翻弄し続けたのか、され続けたのか
この出来事に気づいていたのか、気づかなかったのか
判るのは、まだ先の話――
「――指定ポイントの到着確認完了!」
「時空及び魔力修復プログラム起動!」
「管理局に動き無し、あとカウントまで61秒!」
ラギュナスの母艦――ゲシュ・ラ・ンペルド。
とある時空世界のトーラス語と呼ばれる言語で、『屍の戦艦』と言われている。
「よし、修復開始! あと、管理局の動きにも注意しろ!」
「了解!」
「よ~し、腕が鳴るぜ」
それぞれのいつも道理の返事をして、作業を続けるオペレーターたち。
「状況は?」
ローブを纏った者が現れて、ロングイに声を掛ける。
声からして、男であることが判る。
「少し問題が起きた」
「デバイス・XGの事ならば、問題は無い。アレは、私が用意させたのだからな」
「……時間合わせ! どうなっている!?」
先の言葉を聞かなかった事にしたのか、聞き流したのか分からないが、それを誤魔化す様にオペレーターに激を飛ばす。
「す、すいません! ――時間合わせ、あと25秒!」
「修復プログラム起動完了、時間合わせと同時に展開します!」
「管理局に動きあり! ……3時間後に、ここへ来ます!」
「こちらの動きを掴んだのか!?」
「いえ、向こうの都合です!」
ブリッジに、オペレーターたちの情報が飛び交う。
「……慌しいな」
ローブの男が呟く。
(ここまで仕組んでおいて、よく言えるな)
心の中で吐き捨てるロングイ。
「――時間合わせ、5、4、3、2、1――作戦開始!」
「修復プログラム展開!」
オペレーターが言い終わると同時に、ロングイの命令が飛ぶ。
「展開!」
アースラ格納庫の近くにある休憩室では、クロノ、リンディ、レティの三人で、今後の事を話し合っていた。
敵の情報も掴み、三時間後に出動する為の最終的な手はずを話し合っていた。
「クロノ提督、リンディ提督、レティ提督、大変です!」
そこに、エイミィが慌てて休憩室に入ってきた。
「何があった?」
聞き返すクロノ。
ちなみに、三人が飲んでいたのは順に、お茶・砂糖入りお茶・紅茶である。
「桐嶋時覇がいる次元の周囲の空間と魔力が、異常なスピードで修復されているのです!」
「何ですって!?」
驚くリンディ。
「まさか、ラジュナスの?」
聞き返すレティ。
「母艦らしき反応が僅かに確認されているので、他の組織の可能性もあります」
「第三勢力だったらマズイな。レティ提督、至急動ける局員を集めて頂けませんか?」
飲みかけのお茶をテーブルに置いて頼む。
「ええ、30分で集めます。クロノ提督と、リンディ提督、それと、エイミィ管制司令官は至急アースラへ」
「わかりました。クロノ提督とエイミィ管制司令官は、先にアースラへ。私は、上層部に掛け合ってきます」
「了解しました」
「はいはい、行きますよ、クロノ提督」
一足先にと、部屋を出て行くエイミィ。
「はぁ~。それでは、また後ほど」
続いて、呆れながらため息をついて、あとを追うクロノだった。
そのあと、リンディが上層部と掛け合ったが、一方的な通知だけで、こちらの話は一切取り次いでくれなかったそうだ。
これも、ローブの男の仕業とは、誰も気づくことはなかった。
管理局サイド編
第8話:始動する思惑(前編)
「…………はぁ!」
布団を履く様な、勢い良く飛び起きる時覇。
「って、ぐおば!」
体中に走る痛みに、変な叫び声を上げた。
まあ、腰を中心に後転しつつ、きりもみ回転しながら地面に15回バウンド。そして、電柱にぶつかって止まったのだから。命があるだけ、奇跡である。
ちなみに例の如く、グローブが淡く光っていた故、この程度で済んだに等しい。
「……しかし、何故(なにゆえ)魚屋に、冷凍マグロが?」
などと、論点の違う部分に疑問を持つ時覇。
そこでドアノブが音を立て、扉が開かれる。
「ん? 気がついたか」
シグナムが、水とタオルが入った桶を手に持って、部屋に入ってきた。
「どうだ、調子は?」
ドアを閉めながら尋ねるシグナム。
「体中が痛いのは、確か」
男ならここで『大丈夫だ』と、多分答えるのだと思うが、素直に答える時覇。
「それ以外は?」
「……平気っぽい」
少し体を動かして、確認した。
「あの人身事故のような状態だったのに、よく体が痛いだけですんだな」
呆れ口調のシグナム。
「まあ、回復力には自信はあるんで」
苦笑しながら答える。
「そういえば、瑠々は?」
「廼王寺瑠々の事なら、母上に相当絞られたそうだ」
タオルを絞りながら、どことなく怯えているシグナム。
(ママン……貴女は、何をしたんですか?)
横になった状態で、暗くなり始めて、星が出始めた空を見る時覇であった。
「シグナム、明日辺りデートしないか?」
「で、ででっ、でーとっ!」
顔を真っ赤にしながら、動揺しまくるシグナム。
おかげで、桶がひっくり返し――
「しまった!」
「あ!」
二人して慌てて受け止めようとするが――胸辺りに、水を被ってしまったシグナム。
しかも、同時に時覇も突っ込んできた。
「おわっぷ!」
「うわぁ!」
やはり、体が完全に治りきっていないため、自分自身を支えきれず、シグナムにダイブしてしまった。
「っ、何を――」
「ぁぐごが!」
全身に衝撃が走ったため、痛みが暴発して雄叫びを上げる時覇。
体勢は、シグナムの上に時覇が覆いかぶさった上に、顔は胸にあるという羨ましき状況だが、そうも、言っていられなかった。
「い、いかん!」
シグナムは、大慌てで時覇をベッドに戻した。
「え、えっと、こ、この場合は……」
母・謳華より貰い受けた、『ド素人でも判りやすい医療』という本を開くのだった。
その頃、ロビーの上から、大きな音が響いてきた。
「何をやっているのだ?」
少々困惑する父。
『ぁぐごが!』
続いて、時覇のうめき声。
「母さん、本当に大丈夫かな?」
いつもは、兄である時覇の事を気に掛けない真里菜だが、さすがに心配になってきた。
『い、いかん!』
「やっぱり……、付いて行ってあげるべきだったかしら」
こめかみに指を当てて少しばかり後悔する謳華。
そこで――ピンポ~ン! と、チャイムが鳴った。
「は~い!」
謳華は、玄関に向かった。
玄関先で、律儀に男がチャイムを鳴らす。
「隊長、本当にいいのですか? これは、命令違反ですが」
剣型デバイスを持っている男が、隊長に尋ねる。
「いいのだよ。どうせ、障害になるなら排除したほうがいい」
カードを懐から取り出すと、トンファー型デバイスに変化した。
『は~い!』
家から、女性の声が聞こえた。
「来ます」
ハンドガン型デバイスを構える女。
その言葉通り、玄関が開いた。
「どちら様でしょうか?」
ひょいっと顔を出した。
それが合図となり、魔力を込めたトンファーを力一杯、玄関に叩き付けた。
悲鳴すら上げる暇も無くそのまま吹き飛ぶ、謳華。
「魔力結界、展開!」
ハンドガン型デバイスを持つ女が空に向かって打つと、結界が展開した。
「行くぞ!」
トンファー型デバイスを持つ男――隊長を筆頭に、桐嶋家に雪崩れ込んでいった。
『どちら様でしょうか?』
のんびりと茶を飲む、父・桐嶋悟朗(きりしまごろう)。
娘も、テレビを見ているので、平和だと思った矢先――玄関が砕かれる音と、何かが壁にぶつかる鈍い音が聞こえてくる。
「何だ!?」
「きゃあ!?」
非日常的な音だけに、二人は声を上げた。
「おじゃまします」
そこで、コスプレ風の服を着た女性が、土足で入ってきた。
「ちょっとアン――もがっ」
悟朗は、娘の口を素早く塞いだ。
理由は、手に収まっている黒くて鈍く輝くモノを見たからだ。
「望みはなんだ? いや、その前に玄関に居た女性はどうした?」
「死んではいませんが、危険な状態とだけ言っておきます」
デバイスを構えながら言う、女。
「望みは、桐嶋時覇とシグナムの捕獲、または抹殺です」
その言葉に、悟朗は全てとは言えないが、最低の出来事は理解できた。
下から何かが砕かれた音が聞こえてくる。
『 !? 』
その音に、二人は反応した。
いや、反射的に動いたと言った方が適切化と。
時覇はと飛び起きたが、体はまだ不完全のために背を少し丸め、シグナムはドアを見た。
そして同時に、何かが広がっていくのを感じ取った。
「シグナム」
「ああ、これは魔力結界だ」
そう言いながら、レヴァンティンを起動させるが――
「――起動できない!?」
「この結界は、あらかじめ登録されている魔力以外は無力化されるのさ」
ドアを見る二人。
「ども~、ラギュナス人事管理部のスカウトマンの者です、って!」
トンファーを持った男が、場違いな挨拶をしている最中に、後ろの人に頭を叩かれた。
「隊長が出世できないのは、こういう事をしているからなのですよ?」
男は、呆れながら言った。
「いきなりで悪いですが、我々と共に来ていた――」
「あっ!」
いきなり声を出しながら、驚きの顔をする時覇。
隊長と男は後ろを振り向いた。
が、何も無く、部屋から窓が砕ける音が聞こえた。
「 !? 」
再び視線を戻すと、時覇とシグナムはすでに居なくなり、窓ガラスが割れていた。
「くっ! バス、ラランを呼んで来い、俺は奴らを追う!」
「アイアイサー!」
隊長は窓から飛び立ち、バスはラランを呼びに一階へ降りていった。
静寂と化す部屋。
そこで、独り出にクローゼットが僅かに開く。
「……行ったか?」
「ならば、奴らをお――」
「まだ早い。少し待ってから、一階に下りて様子をみよう」
上から窓が砕ける音が聞こえ、狭い庭にガラスの破片が降り注ぎ、一筋の光が軌道を描いていった。
「ん、二階から……時覇の所からか」
謳華を看病しながら冷静に分析する父――悟朗(ごろう)。
「よくわかるね」
タオルを絞る真里菜。
「それなりに、な」
娘の問いに、曖昧な答えを出しながら、タオルを受け取る吾朗。
「ララン!」
「どうした?」
廊下から響いてきた。
「ターゲットが外へ逃げ出した!」
「何!?」
「お前と合流後、すぐに来いと」
「わかった、いくぞ!」
外に出る、奇襲者たち。
そして、数十秒後――轟音が鳴り、遠ざかっていった。
「……お父さん、行っちゃったみたい」
様子を覗こうとした真奈美だったが、既に二人は玄関から出て行った跡だった。
「……あ、アナタ」
気がつく謳華。
「大丈夫か、謳華?」
「痛い所はある、お母さん?」
母に駆け寄る真奈美。
「それより……二人は?」
「シグナムと時覇の事か……大丈夫、そう簡単に捕まる事は無いさ」
柔らかい表情で、答える悟朗。
「もしかしたら、まだ家に隠れているかもしれんな」
「いや、確定だから」
などど、突っ込みを入れながら部屋に入ってきた、時覇とシグナム。
「シグナム義姉さま、大丈夫でしたか!?」
と、兄である時覇を無視して、シグナムに駆け寄る真里菜。
「あ、ああ、時覇のおかげで、戦闘を避けることができた」
真奈美の勢いに少々戸惑いながら答える、シグナム。
「だが、奴らが戻ってくるかもしれないから、早くココから出ないと」
「そうか……怪我だけはするなよ」
静かに言う悟朗。
「父さん、母さ……」
寝ている母が目に入り、言葉を無くす時覇。
「私は……大丈夫。……だから、行きなさい」
弱弱しく答える謳華。
「……母さん」
「事情は聞かないわ……一年前だって、いつの間にかいなくって。でも、キチンと帰って来たのだから」
(そうだ……一年前も理由も無く帰らなかったのに、理由も聞かずに「ただいま」と迎えてくれたのだっけ)
「……必ず、全て終わらせて帰ってくる。だから、安心して休んでいて」
母に言い聞かせると、父の顔を見た。
何も言わずに頷く父。
それに答えるように、時覇も頷き返す。
「真里菜……俺の留守の間、瑠々を頼む。アイツの暴走、変わりに止めてくれ」
「気が進まないけど……任された。でも、早めに帰ってきてよ? 私でも、止められるかどうかわからないのだからね」
事情は良く判らないが、両親が許可したからとやかくは言わない。
「了解。……シグナム、行こう」
「ああ」
部屋から出て行く二人。
その後、先ほど襲ってきた三人と出くわし、戦闘中に、時覇はシグナムを庇い、結果――左脇に穴が開き重症。
そして、遅れて到着する管理局。
時覇は、そのままアースラで治療兼保護観察に入るのであった。
拡大していくラギュナスとの戦いは……急激な加速を見せる事になる。
デバイス・XGの起動によって……。
管理局サイド編
第8話:始動する思惑(前編)・END
次回予告
先の戦闘でシグナムを庇い、重症になる時覇。
次第に、ラギュナスの目的が判明していく。
そして、時覇を呼ぶ謎の声は?
陰謀という螺旋と、仕組まれた運命を超える為の力が、今覚醒する。
管理局サイド編
第9話: 「鉄‐クロガネ‐」という名の篭手
に、ドライブ・イグニッション!
あとがき
改正といっても、言い回しの修正と効果音の訂正。
あとは、簡単なデバック。
いい加減、就職活動しなきゃ、不味い時期に。
とにかく、頑張りますよ。
そして、この話は相変わらず短い。(汗
制作開始:2006/6/1~2006/6/16
改正期間:2007/01/24~2007/1/31
打ち込み日:2007/01/1/31
公開日:2007/01/1/31
修正日:2007/9/27
変更日:2008/10/24