アナザー・アクターズ   作:やーなん

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EX.未来への不安

『拠点内イベント 未来への不安 』

 

 

 ハグレ王国に未来人の少女マナがやってきて二日が経過した。

 

「みんな、割と引きずっているようね」

「そりゃあ十年後の自分について知ったら、否が応でもそうなるだろうさ」

 王国の面々は彼女の齎した衝撃をやや引きずっているようで、吹っ切れていないものも何人か見受けられた。

 

「俺はゴーレムだから未来への不安なんて無いけどな。

 強いて言うなら稼働しているか否かぐらいか」

 ブリギットはあっさりと己の心境を口にした。

 

「仕方ないわねぇ、ローズマリーに言って世界が辿る未来について講義でもしてあげましょうか」

「ああ、そうした方がいいわな。

 みんなにもマナの言った未来は自分と無関係じゃないけど決してそうなるわけではないって教えてやるべきだろう」

「そうね、未知への恐れを取り除くのは神の役目だもの」

 ブリギットが皆を心配してそう言うと、ビルーダーも頷くのだった。

 

 

 そして翌日、ビルーダーの講義が図書室で行われることが布告されると、王国民の半分以上が集まった。

 

「まず未来について語る前に、平行世界について話そうかしら」

 ビルーダーは用意したホワイトボードに一本の樹木を描いた。

 

「私たちは知らずのうちに無限に等しい平行世界の可能性を作り出しているわ。

 今朝誰かがコーヒーに砂糖を入れたかミルクを入れたか、その程度の違いですら可能性は枝分かれする。

 でも十日連続で朝コーヒーに砂糖を入れようがミルクを入れようが、それとも交互に入れようが両方入れようが、その影響は個人レベルに留まるわ。

 その世界の歴史に影響するほどでもない。誤差程度の振れ幅でしかない。

 そういった“誤差”は異世界として近すぎて観測することはできないのよ。

 異世界に穴を開ける召喚魔法も、別の可能性の自分を呼ぶことはできないでしょう?」

 そう語って、ビルーダーはホワイトボードの樹木を指さす。

 

「私たちが辿る現在は、この一本の木の枝の先端だと考えなさい。

 あなた達が言うところの異世界とは木の幹という歴史の大筋から大きく分岐した別の枝のことであり、またはまったく別の木のことでもあるの」

「ああー、近すぎて観測できないってそういうことか……」

 召喚士たるエステルは感覚でビルーダーの話を何となく理解したようだった。

 

「木の枝がすべて同時に成長するように、すべての平行世界と異世界には時間軸が存在するわ。

 つまりこの世界と別の木の枝には同じだけの時間が流れている。

 私たちは基本的に木の枝の先端にしか、同じ時間軸にしか干渉できないのよ」

「じゃあ、どうやってマナちゃんは未来から過去へ移動できたんでちか?」

「今、それは関係ないわ。どちらにせよこれは高度な予備知識がないと理解できない話よ」

 デーリッチの疑問を、ビルーダーはホワイトボードの樹木を消しながら却下した。

 

「今の話で重要なのは、歴史という大きな流れにあなた達個人の行いなんて所詮誤差でしかないということよ。

 人間なんて代替の利く歯車の最もたるものよ。世界にとって重要なのは樹木が成長するように分岐点のいずれかを通過するか否かなのだから。

 あなた達は、世界各地の研究者が同時に同じような発明や研究を思いついたりするという話を聞いたことはないかしら?」

「ああ、そんな話、聞いたことがありますね」

 ローズマリーがぼんやりとそんな話をどこかの本で読んだのを思い出した。

 

「世界にとって、その中の誰が画期的な発明をしようとどうでもいいのよ。

 重要なのは誰かが歴史の分岐点に足跡を刻んだ、ということだけ。あなた達が気付かないだけで、似たようなことは無数に起こっているわ。

 たとえば、この世界でこのハグレ王国が仮に興らなくても、全く別の場所で似たような役割を持つ国家が誕生していた可能性が高いのよ」

「ゾッとする話ですわね……私たちは歴史に振り回される人形でしかないのでしょうか」

 言いようのない寒気を覚えたのか、ヘルラージュが体を抱きしめそう呟いた。

 

「そうね、ゾッとしない話だわ。

 だから私は特定の人物に叡智を授け、意図的に歴史の分岐点を私の望むようにコントロールしようとしているのよ。

 あまり神として介入しすぎると、逆にコントロールが利かなくなる場合が多いわ」

「なるほど、ビルーダー様のやり方にはそう言った理由があったんですね」

 得心が行ったと言うように、ローズマリーは頷いた。

 

「今ヘルラージュが言った通り、あなた達はこの歴史の分岐点に大きく振り回されるわ。

 ハグレ王国がまったく別の場所で興ったとしても、そこにここと全く同じメンバーが集まるはずが無いと言うことね。

 その場合、あなた達はまた別の人生を歩んでいたことでしょう。だからちょっと近い先で分岐するだろう未来を知ったところで、同じような結果になるなんてまずあり得ないってことよ。

 むしろ、ああそんな可能性があったんだー、って自分が題材になった物語を聞くような感覚で十分なのよ。

 だから知ることを恐れてはいけないわ、知ったがゆえに足を竦むことなんて出来ないのだから、あなた達は自分たちの自由に今を生きなさい。

 あなた達は代替できる存在に過ぎないかもしれないけど、あなた達が生きているからこそ歴史は存在しえるのだから。

 叡智の女神たる私が保証する、あなた達は決して歴史の操り人形ではないのだと。──講義はこれで以上よ」

 はーい、と返事してビルーダーの講義を終えて去っていく面々はやや表情が軽くなったように見えた。

 

「なんだか久々にまともに叡智の神っぽいことをした気がするわ」

「お疲れ様です、これからみんなで一緒にお茶でもしましょう」

「そうね、まったく、本来ならこの話はこの世界の文明レベルで話しちゃいけないことなのよ? 

 未来人が来るなんてこと私の経験でも殆ど無いことなのに、わざわざ本体に特例で許可貰う必要があったし、この世界は私の規定では測れない例外が多すぎるのよ!! 

 本体に頼りすぎて私の神域での評価が下がったらどうしてくれるのよ!!」

 なんだかんだでぐちぐち言いながら骨を折ってくれたビルーダーを、福ちゃんは微笑ましそうに見ているのであった。

 

 

 

『拠点内イベント マナの王国巡回 』

 

 

「ここがマッスルのお店でち」

「へぇー」

 デーリッチはヅッチーと一緒に先日やってきたマナに王国のお店などを案内していた。

 

「でも、あんまり人いないね」

「グサっと直球で言ってくれるなぁ」

 マナの悪意のない一言に店番をしているニワカマッスルは若干傷ついていた。

 

「今思うと最古参だから許されているよな、この店舗」

「言うなって、これでも王国の最初期の資金繰りには貢献してたんだぜ、ほら」

 ヅッチーの辛辣な言葉にもめげず、彼はモーモードリンクを差し出した。

 

「サービスだ、飲みな」

「わーい、私モーモードリンク大好き!!」

「そうか、それはよかったぜ」

 マナが無邪気に喜んでモーモードリンクを飲むのを見て、ニワカマッスルは笑みを浮かべた。

 

「でも、十年後には潰れてそうだよな」

 すると、ばっさばっさ、と空からハピコがやってきて茶々を入れた。

 

「やかましい、マナちゃんが大好きってことは十年後も続いているってこったろ!! 

 それより、配達ご苦労様。助かったぜ」

 彼はハピコが足に括り付けていたバッグを回収してそう言った。

 

「あれ、ハピコ、相談所のキーホルダー屋の方はどうしたんだ?」

「あそこの制服は動きづらくてね、たまにバイトに任せてこうして羽を伸ばさせてもらってるんだよ」

「へー、マッスルのお店って配達とかもやってたんでちか」

「むしろこっちの方が将来的な収入源だよ、少ないけど、定期購入の契約してる客がいてさ」

「へー」

 ハピコの説明に、ちゃんと商売が続いていることに感心している子供二人だった。

 

「ぷはー、美味しかった。ありがと、マッスルさん!!」

「おう、またいつでも来いよ」

 三人はニワカマッスルとハピコに別れを告げて次の場所へと向かった。

 

「ハピコお姉ちゃん、この頃から配達のお仕事してたんだねー」

 次の店舗までの道中に、マナはそんなことを漏らした。

 

「確か、マナちゃんのいた十年後ってマッスルは……」

「みんな、すごかったって褒めてたよ。

 あのお店もハピコちゃんが引き継いで、社長さんになったんだよ!! 

 ああやって時々自分で配達もしてるんだって。いつも私にモーモードリンクを届けてくれるんだ!!」

「そっかー、ハピコは十年経っても変わらなそうでちねー」

 まだ見ぬ仲間の未来を想像しつつ、次の店舗へとやってきた。

 

「ここはこたつ喫茶でち」

「知ってる!! 私、こドラちゃんと友達!! 

 でも最初はここにあったんだねー」

「マナの世界じゃ、こたつ喫茶は別のところに移転してるのか?」

「うん、大陸中に十何店舗も出してて、ニーズ? とか、流行? とかに合わせていろいろやってるんだって、マリちゃん言ってた。

 一番人気なのはマンガこたつ喫茶だって。マンガ読み放題でドリンク飲み放題なんだよ」

「えッ、マジでちかそれ!! これはこたつちゃんと相談して我が王国に早々に導入せねば……」

「いいなそれ!! 妖精王国でもやってもらおうかな……」

 子供二人がそんなダメな発想で権力を行使しようか悩んでいると、お昼時の行列が進み中へと入れた。

 

「あー、こたつの魔力最高でち」

「これでマンガ読み放題とドリンク飲み放題なら一生住めるわ」

「そうそう、こドラちゃんってこたつ喫茶は回転率とか悪くて設備の維持費が大変だから、逆に住まわせるくらい快適な場所を目指したんだって。

 こドラちゃんらしいよねー♪」

「たしかに、やりそうだわ!!」

「ぜひとも我が王国に導入をローズマリーに検討してもらおうっと」

 三人が注文をしてそんな未来の話で盛り上がっていると。

 

「ああ三人とも!! いらっしゃい!! 

 今お昼時だからあんまり相手できないじゃん、ごめんね!! 

 はいこれ、ご注文のこたつみかんじゃん!!」

 こたつドラゴンがやってきて、注文の確認を取ると足早に厨房の方へ戻って行った。

 

「さすが王国の稼ぎ頭でち、こたっちゃん頑張ってるなー」

 デーリッチは出会った当初のこたつドラゴンを思い浮かべ、微笑んでいた。

 

 

「ようこそ国王様、ヅッチーさん、マナさん」

 一行がお店の邪魔にならないようにこたつ喫茶を後にし、次にやってきたのはゼニヤッタのおむすび屋だった。

 こちらも王国の稼ぎ頭で、お昼時であったがもうすでに店頭の商品はほとんど売れてしまっていた。

 

「申し訳ございません、現在最大限の労力を持って生産中でございます」

「売れ残った小サイズで構わんでちよ、ね、みんな?」

「いえいえ、皆様に売れ残りの商品をお出しするわけには参りません。

 少々のお時間を頂くことをどうかご容赦くださいませ」

 彼女はぺこり、と頭を下げて奥へと行ってしまった。

 

「どうぞ、こちらにございます」

 そしてすぐに出来たてのおむすびを持ってきた。

 

「ありがとうでち、お金はローズマリーから貰ってるでち」

「いえ、国王様。それは懐にお収めください」

「え、でも仲間だからってちゃんとお金は払わないと……」

 デーリッチがそう言うと、ゼニヤッタは首を振った。

 

「では今回だけ、おごり、ということにして頂けませんか? 

 ローズマリーさんから貰ったお金は、お菓子にでもお使いください」

「そりゃあ嬉しいけど、どうしたんだ?」

 ヅッチーが不思議そうに尋ねると、ゼニヤッタはやや逡巡してからこう言った。

 

「わたくし、自分が赦せないのでございます」

「え?」

「もしかしたら、という可能性であったとしても、国王様の最期を共にできなかったことが、です」

「それは……」

「国王様が亡くなられた、という未来の可能性を聞いただけでローズマリーさんはあれほど取り乱されました。

 もしそれが現実になったマナさんの未来のあの方の嘆きや絶望はいかほどか。想像するだけでわたくし、胸が張り裂けそうなのでございますよ」

 彼女は持っていたおむすびを無意識に握りしめ、ペースト状に近い形になって手の中からはみ出しているのに気付かずそう言った。

 

「きっと、わたくしも……」

「あ、ああー!! ゼニヤッタちゃん!! おむすび、おむすび!!」

「えッ、ああ!! わたくしとしたことが、申し訳ございません国王様!! ただちに代わりを!!」

 デーリッチの指摘にようやくおむすびの惨状に気付いたゼニヤッタは、赤面してもう一度店の奥からおむすびを持ってきた。

 

「お見苦しいところをお見せしました……」

「気にしないでほしいでち、そういうことなら遠慮は却ってよろしくないでちね。

 デーリッチはゼニヤッタちゃんの優しさだけで十分でち」

「ありがとうございます」

 もう一度ぺこりと彼女が頭を下げる様子を、マナは硬い表情のまま見ていたのだった。

 

 

 

 

『 短く長い、家出の終わり 』

 

 

 マナがやってきて五日ほど経過した拠点の空気はすっかり元通りになっていた。

 各々自らの可能性を受け入れていたりしていたのだが。

 

「はぁ、十年後の秘密結社はどうなってるのでしょうか……」

「聞いてみればよかったじゃないか、ヘルちん」

「そんな!! 恐ろしくて聞けるわけないでしょう!!」

「まったく……」

 ローズマリーはそんなヘルラージュの物言いに呆れてしまった。

 

「いやいや、ローズマリーさん。こればかりは責められないですよ。

 マナちゃん、私のこと会ったこと無いっていうんですよ? 

 これじゃあ私が死んだのか、あるいは元の世界に戻ったのかわからなくて余計に聞けなくて怖いですよ!」

「まあ、それはたしかに」

 流石にそれは怖くて聞けないな、とローズマリーは雪乃に頷いたのだが。

 

「え、私は時々雪乃らしき人物と文通しているって彼女に聞いたけど?」

「ええッ!? そうなのヤエちゃん!? 良かった、私生きてた!! 

 ヘルさん、これを機に勇気を出しましょう!!」

「どの口がおっしゃいますか!!」

 この変わり身にはさすがのヘルラージュも声を荒げた。

 

「それにしても、あんな話聞いちゃっていいのかしらね。

 マナちゃんの話では近いうちに大きな戦いがあるって話でしょう?」

「確かにね。だけどそれは現時点の私たちでも察知できる情報でしかないよ。

 帝都の周りにはハグレと言う火種がごろごろしている。そのいずれかが爆発したところで、私は驚かないよ」

「まあ、確かに」

 戦争に巻き込まれてハグレ王国に犠牲が出た、という未来の情報はそういう意味では驚くに値しないとヤエは頷いた。

 

「ビルーダー様の言い方を借りるなら、遅いか早いかの違いって奴さ」

「そしてそれは大きな分岐点になる、ってことね」

「それはどうだろう、恐らくハグレ王国が共和国であろうと、デーリッチが存在しうるかどうかも、歴史には影響なんてないんだよ。

 たぶん、重要なのはハグレの国が興ったって事実なんだと思う。その衰退が枝分かれしているだけで。

 ハグレの国を作る、なんて最初は大それたことだと思っていたけど、こういう風に思うと人間ってちっぽけなんだと思うよ」

「ちっぽけなのよ、ま、その方が私は良いと思うけどね」

 淡白なヤエの言い方に、そうだね、とローズマリーは微笑んだ。

 そんな彼女の達観した物言いに時折救われることがあるのだ。

 

「はぁ……」

 そんな話をしていると、みんなが話している共有スペースにベルがため息と共にやってきた。

 

「どうしたんだい、ベル君。ハグレ王国はまだ慣れないかい?」

「いえ、デーリッチちゃんや皆さんには良くしてもらってるんですけど……」

 つい先日この王国に参入して道具屋を開いているベルは、ローズマリーに声を掛けられこんなことを言い出した。

 

「なんというか、マナちゃんの僕を見る目がマルース君と似ているっていうか。

 僕の十年後がどんな感じか聞いてみても、知らない!! の一点張りで……」

「ええッ、これはベル君の将来が女誑し疑惑かぁ~」

「やめてくださいよ!! そんなわけないじゃないですか!!」

 ヤエが驚きそんなことを言うので、ベルは慌ててそう言い返した。

 

「それより、肝心のマルースさんはどうなんですか? 

 あの人、マナちゃんと話してる姿とか全然見かけないんですけど」

「ああ、あの人なら────」

 

 

 

「…………」

 拠点東の談話室にて、彼は立派なダイヤの指輪を見つめぼんやりしていた。

 

「ずっとあんな調子なんだよ」

「うわぁ……っていうか、なんですか、あの指輪?」

 ローズマリーに教えられ、ベルは少々憐みを抱きながら指輪について尋ねた。

 

「妖精王国での稼ぎ全部を費やして買ったらしいよ」

「……一応責任を取ろうって気はあるんですね」

 雪乃はその様子を見てそんな感想を漏らした。

 

「実際のところ、いったい誰なんでしょうね、マナちゃんの母親って」

 ヘルラージュが根本的な疑問を提示した。

 

「親子関係が上手くいって無いところを見ると、喧嘩別れでもしたのかもしれないね」

「それで二度と帰れなくなる可能性が高い時間渡航に踏み切るんだから相当よ」

「あのー」

 ローズマリーとヤエが疑問点を並べていると、雪乃が小さく手を上げた。

 

「どうしたの、雪乃」

「思ったんですけど、家出するとしても、おかしくないですか?」

「おかしい、ですか?」

 ベルが雪乃の言葉に首を傾げた。

 

「家出って、自分の家から逃げ出すことですよね? 

 十年前とはいえ、自分の家に来るのは変ですよ。

 親子関係が良くないのなら、尚更なんじゃないかなって。実際、十年前の父親に会ってるわけですし」

「たしかに……」

 ローズマリーは顎に手を当て、思考に没頭する。

 

 そんな時、だった。

 

 

「……パパ、その指輪、誰にあげるの?」

 マルースの下にやってきたマナが、実の父に問うたのは。

 

「えッ、その、これは……」

「早く言って!!」

「ぷ、プリシラかなぁ?」

 未来の娘に急かされ、マルースは上擦った声でそう答えた。

 

「それ、ママの結婚指輪……。昔、ママに見せてもらった」

「へ、へぇ、それじゃあやっぱり」

「本当はプリシラちゃんにあげるつもりだったんだ!!」

「ち、違ったぁ!?」

 涙を溜めて指輪を指さし父を非難する娘に、マルースもその理不尽さに涙目になった。

 そして、たったった、と泣きながら彼女は父親譲りの栗色の髪を揺らし逃げ出した。

 

「やっぱり、パパもママも私のことなんて要らない子なんだ!!」

「ああもうッ、マルースさん!! 

 昨日あの子とお風呂に入った時、あの子に妖精的な特徴はありませんでした」

「そんなの俺が知るわけないだろ!!」

 ロースマリーの言葉に、ほとんど泣き出しそうな声でマルースはそう叫んだ。

 

「恐らく、貴方と彼女の母親はまだ出会ってすら居ない可能性が高い!! 

 あれはおそらく癇癪の矛先を向けたいだけの子供の八つ当たりに過ぎないんでしょう」

「じゃあ俺にどうしろっていうんだよ!! 

 出会ったことすらない女との子供に、愛情を向けろとでも!?」

「気持ちはわかりますが今は彼女を追いましょう!!」

 マルースはローズマリーの勢いに押され、その場にいた面々と一緒にマナを追った。

 

「およよ、マナちゃんどうしたんでち?」

「デーリッチも来て!!」

 彼女を追う途中、デーリッチと遭遇したマナはその手を取って走り出した。

 

「ど、どうしたんでちか、マナちゃん!!」

「パパもママも、マリちゃんも博士も、他のみんなもやっぱり私なんかよりデーリッチの方が良いんだ!!」

 そんな叫び声を聞いたローズマリーは、ハッとした。

 

「そうか、そういうことか!! 

 なんて、なんて馬鹿なんだ十年後の私は!!」

「どういうことなんです!?」

「わかったのさ、彼女が家出した理由がッ!!」

 ローズマリーはベルにそう言って、皆が拠点の外へと出た直後だった。

 

 キーオブクロノスと名付けられた銀の鍵を掲げたマナとデーリッチの姿が消えたのは。

 

「しまった、逃がした!! 

 まずいぞ、きっと彼女はもう一度あの鍵を使って時間渡航するつもりだ!! デーリッチを連れて!!」

「ええッ、それってマズイですよね!!」

 ローズマリーの推測にベルも驚愕してそう言った。

 

「ああ、マズイ!! ビルーダー様は、あの鍵は未完成だって言っていた。

 マナちゃんが未来から過去に来たのも、相当な無茶なはずだ!!」

「じゃあ次に使用したらどうなるかわからないってことね?」

「ああ、でもだからこそ、時間渡航には空間移動よりもっと大量のマナエネルギーを消費するはずだ。

 まだ幾ばくか余裕がある!! みんなを集めて、二人を探すぞ!!」

 ローズマリーがそう指示を出すと、皆は散り散りになって他の面々を集めに言った。

 

「まったく、あんな馬鹿が俺の娘だと、ふざけやがって!!」

 マルースは己の中に渦巻く言葉にできない感情のままに、そう叫んで皆を呼びに行くのだった。

 

 

 

 

 ──””ボス警告 叡智の申し子マナ 推奨Lv??? ~””

 ──この先での戦闘は、負けるとゲームオーバーになる戦闘です。ここで、セーブしておく事をお勧めします。

 

 セーブしますか?

 

 ⇒はい (ピッ

  いいえ

 

 

 

 




次回で家出少女騒動は終わりになります。アンケートの締め切りも同様です。
次回は戦闘も混じるのでこれまでのように翌日の投稿は無理だと思います。

それにしてもみなさん、アンケートの結果によって王国のみんなが苦労するって言ってるのに、あの人ばっかり選ぶんだからww
選択肢の面々がどんなふうに登場するのか、どうかお楽しみに!!
では、次回!!

登場してほしい十年後の原作キャラは?

  • ベロベロス
  • ハオ
  • エステル
  • ゼニヤッタ
  • シノブ
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