だが、同時に運命の歯車が動き出す瞬間でもある。
幾重にも交差する運命の輪、そして散らばっていく。
そして再び、一つになろうと集まり始める序章だった。
「私は、リューナ。リューナ・バウンテッド、宜しくね」
リューナは笑顔で言った。
「俺は桐嶋時覇、時覇が名前だ。宜しく」
と、手を差し出した。
そこでハッは気がついた事がある。
今まで自分から握手を求めることなど、一度も無かったのだから。
「ええ」
リューナも差し出して――乾いた音が鳴り響く。
手のひらが痛い。怪我しているから、なお痛い。
理由――弾かれたから。
しかも天使の様な笑みのままで。
ヒリヒリと微妙に痛む手を見る時覇。
……新手のイジメか? イジメなのか? それとも新手の宗教の挨拶?
最後の一言はともかく、そんな言葉が脳裏を過ぎる。
「あ、あの~」
汗を出しながら、尋ねるリューナ。
そして、訝しげに見る時覇。
何とも言えない雰囲気が漂う間と空間。
そして、リューナが口を開く。
「握手ですよね、これ?」
「…………全然違う」
看破入れようと思ったが、あえて間を空けてから答えた。
「ええ!? そんな、男性から手を差し出してきたら、その手を叩くのが握手だと兄から……」
本気で驚いている。
こいつの兄貴の頭の中が見たくなった。
いや、シスコンという言葉が脳裏に過ぎるが、それよりも突っ込みが発動した。
「どこの国の握手だよ! ってか、うんな握手あってたまるか!」
と、激しく突っ込みを入れる。が――
「――――!」
無言のまま、ベッドの上でもがく。
どうやら叫んだのが良くなかったらしく、体全体に激痛が響いた。
「ああ! え、え~と、医療班の方、至急来てください!」
ナースコールらしきモノで通信をしていた。
その後は記載するまでも無く。
で。
「以後、安静にしていてください」
普通に言われ文句を言う看護士。
外見は17歳前後の女性。
髪は緑色で、ロング。顔立ちは、まだ幼さを残している。
しかし、腕はベテラン顔負けである。
が、後から歳を聞いたが、25歳で思いっきり泣かれた。
お陰で泣き止ますのにも大変であった。ついでに回りからは白い目で見られるは、リューナからはお灸を据えられる羽目になるのは、別の話である。
「わかってます、痛いのは嫌いですから」
時覇は、苦笑と苦痛と呆れが入り混じった、何とも言えない表情で答える。
「それでは」
苦笑しながら、看護士が出て行く。
それはそうだろう、原因と理由を話したら、爆笑する者から堪える者までいたのだから。
それほどリューナの兄は、妹にゾッコンだと判る。いや、既に父親の心境か?
「さっきも行った通り――」
「わかってますよ」
真っ赤な顔をしながら、そっぽ向くリューナ。
看護士たちが来た時に、握手を話して、笑い者になってしまったのだから。
こうなるのは、当然であるが。
「だが、今一番気になるのは……何故君が、ネコミミを付けていることだ」
ネコミミを指差した。
そう、看護士が付けていったことは分かったが、何時に付けたのかが分からなかった。
まあ、そんな事があって彼女――リューナと出逢い、兄であるロングイと出逢い、魔法と出逢いであった。
だがこの時から、この出来事が仕組まれたモノだとは、思っても見なかった。
そう気づかされたのは、今起きている戦いが終わった後だった。
管理局サイド編
第11話:過去という名の罪
「せい!」
ロッドモードで、強化魔法を腕とデバイスに掛けて、殺傷率を上げて殴りかかってきた。
「ふん!」
だが時覇もまた、左腕に身体強化魔法を掛け、弾き飛ばし、右腕のデバイスで殴る。
が、体を右に捻りってかわし、ランサーモードに切り替え、顔面目掛けて突いてきた。
首を前に傾け、ギリギリでかわす。それと同時に、後ろの髪の毛が数本だけ、持ってかれる。
そして、右腕を力一杯横に振る。
さすがのロングイも、これには避けられず、防御魔法を発動。不意に弾かれた為、驚きの表情を浮かべる時覇。
そのままロングイは、オーバードライブを起こして、防御魔法の波動で吹き飛ばす。
吹き飛ぶと思いきや、何とか耐え抜き、再び殴りかかる時覇。
交差する信念と想い。
交差させる運命の悪戯。
交差していく過去。
「これが、アタナのリンカーコアです」
と、オペレーターの人が、俺のリンカーコアを見せてくれた。
「これがリンカーコア……鮮やかな緑なのか」
大きなスクリーンを見て、驚く時覇。
「あと、あなたの魔力指数なのですが……もう一度検査させてもらえないかしら?」
「何で?」
と、オペレーターに聞き返すリューナ。
ここの設備は、時空管理局に置いてある機材の質は劣るが、性能面では10年先を行っている。
機械の故障が無い限り、再度計測は無意味である。
「その……スクリーンの数値を見てください」
二人はスクリーンの数値を見て、リューナは驚き、時覇は首を傾げた。
「……再調査、許可します」
その言葉に、再び医務室へ連行されていった時覇。
そのスクリーンに表示されていた数値は、数度に渡り厳重に検査したが、結局覆る事はなかった。
桐嶋時覇、魔力数値――2435万
ラギュナス創設以来、前代未聞の一般人として、名を刻んだのだった。
いや、それ以前にどんなに時空を見回しても、ここまで高い人間は子供でも数えられる数字しかいない。
「ぐあっ!」
ロングイの上段蹴りが、時覇の頬を蹴り抜く。
数回転しながら墜落したが、何とか体勢を立て直し、そのまま地面に向い――
「グランド・クエスト!」
“――発動! って、なんじゃこりゃ!?”
クレーターとなった地面から、あちらこちらに石の柱や壁が、縦に斜めに地面から出てきた。
そして、広範囲に何かの遺跡の跡地が出来上がった。
そのまま降下し、物陰に隠れこむ。
“お、お前が使う魔法、無茶苦茶にも限度があるぞ”
クロガネの言葉を無視しつつ、今度は懐からカードを数枚取り出し、扇子の様に広げた。
そこでふと止めて、カードを見る。
「MGK、か」
リューナが好きだった、カードゲーム。
今はまだ全盛期であるが、同時に末期でもある。
ルールの改正に、制作・販売会社の不祥事、ゲームバランスの崩壊などが目立ってきたからである。
お陰で、MGK離れが起き始め、第二世代カードゲーム・RGK――ロボットをベースにしたモノである。
それに移り変わる者が多いいのだが、時覇は違った。
理由は、思い出が詰まったカードゲームを手放したくは無かったから。
ここに来て5日目。
本調子で無いので、療養を兼ねて部屋で本を読んでいた。
その時、リューネが暇だと言って、部屋に乱入し、人の荷物を漁っていた時だった。
「時覇、これ何?」
と、読書中だった時覇は、顔を上げた。
ちなみに、読んでいた本は『魔法の心得』という本である。
そして、リューナの手には、時覇が持っていたカードケースだった。
「 ? ああ、MGKか」
「MGK?」
カードケースを訝しげに見ながら、ケースを空けて、カードを一枚抜き出した。
「ああ、俺の世界のカードゲームだよ。モンスター同士を戦わせるのもよし、コレクションとして集めるのもよし、大ヒットカードゲーム。今じゃ、世界大会や、賞金が出る大会まであるんだからな」
「へぇ~、こんなカード同士で戦ってお金が貰えるなんて……変わった世界なんだね」
と、持っていたカードの表裏を見ながら言った。
で、その後、やってみるかと進めてみたら、喜んで受けてくれた。
――結果は……15戦15勝で、リューナの貫禄勝ち。
理由は、聞かないでくれると助かる。
その時の事を思い出し、苦笑する時覇。
そして、そのカードを懐に仕舞い直して、別のカードを出す。
うん、今度はトランプだ。そう確認した時、背後からプレッシャーを感じ、前に前転する様に飛び込んだ。
そこで閃光が走る。
と、背凭れ(せもたれ)にしていた柱が、横一線に切れ、空中にきりもみ回転しながら吹き飛んだ。
そして、相手をロングイと素早く確認すると、トランプを放つ。
と、投げた同時に、目くらまし魔法を発動させる。
ロングイも、物理防御魔法を展開しながら、腕で目を覆う。
それを確認した瞬間、素早く物陰に隠れ、その場にあるモノをセットする。
気づかれない様に、攻撃して意識を反らさせた。
だが、ロングイはこの作戦に気づいているのではないかと、擬似暗鬼掛かりつつあった。
何故なら、この『あるモノ』は、ロングイが作ったモノだから。
それでも必死になった。
ロングイを抑えるには、これしかないのだから。
時覇自身の目測では、昔あった魔力は2000万を超えていたが、今は5分の1――400万くらいしかない。いや、それ以下かもしれない。
だが経験からして、最低でもあと200万くらいの魔力が残っていると確信している。
あの出来事以来、魔力の消耗の仕方が普通の魔導士より、早過ぎる体質になっている。その代わり、魔力回復も早いが。
故に、早期決着が望ましい。
魔力の弾丸が飛び交い、拳と槍、剣、杖が幾度と無く交わる。
全てが判り、全てが見えず、全てが曖昧となった現実。
否定された訳ではなく、ただ生きがいを奪われただけの男。
生きがいを奪っていまし、己の軽率な行動を呪い続ける男。
その二人が折りなす、壮絶な、すれ違いの劇。
片や運命を嫌う男が一人――ロングイ・バウンテッド。
片や運命を呪う男が一人――桐嶋時覇。
そして、この劇は一時の終焉を迎える事になる。
全て設置が完了し、ロングイを特定の場所に誘き出した。
「いくぞ、ロングイ――リミッター解除!」
その言葉に反応するように、あちらこちらから青白い光が輝きだす。
「これは!? ――くそ!」
青白い光と配置状況を見て、『あるモノ』を思い出した。すぐ様、上空に立とうするが、時既に遅し――
「発動――グラビティ・フィールドバインド!」
“起動シークエンス作動!”
『あるモノ』――即ち、広範囲用型バインド発生装置である。
カード型装置を、ある程度予め決められた一定の位置に配置し、一定の魔力が溜まった時にリミッター解除する事により発動可能の装置である。
本来は対大型もしくは対多数捕縛用であるが、単体――しかも人間一人だと、強力すぎる故に5人以上、もしくは10メートル以上の大型の存在以外の使用は禁じられているシロモノである。
この条件以下で使用すると、高出力の影響で対象の蒸発が起こる可能性があるからである。
「防壁、全方向!」
“フルフェイス・バリア”
体全体を覆うように、半透明のバリアが展開され、ロングイを包み込んだ。
それを束縛する様に、光の触手がバリアに絡みつく。
「くそ、まさかコレを使ってくるとわな」
睨みつけながら、時覇を見る。
「しかたないだろ、俺にはお前とタイマンはれる魔力は無い。だから、使えるものは使わないと……たとえ、それが曰く付であろうとも」
と、懐からカメラに使うような、メモリステックを取り出した。
「まさか……それは!?」
「ここでお前を止める。じゃないと、あいつに顔向けが出来なくなる」
そう言いながら、デバイス――クロガネにセットする。
“最終プログラム認識、完了。しかし、プロテクトの問題により、一旦初期化します。その間、魔法などのサポートが行うことが出来ません。宜しいですか?”
「構わん、続けてくれ」
“……了解”
データを読み取った瞬間、クロガネは正気を疑ったが、時覇は本気だった。
この危険すぎる魔法を、使う意味を悟った顔でもあった。
劇は続く……今は、僅かな休憩時間。
「こいつは?」
と、リューナから渡された緑色の玉が付いたキーホルダー。
「それは、アナタのデバイスよ」
「俺の……デバイス?」
首を捻る時覇。
「あ、ごめん。まだ説明してなかったよね? ――これが私のデバイスよ」
謝りながら、デバイスを展開して見せてきた。
ちなみに、リューナのデバイスの待機状態が指輪で、通常はごついヨーヨーである。
ついでに、そのヨーヨーを受け止める為の手袋も、相当な物だった。
「こんなのがデバイスなのか?」
リューナの手に収まっているヨーヨーを眺める。
「ううん。これは特殊な部類に入るデバイスだから、大抵は杖なの。私は、なんか杖じゃつまんないからって、無理言って作って貰ったの」
と、懐かしの『犬の散歩』や『ループ・ザ・ループ』をやって見せた。
「ってな訳で、展開して」
「訳がわからん」
「と・に・か・く、イメージして。デバイスと身を守る為の服を」
と、渋々思いながら目を瞑り、デバイスと防護服をイメージした。
が、デバイスに反応はなかった。
戸惑うリューナを尻目に、時覇は首を捻るばかりだった。
――それから、数ヶ月たったある日の出来事。
リューナとも仲良くなり、ロングイと馬鹿やっては怒られていた日々だった。
時覇は、生まれ持っていた天性の才があった。そして、いつの間にかラギュナスのロストロギアの解析とその技術を応用したモノの解析・開発担当となっていた。
だが、そんな時――ロングイの忠告を無視したばかりに、ロストロギアを暴走させ、再び瀕死になった。
しかも最悪な事に、時覇を庇ったせいでリューナの腕や足が無残な姿と化し、視力も無くなった。……いや、眼球自体に損傷が及んでいる為、二度と回復することは無い。
時覇は、五体満足で視界も良好。だが、瀕死。
ロストロギアの影響で、心臓が弱りきっていたのだ。
そして、リューナは、
「――――――――」
朦朧とした意識の中、時覇の耳元で何かを囁いた。
何を言ったのかは、思い出せなかった。
視界はぼやけていたが、リューナの顔だけはハッキリと見えていた。
それが、桐嶋時覇が見た、リューナの最後の姿だった。
そして、次に目覚めた瞬間、時覇は生きていた。
ベッドから起き上がり、廊下を出る。適当な奴を捕まえてリューナの事を聞いたが、ある場所の部屋しか聞き出せなかった。
他の奴もそうだった。
仕方なく、その部屋へ行った。
そこで見たものは――後悔と絶望が広がっていた。
その後、時覇はラギュナスと魔法を捨て、逃げるように自分のいた次元世界へ帰っていった。
そして、半年後――今、ロングイと再び出逢った。
かつては仲間であり、兄弟のような関係だった。
だが今は、デバイスを手に取り合い、お互いに向けている。
互いの目的を達成させる為に。
壁となっている友――存在を殺す為に。
壁となって襲い掛かる友を、止める為に。
二つの意思と想いがぶつかり合う。
周りに提示させられているとも知らずに。
互いは戦場となる舞台を舞う。
道化の様に。
しかし、そんな時覇とロングイの戦いを近くで見ている人物がいた。
「……冗談じゃね~ぞ。奴らは化け物か?」
物陰に隠れながら、呟くゴスペル。
なんとか無差別破壊魔法もとい、無差別消滅魔法から耐え切った。だが、魔力不足の為、すぐに離脱することが出来なくなっていたのだ。
ついでに、デバイスの調子が悪いらしく、カードリッジシステムが上手く作動しないのだ。
故に、物陰に隠れてやり過ごすしかないのだった。
この嵐の様な戦いを。
ハッキリ言って、生きた心地がしない。いや、すでに死んでいても可笑しくは無かった。
地面から岩が生えてくるは、魔力弾が飛び交うは、今度は高出力のバインド。
全て紙一重でかわしていた。
おまけに今度は、さらに危険なモノが出てくる匂いがしてきた。
だが、今から逃げるにも、どこへ逃げればいいのか? また、どのくらいの範囲の攻撃なのか? そんな事が頭の中を過ぎる。
だが、異変は起きた。
「 ? 」
不意に違和感を覚え、右手を見ると――
「な!?」
金属質の触手が巻きついていた。
取り外そうとするが、ビクともせず、そればかりかどんどん広がり始める。
デバイスのコアが異様な光を放ちながら触手がさらに生えていき、ゴスペルに襲い掛かる。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
足、胴体、首、そして顔にまで巻きついていく、ゴスペルを飲み込んだ。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
その叫びに、時覇は後ろを振り向いた。
「やっと発動したか」
ロングイは静かに呟き、バインドを吹き飛ばし、牽制のために射撃魔法を打ち込んでくる。
時覇は、はっ、となり前を向き直し、
「ちぃ! クロガネ!」
“パワード・ボム”
デバイスを盾にしながら、爆弾を生成し、間合いを取ろうとしたロングイに投げつけた。
強烈な爆砕音。
だが、ロングイは無傷だった。
「エア・トルネードの応用か!」
「そうだ!」
と、デバイスを一振りしながら答え、さらに距離を取と思ったが、その場に留まる。
その行動に、神経を研ぎ澄ませるが、背後から異様な何かが襲い掛かる。
「後ろを見ろ」
デバイスの先で、後方を示す。
警戒糞喰らえの勢いですぐ後ろを振り向く。
が、そこには何も無かった。
しかし、下――地面の方から、何かが襲い掛かる感覚に襲われる。
すぐさま下を向く。
「 !? 」
時覇は、体を硬直させた。
そこには、デバイスの取り込まれているゴスペルの姿があった。
さすがに遠巻きに見ていた者たちは、唖然となっていた。
「ロングイ、お前まさか!」
振り向きながら叫ぶ。
唖然と怒りを込めて。
「ああ……自ら生み出した罪という形に、滅びるがいい!」
その言葉に、同意または鼓動する様に、ゴスペルを取り込んでいく。
さらに触手はどんどん増えていき、絡みついていく。
ついには、ゴスペル全体に絡みつき、卵の様な形となった。
異様な光景である事だけは確かだった。
そして、数秒ほどの静寂。
次の瞬間、卵が割れた様な音が、空間全体に響く。
その中から――拘束具の様なバリアブルジャケット、胸にはデバイスのコア、背には六枚と三枚の禍々しい白い羽。
闇の書事件に関わった者――特にアースラの、フェイト・はやて・クロノ・リンディ・シグナム・エイミィの脳裏に、リインフォースと闇の書の闇の姿が過ぎる。
だが、リインフォースと闇の書の闇とは似ても似つかなかった。
リインフォースは、はやてを守りたいという想いがあって。闇の書の闇は防衛プログラムの暴走体、ただ破壊を求めるだけの存在だった。
しかし、ゴスペルの変わり果てた姿は、そのどちらともではない。
「まさか――魔力が上がってのかっ!? 馬鹿な、あのシステムはデバイスとの融合によって、耐久性と詠唱能力の向上だけのはずだぞ!」
デバイスに取り込まれる前のゴスペルの予想魔力値は、175万前後だった。にも、関わらず三倍、いや四倍以上も上がっているのだ。
いくらシステムやプログラムとして組んだとしても、魔力の増加は不可能である。
などと時覇は考えていた途端――
「――――――――!!」
ギリギリで反応して魔力砲撃を受け止めるが、勢いに負け、そのまま地面にぶつかり、爆発が起こる。
その性で、時覇の叫び声は掻き消えてしまった。
劇は続く……役者交代で、第二幕の始まり、始まり。
「何なの、アイツは」
そう呟きながら、解析を進めるエイミィ。
今現在の解析で判ったことは――
1.魔力値:1032万4598
2.謎の融合デバイス製作者と関係者思しき人物:ロングイ・バウンティド、桐嶋時覇
3.取り込まれたゴスペルの生命が、微弱ながら低下している事
の、三項目だけである。
それ以上の解析は、困難を極める事は明白だった。
簡単に言えば、ブラックボックスそのモノを、短時間で解析せよと言っている様な状況であった。
「何が何でも解析してやるんだから!」
素早いキーボード裁きで呟くエイミィであった。
上に覆いかぶさっていた岩を退かす時覇。
そして、体をゆっくりと起こす。
「く、っそ」
口に入った砂を掃きながらぼやく。
“d、だ――大丈夫か?”
先の衝撃でシステムにエラーが出て、上手く発音できなかった。
一時的なエラーだったので、単位修復プログラムで直せた。たとえ修復できなくても、音声発音プログラム――声を発生させる部分なので、戦闘には支障は無い。
それに会話は念話でも可能である。
「何とか。お前こそ大丈夫か?」
コアを見ながら言う。
篭手の部分に小さなヒビが入っているが、支障は無いと判断。
“問題無い、衝撃で誤作動が発生しただけだ”
コアを点滅させながら、正常をアピール。
それを見て、納得する時覇。
「さてと……いい加減、本気で如何にかしないと。……最終プログラムは?」
と、服に付いた砂を掃いながら答え、問いかける。
“既に初期化完了しているが、今再インストール中だ”
「どのくらい掛かる?」
“――魔法を使わなければ3分、使うなら6分30秒”
その言葉に、顔を曇らせる。
クロガネが提示した時間は、あくまで一般を基準としたモノ。
この状態だと、何分掛かるか判らない。
既に、滅茶苦茶な戦闘を行っているので、提示された時間が適用されることは、100パーセント無理である。
魔法の最低限の知識がある者ならならば、100人答えたら100人固定する。
「ギリギリか」
予想通りなので、あまり驚くことの渋ることのなかった。
“それから、ゴスペルという男の――”
「生命力が低下中、このままだと10分以内に死亡する。だろ」
その言葉に驚くクロガネ。
やはり、ラギュナスに居た者だと痛感した。
携わってなくとも友が作ったモノなら、ある程度判る。
まだ小さな絆は残っている。
そんな感じがした。
「ま、正確には8分10秒で、現在進行中ってな訳だ……クロガネ、限界まで頼む」
その問いに、少し間を置き――
“頼まれた”
確信を持って言った。
その答えに微笑む時覇。
そして、上空に聳える(そびえる)禍々しい白い羽を持つ存在を見る。
『存在』から見て、右が三枚、左が六枚の羽根。
普通に見れば、美しい白銀の羽根。
だが、今は悪しきモノを纏う白銀の羽根。
それは拒絶。
それは否定。
それは滅び。
それは絶望。
また、犯された羽根を背負う存在は、時覇を見下ろしていた。
アレが敵だと。
初めから設定された訳ではない。
故にプログラムでもない。
始めて見たモノが敵だという、意識も無い。
本能。
髪の毛の先から、足のつま先までが、本能で告げている。
アレが敵だ、と。
互いが互いを敵と見た。
互いが互いを拒否した。
互いが互いを消し合う。
ただ、それだけ。
それだけが、互いを敵としてしまう。
そして、どこかで鐘が鳴る音が聞こえる。
それは、祝福の鐘か。
はたまた、絶望の鐘か。
ただ、鐘は鳴り続ける。
世界を震わせるように。
開演を奏でる鐘が、鳴り響く。
この戦いで、全てが終わる。
そう思っていた。
だが、これは――
始まりでしかなかったのだった。
永きに渡る様な、短き戦いの本当の始まりでしかない。
そして、枝分かれした運命と螺旋は、再び一つとなるその時まで――
仕組まれた運命と戦いは……続く。
鐘が鳴り響くままに。
管理局サイド編
第11話:過去という名の罪・END
次回予告
上空に佇んでいる、三対六の白い羽を持つ『存在』。
圧倒的な力の前に成すすべも無い時覇だったが――
最後の……命を賭けた力が発動する。
その頃、なのはの救出に向ったユーノたちが見たものは――
管理局サイド編
第12話:命を賭けた一撃、そして閉幕へ
に、ドライブ・イグニッション!
あとがき
ついに11話の改正版、ここに完成。
10話と併合してやってました。
魔力の数値関係をどうしようか悩んだ末、SSSランクに変えました。
強大な魔力、遺恨の出来事、己の業、友の妹。
しかし、豪華の如く復讐、いや野望に燃えるのか。
リューナの兄にして現ラギュナスのリーダー、ロングイ
想いは願い、願いは希望へ変わっていくはず。
だが、それを捻じ曲げる者たちがいる。
願いは欲望へ。
ただそれだけ。
戦いは拡大を見せる。
戦場、政治、そして世界おも巻き込んでいく。
全ては、時覇を監視する男なのか、それとも別の誰かなのか。
それはまだ、誰にも判らない。
想いは想いを呼び、願いは願いを呼ぶ。
運命は、何処へ向うのか。
それとも、何処へ向わせるのか。
それは、終わってみなければ判らない事なのか。
と、まぁ、こんな感じです。
ラギュナス書かないと、物語が繋がらないから。(汗
頑張って、『ここまでやって良いのか?』と、思わせるような物語を描きたいです。
描ききれるか判りませんが、これからもよろしくお願いします。
制作開始:2006/8/11~2006/9/2
改正期間:2007/3/1~2007/3/7
打ち込み日:2007/3/7
公開日:2007/3/7
修正日:2007/9/27+2007/10/6
変更日:2008/10/24