全ては悪戯
全ては宿命
全ては定め
12月24日――天気は曇りのち、雪。
聖なる夜。
クリスマス・イブもとい、ホワイトクリスマス。
本来、ミッドチルダには無い文化ではあったが、第97管理外世界――地球出身である三人組のエースがメディアで紹介されたさい、その文化がそれなりに注目を集めた。
それから、『クリスマス』と『バレンタイン』に目をつけた業者が、それをネタに商売を開始。
瞬く間に広がり、今では12月24日はクリスマスというのは、どこの次元世界でも共通と成りつつあった。
おかげで、1ヵ月前から玩具系統物は、売り上げが好調に。
それは経済の発展に繋がっていく。
ミッドチルダの政府も、これを機に正式に受諾しようという動きがあるらしい。
子どもの笑顔は、大人の喜び。
普通は。
犯罪者や子ども嫌いなどは、置いておいて。
クラナガンは、雪が少しずつだが積もりつつある。
平和とは、こんな感じなのかと思えるのかどうかは、定かではない。
だがこの日、白き雪は赤く染まる。
世界の秩序は綻びを見せ、剥がれていく。
幸せが絶望へ。
喜びが悲しみへ。
歓喜が悲鳴へ。
平和が壊れる。
ガラスのように簡単に割れる。
命がロウソクの火のように消される。
白く淡いカーペットが赤く染まる。
クラナガンのどこかのビルの屋上。
フード付きマントを羽織った者の手の中に、懐中時計。
そして、蓋を開ける。
蓋には開始時刻が張られている。
時間を照らし合わせる。
「混沌生誕まで――あと、5時間23分14秒、か」
時計の蓋を閉め、懐に入れつつ、街全体を見渡す。
「関係無い者を巻き込むのは釈然としないが……恨むなら、恨んでくれ。気が晴れるまで」
その言葉に答えるように、一吹きの風が吹き抜けた。
キーパネルがブリッジに鳴り響く。
ここはアースラのブリッジ。
展開されているモニターには、時空管理局の提督クラスの人間。
各次元世界のお偉いさんの方々。
その方々を護衛する形に、管理局の魔導師たち。
さらに囲む勢いで、報道関係の者たちが展開している。
「今日は、ほっんとぉ~に多いね。いつもなら、来ない人もいるのに……うわっ、サボりで有名なギリア提督がいるよ」
いつもなら来ない人間ですから、この緊急会議に参加しに来ていることに、驚くエイミィ。
「だろうな。今回の議題は、ラギュナスに関しての事だからな。否応無しに出てこなくてはならない。少しでも情報が欲しい故に」
肘を突きながら、モニターを眺めるクロノ。
この出来事は、1週間前に遡る。
ラギュナスの動きが停滞する1ヶ月前――2ヶ月前に当たる頃。
未確認機動兵器を確認した。
コード名、ガジェットドローン。
ラギュナスと何ならかの関わりがあると考えられる。
さらに、11月から活動を再開し、管理局に多大な利益と被害を及ぼした。
犯罪者の受け渡しに、局員の殺害や負傷。
中には、奇跡的にも助かった局員もいるが、大抵が戦力外通告。
他の次元世界でも、似たような事が起きている。
この事態を重く見た時空管理局、空・陸・海全てが協力を要請しあう。
まさにこれだけで異例の事態。
陸と海の中の悪さは、ミッドチルダ全土に知られているにも関わらず。
そして、12月17日未明に、緊急会議を執り行うと各次元世界に通達。
1週間後の24日までに返答を求む予定だったが、19日までに『参加』と全ての返答が帰ってきた。
ならば、膳は急げとの事により、12月24日――時空管理局本部にて、緊急会議を行うことに。
よって、休暇申請は全て取り消され、緊急任務が宛がわれた。
他の任務も、一時中断。
中断不可能な任務、その日までに帰還不可能な部隊のみ免除。
Bランク以下は、外回りの警護。
B+ランク以上は、中の警護。
簡単に言えば、自分たちの安全が第一と考えた結果だろう。
外の警護が全滅しても、最低限の足止めにはなると踏んだ結果だと言える。
「なのはとフェイト、はやてに守護騎士たちも中の警護、か……なりふり構っていられないということか」
クロノは、監視映像を自分の前に展開させる。
そこには、なのは、フェイト、はやて、守護騎士たちの様子が映し出されている。
他の局員と連絡を取り合い、警戒を怠らないようにしている。
これが、本当の時空を守る守護者たちの姿なのだろう。
だが、ラギュナスの一軒が終われば、また元に戻ってしまうのかと思うと、少し悲しい。
そして、何とも言えない感覚に襲われる。
ラギュナスのおかげで、今の状態が成り立っている。
感謝しようにもできない。
まさに『矛盾』である。
「クロノくん、眉間にシワ。よっているよ?」
エイミィが、自分の眉間を指差しながら言った。
ラギュナスサイド編
第十二話:混沌開門(前編)
カラン、とグラスの中の氷が奏でる。
店内は淡く薄暗くも、ポイントライトにより、雰囲気をかもし出している。
ミッドチルダ、首都クラナガンのとある裏道の地下にあるバー。
店名『フリーズタイム』。
固まった時間。
店内も固まったように静かである。
故に時間を忘れ、飲むことすら忘れていると、氷が今を報せる。
それをここでは『アイス・コール』と言う。
男はそれに気がつき、一口含む。
そして、懐から懐中時計を取り出し、蓋を開ける。
「……あぶな、時間に遅れる所だった」
男は冷や汗をかきつつ、蓋を閉める事無く、懐中時計をカウンターの上に置いた。
「お客様」
グラスを磨いていたマスターが、声を掛けてきた。
この店独特の禁止事項がいくつかある。
その内の1つ――店内で時間を見てはならない。
「ああ、すまない」
そう言って、ここのバーでは厳禁の一気飲みをし、御代を置いて席を立つ。
「……今まで、最高の店だった」
それだけ言い残し、重々しい扉を開く。
「はぁ……ありがとうございました」
背後からそう聞こえたが、余り気にしなかった。
この店に来るのは、これで最後なのだから。
地下から地上へ上がる階段を、一段一段かみ締めるように上る。
別れを惜しむように、上へ、上へと目指す。
そして――光が顔に指した。
地上だ。
「孤影(こえい)」
声をする方に顔を向ける。
そこには、同じフード付きマントを羽織った男が立っていた。
背には、2本の長いものが交差した状態で布に包まっている。
「緋龍(ひりゅう)か、どうだった?」
「最後を満喫していたよ。今日でここが壊れると思うと、寂しくなる」
顔を横に振りながら答える。
そして、互いに懐から懐中時計を出す。
なんの変哲も無い懐中時計。
唯一違うのは、表の蓋に描かれた柄である。
「そう言えば、孤影」
不意に思い出したように言う。
「何だ?」
「何を描いてもらったのだ?」
と、言いつつ懐中時計を少し上に上げる緋龍。
「ん? 俺は名前通り、狐だ」
ほら。と言いながら見せる。
それを見て苦笑する。
「なんだ、お前も、か」
と、緋龍も見せる。
そこには、東洋の龍が彫られていた。
そして、顔を見合い、ニコリと笑い合った。
同時に、互いの懐中時計を弾かせる。
裏路地に、軽やかな金属音が鳴り響く。
まるで、冥福を祈らんとばかりに。
「いくか、孤影」
「ああ、打倒管理局」
互いに頷き合うが、
「ただそれ……なんだか、97世界の甲子園の掛け声みたいだな」
雰囲気がぶち壊しの言葉を述べる緋龍で。
「締まらないこと言うなよ」
呆れる孤影であった。
本当に、締まらない2人である。
「こちら、時空管理局本部の入り口付近にいます」
どこかの局の女性リポーターが、カメラの前で状況を説明している。
「特別緊急会議が始まって、まもなく3時間が経ちましたが、以前終わりの兆候が見えません」
その光景を壁際で眺めている者がいた。
時空管理局のエースの1人、高町なのは。
一応配置場所は決まっているが、別のオーバーSランクの方がいたので、断りを入れてからここへ来た。
簡単に言えば、気分転換。
ギスギスした空気の中より、好奇心旺盛な空気の方が、何と無く楽だった。
最近ある噂を聞いて、少し混乱した。
いや、今も少ししている。
シグナムが管理局を裏切った。
何かの間違いである。
あのシグナムが裏切りなどありえない。
はやてを主とし、彼女の事を第一に考えて行動するヴォルケンリッターの将が。
本当の事だったら、何が彼女をそう駆り立てたのか。
そんな事が、頭の中を回り続けている。
フェイトがこの噂を耳にした時は、執行官の能力を生かして、真偽の確認を始めた。
まだ半分しか判っていないが、裏切りは間違いではないらしい事に行き着いた。
その時、ショックでその場に倒れこんでしまったらしい。
結局、真実は判らずじまいだったが、判ったことは一つだけ。
シグナムは、ラギュナスにいる。
これは揺ぎ無い事実である。
爆発と振動。
天井の照明は点滅し、管理局全体が揺れ、爆発音が鳴り響く。
人々は混乱した。
局員ですら、動揺した。
ここは次元に浮かぶ、時空の安全を守る本部。
それが爆発。
何が起きたのか把握するために、次々と通信回線を繋ごうとする。
だが、回線がパンク状態になりつつあった。
とにかく、報道関係者を安全な場所に誘導するのが最優先。
考えがまとまったなのはは、通信回線を繋ぎ直しつつ、報道関係者に駆け寄った。
が、壁が爆発。
全員がその場に伏せた。
煙が上がるのは当然だが、その中から大きな鉈らしきモノを持った、ロングコートの男が現れる。
大きな鉈らしき物と言っても、刃渡り2メートルは優にある。
全員が注目する。
その中で、ロングコートの男は、高らかに宣言する。
「ラギュナスの者だ! 邪魔する者は容赦無く殺す! 死にたくなければ道を明けろ!」
その言葉に、局員たちは反応し――デバイスを次々と展開していく。
非戦闘員と、勝てないと判断した局員たちは、報道関係者たちを誘導する。
ロングコートの男は、逃げ出した者に対しては満足したが、デバイスを向けてきた者たちには呆れのため息を吐く。
「聞こえなかったのか? 阻む者は殺すと。加減とか嫌いなのだよ、俺は」
やれやれと肩を竦める。
「ラギュナスの方が、時空管理局に何の御用ですか?」
右から声が聞こえる。
横を向くと――バリアジャケットを纏った、エース・オブ・エースの高町なのはがいた。
ロングコートの男は、露骨に嫌な顔を浮かべる。
「げぇ、時空管理局の白い悪魔!? ついてねぇーな、俺」
天に煽る様に、顔を上にして手を目の辺りに置いた。
「誰が時空管理局の白い悪魔ですか!?」
反論するなのは。
しかし、次の言葉に、大体の局員は頷いた。
「だって、お話を聞くために砲撃魔法を叩き込んできるって、裏の世界じゃあ有名な話だぞ」
なのはは、その場につっぷしそうになる。
空中にだけど。
ともかく、体勢を立て直してから、デバイスを向ける。
「と、とにかく! 管理局法以前に、隔壁の破壊と武力行使の意の表明により、あなたを拘束しま――」
そこまで言った瞬間、ロングコートの男は目の前から消えた。
他の局員も、何が起きたのか判らなかったが、次の瞬間――
「――がぁ!?」
その声に、全員が振り向く。
そこには、1人の局員の体から、血飛沫が噴出した姿。
その後ろには、ロングコートの男。
男は、振り向きながら、大きな鉈らしきモノ横に振り払う。
そして、局員の首が――宙を舞う。
考えが一瞬真っ白になる。
男は、振り払った大きな鉈らしきモノを両手で持ち、頭上に振り上げ――思いっきり振り下ろす。
真っ二つ。
同時に、先ほど飛んだ局員の首が、地面にグチャっと音を立てながら転がる。
「いっ――いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
女性の悲鳴が、局員たちを恐怖と混乱に叩き落す。
男は、高笑い。
それが引き金となり、慌てて逃げる局員たち。
我先にと逃げる、逃げる。
そして、初めに言った言葉通り、逃げるものに対しては、一切攻撃を行わない。
その素振りすら見せない。
なのはは、冷静になることに必死だった。
いきなり表れ、武力行使を宣言。
そして――何の躊躇いも無く、殺す。
しかも、首を跳ねたにも関わらず、追い打ちと言わんばかりに、首の無い局員の体を両断する。
それから高笑い。
異常であることは、始めの行動で判るが、ここまで異常だとどうしようもない。
「……じゃ、先に行かせてもらうぜ。やることがあるのだからな」
大きな鉈らしきモノに付いた血を振り払いながら、奥へ進む男。
だが、なのはは男の前に立ち塞がる。
「……やはり、計画通りに仕事をするか」
男は、なのはに聞こえない大きさの声で呟く。
男の任務――高町なのは、またはそれに順ずるオーバーSランクの人間を1人でも多く押さえる事。
その際、相手の生死は問わないが、なるべく生かせ。
余はかく乱。
ランクは、E。
最低ランクFの上。
高町なのはのランクは、S+。
ある程度経験を積んだ管理局の人間が見れば、高町なのはの勝ちは見えたも同然。
だが、何事にも例外はある。
そう、例外は存在する。
全てにおいて。
特別会議室に第一級警報が鳴り響く。
それに会議に参加していた者たちが動揺する。
そこで、通信のコール鳴り響く。
「どうした!?」
提督クラスの人間が、通信回線を開く。
≪こちら、本局第17ブロック! 現在、ラギュナスと名乗る者たちからの襲撃を受け、現在こうせ――がぁ――≫
そこで、通信をしていた局員の男が吹き飛び、通信画面が砂嵐になる。
襲撃。
時空管理局に直接攻撃を行うことは、どういうことか。
子どもにでも判る。
宣戦布告。
しかし、そんなことよりも、会議に参加していた者たちに戦慄を与えた言葉があった。
ラギュナス。
今行っている会議の議題である組織。
しかも、この会議室には各次元世界の著名人やお偉いさん。
他の任務を切り上げてまで、この会議に参加した提督までいる。
ここで怪我などでもされれば、任務にも支障をきたす。
さらに、外交問題にも発展する。
まさに、最悪の状況。
「とっ、とにかくひ――」
会議室の扉が吹き飛ぶ。
視線が一気に集中する。
「お嬢、ここで?」
「うむ、ここで良い」
街中で見かけるような今時の格好をした若者と、背が小さいが口調が重々しい少女が入ってくる。
何も知らず遠目から見れば、若者は警察に呼ばれても可笑しくは無い。
だが、それはこの状況には相応しくない。
言葉と状況を聞き見合わせれば、襲撃者だと推測される。
「あ~、俺はビーク。で、こっちは――」
「華丞(かじょう)と申す。ラギュナスの経理担当で、こいつのお目付け役だ」
本局管制室。
ここは、すでに戦場と化していた。
情報という名の戦いが。
「状況は!? どうなっている!?」
管制を統一するリーダーが、声を上げる。
「外部から隔壁を破り、次々と進入! 起動兵器も進入を開始!」
「入り口から魔導師らしく者たちが1人――いえ、3人!」
「何!? 3番ブロックに侵入者!? しかも――魔力を持たない人間だと! それに全滅しただ!? 馬鹿な!?」
「進入者は、現在確認できた数は25人! 未確認及びそれらしき情報から、30人以上いると思われます!」
「なんだと!? ――大変です! 登録の無い戦艦を3機発見との報告あり!」
次々と報告されてくる情報。
対処しきれない量が飛び交う。
「くっ! これ以上は……特別会議室との通信回線は!?」
「それが……」
渋るオペレーター。
今日は、ついに憧れの本局勤めの初日。
前は、地上部隊の辺境のオペレーターに回されていたのだが、ついに念願の夢の場所へ。
だが、その初日にこんな事になるとは、夢にも思ってなかった。
しかも、これを報告してよいのかどうか。
情報は正確に、素早く報告。
これは、基本中の基本だと、先輩からいつも聞かされていた事である。
「報告は正確に、だ!」
激を飛ばすリーダー。
硬直する。
だが、報告しなければならない。
意を決し、報告した。
絶望への第一歩の報告、を。
「回線は、未だに繋がりません!」
この報告が、今後の時空管理局の方針を決める出来事に繋がるとは、この時は思っても見なかった。
この偽りの報告が――世界を変えた。
ラギュナスサイド編
第十二話:混沌開門(前編)・END
次回予告
始まりは爆音で
再会は悲しみで
偽りは変化で
秩序は終わり、混沌が始まる
ラギュナスサイド編
最終話:混沌開門(後編)
に、ドライブ・イグニッション!
あとがき
ついにきました、最終回!
次を書き終われば、第二部発動!
その前に、ラギュナスの予告を公開しますが、ストライカーズがある程度進んでから。
でないと、管理局とラギュナスとナンバーズを上手く絡めていけないかと。
もう物語自体、大部変換されるので。(汗
で、最後ら辺は、予告を変えたくないので、少し追加。
繋がりが見えないですが、最終回に回させてもらいます。
もう、止まらない。
止められない。
世界は動く。
世界は回る。
そして、主人公とクロノのバトル!
詳しくは書かないかも。(汗
別の部分を書きたいので。
まぁ、また一話目から改正していくので。
その時は、追加文していきます。
さらに広がる話ですが、何とぞ、最後までお付き合いください。
で、最後に気づいたが、なのは以外、メインキャラ&サブキャラクターがいない事に気が付く。
ほとんど即席と、新規参戦のサブキャラ。(号汗
まぁ、いっか。(オイ
制作開始:2007/7/19~2007/7/25
打ち込み日:2007/7/25
公開日:2007/7/25
修正日:2007/10/4
変更日:2008/10/24