ハイスペックボディで2度目の人生満喫しようとしたら、黒服になってた   作:

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今更だけど主人公の説明回みたいな感じ。
タイトル通りハイスペックなんですよと。


7,5話 黒い服

弦巻家が雇い入れる人間は皆がエリートであり、事実そう呼ばれてきた者も多い。

屋敷で働くメイドや使用人たちにも教養や品が求められ、直接的間接的にあらゆるサポートをこなす黒服ともなれば弦巻家で働く人間の中でも特に高い能力を持つ人間である。

 

一流の学府を卒業し、常に研鑽し続けてきた者たちだけが黒服になれる。

だからこそ弦巻家から支給される黒服に袖を通したばかりの新人は自意識が高く、更に上を目指そうとするものも多い。

 

しかしそんな新人の黒服には洗礼というべきか、プライドを折られる機会が2度あると言われる。

 

 

1つは環境。弦巻の人材は全国どころか全世界からエリートと呼ばれる人間が集まる。

多くの1番が集まれば自然と格付けは行われる。そこで自らは井の中の蛙だと知る者が大半を占める。

 

仮にその環境の中で上位に位置したとしても、次の機会で全ての者が例外なく長くなった鼻っ柱を折られることになる。

それは弦巻家の長女であり養女である弦巻虚お嬢様の存在だ。

 

事実として、最高学府を主席で卒業しエリートの集まる黒服。その同期の中でも1番で自分以上に優れた人間がいないのではないかと思っていた私などがいい例だろう。

御当主様の実子であるこころお嬢様はともかく、養子であり有名な大学どころか高校にも通っていなかった中卒だというではないか。

御当主様付きの秘書として有能さを発揮していると言われても、それ以前の経歴を見れば下に見てしまうのは当然だった。

 

が、今のように本家勤めでなく御当主様と世界を飛び回っていた時期でも、短い時間ながら我々を指導して頂ける機会があった。

見た目が良く、同性でも見惚れる程の美人であることは認めていた。だからこそ見栄えが良いから御当主様の傍にいられるだけで、実際はどの程度出来るものなのやらと上から目線で思っていたが、その僅かな指導の時間だけで私は虚お嬢様に能力でも劣っていると認めてしまった。

今思い返せば恥ずかしいばかりだ。

 

上には上がいる。

ならばその頂点は誰だ? と言われればそれは虚お嬢様のことを指すのだろう。少なくとも弦巻家にいる黒服たちはそう答える。

それ程までに虚お嬢様のスペックは高かった。

学力、知識、マナー、品。集中力、記憶力、洞察力。身体能力といったあらゆる能力が優れており同じ人間として生まれながらこうも違うのかと思ったものだった。

 

弦巻家の屋敷に勤めて長い古株の使用人や黒服の先輩方に虚お嬢様についての話を聞けば驚きの連続だった。

役職は秘書であっても事実上は御当主様の片腕だとか、国から皇宮側衛官への打診もあったとか、ある小国ではクーデターに遭遇するも事態の解決に協力して英雄扱いだとか。

剣の腕など現代の侍と呼ばれ生まれる時代が時代なら名を馳せていただろうと語った評論家もいるほどだとか。

何を馬鹿な、と一笑したいところだが虚お嬢様をこの目で見た今なら十分に有り得ると納得してしまう自分がいる。

 

古株の方々や先輩たちは、当時の私のような新人に虚お嬢様の話を聞かせ驚く顔をみることが楽しみらしい。

 

 

だけれども、話を聞かせてくれた誰もが最後に語ることがある。

それは、虚お嬢様とこころお嬢様のことだった。

 

俄かには信じがたいが、こころお嬢様は昔はとても落ち着きがあった静かな子で、部屋で独り絵本を読むことを好んでいたという。

虚お嬢様が弦巻家の養子になった頃も、こころお嬢様はそのような状態だったという。

突然大財閥の養子になった虚お嬢様は当時、様々な圧力があったり大変であったそうだが、僅かでも時間があればこころお嬢様のもとに通っていたらしい。

 

今では仲睦まじい姉妹だが、当時は姉妹とは言い難い関係だったと聞く。

それがいつしかこころお嬢様は虚お嬢様を姉と認め、今のようになったとも。

 

陳腐な言い回しだが、虚お嬢様のこころお嬢様への愛の力だと当時を知る人は口を揃えて言う。

そして今も、虚お嬢様はほかの誰よりもこころお嬢様のためを思って生きているし、愛しているのだろうと。

 

 

虚お嬢様はおそらく本人がなりたいとさえ思えば、なんにでもなれる程の能力がある。

であるにも関わらず、その能力全てをこころお嬢様のためだけに使われている。

捧げていると言ってもいい。

他の何者よりも、どのような名誉よりも、こころお嬢様の姉であることを選んでいる。

 

そんな虚お嬢様の眩しいほどの献身と、それによって齎されるこころお嬢様の笑顔の輝きをみていたい。

そしてそんな虚お嬢様の一助になれるなら、と己を研鑽する。

 

弦巻家にいる人間は皆そうなのです。と穏やかな笑顔で話は締め括られる。

 

 

 

そして私もまた、その時の先輩と同じ気持ちで、同じ話を目の前の新人の子たちにするのでしょう。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

この前の体育祭を通して黒服たちに成長がみられたのは良いことだ。

多少の私情が入っているのは否めないが、私が異動してきた頃より様々な点で向上があることは確かだ。

黒服たちのモチベーションが高いのも大きいだろう。

 

私はこころ付きの黒服たちを2軍と称したけれど、十分エリート集団と言っても問題ないしね。

弦巻家の黒服になれなかったけど、最終選考まで残ったというだけで他の企業は欲しがるってくらいステータスらしいよ。

やっぱ弦巻家ってすごいんだわって改めて実感する。

 

だけれども、私は黒服たちへの指導を一段階上げようと思う。

今までをノーマルモードだったとすればこれからはハードモード。

エリートを弦巻家にふさわしい超エリートにレベルアップさせるのだ。

 

黒服たちの能力が上がるということは則ち、こころの生活の質が上がることを意味しているからだ。

となれば私が黒服たちを扱き回すことに違和感などあろうものか、いや、ない。

元々ここにいる黒服たちのスキルアップも私の異動の一因ではあるしね。

 

 

まぁやることと言えば地味だけどね。まずは走り込みです。

座学にせよなんにせよ体力がある奴が有利なのは間違いない。

 

あとね、ここの子たち機動力とかは割とあるんだけど持久力が足りてないね。

こころは結構ふらふらどっかに行っちゃう子だから、勿論黒服たちは追いかけないといけない。

車では追いにくい進み方をするので走って追うことになる。気付かれないようにね。

そして先の体育祭でも分かるだろうがこころは足が速い。身体能力が高く、2〜3階程度の高さなら普通に飛び降りちゃうくらい道なき道でもなんのその。面白そうだと思えばどこへでも行く。

 

何が言いたいかっていうと、こころはかわいい。おっとつい本音が。

実は黒服たちは度々こころを見失ってたりする。とは言ってもGPSとか機械類で位置情報は把握してはいる。だけれど肉眼では追えてない。

それじゃあダメだよ。視界に入れてないとリアルタイムで対応出来ないじゃないか。

 

こころがすごいから仕方ない、というのでは許されない。

っていう旨を私は黒服たちに伝えて、走り込みをやらせた訳だ。

文句は出なかった。本人たちも自覚していた部分はあるだろうし、私も一緒にメニューをこなしているからだ。

 

まぁそうやって走らせた後は役割別で様々な課題を与えていった。

こころの傍に近い組は護衛も兼ねているので護身術やらを。思い付きで外国に行こうとかよく言い出すので馬鹿に出来ない。特に今はお友達も一緒に、だろうし。

場所によっては治安良くない可能性もあるし、極端な話誘拐とかも有り得るからね。

 

 

あとはなんだろう、連携とかもあるしグループワークみたいなこともさせてるかな。

特にやる気もある人とかはよく質問してきたりもするし個別にちょちょいと教えてあげたりもするね。

私結構無表情なことが多いから冷たいとか思われてるかもって少し気にしてたんだけど、こうやって個人的に質問にきてくれたりする子がいると考えると杞憂だったみたいで嬉しい。

 

 

しかし黒服の人ってすごいよね。

私みたいなハイスペックボディならいざ知らず、ここまで色々なことが出来るようになるんだから。

お父様付き、私の例えでいうなら黒服1軍たちなんて各々がプロフェッショナルみたいなもんだし。

っていう話をするとお父様は私のお陰だと言うけれど。まぁ分かりやすい目標がある方が頑張れるのかな。

 

 

私もまだまだ成長出来る。これからも頑張らないとね。

私の頑張りがこころの自由を増やすことに繋がるんだし、気合いが入るってもんだよ。

 

 

こころ for All, 私 for こころ。

こころは皆のために、私はこころのために。って感じかな!

 

 

 




虚はヤンデレの素質はあるが、ヤンデレにはならない。
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