『 手の届く距離 』
「……ここが、異世界だって?」
相互ゲートをくぐると、そこはどこか見たことのある光景が広がっていた。
エステルは拠点の裏手にある森を、人通りが無いという理由で選んだようだった。
本当によく似ている、とローズマリーが周囲を確認し息をのむ音が聞こえた。
「よいしょ、っと。何とか私も通れました。
とりあえず、東にある私たちの拠点がどうなっているか見てみませんか?」
「そうね。この世界は私たちが知る歴史よりずっと以前に違う分岐点を経ているはずよ。
恐らくハグレ王国は存在しない可能性が極めて高いでしょうね。違う歴史をたどれば、求められる歴史の分岐点も異なるのだから」
一番最後にかなづち大明神の巨体がゲートを潜り抜けることに成功し、彼女がそう提案するとビルーダーが頷いてそう言った。
ハグレ王国一行が拠点となった遺跡の前に来てみると、案の定ボロボロで中に入ることすら出来ず、そこにはだれも住んでいる形跡は見受けられなかった。
その様子に呆然とするメンバーも居たものの、マルースは冷静に野営の準備を指示した。
「とりあえず、デーリッチの捜索にどれだけ時間が掛かるか分からない。
ここを野営地にして、周辺を探索するべきだろう。ハピコ、上空から周辺に村や町は確認できないか見てきてくれ。
その後、改めて方針を決めよう」
「おう、任せときな!!」
彼の指示を快諾し、ハピコは空を飛びあがって周辺を偵察しに行った。
「みんな、これを見て!!」
何やら端っこの方で焚火の跡を見つけたエステルが、皮製の小さな道具袋を手にしてみんなの前に持ってきた。
その中にはデーリッチが書いたと思われる便箋が入っていた。
その内容は、一日待ったが誰も来なかった為、村を探しに行ったという旨が書かれていた。
「これは、ショックでしょうね。デーリッチちゃんはきっとここに帰ろうとしたはずでしょうし。
帰ってきたと思ったら、拠点の姿は見る影もないなんて」
「そうね……。だけど、それなら彼女がまだ近くに居る可能性は高いわ。
あの子の足で遠くまで行けるとは思えないし、キーオブパンドラで遠くに行く可能性も考えられない」
それをローズマリーが読み上げると、ヘルラージュは痛ましそうにそう呟き、彼女の姉は逆に希望を見出した。
「続きを読むよ」
そしてその手紙の続きには、道中の木々に印を付けたらしく、自分の足取りに活用してほしい、とも書かれていた。
お腹がすいたのでよかったら食べ物を入れておいてほしい、デーリッチも必ずみんなと会えると信じて探してみる、と。
「遭難したらなるべくその場を動かないことが鉄則だけれど、この場合それを彼女に適用するのは酷かしらね」
「ええ、同じ遺跡なのに拠点がまるごと無くなっていて、みんなと作ったお店や施設も無くなっていて……。
空腹と孤独に、きっと苛まれていたでしょうし」
ビルーダーが眉を顰め、福ちゃんが悲しげにそう言った。
「ハオなら一か月は余裕だけど、デーリッチには無理か……」
「まあ、お前さんなら適当にサバイバルしてるじゃろうなぁ」
と、ハオとティーティー様は肩を落としてそう言った。
エステルもデーリッチからの手紙に手ごたえを感じていたが、ローズマリーは両手を握りしめてデーリッチの苦慮を嘆いていた。
誰も居ない拠点を見上げながら、こんなところで一晩過ごしたのか、と。
「おーい、姉御、みんな!!
あっちの方に、だいたいユノッグ村があったところあたりに村が見えるよ!!」
その時、ハピコが上空からの偵察から戻ってきた。
「よし、お手柄だハピコ。
まずは二手に分かれよう。おそらくデーリッチはその村に向かって目印を付けたはずだ。
村に向かってデーリッチを探す班と、万が一に備えこの周辺を探索する班にだ。
あとは何人かここに残って野営の準備をした方がいいだろう。きっとあいつは腹を空かせているだろうし、向こうから持ってきた食材で誰か料理でも作っておいてくれ」
「ではその任、不肖ながらわたくしがお引き受け致します」
「ああ、頼むぜゼニヤッタちゃん」
「じゃあ、デーリッチの為に持ってきたお菓子はここに置いた方がいいかな」
マルースの声に、ゼニヤッタが応じて鍋などを準備し始めた。
アルフレッドも邪魔にならないところにお菓子の詰まった道具袋を下した。
「ありがとうございます、マルースさん。
こういうのに慣れている人がいるとやはり違う」
「まあ、行方の分からん負傷兵の捜索とかよくやってただけだ。
ここでマリちゃん一人に全部背負わせるわけにはいかんよ。偶には大人を頼れ」
マルースがそのようにローズマリーに言ったのだが。
「う、嘘です、マルースさんが普通に頼りがいのある大人に見えます!!」
「そうね、きっとあれは偽物だわ。少し前の雰囲気も別人みたいだったし!!」
「やかましいぞお前ら!! 俺に一々茶々入れんと気が済まんのか!!」
雪乃とヤエが信じられないようなものを見たように言うのだから、マルースも唾を飛ばしながら言い返した。
「ったく。とにかく、こういう時は逐一連絡を取り合うことが重要だ。
何か行動を起こす時は必ず連絡を入れるようにするんだ。ハピコ、続けて悪いがお前が連絡要員としてこちらと捜索班との中継を頼む」
「あいあい、ボーナスは期待しておきますよ」
「ああ、お前の働きがデーリッチの命に係わるんだ。ちゃんと書類で申請しておいてやるよ」
「だったら、気合入れて働かせてもらいましょうかね!!」
不敵に笑うハピコを見て、マルースは頷く。
「俺はこっちに残って待機するメンバーの指揮を執る。
マリちゃんは村へ捜索するメンバーを何人か連れて行ってくれ。くれぐれも、連絡は怠るなよ?
もう一度言うが、何か行動を起こす時はハピコに伝令させて、必ずこっちに連絡を入れるんだ」
「ええ、分かってます。よし、これから言う者は私についてきてくれ!!」
マルースの念を押しにローズマリーは頷き、彼女は村へと向かうメンバーを自身の元へ呼び掛けるのだった。
『 異名 』
「空腹でしょう国王様の為に暖かいスープを作りましょう」
「あ、僕も手伝いますよ」
ゼニヤッタとベルが鍋を用意して、持ってきた具材を細かく切ってデーリッチでも食べれる野菜スープを作り始めた。
他にこの場に残ったのは大人しい面々で、ヅッチーを筆頭とした居ても立っても居られないというような面子をローズマリーは連れて行った。
「今戻ったハオ!!」
「おう、どうだったハオちゃん」
「やっぱりこの周辺には獣道しかなかったよ。
この辺りに最近、人が入った様子は無かったと思う」
彼女らが村に向かって一時間ほど経ってから、周辺を探索していたハオが戻ってきてそのように報告した。
「わかった、やっぱりわざわざ知らない場所で人気の無い場所に行く理由は無いか。
他に周辺を探索している連中を呼び戻してくれ。ローズマリー達の連絡を待ってから次の方針を考えよう」
「分かったお!! みんな呼んでくる!!」
ハオはそう言って、元気よく他の場所を探している残りのメンバーを呼びに行った。
デーリッチのいる可能性は少なくても、多かれ少なかれ居ても立っても居られないのは誰もが同じだった。
「とりあえず、少ない可能性とはいえそれを潰せたと言うことで良しとしましょう」
周辺探索から戻ってきたかなづち大明神はいつものように落ち着いた様子で、戻ってきた他のみんなにそう言った。
「仲間を信じて待つことも大事なことだ。
何事も焦りは禁物だからな。誰か、何か気になることはあったか?」
マルースが尋ねると、誰も得に何も答えは返ってこなかった。
「じゃあ、マリちゃんの連絡待ちってことになるか。
適当に何か話でもして時間を潰すか」
「あの、じゃあマルースさん。みんな聞きにくいだろうから、僕から訊いてもいいかな」
「どうしたアルフレッド。なんだって聞いても良いんだぜ?」
「じゃあさ、放火魔ってどういう意味なんですか?」
その時、マルースの表情から人当たりのいい笑みが消えた。
「あ、いや、やっぱり訊かなかったことにしましょう!!」
「いいや、俺からも話しておいた方がいいだろう。語感から犯罪者扱いされてもたまらんしな」
「ロリコンは犯罪だけどね」
「じゃかましい!!」
適当なタイミングで茶々を入れるヤエを牽制し、マルースはやがてため息を吐いた。
「まあ、ハグレ戦争時代の俺の異名みたいなものだわな。
ハグレ戦争だなんて言われていても、当時のハグレたちは決して多くが示し合わせて決起したわけじゃなかった。
不満を溜めこんだハグレの集団が連鎖的に帝国のやり方に蜂起したって感じだった」
「まあ、当時のハグレ達に一致団結できるだけの組織力があったとは思えんな」
ティーティー様の言葉に、マルースも頷いた。
「ああ、だから俺は連中をなるべく殺さず収める為に、戦争をする為の物資に目を付けた。
連中が補給を行うには周辺の村から奪う以外には難しかったからな。
だから俺は与えられた人員と一緒に、ハグレ達の集落や拠点に忍び込んだりして、留守の間に火を付けて回った」
「なるほど、それは恨まれますわね」
「連中にとって、蓄えたなけなしの食料や物資はまさに生命線だった。
帰ってきた連中が燃え盛る家屋に飛び込んで火を消そうとして焼け死んだって話を、後から数多く聞いた。
俺は火が燃え広がる前に、ちゃんと火事だって叫んで非戦闘要員に知らせてやったのによ。
俺は火を付けて物資を失った連中が略奪に走る前に友軍に連絡して、大勢で降伏を迫るってやり方を繰り返したわけだ」
その光景を想像したのか、福ちゃんは痛ましげにマルースの話を聞いていた。
「マーロウの旦那とも、それで数度やりあった。まあ、追い回されただけだったが。
あの人が率いたハグレの集団は他の連中と比べて段違いに強くてさ、俺はまず正面から絶対に戦わなかった。
奴も俺のやり方を知っていたからな、隙を突くのが大変だった。だから仕方なく、俺は奴が匿っていたハグレの集落を焼くことにした」
「ま、まさか、そこにいた全員焼き殺したとか言いませんよね?」
「ははは、そんなことしたら、なりふり構わなくなるだろ?
ちゃんと集落の全員を広場に集めて、見せしめに家々を焼いたよ。流石に、お決まりのパターンがあったかどうかまでは責任は持てないがな」
「お決まりのパターン?」
後はスープを煮込むだけになって手持無沙汰になったベルが尋ねた。
「ほら、戦記物の話でよくあるだろう? 母親が子供を戸棚の奥に隠したりするやつ」
「ああ……」
「手早くやる必要があった。だからもしかしたらそんな悲劇があったかもしれない。
俺はどうしても、戦争の泥沼化だけは避けたかった。だから燃やした」
マルースはコトコトとスープが煮えている焚火を見てそう言った。
「燃やした。燃やしたよ。俺のせいで森が焼けたとも聞いた。
物資だけ燃やそうとしたのに風向きが変わって予想外の被害が出たと聞いたこともあった。
だがそれでも戦争を終わらせないとって頑張ったさ。戦後、報奨金が貰えなかった帝国側のハグレも多かったそうだが、俺は少なくともそんなことはできないくらいには働いたよ」
「なるべく非殺傷を心掛ける理性が働いていてこれか、帝国も先輩を敵に回したくはなかったんだろうな」
ジュリアはしみじみとそんなことを呟いた。
「だから俺はもしかして、何か一つボタンの掛け間違いがあったらマーロウの旦那の側に居たかもしれん」
「それは想像したくない未来だなぁ」
それを聞いてアルフレッドはぼそりと呟いた。
「だから俺は信じたかったんだよ。旦那のもっと早く王国と出会いたかったってあの言葉を。
なのにこのザマだ。俺があの村がゲリラ村で危険だとみんなに伝えていれば、この結果は無かったかもしれん」
「それはどうでしょう。デーリッチやローズマリーさんたちの事ですから、説得をしようって流れになったでしょう。
どのみち、その話は後でってことになって、水晶洞窟に誘導されてたでしょうし」
かなづち大明神はマルースの無意味な想定をそのように否定した。
だろうなぁ、とそれに追従して頷くものも何人かいた。
「よしよし、パパは頑張ったんだね……」
マナが背伸びして後悔に苛まれているマルースの頭をぽんぽんした。
その姿を面々が微笑ましく思っていたその時だった。
ばさり、と翼を羽ばたかせるような音と、ハピコの声が聞こえたのは。
「みんな!! でこっちの所在が分かったよ!!」
『 ハグレ王国異世界大遠征 』
「よし」
デーリッチ発見の報を受けたマルースは、畳んでいたハグレ王国旗を掲げた。
「──目標、てこてこ山ッ!!
ハグレ王国異世界遠征軍、総員準備は整ったか!?」
おう、と全員が声を上げた。
「スープも持ちました!!」
「それは置いておいていいから……」
スープの鍋を持っていこうとするゼニヤッタに、みんなはくすりと笑った。
「進撃、全軍進撃!!
ハグレ王国が存在しないこの世界に、俺たちの足跡を刻むぞ!!」
「いよーし、わらわに続けー!!」
「姫さまー!? 場所知らないのに先走らないでー!!」
まったく見当違いの方向に進もうとするドリントルを諌め、ハグレ王国の面々は今度こそてこてこ山へと進んだ。
「進め、進め、進めぇ──!!
異界の地よ、我らが旗を、我らが絆を見るがいい!!
この落書きの寄せ集めにしか見えない旗に、いったいどれだけの想いが集っているのかを!!」
国旗を振りながら、マルースは全員を鼓舞するように叫んでいた。
「なんだ、あいつら……」
「さぁ?」
そんな奇妙な集団を、スライムのジュエルを搾っていた冒険者たちは唖然と見送っていた。
§§§
デーリッチは死を覚悟した。
この見覚えがあるのに全く違う世界に飛ばされてからの時間が脳裏に走馬灯のように流れる。
一人ぼっちの夜を過ごし、仲良くなったと思った冒険者二人には裏切られ、もう会えない仲間たちに思いを馳せた。
ああ、自分は失敗してしまったのだ、と。
彼女の記憶の奥底から、いつぞやのマナの悲痛な叫び声が蘇る。
そう、誰も、誰も来なかったのだと。
デーリッチがすべてを諦めて、死を受け入れた。
だが、いつまで経っても目の前の恐ろしいドラゴンの炎はやってこない。
ゆっくりと瞼を開けると、そこには見覚えのある靴があった。
デーリッチは思わず、そこにいる友の名を呼んだ。
彼女はその背を見せたまま、失敗したって思ってるんじゃないか? と優しく彼女に語りかけていた。
「何も間違ってなんかいないぞ。
君のお人良しのおかげで、間に合うことができた」
ローズマリーは語る。
デーリッチがこの世界で過ごした短い時間で見せた小さな優しさの数々を。
その結果が、ここにいる自分だと言った。未来への一本の道筋を開けたのだと。
「おかえり!! デーリッチッ!!
みんなで迎えにきたよ!!」
ローズマリーが指さす方には、寄せ集めの落書きみたいな旗を振り上げた大の大人と、それに付き従う奇妙な集団がいた。
「ははッ!! 間に合ったみたいじゃん!?」
「ローズマリー!! 先走るなって言ったばかりだろうが!! 冷や汗かかせるな!!」
ドラゴンとローズマリーの間を遮っていた魔法の障壁が消え、それを埋めるように王国の面々が立ちふさがるように前に出た。
「お疲れみたいだね、デーリッチ!!
どう? ヒロイン登場には最高のタイミングでしょう?」
「ヒロインの皮をかぶったゴリラがなんか言ってますねぇ」
余計なことを言ったロリコンの足をエステルは踏みつけた。
ぎゃあ、とマルースの悲鳴が上がった。
どうして、と呟くデーリッチに、ローズマリーは笑いかけた。
君のお人良しがここまでの道を作ったんだ、と。
「その通りよ、普段のあなたの行いが針の穴を通すような奇跡を成した。
本当の奇跡は神が起こすものではないわ。奇跡はあなたが起こさせたのよ」
そう言って、ビルーダーはデーリッチを抱き起した。
だが同時に、巨大なドラゴンが咆哮を上げた!!
「お山の大将がお怒りのようだ。
だけど、私はボスを傷つけられて、黙っていられるほどお人よしじゃないんでね」
「あーあ、一番怒らせちゃいけないやつを怒らせちゃったよ」
「じゃあ、お人好しタイムはここまでにして──!!」
「ああ、私たちの怒り、ぶちまけてやろう──!!」
──スカイドラゴンが出現!!
「デーリッチの代わりに私が援護するね!!」
マナはメアリースインストールを唱えた!!
時空を超越した神の権能がその身に宿るッ!!
マナは自身が将来会得する全てのスキルと魔法を会得した!!
マナはママお手製超次元ファンネルを展開した!!
異次元からのオールレンジ攻撃が全てを焼き尽くす!! (絶対強制スタン)
「やあ、デーリッチ。何とか間に合ったみたいだね」
「アルフレッド君!!」
次々と王国の仲間たちがデーリッチに声を掛けていく。
アルフレッドもその一人だった。
「悲しい未来、悲しい可能性、それらは確かに存在しうるかもしれない。
だけど、それを乗り越えて来られたのはきっと君のおかげさ」
そう言って、彼は目の前のドラゴンを見据えた。
「さあ、今日ばかりはゴーストハンターは店じまいだ。
僕らの希望の光を摘もうとした報いを受けてもらうよ!!」
マナは未来王の号令を発した!!
未来に約束された王の号令が皆を奮い立たせる!!
このターン、全員の全能力を二段階上昇させ、全状態異常を無効!!
マナはキーオブクロノスを掲げ、時間を操り更なる行動回数を得た!!
マナはエステル直伝開幕フレイムを唱えた!!
凄まじい速攻の業火が相手の粘膜を焼いて怯ませる!! (絶対強制スタン)
「デーリッチ、助けにきたハオ!!」
「ハオちゃん!!」
「ハオはむづかしいことよくわかんなけど、ハオにも一つだけわかることがあるよ!!
──今日の晩御飯はあいつだってこと!!」
「は、ははは……」
「ちょっとあいつ、狩ってくるからそこで待ってて!!」
ハオはそう言って槍をドラゴンに投げ付けた!!
マナは疲れたのでこのターンは休憩中!!
「よう、デーリッチ。よく頑張ったな」
「ブリちん!!」
「お前の為にたっぷりお菓子を用意しておいたからな。
みんなで仲良く分けて食べるんだぞ。さて……」
ブリギットはデーリッチに向けていた優しげな笑みを消し、ドラゴンを睨んだ。
「弱肉強食の世界に生きるとはいえ、子供の未来を奪おうとするなんざ許せないわな。
……お前は何の落ち度もないさ。だが運だけは、運だけが致命的に悪かったな」
そして彼女も容赦なく、ルビーの弾丸を浴びせかけた。
マナは苔エリクサーを散布した!!
苔から抽出した成分で錬成された、未来のシノブとローズマリーが開発した製作費1000万ゴールドの究極の回復薬だ!!
勝手に持ち出したマナは後で怒られました……。
全体蘇生、味方全員3ターンHPMP再生+100%の上、TP100上昇!!
「でこっち、またせたな!!」
「ハピコちゃん!!」
「今日は本当にいろいろ働かされたんだぜ~。
ボーナスはちゃんとはずんで貰うからな」
ハピコはデーリッチにニカッと笑ってそう言った後、目の前のドラゴンを目を細めて見やった。
「さて、今日の仕事はこれで終わり。
ここからは仲間の為の時間外労働だ。風属性が弱点なことを、後悔させてやるよ!!」
ハピコの巻き起こす風がドラゴンの巨体をよろめかせた!!
マナは徐々にキーオブクロノスを使いこなしている!!
時間を操り、味方全員このターン連続行動!!
「やれやれ、この体で山登りと言うのは存外に大変ですね」
「かなちゃん!!」
「いやぁ、何はともあれ間に合ってよかった」
かなづち大明神はデーリッチの姿を見て、ホッと息を吐いた。
「さて、相手の攻撃なら任せてください。
ここからただ一度でさえ、あなたの元に届かせませんから!!」
彼女の巨体がドラゴンとデーリッチの間を遮った!!
マナはラージュ姉妹直伝ゾンビモードを唱えた!!
味方全員に戦闘不能無効を付与、たとえHPが尽きても動けます!!
こっちだけズルして無敵モードだ!! (2ターン)
「うちの娘がやりたい放題している件について……」
「マルちゃん!!」
「ああ、デーリッチ。すまん、呆気に取られてたわ。
何はともあれ、お前が無事でよかったよ。
……お前は言ってくれたよな、また逃げるのかって。お前が死んじまったら、俺はまた逃げるところだったよ。復讐と言う道にな」
そう言って、マルースはため息を吐いた。
「お前が居ないとダメなんだよ、みんながみんな。
お前が俺たちと共にいる限り、俺はこの旗を振り続けよう!!」
マルースの振る旗が、風を受け皆の喜びを示すようにはためいている!!
マナは前世の恨みから相手のHP全回復してあげた!!
良かったね、サンドバッ……スカイドラゴン君!! もう一回遊べるドン!!
みんなも殴り足りないので気にしてないぞッ!!
「おいおい、相手を回復してどうするんじゃ……」
「ドリントルちゃん!!」
「おお、デーリッチッ!! 無事で何よりじゃ。
此度はおぬしがいかに王国で重要なのかしみじみと理解したぞ。
陽気なみんながこれだけ怒り狂うのじゃ、この国の本気を見た気がしたぞ」
そして、ドリントルも銃口を竜に向けた。
「無論、わらわの怒りも貴様を一度殺しつくしたぐらいでは晴れんがのう!!」
恩人を殺されかけ、普段は優しい彼女も怒りを明確に表した!!
マナは全能の権限を使用し、相手に戦闘不能無効を付与した。
もうこの子、前世の恨みを隠そうともしない!?
「ぐももー!!
「あ、地竜ちゃん!!」
地竜ちゃんは普段よりは控えめにデーリッチに飛びついた。
「ぐごごごごーー!!」
「よしよし、寂しかったんでちね。みんなが来てくれたんでちから、もう心配ないでちよ」
「もっけー!!」
地竜ちゃんは地面に降ろされると、すでに一方的に囲んで棒で叩かれている状態のドラゴン相手に自分も参加するのだった。
ビルーダーの権能が楽園を構築する!!
誰も傷つかず、病まず、苦しみの無い世界へと!!
敵味方全員に全ダメージカット、全状態異常無効(2ターン)
「みんな、いい加減にしておきなさい。もうそろそろ良いでしょう?
このドラゴンもそろそろ懲りたでしょうし、二度と人里近くには──」
散々全員で寄ってたかってタコ殴りにされて地に臥せっているスカイドラゴンの前に出て、ビルーダーがみんなに慈愛を訴えようとしたのだが。
スカイドラゴンの攻撃!!
ビルーダーはダメージを受けなかった。
「……イラッ」
自らの慈悲を無下にされたビルーダーは女神とは思えない表情で振り返った。
ビルーダーは全てを滅ぼす神判を下した。
ありとあらゆる生命が、世界が無に還る!?
敵味方全員のバフデバフを吸収し、超絶の一撃が全てを消し去った!! (確定即死)
「所詮、我が慈悲を理解できないトカゲだったわね」
スカイドラゴンを跡形もなく消し去ったビルーダーは、ふん、と鼻を鳴らした。
「ああ、晩御飯のおにく~」
ほんの僅かな消し炭だけが舞い散り、ハオが惜しむように声を上げた。
そんなこんなで、ハグレ王国の異世界遠征はデーリッチ救出と言う目的を達し大成功に終わったのだ。
サンドバッグと化したスカイドラゴン君可哀そう。
もっとさらにはっちゃけた展開にしようとも思いましたが、原作沿いという言葉を思い浮かべやめました。
その分、マナちゃんがいろいろとやりたい放題してもらいましたがww
次回は異世界編の事後処理やらなにやら。
それが短くなりそうだったら拠点内会話も一緒にやって、その次にとうとうみんな大好きあの子の登場です。
あと、今回もアンケートします。
どちらが先かで多少変化がありますが、作者としてはどちらでもいいので早めに展開の修正するために今のうちに聞いておきますね。
それではまた次回!!
三章のアナザーストーリー、どちらを先にやってほしいですか? 選べれなかった方が四章後になります。
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スーサイドヘル(マルース編)
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報復の呪印(ビルーダー編)