッ、とそれを聞いたヅッチーは持っていた鉛筆の先を折りながら力任せに立ち上がった。
そして雪乃が言うには、もうすっかりこの拠点は妖精王国の兵隊に囲まれているとのことだった。
「ふぅむ、こういう出目がでた、か」
一人、ビルーダーは冷静に事態を受け入れていた。
「で、では、王国会議を始めるでち!」
ハピコと共におおよその陣営を偵察したデーリッチは、会議場に集まっている面々だけで緊急会議を執り行うこととなった。
「うん、皆、知ってのとおり、今王国の周りを妖精たちの兵隊が囲んでいる。
敵の所属は妖精王国。敵リーダーはプリシラ。
偵察の結果、確認された兵力は60人規模。マルースさんが包囲の前線指揮を執っている姿も見たという話や目撃証言がある」
内訳は南側にプリシラ率いる本隊が40人程度、西側に小隊が20人頬度いるとローズマリーは報告した。
「マルースさん、本当に裏切っちまったのかなぁ」
ニワカマッスルが皆の不安を代弁するかのようにそう呟いた。
「敵の動機は不明、いまだ敵からの通信は一切無い」
そのローズマリーの言葉に、ヘルラージュがビビって軍隊じゃなくて旅行中なんじゃないかという世迷いごとを言ったが、当然彼女は全員が武装して旅行する団体は見たことないと切って捨てた。
デーリッチもまずは動機をはっきりさせなければどう戦えばいいかわからない、と明確な議題を提示した。
「ああ、しかしうちと妖精王国の接点は一つしかない。
ヅッチー、どういうことだろう、これは?」
ローズマリーは努めて事務的に、近くに座るヅッチーに尋ねた。
「…………」
「何を黙っているんだ?
妖精王国がせめて来た理由の一つも推測できないのか?」
「……たぶん、私がリーダーだってのに嫌気がさしたんじゃないのか。
皆も、マルちんも、誰もがプリシラをリーダーとして認めているようだったし」
「それだけで国同士で争う理由にはならない。
そんな投げやりな態度じゃ困るな。
では言い方を変えよう。プリシラの動機を君の立場から推察してみなさい」
「…………」
だが、ヅッチーは妖精王国が攻めてきたという事実を受け止めきれないのか、どこかぼんやりした様子だった。
「君はどうしたいんだ!
黙っていて、それで君の立場が改善するとでも思っているのか!?」
その現実逃避気味の態度に、ローズマリーは激怒した。
ヘルラージュが彼女をなだめるも、今一番命の危険があるのがこの子だから怒っているんだと怒鳴った。
「敵は本気だぞ、ヅッチー。こっちのことをよく知っているマルースさんを抱き込んでいるんだからな。
あれは妖精王国の兵力のどの程度の規模なんだ? ただの威嚇でこんな兵を出したりしない。
私はハグレ王国の参謀として、君と、王国の民たちの生存確率を少しでも上げる義務があるんだ。
君が妖精王国とトラブルを抱えているのは知っている。他のみんなだって知っている!!
だけど今、君の口からそれを話さないと君の立場はますます悪くなるんだぞ!?」
彼女は怒りをあらわにしながらも、冷静だった。
冷静でありながら、しかしやっぱり激怒していた。
「理解を求めないで、誰が命を懸けた戦いをする!!
今、ここで、君の口から、すべて吐き出しなさいッ!!
そうして立場を決めなさい、でないと、私は君を守ることができない!!」
そしてその怒りは、ヅッチーやみんなを守りたいが故であった。
だが、それでもヅッチーは何も答えることができなかった。
怒り心頭といった様子のローズマリーを、不安げにデーリッチが見上げていた。
「もういい、何もする気がないなら、拠点の奥にでも引っ込んでなさい。
会議を進めましょう、ジュリアさん」
「ああ、どうした?」
「マルースさんを敵に回した場合、どれくらいの被害が予想されるでしょうか?」
ローズマリーに問われ、うーむ、とジュリアは腕を組んで唸った。
「まず、彼が妖精の兵士を前線に置いて盾役を配置していないことが不可解だ。
どうにも長期的な、そう、うちと戦争することを前提に用意してきて、それで攻め込んできているという感じではなかった。
私が彼なら、まず傭兵を雇って確実に勝てる数を揃え、逃げられないように最前線に配置するからな」
「相手はこちらの倍以上いるのにですか?」
「こちらは防衛線になるからな。攻める労力は守る労力の3倍は必要なのは基本中の基本だからね」
怯えるヘルラージュに、ジュリアは丁寧に説明を重ねた。
「そして指揮官として先輩……マルースさんについてだが、……恐ろしいな」
「恐ろしい、ですか?」
「ああ、あの人は魔物専門な私と違って国同士の紛争でも雇われたりしていると聞いている。
人間同士の殺し合いなら彼の方が私よりずっと上手だろう。
そんな危険に身をさらしているというのに、毎回帰ってくるものだから傭兵仲間たちは『不死身』だなんて揶揄していたりしていたものさ」
ジュリアはやや陰りの見える笑みでそんなことを口にした。
「だいたい『不死身』だなんて異名を持っているキャラってメタられて倒されるフラグでしかないわよね」
エステルが緊迫した状況下でそんな軽口をたたいて場を和ませようとしたのだが。
「いや、もしかしたら先輩は本当に不死身なのかもしれない」
「えッ?」
「昔、同じ戦場で戦っていた時、私と彼は肩を並べて前線で魔物と斬りあっていた。
だが不意に遠くからの攻撃が彼に直撃して、ああこれは死んだな、と頭の隅で冷徹に考えて、戦いを続けた私は彼がむくりと起き上って戦闘を続行する姿を見て、心底驚いた記憶がある。
もちろん、戦闘後は死に体でしばらく起き上がれられないほど重症だったが」
「なるほど、参考になりました」
ローズマリーは話が脱線しそうなのを見計らい、ジュリアの話を打ち切らせた。
「ではビルーダー様、数多の戦争の経験を持つあなたに聞きたい。
仮にこの戦いで勝利した場合、我々はどうするべきだと思われますか?」
「皆殺しにしなさい」
ビルーダーは、あえてローズマリーがそんな皮算用みたいな質問を投げかけてくることに対し、そのように答えた。
「2度と私たちに逆らえないように妖精王国に攻め入り、妖精王国に参加している妖精を一人残らず殺しつくしなさい。
下手に温情を見せて恨みを残しては面倒よ、徹底的に草の根残さず焼き払い、存在した痕跡がわからないほど叩き潰しなさい。結局それが最適解よ」
「そんなッ、そこまでしなくても!!」
「ヅッチー。これはただの意見に過ぎない、実行するなんて決まってないよ」
過激極まりないビルーダーの言葉に流石のヅッチーも椅子を蹴って立ち上がるも、冷静に会議の推移を見守っているかなづち大明神に諌められた。
かなづち大明神も何か言いたげにしていたが、進んで嫌われ役を買って出たビルーダーを見やるだけだった。
「ヅッチー、とりあえずそんなことはこのデーリッチが許可しないでち。
でもこれは一歩間違えばそういう戦いになりかねんってことをビルーダー様が言ってくれたんでちよ」
「…………だけど」
「分かっていないわね、二人とも。
戦争とは賠償金や土地の分譲でしか利益を得られない最低の経済活動よ。
働き手と言った人員の損失、物資や食料の浪費、武器弾薬の消耗等々。戦争になってしまった時点で、あちらも、こちらも、国家としての利益にはならないってことなのよ。
つまりはローズマリー、次にどうするべきかは勿論わかっているわよね?」
「はい、戦争回避の道を考えます。
敵の要求と目的を使者を出して調べます」
ローズマリーの妥当な判断に、ビルーダーは静かに頷いた。
「でも、その必要はなさそうよ」
「え?」
「ローズマリーさん!!」
ヤエと一緒に敵陣の出方を見守っていた雪乃が会議室へと飛び込んできた。
「どうしたッ、敵が攻撃を開始したか!?」
「い、いえ、マルースさんが妖精王国の使者としてこちらに面会を申し出てきました!!」
「わかった!! 向こうには使者を受け入れると伝えてくれ」
「はい、わかりました!!」
ローズマリーの指示に従い、とんぼ返りする雪乃。
そして会議場は、仲間が敵の使者としてやってきたという事実に沈黙が舞い降りるのだった。
「まず、みんなに謝罪したい。
俺が居ながらこんなことになってしまったことを、俺個人として本当に申し訳ないと思っている」
会議室に通されたマルースは、皆の前で深々と頭を下げた。
「頭を上げてください。妖精王国でそれなりの地位を確立したあなたがダメだったんですから、どうしようもなかったんだと考えています」
「ああ、そう言ってくれると助かる」
マルースは顔を上げやや憔悴した表情に笑みを浮かべた。
「それで、あちらの要求はなんですか?」
「妖精王国としては、女王ヅッチーの身柄を欲している。
速やかに引き渡しが成されるのならこちらから手出しはしないことにしている」
「理由を、ヅッチーの身柄を要求する理由を聞かせてください」
ローズマリーが尋ねると、マルースは言いにくそうに口を開いた。
「妖精王国はヅッチーを裏切り者とし、処刑することを決定した。
皆はプリシラを新女王として新たな体制で国家運営をすることを決めた」
「そんな、そんなどうして、私が何をしたっていうんだ!!」
「……」
マルースは悲しみ嘆くヅッチーに掛ける言葉が無かった。
「この場で返答を貰ってこい、とは言われていない。
返答は聞くまでもないだろうが、皆も考える時間は必要だからな」
「マルちゃん、君の意見を聞かせてほしいでち」
「俺の意見だって?」
「そうでち、マルちゃんはこの戦争をどう思っているのか、プリシラちゃんは本当にこの戦争に賛成なのか、教えてくれないでちか?」
デーリッチの問いに、やや逡巡した後彼はこう答えた。
「この戦争をどう思っているかだって?
こんなのが戦争な訳あるか!! くだらないガキどもの癇癪に俺やプリシラを巻き込みやがって!!
馬鹿なガキどもがちょっと数が増えたからって、ちょっと力を付けたからって粋がってやがるだけだよ!!
あいつらはな、見せびらかせたいだけなんだよ!! 自分たちが得た力が、丁度いい理由ができたから集団で憂さ晴らししたいだけなんだ、馬鹿馬鹿しい!!
ヅッチーが裏切り者? 処刑する? 殺し合いをしたこともないガキどもがのぼせやがって!!
これが戦争だって? こんなの子供の喧嘩以下のアホの遠足だろうが!! ゴブリンの略奪の方が欲望に忠実なだけマシだろうよ!!」
一息で己の心情を吐露した彼は、ぜぇぜぇと荒い息を吐いた。
「マルちん、じゃあやっぱりプリシラは」
「プリシラは、君を殺すと決めたよ。それだけが事実だ」
マルースは自分を見上げてくるヅッチーに、それだけを告げた。
「ではマルースさん、あちらの詳しい陣容を教えてはもらえませんか」
「それはできない」
ローズマリーの要請を彼は首を振って拒否した。
「それは、貴方が妖精王国側に付くということでよろしいんですね?」
「ああ。その代りこちらの情報は一切あっちにはしゃべっていない。
そもそも俺は今回、前線指揮官として任命されてるが隊長が別にいてそいつが指揮権を事実上握られている。
俺の命令なんて妖精たちは聞かないさ。つまり、どういうことだかわかるな、ローズマリー」
「……ええ、任せてください」
マルースが含みを持たせた物言いを理解し、ローズマリーは頷いた。
「マルちゃんはそれでいいんでちね?」
「ああ、あんなプリシラを独りにはさせられんよ。お前らには本当に悪いと思っているが」
「気にしないでほしいでち、マルちゃんはハグレ王国を裏切ってなんていない。
デーリッチの親友の友達を守ろうとしているだけなんでちから」
「まあ、女の子の為に貧乏くじを引いているのが先輩らしいというか」
「うるせぇ」
デーリッチとの会話の最中にジュリアに茶々を入れられえ、マルースはわざとらしく拗ねてみせた。
「じゃあ、向こうには一晩で答えを出すとか適当に伝えておくからな。うまくやれよ」
「ああ、そっちこそプリシラを頼むよマルちん。
親友のプリシラを任せられるのはあんただけだからな、ちゃんと大事にしてくれよ」
「お、おう、安心しろ。
決して傷心中のプリシラに付け込んで何やかんやしたりなんてしてないからな!!」
マルースは去り際に掛けられたヅッチーの言葉が不意を打たれたのか、妙に上ずった声音でそう返答した。
「何やかんや?」
「ちょっとマルースさん、その話詳しく聞かせてもらえませんか」
「かなちゃんもか? 私もじっくりと事情を聴きたいな。聴取的な意味で」
「さ、さいならー!!」
「「まて!!」」
よくわかっていないヅッチーを置いてきぼりにして、マルースはかなづち大明神とジュリアに追われ逃げ出した。
「どうしたんだ二人とも、マルちんとプリシラってデキてるんじゃないのか?」
「デキてるというか、デキそうなことをするのがダメというか……」
不思議そうにしているヅッチーに、ローズマリーは顔を赤らめてどのように言えばいいのか頭を悩ますのだった。
私は以前ヅッチーと召喚士組推しだと言いました。
でも実は隠れプリシラ推しでもあったのです!! いや隠れる意味とかないんですけど。
実際あの状況であんなこと言われて理性崩壊しない人間はいるのでしょうか? ああいえいえ、あの場で実際に何があったのかはわかりませんよ? これは健全な小説ですからね?
でもあの場であったかもしれないR18的な何かは要望があったら書くかもしれません。あえて問いませんが。
しかしこのプリシラとのなんやかんやがこの後のアナザーストーリーで意味を持つわけです。ぜひとも楽しみにしててください。
それでは。