アナザー・アクターズ   作:やーなん

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訂正のお詫び。
設定資料集読み直してたら、リリィ女王四代目じゃなくて五代目でした!!
これからなるべく気を付けます!!



EX.美しき掃き溜め

『 各々の考察 』

 

 

「緊急会議を始めるでち!!」

 デーリッチは宿屋の広間にて、緊急の王国会議の開催を宣言した。

 

「さて、みんなも消耗しているところ悪いけど、情報の共有だけはしておきたい。

 各々、調べたり見聞きしたことを発表してほしい」

 ローズマリーは彼女の宣言を聞き届けると、そのように皆に口にした。

 

「まず、この世界の価値観や常識について。

 誰か分かったことを教えてくれないか?」

 ローズマリー達はあの後、宿屋に向かって宿を取り、皆を部屋に運び込んで消耗の激しい者を休ませ、動ける者に簡単な情報収集に当たらせたのだ。

 

「ではまず、私から発表させてもらいましょうか。こういうのは慣れていますので」

 まずメニャーニャが挙手しながらそう発言した。

 

「私とエステル先輩、あと福ちゃんとこの町の図書館に向かうことにしました。

 住人達に図書館の場所を尋ね、実際に足を運びました。

 図書館内は住人達に自由に解放されており、私たちも何本か本を借りられましたよ。

 中でこの町についての資料を読み解いたその後、住人に聞き込みをしてきた方々と情報交換し、そしてわかったことがあります。

 断言しましょう、────この町は、ディストピアだ」

 メニャーニャは目を細めて強くそう言い放った。

 

「みんな、落ち着いて。

 続きをどうぞ、メニャーニャさん」

 驚き、ざわつく面々を諌め、円滑な進行の為に事前に掻い摘んだ話を聞いていたローズマリーが先を促す。

 

「まず、図書のラインナップが極端に偏っている。

 ほぼすべてがビルーダー信仰に関する内容で、各種統計などを見ても明らかに政治的な調整や介入が見て取れる。

 典型的なディストピアのように格差社会であったり、社会的弱者の排除や粛清と言った記録などは見受けられませんでしたが、この町の住人は“ビルーダーの教え”が価値観の根底として存在しているようですね」

 メニャーニャはそう言って、借りてきた本を目の前に並べた。

 どれもがどうすれば信仰心を高められるかについて、と言ったようなタイトルだった。

 

「当然、指導者は町の議会や町長ではなく、ビルーダー教会の上層部になります。

 トップは“女神の智慧”とやらを得た大神官から選出され、事実上の最高権力者として振る舞うようですね。

 彼らの教義は、殺すな、奪うな、嘘を吐くな、善行しろ、弱者救済しろ等々、まあ一応私たちの善悪の価値観から離れるようなものは無さそうでした」

「なるほど、一先ずその辺にしておいてください。

 メニャーニャさん、消耗が激しい中ありがとうございます」

 お気になさらず、とメニャーニャはローズマリーの労いにそう返した。

 

「私から補足するなら、この町のビルーダー教会が絶大な権力を持っているのは理由があるわ。

 どうやらこの町の食糧の全てを賄っているのはその教会らしいのよ」

 エステルはそう言ってから、用意していた皮袋を封を解いた。

 

「それでこれがさっき教会から貰ってきたこの町の住人の、そして今日の私たちの夕食よ」

 彼女の開けた皮袋の中身は、いつぞやにビルーダーが食事当番の時に出してきた丸薬だった。

 それを見た数名が言葉にならないうめき声をあげた。

 

「一応、この町でも資料から農家が麦やお米、トウモロコシなどの穀物を栽培しているようなのですが……。

 それらはこの町のライフラインなどを維持する為の燃料として使用されているらしく……。

 そもそも食材から調理すると言った文化や概念が存在しないみたいなんです」

 続けて福ちゃんが渋い表情でそう付け加えた。

 

「料理本とかレシピ本の類も図書館には見当たりませんでしたしね」

「マジでちか……」

 メニャーニャの呟きに、悲壮な表情になるデーリッチだった。

 

 

「じゃあ次、聞き込みをしてきた面々の話をお願いしようか」

「はい」

 ローズマリーが会議の進行を促し、ヘルラージュが皆の視線を集める為に挙手した。

 

「どうやらこの町には、いえこの世界にはと言った方が正しいかもしれません。

 やはりローズマリーさんたちの懸念した通り、ここにはハグレの概念が存在しないようですわ。

 少なくともこの世界には人間種しかおらず、亜人や獣人の類は住人達の認識する範囲には存在しないようですね」

「なるほど、情報収集に君たちを行かせたのは正解だったか」

 ローズマリーはヘルラージュの報告を聞いて、念のために外見が人間種と変わらない者だけで行かせたことが正しかったことを悟った。

 

「一応、俺たちは旅芸人の一座で、マッスルとかの外見は特殊なメイクやら衣装だってことで通しておいたぜ。

 まあペットたちは秘境の珍獣だったり、ティーティー様は未開の地に住む小人族って感じで」

「非常に納得がいかんが、まあこの場では我慢しておいておくか」

 ブリギットの誤魔化しに物申したいティーティー様だったが、そこは大人の対応をするのだった。

 

「とりあえず、これが手持ちの素材などを換金した代金ですわ。

 私たちの滞在費用の足しにしてくださいまし」

「うん、確かに。本来なら先に宿代を工面したかったんだけど、体調が戻っていないみんなが多くてそちらを休ませることを優先したからね。

 宿のご主人のご厚意で貸切な上に支払いは後払いにしてもらえたけど、当面は滞在費用をどうにかする必要があるか」

 幸い食費は掛からないし、とローズマリーはヘルラージュから資金を受け取り思案する。

 

「もしかしたら、お金を稼ぐこと自体は容易かもしれません」

「と言うと?」

「この世界はどうやらマナエネルギーではなく、物を燃やして作る電力と言ったエネルギーでライフラインを稼働させているらしいのですが、それはつまりマナに対する理解がそこまで進んでいないことを意味するようでして」

「つまり、魔法使いが少ないということかい?」

「ええ、魔法は基本的に大金を出してビルーダー教会に子供を預けて専門の教育を施してもらわなければ適正すらも測れないような環境らしくて、魔法使い=教会所属の図式が成り立つようですわ」

「じゃあ、ヒールとかで怪我人を治したりすれば楽にお金が稼げるってことでちね!!」

 二人の話を聞いて、デーリッチがそう勢いづいたのだが。

 

「いいえ、怪我人の治療は教会が無償で行っているようですわ。

 彼らの権威に横やりを入れる行為は危険でしょう。

 ここは旅芸人と言う設定を生かし、魔法で見世物やらパフォーマンスをするのが無難でしょう」

「はぁ、そううまい話はないんでちね……」

 ヘルラージュの意見を聞いて、デーリッチは肩を落とした。

 

「あと、住人達がどういったものに関心があるのか流行などを調べてみたのですが、どの分野の教養を得るかなどのそんな話ばかりでしたわね。

 多少の価値観や文化の違いはあれど、皆さんビルーダー様の目に留まることを至上の目的と考えているようです」

「まさに、マルースさんの故郷って感じか」

「そうですわね」

 ニワカマッスルの呟きに、ヘルラージュも頷いた。

 この世界に住む住人の価値観や常識は、まさにマルースが時折語る彼の故郷そのものだった。

 

 

「で、そんなことわざわざ調べなくても知っているだろう当人はいつまでだんまりを決め込んでるのかしら?」

 そして、ヤエがやや棘のある言い方で大広間の隅っこにそんなことを言い放った。

 そこにはここにいる誰よりも暗くぼんやりとしているマルースが座り込んでいた。

 

「ヤエちゃん止めよう、流石に今つっかかるのは可哀そうだよ」

「……そうね、悪かったわ」

 当人から何も反応が無く調子が狂うのか、雪乃にもやんわりと諌められてヤエも素直に非を認めた。

 

「仮にこの場所がマルースさんに聞いた通りの場所だとして、全く同じかどうか検証する必要があったから、無駄ではないよ」

 ローズマリーもそのように彼をフォローした。

 

「そもそも、の話なのだが、この世界は本当にマルースの故郷なのか?」

「みなさんが見ていたようなまやかし、であると?」

「うむ、まやかしでは無いとは言い切れまい。なにせ奴自身、己の故郷の終末を見たというのだからな」

 と、かなづち大明神に答えたティーティー様だったが、彼女自身その言葉を言うのは歯切れが悪かった。

 

「じゃがまあ、今回はまやかしと言う線は低いだろうな」

「ええ、そうでしょうね。私たちが囚われたあの地獄が、個々人に対して的確にダメージを与える非常に効率的な代物でした。

 もしこの町自体がまやかしなのだとしたら、少々大掛かりで回りくどすぎる」

 メニャーニャの推察に、ティーティー様も頷く。

 

「それはどうかな、私が見た時、マルースさんの母親はあの人を息子だと認識した。

 十年経った息子がだぞ? おかしいだろ、そんなの」

 ジーナが訳が分からないと言うようにそう口にした。

 

「まあ確かに、十年会ってないのならそのことを言及するだろうし、十年の変化をまるで無かったかのように普通に接されれば困惑するのも当然か」

 アルフレッドも姉の意見に頷いた。

 

「仮にビルーダーさんがこの世界を一度滅ぼしたとして、それをもう一度元通りにする理由は何でしょうか?」

「それは実にイージーなクエスチョンじゃないのカ?」

 頬に手を当て悩ましげにしている福ちゃんに、イリスは何やら楽しそうに笑っていた。

 

「イリスさん、何か分かったんですか?」

「ザッツライト!! 実にシンプルな答えだろ? 

 ここは、そういう地獄なんダヨ」

 会議の推移を見守っていたゼニヤッタがイリスに尋ねると、彼女はいきいきとそう返した。

 

「この世界はな、似てるんだよ」

「似ている、とは?」

「お前らだって、来ただろう? 冥界に、だよ」

 イリスの答えをローズマリーは自分なりに咀嚼してみたが、答えは出なかった。

 

「おいおい、回りくどいのは悪魔らしくていいのかもしれないんだけどさ、もっとストレートに頼むよ」

 しびれを切らしたヅッチーが、答えを急かすようにそう言った。

 

「たまにな、冥界には一般ピープルが迷い込むことがあるんだよ。

 そうした人間は知能の低い最下級の悪魔のおもちゃになって魂を貪り食われて残滓だけになって、その辺に転がってたりするんだが。

 うーん、分かりやすく人間に理解しやすいように言うなら、死臭だナ。

 ──そう、この世界は死臭だらけだ」

 ……その言葉にゾッとしない者はこの場には誰一人居なかった。

 

「お前たち、あの地獄からこっちに抜け出せて安心してるんじゃないのカ?」

 ノンノン、とイリスは人差し指を立てて顔を左右に振った。

 

 

「ここは魂を残滓になるまで磨り潰す、転生すら赦さない地の底の掃き溜めだよ」

 この町は、あの無の世界以上の地獄である、と。

 彼女は実に面白そうに笑ってそう言ったのだ。

 

 大広間に、沈黙が舞い降りた。

 

 

「……さっきから聞いていれば地獄だの掃き溜めだの、お前らなにを言ってやがんだ」

 十数秒の沈黙を破ったのは、マルースだった。

 彼はまるでこの会議を聞いているのが耐えきれないとでも言うように立ち上がり、そう言い放った。

 

「ここは俺の故郷だぞ!! 

 この町並みも、あの教会も家も、母親も妹も全部、俺の記憶にある通りだった!!」

「ええ、ですが記憶にある通りだからこそおかしいんです。

 冷静になってください、マルースさん」

「俺は冷静さ!! 俺は帰ってきたんだよ、俺の元居た世界に!! 

 俺に与えられた試練を乗り越えたから、ビルーダー様は全てを御赦しになられたのさ!!」

「現実を見てください、逃避したい気持ちもわかる。

 だけどここで眼を逸らしたら今度こそあの冷徹な女神様から見放されますよ」

「お前らにビルーダー様の何が分かる!!」

「……分からないからこうしてみんなで話し合ってるんだろうが!!」

 努めて冷静で居ようとしたローズマリーも、我慢の限界だった。

 

「混乱しているのが自分だけだと思ってるのか!! 

 私たちの大半はここに来る前に見たくもないものを延々と見せられ続けられたんだ!! 

 それで重い体に鞭を打ってみんなの為に情報を集めてきてくれたというのに、唯一この場所を知っているあなたは検証に参加しようともしない!! 

 あなたは帰れたと思うなら勝手にそう思えばいい、だけど私たちはこれから帰る算段をしないといけないんだ!! 

 邪魔をするならさっさと帰れ!! 自分でも気づいている違和感だらけの実家にな!!」

「ローズマリーさん落ち着いて!! 言い過ぎです!!」

 言い争いにも幾つか種類がある。

 これは良くない言い争いだと判断して、かなづち大明神がお互いの姿が見えないように間に入った。

 

「はぁ、はぁ……」

「ロースマリーがこの調子じゃあ、これ以上の会議は無理そうでちね。

 じゃあ、続きは明日に!! 今日は解散、各々配給された食料を持って早めに休むこと!!」

 彼女から目くばせを受け、デーリッチは急遽会議の終了を告げた。

 

「ローズマリーも、今日は休むでち。

 多分、自分でも思った以上に消耗しているんでちよ」

「……そうだね、きっとそうかもしれない」

 そう答えると、ローズマリーはゆっくりと個室へと向かって行った。

 

「では男子はこの大広間の奥半分、障子を挟んだこちら側と個室が女子が使うと言うことで。

 しばらくは雑魚寝になるでしょうが、致し方ありませんか。ああ、この障子は基本的に開けないように」

 丸薬の配布が終わると、マーロウが男女の部屋割りを決め始めた。こういう気遣いが意外と大事なのだ。

 

「お客さんなんてめったに来ないからって、宿を貸しきりにしてもらえてよかったですね」

「地獄だと言う点を除けば、ここも平和で善良な人々が暮らす良い街なのだがなぁ」

 宴会目的の為の大広間まで宿泊の為に貸してくれた宿屋の店主に感謝しつつ、福ちゃんとティーティー様はそんな会話を交わした。

 

「マルースさん、あなたはどうするの? 

 ここに泊まるの? それとも……」

「実家の方に、戻るわ。仮に偽物やまやかしだとしても、忘れかけてた家族の顔は見ておきたいしよ」

「そう……」

 ヤエはそれ以上、何も言わなかった。

 

「あ、あのッ、マルースさん」

 踵を返して宿を去ろうとしたマルースに、雪乃が声を掛けた。

 

「私も、あのまやかしの地獄で家族に会えましたよ!!」

 ゆっくりと、顔だけを彼女に向けて胡乱な視線をマルースは投げかけた。

 

「そこにはハグレ王国の皆も居て、故郷の友達も居て、そんな嘘みたいに都合のいい夢みたいなところで」

 だけど、それを語る雪乃は悲しみに満ちていた。

 

「だけど、だけど、そんな素晴らしい妄想の世界だったけど!! 

 雪だるまキックだけは、──私の好きな物だけは無かった!!」

 その話を彼だけでなく、その場にいた全員が黙って聞いていた。

 

「最初は私だけ我慢すればいいかなって、だけど少しずつみんなに雪だるまキックの話を振ってみたりして。

 だけどそしたらみんな、何言ってるの? みたいな表情で。

 私、私……だから、全部はわからないけど、マルースさんの気持ち、少しはわかるよ」

 それは、彼女なりに励まそうとしての言葉だった。

 

「もしヤエちゃんが助けに来てくれなかったら、私も違和感を妥協したかもしれない。

 だけど一度でもこうして抜け出したら、もうあの場所に戻るだなんて考えられないし、耐えられない!! 

 だからマルースさんも、負けないで!!」

「……雪乃ちゃん、君は強くなったね」

 少女の精いっぱいのエールを受けて、マルースは少しだけ微笑んだ。

 

「本当に、見違えるほど強くなったよ」

 そう言って、彼は手を挙げてその場から去って行った。

 

 

 

『 各々の見た地獄 』

 

 

「みんな寝てる?」

「全然ですね」

「寝たらあの地獄の事、夢にでそうだもんな」

 真夜中、宿の消灯時間に大広間の女子たちはそんなことを言い始めた。

 

「話してみたら、案外楽になるかもよ」

「じゃあ、言い出しっぺのエステルからなー」

「ええー、まあいいけどさ。後からだんまりは無しだからな?」

 そのように釘を差しつつ、エステルは話し始めた。

 

「知り合いが全員、私のこと忘れちゃっててさ。

 シノブは素っ頓狂なことを言って魔王みたいなこと始めちゃうし、メニャーニャはハグレを機械みたいに虐殺しまくってるし。

 ……正直、しんどかったわ。どうやって独りで抜け出せたかも覚えてない」

 エステルは彼女に似つかわしくない弱音を漏らした。

 

「私もそうだなぁ。どうやってプリシラと抜け出せたんだかわかんね。

 私の場合は妖精王国の皆に処刑されて、私の後釜に座ったプリシラが王国を大きくしてたんだけどある時から急に失墜し始めて、やっぱり私の方がよかったってみんながプリシラを責めだすんだ。

 まやかしとはいえ、みんなのあんな姿を見るのはツラかったなぁ」

 と、ヅッチーもため息と共にそう胸中を吐露した。

 

「私は、帝国を倒して首相になったパパが献花する慰霊碑の中に閉じ込められて、パパが自責の念に苛まれるのをずっと見続けてたわ。

 何度も何度も手を伸ばそうとしたけど、身動き取れなくてどうにもできなくて」

「それはキツイなぁ」

 クウェウリの話を聞いて、エステルが自分の事のようにそう言った。

 

「ジーナ、起きてるだろう? そっちはどうだったんだ?」

「そっちから言いなよ」

「私は実にシンプルだったよ。

 傭兵としての名誉を手に入れていく代わりに、仲間を失い続けていくのさ。

 最終的にここにいるみんなも、誰一人居なくなったよ」

 ふぅ、とそう言ってジュリアは重いため息を吐いた。

 

「私はそんなつもりはなかったんだけど、私の作った武器がブランド化して世界中で有名になって、その武器を持った兵隊がうちの連中を皆殺しにするんだ」

「ブランド化か、ジーナらしいというかなんというか」

「いやだねぇ、有名になって他の鍛冶屋連中を見返したいってところを透けて見られてるみたいで。結局鍛冶師は男社会だからね」

 ジーナはどこか誤魔化すように愚痴をこぼした。

 

「……ヤエちゃんはどんな感じだったの」

「雪乃、もう遅いわ。寝なさい」

「ええー、みんな起きてるよ」

「別に大したことないわ。

 宇宙船に乗ってスペースヤエちゃん編が始動しただけよ。

 オリハルコン製の雪乃を相棒に、左手をサイキックガンに改造して悪の宇宙海賊組合相手に斬った張ったの冒険活劇よ」

「それちょっと危なくない!?」

「それは~まぎれもなく~ヤエちゃんさ~♪」

「それ以上はいけないよ!!」

 もう、と雪乃は誤魔化すのが下手な友人に苦笑するのだった。

 

 

 さて、障子戸を挟んで向こう側も、くしくも似たようなことになっていた。

 

「僕は首無し死体を延々と相手させられてたよ」

「うわ、それは嫌だなぁ」

「ある時、一人がやたらと小さい体を見て気づくのさ。これはデーリッチだって。

 そして倒したアンデッドの死体を確認すると、姉さんや王国の皆だったってオチ」

 まるで怪談のような内容をアルフレッドは吐き捨てるように言った。

 

「僕の場合は道具屋として大成功するんですけど、錦を来てザンブラコに戻ったらみんなが流行病で全滅してました。

 それからずっとゴーストタウンになったザンブラコを徘徊する感じで」

「それも嫌だなぁ」

 隣から聞こえる女子の話声からも、何一つ救いが無い。

 しかもそれが終わったら壊れたレコードのように繰り返しさせられる。

 まさに地獄だったのだ。

 

「ここの人たち、みんな親切でしたのに。

 あんな残酷な場所よりずっと恐ろしいところにいますのね」

「そうなのかもしれないわね」

 ラージュ姉妹はお互いに手を繋ぎながら、天井を見ていた。

 

「わたくしが話しかけていろいろなことを聞いても誰も嫌な顔をせずいろいろ教えてくれたのに、どうしてあの人たちが」

「さて、ね。でもきっと、その理由を知ることがこの世界の秘密を知ることに繋がると思うわ」

 ミアラージュはどこか確信を抱いていた。

 他の面々がそうだったように、何度も同じことを繰り返して魂を摩耗させるのはビルーダーの作った地獄の常套手段のようだった。

 つまり……。

 

「ヘル、覚悟しておいた方が良いわ。

 もしかしたら、あの性悪女神はもっと残酷な仕打ちを仕出かすつもりだから」

 返事がないので、ミアラージュは妹の方を見た。

 すると彼女はこの地獄の中に居てもすやすやと眠っていた。

 その姿に苦笑しながら、姉も目を閉じた。

 

 その手のぬくもりを感じながら、これから訪れるだろう絶望に立ち向かう勇気をもらうのだった。

 

 

 

 




次回予告

世界が壊れる。
まるで穴の開いた地図のように、虫に食われて朽ち果てる。

善良な人々を守るため、彼らハグレ王国は立ち上がる。
女神ビルーダーが彼らに与える試練は本当の局面を迎える。

次回、絶望の町

そして彼女たちは知るのだ。
ここがなぜ、地獄たるのかその所以を。
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