アナザー・アクターズ   作:やーなん

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みなさん、お久しぶりです!!
長らくお待たせしました、どうぞ!!



42.戦争までの幕間

『交渉、その後』

 

 

「ったく、暑いな、ちくしょう」

 俺とプリシラはエルフ王国との交渉が終わると、手配していた帝都への馬車が来るのを残暑の日差しの中で待ちわびていた。

 

「濡れタオル、冷やしておきましたけど使いますか?」

「ああ、さんきゅ」

 俺は彼女の差し出してきた濡れタオルで額の汗を拭うと、そのままそれを広げて頭に乗せた。

 

「なんだかおじさんくさいですよ」

「うるせぇ、おじさんで悪かったな」

 そうやって日差しをしのいでいると、くすくすとプリシラに笑われてしまった。

 

「とりあえず、交渉はまとまってよかったですね」

「俺は殆ど何もしてなかったけどな」

「何もしていないなんてご謙遜を。

 エルフの女王様、終始あなたにペースを乱されっぱなしでしたじゃないですか」

 手持無沙汰になった俺たちはそんな雑談を始めた。

 

「まあ、親戚の娘みたいな? 歳はずっとあっちが上だけど。

 からかうと面白いんだわ、あの子」

「わかります。ところで、どうしてあなたはエルフの皆さんにあそこまで蛇蝎の如く嫌われているんです?」

「その話は止めよう」

 俺は真顔でプリシラにそう言った。

 俺の黒歴史を掘り返すつもりはないのか、ええ、とプリシラは頷いた。

 

「ってか、お前ら後で帝都に恨まれるぞ? 

 本当に帝国に五千万ゴールドも吹っかける気かよ」

「それはまあ、これまでの帝都の所業を鑑みればあちらが吹っかけてくるのもやむなしかと」

「まあ、な」

 エルフの女王……リリーちゃんも言っていたが、帝都のハグレに対する横暴は目に余る。

 俺は戦争と言う手段に踏み切ったマーロウの旦那を非難したが、心情的にはあちらの味方だ。

 

 エルフの王国というのは昔から、それこそこの世界に移民した当初からある由緒ある国家だ。

 その規模はエルフの人口がかなり少ないと言うのもあるが、幾つかの集落がある程度の人類のものとは比較にならないほど小規模である。

 リリーちゃんはその五代目に当たる女王だ。決断力に溢れる彼女は国民人気も高い。

 

 エルフは長寿ゆえか繁殖力が低い。これはヒト型の生物には珍しいことらしいが。

 だからか、仲間意識も高い。近年ハグレとしてやってきた別世界のエルフを積極的に受け入れたりしていた。

 だがそれが災いし、細々と森で生きていた彼らも帝都に目を付けられた。

 

 数多くの嫌がらせや横暴、エルフ全体をほとんどハグレも同然の扱いをされてきた。

 それで保護したエルフたちが持っていた技術の利権を勝手に奪われたとあっては、確かに戦争に発展しても可笑しくない仕打ちだ。

 いや、エルフが人間並みの国家ならそうなっていただろう。

 

「エルフみたいな戦いを好まない種族に武器を取らせたくらいだしな」

「正直、帝都の風通しがよくなるのなら、と今回の件を引き受けたわけですけど。

 思いのほか闇が深くてため息が出ますね」

「他の妖精たちはあまり見当たらないがどうしている?」

「それはもう各所に。商業地区以外にも人員を派遣していますよ。

 避難誘導も騎士団だけじゃ手が足りないでしょうし」

「よかった、お前たちが矢面に立つわけじゃないのな」

 それを聞けて俺はホッとした。

 俺はもうとっくにあいつらの事を身内同然に思っていた。

 

「ええまあ、流石に今の彼女たちじゃあ屈強な獣人たちに立ち向かうには力不足ですからね」

「そうか。デーリッチ達もそうだが、君らの王国もどこまでいくのかずっと見ていけたらいいな」

「……マルースさん」

 すると、プリシラは少しだけ険の混じった表情でこちらを見た。

 

「なにやら獣人連合軍のトップと、何やら因縁があるそうですね」

「なんだ、ヅッチーはそんなことも話してたのか?」

「……その因縁はどうしても清算しないといけないものなんですか?」

「そうしたいのはやまやまなんだがね、俺じゃあの人に正面から挑んでも勝てんし」

「だけど今回の戦いは、そんな相手と正面から戦わざるをえません。違いますか?」

「だからどうした?」

 俺は彼女の回りくどい言い方に、少しばかり煩わしくなりそんな風に鋭く返した。

 

「…………」

「男にはやらないといけない時があるんだよ。

 もっとも、いまさら俺に出る幕があるかは疑問だがね」

 俺が何を言ったところで、マーロウの旦那には届かないだろう。

 俺の役目は、他の連中が望んでいるように奴をクウェウリちゃんの前に引きずり出すことだ。

 

 ハグレとこの世界の住人の亀裂をこれ以上開かせてはならない。

 その為には、マーロウの旦那を止める必要があるのだ。

 これ以上、あの戦争の悲劇の続きなど起こしてはならないのだ。

 

「それに、俺にも死ねない理由ができた。

 ビルーダー様の神域に赴き、かの御方の真意を問うまでは。

 だから、そんな心配そうな顔をするなよ」

 俺はしばらくの間、不機嫌そうに口をつぐむプリシラの頭を撫でていることにした。

 

 

 

 俺とプリシラが召喚士協会に交渉の条件を報告し、外に出るとデーリッチ達が協会の前で鎧姿の男たちをぼこぼこにしている姿を発見した。

 

「おいおい、お前ら弱い者イジメはいかんぞ」

「あ、朝帰りのマルースさんじゃないですか」

「もう朝って時間帯じゃないだろ」

 エステルの皮肉を受け流し、俺は鎧姿の連中を見やる。

 

「わ、我らが、よ、弱い者、だとぉ……」

「その格好、帝国騎士団の制式鎧だろう? 

 なんでお前らが騎士団と喧嘩してるんだよ」

「ああ、それはですね」

 悔しそうにしている騎士団の連中を尻目に、マリちゃんは俺に彼らが絡んできた経緯を説明してくれた。

 

「これはこれは。この後もメニャーニャさんとのお話があるので、その時にそちらに苦情を入れてもらいましょうか?」

 と、プリシラがにこやかな笑みでそう言うと、騎士たちは怯えたように震え上がった。

 実際、メニャーニャは上と交渉条件の摺合せを行うので彼女は嘘は言っていなかった。

 

「まあまあ、お前ら、気に入らないのも分かるが、頼もしいことじゃないか」

「頼もしい? この人たちがでちか?」

 デーリッチが純粋に俺の言葉を理解できないのか小首を傾げた。

 その純粋な態度が男たちの胸に突き刺さる!! 

 

「だってそうだろう? 

 ここでハグレの皆さん、どうか帝都を守ってくださいなんて腑抜けたこと言うような騎士団の方がよほど問題だ。

 軍隊ってのは多少血の気が多いくらいでちょうどいい、ほら、歩けるか?」

 彼らは自分たちに歩み寄ろうとしている俺の姿に困惑しているようだったが、気にせず肩を貸してやった。

 

「十年前、俺がハグレ戦争に参戦してた時の帝国騎士団は精強だった。

 強い軍隊にはそれ相応のプライドが必要なのは当然だ。自信の無い軍隊に勝ちは存在しないからな」

「いや、そもそもそれ以前の話のような……」

 原住民の癖に並みのハグレより強くなってしまったフレイムゴリラの言葉など無視して、俺は彼らをさらにおだてた。

 

「そこで物は相談なんだが、今回の騎士団の作戦行動に俺を同行させてほしい。

 なぁに、君らは俺を上官の元に案内してくれればいい」

「マルースさん、流石にそんな勝手は……」

「良いから俺に任せてくれ、マリちゃん」

 俺はマリちゃんの肩を叩くと、お互いの顔を見合わせている騎士たちに向き直る。

 

「構わないよな?」

「いや、だが……」

「我々にも面子が……」

「そっかー、じゃあ後でハグレ王国から正式に苦情と共にそちらの詰所に窺うわ」

「じょ、上官に話を通しておきます!!」

 騎士たちは俺の言葉に、逃げるように去って行った。

 

「どう使うつもりかは知りませんが、あの程度で正式な軍隊だって?」

「訓練された軍隊ってだけで使い道はいくらでもあるんだよ。

 うまいとこ取り入ってこき使ってやるさ。

 それに、安っぽいプライドとはいえ、自国が危機に晒されているんだ。

 自ら矢面に立つことを厭わぬ奴らをあまり馬鹿にしてやるな」

「それはそうですが」

 マリちゃんはそこまで当てになるのかと半信半疑の様子だったが最終的に、そちらに任せますよ、と言った。

 

「ああ、任せろ。残りの時間で使い物になるようにしてやるよ」

 俺がにやりと笑うと、三人はどこか同情的な表情になったのだった。

 

 

 

『 戦いの前に 』

 

 

 ハグレ王国一行は、残された二日と言う時間をフリーマーケットに費やすこととなった。

 訓練を行っても良かったが、それでは疲れが残るかもしれないからという王様の判断からである。

 とはいえ……。

 

「ぜぇぜぇ、もう無理でち、ギブ……」

 何名かの付添いを経て売り物を持ってくるためにゲート移動で何往復もすることになったデーリッチはくたくただった。

 

「うーん、流石にこれ以上は無理をさせられないか。

 よくやってくれたよ、デーリッチ」

 彼女の限界を見極めていたローズマリーがそう呟いてから、ゼニヤッタに彼女を休ませるように指示し、フリーマーケットの会場へと皆を引きつれむかった。

 会場ではジーナとベルが共に王国に置いてあった在庫の処分を行っていたのだが。

 

「ねぇ、薬はもう無いの!?」

「ここに安い武器が売っているってほんとか!?」

「頼む、薬を売ってくれ!! どこも売り切れなんだ!!」

 と、このように十人近くの人だかりが二人の露店の前に出来上がっていた。

 

「みなさん、もう少しで在庫が届きますで、落ち着いて、落ち着いて並んでいてください!!」

 そんな帝都の都民たちをベルは必死に宥めていた。

 

「ジーナさんも、何とか言ってくださいよ!!」

 健気に客たちに声を掛けているベルは、涙目になって涼しげな態度をしているジーナを見やった。

 

「今、整理券の準備をしているから待ってなって」

「ああもうどうして、こんなことに!!」

 そうして悪戦苦闘しているベルの視界に、ようやく薬を拠点から持ってきたローズマリー達の姿が映り、顔をほころばせた。

 

「みなさん!! 商品が来たので順番に、どうか一列で順番にお願いします!!」

「ふざけるな、これだけ待たせておいて後回しだと!!」

 興奮気味の客の一人がベルに迫ろう迫ろうとしたのだが。

 

「悪いが、列から外れたのなら一番後ろに並び直してくれ」

 武器の在庫が入った木箱を抱えたニワカマッスルが前に出てそう言い放った。

 

「ッ、く、くそッ」

 こわもての彼に怖気づいたその客は、しぶしぶ次第に出来上がりつつある列に並んだ。

 

「大盛況だね、ベル君」

 急いで商品を並べ始めるベルを手伝いながら、ローズマリーは苦笑しながら言った。

 

「そんなことを言ってられる状況じゃありませんよ。

 皆がみんな、医薬品や護身用の武器を求めて大変なんですから」

「しょうがないよ、みんな不安なんだ」

 ジーナの露店の方に武器を並べるアルフレッドがそう呟いた。

 

「商人ってのは空気に敏感だからな。

 今、どこも食料や医薬品、武器が品不足らしい」

 ヅッチーは妖精王国からも品物を持って、共に露店に並べていた。

 

「まあ、こっちは使われなくなった武器防具の在庫がはけて万々歳だけどさ」

 マイペースにそんなことを言うジーナに、弟は苦笑を向けた。

 

「とりあえず、かき集められるところからかき集めてきたよ。

 特に医療品はこの後どれだけあっても足りなくなるだろうし」

「と言うことは、ローズマリーさんのお父さんの所からもですか?」

 ベルが少し心配そうにローズマリーを見上げてそう尋ねた。

 

「うん、まあ、ね」

 それに対してローズマリーは強張った笑みで応じた。

 彼女が父親と今回の戦争の件で再び大喧嘩したのはハグレ王国民なら誰もが知るところだった。

 知っていて、皆はあまり触れようとはしていなかった。

 

「そうですか……。ええと、元気出してください」

「気にしないでいいよ、ベル君。別に嫌いあって喧嘩したわけじゃないからね」

 父親なら誰だって殺し合いの陣頭指揮を取ろうとする娘を止めようとするだろうし、とは思っても口には出さなかった。

 

 以前、ローズマリーは父親と確かに和解したが、彼は彼女の故郷から店を移転すると言ったことも無くそのまま店を続けていた。

 それ自体は当然のことだとローズマリーは思っていた。

 彼の薬屋は小さいながらも村で唯一の薬屋で、採算度外視で医師のいない別の村に安い薬を届けに行ったりもする。

 彼女の父親は稼ぎは少ないが、薬代で稼ごうとすれば周囲の人々がどうなるかよくわかっていた。

 だからこそ、彼は自分達の故郷から離れられることはできなかったし、してはならなかった。

 ビルーダーの講義で、商売で一番重要なのは社会貢献、すなわち商売の継続こそが大切なのだと語っていたのを彼女は思い出していた。

 

 それを賢い彼女は誰よりも理解していながら、故郷に縛り付けられている父を歯がゆく思った。

 この前の喧嘩は、そのことを持ち出して言い返したものだから収集が付かなくなったのだ。

 

 

「いやー、参ったわ」

 ローズマリー達が客足が途絶えず嬉しい悲鳴を上げていると、商品をあらかたさばききったところでエステルが会場にやってきた。

 

「エステルさん、何だか顔が真っ赤たぜ……」

「あぁ、これね~」

 ニワカマッスルが不自然なエステルの顔の赤みを指摘すると、彼女は明るく笑ってこう答えた。

 

「さっき両親に会ってきたんだ。

 指名手配の事で大泣きされて、ビンタされて、怒られて、今回の戦いに出ることを伝えたらまた怒られて泣かれて、説教されて……。

 自分の両親があんな熱い人間だとは知らなかったわ」

「だとしたら、君の良さはしっかり両親から受け継いだものなんだろうね」

「そうだといいわね」

 エステルは肩を竦めてローズマリーが眩しい笑みを浮かべた。

 

「負けられない理由を確認するのは大事さ。

 土壇場になって判断を鈍らせずに済むからね」

「ジーナさん」

「さ、これから素材の許す限りの合成と調合をするんだ。

 人手が増えて丁度良かったよ」

 さらりとこき使う気でいるジーナに苦笑いし、エステルも急ピッチで調薬しているベルの手伝いをすることにした。

 

「みんな!! 食料、衣服、医療品、とにかく片っ端からかき集めてきたわよ」

「ビルーダー様!!」

 すると、荷物が満載の荷馬車を引いたビルーダーがフリーマーケット会場前に現れた。

 

「よくこれだけの物資を集められましたね……」

 ローズマリーが山積みになった物資を見やり、嘆息した。

 他の面々も、あるところにはあるんだなぁとそれを見ていた。

 

「食料は隠し持ってた貴族から買い叩いたわ。

 衣服は一軒一軒民家を回って古着を貰ってきたの。

 医療品は古い常備薬とかを安く譲ってもらった感じね。

 必要な人間に必要なだけ渡しなさい。市街地が戦場になる可能性も十分にあるのだから」

「助かります、それで費用は」

 ローズマリーが代金について尋ねようとしたが、ビルーダーは首を振った。

 

「大した出費ではないわ。

 こっちは質を保証できないから売りさばくのではなく戦闘後に配るようにしなさい」

「わかりました、召喚士協会の敷地を借りさせてもらいましょう」

「じゃあ福ちゃんたちと手分けしてかき集めている分もそちらに送るように手配しましょう」

「それが良いでしょう」

 ローズマリーはビルーダーの提案に頷いた。

 

 ビルーダーを初めとした女神さまたちは物資の供給が滞っている帝都の家々を回って戦後の混乱や避難民たちに備えて物資をかき集めている作業をしていたのだ。

 それらを召喚士協会に持っていくと、心労が見えるメニャーニャが心底嬉しそうに助かりますと漏らした。

 

「本当に助かりますよ、国民のご機嫌取りは何でもするのが今の召喚士協会ですから」

 と、皮肉っぽく冗談を言うメニャーニャに一同は曖昧な笑みを返すしかできなかった。

 

「ビルーダー様」

「どうかしたかしら、クー」

 クウェウリは会場に戻る道中、特に親しくも無いのに愛称で呼ぶ女神に尋ねた。

 

「ビルーダー様は獣人連合の拠点に降臨なされた時、どこからともなく物資の山を呼び出してパパたちに渡しましたけれど、どうしてそうなさらないんですか?」

 クウェウリの疑問に、ビルーダーは尤もらしそうにうなずいた。

 

「あれは別に無尽蔵に物資を生み出しているわけじゃないわ。

 文明がある程度発展すると過剰に生産するようになるのよ、人類は。その余剰を足りないところに流しているだけだわ。

 それをするには世界の壁を超える必要があるから、神の行いだわ。

 そして私は今、私個人としてコネや人脈を使って物資を集めた。それだけの違いに過ぎないわ」

 前者は神の施しで、後者は個人的な行いであるという。

 

「それが、よくわかりません。

 ビルーダー様、私はシャーマンの一族に産まれました。ですがその力は他者から見れば忌むべきものに見えるそうです。

 だけど、私は結果が伴えば他人がどう思おうとも関係ないと思うんです。

 より多くを救おうと思えばそれを実行できるのに、どうしてもったいぶるんでしょうか?」

 少なくともクウェウリの目にはそのように映ったようだった。

 

「あー、うん、それな」

 これに反応したのは、ヅッチーだった。

 

「何でもかんでも自由自在に出来るってのは、とんでもないしっぺ返しが来ることもあるしな」

「そう言えば、クウェウリさんはあのシミュレーターを使ったことが無いんでしたっけ」

 苦々しい表情のヅッチーを見て、ローズマリーはそう言った。

 

「シミュレーター? 駄菓子屋に置いてあるあれですか?」

「そうそう、あれすごく再現度高くてさ、私もみんなを甘やかしてたらすぐに収集が付かなくなって。

 みんなの要望に次々応えて行ったら、ふと気づくんだ、これはペットに餌をあげているのと同じだって」

 さじ加減が難しいんだよなぁ、と腕を組んで首をひねるヅッチー。

 

「あれから何度もあれで遊んだけどさ、昔ビルーダー様言ってたじゃないか? 

 増えすぎたら間引くって。私もそうならざるを得ない状況に遭遇したんだけどさ、結局どうにもできなかったんだよ。全知全能の神様って設定なのにだぜ? 

 この問題を解決してください、みたいなふわっとしたコマンドは受け付けないしさ。

 何をどうするか決めないといけないんだ、全部」

 刹那的で、短絡的で、しかし決断力に溢れる妖精らしいヅッチーは今だ答えを出せていなかった。

 

「でも、簡単に神様として甘やかしちゃいけないってことはわかったんだ」

 それはあのシミュレーターを通して多くのハグレ王国民たちが理解したことだった。

 だから彼らは安易にビルーダーに願ったり、土壇場になっても助けを乞うたりしなかった。

 

「そうね、貴女が慣れ親しんだ力に疑問を持てないのは当然のことだわ。

 貴女は正しいけど、時には手段を選ぶことも重要なのよ。

 でも、だけどきっと、半年前の私だったら神としてこの都市の人々の不安を取り除く為に多くを与えると言う選択を取っていたでしょうね」

「では、なぜそうしなかったんですか? 

 ビルーダー様は人々の信仰を求めているのでは?」

「それで全てうまくいくのならね。今はどうしてもそんな気分になれないのよ」

 その返答に、クウェウリだけでなく同行していた面々がこう思った。

 そう、人間らし過ぎる、と。

 

「私は与え、そして奪うわ。

 信仰と共に安寧を与えれば、私は彼らからそれまで当然だった何かを奪っていたでしょう。

 それはきっと、ハグレ王国と相いれない結果に終わったと思うわ」

 その言葉を聞いて、ローズマリー達は別のビルーダーがハサギン達から信仰を奪ったという話を思い出した。

 

「それはハグレ王国の行く末を見守るという最初の目的を阻害することになるわ。

 うん、そうね、それで行きましょう。ええ、そう言うことなのよ」

「はぁ」

 わかったような、わかっていないような表情でクウェウリは曖昧に頷いた。

 ここに福ちゃん辺りが居れば、信者にちやほやされるのに飽きたんですか? ぐらいは言いそうだったが、それを言う神々や悪魔はここには居なかった。

 

「僕は上から目線で何でも与えてくれる神様より、こうしてみんなの為にあっちこっちを駆けずりまわってくれる神様の方が親しみがあっていいと思いますよ!!」

 あまりよくわかってい無さそうなベルが無邪気にそう笑って言った。

 

「そうだね、何だかんだでビルーダー様は僕たちの事見守ってくれているし、神様も幽霊も、これぐらいの距離感が丁度いいんのかもしれないね」

 と、空の荷車を引くアルフレッドも自分の意見を口にした。

 

「ありがとう。でも、いざと言う時の為に仕込みはしておいたわ。

 あとは賽の目がどうでるか、だけだわ」

「でも、神はサイコロを振らないってどっかの偉い学者さんが言ってませんでしたっけ?」

 ビルーダーの言葉に、荷を下した荷車を引くニワカマッスルがニヤリと笑ってそう言った。

 

「私に限っては、それは間違いね。

 だって私、サイコロ遊びは大好きよ?」

 ビルーダーのジョークに、くすりと笑う一同だった。

 

 こうして、忙しくも充実した楽しい日々は終わりは迫っていくのだった。

 準備の結果が問われる、戦争の時間がやってくる。

 

 

 

 

 




一か月半にも及んだ更新の滞りを、もしかしたら心配してくれていた読者の方が居たのならまずお詫びします。
活動報告に一言いれるべきだったのでしょうが、それすらもやろうと思えないくらいモチベーションが低下していたというか、ショックな出来事があったので。
今年の猛暑も原因のひとつですが、まあ、それは個人的なことなので割愛します。
重要なのは、更新ペースは落ちるかもしれませんが、とりあえず完結させるまで更新は止めるつもりはないことです。

いやぁ、一月半もあったら十話ぐらい書けてたんでしょうが、やっぱり今年の猛暑が悪い!!
うちには扇風機しか無いからね!! ほかの家族の部屋にはクーラーあるのにね!!(涙

まあとにかく、これからも拙作を愛読くだされば幸いです!!
以上、あとアンケートを新しく設置しましたので是非に!!

この作品のヒロインと言えば?

  • そりゃあプリシラじゃろ?
  • いいやこれからメニャーニャの時代やろ?
  • ローズマリーに決まってんだろjk!!
  • いやいや、我らが王様だろう!!
  • ぶっちゃけ、ヒロインとか要らんわ
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