アナザー・アクターズ   作:やーなん

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いよいよ第二章アナザーストーリーの始まりです!!
ところで、原作ゲームでは超能力者、宇宙人がでます。じゃあ残りは一つですよね?



Another story 叡智の申し子
EX.衝撃の家出少女


『アナザーストーリー導入 衝撃の家出少女 』

 

 

「はぁ……」

 その日、マルースはぼんやりと共有スペースで物憂げにため息を吐いていた。

 

「どうした先輩、ここ最近暇そうじゃないか」

 そんな彼を面白がっているのか、ジュリアが彼の対面側に座ってそう言った。

 

「ああ、正直妖精王国からの仕事から解放されてちょっと燃え尽き中なんだ……。

 追放だなんて言ってたが、プリシラの奴、今は俺に甘えたくないんだろう。あいつはそういう女だ」

「ほうほう、すっかり彼氏面か。妬けるじゃないか」

「思ってもないことを。俺が一人の女に縛られるわけないだろ。

 ジュリアちゃんこそ、そろそろいい男を見つけたらどうだ? 紹介するぜ? マッスルとかどうよ」

「それは遠慮しておくよ。しかし、私はまだジュリアちゃん、か」

 ジュリアはやや瞼を落としてため息を吐いた。

 

「まあ、いざとなったら先輩で妥協する予定だからこれまで通り席は空けておいてくれ」

「ふざけんなこのアマ、俺の隣が今まで誰も居なかったみたいにいうんじゃねぇ。

 っていうか、お前が俺で妥協するくらいに時間が経ったならとっくに俺のストライクゾーンを離れてるわ!! こっちから願い下げだっての!!」

「だがその時には先輩も同じだけ歳食っていることも忘れずに」

「うがー、言うなー!!」

 頭を抱えて叫ぶマルースを見て、楽しげにジュリアは笑った。

 

「しかし、先輩が本気にするような女性がこれから現れるのだろうか」

 彼女がそんなことを呟いた、そんな時だった。

 

 どっかーん!! と振動と轟音が正面玄関の方から聞こえたのだ。

 

「おい!!」

「ああ!!」

 二人は息ピッタリに立ち上がり、玄関の方へとすぐさま向かった。

 

 玄関には以前ビルーダーが持ってきて駄菓子屋に設置された筐体があり、その前に三人の少女が倒れていた。

 

「おい、デーリッチ!! それにヤエ!! いったい何があった!!」

 マルースは目を回している二人に駆け寄って、怪我がないか確かめた。

 

「先輩、この少女は……」

 そしてジュリアの方は、見覚えのないもう一人の少女の方へと駆け寄ると、意識があるかどうかを確かめたところで、信じられない物を見た。

 

「どうした、ジュリアちゃん!!」

「これ、これを見てくれ」

 ジュリアは気を失っている少女が握っているものを指さし、そう言った。

 

「んなッ!? それは!!」

 それを見たマルースも、ジュリア同様驚愕した。

 

「キーオブパンドラだと!!」

 それは、細部の意匠こそ違っているが、間違いなくこの世に二つと無いキーオブパンドラだった。

 

 

 

 §§§

 

 

 騒動の原因は少し前に遡る。

 

「ふふふ、デーリッチ。私は見つけてしまったわ」

「どうしたんでち、ヤエちゃん。わざわざ駄菓子屋から筐体を持ってきて」

 デーリッチは怪しげな態度をしているヤエを見て不思議そうに首を傾げた。

 

「このゲームの裏技よ」

「裏技?」

「そう、まずこれでフリーシナリオモードにして」

 ヤエは筐体のボタンを操作し、シナリオ選択画面でフリーシナリオを選択した。

 

 “どんなシナリオにしますか? ”

 

「今現在のハグレ王国」

 と、ヤエはマイクに向かって言った。

 すると、ゲーム画面の俯瞰視点からハグレ王国の拠点内部や今現在出店している店舗の細部まで、どこに誰が居るかまで映し出されたのだ。

 

「お、おおお!! すごいでち、ヤエちゃん!! 

 デーリッチ達が筐体の前にいるのも映ってるでち!!」

「すごいでしょう? ほら、今雪乃がこの部屋を横切るみたいよ」

 はしゃぐデーリッチにヤエが画面を指さすと、彼女の言うとおりに雪乃が通路からやってきて別の部屋へと向かっていった。

 

「すごい、すごいすごい!! おお、みんなのステータスとかも見れるでち!! 

 あ、でもこれ、さすがにゲームの通りにみんなが動いたりしないよね?」

「流石にそれは無かったわよ。所詮ゲームだしね。いや、これはもうゲームの域を超えているけど」

「無かったって、試したんでちか……」

 そんな彼女の物言いに呆れるデーリッチだった。

 

「ごほん、じゃあ今夜の晩御飯はなんでちか?」

 デーリッチがそう言うと、ハグレ王国の時間が進み晩御飯の時間になった。

 みんなが共有スペースで食事を取っている光景が映し出され、ローズマリーが作ったカレーが配膳されていた。

 

「おお、今日の晩御飯はカレーなんでちね」

「ちょ、さらっとなに未来を見てるのよデーリッチ!!」

「え、あッ、確かに!!」

「ちょっとこれ、まずくない? 流石に未来を見るのはヤバいわ!!」

 サイキッカーだからこその危機感で、ヤエはそう言ったのだが。

 

「ちょっとぐらいなら大丈夫でちよ。

 ふふふ、では十年後のハグレ王国の繁栄具合を見せてもらおうかな!!」

 調子に乗ったデーリッチがマイクに向かってそう言った。

 

 “エラー!! エラー!! 

 長期間先の未来演算は当機の処理能力を超えています!! ”

 

「あ、やば、壊れちゃった!?」

「だから言ったのに……」

 筐体の画面は真っ赤になり、そのような文字が表示された。

 更に。

 

 “繧ィ繝ゥ繝シ!! 繧ィ繝ゥ繝シ!! 

 蠖捺ゥ溘�讖溯�菫晏�縺ョ轤コ縲∵シ皮ョ励r蠑キ蛻カ邨ゆコ�@縺セ縺吶€!! ”

 

「ああ、本格的に何が何だか分からなくなったぁ!!」

「どうするのこれ、壊れたらビルーダー様に怒られるわよ!!」

「ええと、ええと、そうだ!! 

 こういう時は、叩けば直るって聞いたでち!!」

「えッ、ちょ、やめなさいって!!」

「ちょいやー!!」

 ヤエの制止もむなしく、デーリッチはキーオブパンドラで筐体を斜め四十五度の角度から殴りつけた!! 

 

 その直後だった、二人の意識が途絶えたのは。

 

 

 

「まったく、なんて危ない真似をしてくれたんだ!!」

 そんな事情が当人たちから語られると、当然大激怒のローズマリーだった。

 デーリッチとヤエは彼女の前に正座させられ、雷を落とされていた。

 

「まったく、これにエラー吐かせるほど重い処理をさせるなんてやるわね。

 未来演算なんて抜け道を見つけたことを褒めるべきか、呆れるべきか」

 ビルーダーは筐体を修理しながら苦笑していた。

 

「ビルーダー様も、この子たちに何か言ってください!!」

「衝撃と爆音の原因はこの筐体では無いわ。

 この筐体の設計とキーオブパンドラ、そして……」

 ビルーダーは怒れるローズマリーを無視して、ござを床の上にひいて寝かせられている少女の手に持つもう一つのキーオブパンドラを見た。

 

「面白いわ、まさかこんな偶然を引き寄せるだなんて。

 いや、これはある意味では必然なのかしら」

「ビルーダー様、いったいどういうことなんです?」

 彼女がビルーダーに問うが、その時、眠っていた少女が呻いた。

 

「どうやら目を覚ますようじゃぞ」

 治療に当たっていたティーティー様がそう言うと、少女はゆっくりと眩しそうに眼を瞬かせた。

 

「えッ、ティーティー様? ハオちゃん?」

 少女は隣にいるティーティー様を持ったハオをぼんやりと見やり、そう呟いた。

 

「二人とも、知り合いですか?」

「いや、知らん。初対面だ」

「ハオもだお」

 ローズマリーの質問に、二人は首を横に振った。

 

「え、マリちゃん?」

 少女はローズマリーと顔を合わせ、素っ頓狂な声でそう言った。

 

「うん? もしかしてどこかで会ったかな? 

 でも申し訳ないけど、君のこと記憶に無いんだ。悪いけど、名前を教えてくれないか? 

 親御さんとの連絡も付けないといけないし……って、どこに行くんだ!!」

 ローズマリーの話の最中だというのに、少女は起き上がって拠点の奥へと駆け出して行った。

 

「やった、やったぁ、成功だ!! 

 ほんとに、ほんとに────」

 少女はカレンダーの前で、ぴょんぴょんと飛び上がり、こう言った。

 

 

「────十年前のハグレ王国だ!!!」

 そんな、誰もが衝撃を受ける事実を。

 

 

 

 §§§

 

 

「じゃあ、順番に君の話を並べていこうか」

 王国拠点の会議室、今現在、緊急の王国会議が執り行われていた。

 

「君は、そのキーオブパンドラの──」

「──キーオブクロノス!!」

「そう、そのキーオブパンドラを改造して時間渡航を可能にしたという装置で、十年先の未来からやってきた。

 事故とかではなく、自らの意志で」

「うん!!」

 デーリッチよりやや幼く見えるその少女は、ローズマリーの言葉に頷いた。

 そんな衝撃の事実に、王国民たちはざわついた。

 

「みんな、静かに。

 その理由を、もう一度説明してくれるかな?」

「家出!!」

 少女の語った時間遡航の理由は単純明快だった。

 それだけにローズマリーは額に指を当てた。

 

「……君、年齢は?」

「八歳になったばかりだよ、マリちゃん!!」

「うーん、向こうだけがこっちを知っているってのもやりにくいな。

 そうか、二年以内に君はこの王国で誕生するわけか」

 それを思うとなんだか感慨深いローズマリーだった。

 

「おっと、これを最初に聞くべきだったね。

 名前を教えてくれないか?」

「私の名前はマー……マナだよ」

 彼女は自分の名前を言いかけて、咄嗟に口を塞いでからそう答えた。

 

「……わかった、マナちゃん。

 君のお母さんとお父さんは誰かな? もちろん、言えないなら構わないけど」

「ママはここにいない。パパは──」

 少女マナはゆっくり腕を上げ、ある人物を指さした。

 

「あのひと」

 ある種の侮蔑のような声音と視線で、マルースを。

 

 

「は、はぁ!? お、お前が、俺のガキだってぇ!!」

 他人事のように会議を見ていたマルースは立ち上がってそう叫んだ。

 

「ああ、言われてみると目元とか似てるわね」

「マルースさんが父親かぁ、そりゃあ家出するわ」

「お前らも勝手なこと言ってんじゃねぇよ!!」

 ひそひそと話すみんなにそう怒鳴って、マルースは少女に向き直った。

 

「言え!! いったい誰が母親なんだ!!」

「じぶんのむねにきいてみれば?」

 彼の詰問に、あえて難しそうな言葉で侮蔑交じりに少女は返した。

 

「こ、こんな捻くれたガキが俺の、子供だって……」

「そっくりじゃないですか?」

「そっくりだなぁー」

 かなづち大明神とヅッチーが声を揃えて頷いた。

 

「う、う、う、うがー!!」

 自分の子供が未来からやってきたという事実に耐えきれなくなったマルースは、会議室から走って逃げて行った。

 

「えー、この話は一旦これまでにしましょう。

 ええと、ビルーダー様、この子がやってきたことにより歴史が変わったりするのでしょうか?」

「十年もあればいくつかの歴史の分岐点を経ているはずよ。

 賢い子だわ。自分の名前が未来に影響を与えると知っているのね。

 だけど心配ないわ、再現可能な未来なんて一つとして存在しないのだから。

 彼女の話を聞いて同じような道筋を辿っても決して同じようにはいかないわ」

「なるほど、彼女が存在していることでのこの世界の影響は少ない、と。

 だそうだよ、本当の名前を言っても大丈夫だよ」

 ビルーダーの助言を受けて、ローズマリーはマナに優しくそう言ったのだが。

 

「ううん、言わない。絶対に言わない。たとえ私が産まれなくなっても、絶対」

「そうか。わかったよ。

 でもビルーダー様の言い方だと君が親殺しのパラドックスを行ったとしても消滅するようなことはなさそうだけど」

 口を両手で押さえてぶんぶんと首を横に振る少女の姿を見て、ローズマリーは決意が固いと理解しそれ以上の追及は止めた。

 

「それじゃあ、家出の理由を聞かせてもらえないかな?」

「…………」

 ローズマリーが核心を問うと、マナは黙り込んでしまった。

 

「えッ、どうしたのよ!?」

 そして彼女は、たったったっとエステルに抱き着き、顔を胸に埋めてしまった。

 

「エステルちゃんがママだったらよかったのに……」

「あー、家庭環境のあれな感じかー」

 エステルは少女の頭を撫でながら、その複雑な家庭環境を察するのだった。

 

「だからって過去に戻ってまで家出するかい」

「ブリちん、もう会議飽きたー、遊んで―!!」

「おお、よしよし、こっちに来い、飴ちゃんやろう」

 呆れていたブリギットも無邪気な笑みで駆け寄られては対応も甘くなるのだった。

 

「これ、元の世界の元の時間に帰れるんでしょうか?」

「普通に考えれば不可能に近いわ。

 砂漠から目的の砂粒を探し出すようなものよ。まあ私が本体に掛け合えば何とかなると思うけど」

「今回ばかりはあなたの本体の無茶苦茶さに助けられますね」

「まあ、本体の全知全能って時間や因果律に縛られないタイプだから」

 ビルーダーと福ちゃんはそんな会話をしていると。

 

「うーん、まあ未来とはいえハグレ王国の国民ということには変わらないか。

 とりあえず帰り方はビルーダー様に任せて、マナちゃんはそれまで王国で保護するってことでいいかい?」

「そうでちね、ハグレ王国は君を歓迎するでちよ!!」

「うん、デーリッチありがとう!!」

 ローズマリーの提案にデーリッチが頷くと、マナは飴を口に含みながら笑顔でそう言った。

 

「ごほん、ところで、未来の話を聞いてもこの世界に影響が殆ど無いってことなら、十年後のデーリッチは立派な王様に成れたのか聞いても良いでちか? 

 でも、さらりとデーリッチって呼び捨てにされたけど威厳とか無いのかなぁ」

「わかんない、だって会ったこと無いもん」

「えッ、デーリッチそんな雲の上の人物になっちゃったのかなぁ」

「ちがうよ」

 マナはどこか冷めた視線でデーリッチを見て、こう言った。

 

「私、デーリッチのこと像でしか見たことない。

 パパとか博士とかが、デーリッチはビルーダー様に導かれてどこか遠いところで新しい命を授かったんだよ、って言ってた」

「えッ」

 少女の言葉に頭が真っ白になったローズマリーは、ゆっくりとビルーダーの方を向いた。

 彼女は目を伏せ、首を左右に振った。

 

「嘘だ!!」

「ローズマリー!!」

「嘘じゃないよ!! だってハグレ王国はとっくの昔にハグレ共和国になってるもん!! 

 私の産まれる前からだもん!! マリちゃんは首相なんだもん!!」

「やめろ!!」

 ムキになった少女の主張を、ローズマリーは耳を塞いで蹲ってこれ以上聞こえないように叫んだ。

 

「これ以上ッ、私にそんな話を聞かせるなぁッ!!」

 ローズマリーの絶叫が、会議室を震わせる。

 

「とりあえず、緊急会議はこれで終わりでち」

 沈痛な静けさが舞い降りた室内に、デーリッチが会議の終了を告げた。

 おつかれさまでした、というみんなの声はどこか暗く沈んでいた。

 

 その日、衝撃と共にやってきた未来人の少女は、更なる衝撃をハグレ王国に齎したのだった。

 

 

 

 

『 バッドエンドから来た少女 』

 

 

「すまない、みんな。少し取り乱してしまった」

 会議終了から三十分後、ローズマリーは共同スペースに集まっているみんなの前に顔を出してそう言った。

 

「いや、無理もないぜ、姉御。

 あんな話聞かされたら、そりゃあ取り乱すって」

「みんなも、いろいろと聞いてみたようだね」

「ああ、聞いてくれよ姉御!! 俺は十年後には銅像になって、国中で英雄なんだとよ!! 

 ……どうせなら、デーリッチを守って死ねば良かったのによ」

 深々と、ニワカマッスルは息を吐いて奥歯を噛みしめた。

 

「気を落とすことないよ、マナちゃんの話は確実な未来予知じゃないんだから。

 ……ただもしかしたら、ありえたかもしれないってだけの未来でしかないんだから」

 それは一番自分に言い聞かせているようにニワカマッスルは思えた。

 

 ローズマリーが各々の顔を見渡すと、聞かなければ良かったという顔と微妙そうな表情の顔に分かれていた。

 

「聞いたかよ、かなちゃん。妖精王国は十年後のハグレ王国と一緒に帝都の属国なんだってよ」

「そうらしいね、大きな戦いがあってハグレが再度危険視されたからなんだとか」

「いやまあ、プリシラが無事だってことが聞けただけ良かったわ」

 妖精王国組は少し疲れたような表情をしていた。

 

「私はやっぱり十年後も鍛冶屋か、まあ私らしいね」

「僕も十年後もゴーストハンターだってさ。

 十年経っても需要が減らないことを喜べばいいのか嘆けばいいのか」

 そしてジーナとアルフレッドは微妙な表情をしている筆頭だった。

 

「それでね、それでね!! エステルちゃんは博士と助手君と一緒にずっごく大きなプロジェクトをやってるんだよ!! 

 博士ってすごいんだよ、キーオブクロノスも作ったし、ビルーダー様に選ばれた最高の天才なんだから!!」

「そっかぁ、何だか誇らしいな。お、マリー。もういいのかい?」

「うん、もう大丈夫だよ」

 エステルは早口で楽しそうにまくし立ててるマナの面倒を見つつ、ローズマリーを気遣った。

 

「あの時間移動できるらしい鍵、シノブが作ったんだってさ」

「そうなのかい? 時間は空間の延長上だっていうけど、想像以上に君の親友は天才らしいな」

「未来では召喚士協会は無くなっててさ、召喚魔法も一定時間すぎたり被召喚物が大きなダメージを受けたら自動的に元の世界に戻るようになってるらしいんだわ。

 たった十年でこれだけ変わるのか……。二十年後は想像もつかないな」

 エステルは天井を見上げ、どこか目を細めて遠くを見ようとした。

 

「デーリッチは?」

「ああ、あいつ強いよな。

 もしかしたら近い未来に死ぬかもしれないって言われても不安を顔に出さないんだぜ」

「そうか……」

 ローズマリーはエステルと別れ、玄関の方へと歩いて行った。

 

「ベロベロス、お前は十年後も立派に番犬としてやってるんでちね。

 すっかりお爺ちゃんなのに、お前はやっぱりすごいやつでち」

「デーリッチ……」

「あ、ローズマリー!!」

 ローズマリーはベロベロスの体を撫でていたデーリッチを見て、胸が締め付けられるようだった。

 

「もう大丈夫なんでちか? 

 ちょっとぐらいショッキングな話を聞いたぐらいで取り乱しちゃダメでちよ。

 ローズマリーはハグレ王国の参謀なんでちから」

「ああうん、そうだね」

「マルちゃんもマルちゃんでち、未来から娘が来たからって逃げ出しちゃうなんて」

「うん、情けないよね」

 会話がどうしても続かない。

 二人はそんな気がした。

 

「……ハグレ王国、無くなっちゃうんでちかね」

 やがて、デーリッチはうつむいてぼそりとそんなことを呟いた。

 

「ふふ、君は自分が死んでいるかどうかより、ハグレ王国の行く末を心配しているんだね」

「だって、だって、せっかくみんなでここまで大きくしたのに、それが無くなっちゃうなんて嫌でち……。

 あ、でも逆に考えれば、そうなる未来を知ったことにより同じような結末は辿らないということでは? 

 そう考えれば元気が湧いて来ないでち?」

「そうだね、いつだって君には元気づけられるよ」

 デーリッチのポジティブ思考に、ローズマリーはくすりと笑った。

 

「あ、やっとローズマリーが笑った!! 

 あんまりどんよりしていると、マナちゃんが言ってた通り、十年後に老けちゃうでちよ!!」

「まったく、あの子はなんてこと言ってくれるんだ!!」

 そうして二人はみんなの元へと歩いて行った。

 その背には、未来への不安などもう見えなかった。

 

 

 

「俺に子供……誰だ、誰のだ? ま、まさか、い、いや、そんなはずは……」

 ただ、約一名、現実を受け入れられないダメ男がまだ見ぬ妻への言い訳を考えていたのだった。

 

 

 

 

 




いきなり強烈なのぶっこみましたよ!!
超能力者、宇宙人(本編未登場)ときたら未来人でしょう!! え? 古いって?
はい、ラノベ全盛期の世代ですはい。

この時点でマナちゃんのママが誰かわかったらマジすごいです。
彼女の身体的特徴は次回以降ということで。まあ皆さんの想像でもよろしいのですが。

あと、アンケートを実施します。
このアンケートの如何によっては、王国のみんなの苦労度が変化します。期間はアナザーストーリー最終話まで。
できればご協力くださると幸いです。

登場してほしい十年後の原作キャラは?

  • ベロベロス
  • ハオ
  • エステル
  • ゼニヤッタ
  • シノブ
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