アナザー・アクターズ   作:やーなん

9 / 59
最近アンケート機能があると知り、試しに一番下に設置してみました。
ご協力くださると嬉しいです。


9.継承 後編

「おらぁ!!」

 マッスルの屈強な肉体が本型の召喚装置にぶち込まれる。

 しかし、直前で何かに阻まれたかのように彼は押し返された。

 

「なるほど、攻撃は召喚魔物に任せて自分は完全防御形態か」

「こりゃあデルフィナ様も増援を欲しがるわけだ。一人でこの相手は無理だね」

 ロースマリーの魔法攻撃も、ジーナのハンマーもバリアに押し返される。

 

「だけど想像以上に硬いよ!!

 僕たちの攻撃力で、次の召喚までに撃破が間に合うのかな」

「こういう時に限って防御無視技を持つハオちゃんが居ないんだもんなぁ!!」

 アルフレッドや俺の攻撃もものともしない防御力に、俺も口の一つも言いたくなるってものだ。

 

「考えたって他に手は無いんだ!!

 少しずつだがダメージは与えている!!

 バリアの切れ目を信じて攻撃を続けるんだ!!」

 弱音を吐く俺たちにローズマリーが声を張り上げ士気を維持する。

 

 そうしている間にも、召喚装置の防衛機能なのか魔法がいくつもこちらに跳んでくる!!

 

「わわわ!! なんでデーリッチばっかり狙うでちか!! おかしいでち!!」

 そしてその攻撃対象の割合は、挑発をしているわけでもないのにデーリッチにばかり集中しているようだった。

 

「確かに妙だな……幾らなんでも偏っている。

 デーリッチを狙っていると言うよりも、これは――」

『デンジャー、デンジャー。

 Sキュウフウインソウチをカクニン。ジョキョをサイユウセンします。

 コウゲキモードにいこう。コウゲキモードにいこう』

 ローズマリーの言葉を遮るように、召喚装置から機械的な声が発せられる。

 それと同時に、召喚装置を覆っていたバリアが消えて行った。

 

「バリアを解いた!?」

「そうか、キーオブパンドラ!!

 それを恐れているんだ!! 同じ召喚装置として、格上の存在のそれを!!」

「ご丁寧に弱点を教えてくれるとは、親切な敵さんだぜ」

 期せずして光明が見えたことに、俺はにやりと笑った。

 

「ええぇ!? こ、これで何ができるっていうんでち!?」

「とにかく叩きつけちまえ!! 幸い、バリアは消えちまったみたいだからな!!」

 敵に狙われると分かってあたふたしているデーリッチに、俺はそう声を張り上げた。

 

「あ、あの、それってますますデーリッチが狙われるってことでは……?」

「安心しろ、魔法攻撃なら俺が何とかできる。

 俺も前に出てTPを溜めるから、お前の指示で俺を使え!! そしてあの召喚装置にぶちかますんだ!!」

「わ、わかったでち!!」

 俺はデーリッチの前に出て、彼女をかばうような立ち位置に入った。

 

 それと同時に、召喚装置も召喚にキャパシティーを割り振ったのか、どんどんとアンデッドたちが湧き出てきた。

 

「全体攻撃が出来るものは優先して召喚装置ごとアンデッドを巻き込め!!

 それ以外はアンデッドの撃破を優先し、デーリッチの道を作るんだ!!」

 俺は武器をぶんまわしながら命中率など気にせず敵を切りつけながら叫ぶ!!

 

 お互いに派手な魔法が飛び交う。

 異界から召喚された者たち同士が、壁となって背後を守る。

 

「マルちゃん、今でち!!」

「おう!!」

 機を見て飛び出そうとするデーリッチの呼びかけに、俺は装備していた装飾品を掲げた。

 それは、俺のかつての仲間たちの遺品の一つにして、元の世界では終末に立ち向かうための作り出された切り札のひとつ。

 これこそ、あらゆる魔法攻撃を跳ね返す、聖騎士の守護印だ。

 

「我らを見守りし叡智の女神よ、今こそ邪知暴虐を退けたまえ!!」

 俺の手に有る聖印に宿るスキルが発動し、こちらの強化魔法を無効化するはずの召喚装置の雷が跳ね返り、術者の元へと牙を向く!!

 

「今でち!!」

 デーリッチが飛び出す。

 死しても技の冴えを失わぬサムライを相手にするアルフレッドを横切り、恐るべき氷の魔法を操る鎖に繋がれた死者と立ち向かうジーナの横を抜け、彼女は召喚装置に肉薄する!!

 

「いけぇ、デーリッチ!!」

 技の反動で動けない俺が、その小さな背に声援を送った!!

 

「これで終わりでちッ!!」

 キーオブパンドラの至近距離からのフルスイング!!

 

 召喚装置は台座から天井まで打ち上げられ、その致命的な破壊によってこれまで生み出した悪夢に比べてあっさりとその機能を停止させた。

 

「よしッ、こっちは終わったね。デルフィナ様を助けるよ!!」

 道中で幾度も強敵として対峙したアンデッドの侍を難なく撃破し、こちらの召喚されたアンデッドの殲滅が終わったのを確認したアルフレッドが未だ他のアンデッドと相手をする勇者デルフィナの加勢に打って出る。

 

 それに俺たちも加わり、彼女との連携を以って残りのアンデッドたちを掃討したのだった。

 

 

 

 §§§

 

 その後、俺達は役割を終えて成仏しようと体が薄くなる勇者デルフィナに別れを告げることとなった。

 

 憧れの勇者と共闘できて情が湧いたのか、アルフレッドが未練たらたらな態度を見せたが、そこはジーナが姉の威厳を見せて優しく彼を諭した。

 そして、伝えることが有るなら、今のうちだよ、と。

 

 意を決したアルフレッドは、消えゆく彼女の自分はデルフィナに憧れて剣を取ったんだと告げた。

 自分以外の沢山の子供も同じように剣士になり、魔王亡き後の故郷は魔物が少なく平和だったのだと。

 

 それから多くのことを伝えようとして、しかしもう時間が無いことに狼狽える弟を見かねた姉が溜息一つしてに前に出た。

 彼女は、目の前に立っているのは昔彼女のパレードの時に転んで泣いている時にデルフィナが手を差し伸べて起こした相手なのだと言う。

 

 見違えるほど立派になったでしょう? 私の自慢の弟ですよ、と誇らしげに彼女はデルフィナに言い切った。

 だから彼女が守ろうとした世界は、アルフレッドが責任を持って代わりに守るのだ、と。

 自分が守らせるから、どうか安らかに眠ってほしいと。

 

 それを聞いて安心したのか、勇者デルフィナは先ほど意思疎通の為に「はい」はジャンプが良いのではと言うのを聞いていたらしく、軽くぴょんと跳んでから足取り軽く未練も残さずこの世から去っていった。

 

 ただ、その足元にバラが模られた紋章を残して行ったが。

 ジーナはそれをデーリッチの許可を取って拾い上げると、彼女はそれをアルフレッドに投げ渡した。

 

 自分は受け取れないと受け取れないと慌てる彼に、バカアルフレッド、とジーナは言い放つ。

 デルフィナ様は生きてる時はその美貌から命がけの追っかけも数えられないほどいたが、頭が無くなった彼女を地の底まで捕まえに行ったのはあんたが最初で最後の人間だよ、と笑みを浮かべて。

 

「――――誇りなよ。

 継承していくのは、別に強さだけじゃないさ」

 そう弟に優しく語りかけるジーナの言葉が、俺の胸に突き刺さった。

 

 俺は手元にある四つの仲間たちの遺品を思い浮かべた。

 ……俺は彼女たちから、一体何を継承したのだろうか。

 彼女らの遺品をいたずらに弄んで生き延びてまで、何を……。

 

 俺はそれからアルフレッドが王国に来ると言うまでの流れが頭に入らなかった。

 

 

 

 §§§

 

 

 それから二日後、俺はデーリッチに頼んで旧ポピー分社のハグレ召喚施設にある資料を片っ端から持ってきた。

 

 キーオブパンドラは人数や重量によって制限があるので、現地である程度仕分けをしてからもってきたので新聞紙の束が二つ分くらいに収まった。

 それからと言うもの、俺は寝食も惜しんで資料の残りと睨めっこしていた。

 

「マルースさん、あの資料を持ってきて一体何を探しているんですか?」

 見かねたのか、図書室を占拠されて不満なのか、ローズマリーが俺に尋ねてきた。

 

「あれだけの召喚装置、見よう見真似の素人の仕業とは思えない」

「確かに、その通りだと思いますけど」

「それにあの召喚装置は今の技術から言っても革新的な仕組みがいくつも取り入れられていた。

 何かしらの形で召喚士協会が関わってる可能性が高い」

「…………」

 俺の言葉を否定できなかったのか、ローズマリーは無言になった。

 

「仮にも俺の古巣が、こんな奴隷商人まがいのことに手を貸してたかと思うと胸糞悪いんだ……」

「……気持ちはわかります」

 以降、ローズマリーは俺に何も言ってはこなかった。

 

 

「やはりダメだ、重要な情報は殆ど処分されているようだ」

 それから数時間かけて出した結論がそれだった。

 

「こうなったら仕方がない。直接召喚士協会に乗り込んで問いただしてやる」

「ちょ、なにを早まった真似をしようとしているんですか!!」

 俺の決意を読書の最中に聞いてしまったローズマリーが慌てて立ち上がった。

 

「止めるなよ、マリちゃん。

 俺が昔に協会に手を貸したのは無辜の人々を巻き込む騒乱を鎮める為でもあった。

 それが俺の居なくなった後にこんなことしてやがったのなら許せるはずがない」

「その行動を、ハグレ王国としては許可できません」

「なぜだ!!」

「今ッ!! この王国の動向を帝都に注目されるわけにはいかないからです!!」

 俺の声音に応じて、ローズマリーの声も大きくなる。

 

「今の帝都に辺境に目を配る余裕はない。だからこそ私たちのようなハグレの国が成り立っている!!

 だけど一度彼らが私たちハグレの集まりを危険視すれば、吹けば飛ぶように私たちの居場所は消えて無くなる!!」

「俺がお前たちに迷惑を掛ける前提だってのか!!」

「あなたはもう、立派に私たちの仲間の一員だッ!!

 責任者として名前を貸している施設もあるッ、今更自分と私達は関係ないなんて言えると思うなよ!!」

 俺と彼女の言い争いに、なんだなんだ、と図書室の入り口から他の仲間たちが物珍しそうに入って距離を置いてこちらの様子を見始めていた。

 

「二人とも二人とも、喧嘩はダメでち。

 まずはデーリッチに二人の言い分を話してみるでちよ」

 大の大人と自分の親友がすごい剣幕で言い合っているのにも関わらず、デーリッチは平然と間に割って入って来た。

 

「聞いてくれよ、デーリッチ」

 俺はローズマリーと話していても埒が明かない為、話の分かるデーリッチに事情を話してみた。

 

「なるほど、行って来ればいいでちよ、マルちゃん」

「デーリッチ!!」

「勿論、うちの優秀な参謀と相談してからでち。

 感情のまま殴り込むんじゃなくて、クレバーに動くでち」

「だがッ」

「幾ら昔の古巣だからって、素直に話すと思うでちか?

 これだけの不祥事を。だったら相談して、どうやって聞き出すか考えるのが賢明でちよ」

 ローズマリーと俺は、デーリッチがしっかりと俺たち二人のすべきことを考えて最善を選べるように言うものだから、勢いを削がれて黙り込んでしまった。

 

「それじゃ、報告を待ってるでちよ。ふぉっふぉっふぉ」

 俺達の言い争いを快刀乱麻の如く解決したデーリッチは上機嫌のまま図書室を去って行った。

 その様子を見て、他の面々も安心したように出て行った。

 

「……仕方がない、国王命令だ。

 穏便に召喚士協会から情報を聞き出す方法を考えよう」

「ああ、そうだな。怒鳴って悪かったな、年下相手に大人気なかった」

「いえいえ、こちらこそ。

 感情的になったって何も解決しない問題でしたから」

 俺達はお互いに謝罪すると、召喚士組合にて情報を手に入れる策を練り始めたのだった。

 

 

 

 §§§

 

 

 それから三日後、俺は帝都の商業地区にある召喚士協会の前まで来ていた。

 俺はハグレだが昔、通行許可証を発行されており、気兼ねなく帝都へと入ることができる。

 

 俺は昔懐かしの赤レンガの建物に入ると、受付に先日手紙を出してアポイントメントを取った者だと説明した。

 

「はぁ? 今なんて言った?」

「ですから、ウォレッシュ様は現在多忙でして……」

「あの万年窓際席で椅子を温めてたウォレッシュの髭ジジイがどうして多忙なんだよ、言ってみろよ」

 しかし事前に連絡をしたのに、先方は居ないと来ている。

 一番暇そうなやつを名指ししたというのに、こいつらは馬鹿にしているのだろうか。

 

「とりあえず、呼ぶだけ呼んでくれ。昔馴染みが顔を出してるってな」

「は、はい」

 受付のお嬢ちゃんは俺に睨まれて慌てて逃げるように奥へと走って行った。

 ほら、やっぱり適当な対応してたじゃねえか。

 そして、程なくして。

 

「協会長、この男です……」

「はん、わしの昔馴染みと聞いて誰かと思えば、貴様かマルース」

「俺の耳がおかしくなったかな。万年窓際の見栄っ張り髭ジジイが協会長だなんて呼ばれてやがるぞ。

 ほかのいけ好かない傲慢ちきどもどうしたのかな」

 ウォレッシュのジジイを連れてきたお嬢ちゃんはそんな信じがたいことを言っていた。

 

「はッ、相変わらず口の減らない小僧じゃて。

 まあいいわい、奥に来るが良い。用件を聞いてやる」

「助かるぜ、俺もただじゃ帰れない身でね」

 俺はジジイに連れられ、二階の協会長の部屋へと案内された。

 良い部屋じゃねぇか。

 

「それにしてもあんたみたいな見栄っ張りなジジイが協会長とは。召喚士協会も末かね」

「ふん、他の誰も成り手がいなかっただけじゃわい。

 どいつもこいつも、責任を取ったり落ち目の協会に見切りをつけて辞めて行ったよ」

「そいつは賢い選択じゃねぇのか?」

 俺の軽口に、ジジイはもう一度鼻を鳴らした。

 

「別い悪い事ばかりでもない。わしがここで最古参じゃからな」

「そういう見栄っ張りが一番出世するってのが、世も末だって言うんだ」

「言っておけ。それで、わしに何のようじゃ」

「実は……」

 俺はジジイにヘンテ鉱山奥で見たことを話した。

 それを聞いたジジイは、あからさまに表情を変えた。

 

「あー、うーん、えー、急用を思い出したわい」

「逃げても良いが、その場合ハグレ戦争当時に協会がテンパってやらかした今じゃ批判される様なこと色々と新聞とかにぶっちゃけてもいいんだぜ?」

「わかったわかった!!

 代わりに別の者に対応させる!! その者に話を聞いてくれ!!」

「昔からそういう嫌なことはたらい回しにするこの組織の嫌なとこ、変わってないのな」

 俺は多少の失望を嫌味に混ぜて、退出しようとするジジイにそう言った。

 ……あの傲慢ちきどもの中では話が分かる部類だと思ったんだけどな。

 …………昔より声に張りが無かったな。あのジジイもジジイなりに苦労してるのか。

 

 俺がそうして待っていると、控えめなノックの後にその子は入って来た。

 

「どうも、一級召喚士のシノブと申します」

 ――その銀髪で華奢な少女こそが、俺の、俺以外の運命も大きく変える運命の渦の中心であることなど、この時の俺は知る由も無かったのだが。

 

 

 

 

 

 




★聖騎士の守護印
あらゆる邪知暴虐から仲間を守ると誓った聖騎士の聖なる印。マルース専用。
肉体は朽ちども、その魂はここに宿っている。(攻/防/魔防+10%/Sパラディンガード)
☆パラディンガード 消費MP15% 消費TP80
このターン、味方単体をかばい、自身にスタンと魔法反射を付与する。(速度補正+500)
邪悪な知識を退ける、聖なる叡智の守り。

このようにマルース君は専用装備によって強力な固有能力を発揮できるキャラクターという設定です。でもこの原作ゲームは状態異常対策とかで装飾品枠が埋まるので、決して万能ではない感じ。

いよいよ召喚士組を出せました!! 最初に彼女を出すのは意外だったでしょう?
アンケートにご協力くださると嬉しいです。それでは!!

この作品で期待している今後の話しの内容は?

  • オリジナル展開
  • 原作の綿密な描写
  • キャラ同士の掛け合い
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。