アナザー・アクターズ   作:やーなん

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四話目を投稿。
確かに前回より緩やかな更新になりましたね。



4.私だけの雪合戦

「ううう、寒い……」

 俺は吹きすさぶ風から身を守るように、先ほど買ったばかりのどてらを握りしめる。

 

 本日、俺たちは拠点のある遺跡からぐるっと南の山を遠回りして北上した雪原地帯にあるサムサ村へと来ていた。

 

 何でも、福の神様繋がりで俺とも知り合いのサンタさんが言うには、空から雪だるまが降ってくるという珍事件が起こっているというこの村で、それを調査解決してくれるハグレを募集しているのだと言う。

 それが先日の第一回王国会議にて福の神様が仰っていたことだった。

 

 ついでに、拠点から徒歩で遅くても二時間くらいの距離の近隣の村との関係は重要であり、上手く行けば庇護下に置けるとのこと。

 その神さまならではの視点に、ローズマリーも感心していたのを覚えている。

 

 そしてそんな珍事件を起こすのは間違いなくハグレである、と。

 今は王国の参加者を増やして頭数を揃えたいと言う段階なので、行ってみようとことになったのだ。

 

 今、デーリッチとローズマリーが村長から話を聞いている所だろう。

 俺は基本的に交渉事には参加するつもりはない。俺はただの戦術顧問に過ぎないのだから。

 それに俺みたいな大人に頼って交渉事の経験を積めないと言うのはデーリッチにとってマイナスだろう。

 そのあたりはローズマリーがしっかりしているだろうから大丈夫だと思うが、何事も経験である。横で見ているだけでも十分勉強になる。

 

「おーい、マルちゃん!!」

 そんなことを考えていると、交渉を終えたのかデーリッチ達がこちらにやってきた。

 

「うん? なんか一人増えていないか?」

「ええと、何と言うか成り行きで一人増えてしまって」

 ローズマリーが、隣のヘンテコな格好をした少女を流し見る。

 

 レオタードにコルセットを合わせたような体のラインが浮き彫りになる格好の少女で、頭には目玉焼きみたいな配色のアンテナみたいな物体を乗っけていた。

 そしてなぜか左目を左手で押さえていた。

 

「ほかに仲間が居たのね、これだけ居れば心強いわね」

 と、俺と後ろの戦闘要員たちを見て頼もしそうに笑みを浮かべるそのヘンテコ少女。

 

「私はサイキッカーヤエ!! 超能力者よッ!!」

「超能力者ぁ? そんなの昔、帝都で十人くらいは見たぞ。全員インチキだったがな」

 自らを超能力者だと名乗るこの痛い少女に、俺は猜疑の目を向けざるをえなかった。

 

「まあ聞いてくださいよ」

 そしてローズマリーが彼女が付いてくることになった経緯のあらましを語ってくれた。

 変なのに纏わり付かれて愚痴っぽくなったが、大体のことは把握した俺だった。

 

「報酬が300ゴールドとは。俺が同じ人数を率いて雇われるなら十倍は取るぞ。随分舐められたもんだな」

「そこはまあ、まずはハグレ王国の名前だけ憶えて貰わないと」

「俺たちは駆け出しのお笑い芸人か何かかよ」

「あの集団を見てお笑い芸人と言うよりサーカス団の方が的確なんじゃない?」

 俺とローズマリーの話を聞いて、屯しているマッスルやらベロベロスやらハピコやらを指差すサイキッカーヤエ。

 

「………」

「………」

 その指摘に何も言えなくなる俺とローズマリーだった。

 

 

 

 §§§

 

 

 意外なことに、サイキッカーを名乗る自称超能力少女はちゃんと調査をしていたらしく、手を組む以上すんなりと雪だるまで塞がれた道の脇道から地下への空洞へ入って犯人に近づけるルートを教えてくれた。

 

 俺たちは道中の魔物を蹴散らしながら、お互いの連携を確認していく。

 

「ほらほら、TPは戦闘越しに持ち越せないからバンバン出し惜しみするな。

 負傷したら後列に回れ、無理はするな。状態異常は極力戦闘後に治すんだから、多少無茶でも敵を倒すことだけ考えて、出来る無茶だけをするんだ!!」

 俺は仲間たちが連携して魔物と戦うのを全体から見て指示を出す。

 その姿を、ほー、とデーリッチが感心するように見ていた。

 

「マルちゃん、流石に戦闘慣れしてるんでちねー。

 行動指示に無駄が無いでち」

「軍人時代は普通に士官だったからねぇ。

 こうして指示するのが仕事だったのさ。いざと言う時に、ちゃんと指示を出せる人間が居るか否かは仲間たちの生死に直結する。

 でち子も俺の側で俺のやり方を見て覚えて、自分で仲間たちに指示を出せるようになろうな?」

「わかったでち!! 頑張るでち!!」

 元気よく頷くデーリッチに微笑ましく思っていると、視線を感じたのでそちらを見るとローズマリーが俺をジト目で見ていた。

 

「どうしたよ、マリちゃん。俺の指示に不満が有ったのか?」

「いいえ、ただ後でデーリッチには私からちゃんと戦闘講座をするべきかなと思ったもので」

 明らかに何かしらが気に食わないであろう彼女は、自分の王様の教育は己がしっかりやろうと言いだした。

 

「ぶっちゃけさー、俺要らないよね?

 前にマリちゃんと俺でボードゲームやった時、三時間ぐらい長引いた末に俺が負けたし。

 あれだけの采配が出来るなら、戦術面でも俺が助言すること無くない?」

「そんなことは無いですよ。私は本物の戦場を知りません。

 予想外の出来事で狼狽えるかもしれないですし、実戦経験豊富な人間は必要ですから」

「それだけ肝が据わってりゃ、十分だと思うけどね」

 恐らく、この子は既にその段階をとっくに超えている。

 多角的な視点を求めている時点で、指揮官としての才能は十分にあるだろう。

 

「あのー、ちょっといい?」

「なんだ、自称超能力者」

「なんで私を戦闘に出さない訳!?」

「お前が使えるかどうかわからねぇからだよ!!」

 ローズマリーよりもっとわかりやすい不満をぶつけてきたサイキッカーヤエに、俺はそう返した。

 

「だいたいなんだよ超能力者って。

 胡散臭いんだよお前、魔法なら魔法で何が使えるとか言えよ!!」

「魔法ならサンダーが使えるわね」

「じゃあ普通に魔法使いでいいじゃねぇか!!」

 こっちは魔法が使いたくても使えんと言うのに、超能力者なんて名乗って何が楽しいのか。馬鹿馬鹿しい。

 

「じゃあ見せてあげるわよ、これがサイキッカーヤエの十八番、サイキックバインドよ!!」

 そう言って、彼女は次に現れた魔物を不可視の力場で押しつぶしたのだった。

 

 

 

 §§§

 

 

「外だーー!!」

 地上に出るなり、デーリッチは地下の閉塞感から解放されて飛び上がった。

 

「ええ、もう雪だるま砲撃地帯は突破している筈だけど、一応頭上に注意してね」

「ラジャーでち!!」

 デーリッチは昇ってきたサイキッカーヤエに向かって敬礼をした。彼女の気分は俺の影響か軍人気分のようだ。

 

「……すまなかった。君は本当に調査していたみたいだ。

 しかし、それだと調査報酬を貰えなかったのは悪かったな」

 ローズマリーは彼女の胡散臭さから自身の先入観が誤っていたことを素直に謝罪した。

 

「ええ?」

 まさか謝られるとは思っていなかったのか、サイキッカーヤエは目を瞬かせた。

 

「テレパシーの内容まではちょっと信じたくないが、私たちが邪魔してしまったせいで報酬が貰えなかったように思えるよ」

「ああ、気にしないで。どうせ払う気無かったでしょうし。ハグレ相手にはかなりケチだし」

「ううん……」

 ひらひらと手を振って何でもないように言う彼女に、ローズマリーは喉に魚の小骨が刺さったような表情になった。

 彼女の言動の割には、しっかりと自身を客観視しているようだった。そしてその扱いを受け入れざるを得ない様子に、ローズマリーの胸も痛んだ。

 

「ところで、さっきっから黙り込んじゃってるそちらのおじさんは年下の女の子が謝ったのに一言も無いのかしら?」

「悪かった」

「え?」

「君の能力を疑ってすまなかった」

 俺は素直に頭を下げた。

 ……分からなかったのだ。

 

 彼女のサイキックバインドとやらが、一体どういう理屈で発生し、相手を叩き潰したのかを。

 俺は今までこの世界で学んだ魔法の理論や召喚術の知識を総動員しても、それを誰かに説明することは出来ないのだ。

 仮にも学者を志そうとした人間が、何かよく分からないけど彼女は何かよく分からないことをした、としか言い表せなかった。

 

 屈辱だった。己の無知もそうだが、自身の常識に当て嵌めて相手を見下すなど、最も愚かな行為の一つだと子供の頃から教わって来たのに!!

 

「わ、わかればいいのよ。だからいつまでも年上が小娘相手に頭を下げているものじゃないわッ」

 デーリッチも、ローズマリーも、他の仲間たちもぽかんとしていた。

 

「ええと、私がテレパシーを感じたのはもう少し先よ!!

 つまり、もう犯人は大分近いってことね!!」

 俺が余りにも普通に頭を下げたので居た堪れなくなったのか、サイキッカーヤエは自ら先導して進み始めた。

 

「意外だね、あんたはもっとプライドが高いと思ってたよ」

「己の非を認めずに意固地になるのはプライドが有るとは言わんよ」

「だったらその悔しそうな表情止めなよ、あんた時々デーリッチより子供っぽいよ」

 そんなハピコの指摘に、俺は黙って唸るしかできなかった。

 

 ……やめてくれよ、未知の力に遭遇してはしゃぎまわるには、俺はもう大人になり過ぎたんだ。

 

 

 

 §§§

 

 

 俺は正直、話が噛み合わない相手が一番嫌いだ。

 こちらが順序立てて話しているのに、相手はするりするりと今話している内容を押しやって自分のペースで話だしてしまうのが。

 結果、会話が成り立たない。二人で話しているのに、まるで一人で壁にボールを投げてキャッチボールの練習をするが如く、だ。

 

 ハグレと会話すると、偶にそう言うことが起こる。

 常識の違い、価値観の違い、そして文字通り、世界観の違いがあるからだ。

 

 雪だるま落としの犯人と思しきハグレの住処を見つけ、上へと登ってみると今まさに雪だるまを蹴って地上に落としている少女を目の当たりにした。

 

 サイキッカーヤエが説得を試みるが、まったく話が噛み合わない。

 困った彼女を見かねて、ローズマリーが分かりやすく噛み砕いて説明した。

 

「君の世界の文化がどうだか知らないが、こっちじゃ雪だるまを投げる文化なんて無いんだ。

 単純な話、空から降ってくる雪だるまにみんな不安がってるんだよ」

 これ以上ないほどわかりやすい、ハグレに対してよく分からない行為を止めるように言う言葉だった。

 ところが。

 

「じゃあ、私がこの文化を広めないといけませんね!!」

 彼女は謎のポジティブさを発揮し、そんなことを言いだしたのだ。

 

「おおおぅい!?」

 と、ローズマリーがツッコミながら仰け反るのも止む無しの反応である。

 

 ダイナミックで楽しいスポーツなんです、と満面の笑みで語るハグレの少女に、デーリッチも彼女がこちらの話を聞くことが無いと悟った。

 そして結局力づくでどうにかする羽目になるのであった。

 何となくそうなる気はしていたのだが、まあ、何も言うまい。

 

 

 ……

 ………

 …………

 

 

 どかん、と少女が蹴り上げた雪だるまが巨大化して地面に炸裂する。

 相手のテリトリーで戦っているからか、数人掛かりだと言うのに思いのほか苦戦していた。

 

「何だか眠くなってきたでち、ぐー……」

「おい、でち子が寝たぞ!! 後ろに下げろ、俺が起こしとくから!!」

 氷属性の攻撃は、何かと睡眠の異常状態とついて回る。

 相手の巨大雪だるま落としも、眠気を誘うほどの冷気を纏っていた。

 

「弱点防御の守りの合間を狙うぞ!!

 ベロベロスはTPを溜めて後列に……いや、お前は睡眠耐性が有ったな、やっぱり前線でダメージを稼げ!! 大技の予兆が来たら防御を忘れるなよ!!」

「バウッ!!」

 ベロベロスは俺の指示をしっかり理解しているのか、指示通り的確に動いてくれていた。

 

「マッスル!! 敢えてお前は後ろに下がれ、TPを溜めてフルパワーを頼む!!」

「あいよ!!」

「ちょ、後ろが空いてないからって私を出す!? 投擲弱点なのに!?」

「でち子起こしたら蘇生させるから踏ん張れ!!」

「被弾前提!? この鬼畜、外道!!」

 とか叫びながら、ハピコは雪だるまが直撃。尊い犠牲となった。

 

「ほら、起きろ、起きろよ、でち子」

「むにゃむにゃ……はッ!? 寝てない、寝てないでちよ」

「分かったからさっさと前に出てパンドラ使え!! ほら、ローズマリーも落ちた!!」

「ま、任せるでち!!」

 俺がデーリッチの頬をぺちぺちして彼女を起こすと、慌てて前衛へと躍り出てキーオブパンドラの力を解放した。

 無数に存在する世界から無尽蔵のマナを供給し、その力で力尽きた仲間たちを復活させる!!

 

 そして相手の守りの切れ目にマッスルが全力のタックルを飛んできた雪だるまにぶちかまし、跳ね返したそれが少女に跳ね返った。

 

「今よ!!」

 すかさずサイキッカーヤエの放ったサンダーが少女の足元に炸裂し、彼女は吹っ飛ばされた。

 少女は悲鳴を上げ、今の雷撃で雪の中に倒れダウンした。勝負ありだ。

 

「っと、危ない……。落ちなくて良かったわ」

 彼女の真後ろは崖なので、手加減したのかサイキッカーヤエは安堵したようだ。

 

「うううッ、ルール違反ですぅ!!

 飛び道具以外が混じってましたー!! そっちの反則負けですよ!! 謝るですー!!」

 その彼女はと言うと、負け惜しみのようにこちらを非難し始めた。

 とは言え、もうこちらに攻撃する余裕はなさそうだが。

 

「まだ、そんなこと言ってるでちか?

 とにかく、これに懲りたらもうこんなこと止めるでち」

 彼女の雪だるまシュートの威力を目の当たりにして、デーリッチも真面目な表情で少女にそう言った。

 彼女はコントロールに自信はあるようだが、飛距離や落下速度によっては余裕で人を殺せるだろう。この世界の人間とハグレは別の生き物なのだから。

 

「い、嫌ですぅ!!

 いつかきっと誰かが、このスポーツの魅力に気づいてくれますー!!」

 だが、彼女は頑なにそう言い張った。

 その姿に俺やデーリッチ、サイキッカーヤエはお互いに顔を見合わせた。

 

「あのねぇ……。あんたの気持ちもわからなくはないけど――――」

「いや、こいつにはちゃんと怒らないとダメだ……」

 同情的な態度をを示したサイキッカーヤエに対し、それを遮って怒りの様相のローズマリーが前に出た。

 

「さっきから何をわがまま言っているんだ!!

 どれだけコントロールに自身が有るんだか知らないが、一歩間違えれば死人が出てたんだぞ!!

 なんでわざわざ、村の方に蹴り飛ばす!!」

「だって、しょうがないですぅ!!

 村の方に落とさなきゃ、誰も雪だるまキックに気付いてくれないんです!!」

「だってじゃないッ!! 雪だるまキックだが何だか知らないが、この世界にはそんなものは無いんだよ!!

 君のルールでやられても困るんだ!! ―――君の遊びに、人を巻き込むな!!」

「マリちゃん、もうそのぐらいでいいだろう」

 俺は胸が苦しくなって、怒れるローズマリーの背にそう言葉を投げかけた。

 ローズマリーの言っていることは正論だが、それはこの世界の住人にとっての正論に過ぎないのだ。

 

「あ、遊びって……。

 違いますぅ、ちゃんとしたスポーツなんですぅ、私の世界ではみんなやってて――――」

「こっちの世界じゃ、そんなの誰も知らない!!」

 俺は二人のやり取りが見ていられなくなって、デーリッチの方を見た。

 ただデーリッチも何か考えているのか、止める様子はない。サイキッカーヤエも成り行きを見守ると決めたようだった。

 

「う、嘘ですぅ、絶対どこかに居るはずなんですぅ、じゃあ、じゃあそれって、私一人ってことじゃないですか。

 この世界で知ってるの、私一人だけってことじゃないですかぁ……」

「……え?」

 そして、涙目でそう訴える少女の様子が普通ではないことに、ローズマリーもようやく気付いたようだった。

 

「嫌ですよ、そんなの……。絶対、どこかにいるはずなんです!!」

 そこでローズマリーに彼女のハグレと言う境遇が重くのしかかったのだろう。あれほど饒舌に叱っていた口が堅く結ばれた。

 

「私、ずっとこれで遊んでました。

 友達とも、家族とも、今度の冬の大会は、家族で出る予定だったし、なのに、気が付いたらみんないないし、全然知らないとこだし!!

 で、でも、私にはこれが有るから!! これをやっていれば、またみんな集まってくるはずです!!」

 矢継ぎ早に言葉と感情を吐き出す少女の両目から、ぼろぼろと冷たい空気と雪の上で熱い涙が零れ落ちる。

 

「誰かが気付いて、私を迎えに来てくれるはずです!!

 また、みんなと、遊べる、はず…………」

 見ていられないとはこの事だった。

 

 他でもない彼女こそが、よく理解している筈なのだ。

 この世界が、全く彼女とは別の世界なら、家族も友達も、迎えに来てくれるはずが無いと。

 

「…………い、嫌だぁ」

 そして、その事実に少女は震え、耐えられなかった。

 

「私一人なんて嫌だぁ!!」

 少女の慟哭が、雪原に木霊する。

 

「私が悪いなら、何べんだって謝るからぁ!!」

 哀れな、かわいそうな、しかし決して特別ではないハグレの少女が泣き叫ぶ。

 

「誰かひとりで良いから、知ってるって言ってよぉ!!

 ……お願いだから、私を独りにしないでよぉ」

 この少女の有様が、ハグレと言う存在を物語っていた。

 

 しかし、このまま他のハグレと同じように悲惨な人生を送るだろう少女の前に、デーリッチが歩み出た。

 そして、彼女の前に残されていた雪だるまを蹴り上げたのだ。

 

「うん、中々爽快じゃないでちか」

 と、笑って。

 更に泣き崩れる少女に歩み寄ろうと歩を進める彼女に、デーリッチ、とローズマリーが彼女の名を呟く。

 

「ルール、教えてくれないでちか?」

「……え?」

 その言葉は彼女にとっても、俺たちの誰にとっても予想外の言葉だっただろう。

 

「君の家族にはなれないけど、友達だったら、誰もがなれるでち」

 そう言って、彼女は少女に手を差し伸べた。

 

「あ、俺は君の家族に立候補しても――あ、すみません、ヤエさん足踏まないで」

 容姿はかなり好みだったので場を和ませようと俺は冗談を言おうとしたのだが、横のムチムチ女に足を踏まれてしまった。

 

「私たちの拠点には、私や君みたいなハグレが集まってるでち。

 そこでたくさんの友達を作って、みんなで一緒に広めるでち!! この面白そうな球技を!!」

「でも、ひっぐ、あの……でも」

「泣いてちゃわからんでち!! 早く遊びたいから、泣き止むでち!!

 あ、ルールを聞く前に、もっと大事なものを聞き忘れていたでちね。

 お名前はなんでち? 私はデーリッチ!!」

「ゆ、雪乃……私、雪乃!!」

 少女は泣きながらも、精一杯自分の名前を名乗った。

 

「雪乃ちゃんでちね、じゃあ今日から私たちは友達でち!!」

 デーリッチはそれに満面の笑みで答えた。

 

 

 §§§

 

 

「光が見えたでしょう?

 あの純粋さと笑顔が、本当の福を周囲に齎すのですよ」

 デーリッチと雪乃が頂上から降りていくのを見届けていると、福の神様が俺にそう仰った。

 

「ええ、福の神様がわざわざ手を貸してやれと仰る理由が少しわかりましたよ」

 無力なガキだと思っていた。ただ伝説のアイテムを拾っただけの。

 それは違った。無力だが、本気でハグレの国を作ろうとしているガキだった。

 優秀な参謀に担ぎ上げられ、福の神と出会う幸運が有るだけのガキではなかった。

 

 横を見てみれば、ローズマリーもサイキッカーヤエに思いのたけを口にしていた。

 いいコンビだというサイキッカーヤエの言葉通りの二人を、俺ももう少し見ていたいと思った。

 

 こうして雪乃とサイキッカーヤエと言う変わり種のメンツが更にハグレ王国に加わったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この小説のコンセプト的に、雪乃戦の後の描写はサラッと流すべきなのですが、ここはざくアク最初の名シーンであり、ハグレというこのゲームの世界観を浮き彫りにする明確な場面だったので、ほぼセリフ改変なし、主人公や周りの描写のみを小説らしく描かせてもらいました。
おふざけいっぱいのライトなゲームに見せかけて泣かせにくるとか卑怯じゃありませんかね、ゲーム製作者さん!!
ともあれ公式ノベライズとかあれば、私が書くまでも無かったと思いませんか、皆さん!!
それでは、次回拠点会話を挟んで南の世界樹へといよいよゴーですよ!!

この作品で期待している今後の話しの内容は?

  • オリジナル展開
  • 原作の綿密な描写
  • キャラ同士の掛け合い
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