ハイスペックボディで2度目の人生満喫しようとしたら、黒服になってた 作:
さーて今日から本格的に黒服だ!
美人秘書も捨てがたいけど、ビシッとスーツキメてる黒服も中々魅力があるとは思わない?
打てば響くように、主が指を1つ鳴らせば、直様傍に控えて「ここに」って言いたい。言いたくない?
まぁこころはそんな風に黒服を使わないだろうけどね。
黒服の人と呼ばれてるもののSPだし。メインは身辺警護で、日本の治安なら視界に入らずとも十分な程だ。
いやーお父様について回って海外にもよく行ってたけど大変だったからねー。秘書が主な仕事とは言え実はSPも兼ねてるし。他にもちゃんとした専門の護衛もいたけど、少なくとも自衛できないと話にならないって訳よ。小国の王族とか大富豪との仕事もあったからテロやクーデターに巻き込まれた時用の対策までしてたんだよ。
日本マジで平和。
まぁそんな訳で基本的には私は裏方こっそりサポートで現場に出るのは不測の事態や人手が足りない時だけかな。なんだかんだ私他にもやること多いし。
勿論たまには様子見に行くけどね、こころの学生生活をこの目で見たい。
初日ってこともあるし今日は行くよ。学校の方にも話通しときたいこともあることだしね。
という訳で、着替えます。
まず、黒スーツに袖を通します。こういうカッコイイ服は気合入るね。
次に、カツラを被ります。何故かというと白髪は少し目立つ、皆黒髪だしね。制服と一緒で装いを統一することで連帯感を生むのだ。
そして最後に、サングラスをかけます。肌が白いのは仕方ない、流石にこれを隠すのは手間が掛かる。
はい完璧、これでどこにでもいる黒服の人完成です。
登下校は他の黒服に任せて、私は花咲川女子学園の理事長に会ってきます。
今まで黒服も学園の敷地内に入ってたけど、弦巻家の権力やら何やらでなぁなぁになっててキチンと話通してなかったみたい。
多額の寄付金を出してたり向こうの先生もどうしたら良いか分からないだろうし、天文学部が作られたのもそのへんに原因があるとのこと。
って訳で話つけてきました。
内容を簡単に説明すると、まず黒服たちが学園の敷地内に入る許可。分かりやすいように許可証も発行してもらう。
敷地内の隅っこの空きスペースをもらって詰所を建てる許可。この建物はこころが卒業時に撤去か、そのまま倉庫か警備員用に使いまわすかする。
代わりに私たちは学園に労働力を提供する。例えば出張や休暇で人手不足の時に、試験監督や自習の監督。駅から学園付近の警備。あとは可能なら部活動のコーチングとかもやってくれたら嬉しいとか。一応黒服の中には教員免許持ってる人もいるから問題はないね。
正式に決まったので後日生徒たちにも告知するって。
これでより柔軟な対応が出来るでしょう。
あぁ、私って有能だなぁ。ひと仕事終えて悦に浸るこの時間が好き・・・・・・
前世と違って造形が良いからついナルシスト気味になっちゃうのよね。
前世フツメンだったのにアニメのキャラかのような美形になったら皆こうなるよ、オシャレとか楽しいもん。あまりする機会なかったけど。
ともあれこれでようやく我が天使こころちゃんの学校生活を見守れるね!
誂え向きに丁度昼休み! 私の眼をもってすれば遠目からでも表情まで見えるのさ、ハイスペックと自分で言うだけあるよ。視力多分5.0とかいくよ。
どれどれ、おぉいい笑顔してますねー! 友達っぽい子に楽しそうに話しかけてる。
相手の女の子も迷惑そうな顔をしつつもこれは満更でもないヤツじゃないですかー。
分かるよ、こころは本当に楽しそうに話すから聞いてるこっちまで幸せになれるもんね。
昨日の話からも分かってたけどいい友達ができたみたい。本当に感謝しなければ。
中学では少し浮いていたり、少し疎まれてたらしいからね・・・・・・突飛な言動はあるけどちょっとしたお茶目じゃないか。
多感な時期だし中学生にもなるとひねくれた奴も出てくるんだよ。
変にクール振って大人に憧れたりね。
皆経験あるだろうけど、自分の黒歴史思い浮かべてごらん?
大体中学生くらいの頃じゃないかい?
何が言いたいかっていうとつまり、そういうことさ。
ちなみに私の中学の頃はね、すごかったよ。
ハイスペックな身体能力と相まって無茶苦茶してたからね。
剣道してたんだけどさ、やっぱ剣とか刀とか武道って厨二心をくすぐるというか。
漫画の技再現しようとしたりとか秘剣とか憧れるじゃん?
大会で日本一になったけど試合内容とか賛否両論だったし、型無視するし荒いしで品格云々がーって言われてたよ。
荒かったのは認めるがルール内で許されていることをしただけだ。私は悪くない。
いや、私の自分語りなんてどうでもいい話を戻そう。
そうこころはね、太陽なんだよ。
笑顔が眩しくて直視できないとかそういうのではなくアレね、存在がね。
陽の光が恵みをもたらす様に、こころは周りの人間を豊かにしていくの。
多少疎まれたりもするけどそれも結局一時的なもの、必要な存在なの。
とはいえ、太陽の眩しさに堪えられない人がいるというのも、太陽だけでは世界全てを照らすことが出来ないのも残念ながら事実だ。
中学生の時のこころはまさにこの状態だった。こういう言い方は心苦しいのだが、簡単に言うと独り善がりだったのだ。
このありがた迷惑とも言える部分は、家族としてこころに接する時間が少なかった私たちにも責任があるので偉そうに言えないんだけど・・・・・・
家族から十分に与えられなかったものを外に求めるのは当然なんだから。
けれども今は違う。
太陽が眩しいという人には優しい輝きを、陽の光が届かないという人には自身が映し身となって光を届ける。
陽の光を映して照らす月のように、こころに足りないものを補ってくれる。
そんな友達が、存在ができた。
『世界を笑顔に』
そんなの無理だって言う人も多いだろうし、夢物語だと鼻で笑う人もいるだろう。
でも私はそうだとは思わない。
今のこころならできるって本気で信じてる。
願わくば、私の存在がその夢を一助とならんことを。
◆ ◆ ◆
何事もほどほどに、それが私の信条だった。
勉強も授業に置いて行かれない程度にやって、孤立しない程度に友達を作って遊んだり、放課後にバイトしたり、そうやって漫然と高校生活を消費して大人になると思っていた。
私は別にそれで良かったし、一度しかない高校生活だからと気合を入れたりしなかった。
今まで通り、日々の小さな幸せを糧にこれからも生きていくんだと思ってた。
けれどもそんな私を嘲笑うかのように、高校というものにも慣れてきた頃、ある意味では人生のターニングポイントとも言える劇的な出来事が訪れた。
そう、なんとバンドを結成することになった。中学の頃の私が聞けば仰天するだろう、それほどに縁遠いことだったのだ。
勿論、私の中で大きな決意やキッカケがあったわけではなく、とある人物の突飛な行動に巻き込まれたのが原因だ。
「美咲ーっ! お昼よー! 一緒に食べましょうっ?」
昼休みに突入するや否や私のもとへ飛びついてくるのは、弦巻こころ。人呼んで『花咲川の異空間』である。
異空間と称されるだけあってその言動は理解の範疇になく、あれやこれやで私は気付けばハロー、ハッピーワールドの一員となっていた。
「はぐみは今日は部活のお友達と食べるみたいで断られてしまったのだけれど、花音も誘っておいたからもうすぐ来るはずよっ」
「はいはい分かったら少し落ち着こうね」
いつにもましてテンションの高いこころをなだめて私もお弁当を取り出す。
しかし花音さんも可哀想に、高校にもなると学年が1つ違うだけで先輩後輩という上下関係が中学の頃より明確に表れる。
なので昼休みとはいえ上級生が下級生のクラスにくるのは目立つ。まぁ逆のパターンよりはマシだけど。
こころは物怖じしない性格なので気にせず行けるだろうが私は上級生のクラスに行ってご飯を食べるなんて無理だ。
ここは1つ花音さんに頑張ってもらいたい。
「あれ? 今日はこころのお弁当なんていうか、すごい普通じゃん」
「そうなの! 今日のお弁当はね、お姉様が作ってくれたものなのよ!」
目の前にこころが持ってきたお弁当は少し大きいけど、よく見る2段重ねの普通のお弁当箱だった。
見た目に反してこころはよく食べる。だからいつもは重箱のようなサイズで中身もおかず1つ1つに手間を掛けられてるのがひと目で分かる程で、おそらく弦巻家で雇ってるシェフが腕によりをかけたものなのだろう。
それに比べて今日はどうだろう。
玉子焼にハンバーグにタコさんウィンナー。流石に全て手作りで冷凍食品なんかは見受けられないが私のお弁当と似通った、中身も出来も普通のお弁当である。
何があったのだろう、私にとっての普通などこころにとってはもはや異常だ。
いや待てお弁当に意識が行ってたがこころはなんて言っていた?
確か、おねえさまがつくってくれたとか・・・・・・?
って、お姉様ぁ!?
「え、こころちゃんってお姉さんいたの・・・・・・?」
私が驚愕してる間に、丁度このクラスに着いたばかりで今の会話が聞こえていたであろう花音さんが挨拶も忘れて疑問を口にしている。
「えぇ! いつもは忙しいお姉様なのだけれども今日は時間に余裕があったからとお弁当を作ってくれたの!」
「そうなんだ。だから今日のこころちゃんはいつもより元気だったんだね」
こころにお姉さんがいたなんて初耳だ。
どんな人なんだろう。やっぱりこころのお姉さんなんだしブッ飛んだ人なんだろうか。
でもこのお弁当を作ったと言われると所帯染みてるというか普通の感性を持ってるのかもしれない。
うーん、気になる。
それは花音さんも同じだったようでどんな人なのか聞いている。
こころは待ってましたと言わんばかりに嬉しそうに話しだす。
いつも通り擬音だらけの独特な表現で、要領を得ないが小さい頃に絵本を読み聞かせてもらったとか、美人だとか、バク転を教えてもらったりもしたとか。
おっきな男の人を投げ飛ばしたのを見たこともあるらしい。
それと、ここ数年はこころのお父さんの仕事を手伝って海外に行ったりしてたけど、昨日帰ってきてこれからはあの屋敷で一緒に暮らすらしい。
「ふふ、こころちゃんはお姉さんのこと大好きなんだね」
「もちろんよ! とーっても素敵なお姉様よ!」
まぁ、こころがこんなに慕ってるってことはいい人なんだろう。
結局どんな人か想像できなかったけどいつか顔を合わせることもあるだろうし、その時までの楽しみにしておこう。
みさここはいいぞ