現実の隊長が聖十郎にインストールされたんだが!   作:ルイレツ

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VS桑名江 その1

 

 

 

めいじ館に春の季節が訪れた。

 

太陽の光は暖かい空気を運んでくれる。

草木や花々は徐々に生い茂り、生命が活気づいている。

 

今日は絶好の春日和だろう。

めいじ館の隊長である聖十郎は、春の陽気で弾む心を抑えて館の庭を散歩していた。

 

早朝、春の息吹を体に直に感じる。

春風に吹かれ、身が躍りそうな高揚感を覚えた。

 

暫く歩くと、一人の女性が洗濯物を干している姿が見える。

物腰の柔らかそうな笑みを浮かべるたおやかな表情だ。

 

彼女は聖十郎に気が付くと、その笑みに喜びの表情を付け加えた。

 

「主様、おはようございます!今日は暖かいですね。」

「おはよう、桑名江。本当にいい天気だな。」

 

彼女の名は桑名江。

 

戦国時代に名を馳せた本多忠勝の長男、本多忠政に召し抱えられた過去がある巫剣である。

 

 

 

桑名(今の三重県桑名市周辺)で忠政が鷹狩りを行っているところ、農家の神棚に祭ってある刀を見つける。

何とも立派な刀で、その農家に頼み込んで譲ってもらう。

 

刀を名門の鑑定士に見せたところ、天下三作で滅多に見かけない郷義弘の作であると見極められる。

 

その結果に満足した忠政。

刀の茎に銘を入れ、金の象嵌*1を施すように命じた。

 

この刀は郷義弘の作で、名門鑑定士のお墨付きである。

本田家の美濃守の忠政の刀だと印を刻んだのだ。

 

忠政は父の忠勝ほどの武勇はなかったが、大名らしい強かな面も持ち合わせていた。

父の名に埋もれて目立った逸話が無い忠政ではあるが、姫路城の城主として名を残している。

 

忠政の臣であった桑名江は、関ヶ原の戦いでは徳川秀忠に従軍していたが、真田昌幸の妨害に合い遅参する。

大阪の陣では薄田兼相との合戦に勝利する一方、毛利勝永との戦いに敗れる。

 

その後の本田忠政は父の死や栄転、転属で中々腰を据えることができない。

 

桑名江は、主君の実情を自らの運の偏重によるものであると考えた。

忠政と同道していては己の運に彼が振り回されるだろう。

主君を重んじた桑名江は農村に戻り巫女として暮らした。

 

彼女が暮らした三河では、仏法僧*2を示す鳴き声をするコノハズクが有難られていた。

その縁で彼女もコノハズクを大切に育てている。

 

 

 

己の運に振り回される桑名江。

だが、彼女から運の偏りを悲観する様子は見られない。

めいじ館の巫剣として、今日も精力的に働いてくれている。

 

彼女は洗濯物を干している途中のようだ。

手透きの聖十郎は暇であるし、干す仕事を手伝うことにした。

 

「洗濯ものを干しているのか?俺も手伝おう。」

「い、いえ!わたくしだけでもすぐに終わりますっ!主様のお手を煩わせるほどではありませんっ!」

 

桑名江はワタワタと洗濯物を急いで干している。

理知的な見た目の彼女だが、存外そそっかしい。

その性分故にドジを踏むことも多い。

 

慌てる様子を見せる桑名江。

いつものドジが顔を見せに来る予感がする。

 

そろそろフォローに回った方が良いかもしれない。

聖十郎は地面に置いてある洗濯籠の中身を掴んで彼女を手伝う。

 

「慌てていると危ないぞ。ほら、これは何処に掛ければいい?」

 

掴んだ布切れを見せ、物干し竿に掛ける場所を聞いた。

だが、桑名江はワナワナと体を震えさせ、顔を真っ赤に染めている。

 

余計なことをしたか?

温厚な彼女が怒るとは思わなかったが、仕事に横槍を入れたのが不味かったのだろうか。

 

聖十郎が謝ろうと誠意を込めて頭を下げた。

 

「済まない、桑名江。君の仕事に要らない手を出した。許してくれるか?」

「あっあっあの!その!」

 

中々許してくれないようだ。

怒りで口をモゴモゴさせている。

普段から優しい彼女がこれほどの怒りを見せるとは!

 

精悍で勇猛な青年、聖十郎も今まで見たことが無い彼女の様相に冷や汗が出てきた。

つい、手元の洗濯物の手拭いで顔を拭いてしまう。

 

「あっあーっ!!主様!ダメです!手を放して下さい!」

 

手?

桑名江は赤い顔で聖十郎の手を指差して叫んでいる。

必死な表情に、何事かと自身の手を見つめる。

 

そこには、見慣れた自分の下着と、布切れがついていた。

 

何だこの布切れは?

聖十郎は自分の下着を片手で持ち、布切れを広げた。

 

紐が付いているが、唯の小さいの手拭いだろう。

これが何なのか桑名江に聞いてみる。

 

「これがどうしたんだ?」

 

紅潮した顔から今にも涙が出そうな表情で彼女は大きな声を出す。

 

「ううっ、それは下着です!返して下さい!」

 

これが下着?

広げた布をよく見ると確かに下着のような形をしている。

布地の面積が小さいので思い当たらなかった。

新たな知識を与えてくれた彼女に感謝を述べることにした。

 

「成程、これも下着か。一つ勉強になった。ありがとう、桑名江。」

「えっ?あ、どういたしまして、主様・・・。」

 

こんな薄い下着があるのか!

心底感心したと聖十郎は頷く。

 

感謝を受け取った桑名江。

主の役に立ったと顔に笑みを浮かべるが、

自分の下着を聖十郎に握られているのを思い出した。

 

「そんなことより早く私の下着を返してください!」

 

まさかの新事実発覚である。

聖十郎の手に広がる下着は桑名江のものだったのだ!

聖十郎の心に衝撃が走る!

清楚な顔に似合わずエグい下着をお持ちである。

 

彼はイイ笑顔で感想を述べた。

 

「こんな下着を付けているなんて、桑名江は大胆なんだな。」

「ううっ、主様っ。わたくしをいじめて楽しいのですか・・・?」

「イジメるだなんて・・・俺が君にそんなことをするハズないだろう?」

 

彼女は聖十郎の大切な巫剣である。

イジメることなど天地が裂けてもあり得ない。

 

心に悲しみが満ちた表情を聖十郎が浮かべる。

その目尻に涙の光がキラリと見えた。

 

「あっ・・・」

 

すると、桑名江も言い過ぎたのだと後悔した。

聖十郎に駆け寄り、謝罪する。

 

「そうですよね・・・。主様がそのようなことをされるハズがありませんよね。申し訳ありません・・・」

「気にしないでくれ、君の邪魔をした俺が悪いんだ・・・これ以上迷惑をかけたくないし、散歩に戻るとするよ。」

 

駆け寄ってきた彼女を軽く抱き留めた。

しかし、これ以上の邪魔をするまい。

 

パンティをズボンのポケットに入れ、その場を立ち去る。

 

哀愁を漂わせて手を振り去っていく聖十郎に桑名江は胸が締め付けられた。

その姿に自然と喉から声が出る。

 

「主様!お待ち下さいっ!!」

 

後ろから彼を抱きしめ引き留める桑名江。

しかし、聖十郎の意思は固い。

 

「ダメだッ!桑名江!俺は君の邪魔をした自分が許せそうにないんだ!!放してくれ!!」

「いいえ!放しません!主様が心を痛めているのに放っておけません!」

 

ああ、何という事だ!

散々邪魔をした己を許すどころか気遣ってくれるとは!

男聖十郎、涙が禁じえぬ!

 

彼女にここまで思われて、意固地になる必要はない。

桑名江に向き直り、優しく包み込むように抱きしめた。

 

「ありがとう・・・!頭が固くなっていたみたいだ。君を悲しませた、もう大丈夫だ。」

「主様・・・!」

 

何がもう大丈夫なのだろうか。

チョットよく分からない。

 

しかし、立ち直った素振りを見せる聖十郎に桑名江は満面の笑みを浮かべる。

彼女は雰囲気に流されやすいのだろうか?

 

お互いの信頼を確かめるように、二人は固く抱き合った!

抱き合いながら、桑名江は逢瀬のように、耳元で囁く・・・

 

「主様・・・。立ち直られたのですね。わたくしも安心しました・・・」

「ああ、桑名江。君のおかげだ・・・」

「本当ですか・・・?なら、わたくしは主様の助けになれたのでしょうか?」

「もちろんさ。」

 

確信を持って自信満々に応える。

そのようすが可笑しくて桑名江はクスクスと笑った。

 

「もしかして、わたくしは主様の恩人でしょうか・・・?」

「ああ・・・!」

 

今まで桑名江に助けられた数は覚えきれない。

聖十郎は間を置かず答えた。

 

全幅の信頼をみせる聖十郎。

桑名江はそんな彼に祈りを捧げるように呟く。

 

「では、主様・・・恩人である、わたくしからお願いがあります。聞いて頂けますか・・・?」

「・・・なんだ?」

 

「そろそろ!わたくしの!下着を!返してくださ―――いっ!!!」

 

桑名江は己の恥ずかしさをかき消すように、聖十郎の耳元で大声を出した!

聖十郎の耳は突然の大声でキーンと耳鳴りが鳴っている。

 

聖十郎が怯んでいる隙に、桑名江は彼のズボンのポケットに手を突っ込み弄った!!

 

止めて!可愛い暴れん坊君が驚いて起きちゃう!

 

聖十郎の心の悲鳴を余所に桑名江の手は激しさを増した!!

 

「ありましたーっ!」

 

彼女は、今日一番の収穫が取れたみたいにズボッと下着を回収した。

 

聖十郎は桑名江の攻撃に成す術が無かった。

ガックリと項垂れる。もうお嫁に行けそうもない。

 

「は、ははは・・・では下着も返したし、部屋に戻るとするよ・・・桑名江、また後でな・・・」

「はい!この後のお仕事も頑張りましょう!」

 

彼女は晴れやかな笑みで応えてくれる。

トンデモないところを触られかけた聖十郎はゲッソリしている。

 

そして、聖十郎は返事もそこそこに喫茶店の業務へ向かった。

しかし、その表情は、ゲッソリしたものから不敵な笑みに変わっている。

 

奇妙な主の様子に、桑名江は頭上にハテナを浮かべた。

 

何にせよ、桑名江は下着を取り戻した。

ホッとため息をつき、手元の下着を見る。

 

すると、そこには聖十郎の下着が握られているではないか!!

 

「あ、あれ!?どうしてこれが・・・!」

 

自らの下着を手にしていたと思い込んでいた桑名江。

困惑に右往左往している!

その間に聖十郎は姿を消してしまった!

 

 

 

「すり替えておいたのさ!!!」

 

既に自室への帰路に着いていた聖十郎は一人、勝利の宣言を行う!

そう、聖十郎は下着を返したが、彼女の下着を返したとは言っていない!

彼はポケットから桑名江のパンティを栄光のヴィクトリートロフィーのように天に掲げた!!

ああ、勝利の女神は聖十郎に微笑んだのだ!!

 

通りかかった巫剣からは不審者を見る視線に晒されるが、関係ない!!

聖十郎は勝利の美酒に酔いしれるのだった・・・

 

一体彼は桑名江の下着をどうするつもりなのだろうか・・・

 

 

 

 

 

 

聖十郎の下着を手に、呆然と洗濯籠の前で立ち尽くす桑名江。

 

「主様・・・ご自身の下着と間違えて、わたくしの下着を・・・」

 

そして、自分の手にある聖十郎の下着を眺めた。

思い起こされるのは先ほどの光景。

自身の下着で顔を拭った主の姿だ・・・

 

「あるじ、さま・・・」

 

そして、桑名江はゆっくりと下着を己の顔に近づけていく―――

 

「あああ!わたくしは何を!!」

 

正気に戻った桑名江!慌てて顔から下着を離す!!

聖十郎に毒され過ぎである。

 

桑名江は顔を左右に振り、顔を叩いて気合を入れた。

聖十郎の下着がバサバサと顔に触れている。

 

「主様・・・取り合えず後で渡しませんと・・・」

 

この後喫茶店の仕事で顔を合わせるはずだ。

桑名江は聖十郎の下着をキレイにたたむと、大きな胸の隙間にしまい込んだ。

 

親しい相手と言えど男の下着を胸の間に入れるとは。

桑名江も手遅れかもしれない・・・

 

洗濯物を干し終わった彼女は、己の下着を取り戻すべく、フンスっと気合を入れてめいじ館に戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

*1
(削った文字に金を流し込み浮き上がらせる技法)

*2
(悟りを開いた仏、仏の教え、悟りを目指す僧侶を指す。南無三宝とも言う)






桑名江の下着の行方や如何に!!


こんなもん書いてすんません
相当続きます・・・


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