ハイスペックボディで2度目の人生満喫しようとしたら、黒服になってた   作:

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4話 おやすみ

敷地内に詰所建てる許可取っておいて本当に良かった・・・・・・

今日みたいに雨が降っている時とかすごい助かる。

 

今までは外に車用意してたみたいだけど、あんまり長いこと置いてたら怪しいし迷惑だしね。

それに狭いし普通に不便。かといって傘さしてずっと見守っとけってのも酷な話。

 

こころが授業中はここから確認すればいい。詰所から教室の窓まで遮蔽物ないから望遠鏡とかで見える位置だしね。

一応GPSもつけてるからこっちの機械も随時確認してればそうそう問題はない。

休み時間だけは私たちも外に出て、こころたちの視界に入らない程度に見守ればいい。

 

そして、下校時や放課後は学園の警備に必要な人だけ残して、あとはひっそり周りを固めとけば完璧。

 

 

今日はお友達の香澄ちゃんと美咲ちゃんと一緒に帰るみたい。

こころが友達と一緒に下校するというだけで私は嬉しい。

昔はそこまで親しい友達もおらず車で送迎してたからね。

警備上の手間を考えると送迎した方がやりやすいけれど、こころが楽しい学校生活を送れるようにするために黒服がいるのだ。そのために掛かる手間なら寧ろ喜んで増えてもらいたい。

手間が増えるほど、こころが充実してるってことだからね。

 

 

でもねーこころ、雨の時は傘さそうね。香澄ちゃんも。

せめて私みたいになるべく屋根とか雨除けのあるところ通るとかしようよ。案外楽しいよ、こころたちの視界に入らずかつ雨に濡れない位置取りをしてるとなんかステルス忍者アクションって感じで。

 

しかしこころはともかくとして、香澄ちゃんもめっちゃ元気ね。美咲ちゃんはゲンナリしてるのに。いや、あれは雨だからってより気疲れかな。

振り回されてる感じすごいもんね。保護者みたい。

でもね美咲ちゃん、こころの保護者は私だ。譲らないよ。

 

 

おや、なんか太鼓の音がする。

どこからだろう、商店街の方っぽいな。

週末はお祭りするらしいし練習してるのかな。

 

 

あ、こころたちも太鼓の音を感じ取ったみたい。

どうやらこころの好奇心を刺激するには十分で、香澄ちゃんと走っていってしまった。

頑張れ美咲ちゃん。

 

 

目的地の神社に着きました。

それにしても、雨が止んでたとはいえ君たち速いね。全然息切らしてないし、テニス部だという美咲ちゃんでも息切れしてるのに。

 

ってことで会話が途切れてる今がチャンス。

ちょっと失礼するよ。君たち髪の毛濡らしたまんまじゃないか。

タオル用意してあるからささっと拭いてあげよう。こころと、はい次は香澄ちゃんもね。てかなにこの猫耳みたいなの。気をつけてたとはいえタオルで拭いたのに乱れないぞ。

あ、美咲ちゃん驚かしてごめんね。急に人が現れたらビックリするよね。

ついでだし君も少し汗かいてるから拭いてあげよう。いやいやお礼なんていいんだよ。お礼を言いたいのはこちらの方さ。

 

うん、これでよし。じゃあ私はまた離れて見とくから続きをどうぞ。

 

 

 

 

太鼓を叩いてたのはこころたちのお友達らしい。

と、も、え。巴ちゃんか。流石に会話が聞き取れる距離ではないので唇を読むしかない。

皆身振り手振りで話すから内容も想像しやすいしね。

 

なになに、こころも太鼓叩きたいと。そしてOKだと。

で、練習はまた明日と。なるほどね。

じゃあ今日はもう帰るだけだね。

 

 

ん? 深みにハマっちゃいそうって美咲ちゃん。

いいよいいよー、その調子でかわいいかわいいこころ沼にハマっていこう!

 

 

 

 

その後は無事に何事もなく帰路についたこころたち。

水たまりでパシャパシャ遊んではいたけどね。

 

家に帰ってきたこころにひとまずはお風呂に入るように言っておいた。

途中で一度髪は拭いておいたとはいえ服も濡れてるし靴なんてぐっしょり水を吸って重いくらいだ。

 

 

こころがお風呂入ってる間に私も着替えとこうかな。

雨の日は湿気もすごいからカツラ蒸れる。

しかし、やっぱりこころは黒服姿の私に気付いてないみたいだね。まぁミッシェルをクマと信じてるくらいだからそりゃそうか。

 

 

最近は晩ご飯時はこころが楽しそうに今日1日の出来事を話すのを聞く時間になりつつある。食事はついでって感じ、お互いにね。

私はこころと一日中一緒にいる気分だけど、こころ的には私と会って話出来るのはこの時間が中心だもんね。

たまに夜もお話したりもするんだけれど私も一応やることがあるし、それを分かってるこころも遠慮してる感じがあるんだよね。

 

ごめんね・・・・・・お父様が黒服しろって言ったくせに他の仕事も送りつけてくるんだ・・・・・・!

養子とはいえ私も『弦巻』だから、お父様と私にしか処理出来ない仕事があるから仕方ないことなんだけれども。

これもこころと一緒に暮らすために必要なことだから頑張ります。

 

 

 

仕事を片付け時間を確認してみればもう日付も変わろうかという時間。

私もそろそろ寝ようかなと思ったけど1つ気になることがあります。

という訳でゴー。

 

 

はい、きました。こころちゃんのお部屋です。

部屋を覗いてみると懸念してた通り。

やっぱりまだ起きてたのねこころちゃんや。

 

おや、何不思議そうな顔をしてるんだい?

こころは昔から楽しみなことがあると眠れない子だったからね。

明日は太鼓を叩くのが楽しみってご飯の時話してくれたでしょ? だから様子を見に来たのさ。

 

 

ほら、まずはこのホットミルクをお飲み。

私はココア。コーヒーだと次は私が眠れなくなるからね。

 

よしよし、次はベッドだね。

眠るまでおてて繋いでてあげるからねー。へへ、恋人繋ぎしちゃった。

 

うわー、久々に手を握ったけど相変わらず柔らかい。それにちっちゃい。

白魚のような手ってこころのような手を言うんだろうね。

それに比べて私はペンダコとか剣ダコがあるから少し硬い部分あるんだよね。このハイスペボディでも流石にそこまで融通利かなかったよ。

 

こころも懐かしいって言ってくれて嬉しいなー、ちゃんと昔のこと覚えてくれてるんだね。

うんうん、ついでに頭も撫でちゃお。

はー髪の毛さらっさら。極上品のシルクのような手触り、いつまでも触ってたい。

私得だ・・・・・・

 

 

そうやっているとこころも落ち着いてきたのか徐々に瞼が重そうになってきている。

女の子の眠そうにとろんとした顔って本当にかわいいよね、犯罪的。

 

 

 

おやすみ、こころ。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

ざあざあ、ばらばら

 

 

このところずぅーっと雨が続いているわ。

おかげさまで? 最近みんなすこしゲンナリしてるみたい。

 

雨が降ってるとお外で遊べないからかしら?

ふしぎよね。なんで雨が降ると外で遊べないって決め付けるのかしら。

 

あたしは雨の日もすきよ。

雨水が屋根を打つ音も、鏡のような水たまりも、歩くだけでいつもと違う感触が楽しめるのも。

普段は見つけられないような、いろんな楽しいがそこら中にあるんだもの!

 

こうやって、肌で雨を感じることもお外にでないとできないことだわ。

ずっと屋根の下にいるなんて勿体ないわ。

 

ほら、すこし探せばいつもは恥ずかしがり屋さんで姿をみせないカタツムリもお外にシャワーを浴びにでてきちゃうのよ。

 

 

「香澄! みてみて! ここにもカタツムリがいたわよ!」

「ホントだっ! このカタツムリ子供をおんぶしてる~! かわいい~!」

 

 

そうそう、今日は美咲だけじゃなくて香澄も一緒に帰ってるの!

美咲は濡れるのが好きじゃないから傘をさして後ろを歩いてるのだけれど、香澄はあたしと同じで雨の日が好きみたい!

やっぱり楽しいはみんなで共有したほうがいいわ。

 

 

あら? 美咲と一緒に雨の中を裸足で歩こうと思っていたのだけれど、それよりもっと楽しそうな音が聞こえて来たわ!

これが太鼓の音なのね! お祭りをやるときに鳴らすのだって!

 

 

「お祭り! とっても楽しそうね! あたし行ってみたいわ!」

「私も私も!」

「美咲! 香澄! これから行ってみましょうよ!」

 

 

あたしはお祭りは行ったことないけれど、香澄は行ったことあるみたい。

金魚すくいっていうのがあるのね! 楽しそうだわ。早く行きたいわね!

香澄は一足先に走っていったわ。あたしたちもこうしちゃいられないわ!

 

 

「美咲もほら! 一緒にいきましょっ」

 

 

美咲はのんびりやさんね、はやくこないと置いてっちゃうわよ?

待ちきれないから手を取って連れて行ってしまおうかしら!

 

 

 

さぁ神社についたわ!

お祭りはどこかしら? 金魚すくいも!

 

んー、残念だけれどまだやってないのね。

 

 

「失礼します」

「うわぁ!!」

 

 

黒服の人じゃない。どうしたのかしら。

あ、美咲ったら大きな声をだしてへんな顔してるわ! たのしそうね!

 

 

「そのままでは風邪をひかれてしまうかもしれませんので」

 

 

そう言うやいなや黒服の人は素早い動きであたしの髪を拭いてくれた。そうね、風邪をひいたら大変だものね。

あたしが終わると次は香澄の番でくすぐったいのか、わひゃーって言ってるわ。でもなんで黒服の人は首をかしげてるのかしら?

 

 

「奥沢様も」

 

美咲は傘をさしてたから濡れてないんじゃないかしら。と思ったら走ってきたから汗をかいてたみたい。

首周りを拭かれて驚いたり恥ずかしそうにしたり百面相だわ。

 

それじゃあスッキリしたところで奥にいきましょっ。

 

 

わ~、とっても大きな太鼓ね~。

巴もいるじゃない!

 

巴も太鼓の音に誘われてきたのだと思ったけれど、そうではなくてさっきまで太鼓の音を鳴らしていたのは巴だったのね!

お祭りに向けての練習だそうよ。

もう少し練習するから演奏を見ていってくれですって!

 

 

 

 

ソイヤーーーっ!

なんだかとっても元気がでる言葉だわ!

 

和太鼓の響きもステキであたし感動したわ。

これは皆元気になれそうね! あたしも太鼓を叩いてみたいわ!

香澄も叩いてみたいって言ってるし決まりね!

 

巴も明日からなら大丈夫ってOKをくれたし楽しみね!

 

 

 

 

お家に帰ったらお風呂にはいって、お姉様とご飯を食べて、いつもみたいに今日あったことをお話したわ。

明日から太鼓を叩けるってことを話したら頑張りなさいって!

 

夜になって、すこしお勉強したりハロハピのみんなとチャットで話してたりしたらもう寝る時間。

ベッドに横になって眠ろうとしたのだけれど、明日のことを考えるとわくわくして中々寝られないわ。どうしましょう。

そうだわ、ちょっとだけお星様を眺めてようかしら!

 

んー、もう日付がかわってしまうわ。もういっそこのまま寝ないでいようかしら?

ベッドでミッシェルのぬいぐるみを抱きしめてそんなことを思っていると、控えめな音とともに部屋の扉が開いたの。

こんな時間にいったい誰かしら?

 

 

「お姉様・・・・・・?」

 

 

そう、扉から顔だけだして白い髪をゆらゆらさせていたのは虚お姉様。

どうしたのかしら。

 

 

「やっぱりまだ起きてたのね」

「え、えぇ・・・・・・ごめんなさい。もう寝ないといけない時間ですものね」

「大丈夫、怒ってる訳じゃないわ」

 

 

夜更かしはダメだと叱られるかも、と思っていたらお姉様はあたしの隣に並ぶようにベッドのふちに腰をおろしたわ。

 

 

「眠れないのでしょう?」

「え・・・・・・?」

「何そんな顔をしているの? こころは昔から、楽しみなことが控えていると夜眠れなくなってたでしょう?」

 

 

変わってないのね、と頭を撫でられた。

恥ずかしくて、ついミッシェルのぬいぐるみに顔をうずめてしまう。

 

お姉様はすこし待っててと言うと部屋からでてしまった。

けれどほんの数秒後には両手にカップを持って戻ってきたわ。

 

 

「はい、ホットミルクよ」

 

 

外に既に準備していたってことは、お姉様はあたしが眠れずにいたことはお見通しだったみたい。

お姉様の持つ方からはあまい匂いがしてきた。ホットココアのようね。

じーっと見てたから欲しがってたと勘違いされたのか、ひとくちあげましょうかって差し出されたからいただいたわ。あまくておいしい。

 

 

お互いに飲み終わるとお姉様はカップを片付けにまた少し部屋を離れた。

戻ってくると、とりあえず横になるように言われたわ。

 

 

「こころが眠るまではこうしてましょうか」

 

 

そう言ってお姉様はあたしの手を握ったの。

眠るまで、という言葉に反応してしまって離さないとばかりに指を絡めてしまったわ。

けれども何も言わずに微笑んでくれたお姉様をみて、嬉しくてきゅっと確かめるように手を握っちゃった。

 

 

あたしよりもすこし大きな手。

雪のように真っ白で、それでいて力強くて、頭を撫でてくれる手。

ペンや刀をよく握ってきたからかすこし硬いところがあるけれども、あたしを安心させてくれるお姉様の手がだいすき。

 

 

「ずーっと前にもお姉様にこうしてもらったこと、思い出しちゃうわ」

「最近は、こうしてあげることもなかったわね。ごめんなさいね、こころ」

 

 

昔は今みたいにお姉様も一緒に暮らしていて、あたしが起きてる間はだいたい忙しそうでお家にいることも少なかったのだけれども、夜はお姉様も帰ってきていて何度か一緒に寝たいとねだったこともあったわ。

その時もこうして手を繋いでくれてたわね。

 

握っている手が、頭を撫でて髪を梳く手が、微笑んでくれる優しい笑顔が。

全部が懐かしくて、あたしの胸はふわふわして安心するの。

 

胸の中がぽかぽかして幸せで、このまま時が止まればいいのにと思ってしまう。

だんだん目も開けていられなくなって、もうすこしで夢の世界にふわ~っと飛んでいけそう。

 

 

 

「おやすみ、こころ」

 

 

 

お姉様が昔からしてくれるおまじないの感触をおでこに感じて、耳元に囁かれる声を最後にあたしは夢の世界に旅立ったわ。

 

 

きっと、今日はいい夢がみられると確信して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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