現実の隊長が聖十郎にインストールされたんだが!   作:ルイレツ

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VS桑名江 その3

 

 

聖十郎の下着は、北谷に渡され、桑名江の手元を離れた。

しかし、桑名江の下着は聖十郎が所持したままである。

彼が何処に下着をしまっているのか分からないが、早く回収しなくては。

聖十郎が桑名江の下着を持っていると話が広がれば、いらぬ噂が立つかも知れない。

 

現在の桑名江は接客中。

店員としてキッチンと接客、両方をこなしている聖十郎に話しかける機会は中々得られない。

 

どうするべきか、表情を曇らせてしまう。

 

「いけない!今は接客中なのだからしっかりしないと・・・」

 

接客中に暗い顔をしているとお客様に不快な思いをさせてしまう。

雑念を振り払うように顔を振り表情を整え、仕事に集中する。

だが、聖十郎が気になり集中力が続かない。

 

そんな彼女の後ろから上機嫌な声が聞こえた。

 

「桑名江。どうしたんですか?今日は仕事に身が入ってませんね。大丈夫?」

「え、北谷さん・・・」

 

何時もなら不倶戴天の敵であると事あるごとに突っ掛かってくる北谷。

間違っても桑名江を気遣う言葉など投げかけてくる筈が無い。

しかし、彼女は聞いたことも無いような優し気な声で話しかけてきた。

 

桑名江は誰この人と困惑する。

 

「いえ、お気になさらないで下さい・・・」

「ふふっ!わたしたちは 仲 間 (・・・・・)!なのですから遠慮しないで頼って下さい!」

「」

 

聖十郎の下着で心が変わるほどの衝撃を受けたのだろうか?

敵対心などドブに捨てたと言わんばかりの変わり身だ。

 

桑名江は以前から彼女を仲間だと思っていたのだが、

今の北谷が強調して言う仲間と何かが変わったのだろうか・・・

 

しかし、以前ならばケンカ腰で相手にされなかった彼女から心配された桑名江。

その様子に、遂に心を開いてくれたのかと目を潤ませた!

 

聖十郎のふんどしが二人を繋いだのだ!!

 

「ああ!北谷さん!貴女のことを誤解していました!今までのことを許してください!」

「いえいえ!仲間が困ったときはお互い様です。さ、悩みがあるのでしょう?少しくらいなら助言できるかもしれません。」

 

悩みがあるなら聞きますよと声を掛けてくれる!

こんなに嬉しいことはない!

桑名江は嬉しさのあまり、先ほどの聖十郎とのやり取りを一字一句漏らさず詳細に伝えてしまう。

 

北谷はそのような方法があったのかと何度も頷いて、納得した表情をしている。

 

「そのような方法でお兄様に自分の下着を渡せるとはっ!これは試さないと・・・」

「あ、あの・・・わたくしは下着を返してもらいたのですが・・・」

「そうですか?そのままお兄様に差し上げればいいじゃないですか。羨ましいです!」

 

自身の下着を取られて羨ましいなどと言われても、桑名江は嬉しくなかった。

何とかして取り戻したいと北谷に助言をせがむ。

 

「勿体ないですね・・・でも、そこまで仰られるのなら周りに人がいない時にお兄様に直接言えばいいのでは?その隙を作るのに協力しますよ?」

「本当ですか?ありがとうございます!!」

 

北谷の協力が得られるとは思いもしなかった。

嬉しさのあまり、桑名江はピョンピョンと飛び跳ねて喜びを表現した。

 

「大げさですよ。そんなに喜ばないで下さい」

 

謙遜した北谷だが、桑名江の動きに合わせて大きく揺れる胸に少しだけ嫉妬した・・・

 

 

 

 

 

話が纏まった二人。

後はどのタイミングで聖十郎に話しかけるか考えていた。

 

その時、キッチンから料理を受け取ったのか、お盆を持った聖十郎が出てくる。

 

「今なら話しかけてもいいんじゃないですか?キッチンから人は来ないでしょうし、他の巫剣がお兄様に近寄らないよう気を引いて来ますので。」

 

そう言うと北谷は他の巫剣に話しかけ、分からないところがあるから教えてくれと注意を引き付けてくれる。

 

「ありがとうございます、北谷さん・・・」

 

桑名江は彼女に感謝する。

北谷と言う友のお陰で道は開けた!

後は聖十郎に話しかけるのみ!

桑名江は聖十郎に小走りで駆け寄った。

 

「主様!」

「桑名江?どうしたんだ?」

「先ほどの洗濯していた時の話なのですが・・・」

 

桑名江が下着の話を切り出そうとする。

その時、不幸な事故が起こる!

 

彼がお盆の上に載せていたホットミルクとカップソーサーがツツーと滑り始めた!

どうやらお盆が濡れており、一時的に摩擦が少なくなっていたのだ!

 

そして、そのカップに入っていた白濁とした液体(ホットミルク)が聖十郎に降りかかった!!!

 

「うぉアッチィッ!!!」

「あ、主様ぁ!」

 

何と言う事でしょう!

白濁とした液体まみれになった聖十郎は火傷をしてしまう!

しかし、料理の入ったお盆を動揺せずテーブルに置けた。

流石、巫剣を纏める隊長の精神力と言えよう。

 

だが、熱いミルクが服に付いたままでは不味い。

皮膚に張り付いた服では、熱が中々逃げず、火傷が悪化する恐れがある。

 

―――わたくしが主様に迷惑をかけてしまった・・・

 

己の不運で聖十郎に迷惑を掛けたと思い込んだ桑名江。

慌てた彼女はトンデモない行動に出てしまった!

 

「主様!このままでは火傷がひどくなります!服をお脱ぎ下さい!」

「いや、お客様の前で脱げるはずが」

「もう!わたくしが脱がせます!!!」

 

混乱した桑名江は聖十郎のシャツのボタンに手をかけ、脱がせにかかった!

公衆の面前でなにやってんの!!

 

しかし、半分ほどボタンを外した桑名江の手に、聖十郎の手が添えられる。

 

「桑名江、俺は平気だ。自分で着替えるよ。」

「わたくしがします」

 

確固たる意志で脱がせに来る桑名江。

火傷に必死になるその姿に違和感を覚えた聖十郎。

彼女の頑なな様子にどうしたのかと聞いた。

 

「・・・どうしたんだ。今日の君は様子が変だぞ?」

「・・・・・」

 

今日の桑名江は朝からいろんなことがあり過ぎた。

 

聖十郎に下着を奪われるし、北谷奈切を押し倒したりもした。

聖十郎の下着を渡すことで何故か北谷とは親しくなったのだが。

そして、己の不運のせいで主を火傷させてしまう。

 

もう桑名江はいっぱいいっぱいだったのだ。

次第に服を脱がす手が遅くなり、目に涙を貯めている。

 

「桑名江・・・」

「主様・・・申し訳ありません。やっぱり、わたくしはドジでダメな巫剣ですね。」

 

己への情けなさと悲しみで声が震える桑名江。

今にも泣き出しそうな彼女を前に、聖十郎は言葉を失った・・・

 

 

 

 

 

しかし!

聖十郎は激しい怒りを覚えた!!

彼女を悲しませるのは誰だ!!

理不尽な不運か!

己の不甲斐なさか!

 

それは誰の責任か!

桑名江?違う!この俺の責任だ!!

 

ならば、まずは彼女を悲しませるこの火傷を今すぐ取り払おう!!!

聖十郎はシャツの襟元に手を掛け、力任せに取り払った!!!

ビリビリと布を裂く音が店に響く!!

 

「あ、主様!」

 

突然の聖十郎の奇行に桑名江は驚き尻もちをつく。

 

喫茶店に聖十郎の上半身が外気に晒される!!

数々の戦場で鍛えられた鋼鉄を思わせる筋肉と、敵の攻撃を受けて拵えた、男の勲章とも言うべき傷の数々が姿を見せた!!

 

「ヒューッ!」

「見ろよ、ヤツの体を!本当に喫茶店の店員なのかぁ!」

「コイツぁヤベェ・・・」

 

喫茶店の客が聖十郎の上半身を目にして口々に感想を呟いた。

 

聖十郎は、尻餅をついた桑名江に手を差し伸べる。

 

「どうした?桑名江。俺は火傷なんてしない。君が気にすることなんて何一つなかった。そうだろ?」

 

そして、強引に彼女の手を握り、体を抱き寄せた。

半裸の聖十郎に抱きしめられた桑名江は周囲の視線に羞恥の感情を覚えた。

 

「主様!皆に見られてますっ!!!」

「それがどうした」

 

恥ずかしがる桑名江。

しかし、聖十郎は抱きしめる力を緩めるどころか更に力を強くした!

そして、彼女の耳元で囁く。

 

「桑名江、君の不運で俺が屈することは永久に無い。ここに誓おう」

「あ・・・」

 

桑名江の不運くらいでは聖十郎を脅かすことなど出来ないのだ。

豪快にシャツを取り去って彼は証明してみせた。

 

その事実に、彼女は安心した。

 

「わたくしの不運程度では、主様は動じないのですね・・・。」

 

桑名江は聖十郎にウットリとして身を任せる。

肌に直接触れることで熱が伝わってきた。

 

「ハッハー!やるじゃねぇか色男!!」

「なんなんだ?喫茶店にきたはずなのに俺ぁなんでメロドラマを見せられてんだ?」

「店員さーん!おっきいわたちパイを二つくださーい!」

 

客の反応は様々で、思い思いに茶々を入れている。

 

だが、二人の邪魔をすることは出来ない。

抱き合ったまま、二人の世界を楽しむのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「おのれェェェェ・・・わたしに下着を渡して懐柔したのは、出し抜くためだったんですね・・・してやられましたぁぁぁ・・・」

 

桑名江が下着を回収するために手を貸したはずなのに、彼女はいつの間にか本来の目的を忘れ、二人の世界に没頭している。

今邪魔をすれば聖十郎からの好感度は下がってしまうだろう。

故に妨害が出来なかった。

 

北谷は己の失態に気付く。

下着に釣られ、桑名江に気を許し過ぎた。

 

「やはりあの泥棒猫はわたしがお兄様と結ばれる最大の壁のようですね・・・今回は負けを認めましょう。次は蹴落として差し上げますから首を洗って待っていなさい!」

 

次こそは負けない。

北谷は聖十郎の褌を握りしめ、愛するお兄様に誓う。

 

しかし、覚悟を決めた北谷に水を差すように注文を頼む声がかかった。

 

「そこのキミ、漆黒を纏いし紅蓮無垢、そして翡翠なる魂の贄を頂けるかな?」

「はーい。御幾つご注文されますか?」

「聞きたいかね?今の時点で3本だ」

「・・・ご注文入りまーす」

 

意味不明な注文だが、名前がくどいだけでタダの団子のことである。

ややこしいメニューを決めた巫剣と、面倒くさい注文の仕方をする客に北谷はため息をはく。

 

聖十郎の正妻はこの北谷奈切だと示すのはまだ先になりそうだ・・・

 

 

 

 

 

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