何かに出逢う者たちの物語・外伝Ⅰ   作:ダークバスター

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意識は深き闇の中
そこで、呼ぶ声が響く
力を求めるのか、と
今度こそ……、仲間を、家族を、愛する者を守る為の力を


第九話:始動する思惑(後編)

 

 

 アースラの医務室では、色んな機材やコード、チューブなどが張り巡らされていた。

 その中央に、時覇は眠っていた。

 

「時覇さんの容態は?」

 

 暗く俯いているシグナムに、問いかけるはやて。

「主はやて。……今の所、昏睡状態のままです」

 

 力無く答える。

 医務室の先生が、はやての肩に軽く手を置いた。

 はやては振り向いて頷くと、医務室の先生と共に、治療室を出るのであった。

 

「…………時覇」

 

 擦れて消えそうな声で呟きながら、ベッドの上で寝ている時覇の手を、ただただ握るしかないシグナム。

 その姿は、騎士として仲間を心配する者ではない事は、確かだった。

 

 

 

 

 

「ぐぅ!」

 

 桐嶋家を襲った部隊の隊長――リグアは、ロングイに殴られて、壁にぶつかった。

 リグアの口からは血が出てくる。

 

「貴様、勝手な行動は慎めと言ったはずだが」

 

 静かに言い放つロングイだが、心の中は怒りで一杯であった。

 

「…………」

 

 無言のまま、口から出た血を、袖で拭うリグア。

 

「弁解はあるか?」

 

 問い詰めるように言い放つが――

 

「ねぇよ」

 

 ぶっきら棒に言い放ちながら、背を向けて歩き出す。

 

「貴様は、ラギュナスがどういう存在か、理解しているのか?」

 

 その背中に、問いかける。

 が、振り返る事も、立ち止まることも無いまま歩く。

 

「知るか。ただ俺は、力を示すだけだ……俺の力を、な」

 己の要望を言い放つリグア。

 だが、その思考と発言が、命取りだった。

 

「――っぷぅ」

 

 体全体に衝撃が走る。

 ゆっくりと、しかし、震えながら振り返る。

 

「ぐふぅ……ろ、ロング……イ?」

 

 血を吐き出す。

 

「やはり貴様みたいな……ラギュナスの業を理解できぬ者は、不要だ」

 

 リグアの腹部は赤く染まり、デバイスの先端が突き刺さり、貫通していた。

 

「貴様は、ラギュナスの在り方を勘違いしている節がある」

 

 そのまま腹部から引き抜き、床に倒れるリグア。

 血は止まる事無く溢れ、廊下の床を染めていく。

 

「……貴様は、少しはラギュナスを理解してくれると思い、今まで多めに見ていたが。……正反対だが、結局あの管理局の上層部と同じだったと言う訳だ」

 

 薄れゆく視界が捉えた光景は、ロングイの周りに、光の玉がいくつも出現し始めたモノだった。

 

「さらばだ、リグア」

 

 それが、リグアの最後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

管理局サイド編

第9話:始動する思惑(後編)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 通路の方から、爆発音が聞こえ、振動が部屋に響く。

 その振動で、歩いていた者、立っている者たちは、床に倒れたり、近くの壁、椅子などにしがみついた。

 

「なっ、なんだ!? 敵襲か!?」

「い、いえ、内部――近くの通路からです!」

 

 いきなりの出来事に、慌てふためくオペレーターたち。

 ブリッジ全体が緊張に包まれる。

 とにかく状況確認! 急いで調査しろ! などの激が会話や通信で飛び交う。

 

「どうした?」

 

 そこでロングイが入ってきた。

 同時に、近くにいた人間は振り向き、この場を仕切る司令官役が駆け寄ってきた。

 

「たっ、隊長! 先ほど――」

 

 慌てて報告する司令官役だが、制止させる。

 

「ああ、あれは愚か者を始末しただけだ。諸君らが気にすることはない……奴らの状況はどうなっている」

 

 そこ言葉に固まる一同だったが、

 

「じょ、状況確認完了! 直ちに元の作業へ戻れ! 他にも連絡を入れろ!」

 

 司令官役が指示を放ち、元の作業へ戻っていた。

 そんな中、管理局の動きを報告を聞く。

 

「……よし。一時間後、アースラに再攻撃を掛ける。出られる者は全て出るように伝えろ。ここで、奴らを確実に潰すぞ」

 

 ロングイは、待機状態のデバイスを戦闘状態にし、地面に突きながら宣言するのだった。

 

 

 

 

 

 どの頃、アースラの会議室では、重々しい空気に支配されていた。

 その中にいるのは、リンディ、レティ、エイミィ、上層部の者――計四名だけである。

 

「――以上が、先ほどの戦闘報告です」

 

 エイミィが、その言葉で報告を締めくくった。

 

「……負傷した武装局員が合計で34人に、消耗率が58パーセントを超えるとは……奴らは一体何者なのだ」

 

 上層部の者が言った。

 心なしか、少し落ち着きが無いように見える。

 

「ええ、確かに。……管理局と同等、それ以上の戦力を持っていた事に驚きましたが……ロストロギアの技術を使ったデバイスに戦艦などと、私達の想像を遥かに超えた組織」

 

 呟くように言う、リンディ。

 

「それに加えて、本局と連絡が取れない状態に……未だ行方不明のなのはさん」

 

 頭を抑えながら答える、レティ。

 

「前途多難と言うよりも、八方塞だよ。これでは」

 

 上層部の者は、ウインドに表示されていた資料を閉じながら言った。

 その言葉に、黙る三人。

 その時、ドアの開閉音が会議室に響き、一斉に振り向いた。

 

「クロノ!」

 

 思わず立ち上がりながら、叫ぶリンディ。

 

「はぁ、はぁ……クロノ・ハラ、ぶふっ、ごほっ!」

 

 何とか立って入ってきたクロノだったが、先の激戦で再び負傷していたのだ。

 内臓が少し逝きかけ、左腕にはヒビ、左足は焼け爛れ、額は全体的に切れている。

「クロノ君、駄目だよ、まだ寝てないと」

 

 エイミィが、すぐさま駆け寄り、クロノの背に手を置いた。

 

「エイミィ……まだ、任務中だ、ぞ」

 

 途切れ途切れに答えるクロノ。

 

「もお! 医療班、大至急会議室へ! クロノ艦長が!」

 

 入り口付近だったので、小型設置用モニターで通信を飛ばす。

 

『わかりました、すぐに向かいます! 担架を急いで用意しろ! だから、薬品は足らないんだって何度言わせれば気が済む!』

 

 どうやら、向うは向うで大変だった。

 その切りそびれた通信の内容に、耳を覆いたくなるリンディ、レティ、エイミィであった。

 

 

 

 

 

『三番ボイラーが上がらないぞ! どうなっている、そっちは!?』

『六番ボイラー上がりすぎ、上がりすぎ! 出力を抑えろ! 吹き飛ぶだろーが!』

『おい! 誰だ、この配線担当は!? やりかけだぞ!』

 

 ゲシュ・ラ・ンペルドの動力室。

 作業員の激の飛び方は、狭い空間もあるせいか、ブリッジよりも反響が大きい。

 そんな慌しい中、一つの部屋だけ手づかずのままの場所があった。

 この戦艦の心臓部の一部である、動力源の部屋である。

 

「は~ぁ、ったく、何ちゅう悪趣味の悪い動力源だろうか。何度見ても吐き気が出るわ」

 東野は、頭をかきながら呆れ口調でボヤいた。

 回線を弄るわけでもなく、ただ数値と波長を見ているだけだった。

 

「そっちの調子はどうだ?」

 

 外から整備員が、声を掛けてきた。

 が、けして部屋には入って来ることはない。

 そう言う風に、指示をしたからである。

 

「ああ、問題無い」

 

 お気楽答える。

 

「そうか。そういえば、東野もスクランブル掛かっているんだろ? ここはいいから、早く準備しに行ったほうがいいんじゃないのか?」

 

 少し心配と先ほど思い出したような言い草をしてくる、整備員。

 あいつは、あいつなりの優しさでもある。

 故に、こんな動力源を見せたくは無かった。

 

「いや、ここは俺以外触らないほうがいい。下手すればドカンだからな」

 

 扉越しに会話する。

 何とか聞こえる範囲なので、互いに気にはならない。

 

「ははっ……在り得そうだから、お前は言うな」

「へいへい」

 

 頭に、二つほど怒りマークが現れるが、すぐに引っ込んだ。

 軽くノックがあった後、少し静かになった。

 そして、完全――とまではいかないが、ある程度いなくなった事を確認して、最後に動力源を見る。

 

「……ほんっと、ラギュナスは……完全に地に落ちた、な」

 そう言って、動力源をあとにするのだった。

 

「動力源が……時空管理局武装隊戦技教導官、高町なのはだからな」

 

 呟きながら、ドアを閉める。その閉まる音は、何と無く気の抜けた音が響く。

 そして、動力室を出て、直接転送室へ向う。

 慌ただしく、整備員やオパレーターなどとすれ違う。

 その途中で、デバイスを展開、防護服を纏う。

 しかし、いつの間にか張り詰めた顔をしていた事に気がつき、いつものお茶らけた表情に戻す。

 

「遅いぞ、東野」

 

 開けた空間に出るや否や、ロングイに指摘された。

 

「スマン、スマン。動力源が少々不安定だったから、調整をしていたんだよ」

 

 東野の言葉を聞きながら、懐から時計を出すロングイ。

 時計は、今時珍しい懐中時計である。

 金の刺繍が施されている故、素人から見ても高いと感じる一品である。

 それに加え、品と重みがあり、普通の人からは持ち歩くことを躊躇わせるほどの素晴らしい物である。それが、魅力とも言える。

 秒針が作戦開始時間5秒前になる事確認すると、懐に仕舞う。

 

「……時間だ、出るぞ!」

 

 ロングイを筆頭に、武装した魔導師たちが、大声と共にデバイスを掲げた。

 

「ルナスティ!」

『了解――転送開始!』

 

 次々と武装した魔導師たちが光に包まれて、消えていった。

 

 

 

 

 

 アースラの会議室に、警報が鳴り響く。

 

「何が起きた!」

 

 上層部の者が、ブリッジに通信回線を開く。

 その画面には、他の女性オペレーターが何かの指示を出し、後ろでは局員が走り回っていた。

 そして、女性オペレーターは、通信回線が開いていたことに気がつき、慌てて向きなおす。

 

『あっ、すいません! 現在詳しい詳細は確認中ですが、武装したラギュナスがこちらに急接近しています! 数、約24!』

「くっ!」

 

 上層部の者は、歯を食いしばった。

 

(何が安全な任務だ! これでは、話がまったく違うではないか!)

 

 聞いていた話とは全く違うことに、心底怒りを覚える。

 安全かつ、確実に昇進できる任務と聞いて飛びついたのだから。

 

「直ちにスクランブルを! ここから離脱を最優先、武装局員で動けるものは!?」

 

 別の回線から、リンディの指示が飛ぶ。

『それが、10名たらずで……あとクロノ艦長が』

「まさか――出撃したの!?」

『はい……、非武装局員が総出で止めたのですが』

 

 悔やむ表情になる、女性オペレーター。

 

「とにかく、発進を! 私も出ます!」

 

 席を立ちながら、怒鳴るように言い放つ。

 

「リンディ提督!?」

 

 上層部の者は、リンディの発言に驚いた。

 

「レティ提督、あとの事はお願いします」

 

 上層部の者の発言を気にも留めず、レティに後を託す。

 

「わかったわ。あなたは息子を」

 

 安心して。と、言わんばかりに微笑みながら答えを返す。

 

「ええ」

 

 その言葉を聞き、堂々と会議室を出て行く。

 その背中は、時空管理局提督の姿ではなく、我が子を迎えに行く一人の母親の姿だった。

 

「クロノたら、コレが終わったらおしおきね」

 

 などと、場違いなことを口走るリンディであったが、我が子可愛さゆえ共言える発言だった。

 

 

 

 

 

 取り付かれていたモニターには、外の戦闘が映っていた。

 負傷しながらも、ロングイと戦うクロノ。

 アースラを守るために、リンディが結界を張る。

 はやてとフェイトの即席コンビネーションの展開。

 他の武装局員たちも、お互いをカバーし合いながら、武装した魔導師たちと戦う。

 だが、優勢とは行かず、むしろ押されているのだった。

 たかが一人、されど一人。

 状況を覆せる程ではないが、少しは有利になる。

 そんな想いを胸に決意を固め、デバイスと防護服――バリアジャケットを展開するシグナム。

 そして、後ろを振り向き、時覇を見た。

 

「時覇……すぐに戻る」

 

 それだけ言い残して、医務室を出て行った。

 

 

 

 

 

「ぐあっ!」

 

 ロングイの蹴りを受け、後退するクロノ。

 ロングイは、すぐさま腰に手を回して、マテリアルを取り出す。

 

「マテリアル、セット! ――ボンバー・エクスキューションシフト!」

 

 デバイスのマテリアルを素早く取り替え、魔法を放つ。

 空から、ボンバー――爆砕魔法の雨がクロノに降り注いできた。

 

「くっ――がっ!」

 

 手を上空に掲げてシールドを展開しようとしたが、傷の影響で痛みが走り、腕を押さえる。

 

「シュツルムファンケン!」

 

 ボンバーの一つに当たり、他のボンバーも巻き込んで爆砕して消えた。

 

「大丈夫か? クロノ提督」

 

 クロノの盾になるように立つ。

 

「すまない、シグナム」

 

 礼を述べるクロノ。

 

「来たか……ヴォルケンリッターの将・シグナム。時覇はどうした?」

 

 少し憎しみを込めた様な感じで言う。

 

「お前に答える義理は――」

 

 切り掛かるシグナムと、それに応戦するように、受けの構えを取るロングイ。

 

「――無い!」

 

 ぶつかり合うデバイス。

 そして、上段、中段、下段と多彩な組み合わせで切り掛かるシグナム。

 だが、それを受け流し、時にはかわすロングイ。

 

(テスタロッサよりも――早い!)

(高速戦闘に慣れているのか。だが――アイツより遅い!)

 

 再びぶつかり合う。

 そして――

 

「紫電一閃!」

 

 ロングイが横に受け流すと同時に、上から二撃目を放った。

 

「ちぃ!」

 

 ロングイは、レヴァンティンの面を叩いて弾く。

 その勢いで、吹き飛ぶシグナム。

 後ろに飛ぶロングイ。

 

「ブレイズカノン!」

 

 予測していた場所に来たロングイを狙い撃ちにするクロノ。

 が、それよりも素早く振り向く。

 

「ザンバー・ストライク!」

 

 ロングイは、デバイスをランサーモードからザンバーモードに切り替え、ブレイズカノンを相殺する攻撃を放った。

 

 

 

 

 

 闇。

 時覇は闇の中に浮かんでいた。

 上も、下も無い浮遊感。

 下手をすれば左右の感覚もなくなる。

 だが、動かない。

 いや、動くつもりはなかった。

 故に、闇に取り込まれつつある意識を、流れに任せる様に、身を委ねている。

 

“我が声を聞き取れる者よ、目覚めよ”

 

 そんな時――空間一杯に響き渡るような声で語りかけてきた。

 

(……誰だ、お前?)

 

 とにかく気になったので尋ねてみる。

 

“力を求めるか?”

(イラネ)

“即答かい!?”

 

 さすがの声も、驚きを隠せないようだった。

 なんせこの瞬間のやり取りは0.1秒――ほとんど一人突っ込みの反応速度であるである。

 

“ほらっ、たとえば……欲しいモノがあるが、手に入らない。だから、力を使って手に入れたいとか、な? 何かないのか?”

 

 動揺しつつも、力を求めるように進めてくる声。

 だが、時覇にとって、力は――

 

(力、ね。……不要としか言えんな。あっても、使いこなせるわけがない。俺みたいな未熟者が)

 

 何かを悟った様に答えを返す。

 

“まだ、悟るのは早いのではないか?”

(…………)

 

 無言。

 沈黙を選び、闇に取り込まれることを選ぶ。

 

“本当に、そう思うのか? 『      』の者よ”

 

 その言葉に、時覇の意識は闇を拒む。

 溶け込むことを拒否し、自分自身さえも拒否しようとした。

 が、再び闇と同化するために、意識を溶け込ませるように沈める。

 

(……昔の話だよ。今となっては、ただの一般人と変わりない)

 

 軽い口で答えるが、何処と無く後悔と虚しさを感じる声である。

 

 

 

 

 

 上空は、色々な光が飛び交っている。

 その中に、一際輝く二つの光――白と黄と一つの黄緑が、空を舞い踊っている。

 魔法弾が飛び交い、残撃が舞う。

 それは――戦闘という名のワルツとでも表現するべきか。

 

「行くよ、はやて」

「フェイトちゃん……、わかった」

 

 目の前に居るラギュナスの銃使い――ゴスペルに自分自身の最強の技を繰り出す決意か固める。

 

(雰囲気が変わった……、でかいのがくるか)

 

 さすがのゴスペルも、負傷しているとはいえ、管理局のSクラスを二人も同時に相手をするには骨が折れる勢いだった。

 それでも負けるわけには行かず、使いかけのカードリッジを捨て、満タンのカードリッジを装填し直す。

 

(なら――タイミングを合わせる!)

「ラグナロク――」

「プラズマザンバー――」

 

 二人が同時に魔法を放とうとするが、

 

「ブラッディ・ガトリング」

 

 重ねるようにかつ、一足早く魔法を打ち込む。

 そして、言葉通りの血の様に赤い弾が、フェイトとはやてを襲う。

 

“ディフェンサープラス”

“パンツァーシルトプラスです!”

 

 とっさに、魔法を切り替えるバルディシュとリィンフォースⅡ。

 それでも、盾越しからの衝撃は、半端ではなかった。

 

 

 

 

 

(この命は、貰い物で……、形見同然の品物だからな)

 

 思い出しながら、ポツポツと呟く。

 忘れもしない、あの時の出来事。

 未熟。

 自惚れ。

 うつけ者。

 そんな負の想いが渦巻く。

 

“確かに。……だが、それは関係無い”

 

 声は、それを振り払うかのように否定する。

 

(今さら、どの面して出て行けばいいのか)

 

 自傷するかのような言いようで語る。

 

“このままここで朽ち果てるのか? 母との約束も守らずに? 愛する者を守らずにか?”

 

 声は、的確に時覇を打ち込んでいく。

 

(…………)

 

 時覇もまた、声に的確な想いを打ち込まれ、黙り込む。

 

 

 

 

 

 レニアスフェイトの砲撃魔法をかわし続ける、ライガ。

 本来のフェイトは、高機動接近戦が得意とするが、レニアスフェイトは、なのはに顔負けの砲撃魔法を放ってくる。

 

「ディバインシューター、GO!」

 

 レニアスフェイトが、ライガに向けて放つ。

 50以上のシューターが、ライガを襲う。

 それはまさに、高町なのはの姿と被っていた。

 

「ラウンドシールド!」

 

 何のためらいも無く、シールドを展開するライガだが、

 

「そういくかいな――バリアキックブレイク!」

 

 レニアスフェイトの魔法が届く前に、いつの間にか現れたギアのバリアキックブレイクが炸裂し――

 

「 !? 」

 

 問答無用で打ち砕かれる。

 ギアは、それに満足したのか、ライガとすれ違い様に口元を僅かに緩める。

 それは一瞬の出来事。

 だが、ライガはしっかりとその顔が脳裏に焼きついた。

 そのまま振り向こうとするが、

 

「しまっ――」

 

 直撃を受け、爆発に包まれた。

 

 

 

 

 

“どうするかは、己自身で決めるんだな”

 

 吐き捨てるのではなく、問い掛けでもなく、ただ、尋ねる様に言う。

 その言葉は、闇の世界全体に響き渡るような感覚だった。

 同時に、飲み込まれる感覚は、いつの間にか無くなっていた。

 

(…………)

 

 沈黙。

 可でも不可でもない。

 ただ答えない、無の回答――沈黙である。

 

“デバイスの保管場所で……、貴様を待つ”

 

 それが、闇の――死と生の狭間の世界での、声との最後の会話だった。

 そして、時覇は意識を取り戻した。

 自分の体は、色んなモノが取り付けられている事に気がつく。

 が、呆気ないほど簡単に外れた。

 体の痛みも無い。

 声の力かどうかはわからないが、どうやら傷も癒えたらしい。

 そのままベッドから起き上がる際に、モニターが目に入る。

 そこには、シグナムたちが戦う姿があった。

 見るからに不利だと判る。

 

「……すまない、再び戦場に出るよ」

 

 時覇は上を見上げ、目を瞑りながら、既に無き恩師に謝る。

 ベッドを下りて辺りを見渡したが、私物は無く、何も持たずに医務室を出ていた。

 とにかく、謎の声が言っていた場所に向う。

 度々振動が起きたが、とにかく進んだ。

 

「ロングイ……やはりお前はアイツを……――急がないと」

 

 そう呟きながら進み、走り続ける。

 しかし、管理局の局員や関係者には会わずじまい。

 そして、デバイスの保管場所にたどり着いた。

 

「……ここか」

 

 扉に触れようと伸ばしたが、独り出に扉が開いた。

 そのまま中に入ると、中央にアクセサリーが浮かんでいた。

 形は、キューブの枠組みタイプで、中心に濃い紺色の球体の水晶が埋め込まれていた。

 ふと、横を向くと画面に、アクセサリー――デバイスと、名前と詳細らしきモノ、メンテナンス結果が記載されていた。

 再び浮かんでいるデバイスに視線を戻すと、躊躇う事無く掴んだ。

 

「……行けるか、デバイス・XG?」

 

 確信を持って尋ねる。

 

“問題無い。……待っていたぞ、真なるマスターよ”

 

 デバイス・XGは心待ちにしていたかのように答える。

 それが必然だったかのように。

 

「まあ、ロングイを止めないとヤバイし、シグナムも助けないとな」

 

 苦笑しながら言う時覇。

 次の瞬間、顔つきが変わった。

 

「いい加減、馬鹿騒ぎを止めさせないと、先代に申し訳が立たない」

 

 自分の手前に持ってくる。

 

“詳しくは聞かないが……そろそろ出るか”

「ああ、その前に一つ」

“なんだ?”

「デバイス・XG、ってのは、少しダサいから、名前を変えるぞ」

 

 おちゃらけな笑い顔で、いきなりシリアスな雰囲気をぶち壊す時覇だった。

 が――

 

「好きにしろ。ただ、ダサい名前は却下だぞ」

 

 言葉とは裏腹に、声は嬉しそうだった。

 

 

 

 

 

「今のアースラの状態はどうなっているの!?」

 

 レティの檄が飛ぶ。

 

「第一、第四、第五エンジンをやられて航行不能!」

「第二、第三、共に出力20パーセントが低下! なおも低下中! このままでは艦の機能が維持できません!」

 

 ブリッジでは、どんどんアースラの不調を告げる報告しか聞こえない。

 朗報は、戦闘を含め――未だに無い。

 

「何とかならんのか!?」

 

 上層部の者が、両手でパネルを叩きつけながら、オペレーターに叫ぶ。

 

「手の空いている大体の者は、エンジンの修復に行かせましたが、修理が困難な状態らしく、最低でも一時間は掛かるそうです!」

「くっ! 無能な連中が!」

 

 激怒する上層部の者。

 さすがのレティも、怒りを爆発させそうになったが階級が上の為、何とか堪える。

 いや、正確には言えないのが適切である。

 

「ん、これは――大変です、レティ提督!」

 

 他のオペレーターが叫ぶ。

 

「今度は何!?」

 

 八つ当たり気味に答えるレティ。

 少し体を縮み込ませるが、躊躇している暇は無いと、勢いで報告した。

 

「デバイス・XGのエネルギー増大を確認! このままでは起動します!」

「何だと!? すぐに止めろ!」

 

 顔色を青くしながら、激を飛ばす上層部の者。

 

「はっ、はい!」

 

 レティよりも素早い反応に驚くが、すぐ作業にかかる。

 

「――くっ、駄目です! 止める事が出来ません!」

 

 その言葉に、ブリッチに戦慄が走る。

 このままでは、五年前の再来が起きる可能性があるからだ。

 だが、そこで上層部の者はとんでもない事を口走った。

 

「すぐに転送だ! 早くしろ!」

「えっ、あっ、いや、その」

 

 脈絡も無い命令に困惑する、オペレーター。

 

「ええい! こちらで転送させる!」

 

 上層部の者はキーボードを操作する。

 

「どこへ転送させるのですか!?」

 

 その行動にギョッとなり、レティが急いで問いただす。

 

「そんなもの決まっているではないか! 奴らのど真ん中にたたき出す!」

 

 顔を真っ赤にさせながら怒鳴り散らす。

 その言葉に、言葉を失うレティとオペレーター一同。

 上層部の者は、周りの意見、様子などお構いなしに操作を続ける。

 

「それでは、クロノ艦長や他の武装局員たちが――」

「そんなもの、どうでもいい!」

 

 エイミィの言葉を看破する。

 

「アナタという人は!」

 

 ついに溜まりに溜まった怒りを爆発させるレティ。

 もう、何時でも襲い掛かる勢いである。

 

「私は、この事を報告する義務がある!」

「そんな理由で!」

「皆、聞こえる! 大至急そこから離れて!」

 

 外にいる局員全員に、通信を行うエイミィ。

 

「勝手に通信をするな! 奴らにバレたらどうするつもりだって――貴様! 何をするつもりだ!? 離せ、離さんか!」

 

 そこで、レティが上層部の者に飛び掛り、床に押し倒したのだ。

 

「誰でもいいからコイツを取り押さえて! 早く!」

 

 その言葉に、近くにいたオペレーターや局員が一斉に上層部の者に飛び掛った。

 

『はぁ、はぁ――何があった!?』

 

 そこで、クロノからの通信が入ってきた。

 唖然と見ていたエイミィがハッと気を取り直し、モニターに体ごと向け直す。

 

「ごめん、クロノ君! 詳しいことはあとで、それよりデバイス・XGが起動しそうなのよ!」

『何だって!?』

「それで、どうやっても起動を止める事が出来ないの!」

 

 少しだけ沈黙。

 上の方では、まだドタバタしているが、徐々に収まりつつある。

 そして、ドアが開くエアー音が聞こえる。

 どうやら、上層部の者はブリッジから退場になったらしい。

 

『くっ……一か八か、こっちのど真ん中に転送してするんだ』

 

 痛みを答えつつ、指示を出すクロノ。

 

「それじゃあ、クロ――」

『今はそれしかな――ごふぅ、ごふぅ!』

 

 思いっきり怒鳴るが、力み過ぎで僅かに血を吐きながら咳き込む。

 エイミィは、一瞬だけ躊躇したが、クロノの口から出た血を見て――腹をくくった。

 

「わかったわ!」

 

 キーボードを打ち込む。

 他のオペレーターもそれに気がつき、作業を手伝ってくれる。

 そして――

 

「いくよ、クロノ君!」

 

 決定キーが押された。

 

 

 

 

 

「じゃ、これで決まりだな」

 

 時覇の前には、色んな名前の字が書かれたモニターが浮いている。

 デバイス・XGが展開してくれたモノである。

 

“中々古風な名前ですな”

 

 感心したように答える、デバイス・XG。

 

「だろ? ――っと、そろそろだな」

 

 地面に魔方陣が展開される。

 

“ああ、転送反応確認――外に出されるぞ”

 

 感心した声で、マスターに助言する。

 

「なら丁度いい。魔力の節約になる――バリアジャケット展開」

 

 立ち上がりながら頼み、デバイスと防護服を想像する。

 

“心得た”

 

 考えが纏まり、バリアジャケットを展開。

 展開の光と同時に、転送の光に包まれた。

 

「いくぞ……起動――鉄(クロガネ)!」

“ああ!”

 

 

 

 

 

「転送、く――何だ、この魔力は!?」

 

 増援と思ったロングイだったが、異様な魔力反応に驚いた。

 波の様に体全体を飲み込み、肌が突かれる、引っ張られる、圧縮される。

 そんな感覚が襲い掛かる。

 

「この魔力――まさか、間に合わなかったか!? ――――!」

 

 悔やむ表情のクロノ。

 しかし、体の治りは不完全。

 故に、飲み込まれた瞬間、体全体に激痛が走る。

 視界がチカチカし、髪の毛の先から爪先まで電撃が駆け抜ける感覚が襲う。

 ロングイと間合いを取っていたシグナムは、すぐにクロノの元へ飛んで、彼を支える。

 足しになるか判らないが、防御魔法を展開する。

 他の者たちも戦闘を中断し、何が来るのか唖然となっていたが、波に飲まれると急いで退避を始める。

 肌で魔力を感じ取れるほどの強大な力が、転送場所から放たれている。

 

『――て、転送完了!』

 

 通信で、エイミィが転送を戸惑いながら、終了した事を告げるのだが、未だに光は収まらない。

 エイミィが戸惑う理由は、魔力値の測定結果。

 転送中に測定したが、メーターが振り切れた。

 何かの間違いかと思い、再度計測、計測、計測――三回もやり直したが、結果は同じだった。

 なんせ、8桁の魔力カンウターを振り切っているからだ。

 そして――光が収縮していき、光の玉になった時、人の手より一回りか二回りほど大きい手が、光を裂く。

 腕辺りからは、廃熱が行われる。

 その光景に、皆唖然となった。

 そして、一部の者は驚愕した。

 何故なら、すでにデバイス・XGは起動していたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 呪われたデバイスは――呪いを振り払い、戦場に現れた。

 本来の使命を果たす為に。

 前の主が行っている出来事を、止める為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

管理局サイド編

第9話:始動する思惑(後編)・END

 

 

 

次回予告

ついに起動したデバイス・XG――ガンドレット・鉄(クロガネ)!

正常に起動した事に、驚く一同だが、時覇に憎悪を燃やすロングイ。

何故そこまで憎悪を出すのか?

そして、時覇の知るラギュナスとは?

 

 

管理局サイド編

第10話: 「鉄‐クロガネ‐」という名の篭手

 

 

に、ドライブ・イグニッション!




あとがき
 ……ラギュナスサイド書いたら、もう一度、一話目から改正しますね。
 何度改正すれば気が済むんだろう、俺?
 技術向上中なので、何度でも改正していきますね。
 色々進めながら。
 で、コミケにでも出展しようかなと考えるのである。
 まあ、まずは近くのコミケで。
 だって、管理局サイド全部まとめると、軽く100ページは行くから。
 一話一話は短くとも、まとめれば短編小説の厚さに。
 チリも積もれば山となる。
 チリは、作品。
 積もれば山は、作品の量。
 これは努力にも当てはまる方式。
 先人の言葉、いい言葉を残してくださいましたね。

 言葉は魔法。
 想いは願い。
 努力は強さ。

 このフレーズ、いい感じじゃん♪
 今度出そう。

 最後に、今まで書いて公開した小説の中で現在(2007/2/13)に置いて、一番長いと作品です。






制作開始:2006/6/16~2006/6/18
改正期間:2007/01/24~2007/2/13

打ち込み日:2007/2/13
公開日:2007/2/13

修正日:2007/9/27
変更日:2008/10/24
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