アナザー・アクターズ   作:やーなん

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今回はだいぶカットしてます。
早めに三章を終わらせたかったので、巻きで行きます。



44.事後処理

『 阿鼻叫喚 』

 

 

 召喚士協会前は、爆弾の爆発により混乱に満ちていた。

 悲鳴を上げ逃げ惑う者、事態を収めようと指示を飛ばす者、負傷者に呆然とする者。

 

「騎士団の皆さん、大丈夫ですか!?」

 そして皮肉にも、爆発現場の中心地が一番冷静な者が多かった。

 

「ああ、我々は爆心地から離れていたし、全員鎧と盾で重傷な者はいなさそうだ……」

「では動ける人は混乱を収めてください。

 私たちは負傷者の回収と治療を行いますので、お願いします!!」

「わかった!」

 その中でローズマリーは比較的冷静に行動できた一人だった。

 

「マルースさん、マルースさん!! 死んじゃいやぁ!!」

「プリシラ、落ち着け!!」

 ローズマリーが振り返ると、悲壮な表情で悲鳴じみた声を上げて見るも無残な姿のマルースに縋り付くプリシラ。

 そして隣で彼女を落ち着かせとしているヅッチーと必死になって彼にヒールを掛けるデーリッチの姿があった。

 

「マルちゃん、死んじゃダメでち!! 

 みんな、みんなで生きて帰らないとダメなんでちよ!!」

 涙声のデーリッチが、何度も何度もヒールを繰り返す。

 他の面々も、爆発に巻き込まれた負傷者の救助をしていた。

 

「柚葉さん、大丈夫ですか!!」

 比較的近距離で爆発に巻き込まれた柚葉と犯人の侍は到底無事とは言い難い状態だった。

 爆風に数メートルほど吹き飛ばされ、協会前に置いてあった支援物資の山に衝突しぐったりしていた。

 

「問題ない、偶然古着の山に突っ込んだ故に見た目ほどではない」

「いやそれでも酷い怪我……とにかく、やせ我慢しないでください!!」

「むぅ、武士は食わねど高楊枝だと言うのに……」

「やっぱりやせ我慢じゃないですか!!」

 エステルは半ば意識が朦朧としている様子の柚葉と、完全に気絶している侍の男を地面に寝かせていた。

 

「メニャーニャ、メニャーニャあんた、大丈夫!!」

 そして彼女は負傷者が並べられる中で、軽傷ゆえに後回しにせざるをえなかった親友の者へと駆け寄った。

 しかし、メニャーニャは完全に気を失っているようで、エステルの呼び掛けに返答はなかった。

 

 

「────うろたえるな!!」

 爆発から十数分、未だ阿鼻叫喚の現場にビルーダーが現れた。

 王国のヒーラーや自分が育てた診療所の医師たちを連れて。

 

「負傷者の怪我の具合に応じて色分けし、治療の優先順位を定めなさい。

 務めて冷静に、情に流されてはダメよ、各々の職務を果たしなさい」

「これは酷い状況じゃ、うむ、任せろ」

「ええ、こんな時ですものね、情に流されてはいけませんわよね……」

 特に非常時に強いビルーダーがリーダーシップをとって、現場の治療の指揮を執り始めた。

 

「ビルーダー様!! マルちゃんが!!」

 デーリッチが悲痛な声音でビルーダーに助けを求めた。

 ヒールやレイズの魔法が効果が無い。手遅れに近い死の淵に瀕した人間の状態だった。

 

「落ち着いて、デーリッチ。

 ……情けないわ、いつまで寝ているつもりかしら」

 だがデーリッチに投げかける言葉と対照的に、ビルーダーのマルースへの言葉は冷徹だった。

 

「今のあなたに“次”など無い、起きなさい」

 その直後だった。

 うめき声の一つすら出さなかったマルースがぴくりと動いたのは。

 

「おぉ、我が神ビルーダー様、強壮なるこの身を授けていただいたことを今日心より感謝いたします……」

 そして虚ろながらも両目を開き、うわ言のようにそう呟いた。

 

「おいプリシラ、しっかりしろ!! マルちんが息を吹き返したぞ!!」

「処置をするわ、三人とも手伝いなさい!!」

「任せるでち!!」

 いったい何が起こったのか理解する時間も無いまま、三人はビルーダーの指示に従って治療を始めるのだった。

 

 ……ハグレ王国の戦いはまだまだ終わりそうになかった。

 

 

 

 

『 帝都防衛戦、その後…… 』

 

 

「……まず、先日の戦いにご協力いただき、帝都を代表してお礼を申し上げます」

 数日後、メニャーニャが帝都の使者として改めてやってきていた。

 

「皆さんの献身的な行動のおかげで、反ハグレ感情はそれほどでもありません。

 獣人連合軍の保有していた物資がこちらに提供されるおかげで、物資不足も解消される見通しですし……やれやれ、いったいあれだけの量をどこでため込んだのやら」

「それならよかったでち。

 うちとしてもこれ以上、帝国とハグレがいがみ合うような事態にならなくてよかったでちよ」

 メニャーニャの言葉にデーリッチも頷いてそう言った。

 

「ええ、これだけ我々の為に戦ってくれたあなた達が危険視されるなんて最悪の事態になっては不義理が過ますからね。

 報酬は先ほど渡した通りになりますね」

「たしかに」

 報酬に関してはローズマリーも納得する額を受け取っていた。

 

「あー、その、メニャーニャ。

 わざわざ忙しいあんたがこっちに来たってことは、本題があるんでしょう?」

 エステルがどこかぎこちない笑みでそう言った。

 

「はい、実は今日はまた別件でこちらにやってきた次第でして……」

 それに対してメニャーニャも彼女に対してどこか壁の感じる返答をした。

 

「えぇ、もしかしてまた戦いでちか~?」

「いえ、実は投降したハグレたちの処遇に上は頭を悩ませていまして……」

「ああ……かなりの人数が投降したみたいですからね」

「そうなんですよ、軽く千人以上のハグレが捕虜として帝都の近くに一まとめにされています。

 彼らをいつまでもそのままにしていられませんし、住人からすれば彼らが集団で一塊にされているのも恐ろしいはずです。

 彼らを食べさせる余裕も無ければ、住まわせる土地も無い。

 なので、丁重に彼らが通ってきたゲートを通じてお帰り願うことで上は合意したそうです」

「なるほど」

 メニャーニャの話にローズマリーは納得し頷いた。

 

「それだけの数だと、処罰するにも時間が掛かりすぎますし、代表者だけ罰するにしても共に戦った彼らの感情もある。

 帝都は面倒事はさっさと処理して内政に力を入れたいわけか」

「はい、そうでしょうね。ここ最近はずっと戦い戦いで税金も上がりましたし、物流の麻痺による経済的損失も計り知れない。

 とはいえ、数が数です。騎士団は万が一の為に帝都に残ってもらわないといけませんし。

 ハグレのことは召喚士ってことで、彼らの移送を押し付けられてしまったんですよ」

 最後は若干愚痴っぽく、メニャーニャは帝都の内情を語った。

 

「あ、じゃあつまり今回はその移送のお手伝いってことでちか?」

「ええ、そうなんです。こちらも念のために移送の際に古代兵器をちらつかせておくので、先日のように戦力的負担を強いることは少ないと思います。

 何分、人手が足りないので……どうかご協力お願いできませんか?」

「そう言うことなら全然大丈夫でち。

 敵対したとはいえ、同じハグレが居た方が向こうも安心すると思うし」

 と言うことで、デーリッチが賛同したことでローズマリーもその依頼を受ける方向となるのだった。

 

「ありがとうございます。

 すみませんね、何だか便利に使っているようで」

「こういう時はお互い様ですよ、そちらだって上から便利に使われているようですし」

 ローズマリーがそう返すと、メニャーニャは哀愁に満ちた笑みを浮かべたのだった。

 

 

 

「そうですか。パパの処遇はまだ不透明ですか」

「はい、流石に主導者ですし、野放しにはできませんからね。

 とりあえず先ほど話したハグレの移送には立ち会って貰う予定なのですが」

 会議が終わり、主要メンバーが解散した後、クウェウリはマーロウの処遇についてメニャーニャに尋ねていた。

 

「ところで、私を庇ってくれた彼、……マルースさんでしたか? 

 彼の容態はどうでしょうか?」

「マルースさん? マルースさんなら今は診療所に入院中ですよ」

「そうですか、わかりました。一応顔を出してみます」

 そしてメニャーニャは彼女に礼を言って、拠点を出ると近くにある診療所の方へと歩を進めたのだった。

 

 

 

「ほら、マルちん。新しいマンガ持ってきたぜー」

「お、サンキューヅッチー!! 

 いやぁ、入院生活とか暇すぎるんだよなー、マジ助かるわ」

 丁度その頃、入院中のマルースの病室にはヅッチー達がお見舞いに来ていた。

 

「何とか助かってよかったですね、マルースさん。

 あの時は本当に心臓が止まるかと思いましたよ」

「ほんとだよ、あの時のプリシラの取り乱しようったらなかったんだぜ?」

 お見舞いの定番のフルーツを持ってきてナイフでリンゴを向いているプリシラを見ながら、ヅッチーは彼に苦笑いを向けた。

 

「やれやれ、女の子を庇って死にかけるだなんて、なんとも先輩らしい。

 前に私と組んで死にかけた時も私を庇ってだったし、少しは自分の命を大事にした方が良いと思うんだが?」

 と、ジュリアに苦言を呈され全身包帯だらけのマルースも苦い表情だった。

 

「盾役のお前が言うなよ」

「私が戦う時は味方の十分な支援を前提にしている。

 行き当たりばったりとは違うからな?」

「俺だって戦術的に庇ってるだろ!! って、いててて」

「ああもう、まだ全然怪我が治ってないんですから、はしゃがないで」

 大声を出して体の怪我に響いて涙目になっている彼を諌めるプリシラ。

 

「ジュリアさんも、大怪我したばかりなんですからマルースさんにじゃれつかないでくださいよ」

「ははは、悪い悪い」

「こいつ絶対悪いと思ってないだろ……」

「大丈夫かー、マルちゃん……」

 病室なのに騒がしい面々に呆れたヅッチーが痛みに悶えているマルースに声を掛けた。

 

「ヅッチーのお腹すりすりさせてくれたらすぐ元気になるかも……」

「うわ……」

「ガチでドン引きされた……もう死の……」

 スッとロリコンから離れるヅッチー。

 ドン引きされたショックでいじけ始めたマルースだった。

 

「あーもう、いじけちゃったよ。

 これはもうプリシラがあの格好するしかないな」

「え? あの格好?」

「昔、かなちゃんが言ってたじゃん。

 妖精神さまが居る世界の妖精女王って、ほら!!」

「え、あッ、ええぇ!? あれぇ!!」

 ヅッチーがニヤリと笑いながらそう言うと、プリシラが真っ赤になって皮の剥けたリンゴを取り落した。

 

「ほう? 異世界の妖精女王とな? 

 もしやフリフリのゴスロリとかそんなんなのか?」

「いやいやそれがさ、腰巻ひとつで手ブラなんだってさ!!」

「うっひょぉお!! マジかよ!! 最高じゃん!!」

 ロリコン、エキサイトのあまり痛みを忘れてベッドの上で狂喜乱舞。

 

「おッ、本当に元気になったぞ。

 これはもう、やるしかありませんなプリシラ」

「ジュリアさんまで乗らないでください!! 

 もう、ヅッチーったら!!」

 羞恥心に耐えかねたプリシラが病室から逃げ出そうと扉を開けると、そこには白衣を着たビルーダーとメニャーニャが居た。

 

「あなた達、病室では静かにしなさい」

「「「はい!!」」」

 凄みのある笑顔のビルーダーの言葉に、瞬時に静かになる病室内だった。

 

「ビルーダーさん?」

「彼女もお見舞いしたいらしくてね、案内したのよ」

「ふーん……」

 プリシラはメニャーニャを一瞥して、ヅッチーに声を掛ける。

 

「ヅッチー、邪魔しちゃ悪いからそろそろ行こう」

「あ、そうだな、柚葉の見舞いにもいかないといけないしな」

 ヅッチーはプリシラが落としたリンゴを拾い、埃を払ってかじりながら彼女と共に病室から去って行った。

 

「私も長居しすぎたな、そろそろお暇しよう」

 ジュリアも空気を読んで退散することにしたようだ。

 入れ替わるようにビルーダーとメニャーニャが病室に入る。

 

「調子はどう?」

「全身メチャ痛いです……」

「その傷ではしゃげばそうなるわよ」

 やれやれ、とため息を吐くビルーダー。

 

「もう魔法でちゃっちゃと治してくださいよ……」

「何でもかんでも魔法ですぐに完治させるのは人体のリズムを狂わせるわ。

 人体の自然治癒力に頼ることも重要なのよ」

「わかりました……」

 ビルーダーは彼が頷くのを確認すると、痛み止めの薬を置いて病室を後にした。

 

「マルースさん、あのー、先日は助けていただきありがとうございました」

「ああうん、君が無事でよかったよ」

 マルースは痛み止めを水で飲み干しながら何とかそう返した。

 

「連中の処遇はどうなったんだ?」

「とりあえず、元の世界へ強制送還となりそうです。

 その為の要請をするために今日ここに来たわけなんですが」

「そうか、それならよかった」

 それを聞いて、マルースはホッと息を吐いた。

 

「あー、その、命の恩人に言葉だけのお礼もあれですし、何か私にできることはありますか?」

「うーん、別にそんなのいいんだけどな。

 それだったら、そのうちデートでもしてくれれば十分だよ」

「はあ、そんなことでよければ……」

 てっきり治療費あたりでも請求されると思っていたのか、メニャーニャは肩透かしを食らったような表情だった。

 しかし、それ以上は話は続かなかった。

 なにせ二人はそこまで接点があるわけでもないのだから。

 気まずそうな空気が流れる。

 

「おーす、マルースさん。少しは元気になったかー?」

 そんな時だった、エステルが病室に入って来たのは。

 当然、あ、と顔を合わせる先輩後輩。

 

「じゃあ、私はこれで……」

 メニャーニャはエステルの顔を見てそそくさと病室から出て行ってしまった。

 

「どうしたよ、エステル。喧嘩でもしたのか? 

 おじさんに話してみ? な?」

「……それが」

 エステルは少し意気消沈した様子でとつとつと話し始めた。

 

「あの子が目を覚ました時、当り散らされた、と」

「うん、召喚士協会の前であんなことが起きたのは協会が悪魔の巣窟だからなんだって。

 協会の前であんなことが起きても、怒る気も悲しむ気にもなれないって。

 他にも、まるで自分は必要とされてないみたいな言い方をして……」

「本質はそれじゃあねぇだろう?」

 彼はエステルの話を聞いて、戸惑いと困惑から抜け出せていない彼女をみやった。

 きっと、彼女も後輩のそんな姿を見てどうすればいいのかわからないのだろう。

 

「あの時、なりふり構わず自分が交渉に出ようとしたのは協会っていう箱ものを守るためだったのか? 

 違うだろう? エステル。あの子は楽しかった頃の思い出や、お前たちが帰る場所を守りたかったんだろう。きっと」

「マルースさん……」

「多くの女の子を見てきた俺には分かる。

 あの子は頼られることで自分を肯定できるタイプだ。本質的に自分に自信が無いから努力し自らを証明しようとする。

 お前があの子とこれからどう接したいかは知らないが、お前はお前らしくやってみればいいさ。

 何だかんだで、あの子はお前の良さを慕っているようだったしな」

「……」

 マルースの助言に、エステルは柄にもなく黙り込んで考え込み始めてしまった。

 

「まあ、好きなだけ考えればいいさ。

 ちょうどさっきデートの約束を取り付けたんだ。

 もしお前が失敗してもフォローぐらいはしてやるよ」

「抜け目ないなぁ、この人」

 それを聞いて、エステルは小さく笑ったのだった。

 

 

 

 §§§

 

 

 それから更に数日後、召喚士協会とハグレ王国合同のハグレ移送計画は実行に移された。

 ズブーブ大湿原からタンポポ山の遺跡への大移動はトラブルもあったが、結果的には無事成功した。

 

「ビルーダー様、結局あの召喚攻撃は作為的なものだったのでしょうか?」

 後日、ローズマリーは遺跡内で起こった事件を思い出しながらビルーダーの意見を求めた。

 

 その事件とは、ハグレ達の先頭に立って古代兵器と共に魔物を排除し安全を確保していたメニャーニャの周辺に突如として大量の魔物の召喚が行われたという一件だった。

 周辺を固めていたハグレ王国の面々は、その攻撃に対し一人先行し魔物の排除に向かったメニャーニャと合流しようとしてまた一悶着あったのだが、それは割愛する。

 

「私は敵意や害意は感じなかったわ。

 あの遺跡そのものに隠された装置の誤作動、或いは侵入者排除のトラップなのか、はたまた別の何かか」

「少なくとも、誰かが意図的に起こしたものではない、と」

「見た範囲ではわからなかったけれど、あの相互ゲートの維持に遺跡の何かしらの装置の力を使っていたのは確かのようね。

 あの場所自体に、召喚に関わる何かが既に存在していた可能性は非常に高いわ」

「なるほど、結局実際に調査しなければわからないということですか」

 二人の話を聞いていたメニャーニャが、そのように結論付けた。

 

「まあ、そのうち機会があれば細かく調べてみるのも悪くありませんね」

 結局彼女はしばらくの間、休暇を取ることにしたらしい。

 遺跡での一悶着の際に、エステルにほだされた結果だった。当分は彼女も王国の拠点で過ごすらしい。

 

 マーロウの身柄も、彼女が機転を利かせてハグレ王国の預かりとなった。

 先の戦争の功労者であり、この大陸にとってもはや一大勢力となりつつあるハグレ王国の戦争の主導者の身柄要求は帝都にとっても面倒事が一つ減ったという認識なのかもしれない。

 

「結局、一番得したのはお前かよ、プリシラ」

 ケモフサ村の処遇を聞いて、退院したばかりのマルースは呆れかえっていた。

 

「エルフ王国の件で貸したカネでケモフサ村を買うとか、濡れ手で粟どころじゃないな。抜け目ないよ、お前」

「はて、私は誰もが得する結果を望んだに過ぎませんよ。

 結果、帝都の税金は上がらず、私たちは帝都に近い中継拠点を得て、ケモフサ村の人たちは元の生活に戻れる。万々歳じゃないですか」

 涼しい顔で、タダでケモフサ村の土地を事実上手に入れた氷の魔王は嘯いた。

 

「そうだな、他は差し引きゼロの中一人だけプラスだもんな」

「まったく人聞きの悪い言い方をなさる」

 プリシラも妖精王国を皆に任せてハグレ王国に帰属するようになったので、この二人の会話は拠点の談話スペースで行われていた。

 傍から見れば妖精王国は事実上ハグレ王国の属国のようなものにしか見えないが、どちらの国のトップも気にしていないので相変わらずユルイ両王国だった。

 

「パパー、大怪我したって聞いたけど大丈夫ー?」

 そう、これは拠点での会話だった。

 だから戦争やらその事後処理やらで忙しかったので、マナが久々にこの時代にやってきたのだが。

 

「あ、プリシラちゃんだ!!」

「……パパ?」

「あれ、お前ヅッチーから聞いてないの?」

「ああそれなら教えない方が面白いかなって」

「おいこらヅッチー!!」

 プリシラに不穏な視線を向けられ、ヅッチーがそんなことを言うのでたまらず立ち上がるマルース。

 彼は慌てて、この間起こった不可思議な事件の顛末を説明する羽目となった。

 

「なるほど、マルースさんの娘ねぇ」

 プリシラは自分の膝の上にすっぽり収まっているマナの頭を撫でた。

 

「プリシラちゃん、いっしょにあそぼ!! 

 最近みんな忙しいから遊んでくれないんだもん!!」

「良いですよ、何して遊びましょうか?」

 そんなあっさりと仲良くなる二人を見て、不思議そうにしている新参が一人いた。

 

「にわかには信じられませんね。

 未来から自分の娘が家出してくるなんて」

「いやいやほんとなんだって、私やシノブとかもちょっとだけだけどこっちに来たし。

 シノブとか華奢なままなのに胸は今よりデカくなってて」

「ちッ」

「んぎゃ!?」

 仲良く並んで座っていた召喚士二人の片方が足を踏まれて悲鳴を上げた。

 

「ふーん、なるほど……」

「どうしたの? プリシラちゃん」

 何やらマナと騒いでいる二人の方を見比べているプリシラを見て、小首を傾げるマナ。

 

「そう言えばマルちん、マナジャムのおかげで未来の私はボンキュボンらしいぞ」

「ギャー!! 聞きたくない!! 知りたくない!! 

 絶対プリシラの仕業だな!! そこまでして俺に手を出させたくなかったのかあいつめぇ!!」

 プリシラはそんなことを叫んでいるマルースとヅッチーを見て、小さく微笑んでいたのだった。

 

 

 




大湿原は犠牲になったのだ、テンポの為の犠牲にな……。
今回は原作と変化した各々の情勢やら事情やらについてです。
これにて三章は終了となります。

次回、いよいよアナザーストーリーの開幕となります。
マルース君の世界の真相に迫る、オリジナルの話になります。
書こうと思っていた内容はすでに頭にできてるので、早めに書き上げられると思うので、出来次第投稿しますね!!!

次回予告!!
マルースがついにビルーダーの神域に踏み入れることを許された!!
しかし彼と同行するハグレ王国の面々に冷酷な女神の試練が待ち受けていた!!
そしてその先に、彼らが待ち受けていたものとは!!

次回三章アナザーストーリー、スーサイドヘル編
 『地獄巡り』

罪科は重く、決して消えはしない。
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