ハイスペックボディで2度目の人生満喫しようとしたら、黒服になってた   作:

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7話 大人になって授業に体育があったことの有難みを知る

いつものように晩ご飯の時に学校のことやその日あったことをこころが話してくれるんだけど、今日は体育祭の組み分けの発表があったんだって。

こころは白組のようで、こういった運動系のイベントでいつも一緒だったはぐみちゃんは紅組で別れちゃったらしい。

その代わり、美咲ちゃんや香澄ちゃんと同じ組で嬉しそうだった。

いつぞやの太鼓のメンツだね。まぁ巴ちゃんは学校違うし紗夜ちゃんは学年が違うけどね。

 

体育祭の準備や警備には黒服にもお仕事があるんだよね。

生徒の自主性を養うとかで生徒に任せてる部分も多いけど、女子高だしあんまり重たい物や大きい物を運ばせたりしたら危ないからね。

保護者や一般の方も観に来たりするだろうから、それに不審者が紛れ込んだりしないかチェックもしなければ。

 

 

私も黒服参加だから精々お弁当を作ってあげるくらいかな。

いやでも体育祭だし皆でおかず交換とかするかもしれないから私よりシェフに任せた方がいいのかなぁ。

 

 

 

 

それから数日を経て、ついに体育祭がやってまいりました。

やっぱりお弁当は作ってあげることにしました。ちょっと気合い入れて凝ってみたら思ったより時間が掛かって朝こころに渡せなかったけど。

こころ周りに待機してる役の黒服にお昼時に渡すように言ってあるから問題はない。図らずもサプライズみたいになっちゃったね。喜んでくれるといいな。

 

 

体育祭の始まりと言えば選手宣誓だよね。

えーと、確かあの子は香澄ちゃんと同じバンドの子だよね。

真面目な内容で良いと思うけど1年生に選手宣誓させるってすごいね。緊張してたけど様になってたよ。

 

最初の競技は徒競走か。

こころも徒競走に出るって言ってたからしっかり見とかないと。

順番は後の方って言ってたっけな。

 

お、選手宣誓の子だ。さっき調べたけど市ヶ谷家のところの子だったようだ。美竹家と並んで昔ながらの名家ってやつだね。

バンドではキーボード担当だとか。元はピアノを習ってたらしい。一応ピアノを嗜む身としてはいつか聞いてみたいな。

 

そして肝心の運動神経の方は、うん。よく頑張ってた。

私としては暴れる胸元がすごかったと言いたい。まぁそのようなご立派なものがあれば走りにくいでしょうな。

女子高で良かったね。共学なら男子にガン見されてたよ多分。

 

 

次は、香澄ちゃんとはぐみちゃんか! 

二人共運動神経良さそうだし見応えありそう。

 

 

おぉはぐみちゃん速いね~。圧倒的じゃん、こころよりも速そう。

それどころか私といい勝負できそうなくらいだ。

このハイスペックボディ、簡単に言えば個体値6Vだからね。それと争えるってすごいことだよ。

だというのに、はぐみちゃんあんまり嬉しそうじゃないね。どうしたんだろう? 

 

 

 

そしてついにこの徒競走のメインと言っても過言ではないこころの番が回ってきました。

うんうん、花咲川の異空間と言われてるこころだけれどこういうイベントでは人気者だね。

結構な声援が聞こえる。

 

さぁスタートです! 

 

こころ選手速い! 他の選手との差をグングン広げていきます! 

綺麗なフォームとそこから生み出されるスピードに観客の皆さんも感嘆の声をあげています! 

ちなみにこころに走り方を教えたのは私です。元々の体力も多い上に疲れにくい走り方もしてるから、一旦走り出したこころを追いかけるのは黒服たちも苦労してるようです。

 

まぁそんな黒服たちの苦労は置いといて、結果はなんと、1位です! 

流石こころ! かわいい! 素敵! 

美咲ちゃんとハイタッチ、というかもう抱きついてる姿もいいよぉ、私の目には少しばかり眩しすぎる…………

 

 

徒競走は終わり次の種目は玉入れ、私の知ってる子で出場してるのは、白組は美咲ちゃん。

紅組からはイヴちゃんが出場するようです。

 

始まって眺めていたらす、すごい子がいる…………

美咲ちゃんと小動物みがある子で玉を集めて背の高い子に渡してるんだけど、同じテンポ、同じフォームで淡々と投げ入れている。

カゴに玉を入れるって言ったら簡単そうに聞こえるけど、狙ったとこに物を投げるのは想像以上に難しい。

それを機械のごとく当たり前のように入れていくとは…………恐るべし。

 

当然、白組の勝利となった。

こころの徒競走や玉入れの勝利が印象的だったけれど、徒競走は紅組優勢っぽかったし、全体としては紅組が少しリードってとこかな。

 

 

 

さっきの2人三脚までで午前のプログラムは全て消化したのでお昼休憩だ。

こころお弁当喜んでくれるかなー。私はささっとご飯食べて今のうちに午後の準備しないと。午後にはチアリーダーのダンスもあるみたいだしちょっと気になるし見てみたいよね。

 

と思ってると黒服の1人が近づいてきた。

ん? 2つのお弁当を手渡される。

これ片方は渡しといてって言ったお弁当じゃん。もう1つは私の分? 

それでそれで、え? お昼の仕事は任せてくれていいから私はこころのところへ行っていいって? 

マジ? 最高かよ君たち。決めたよ、その仕事ぶりを称えてお給料上げておく。

 

 

黒服姿のままだとアレだからって着替えの私服も用意してくれてた。日差しも強いから私が普段使ってるサングラスまで。

黒服たちも成長したなぁ、私は嬉しい。

 

 

とはいえこころの元に行くのも緊張しちゃうね。だって今美咲ちゃんと香澄ちゃんだけじゃなくて他にもお友達いるんでしょ? 

実際はどうあれこころ以外初対面みたいなもんだし急に姉ですってお弁当届けに行っても変じゃないかな? こころと似てる訳でもないし誰? ってならない?

もう近くまで来たけどなんて声掛けよう。

 

 

迷ってる間に気付かれてしまった。

あぁ、誰って思われちゃってる。ごめんよ、髪の色同じだけどイヴちゃんのお姉さんじゃないんだ私は。

 

そんな中こころがお姉様! って私の元に来たからお友達がビックリしている。

そうなんです。私はこころのお姉ちゃんなんです。お弁当を届けにきたんです。

 

すると私も自分の分のお弁当持っているのを見て香澄ちゃんが一緒に食べようと言ってくれた。

こころもそれに乗っかり、他のお友達もOKしてくれたのでご一緒させていただく運びになり申した。

女子高生に囲まれてお弁当を食べれるなんて、感無量です。

 

当然話題はまずお弁当になるんだけれど、そりゃ今持ってきたばかりだしこころのお弁当に注目するよね。

自分では上手く作れたと思うけど緊張する。こころはワクワクしているみたいで、それ~と掛け声と共に蓋を開ける。

 

中を見たこころは歓声を上げて喜んでくれた。

そう、こういうイベントでのお弁当と言えばキャラ弁だよね! 

そしてこころにキャラ弁って言ったらそりゃミッシェルしかないよね! 頼むからネタ被りしてくれるなよ! 

 

 

私が作ったと聞けば香澄ちゃんを始めとしてすごいとかかわいいとかめっちゃ褒めてくれる。

そんなに褒められるとお姉さん照れちゃうよ。

 

でもそれが会話の取っ掛りになって、お昼休みはこころたちと楽しい時間を過ごさせてもらった。

 

 

 

これで午後からも頑張れます! 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

さぁ! 体育祭が始まったわよ! 

みんなで楽しみましょう? 

 

最初の競技は徒競走! 

あたしもこれに出るのよ。それに香澄も! 

組は分かれてしまったのだけれど、はぐみも出るらしいわ。はぐみはとっても足が速いのよ。一緒に走れたら楽しそうね。

あたしもお姉様に褒められるくらい走れるのだし間違いないわ!

 

 

と思っていたのだけれど、はぐみと走ることになったのはあたしじゃなくて香澄だったわ。

香澄もとても頑張っていたのだけれど、はぐみはびゅーん! ってとても速かったの! 

 

けれどはぐみは走り終わったあと複雑そうな顔をしていたわ。

きっと、はぐみは優しいから自分が勝ったことよりも負けた人たちのことを考えてしまってたのね。

でもね、はぐみ。楽しむということに勝ち負けは関係ないのよ? 

勝ったから楽しいのではなくて、頑張ったからこそ楽しさを感じるの! 

 

 

お姉様も昔に言っていたわ。楽しむに勝る努力はない、って! 

だから頑張った人はみーんな楽しくていいの。

それを教えるのは簡単なのだけど、はぐみは自分で気付けるわ。

だって貴女は世界を笑顔にするハロー、ハッピーワールドの一員なのだもの! 

 

 

そんなことを思っていると次はもうあたしの番。

スタートの位置につくとみんなの応援が聴こえてくるわ。

この声が、もっとあたしに頑張ると楽しいをくれるの。

 

そして一緒に分け合う人がいると胸がふわってするのよ。

 

 

「美咲ぃ! あたし、とーっても楽しかったわ!」

「はいはい。すごかったですよー、っとと」

 

はいたーっち! のつもりが勢いあまって美咲に抱きついてしまったわ。

しっかり受け止めてくれてありがと美咲っ。

 

 

 

 

徒競走や玉入れ、2人三脚と順調に種目が進んでいってついにお昼休憩だわ! 

おなかがぺっこぺこよ! 

お弁当は黒服の人が届けてくれると言っていたけれどまだかしら? 

 

りみがみんなで食べるためにシートを敷いてくれてその上に座り、香澄や美咲たちはお弁当の用意を終えてしまったわ。

 

 

「あれ? こころんお弁当は?」

「黒服の人が持ってきてくるのはずなのだけれど、来ないわね」

 

 

お腹でも痛くなってしまったのかしら? 

そんなことを考えていると香澄とたえの視線が私の後ろのほうにいったわ。

 

 

「もしかして黒服さんじゃないけど、あの人かな? お弁当持ってるみたいだよ」

「あぁ、あのなんかうさぎっぽい人」

 

 

うさぎっぽい人? 

不思議な人ね、りみみたいな人かしら? 

 

 

「でもイヴちゃんのお姉さんの可能性もあるかなー?」

「確かに少し戸惑ってる感じもするね」

「それよりも見てあの白い毛並み、いいツヤしてるよ」

 

 

 

うさぎっぽい人っていうのは雰囲気じゃなくて髪の色だったのね。

それに、イヴにもお姉さんがいたのね。どんな人なのかしら。

あたしの中で白い髪と言えば虚お姉さまが頭の片隅によぎるけれど、こんな場所にいるはずがないと思い直して後ろを振り返ってみる。

 

 

そうして振り返った先にいたのは、どれだけ遠くにいても見間違えることはずなんてない大好きな人だった。

その姿を捉えただけでうれしいが胸いっぱいに広がっていく。

 

 

「お姉様!」

 

 

気付けば跳ね上がるように立ち上がってお姉様のもとに駆け出していた。

うれしくてうれしくて、香澄たちの驚く声もどこか遠く聞こえるくらいだったわ。

 

 

「はいこころ、お弁当よ」

 

 

目の前にたどり着くとお姉様は少しだけ居心地悪そうにしながら手に持ったお弁当を差し出してきたわ。

きっとお姉様はここにいる自分が場違いだと思っているに違いないわ。

あたしが一目見ただけでこんなにも舞い上がってしまう程なのに、場違いなんて有り得ないのに。

 

どうして、なんでここに。そんな疑問は浮かぶそばから消えていくわ。

学校という場にお姉様がいるというだけで、うれしいがあふれて笑顔になっていくのが分かるわ。

 

 

お父様もお姉様もとても忙しい人。

小さい頃からお屋敷にいる時間は短くて、一緒にお外にお出かけなんて数えることが出来るほどしかしたことがないわ。

それでもお父様は会えない日々が続いても、あたしにお手紙を添えてプレゼントを贈ってくれたりしてくれているの。

お姉様も今では毎日一緒にご飯を食べてくれているし、この前なんてあたしのお休みに合わせてくれて2人でお出かけをしてくれたの! 

 

2人ともあたしのことを大切に思ってくれているのは知っているわ。

それなのに、学校の体育祭に来てほしいだなんて言って困らせること、言えるはずがないわ。

 

 

今日だって、時間を見つけてこのお弁当を渡しに来てくれただけで、すぐ帰ってしまうかもしれない。

それでも、ただ会いに来てくれたと言うことだけであたしがしあわせな気持ちになるには十分過ぎるわ。

 

 

「その、今日のお弁当も、私が作らせてもらったの」

「まぁ! それはと~ってもうれしいわ!」

 

 

あたしはお姉様の作るお弁当が大好きなの! 

いつものシェフが作るものの方が綺麗なのだけれど、お姉様のはなんだかとってもあたたかいの。

 

このままお話していたいのだけれども、あまりみんなを待たせるのも悪いわ。

だからお姉様もそんなに急いでいる様子には見えないから少しだけ勇気を出して聞いてみたわ。

 

 

「お姉様、少し時間はあるかしら?」

「えぇ、お昼休憩の間くらいなら大丈夫よ」

「そうなのね! 良かったわ! あたし、美咲たちにお姉様のこと紹介したいって思ってたの!」

 

 

あたしはそう言ってお姉様の手を取って美咲や香澄たちの待つところへ歩き出す。

美咲はあたしにお姉様がいることは知っているけれども、会ったことはないからどんな人か興味を持っていたわ。

いい機会なのだし、他のみんなにもあたしのお姉様はこんなに素敵な人なのよってことを知ってほしいわ。

 

 

 

あたしとお姉様は血が繋がっていないのだから似てないの。だから見た目で姉妹だと分からないのは仕方ないわ。

でもね──虚お姉様はイヴのお姉様じゃなくて、あたしのお姉様ってことをみんなに覚えてもらわなくちゃね! 

 

 

 

 

そして、お姉様を紹介したあとはみんなで一緒にお弁当を食べることになったの。

楽しい時間はあっという間で、お昼休憩が短く感じたほどだけれど、この時間はあたしにとっての宝物だわ。

 

これからも、こんなたのしい思い出をみんなでもっとも~っと作っていければ最高ね!

 

 




こころは勿論尊いけれど、みさここも尊い

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