アナザー・アクターズ   作:やーなん

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今回は前回加入したあの子と、次元の塔第五層のあの人です。


31.拠点内会話その11

『拠点内会話 マルースの迷走? 』

 

 

「ねえ、ヘル。ちょっといいかしら」

「どうしたの、お姉ちゃん」

 ミアラージュがハグレ王国にやってきて早数日。

 彼女は何やら顔を顰めて妹に声を掛けた。

 

「ミアさん、何か問題でもありましたか?」

 読んでいた本から顔を上げ、ローズマリーも反応した。

 

「いやね、マルースさんのことなんだけど……」

「ああ、あの人、また女の子に声を掛けているんですか」

「お姉ちゃんにはあの人の危険性をしっかり伝えているんで大丈夫だと思ってたんだけど」

 すっかりいつものマルースだとため息を吐く二人に、ミアラージュは違うのと首を振った。

 

「あの人に声を掛けられているのは私じゃなくてキャシーの方なのよ」

「そっちかい!!」

 これにはローズマリーもツッコミながら椅子からずり落ちた。

 

「前はブリギットさんと付き合う寸前まで行ったらしいし、いったいあの人はどこに行ってしまうつもりなんでしょうか……」

「あの人の場合、人形偏愛とはまた別なのがなぁ」

「……あの、いったいどういうことなの?」

 話に付いて行けないミアラージュが二人に尋ねると、二人はこの間起こった不思議な出会いと彼にまつわる奇妙な人間関係について話すのだった。

 

 そうしていると、拠点のどこからか騒ぎ声が聞こえてきた。

 

 

「そこの変態!! キャサリンを放しなさい!!」

「そうです!! キャサリンさん、嫌がってるでしょう!!」

 三人が声の方に出向いてみると、キャサリンを抱えたマルースが壁際に追い詰められ、ヤエと雪乃に糾弾されているという構図だった。

 

「ふざけるな、何が変態だ!! 俺は彼女を女性として扱っているだけだ!! 

 結果的に人形だから小さいだけで、俺は変態なんかじゃないぞ!!」

「あー、わかったから、とりあえず落ち着こうな?」

 当のキャサリンはうんざりした様子で、さっさとこの場を脱したいように見えた。

 

「見ろよキャサリン、あの女子力が低い女どもの醜い嫉妬を。

 あいつらまともに料理もできないくせに一丁前に君より女性扱いされないからあんな難癖つけてきてるんだぜ」

「ち、違うし!! 料理ぐらいできるし!! やらないだけ、やらないだけです!!」

「そう、そうですぅ!! おむすびとか、おむすびとかおむすびとか、出来ますから!!」

「どうせお前らカップめんも料理だとか言っちゃう程度の女子力だろう? 

 長年一人さびしく自炊していた俺の方が料理できるんだもんな!! 

 はぁー、情けない、これが今時の女子ですかー」

「差別!! 女性差別!! 料理ができて当然だって発想は古臭すぎるわ!!」

「そうです、偏見です、差別です!!」

 そんな低次元な言い争いをしている三人に、ローズマリー達はため息を吐いた。

 

「やめなさい、三人とも。

 マルースさんもキャサリンを放してあげなさい」

「あッ、悪いなキャサリン。痛かったか?」

「ああいいや、気にするなよ」

 ローズマリーに言われ、マルースは丁重にキャサリンを地面に降ろした。

 

「とりあえず、事の発端は何なんですか?」

 ヘルラージュが四人に向かってそう言った。

 キャサリン以外のこの三人は度々言い争いを起こしているので、その点はみんな特に驚いていなかった。

 喧嘩するほど仲が良いと言うのか、特に後を引く喧嘩をしないので誰も問題視はしていないのだが。

 

「俺はキャサリンと楽しくおしゃべりしてただけだぞ。

 料理や裁縫が得意だっていうから、今度俺の当番の時に一緒に料理でもしようかって話してただけだ」

「キャシー、そうなの?」

「ええ、はい。ミア様」

 マルースの言い分を確認するようにキャサリンに尋ねたミアラージュに、彼女は頷いた。

 

「そしたらこの低女子力コンビのお出ましだ。

 こいつら好き勝手なことを言い出して、今に至るわけだ」

「二人とも、そうなのかい?」

 双方の意見を聞くためにロースマリーが二人に問うた。

 

「だってマルースさんのキャサリンを見る目がいやらしかったし!!」

「どうせまたいかがわしいことする機会を窺ってたに違いないですぅ!!」

「まあ、実際にそうなるかどうかはともかく、普段の行いや憶測で誰かを糾弾してはいけないよ。

 少なくとも二人は健全に料理の話をしていただけなんだから」

 ローズマリーに諭され、しゅんと肩を落とす二人。

 

「そうね、私もこんな体の私やキャサリンを受け入れてくれるみんなのことは有りがたく思っているわ。

 だからあまりその人を責めないでほしいわ」

「でもマルースさん、ヘルちゃんを部屋に連れ込もうとしたわよ」

「何ですってッ、貴様許さんからな!!」

「ひえッ!?」

 ヤエの指摘にミアラージュは激怒し、思わずキャサリンの後ろに縮こまって隠れるマルース。

 

「まあまあお姉ちゃん落ち着いて、おかげでわたくしも悪い男の人はこんな風に誘ってくるんだなって学べましたし……」

「はぁはぁ、まあヘルがそう言うなら」

 妹に諌められ、姉は荒い息を吐いて気を落ち着かせた。

 

「とにかく、マルースさんもいかがわしい気持ちで接していたわけではないようですし、これで今回は解散です、はい、以上!!」

 ぱんぱん、とロースマリーが手を叩くと、しぶしぶと言った様子でヤエと雪乃は離れて行った。

 

「まったく、可愛いものを可愛いと愛でて何が悪いんだ。

 流石に俺だって、この間のブリギットの件でちょっとは懲りたんだぞ」

 と言いながらキャサリンの頭を撫でてぶつくさと文句を言うマルース。

 

「あまり文句を言わないであげてくださいよ、普段の自分の行いの所為でもあるんですから。

 それにほら、あの二人はマナちゃんとも仲良しですし」

「だから十年後の子供を認知しろってか? 

 じゃああいつらも、未来から全く知らない男との間に生まれた子供がやってきても俺と同じような対応をしない保障でもあるのかね」

「だから、気持ちはわかりますって」

 何せ前例もない話なので、こればかりはローズマリーも彼を責められなかった。

 

「なんだか信じがたい話ね。未来からこの人の子供が度々やってくるだなんて」

「ははは、でもきっとこの王国にいることであなたを飽きさせることはないはずですよ。それだけは保証します」

 ミアラージュはどこか誇らしげにそう言ったローズマリーを見て、自然と唇が緩むのだった。

 

 

 

 これは数日前、ミアラージュが王国に来た翌日のことだった。

 

「ええと、ビルーダー様だったっけ? 

 何だか妹によくしてくれているらしいわね。ありがとうございます」

「いいえ、あなたも秘密結社の一員になるんでしょう? デーリッチから聞いたわ」

 図書室でビルーダーとミアラージュは二人、こんな会話をしていた。

 

「これ、返すわ。悪いけれど、蘇生術の記述に関しては検閲させてもらったわ。

 この技術はこの世界では不幸しか呼び起さないでしょうから」

 そう言って、ビルーダーはミアラージュ達の母の日記を彼女に返却した。

 

「そう、まあ仕方ないわよね。私も、血を求めていた頃は本当に苦しかった覚えがあるもの」

「それは貴女の魂に刻まれたの飢えの記憶よ。

 貴女は蘇生されるまで、数年の時間を肉体を失って魂だけでいたのだから。

 孤独や飢え、寒さや人恋しさから人を襲うようになる霊魂も多いのに、あなたは未練だけで現世に留まっていたはずだわ。

 親子の愛、姉妹の絆、それらが重なった末に起こった奇跡が、今の貴女よ。

 こんなのは技術とは呼べないから私はこの術を奪うことにしたわ」

 ビルーダーは自分の仕事の話をそのように締めくくった。

 

「あの、あなたは気付いていたのよね? 

 私が敵討ちをされるためにヘルを挑発していたことを」

 ミアラージュはあの時の彼女の言動を思い出し、そのことを尋ねた。

 

「ええ、ヘルの持っていた短刀があるでしょう? 

 あれは我が盟友、復讐の女神の神器。正当な復讐と認めた者に授ける権能が形を成したもの。

 持ち主の命と引き換えに、確実な復讐の達成を約束する物よ」

「そんな危ないものをあの子に渡したの!?」

「ええ、だけどどちらにしろ、あの神器は彼女の命を奪うことは無かったでしょうね。

 私は不思議だったの。最初にあの子の為にあの神器を受け取る手続きと申請をした時、それが通らなかったの。

 かの女神は復讐の対象が正しいかどうか審査することに関しては全知全能だったわ。その彼女がその復讐は正当ではない、と判断したのだからこれは何かあるな、とは思ってたけど」

「そう、だったのね」

 それを聞いて、ミアラージュはホッとしたようだった。

 

「だからあれは模造品。あの子の覚悟を確かめる為のフェイクだったわ。

 結果として、あの子は自らに課していた罪を清算することができた。目の前の現実から逃げなかった」

 そう言ってから、ビルーダーはすこし逡巡してこう言った。

 

「もし良かったら、だけれど。

 悪の秘密結社の技術であなたの肉体を新しい、成長できるものに交換してあげてもいいわ。どうする?」

「……要らないわ」

 ミアラージュはその提案に少しだけ考えて首を横に振った。

 

「こんな体でも、親に貰った大事なものだから」

「そう。なら少しでも両親の罪が軽くなるように、あなたは生きなさい。

 そして、もしいつか、その生命に耐えられなくなる時が来たのなら、私が責任を持って終わりを齎してあげるから」

 その言葉にミアラージュは小さく一礼だけをして、ビルーダーの前から去って行った。

 

「無限の黄金、若返りや不老不死の秘薬、死者の蘇生、……仮にすべて手にしたところで空しいだけだというのに。

 人の欲望は限りなく、また際限が無い。それを求め、成してしまうこと自体、罪深いことなのに。どうしてそこまで求めて止まないのかしら」

 人々の多くの願いを見てきた女神はため息を吐きながら、しかしどこか羨ましそうにそう呟いた。

 

 彼女にだってわかっていた。

 自分は一度として本当に誰かから愛されたことなどないことぐらい。

 

 

 

 

『 ハグレ王国の休日 』

 

 

 俺は基本的に、次元の塔なるレベル上げ用ダンジョンに付き合うことは少なかった。

 たまに強敵との戦いで駆り出されたりするが、それくらいだった。

 レベル上げなら道場でみんなと稽古した方がお互いの連携を高めあえるし、俺はいろんな魔物相手を正面からバッタバッタとなぎ倒すのは得意では無いのだ。

 

 だが今回は少し事情が違ったようだ。

 次元の塔の五層は、なんでも宇宙都市でありヤエはそれに狂喜乱舞し、ビルーダー様は呆気に取られていた。

 そこに住む人々は宇宙海賊によって占領下にあり、人々を苦しめているという。

 

 その象徴の一つたる戦艦列車を攻略することになり、デーリッチ達は万全を期す為に俺を頼った。

 なんでも彼女らは戦艦列車の正面から囮になり、戦力に不安のあるレジスタンスを俺に率いてほしいようだった。

 一応内通者を列車内に潜ませているらしいが、宇宙海賊たちは思ったより強敵なので俺に指揮を頼みたいとのことだった。

 

 俺は勿論快諾した。

 妖精王国での戦争の時にみんなの為に本領発揮できなかったことが実は心残りだったので、実際ちょっと張り切っていた。

 

 

「ふむ、ハグレ王国が寄越した指揮官と言うのはおぬしか? 

 なるほど、百戦錬磨の貫録と言うやつが見えるのう!!」

 そしてレジスタンス側に合流した俺は、目の前の奇抜な女性に度肝を抜かれていた。

 

「ええと、あなたがドリントルさんですか?」

 俺はデーリッチ達から聞いたこのレジスタンスのリーダーの名前を頭から引っ張り出してそう言った。

 

「うむ、わらわがドリンピア星第一王女のドリントルで相違ない。

 今はこの町の為にレジスタンスのリーダーをやっておるがな」

「はぁ、失礼しました。王族の方だとはつゆ知らず。

 何と言えばいいのかその、御身の祖国は開放的でいらっしゃるのですね……」

 俺は士官時代の敬礼をしながら困惑気味に口を滑らせてしまった。

 

「ほう、どうやらただの傭兵だとデーリッチ達は言っておったが、見たところ軍事訓練を受けているようじゃな? 

 なに、くるしゅうない。その固い態度や敬語も必要ないでな。

 その代り、おぬしの活躍には期待しておるぞ?」

 しかし姫君は俺が口を滑らしたことなど気にも留めず、にこにこと笑って俺の肩をポンポンと叩いた。

 俺は王族に仕えたことなどないが、一目で彼女が本物の王族である種のカリスマを秘めていることを悟った。

 

「了解です。では作戦の最終確認をいたしましょう。

 もうすぐ、デーリッチ達が列車の陽動を行う時間ですので」

 俺たちは戦艦列車の見取り図を見ながら、作戦の概要を確認した。

 

「では列車内に突入した後は二手に分かれ、管制室と技師たちの確保を同時に速やかに行うということで良いですね?」

「うむ、協力してくれた町の技師たちを死なせるわけにはいかんからな」

「わかりました。ではそのように」

 そうして最後の打ち合わせについて話していると、信号弾が上がったと上で見張りをしていたレジスタンスが声を上げた。

 

「よし、皆の者、作戦決行じゃ、行くぞ。我に続け!!」

 ドリントル姫は勇ましく先陣を切って戦艦列車に向かっていった。

 

「あッ、姫様!! こっちは内部に侵入するまで隠密行動って話でしょう!!」

 と、まあこれが、この明るく騒がしい姫君との俺やハグレ王国の出会いであったわけだった。

 

 

 

 §§§

 

 

 無事戦艦列車を撃破した俺たちは、ドリントル姫がハグレ王国に参加するということで、彼女が乗ってきた宇宙船を急遽増設したガレージに移動させたのだが。

 

「どうじゃ、直りそうか?」

「うーん……」

 キーオブパンドラ、果てにはブリギットの整備すら当然のようにこなして見せるビルーダー様も、この絵に書いたような宇宙船には難色を示した。

 

「ビルーダー様、どうなの!? 

 シミュレーターでスペースヤエちゃん編はばっちり予習済みよ!!」

「なんでこっちはこんなにテンション高いんじゃ?」

「直せなくは、無いわ。ええ、人類の文明を見渡す叡智の女神の名に懸けて。

 エンジン部分は問題ないわ、よく見るタイプの反重力エンジンだし、これぐらいならすぐ直せる」

「おお!! まことハグレ王国には素晴らしい人材がそろっておるのう!!」

 ドリントル姫は笑顔でビルーダーを褒め称えたのだが。

 

「問題は、宇宙空間の環境に耐えられる素材がこの世界の、いえこの星での文明レベルでは入手不可能な点よ。

 私の知識で何とかできるのだけれど、その為の上の許可も下りないだろうし、素材を生成する設備や稼働させるエネルギーも足りないわ。

 悪いけれど、宇宙から隕石でも振ってきて、その中に必要な金属が入っているのを祈るぐらいしかできないわね」

「ああ、うむ、そうか……」

 それを聞いた彼女は、やや落胆した様子で語気を落とした。

 

「ごめんなさいね、希望を持たせてしまって」

「いや、おぬしは悪くない。ほんの少しでも希望が見えただけマシじゃ。

 それにまだ帰れると決まったわけじゃあるまい。気長に待つとしよう」

 姫はそのように虚勢を張って、ガレージと名ばかりのあばら家から歩き去って行った。

 

「歯がゆいわね。神だなんて名乗っても、所詮は個人を救うこともできはしないのだから」

「……ビルーダー様」

 俺は己の信ずる女神の苦悩を見て、痛ましく思うことしかできなかった。

 

「まあ、直せないものは仕方がないわね。

 今はドリントルが寂しさを感じないように、ハグレ王国のことを知ってもらいましょう」

 と、ヤエが言うので、そうね、とビルーダー様は頷いた。

 

「ならば、俺が彼女の案内を務めるとしようか」

「また粉を掛ける気?」

「安心しろ、高貴な身分な女性は食指が動かないんだ。

 女なんて、俺にとって手が届く範囲の駄菓子で十分だからな」

 俺は呆れて言葉を失っているヤエを尻目に、姫君を追うのだった。

 

 

 

「ほう、あれが空中庭園か!! あれはどういう仕組みじゃ? 

 反重力ユニットでも仕込まれておるのか!?」

「さあ、それはビルーダー様に聞いてみないことには」

 俺はドリントル姫を誘って、ハグレ王国を案内することにした。

 

 最近出来上がったばかりの空中庭園は今や観光名所で、各地から客が毎日のように押し寄せている。

 なにせ存在感が違うからな。ちょっと宣伝しただけで、空に浮かぶこの小さな小島は目に留まる。

 

「ふむ、これが空中庭園への行列か?」

「ええ、あの空中庭園は一時間ごとに上空と地上を行ったり来たりするんで。

 こんなバス停みたいに行列ができてるわけです」

 空中庭園に行きたい人々の行列は凄まじく、最後尾は五時間待ちだ。整理券を配っても数が足りない有様だ。

 とはいえ、中に入ってもあるのは植物園や花畑、そしてゲームセンターぐらいしかないので、しばらくしたら落ち着く見込みである。

 人々が物珍しさから覚めたら、改めて小さなカフェなどを設置する予定だとビルーダー様が仰っていた。

 そう言ったことを説明したりして時間を潰し、王国民のスタッフ特権ということで別の入り口から俺たち二人は空中庭園に乗ることにした。

 

「ううむ、本来こういうのはよくないが、ちょっとだけズルをするというのも子供心を刺激するな」

 と、ドリントル姫は子供っぽく笑ってそう言った。

 

「ほーう、思ったより小さいのじゃな」

 空中庭園は200mトラックのグラウンド程度の大きさしかない。

 中央に植物園や花畑が鎮座し、端の方にゲームセンターがある為、体感では結構狭く感じるのだ。

 ゲームセンターの反対側はいい景色が見えるスポットがあるのだが、そこが一番広く感じるくらいだ。

 

「おお、ハグレ王国があんなに小さく……。

 ……これが、この星の眺めなのか」

 ドリントル姫は大陸が一望できるそこで、どこか哀愁に満ちた様子で地上を見下ろしていた。

 俺は黙って彼女に付き従っていることにした。

 どうにも彼女はその奇抜な格好を抜きにしても目立つ。

 声を掛けようと機会を窺っている連中を牽制しながら、俺は彼女のノスタルジーを守ることにした。

 

「うむ、いい景色じゃ、さて、次へと参ろう!!」

 いい感じに心の整理ができたのか、彼女は明るさを取り戻し俺はエスコートを続けた。

 植物園と花畑を回り、実は花言葉に詳しいことを笑われたりしながら、俺は彼女とゲームセンターで遊び倒した。

 

 

「今日は楽しかったぞ。そう言えばこのようなエスコートは祖国の惑星でもされたことはなかったな」

「そりゃあ第一王女なら安易にこんな庶民の遊びには誘えないでしょう……」

「では騎士殿。最後までエスコートを頼むぞ」

「お任せくださいませ、お姫様」

 俺は跪いて恭しく彼女の手を取った。

 俺たちはそんな微笑ましいやり取りをしながら、拠点へと戻った。

 

 何はともあれ彼女に笑顔が戻って良かったとしておこう。

 

 え? オチ? 今回ばかりは無いよ!! 

 俺だって偶には紳士に振る舞ったっていいだろ!! 

 

 

 

 

 

 

 

 




作者はローマの休日とか見たことないのですが、たぶんきっとあんな感じなのでしょう(おい
偶には紳士になるマルース君でした。こういう恋愛とか関係ない大人の関係とか好きです。

次回はいよいよ、ケモフサ村。
三話目から張っていた伏線がようやく回収できそうです。そして……。

では、また次回にお会いしましょう!!
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