アナザー・アクターズ   作:やーなん

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今回は会話だけなので短めです。


5.拠点会話 その2

『拠点会話 ヤエと雪乃 』

 

 

「あのー、マルースさん、でしたよねー?」

俺が図書館で読書をしていると、先日ハグレ王国に加わった雪乃がおずおずとサイキッカーヤエの後ろに隠れるように俺の元にやってきた。

 

どういう経緯かは知らないが、見た目に反して面倒見の良いこの自称超能力者に彼女は懐いているらしかった。

サイキッカーヤエの方も、どうやら雪乃を気に入っているようだし。

 

「雪乃ちゃんじゃないか、俺に何か用かい?」

彼女は好みの体をしているのでポイントを稼いでおいて損はない。

俺はデーリッチよりやや控えめな優しさを見せることにした。

 

「ええと、あの、マルースさんは召喚魔法に詳しいんですよね?」

「うん? あー、まあ、人並よりかは」

彼女は俺が今読んでいる『召喚術の深淵』という本に目を向けていたので、俺は言葉を濁した。

とりあえず召喚士協会の出している本は今も一通り目にしているが、流石に実践している本職の召喚士には劣るだろう。

 

「……聞きたいことが有るんですけど」

「雪乃ちゃん」

その後にどういう言葉が続くか分かっていた俺は、彼女に向き直ってわざとらしい笑みを張りつけた。

 

「その質問は君を幸せにはしないよ」

「ッ……」

「君には夢中になって打ち込めるスポーツがあるだろう?

人攫いの技術に目を向けたって落胆するだけだ」

じわり、と彼女の目元に涙が浮かぶ。背を向けて図書室から出て行こうとする。

まったく嫌な役目だ。

 

「雪乃、また目の前の事実から目を逸らすの?」

これで話を終わらせようとした俺だったが、彼女の付き添いはこれでいいと思わなかったらしい。

 

「だけど、ヤエさん……」

「逃げた先に何かあるのならそれでも構わないけど、ここで逃げたらもっと嫌な形でいつか真実を目の当たりにするだけよ」

「お前は両目で目の前を見たらどうだ?」

「……わかりました、ヤエさん」

少し茶々を入れつつ、今度は覚悟を決めたのか雪乃がこちらに向き直るのを見やる。

 

「……マルースさん、元の世界に戻れた召喚された人……ハグレは居るんですか?」

「俺の知る限り一人も居ない」

彼女の質問に、俺は即答した。

 

「そして召喚魔法とそれを扱う召喚士は斜陽にある。

召喚される物は制限され、多くのハグレは召喚士を恨んでいる。彼らへの理解は遠く、また修復も難しいだろう。

この技術がこのまま停滞を続けるのなら、ハッキリ言って君が生きている間に元の世界に戻れるすべは見つからないだろう」

そして召喚士が趨勢を取り戻すのは望み薄だ。

彼らは彼らで地道に活動をしているらしいが、その努力が実を結んでいるとは言えない。

十年後には召喚と言う技術は立ち消え、過去のものとなっているかもしれない。

 

「多くのハグレは恨んでいる、と言っている割にはあなたは理解を示している風じゃない」

そこでサイキッカーヤエが口を挟んできた。

 

「俺は数少ない、召喚されて良かったって喜んでるタイプだからな」

その返答に、雪乃は驚いたような表情になった。

 

「……だから、そんな風に他人事みたいに言えるんですね」

「雪乃、そういう言い方は良くないわよ」

「良いさ、誰かに当たれるうちはまだ健全だ」

彼女はまだ精神が不安定なのだ。恨み言の一つぐらい言わねばこの状況を受け入れられないのだろう。

 

「元の世界に、未練とかは無いんですか?」

「無いな、何にも無い。

俺には君と違って、家族も友達も、生まれ育った場所も無いんだから」

「え、どういうことです?」

「そのままの意味だよ。俺は目の前で自分の世界が滅ぶのを目の当たりにしている最中に、召喚士にこの世界に召喚されたんだ」

俺が口にした言葉に、さしもの雪乃も絶句したようだった。

なるべく軽く言ったつもりだったんだがなぁ。

 

「ああ、色んな世界があるものね。

終末間際の世界から呼ばれてくるハグレもいるってことね」

「俺みたいな極端な例は少ないが、一応命を助けられた形になったからな。

だから、この世界のアホな騒動にも手を貸してやったわけよ」

それが俺の召喚士協会側に付いた理由だった。

 

「……ごめんなさい、そんなこと聞いちゃって。私、自分のことばかりで……」

「だから良いって言ってるじゃないか。

君は今、その自分のことを何とかしないといけないんだ。他人に気遣う余裕なんてあるはずないんだからね。

俺もこうして今は余裕があるが、何度も失敗したりして自暴自棄になったりしたもんだ。

君の境遇は不幸だが、無数の不幸が溢れるこの世界と言うパンドラの箱の中で君は小さな一つの希望を手にしたんだ。

俺はこの世界で苦楽を共にできる仲間なんて居なかったからね」

その点だけが、俺が彼女を羨める要素だろう。

 

「…………相談に乗ってくれてありがとうございます」

「ははは、弱音が吐きたくなったらいつでもどうぞ。

頼られるのが年長者の特権だからね」

雪乃は俺に一礼すると、一人静かに図書室から出て行った。

 

「付いて行ってやらなくていいのかい、超能力者さん」

「ボロを出さなくて良かったわね、ロリコンのくせに」

「ちょ、そこでそう言う流れに持ってくなよ!!」

「今の雪乃は一人でいろんなことを整理する気分なのよ。

あなたは自分の性癖と向き合うべきだけど」

「は、はぁ!? ロリコンって何のこと? 一体どこにそんな証拠があるんだよ!」

「証拠ならあるわよ。私のテレパシーは、二次元の三次元の壁を超えるのよ!!

ほら、この小説のあらすじにあんたがロリコンって書いてある」

「お前超能力者だからって何しても良いと思うなよ!!

俺はただ、幼い少女を自分好みに育てたいだけだよッ!! まあ、あわよくば途中でつまみ食いをと――」

「滅びなさい、ロリコン!!」

「ぎゃー!!」

サイキッカーヤエから放たれたサンダーが俺に直撃した。

 

「くくくく、そちらがその気ならこちらだって考えが有るんだぞ。

俺も超能力を発揮して、貴様の存在をこの小説から消し去ってやろう!!」

「やれるものならやってみなさい、全世界のヤエちゃんファンの皆さんがそれを許すならね!!」

俺の警告に、サイキッカーヤはドヤ顏でそう言った。

 

「って、え、あれ、↑の地の文で私の名前が“サイキッカーヤ”になってる!?」

「くっくっく、なぜわざわざお前の名前の表記を面倒なことにサイキッカーを付けていたと思う?

このネタがやりたかったからだよ、ざまーみろカーヤちゃん!!」

「おのれぇ……いいわ、今回は引いてあげる。

これで私は王国に巣食う悪と影ながら戦う超能力者……ふふふ」

 

――――こうして、水面下でロリコンと超能力者のくだらない戦いが始まったのだった。

 

 

 

『拠点会話 デーリッチ式ロリコン撃退法 』

 

 

「へーい、マリちゃん!! でち子にお勉強を教えてるのかな? 俺も付き合うぞ!!」

「いいえ、あなたはデーリッチに甘いのでご遠慮します」

何やらテンション高くやってきた我らが主人公を追い返したローズマリー。

日に日にアプローチの激しさが増していく彼に、彼女も溜息を吐いた。

 

「またでちか、ローズマリー」

「うん、困ったことにね」

もう一度溜息を吐くローズマリー。

 

「もう適当に付き合ってあげたらいいんじゃないんでち?

これを逃したら二度と男が寄りつかないかもしれないでちよ。わざわざローズマリーを口説こうなんて剛の者でち」

「それはどういう意味かな、デーリッチ」

彼女が凄みのある笑みを浮かべると、デーリッチは慌ててノートに顔を落とす。

 

「あれはね、私が誰かと付き合ったことが無いから私の反応を見て楽しんでるだけだよ。

そもそもああいう軟派な人は好みじゃないし、遊びで付き合おうとする軽い人はお断りだよ」

今は王国の運営の方に集中したいし、とローズマリーは言う。

 

「デーリッチはああやって距離感を計ろうする人は嫌いじゃないでちよ。

それに、あれはむしろ女性の方が真剣になったら逆に尻込みするタイプと見たでち」

「距離を詰めるのは得意でも、距離を詰められるのは苦手だって?」

そんな馬鹿な、とローズマリーは思った。

彼は女性を口説き、成功するのに慣れている。自信が違うのだ。

 

「デーリッチはそんなことないんでちけどね~」

彼女はむしろ、あんな女好きと自分との共通点を探ろうとしているデーリッチに感心していた。

 

「まあどうしてもと言うなら、私がマルちゃんを撃退する方法を教えてあげるでちよ」

そう言って、デーリッチはさらさらと数行の文章をノートに書いてページを破いた。

 

「次にローズマリーにマルちゃんが口説きに来たら、これを読みあげるでち。

そうすれば、しばらくはローズマリーに近づこうとは思わない筈でち」

それまで中身を読んじゃダメでちよ、と折りたたまれたその紙をローズマリーは小首を傾げながら受け取るのだった。

 

 

それから数時間後。

 

「へーい、マリちゃん!! 一緒に現代魔法論について意見を交わそうZE!!」

ほら来た、とローズマリーはデーリッチから受け取った紙を取り出した。

 

「?」

「なになに、『放浪中、やっとのことで街に着いたデーリッチにローズマリーが言いました、デーリッチ、待ちに待った町が見えたぞ!!』……」

それを読み上げた直後、マルースは氷漬けになったかのように笑顔が固まった。

 

「……『デーリッチが風邪を引いた時、ローズマリーは特製のお薬を作ってくれてこう言いました、このお薬は栄養がえいよう~』……」

それは以前、ローズマリーがデーリッチを励まそうと言ったギャグだった。

それを聞いた彼は深刻な表情で、近くに座ってお茶を飲んでいた福ちゃんの対面に座った。

 

「福の神様、マリちゃんのギャグが寒いです。

どうか貴女様の御力で彼女を救ってあげてくれませんか?」

「マルースさん、神にだって出来ない事ぐらいあるんですよ。

でも私もこれほど寒いとは思いませんでした」

「なんとか、なんとかなりませんかね!!

ギャグはくそ寒いけど、彼女は他人を思いやれる良い子なんです!!」

「難しいかもしれませんけど、笑ってあげましょう。笑顔の周りにこそ、福が集まるのですから」

「そう、ですよね……」

一通り相談を終えると、彼は立ち上がってローズマリーの肩をポンと叩いた。

 

「ま、まあ、次を期待してるからな?

だ、大丈夫だよ、次はきっと面白いから、な?」

そう言って、彼はそそくさと立ち去った。

 

「……デーリッチぃ!!」

ローズマリーはふつふつと湧いてくる怒りのままに振り返ると、イタズラが成功したのを見たような笑みで彼女の様子を窺っているデーリッチを見つけた。

 

「これは一体どういうことだぁ!!」

「わー!! ローズマリーが怒ったでち!!」

デーリッチの考案したロリコン撃退法(ローズマリー限定)は劇的な効果を齎した。

かれこれ一週間は腫物でも触るかのような扱いを彼から受けたローズマリーは、しかし釈然としない面持ちで居たと言う。

 

 

 

 

 




このロリコンが真の本性を表すのは第二章からです。

次回は南の世界樹の話に移ります。
この時点で大体のひとはジーナさんとこドラを仲間にしているでしょうが、次回はジーナさんのみ登場予定です。
話しの予定によっては未登場かもしれませんがあしからず。

この作品で期待している今後の話しの内容は?

  • オリジナル展開
  • 原作の綿密な描写
  • キャラ同士の掛け合い
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