アナザー・アクターズ   作:やーなん

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今回は動きの少ない話です。




37.罪科

『拠点内イベント 罪科 』

 

 

「デーリッチ、そろそろ勉強の時間だよ」

 ローズマリーが最近王国に入って来た和国文化の遊びであるメンコをしているデーリッチとヅッチーに声を掛けた。

 

「えー、後で―。

 これから柚葉ちゃんに教わったベイゴマと定規飛ばしをするんでち」

「そうだそうだ!! 特に定規飛ばしは奥が深いんだぞ!!」

「それ本当に和国の文化なのかなぁ……」

 ローズマリーは最近仲間にした和国出身の自称ダイミョーの姿を思い起こしそう呟いた。

 

「まあ、今日ばかりは嫌でも来てもらうよ。

 何せビルーダー様がわざわざ講師を呼んできたって話だからね。

 すっぽかしたら後が怖いよ」

「うえ……」

「マジかよ……」

 ビルーダーの名前を出され、顔を見合わせる子供たち。

 

「しょうがないでち、行こうかヅッチー」

「ああ、すっぽかしてビルーダー様を怒らせたら恐いもんな……」

 と言って、二人はとぼとぼと大学が開かれている部屋へと向かった。

 

「やれやれ、しぶしぶとはいえ子供たちが従ってくれるんだから私だけでも感謝しておかないと」

 拠点の面々は今のところ彼女を一度も怒らせたりしたことは無いが、きっとビルーダーが本気で激怒した時はそれが最期の光景になる確信があるローズマリーだった。

 

 

「どうも、ハグレ王国の皆さん。本日はお招きいただき感謝してますわ」

 ビルーダーが直々に招致したという講師は、室内に集まった王国の面々を見渡した。

 

「我が名は……ええと、地上に降りたの何千年振りだったかしら、あの時は何て名乗ってたっけ。

 ああ、そうそう、クリエッタ。クリエッタだったわ、たしか、うん」

「あのー、つかぬ事をお聞きしますが、あなたもビルーダー様同様、大元の女神様の分体の一人ってことでよろしいんですか?」

 彼女のかなり不安な名乗りを聞いて、ローズマリーが疑問を投げかけたのだが。

 

「え、ビルーダー!? あの人、ここじゃあビルーダーって名乗ってるの? 

 止めてよねー、私の上司と被るじゃん。なんで自分の一番通りの良い名前を使わないかなー」

 クリエッタと名乗った女神の分体は非常にマイペースにそんなことを口にした。

 

「ま、いいか。ええその通りよ。私は女神メアリースの分体の一人だわ。

 と言ってもやってることは事務処理ばかりだけど、ちなみに所属部署は人事部よ」

「あのぅ、人事部ってことは人員の配置とかを担当しているってことですよね? 

 そんな方がどうして講師として呼ばれたんですか?」

 ベルが手を挙げ、率直に彼女に疑問を述べた。

 

「人事と言っても、配置するのは死者や罪人の魂を次の人生でどこの世界か、あるいはどの地獄に振り分けるかを大まかに決める仕事なのよ。

 最終的にはうちの上司たちが面談で決めるんだけれど、特に私は死者の資料を作ったりして手早く効率的にそれが済むようにサポートする感じかしら」

「なんだか想像していたのと全然違うわね」

 事務的な単語に隠された重要な役割にミアラージュが目を見開いていた。

 

「まあ今回の講義は“道徳”と題しまして、私たちがどんな基準で死者の罪科を判断して、良き来世を与えるか地獄へと送るかを教えてあげようと思います。

 そんなうちの本体を信仰するなら耳寄りなお話となっております」

「なんだかビルーダー様といい、クリエッタさんといい、時たま妙に軽いのはなんでだろうか」

 アルフレッドの疑問に答える者はおらず、講義が始まろうとした時に手を、いや翼を上げる者がいた。

 

「せんせーい、私は生活の為に人々からお情けを貰って今日まで生きてきました。

 私は地獄行きになるんでしょうか!!」

 ハピコである。茶化すような物言いだったが、その表情は若干強張っていた。

 

「ふむ、保留」

 それに対するクリエッタの返答は即答だった。

 

「え、保留?」

「今この瞬間、あなたが死んで私が判断するとするなら来世にそれなりに重いペナルティを課す程度にするわ。

 あなたが今までの行いを後悔して今後償いをするのなら、来世は少しお金に縁が薄いぐらいで許してあげるかもしれない。

 開き直って人々を騙し続けるようなら、死後に地獄行き。そんなところね」

「……っほ」

 ハピコはクリエッタの言葉に安堵の域を吐いた。

 

「私たちのモットーは、神はシステムであるべき、と言うものよ。

 ただし、血の通わないシステムに人々は導けない。例えば人を殺したとしても、状況やその時の本人の心情によっては全く罪の重さは変わるわ。

 私たちは決して、機械的に一律で罪を課すようなことはしないわ」

 それはまさしく、今回の講義の内容である道徳であった。

 

「以前、ビルーダー様には生前の罪は死後問わないと伺いましたが、やはり現世での行いで罪は減算されるんですね」

「そうね。私たちが判断するのは、人が判断できない罪や、生前償い切れなかった罪の重さよ。

 ここで重要なのは、罪を犯した事実は決して消えないということよ。たとえ法による罰を受けたとしても、ね」

 クリエッタはローズマリーに頷き返し、そのように答えた。

 

「ここに私たちが実際に判断した案件を例題として提示するわ。

 あなた達は私たちになったつもりで、彼の罪科を推し量りなさい」

 そう言って、クリエッタは黒板に例題を提示した。

 その内容はこうだ。

 

『ある物乞いの少年の元に一人の男がやってきました。

 男は重いバッグを手渡し、特定の場所に持って行ってある人物に渡してほしい、と僅かなお金を差し出し依頼した。

 少年は喜び、バッグの中身を確認せずに指定された場所に持って行った。

 その直後バッグは爆発し、三十人の重軽傷者と自身を含む五名の死者を出した。男はテロリストで、少年は利用されたのだ』

 

「ええと、テロリストの男の罪ではなく、バッグを持って行った少年の罪を、ですか?」

「その通りよ、だってテロリストは死んでないじゃない」

 例題の内容に顔を顰めるヘルラージュに、クリエッタは頷いた。

 

「いやいや、これ少年は悪くないんじゃない? 

 だってこれ、完全に被害者じゃなでちか」

「いやまあ相棒の言うとおりだけどさ。

 知らない男の怪しい仕事を引き受けたのも不用心じゃないのか?」

 単純に考えるデーリッチと頭を悩ませるヅッチー。

 各々、二人と似たような意見で分かれた。

 

「その日の食べ物に困る子供だから、情状酌量の余地はあると思うけど」

「とはいえ、実際に大きな被害がでているわけですし、無罪放免と言うわけに行きませんしな」

 ローズマリーとかなづち大明神も、少年には同情的だったが罪は有りと答えた。

 

「私は赦したわ」

 そしてクリエッタはそう判断した。

 

「うちの信者が物乞いになって他者の食い物にされるようならば、それは社会システム、ひいてはそれを改善しきれない担当の分体の責任よ。

 速やかな文明レベルの引き上げが必要だわ。どんな賢人も飢えれば人では無くなるものだから」

 それは女神らしい責任のある慈悲深い結論だった。

 

「それはそれとして、上は彼が殺した四人分の寿命の分だけ使徒としての奉仕を課したわ。

 まあそれ相応には温情はある判断だったかしら」

「えッ、使徒って元人間なんですか!?」

「うん? そうだけど、聞いてなかったの?」

 ローズマリーの声に、小首を傾げるクリエッタ。

 

「じゃあ、あのシミュレーターや他のゲームの筐体のことも聞いて無いの? 

 あれも人を騙し弄んだ人間たちの末路よ。人間の魂は演算装置の素体としては優秀なのよ」

 その悪趣味かつ無慈悲な彼女の言葉に、王国の面々の表情が引きつった。

 

「道理でマナちゃんがゲームセンターに誘っても嫌がったわけでち……」

 以前あのシミュレーターを半壊させた事実に血の気が引くデーリッチであった。

 

「このことを話すと大抵がそんな反応をするわね。道具は道具でしょうに」

「人間の魂を道具にした、という事実が我々は受け入れがたいのですが……」

「仕方ないわねぇ、多少スペックは落ちるけど、あれらは普通の機械式に全部換装しておくわ」

「お願いします、本当にお願いします……」

 ローズマリーは出会った当初のビルーダーとの認識のずれを思い起こしながらそう言った。

 

「クリエッタ様、ひとつ教えてくれませんか?」

「良いわよ、どんどん質問なさい」

 挙手をするエステルに、クリエッタは頷いて見せた。

 

「もし世界を変えるような画期的な発明をして、その結果戦争の火種となった場合、そして開発者がその戦争の勃発をあえて見過ごすことは地獄行きになるような罪になるんでしょうか?」

「ならないわ」

「えッ、本当!?」

 クリエッタの即答にエステルも素で驚いたリアクションを示した。

 

「その画期的な発明とやらが大量破壊兵器等ならともかく、あるいは発明の過程に問題があったりしたのではないのなら、技術そのものに善悪なんてありはしないわ。

 技術の発展の変化で周囲がどう受け取ろうとも、それが開発者の責任になるのならこの世に進歩なんて言葉は消えて無くなるでしょうね。

 それともあなたは、技術者個人に戦争を止める義務や責任があるとでも? 

 まあその開発者が積極的に戦争を扇動したりするのなら話は別だけれど」

「……」

 エステルは無言で彼女の言葉を脳内で咀嚼していた。

 その表情から、現状に対する困惑の色が見て取れた。

 

「……それは道義的責任も問われる必要性は無い、と言うことですか?」

「私は死後の、人に裁けぬ罪について話しているわ。

 それは現世での論争でしょう? 大勢が糾弾しているのだからそれは罪だ、なんて衆愚の所業よ。

 今回のテーマに反するわ、控えなさい」

「分かりました、おっしゃる通りです」

 ローズマリーはクリエッタの指摘を受けて、個人的な感情が入り混じっていたことを認めてその言葉を受け止めた。

 

「この国には現状、明文化した法律が無いそうね? 

 特定の宗教を信じているわけでも無いのなら、あなた達の死後の魂はここの担当か私の元に導かれるでしょう。

 その時、あなた達がこの国の法によって生前の罪が償われていない場合、死後や来世にしわ寄せが来ることを理解しなさい。

 なにもいきなり分厚い本みたいな細かな法律を作れとは言っていないわ。まずは十条程度でもいいから、分かりやすく普及しやすい法を敷きなさい。

 そしてどんな形であれ、不義や悪行には罰を与えなさい。罪を犯さぬ者など居ない本物の楽園なんて、神にすら不可能なのだから」

 そのようにクリエッタは締めくくり、今回の講義は終わったのだった。

 

 

「ありがとうございます、クリエッタ様。

 とても為になりましたよ。法律の重要性は理解していたのですが、今のところみんなが一致団結してうまくやれているものですから、どうしてもルールで縛り付けるような真似はしたくなかったんですよね」

 講義が終わり、ぞろぞろと部屋から出ていく面々を見送るクリエッタにローズマリーはそんな風に話しかけた。

 

「気持ちはわかるわ。

 こっちの担当者があなた達に目を掛ける理由もね。

 だけど山賊退治を非公式な組織が行い、その処罰を別の共同体に任せている現状を国家として健全と言えるのかしら?」

「ううう、ご忠告痛み入ります……」

 それを言われては、ローズマリーとしても言い返すことはできなかった。

 

「この国は多くの種族や価値観が入り乱れる思想と人種のるつぼであるのは理解したわ。

 明確なルールを構築する難しさもね。だけど彼らの為に国家と言う形態の共同体を選んだ以上、国家と言う枠組みに縛られることは当然の事よ。

 国家はどこまで行ったところで、その内側の最大公約数を求めることしかできないのだから。まあいずれ、あなたはそれを嫌ほど理解するでしょうけれど」

「……ええ」

 その覚悟は、とっくに彼女はできていた。

 

「うーん、法律でちかー。ヅッチーはどうする?」

「やっぱり、プリシラやみんなで考えようかなーって思ってる」

「でちよねー。まあうちは、誰かが悪いことをしちゃったらどんな罰を与えるかみんなで考えるようにしようかなって思ってるでち。

 それでどうしてそんなことをしちゃったかとか、どうしたらもうそんなことせずに済むのか、とかみんなで一緒に考えるようにすればいいのかなーって」

「うーん、なんだかデーリッチらしいなぁ」

「あー、なんで笑うんでちか!!」

 デーリッチとヅッチーがそんな会話をしているのを、クリエッタはじっと見ていた。

 

「あの、どうかしましたか?」

「いいえ、ここを担当しているあの人がちょっと羨ましく思えただけよ」

 そう言って、彼女はローズマリーに少しだけ微笑んでみせた。

 

 

 

 §§§

 

 

 

「シノブ。そろそろ、返答を貰えないかしら?」

 獣人連合軍のとある拠点の一つで、ビルーダーは先日の提案に答えを求めていた。

 

「……もう少し、考えさせてもらえませんか?」

「いいえ、これ以上は無意味な引き伸ばしよ。

 私としては急ぐ理由はないけど、私はせっかちなのよ」

 ビルーダーは返答を引き延ばすシノブを急かしていた。

 

「具体的な役割は説明したわね? 

 この世界がより良い方向へ向かう為の文明レベルの調整をあなたにやってもらいたいの。

 私は不必要にあなたに干渉しないし、私への信仰を求めもしない、と」

 そこまで言ってから、ビルーダーはにやりと笑った。

 

「……ああ、なるほど。私が信用できないのね」

「まあ、有り体に言えばそうなんですけれど……。

 私は貴女のことをよく知りませんので」

「じゃあ私がどういう神なのか、分かりやすく教えてあげるわ」

 瞳の奥に不信が揺れるシノブの目を見て、ビルーダーは言った。

 

「一つだけ貴女のどんな願いでも叶えてあげましょう。何でも言いなさい」

 それを聞いて、シノブは目を見開いた。

 

「それは、代行者になる対価ですか?」

「いいえ。私は貴女に力を示そうとしているだけよ。

 なんなら願いの数を増やせ、だって叶えてあげるわよ」

 くすくす、とビルーダーは笑って彼女を試すようにそんな挑発を投げかけた。

 

「…………では、ゲートを繋げた先が安全で人の住める場所かどうか判別する手段を教えてください。

 現在の召喚魔法では、事前に召喚対象の詳細な情報を得るのは難しい。相互ゲートを繋げた先も今のところ大まかにしか事前に知りえない。

 人は住んでいても危険な魔物だらけだ、という世界も珍しくはないですし」

「ふむ、ならばこれを使いなさい」

 ビルーダーは虚空から水晶玉のような物を取り出し、シノブに差し出した。

 その水晶にはここではないどこかの光景が映し出されていた。

 

「持ち主が望む別世界を映しだす観測機よ。

 これと召喚魔法を併用すれば、好きな世界の好きな場所から望みのハグレを呼び出すことすら可能よ」

「……なるほど、貴女は相当に意地の悪い女神様のようだ」

 その観測機を手にしたシノブは苦笑してそれをビルーダーに押し返した。

 

「これはお返しします。これはこの世界には過ぎたる物です」

「あら、どうしてかしら?」

「召喚魔法を一日に行使できる回数は限られる。

 これを使えばこの世界のハグレを故郷の世界に帰すことも可能でしょう。

 ──だけどそれは、明らかに私のキャパシティオーバーだ」

 シノブは確信を持ってそう答えた。

 

「私がそれを持ってハグレ達を故郷に帰せると喧伝し一人ひとり対応した場合、確実に収集が付かなくなる。

 私の前にはハグレ達が長蛇の列を成し、その順番を巡って争いになるでしょう。

 そして私はきっと、途中で止めるだなんて言えなくなる。私は何年もの間、彼らの視線で針のむしろとなるはずだわ」

「賢い。本当に賢いわね、貴女」

「私は一つしかない道具ではなく、技術を求めました。

 私を試すためにこんな道具を見せびらかすだなんて、本当に意地の悪い」

 ある意味では自分を陥れようとした女神相手に、シノブは仕方なさそうに笑っていた。

 

「私は自分の代行者にふさわしいと思った人間や、個人的に気に入った人間に願いを叶えてあげると言うことがあるわ。

 巨万の富を望む者には暴落が約束された貨幣を、永遠の命と若さを望む者には永遠の生の苦しみを、恋人や肉親の蘇生を望む者には外見だけそっくりなだけの違和感だらけの別人を与えたわ。多くはそれを喜んで受け取ったわ。

 つい最近では、くだらない質問を投げかけられたから当たり障りのない返答でお茶を濁したわね」

「それって、悪魔の所業では?」

「知らなかったかしら? 私は世界によっては邪神や悪魔扱いされてるわ。

 おかげで本物の悪魔に商売敵として蛇蝎の如く嫌われているの」

「でしょうね」

 シノブはその悪趣味な所業にそんな率直な感想を述べた。

 

「女神様、貴女は私を代行者にしたいのではなかったのですか?」

「ええそうよ。でも私の中では貴女が我が代行者になるのは確定しているから、期待通りなのかどうか試している段階なのよ」

「……」

 彼女は目の前の女神の真意を測りかねているような視線を向けた。

 

「どうして、私が貴女の代行者を引き受けると?」

「だって私は貴女の孤独を理解できるもの」

 シノブの疑問にビルーダーは悠然とした笑みを浮かべたまま即座に答えた。

 

「世界が醜く見えるのでしょう? 

 周りはどうしようもなく愚かしく、当然のことさえもできやしない。

 そのくせ自分が正そうとすれば理解を得られない、否定される、邪魔される、排斥される。

 私は貴女の心の奥底にある周囲への失望やこの世の不条理に対する怒りが透けて見えるようだわ」

「そんな、そんなことは……」

 その言葉を否定するシノブの声はどこか弱々しかった。

 恐ろしいほど的確に、目の前の女神はシノブの本心を言い当てていた。

 

「あなたは獣人連合軍ではなく、ハグレ王国を選ぶこともできた。

 自分を信じ理解してくれる友人がいるあちらではなく、こちらを選んだ。それが全ての答えよ。

 ……本音はこうでしょう? 世界が滅茶苦茶になっても自業自得などではなくて、心の底では貴女がそれを望んでいるのよ、そうして自分を認めなかった連中が無様に熱した鉄板の上で踊り狂う姿を見て愉悦に浸りたいんでしょう?」

「それは、貴女の想像だ。

 私は少なくとも、誰かの不幸を見たくてやっているわけじゃありません」

 シノブは彼女の巧みな心理的誘導を跳ね除けそう答えた。

 自身の中に息づく暗い感情に目を瞑りながら。

 

「ならばこそ、私の代行者という大義名分は必要じゃないのかしら? 

 私の代行者になれば、私は貴女を守ってあげられる。あなたの名誉と成果を、誰にも否定させることなんでできなくなる。

 あなたは私の指示を尊重するだけでいい。私はあなたの全ての行いを許すわ」

 その言葉は、世界の不条理に晒され続けた15歳の少女には耐えがたい甘さがあった。

 

「…………本当に、私を守ってくださるんですか?」

「ええ、叡智の女神の名に掛けて」

 ビルーダーが真剣な表情で頷くと、ぽろぽろとシノブの瞳から涙が零れ落ちた。

 

 その姿を見て、マルースはいい仕事をした、と内心でビルーダーは思うのだった。

 

 

 

 

 

 




実はビルーダーに、何でも言え、と言われた時のデーリッチの対応はファインプレーでした、と。あの時のマルースとのやりとりは彼女的にかなりポイント高かったです。
次回はいよいよ、メインストーリーが進行します。
あと、ええと、柚葉さんはまた今度でお願いします……。

ではまた!!
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