アナザー・アクターズ   作:やーなん

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EX.拠点内会話その9

『拠点内会話 不思議な交流 』

 

 

『前略

 この度は我が国の娘とも言えるマナがご迷惑をお掛けしたことを心よりお詫び申し上げます。

 彼女の両親は大変忙しく、我が国にて彼女が寂しがらないよう大勢で手塩にかけて育てていました。

 しかし、私は彼女にその出生ゆえに数多くの期待を掛けてしまい、つい先日まで私に我儘の一つさえ言うことは有りませんでした。

 先日、彼女の前世を知った私たちは彼女をどのように扱えばいいか大いに悩みました。

 貴女にとっては不愉快な事実でしょうが、早死にさせてしまった我が最愛の国王と同じように扱うことでしか我が娘も同然の彼女を愛することができなかったのは、我ら一同慙愧の至りであります。

 

 あの子の伝言は、確かに受け取りました。

 もう一度会うことが叶わぬことは残念でありますが、それは本来当たり前のことなのだと留意しています。

 むしろ、私はどのような顔をしてあの子に会えばいいか分からず、我が国の忠臣に「私に会いに来る」と伝えられた時、正直不安と恐怖で本当に頭が真っ白になりました。

 私はあの子が亡くなった時、後悔と怒りと憎悪に駆り立てられ、当時の王国のみんなにも多くの迷惑を掛けた覚えがあります。

 私があの子に見た理想や夢は、きっとその時に失ってしまったのだと思います。

 もし本当に過去からあの子がやってきて、私を糾弾するのであればきっと私は何一つ言い返せることは無いのでしょう。

 私はきっと、マナの前世を知る前から彼女にあの子を重ねていたのでしょう。

 かつての私へ、どうか貴女は後悔や憎悪であの子に見た希望を見失わないでください。

 どうか、我が国の子をよろしくしてやってください。

 

草々

ハグレ共和国一同代表 ローズマリー

 ビルーダーよ。

 この手紙は読み終わったら、誰にも見せずに必ず速やかに処分しなさい。以上よ』

 

 

「…………」

 ローズマリーはマナから受け取った自分と同じ筆跡の手紙を読み終わると、最小限の出力でファイアを発動しその手紙を灰も残さず消し去った。

 

「わッ!? ローズマリーさん、いきなり室内で魔法は止めてくださいます?」

「ヘルちんビビりすぎだって……いやゴメンだけど」

 面接室を兼任する図書室で本を読んでいたヘルラージュが突然の魔法の炎にビビっていたので、ローズマリーは素直に謝った。

 

「未来の自分からの手紙だったのでしょう? 燃やしちゃってよろしかったのですか?」

「そう言う指示が書いてあったんだよ、マナちゃんをよろしくってこと以外面白い内容も無かったしね」

「そうですか。未来からの自分の手紙とか、なんだか逆タイムカプセルみたいでわくわくしませんか? 私も昔、お姉ちゃんとやったなぁ、タイムカプセル」

「確かに面白いかもね、そのうち何かの記念にタイムカプセルを王国のみんなでやろうかって提案してみたらどうだい? 

 十年後の自分たちに向けて、ってデーリッチとかは賛成すると思うよ」

「では、今度の王国会議で提案してみましょう!!」

 ヘルラージュはにへらっと、見る者を和ませる子供っぽい笑みでそう言った。

 

「ヘルちん、君は何を読んでいるんだい?」

「これですか? ビルーダー様の書籍ですわ」

「ああ、本棚丸ごと持ってきたっていう自叙伝の数々か……」

 ローズマリーは振り返って新たに追加された本棚に置かれたビルーダーの著書を見やり苦笑した。

 あの女神は時折、こんな風に自己顕示欲を満たすのである。彼女を信仰しない人物にとってはあまり意味の無いもので、読む人間は殆ど居ないが。

 

「それはビルーダー様の地獄についての書籍かい? ヘルちんらしいね」

「わたくしらしいってどういうことですの!?」

 ごほん、と彼女は咳払いして気を取り直した。

 

「自分や家族が、どんな地獄に行くか気になったりするでしょう?」

「まあ、確かにね」

「わたくしはこのままだと嫌いな食べ物しか食べられない地獄に墜ちるかもしれません……」

「子供か君は!? 地味に嫌だなその地獄!!」

 ローズマリーは彼女の読んでいる書籍のタイトルを確認した。

『チャートでわかる、あなたの墜ちる地獄!!』という性格診断みたいなタイトルだった。

 

「もう一度、もう一度やり直しますわ……」

「君、それじゃあ意味が無くないかな」

 そういうところが彼女の魅力なのかなぁ、と思うことにしたローズマリーだった。

 

「あのさ、思ったんだけれど……」

「どうしたんだい、ヅッチー」

「マナの母親って帝都の執政官だって言ってたよな? 

 そんな奴がどうしてマナの後ろ盾になるんだ? ビルーダー様は未来のハグレ王国じゃなくて、帝国の方に肩入れしてるのか? 

 それにしてはマナはローズマリー達に預けられているみたいだし」

「ああ、たしかにそうですわね」

 勉強をしていたヅッチーが疑問を呈すると、ヘルラージュはハッとなってそう言った。

 

「おそらく、その執政官は何らかの協力関係にあるんだと思うよ。

 マルースさんが見初めるくらいだし、かなり交流もあったんだと思うし。恐らくこの辺境を監督できる立場に居て、徴税の話とかで私とはそれなりの頻度で会っているはずだ。

 それに私なら、自国だけで独立は宣言しないよ。属国になっている妖精王国とか他のハグレ達の集落を呼び掛けるに違いない。

 十年の間に二度も戦争があった帝国もだいぶ疲弊から持ち直しているだろうし、交渉の窓口としてもお願いしているのかもね」

「なるほどなー、さすが本人だわ。聞いてみるもんだな」

「いや、本当にそうなのかはわからないよ? 断片的な情報から推察しただけだよ」

「プリシラにさー、うちが将来帝国の属国になるとしたらどうするって聞いてみたらさ、今のうちに自国貨幣を発行して徐々に帝国の貨幣価値を貶めるって手紙に書いてあったんだよ。

 そうしてないってことは私が止めたのかなーって思ってたけど、その上でこっちに歩調を合わせたって線が強そうだ」

「やっぱり君のところのプリシラを刺激しないって選択は正しかったようだ……」

 感心そうにしているヅッチーを見て、ローズマリーは内心冷や汗を流すのであった。

 

 

 

 

『拠点内会話 避けられている理由 』

 

 

「デーリッチー、こんにちわー」

「あ、マナちゃんでち、今日は来てたんでちね!!」

 あの日以来、毎日ではないがマナは数日置きに拠点へ遊びに来るようになった。

 彼女の行き来する現在と未来とで同じだけの時間が過ぎていることに不思議さと面白さを感じながらも、みんなはそれを受け入れていた。

 何だかんだで面白ければ気にしない大らかなハグレ王国だった。

 

「あ、ベル君」

 二人が拠点内を練り歩いていると、道具屋の商品を準備しているベルに出くわした。

 

「あ、デーリッチちゃんに、マナちゃん……」

 ベルはデーリッチの背中に隠れた少女を見て、彼女を呼ぶ声が尻すぼみになった。

 

「……ベル君、マナちゃんに何かしたんででちか?」

「ううん、初対面の時からこんな感じ」

「うーん、いったいどういうことなんでち?」

 ベルの言葉にデーリッチは少し困ったように首を傾げた。

 

「マナちゃん、ベル君もデーリッチと一緒でマナちゃんと仲良くしたいんでちよ。

 どうしてそんな風に避けるんでちか?」

 率直にデーリッチは彼女に尋ねてみると、マナは口を尖らせてこう言った。

 

「だって、ベル君嘘つきだもん」

「ええッ!? どういうことなの!?」

「私がもっと小っちゃい頃、ベル君は私と結婚してくれるって言ったのに、別の人と結婚しちゃうんだもん!!」

「うえッ、マジでちか!? それはヒドイでちね!!」

「いやいやデーリッチちゃん、今はそれよりもっと驚くべき発言があったよね!!」

 マナの発言に驚愕するデーリッチと、もっと別な意味で動揺しているベルだった。

 

「誰? 誰です!? 誰と結婚したんです!?」

「知らなーい」

「ううー、自分の知らないところで女の子に嫌われているなんて複雑な気分……」

 そっぽ向いてベルを拒絶するマナに、彼はもどかしそうな表情になった。

 

「ほほー、ベル。お前も将来既婚者かー」

「うわッ、面倒な人に聞かれた……」

 道具屋と鍛冶屋の間の通路からマルースが顔だけ出してニヤリと笑った。

 

「その上俺の娘(予定)を誑かすとは、やるじゃないか」

「あのー、勝手に一緒にしないでくれます!?」

「いやまあわかるよ、しょせん小さい頃の約束だと思って軽い気持ちでそんなこと言っちゃったんだろうさ。

 だが男はチャレンジだよ。夢見ることを諦めてはいけないぞ」

「あなただって将来既婚者だって言われてるでしょ!? 

 仮にも娘が目の前にいるのに何言ってるんですか!!」

「はぁ~!? 俺が一人の女に囚われるわけないだろ!! 

 きっと何かの間違い、何かの間違いなんだ……」

「急に現実逃避は止めてくれません!? 

 むしろ何かの間違いな方がもっとヤバいじゃないですか!!」

 口を開くたびに最低な発言が出てくるこの男に、ベルのツッコミも追いつかない!! 

 

「マナちゃん、見ちゃダメでち。あそこにいるのはただの遺伝子提供者で、マナちゃんには最初からママしかいないんでちよ」

「おいこら、勝手に俺の存在を消そうとするな!!」

 あまりにも見苦しいのでデーリッチはマナを後ろから眼隠してそんなことを囁き始めた。

 

「何かの間違い扱いしたのはそっちが先でしょうに……」

「大丈夫だよ、二人とも。私パパがこういう人だって知ってるから。

 でも私知ってるよ、パパはそれでもママにメロメロなんだって。ぷぷッ、パパってば昔はこんなこと言ってたんだ」

 呆れているベルとデーリッチにマナはそう言って、彼女は何やらニヤニヤと思い出し笑いをし始めた。

 

「それにママと喧嘩してもいつもパパの方から謝るし、結婚記念日とかママと私の誕生日とか忘れたこと無いから、私はゆるしてあげるんだ」

「かー!! 見てみるでちベル君、マルちゃんよりマナちゃんの方が大人でち、人間が出来てる!!」

「マナちゃん、本当に周りに大事に育てられているんだね……」

 そんな八歳の幼子の健気な言葉に、感涙を流す子供二人である。

 

「ち、違う、ちゃうねん、そんな、そんな俺が居るはずないんだー!!」

 それは羞恥なのか、マルースは赤くなってその場から逃げ出した。

 

「パパー、今日は一緒にお風呂入ってあげようかー!!」

「や、やめろー!! 俺はペドじゃない!! 少女好きだが娘に欲情できるかー!!」

「ぷぷッ、あははは!!」

 遠くからそんな叫びが聞こえて、マナは可笑しそうにお腹を抱えて笑い出した。

 

「これはマルちゃん、将来はきっちり手綱握られてるに違いないでち」

「僕も将来が心配になる光景だなぁ」

 未来の娘にたじたじな彼を見て、それぞれ未来に思いを馳せるのだった。

 

 

 

 

『拠点内会話 神々のお茶会その3 』

 

 

 その日、いつものように神々のお茶会が開催されていたのだが。

 

「ビルーダーよ、いい加減機嫌直したらどうじゃ」

「…………」

 ティーティー様がビルーダーに声を掛けるが、彼女はむすっとしたままだった。

 

「先日のマナちゃんの件、別に私たちは責めていたわけじゃないんですよ。

 貴女は貴女の仕事の中で慈悲を掛けただけ、それは私たちも理解していますし」

「そうですよ、巡り合わせが悪かっただけですって」

 福ちゃんもかなづち大明神も、ずっとこんな調子の彼女をなだめるようにそう言った。

 プライドの高い彼女は未来の自分の仕事にケチを付けられるのが大層不愉快なようだった。

 

「………………わかってくれればいいのよ」

 やがて、ビルーダーはそう言ってバリボリとクッキーを食べ始めた。

 その様子に他の三人はホッと息を吐いた。

 何だかんだで彼女は話題を持ってくるし、交流には積極的だった。

 彼女が黙っているだけでお茶会がだいぶ静かになるので、それでみんな落ち着かなかったのである。

 

「仕方ない、ビルーダーよ。今日は好きなだけお主の話に付き合ってやるぞ。

 何か面白い話はないのか?」

「面白い話はないかって言われてすぐどれと言えるほど、私の引き出しは多くないのだけれど」

「そうじゃ、お主の本体は人間出身なんじゃろう? 

 人が神になるのは偉業を成すか、別の神が勧誘するなど色々あるが、それに関する話はないのか?」

「…………」

 ティーティー様がそのように問うと、ビルーダーは再び黙り込んでしまった。

 

「どうしたんですか? ビルーダー様」

 福ちゃんは不思議そうにビルーダーを見た。

 この手の自慢話は彼女が大好きな内容だと思っていたのに、当の本人はだんまりだった。

 

「もしかして、話し難い内容ですか?」

「いえ、どちらかと言うとこの話は100人中99人がドン引きするのよ。

 これを話して面白かった、なんていう人はまず居ないわ」

 気を使ってそのように問うたかなづち大明神に、ビルーダーは若干言いづらそうにそう述べた。

 

「構わんよ、むしろ興味が出てきたぞ。

 わしらは仲間じゃろう? それにこれから付き合いも長くなるようじゃしな」

「そうですね、お互いのことをそろそろ話しても良い頃でしょうし」

「そうなるとあまり歴史のない私は話すことなんてあまりないかもしれませんね」

「いやいや、かなちゃん。妖精王国の黎明期の話とかわしは興味あるぞ。

 あの妖精たちがあんな行動力を見せるようになったとかな」

「ああ、そういうことならいくらでも話せますね」

 ビルーダーはそんな風に話し合う三柱を見て、どこかホッとしたようなため息を吐いた。

 

「いいわ、ちょっと長くなるけれど」

 ビルーダーはそのように前置きして、話し始めた。

 

「私の本体はこの世界とは全く別の、この間の講義で言うところの別の木の世界出身なのよ。

 その世界で神々は宇宙の始まりからすべて神の座の席が埋まっていて、知性の無い法則として存在していたの。

 彼らは歴史の終焉、宇宙の終わりまで存在が約束された時間や因果律を超越した存在だったわ。

 そんな彼らは時折何かの切っ掛けで知性に目覚め、神として地上に威光を示すようになるの。

 人間出身の本体はかなり後発で知性に目覚めた肩身の狭い立場だったみたい」

「おいおい、それは神になった後の話じゃろう? 

 いや、その言い方なら初めから神だったと言う事実に後から気付いたという感じか?」

 ティーティー様の疑問に、ビルーダーは頷いた。

 

「ええ、そうよ。

 本体は人間として地上で誕生したわ。

 彼女は生まれた時から自分は特別だって自覚があった。自分は天才だと疑いもせずに、自分の才能を最大限に発揮できる出身国の研究機関に身を置いたわ。

 そこで若くして多くの成果を出したわ。けど……」

「もしかして、その成果が認められなかったんですか?」

「もっと酷いわ。彼女の成果はその研究機関の老害どもに横取りされていたのよ。

 その時彼女は思い知ったわ。自分は研究だけの自惚れ屋の大馬鹿だって」

「それは酷い……」

 ビルーダーの語った女神の境遇に、かなづち大明神は同情したのだが。

 

「だから彼女は敵国に亡命したわ。

 その亡命先が絵に書いたような悪の帝国でね、彼女は戦争に使うキメラや武器を沢山作って、瞬く間に悪の帝国の幹部みたいな立ち位置に落ち着いたの」

「ええぇ、私の同情を返してくださいよ……」

「でも彼女は実力主義の帝国では恐れられ、期待されたわ。

 だけど激しい周辺諸国との戦争の末に、捕えられ、処刑されたわ。怪物を生み出す悪魔としてね」

「たしかに、それは面白い話ではなかったな」

 ティーティー様はその話をすることを提案したことを後悔しかけたが。

 

「だから私は名声通りのことをしてやったわ。

 私は人体に投与すると体が魔物に変異する病原体を世界中にばら撒いてやったのよ!!」

「おい!! わしの後悔も返せ!!」

「生前最期の言葉が、私が居ない世界なんてゴミ同然よ!! 全員道連れにしてやる!! だったかしら」

「まさに邪神の所業ですね……」

 これには福ちゃんもドン引きだった。

 

「彼女は世界が魔物に溢れ死に絶えていくのを神の座から俯瞰して見ながら、自分が神であることを自覚したわ」

「最低最悪の覚醒ですね……」

「それで、そんなことをして他の神々は黙っていたんですか?」

 同様にドン引きしているかなづち大明神をよそに、福ちゃんが尋ねた。

 

「彼女の出身世界は、この世界が木なら林だったの。要するに複数の世界で構成された一つの世界観と言うべきかしら。

 その一つが絶えたぐらいで、神々は何も言わなかったわ。天界は自然神が仕切ってたし、人間なんてどうでもよかったんでしょうね」

「そっちはそっちで酷いですね」

 かなづち大明神は彼女の語る神々に眉を顰めた。

 

「彼女は神々の末席に加わることは許されたけど、その扱いは雑だったわ。

 だけど彼女は自分がどんな性質の神か理解していた。その身に余る全知と全能、彼女は人間の文明を見渡す叡智の女神だった。

 それをひけらかせば自分は孤立すると思った彼女は、生前ずっとボッチだったのもありモテる為にいろいろな神々に助言したりするようになったわ」

「急に動機が不純になりましたね……」

「だって彼女は気付いてしまったのよ!! 自分は生涯男とは縁が無かったって、有ったとしても同僚で基本煙たがられてたし!! 

 もうこうなったら天界で良い感じの男神を捕まえるしかないでしょう!?」

「それ、上手く言ったんですか?」

 福ちゃんはあえて答えが分かっていながらビルーダーに尋ねた。

 彼女は肩を落としてこう言った。

 

「ぜんぜん、人間出身の神なんて見向きもされなかったわ。

 それどころか元人間のくせに一々口を出してくるうざったい女神だって言われるようになったわ」

「それもそれで酷い扱いじゃな……」

「そんなある時、彼女に転機が訪れたわ。

 彼女と同じ人間出身の女神が、多くの世界で災厄をばら撒いているという話が天界で持ち上がったの。

 彼女はその対処を同じ人間出身だからと言う理由で、他の神々に押し付けられたの」

「それで、その災厄の女神を倒して他の神々から認められる、とかいうサクセスストーリーなんてことではないんでしょうね……」

「全然!! むしろその女神と意気投合したわ!! 

 彼女は呪詛と復讐の女神だった。彼女も私の本体と同じような鬱屈を溜めこんでいたの。

 それで彼女たち二柱はタッグを組んで他の神々に喧嘩を売ったのよ!! そうして神々が統べる世界に、次々に攻め込んでいったわ!!」

「なんだかプロレスの興行みたくなってません?」

 福ちゃんのツッコミを無視して、ビルーダーの語りは熱を帯びて行った。

 

「その当時が、本体の黄金期だったわ。

 彼女たちは神々との激闘の末に、勝利はした。けど本体はかけがえのない相方を失ってしまったの。

 人格の喪失、その世界では神の事実上の死だったわ。

 姉妹神の契りさえした彼女は、姉妹の死を嘆いた。そして彼女の死際の最期の言葉である『二人で一緒に理想の楽園を創りたかった』という願いを叶えようとその出身世界を離れ、独りで楽園を創るべく活動を始めたわ。

 そして今も、私たち分体がその命題を引き継いでいるというわけ」

「良い話なんだか、そうではなかったと言うべきか……」

 これは確かにドン引きされるわ、と思うティーティー様だった。

 

「友人想いではあったんですね……」

「ええ、本体の記憶を受け継いだ私にも当時の記憶は鮮烈に輝いているわ」

 どこか熱っぽく、ビルーダーは福ちゃんにそのように語った。

 

「きっと楽しかったんだわ、友達と一緒に何かを成し遂げようとした時間は……何事にも代えがたいほどに」

「今のハグレ王国も、きっとそんな一番楽しい時間になるのかもしれないですね」

 ビルーダーの話を、かなづち大明神はそのような感想で締めくくった。

 

「そうね。本体と、かの女神が友情を培った時間は、きっとこの王国にも流れている。

 私はここに住むみんなに、その輝かしい時間を夢見たわ。十年後の私も、きっと同じことを考えたのでしょうね」

 一通りビルーダーは話終えると、少し冷めた紅茶を口につけた。

 

「まあ、何だかんだでお主の本体も丸くなったということか。

 それはそれで良かったんじゃろうな。さて、次はわしが南の世界樹でハオと共に苦労した話をしようか?」

「いえ、ティーティー様。次は私でもよろしいでしょうか?」

「おや、福ちゃんが二番手か? 構わんぞ」

 福ちゃんが手を挙げてそう言ったので、ティーティー様は次の語り手を譲った。

 

「では、私がこの世界にハグレとして呼ばれた時のことをお話ししましょうか」

 福ちゃんはビルーダーを見て、話を切り出した。

 彼女は何となく、ビルーダーが以前言った似た者同士と言う言葉の意味を理解した。

 

 自分だけそれを知っているのはフェアではないと、福ちゃんは自分がかつて姉妹の契りを交わしたハグレの女神のことを自らの出自と共に話し始めた。

 各々の反応を楽しみながら、彼女はやがて多くのことを友人たちに話していた。

 残りの二柱も、饒舌に多くのことを仲間たちに語った。

 

 そしてその日のお茶会は、いつもの予定よりだいぶ長引いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 




次回にオリキャラ設定を投稿し、その次から三章、王国会議や地竜ちゃんの加入などの話をする予定です。

王国の面々との関係が、オリキャラたちの存在により徐々に原作との変化が生じるのを描写をするのが何よりも楽しい瞬間ですね。

次回はアンケートを予定してますので、楽しみにしてくださると幸いです。
では、また次回!!
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