びっくりしました!! お気に入りも増えて嬉しいです!!
こんな万人受けしないだろう内容を評価してくださる方々には感謝してもしきれません!!
そして今回は長くなりそうだったので、前編になりました。
次回でたぶん終わると思います。
『 慈悲深き女神の残酷な祝福 』
──時折、こんな夢を見る。
「……うーん、ここはどこでちか?」
デーリッチが眠りから目を覚ますと、そこは一面の雲海と青空が広がっていた。
「う、うわぁ!! すっごくきれいな場所でち!!
足元ふわふわ~、最高でちー」
彼女はそうして足元の雲海を堪能していると。
「あれ、もしかしてここ、天国?
そうだ、デーリッチは……」
デーリッチが記憶を遡ると、自分は巨大なドラゴンの炎で視界が真っ赤になったところで途切れていた。
「そっか、もう、みんなとは会えないんでちね……」
ふと、デーリッチが青空を見上げると、空から白い光が舞い降りてきた。
「デーリッチ、デーリッチさん。
残念ですけど、あなたは命を落とされてしまいました」
光から現れたのは溢れ出る知性を体現したような、美しい女神だった。
「あ、あなたはもしや、ビルーダー様!?
なんだか全然違くないでち!?」
「あれはマルースの趣味よ、これが本来の私の姿」
デーリッチがその正体を見破ると、女神はいたずらっぽく笑ってそう言った。
「あ、でもよかった。知っている人と会えて。
デーリッチ、このままずっと一人ぼっちなのかと……」
「……」
「デーリッチ、失敗しちゃった……ローズマリー、みんな……ひっぐ」
デーリッチはぼろぼろと零れる涙をぬぐうが、いくら拭ってもとめどなく涙は溢れ出てくる。
「デーリッチ。あなたは死んでしまったけど、あなたは特に重い罪を犯した訳でもなく、若くして死亡しているから小さな罪は減算され、あまり待たずに次の人生を送れるわ。
そして貴女は生前、多くの善行を成したわね。
次の人生で才能や容姿、周辺の環境などを選ぶことができるわ」
「ひっぐ、もう一度みんなのところには戻れないんでちか?」
「死者の蘇生を“売り”にしている神は結構いるけど、私は少なくともそんな安っぽいやり方で信仰を得ようとは思えないわね」
「でも、デーリッチはビルーダー様を信仰してないでちよ?」
「……ふむ」
ビルーダーは少し考えると。
「デーリッチ、ビルーダー様バンザイと言いなさい。ほら早く!!」
「ええッ、そんなんでいいんでちか!?」
「早くしなさいッ!! この世界の地獄に行きたいの!?」
「わ、わーい、ビルーダー様ばんざーい!!」
「よし、オッケー。信者獲得!! はい、デーリッチは私の信者!!」
「すごいごり押しを見たでち……」
これが神の所業なのかと、デーリッチは恐れおののいたようだった。
「さあ、早く特典を選びなさい」
「えーと、記憶とか持ち越せないんでちか? みんなと一緒に過ごした思い出とか、無くなったら嫌でち」
「それはダメね。前世の記憶はアドバンテージとして大きすぎる。
全員前世の記憶保有希望者のみが転生できる世界なら例外として有りだけど」
「ああ、やっぱりダメでちか……」
「地獄を経ない魂なら、たまに前世を思い出すこともあるけど、期待しない方が良いわ」
「うーん、じゃあとりあえず頭はすごく良くしてほしいなぁ。次は失敗しないように」
「はいはい、明晰な頭脳ね」
ビルーダーは手元のボードにさらさらと希望を書き込んでいく。
そこでふと、彼女はパッと良いことを思いついたとでもいうように笑みを浮かべた。
「あ、そうだわ」
「どうしたんでちか、ビルーダー様」
「デーリッチにおススメの来世プランがあるんだけど」
「そんな人生プランみたいな……」
しかし、デーリッチは詳しくその話を聞いてみると、すぐにでもその来世プランの実行をお願いした。
──そして、デーリッチは受け入れたのだ。
──それがどんなに残酷で、慈悲に満ちた祝福であったのか、理解した上で。
§§§
……戦闘開始までイベントを飛ばしますか?
(初回は飛ばさないのを推奨)
はい
⇒いいえ
「見つけたぞ、二人とも!!」
ローズマリー率いるハグレ王国ほぼ総出の捜索隊は、消えた二人を一時間もせずに発見した。
最初に、それに気付いたのはブリギットだった。
使い物にならないはずの自身のセンサー系が、異様な何かを察知したのだ。
胸騒ぎのような何かを感じて駄菓子屋から外に出てみると、東の方に巨大な空間の穴が開いているではないか。
あの場所は、昔から原因不明の大穴が地下深くまで空いている場所であった。
ローズマリーから話を聞いた彼女は、皆を引きつれその場所へ向かった。
「あ、ローズマリー!! 聞いて聞いて!!
マナちゃんがね、お家に帰る決心をしたんでち!! やっぱり本当の自分の家の方が良いんでちねー」
「デーリッチ!! 今すぐこっちに来るんだ!!」
「えッ?」
「彼女は君も一緒に未来へ連れて行く気だぞ!!」
「えええッ、それは困るでち!!」
デーリッチはやはり何らかの危機感を抱いていたのか、あっさりとローズマリーたちの元へと歩み寄った。
マナはキーオブクロノスを掲げ、巨大なゲートの制御をしているのか、それを止める様子は無かった。
「マナちゃん、今すぐゲートを閉じるんだ。
その鍵は未完成で、元の時間軸の自分の世界に帰れるとは限らない!!」
「……っふふ」
ローズマリーの説得を聞いたマナだったが、何が可笑しいのか小さく噴き出した。
「他の人ならそうかもね」
「なんだって?」
「私がどうやって、ピンポイントで十年前のこの世界に来れたと思う?
違う時間、違う世界に行く可能性の方が、ずっと高いと思わない?」
「それは、たしかに」
顔だけ後ろを向けそのように述べるマナに、彼女は納得し言葉を詰まらせた。
「私はね、望まれた子なの」
「どういうことでち? 望まれて生まれるなんて、良いことじゃないでちか」
「ううん、全然ッ、ちっとも嬉しくない!!」
デーリッチの言葉に、マナはその幼さに似合わない皮肉げな笑みを浮かべてそう怒鳴った。
「それはおそらく、私の、いや十年後の私たちの所為なんだろう?」
「あれ、もしかしてマリちゃん分かったの? 私が家出した理由」
「ああ。もし私がデーリッチを失い、戦争で仲間を失い、帝国の属国に成り下がったのなら、絶対に許せないと思うだろう。
必ずいつか独立して、かつてのハグレ王国を取り戻そうとするはずだ。
君が望まれたというのは、その取り戻した王国の国王としてだろう?」
それを聞いた皆は、ギョッとしてマナを見た。
「そう。私は申し子。ビルーダー様の申し子。
産まれた時から神の加護を得て、世界を導くために望まれた生命なの」
「そりゃあ嫌にもなるわな……」
そんな重責を背負って産まれたという彼女に、ニワカマッスルは同情を示したが。
「別に、それは嫌じゃなかった。
私はそのこと自体に疑問を持たずに育った。
博士や、エステルちゃんみたいな立派な人たちに憧れたから。私もいつか、そうなるんだって。
だから私は産まれる前に母親となる帝都の執政官と、それを陰を支える父親にそのことを伝えられたんだって。いつか後ろ盾になれるように」
「すべて、計算づくなのか。でもそれが嫌じゃなかったのなら、どうして……」
ニワカマッスルと共に前に出てたジュリアが、硬い表情で尋ねた。
「モンキーハンド」
「え?」
ふと、マナがなにがしかの意味のある単語を口にしたのに、ローズマリーは耳にした。
「ああなるほど、貴女、悪魔に唆されたのね」
「ビルーダー様ッ、どういうことです?」
「モンキーハンドってのは、私と分体たちの蔑称よ。
主に悪魔たちが好んで用いるのよ」
「ま、まさかお前、ビルーダー様を侮辱しているのか!!」
それを聞いて激怒したのはマルースだった。
仮にも自分の娘が己の信仰している神を侮辱したのなら、そうもなるだろう。
「どうしてそんなに怒ってるの、パパ。
私に対して一度もそんなに怒ったことなんてないくせに!!」
「知るかボケ!! 今から存分に説教してやるから覚悟しろよこのガキ!!」
「親子喧嘩は後にしてください!!」
ローズマリーに諌められ、一先ずマルースはマナを睨んだまま口を閉じた。
「悪魔に唆された、というのは本当なのかい?」
「他の人はそう思うかもね。でも私は自分の意志で過去へとやってきたの!!」
ローズマリーの問いに、マナはそう主張した。
「あのー、そもそもモンキーハンドってなんでち?」
「おそらく、そのまま猿の手のことですわ。
持ち主の望みを望まぬ方法で叶えるという呪われた呪物です」
疑問符を浮かべているデーリッチに、ヘルラージュが答えて見せた。
「その悪魔の名前は?」
「知らない。私が産まれる前に地上侵略しに来て、みんなが退治して名前を奪ったって聞いた。
悪魔は殺しても死なないから、そうやって封印して無力化したんだって」
「なら、相当高位の悪魔ね、自ら悪魔に近づくなんて、馬鹿なことを」
「でも、あの人は教えてくれたよ。私の魂は、手が加えられているって!!」
マナの叫びに、ビルーダーは押し黙った。
「私とっても怖かった!! 私の才能が、偽物なんじゃないかって!!
自分が持ってるものじゃないんじゃないのかって!!
みんながよくできたね、って褒めてくれるのが、本当はズルなんじゃないかって!!
みんなが言う天才って、そういうことなんだって知っちゃった……」
「マナちゃん…………」
その悲しげな姿を、ヘルラージュは痛ましそうに見るしかできなかった。
「それの何が悪いのよ。私はきっと、必要な機能を必要なだけ与えただけでしょう?」
「そうだね、それだけならきっと、私はそういうものなんだって思えたかもしれない。
そのうち私にすべてを与えてくれたビルーダー様に、それまで通り感謝したと思う。
でも、あの人は、私の魂に触れることができたあの人は!! 私の魂に刻まれた前世の記憶を蘇らせてくれたよ!!」
「あなた、なんてことを……」
その無謀を超えた子供ゆえの愚かさに、さしものビルーダーも絶句した。
「──そう、私の前世の名前はデーリッチだって!! 私はその時はっきりと思い出した!!」
だが、その言葉に声を失わずにいられぬ者は居なかった。
「うそ、だろ……君が、デーリッチだったって?」
「あははははは!! それを知ったマリちゃん、全く同じこと言ったよ!!
こっちのビルーダー様に聞いたら、白状して全部教えてくれたもん!!
死んじゃったデーリッチの“代わり”に、私に転生させたってッ!!」
その幼い少女の涙ながらの嘆きに、皆の視線がビルーダーに向けられた。
「ちょ、ちょっと、私を責めるような目で見ないでよ。
たぶん、そんなハプニングが無ければ一生気付くことなんて無かったはずよ!!
その時の私はきっと慈悲と親切心でデーリッチに転生を提案したと思うのよ!! 別の形だけどみんなとまた会えるって!!」
「そういう問題ではないでしょう……」
「気持ちはわかるが、なんて無神経な……」
「いや、確かに悪いのは悪魔だってのはわかるんですけど……」
女神の威厳はどこにやら、しどろもどろになって言い訳をする彼女に福ちゃんやティーティー様、かなづち大明神は呆れた様子でそう言った。
「……それを知ったその日から、みんなの態度が変わったよ。
マリちゃんはいつもの十倍以上優しくなったし、ゼニヤッタちゃんは会う度に泣いちゃうし、他のみんなも毎日好きでもないのにプリンを持ってくるし!! よそよそしいし!! パパは気持ち悪いくらい抱き着いてくるし!!
試しに語尾にでちって付けてみたらどよめくし、もう嫌、もう嫌だ!!」
「そりゃあ逃げ出したくもなりますよ……」
ベルはその光景を想像してため息を吐いた。
「ねぇ、私がデーリッチなら今まで生きてきた八年間はなんなの!?
これからもずっと、デーリッチの振りをしないといけないの!?
私の人生って、死んじゃったデーリッチの続きなの? もー、やだ、やだッ!!」
「マナちゃん……」
「だから私、家出したの。誰も私のこと知らない、産まれてもいない昔に。
でもビルーダー様の講義を聞いて、私いいこと思いついちゃった」
ようやく時空の穴が安定したのか、マナはキーオブクロノスから手を放した。
虚空に浮いたままの鍵を背にするように、彼女は振り返った。
「じゃあ、私の“代わり”を別のデーリッチがやってもいいよねって」
怒り、苦しみ、嘆き、絶望、狂気の入り混じった形容しがたい表情で、叡智の申し子は笑った。
「くそッ、戦いは避けられないか!!」
「みんなッ、デーリッチを守るぞッ!!」
話の内容に呆然としているデーリッチを守るように、戦闘メンバーが前に出た。
「あはは、馬鹿みたい。どうせそのデーリッチも死んじゃうくせに。
私の時は……デーリッチの時は、誰も来なかったくせにッ!!」
──叡智の申し子マナが出現!!
マナは自分に味方してくれる人たちを未来から呼び寄せた!!
「あれ? ここどこ?」
現れたのは、ピンク髪の美女だった。
「えッ、ちょ、あれ私ぃ!?」
目を見開いて召喚された女性を指差すエステル。
「まさか、未来からエステルを呼び寄せたのか!?」
「あの時空の穴を見なさい、あれを通して望む時間軸の世界と接続を助けているのよ」
「もはや何でもアリかよ!!」
ビルーダーの説明を受けて、マルースが皆の心の代弁するかのように叫んだ。
「えっ、ちょ、マジ? あれ私ぃ!? あっ、そういうこと……懐かしい顔ぶれだなぁ」
「反応もそっくりじゃん」
「うっひょー!! 現在のエステルさんもどこか未成熟さを残していますが、未来のエステルさんは大人の魅力を十全と発揮できていてこれまた素晴らしい!!」
一瞬で自分の置かれた状況を理解した未来のエステルを見て、こたつドラゴンは呆れかなづち大明神はエキサイトしていた。
「あッ、マリーだ。めっちゃ若い!! これ何年前?」
「君は全く変わらないな!!」
「マナ~、みんな心配してるわよ。早く帰って来なさいよ」
すごく大人のお姉さんをしている未来のエステルが、背後のマナにそんな風に声をかけた。
「帰るよ、帰るけど!! あそこにいるデーリッチも連れて帰る!!」
「あ、あー、そんな風にこじれちゃったかー。
まあ気持ちはわかるけどさー」
大人エステルはこめかみに指を当てて悩ましく艶めかしくため息を吐いた。
「エステル!! なんとか彼女を説得してくれ!!
彼女、デーリッチを未来に連れて帰って自分の代わりにするつもりなんだ!!」
「そう、……そっかー。うーん、ごめん!! マリー!!」
「エステル!?」
大人エステルは両手を合わせて頭を下げて、ローズマリーに謝った。
誘拐に加担するという今のエステルからすれば想像もできない反応だった。
「私たちもさー、いろいろとマナを縛り付けちゃってね。
ちょっとだけ、ちょっとだけデーリッチ借りるだけだからさ!!」
「そんなこと許せるわけないだろ!!」
「そっか。まあ、そうだよな。
あっちのマリーにも会わせてあげたかったんだけど、そんな道理が通るわけないか」
大人エステルは少しだけ哀愁のある皮肉げな笑みを浮かべた。
「だけど、通すさ。その道理を。
私の親友が二人、未だ贖罪の機会を探してあんなふざけた道具を作ってしまった。
見ていて痛々しいんだ、悲しいんだ。誰もあの時のことを吹っ切れていないんだ!!」
美しく、そして悲しく成長してしまった彼女は、デーリッチを指差した。
「それで今回のマナの一件だ!! みんながみんな、デーリッチの影しか見ない!!
あいつとは違うって頭でわかってても、重ねてしまう!! 私だってその一人で、あの子を傷つけてしまった!!
もう別の世界からデーリッチを連れてくるぐらいしか、私には思いつかない!!」
「君は、本当に、本当に!! むかつくほどまっすぐだな!!」
「少しの間だから、とか言い訳なんてしない。正々堂々、昔のみんなを打ち負かしてデーリッチを連れ去る!!
そして後のことは全部シノブに丸投げする!!」
「おいッ、私!! 十年後の私おい!!」
「私だって本当はこんなことやりたくないんだ。悪いけどマリー、全力で止めてくれ!!
そしてやっぱり悪は敗れ去るんだって、私を諦めさせてくれ!!」
「ああもう、そうさせてもらうよ!!」
呆れるほど変わっていない未来のエステルに、ローズマリーもやけくそ気味にそう叫んだ。
「私もマナの親代わりになってからさ、昔のようにまっすぐ正義を貫けられたらって思うんだ。
でも己の正義を曲げてあの子を救えるならそうする!! 曲がったままでも押し通す、それが私だ!!」
今も未来も変わらぬ速攻の業火が迸る!!
「ふざけるな!! あんたの苦しみや悲しみは全部理解できないけど、それで自分が嫌いだった理不尽を強いる側の人間になりやがって!!
お前なんか、私なもんかぁ──!!」
若きエステルが炎の壁で炎のカーテンを防ぎ切った。
「そう思うなら、超えて見せろよ。若さなら有り余ってるだろ?」
「十年程度で耄碌して、目ぇ覚まさせてやる!!」
「なにあいつら、少年漫画かよ」
「ただでさえ暑苦しいのが二人で余計暑くなってるよなー」
そんな両者を、マルースとヅッチーは呆れてみているのだった。
贔屓目を見せると割とやらかしてしまう女神様だった。
そして名前を奪われた悪魔……いったい誰なんだ……。
戦闘はイベント戦みたいなかんじで簡素なかんじにする予定です。
登場する十年後の原作キャラはアンケートの結果、エステル、ゼニヤッタ、シノブになりました。
よりによって今回話の通じない二人と票が集まらなくても出そうと思ってたシノブが一位と言うことになりました。
登場してほしい十年後の原作キャラは?
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ベロベロス
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ハオ
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エステル
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ゼニヤッタ
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シノブ