『 表層の景色 』
「ここはいいところですね」
「そうね、みんな良い人たちだし」
緊急会議の開けた翌朝、エステルたちはビルーダー教会に赴き、滞在費用を稼ぐための旅芸人の一座と言う設定を生かし興行の許可を貰いに行った。
教会の者達は怪しげな集団に何の疑いを持つことなく快く許可を出した。
善意を疑いたくはなかったが、少々気味が悪いほどスムーズに事が運んだ。
そうして今、ニワカマッスルが重量挙げなどをして住人達の歓声を浴びていた。
他にはハピコがウインドカッターで遠くからいろいろな物を真っ二つにしたり、ベロベロスが火の輪くぐりをしたり、地竜ちゃんと力比べをする住人達と言った光景も見られる。
「この調子なら、しばらくの間ここの人たちに飽きられると言ったことはなさそうですね」
「無駄に芸の幅が多い連中だしね」
私も火の玉でお手玉でもしようかしら、なんてエステルも楽しそうに口にした。
「これで、この場所が地獄でなければ、なんですけどねぇ」
「それなぁ」
「一応、さっき街を回ってみたところ、それなりに娯楽は充実しているようですね。
書店では小説の類も豊富でしたし、嗜好品の種類は厳選されているみたいですがお酒もありました。
だけど、正直私は気に食わない」
「ふーん、どうして?」
「だってそうでしょう? ここの人たちは与えられたものを疑いもしない。
そして疑う余地すら存在しない環境そのものが、どうしようもなく腹立たしい」
忌々しそうに語るメニャーニャの言葉を、エステルは黙って聞き届けた。
「それが、優れたモラルや統治の上で人々が幸福を享受していたとしても?」
それでも、エステルはそれを後輩に問わずにはいられなかった。
「どうでしょうか。私には、家畜の自由にしか見えませんけどね」
「家畜の自由、か」
エステルは敢えて後輩の刺々しい言葉を否定しなかった。
この世界は、この町は、自分たちが生きていた場所から言葉では言い表せない何かが欠けていた。
それが何なのか表現できないのを彼女はもどかしく思っていた。
「よーし、次は私が行くわよ!!」
エステルは考えているのは性に合わないとばかりに、芸を披露している面々の前に躍り出た。
「私の炎魔法を見ろー!!」
派手な彼女の魔法は、住人達を誰よりも驚かせた。
「お姉ちゃん、魔法すごかったよー」
「いやー、いいものを見せてもらった」
ぱちぱち、と見物客たちは惜しみない拍手を皆に送った。
「どうもどうもー、御心ばかりでよろしいので、こちらにお願いいたしまーす!!」
パフォーマンスを終えたエステルは愛想よく皮袋を広げて見物客たちの前に歩み寄った。
するとその意図を察した見物客のひとりが、おもむろに財布の中身から紙幣をごっそり取り出し、皮袋の中に入れた。
他の見物客たちも、彼に習って財布の中身を次々と皮袋の中に入れて行った。
「じゃあ、僕も」
「私も、おこづかい全部あげるー」
小さな子供たちも、ポケットに入れていた硬貨を皮袋に投げ入れた。
「え、あの、御心ばかりでいいんですよ?」
見物料をせしめようとしたエステルも、皮袋の中身がどんどん重くなっていくことに困惑した表情を見せた。
「いいんですよ、だってあなた達は逃れてきたのでしょう?」
「え?」
見物客の一人が優しげに微笑んでそう言うので、彼女は理解できず目を瞬かせた。
「僕らも、あんな風な魔法が使えるようになりたかったなー」
「そうだね」
「私も、最期に良いものを見られてよかった」
なぜ彼らがそんなことを言うのか、聞き出すことに成功したエステルたちはただちに宿屋へと戻ることになった。
§§§
「ここは、俺の馴染みの本屋だ」
マルースはデーリッチ達に町を案内していた。
「本当にビルーダーへの信仰に関してばかりでちね……」
店先に並べられている本のタイトルを見やり、デーリッチはそう呟いた。
「やっぱり本屋は止めて別のところに行った方が良いと思うな!!」
「そうでちそうでち!!」
「君たちは本当に……」
ローズマリーはデーリッチとヅッチーの調子を見てため息を吐いた。
「そんなんじゃダメだぞ、君たち。
たくさん本を読んで、多くの知識を得なければ立派な大人になれないし、ビルーダー様に智慧を授けて貰えなくなってしまう」
店の中で店番をしている青年が苦笑しながらそんなことを言った。
「おや、君たちはもしかして昨日来た人たちっていう。
マルース、あんたが案内してたのか?」
「ああ、そうだよ……」
マルースはやや複雑そうな笑みを浮かべてそう頷いた。
「……店長は居ないのか?」
「何言ってんだ、俺がこの店の店長だろ?」
「ああ、そうだったのか。悪い、変なことを聞いた」
マルースは踵を返して、店外へ出るとため息を吐いた。
「マルースさん、やっぱり」
「気を使わないでいい、あとでまとめて話すよ」
心配そうにしているプリシラに手を挙げ制し、他の三人が本屋から出てくるのを待った。
「何か買ったのか?」
「いえ、よかったら好きなのを持って行って良いと言われてしまって」
両手いっぱいに本を抱えたローズマリーは、すこし気恥ずかしそうにそう言った。
そう言えばこの子は本を集めるのも好きだったな、と思うマルースだった。
「なにやってるんだ、あいつ。
ローズマリーみたいなのが好みだったのか?」
まあ貰っとけ、と言ってマルースは既に店外で遊び始めている二人を見やる。
「本屋に続いて面白みのないところだが、次は教会に行くぞ」
「わかりました。
私たちはよそ者ですし、顔を出しておかねばなりませんしね」
「別に問題ないとは思うが、話は通しておいた方が良いからな」
そうして、マルースの案内で三人は教会の方へと向かった。
ビルーダー教会はこの町で一番の大きさを持つ建物だった。
外見こそは立派だったが、内部は特に華美な装飾などは無く、多くの信者が訪れていた。
そんな彼ら相手に、シスターや神官たちはそれぞれの業務をこなしていた。
その様子は、教会と言うより役所のようにも見える。
「神官さま!! 怪我人です!!」
一行が教会の中を見学していると、外から担架に怪我人を乗せた住人が駆け込んできた。
「た、大変でち!!」
「大丈夫だ、邪魔になる」
慌てて手伝いに行こうとしたデーリッチを、マルースは止めた。
実際、シスターたちはあっという間に処置を終え、ヒールを掛けて怪我人を治療してしまった。
「あいててて、もう大丈夫です。
ありがとうございます、シスター。ビルーダー様に感謝を」
「ええ、念のために今日は安静にしてください」
「ははは、そう言ってもいられませんよ」
怪我人は感謝の言葉を述べ、彼を運んできた仲間たちと共に帰って行った。
「シスター、相変わらずの手際だな」
「あら、マルースじゃない。おかえり」
知り合いなのか、マルースは治療を施していたシスターに声を掛けていた。
「後ろの人たち、昨日この町に来たって人たちよね?
あなたが案内しているの?」
「まあ、な。
滞在許可なんかは必要ないとは思うが、一応な」
「そうね、旅芸人の一座だって昨日来ていた人たちは言っていたけど、大神官長が何も言わないのならそれでいいんじゃない?」
「そうか、そうだよな」
「……あなた達」
マルースとの会話を切り上げ、シスターはデーリッチ達に向き直った。
「次の町へと行くのに必要なものがあるのなら言いなさい。
可能な限りは融通してあげるように言ってあげる。
でも、なるべく早い方が良いわ」
「あの、それはありがたいのですが、今のところ別の町に行く予定は未定でして」
「え? あなた達、逃れてきたわけじゃないの?」
シスターのその言葉に、面々は顔を合わせた。
「逃れてきた、とはどういうことでしょう?」
「どういうこと、って……」
シスターは眉を顰めたローズマリーたちの態度に不思議そうにこう言った。
「女神様の神判から、よ。
この町もあと二日で女神様の使者が訪れて全てを消し去っていくのよ?」
『 スーサイドヘル 』
「緊急会議を始めるでち!!」
その日の昼ごろ、再び宿屋で緊急会議が執り行われることとなった。
本来は夕方に行われる予定だったが、そんなことを言っている場合ではなくなったのだ。
「最初の議題は言うまでもないだろう。
かつて、マルースさんが見たという終末が二日後、いやもう丸一日後に迫っているという件だ」
ローズマリーは険しい表情で、皆の前にてそう言った。
王国の面々はもうすでに聞いているのか、ざわめいたりはしなかった。
ただ、顔色の悪い者は何名か居たが。
「偵察に出てくれたハピコ班、結果を報告してほしい」
「あい」
そしてハピコは顔色の悪い者の一人だった。
「急ピッチで飛んで見てきたよ。終末とやらの光景を。
私たちが入った門の方向から、カタちゃんがとんでもない数でこっちに押し寄せてきていた」
そのハピコの報告に、沈痛な空気が場を支配した。
「大まかな進行速度から計算したところ、明日の夜中にはこの町に到着しているでしょう。
そして朝にはこの町が地図から消えて無くなるのは確かでしょうね」
かなづち大明神が静かにそう付け加えた。
「何か、何か手は無いのか!!」
その空気を打ち破るように、ニワカマッスルが声を上げた。
「何とか進行を遅らせる方法は無いのでしょうか」
震えた声で、ヘルラージュが言った。
「……それをしたところで、意味は無いでしょう」
「ど、どうして……」
「だって肝心のこの町の住人達が、逃げる気など一切無いからですよ」
メニャーニャは冷静に、冷徹に、この状況を分析し彼女にそう言った。
「仮に私たちが全力であの使徒の群れに立ち向かったとしましょう。
それで何が変わるんですか? 朝には消える町が、昼になる程度かもしれませんよ。
この町の、この世界の終末は女神の不可避のシナリオなんですよ」
戦う意味など無い、とメニャーニャは語った。
「だけど、戦う意味が無いのと戦うこともできないでは意味合いが違うわ。
皆はカタちゃんと戦ったんでしょう? 戦って勝つ方法はあるのよね?」
「いえ、今回ばかりは無理でしょう」
ミアラージュの質問に、福ちゃんは首を横に振った。
「うむ、前回はあの使徒の権能を無理矢理引きはがした。
だが今回、この場所はそれを与える者の領域じゃ。無敵の守りを引きはがしても、再び付与されるだけじゃろう。
それにこの方法は、相手が一匹だったからできた裏技じゃ。何十何百もの群れに対してはどうにもなるまい」
ティーティー様が補足するようにそう話した。
「あれと戦うの現実的ではない、か」
思案するように顎に手を当てるミアラージュ。
「じゃあ、実際に戦った人物に話を聞いてみましょうか」
そのヤエの言葉に、皆の視線はマルースに向けられた。
「……俺の時は、もっと猶予があった」
大広間の壁に背を預け、どこか上の空ながら彼は言った。
「新聞を読んだんだ。あの時は各地で活躍している四人の英雄が居たんだ。
だけどあいつらの活躍はどこを見ても無くて、それどころか俺が身を置いたこの町の軍部も脆弱な衛兵が数十人程度の規模に代わってた。
俺も最初の半年ぐらいは、あいつらの進行を止められるんじゃっていろいろ試行錯誤して戦ったよ。
でもダメだった。そして女神さまに助けを請うた俺たちに、各所の指導者たちは言ったんだ。
女神さまは俺たちの滅亡を望んでいる、と」
そう話して、マルースは新聞紙を放り投げた。
その見出しには、『女神さまは我らの滅亡を望んでいる!?』と書かれていた。
「どうして、どうして町の皆は逃げないじゃん……?」
「……」
こたつドラゴンの問いに、マルースは答えなかった。
「私はビルーダー様のことをよくは知りませんが、あの方はこうやって私たちがどうしようもない状況に追い込まれもがき苦しむ姿を見て楽しむような女神なんですか?」
ふと、プリシラがそんなことを口にした。
「そうだよな、あの女神様は試練だって言ったじゃないか。
私たちを試しているんだったら、何か抜け道があるんじゃないのか?」
ヅッチーはこの状況下でもポジティブにそう言った。
「まあ、私も同感ですね。
半年程度で今のハグレ王国を作った皆さんですから、明確に私たちに時間を与えたくないという意図を感じられる。
マルースさんと時と今回の猶予の違いは、恐らくそれでしょう」
「なるほど」
女神の意図を推察するメニャーニャに、ローズマリーも納得したように頷いた。
「そう言うメタ読みはあまりよくないと思うけど、正直ムカつくわよね。
私たちに時間的猶予を与えなければ、どうにもならないと思われてるみたいじゃない?」
「そうよ、相手の思惑なんて知らないわ!!
目の前で滅びに瀕する人たちがいるのに、望まないからって助けないのは違うだろう!!
私はヤエさんと同じ気持ち!! ここで引くなんて悔しいじゃない!!」
反骨の意思を見せるヤエと、逆境でも闘志を捨てないエステルの二人。
「そうでちね、ハグレ王国はハグレ王国の正義を行うべきでち。
どんな絶望的な状況でも、デーリッチ達はどうにかしてきたでち。
今回も出来る限りのことをするべきでちよ、ビルーダー様が見ているのなら尚更」
「私も同意見だよ、デーリッチ。
……見ての通り、光明なんて何もない。それでも、デーリッチや私に付いてきてくれる者は挙手を」
ロースマリーの皆への問いは、今さらの話だった。
「…………」
ただ一人、マルースはそんなみんなを悲しげに見ていた。
§§§
それから翌日まで、ハグレ王国の面々は各々準備に取り掛かった。
避難を呼びかけたり、武器を準備したり、衛兵たちに協力を求めたりもした。
結果は、全てが無駄に終わった。
誰もが彼女たちを邪魔をしたりはしなかったが、協力したりもしなかったのだ。
時間は刻々と、終末へと近づいて行った。
そして、翌日の夜がやってきた。
「結局、ダメだったか」
ロースマリーの悔しげな声が、広場の指揮所に消えていく。
住人達は避難にすら応じなかった。町を守るはずの衛兵たちさえ、である。
彼らは自分たちの為に戦うと言う彼らに、ありがとう、と感謝の言葉を述べてくれるが、逃げるという選択は取らなかった。
理由は様々だった。
他の場所に行く当てがない、この町を捨てるなんて考えられない等々、誰もが死を受け入れていた。
そして、終末の使徒たちはもう町の城壁前まで迫っていた。
そんな折だった。
「あの!!」
ローズマリーの前に、数名の衛兵らしき者達が現れた。
「お、俺たちも一緒に戦います!!」
「え、本当ですか?」
これまで消極的な協力はあれど、本当にハグレ王国のしたいことを手伝おうとする者はこの町には居なかった。
「ここは、俺たちの町ですから!!」
「皆、諦めちゃってますけど、最期くらいはこうしてビルーダー様にちゃんと衛兵になったところを見せたいんだ!!」
「本当は、俺だって死にたくないです。この町が好きなんです!!」
「ありがとう」
その三人の若い衛兵たちは悲壮な表情だったが、ローズマリーは万感の思いで彼らの意を汲みとり感謝した。
「姉御、連中町の中へと入って来たぞ!!」
「わかった、私たちも行こう!!」
ハピコの空からの連絡に、待機していた面々と共にローズマリーは戦場へと向かった。
その光景を見て、さしものローズマリーも怖気づいた。
カタちゃん、そう慣れ親しんだ女神の使徒が群れを成して町を貪っていた。
人を丸呑みにできる巨大な口が空間を食い破る。
そうしてできた穴が自然に塞がると、その分の“距離”が消失した。
だから彼らの群れの奥は何もなかった。空も海も大地も。ただ虚無が広がっていた。
それはまさに、終末の光景だった。
彼らは移動すらせず、その場で空間を貪っている。
そうしているだけで彼我の間合いは縮んでいくのだ。
「姉御!! やっぱりこいつら、全然攻撃が通らねぇ!!」
すでにハグレ王国の面々が、どうにか終末を止めようと奮闘していた。
だが、やや魔法で進行が遅れる程度で、使徒たちはまるで意に介さない。
「とにかくできる限りのことをするぞ!!」
ローズマリーの号令に、皆の士気も上がった。
だが、使徒たちの進行は無慈悲にも続いて行く。
彼らの奮闘空しく、町はすでに半分近くが貪り食われていた。
「くそッ、どうにもならないのか!!」
「はぁはぁ、ローズマリーさん、皆の消耗が激しいですわ。ここはいったん後退するべきでは!?」
燃費の悪いヘルラージュが進言する。
先ほどから建物を崩してバリケードにしたり、爆薬を設置して遅延作戦などを試みているがやはり効果は薄かった。
「ローズマリーさん、大変です!!」
ローズマリーが難しい判断を迫られている時、後方で未だ避難を呼びかけていたメンバーの一人であるベルが血相を変えて駆け寄ってきた。
「どうした、ベル君!!」
「みなさんが、この先に集まって……とにかく誰か来てください!!」
彼の尋常じゃない様子に、ローズマリーも何名か呼び寄せ、ベルに付いて行った。
その先にある光景を見て、彼女らは絶句した。
女神の使徒たちは、町の端から真ん中へまっすぐと貪っていく。
そうなると空間がねじ曲がるような場所が出てくるので、そのバランスが崩れた場所は未知の崩壊現象が起こり、虚無の空間へと変貌する。
使徒たちはそうしてこの世界を虚無だけの場所へと連鎖的に置き換えていく。
その虚無の世界に、住人達は松明を持って一人一人順番に身を投げているのだ。
「こ、これは、これは何をしているんだ!!」
ローズマリーは怒りのままに近くに居た住人に掴みかかった。
「ああ、君たちか」
彼女に掴みかかられた住人は、淡く笑って返した。
「これはね、ビルーダー様にこの身を捧げているんだ」
「誰がそんなことをしろと言ったんだ!! お前たちの教義に、そんなものは無かったはずだぞ!!」
「そうだね。だけどどうしようもないだろう、この状況を。
女神様がこの世界を滅ぼすんだから、私たちもこの体をお返ししなくちゃならないと思ってさ」
何の疑いも無くそう思っている集団に、ローズマリーは寒気を覚えて手を放した。
「私たちは十分、善行を重ねた。
私たちはビルーダー様が約束された楽園へと向かうよ」
そうして、その住人の番がやってきて、彼は微笑んだまま虚無の底へと身を投げて行った。
彼で、最後だった。
恐る恐る、彼女は住人達が飛び降りて行った虚無の底を見た。
無数の亡者がぎっしりとひしめく、この地獄の正体を。
「うッ、おえぇ!!」
「ローズマリーさん!!」
えずき胃の中身を戻す彼女の姿を見て、慌ててヘルラージュが介抱しようと駆け寄り、ひえッ、と声を漏らした。
彼女も同じように地の底を見てしまったのだ。
「と、とにかく、ここを離れましょう!!」
ローズマリーを皆の協力でこの場から引き離し何とかその場を離れたが、離れた先はもうすでに主戦場になっていた。
そしてローズマリーは見た。
ハグレ王国の面々と共に拙いながら奮戦していた三人の衛兵は、使徒の触手に掴まれパクリと食べられたのを。
恐怖に引きつり、こちらに手を伸ばし助けを求めようとした彼らの悲鳴を聞きながら。
ロースマリーは、いやハグレ王国の面々は思った。
ああ、やっぱりここは地獄なのだ、と。
そして、この場所も空間のねじれが発生したのか、地面に亀裂が走り崩壊していく。
彼らは悲鳴を上げる暇も無く、虚無の底へと消えて行った。
§§§
「ローズマリー、ローズマリー、起きて!!」
ローズマリーは倦怠感に包まれながらも、目を開ける。
そこには、必死になって彼女を揺さぶるデーリッチの姿があった。
「デーリッチ?」
上半身を起こし、周囲を見渡せば彼女と同じように倒れている皆の姿が。
「嘘だろう……」
そしてこの場所は、三日前に自分たちが虚無の地獄から現れた場所だった。
「ちょ、ローズマリー、待って!!」
堪らなくなって、駆け出した彼女を追うデーリッチ。
そして、二人は見たのだ。
ついさっきまで、彼女たちが守ろうと戦った町が、三日前と全く同じように元通りになっている姿を。
「は、はは、本当に、本当にここは地獄だった。
俺の故郷は地獄だった!! 信じたく、無かったのに!!」
二人が皆を起こして、再びこの町にやってきた時マルースは、そんな悲痛な叫びをあげた。
次回予告
真実へと向かうハグレ王国の面々。
しかしその行程は凄惨で絶望に満ちていた。
それでも、彼女は、デーリッチは諦めない。
これくらい仲間がいるのだからへっちゃらだ、と。
そうして彼女たちは今度こそ、始めるのだ。
彼女たちの、ハグレ王国の戦いを。
次回、地の底の希望
彼女らの試練の果てに、女神は姿を現す。
今回のオリジナルストーリーについてのアンケートお願いします。
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面白い!! 続きが気になる!!
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シリアス描写がキツイ!!
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キャラの掛け合いが足らん!
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設定をもっと掘り下げて!!