だが、人は進み続けなければならない
超えなくてはいけない、道の壁を
青年は、試練という名の始まりに手を掛け、登り始めるのだった
時覇と『存在』が睨み合っている? 頃、遠巻きに見ていたリンディたち。
『……エイミィ、解析は?』
全体が見える丘で座り込んでいて、今までの出来事を唖然として見ていたが、ふと我に返ったリンディが、エイミィに通信を入れる。
「解析はしているのですけど……ブラックボックスの塊らしくて、解析には相当な時間が掛かるのは明らかです。とても一日で終わることは無いのは確実です」
技術班からの報告を抜粋して読み上げる。
いくつか詳しい記載があったが、簡単に説明すればたったの二行で終わる。
状況が状況なだけに、断片的な事だけを伝えた。
詳しく聞かれれば答えるが、聞かれない限りではあとで報告すればいい。
『そう……エンジンの調子は?』
「はい……芳しくないようです」
少し落ち込んだ口調で報告した。
単位修復は完了済みなのだが、全くと言って良いほど出力は上がらない。
ただ下がることも無く、現状を維持が精一杯なのだ。
『エイミィ、無事な局員の数は?』
クロノが通信に割り込んできた。
こちらも、単位的な手当てを受け、普通に会話は出てきる程度まで回復できた。
が、戦闘は論外として、動くことは難しいと言ってよい。
「クロノくん、それは……」
言葉が詰まる。
絶望的を意味していた。
あの攻撃から退避したとはいえ、範囲から逃れる為に、後先考えずに魔力を使ったのだから、帰還分の魔力などほとんど無いのは明白だった。
そして、時覇とロングイのとんでもないバトルから、今度は闇の書事件を思い出す存在が現れた。
ハッキリ言って、状況は最悪である。
アースラ、航行不能中。
なのは、未だ現在行方不明中。
しかし、なのはが居る場所らしき所に捜索隊を派遣したが、今回特別に配属されてきたAAAランク以上を六人出したのだ。
トドメと言わんばかりに出てきた武装局員の生死不明かつ、クロノ重症(魔力はほぼ皆無、左腕の骨と肋骨左真ん中辺りにヒビ有り、右足打撲)、リンディ軽症(右手捻挫、魔力残量Eランクくらい)、シグナムはレヴァンティン使用不可と魔力切れ。
シグナムの話では、レヴァンティンの調子が良くないらしく、上手くカードリッジシステムが作動できないそうだ。
「にしても……あれは一体……まさか――」
右側に三枚、左側に六枚の羽を持つ『存在』を見ながら呟くクロノだったが、最初の発言の前に素早く手で口を塞いだ。
シグナムが居る為、『闇の書の闇』などと口が裂けても言う訳にはいかなかった。
外見・感覚的には似ているが、根本的な何かが違うと告げている。
存在の白い羽は、神々しいとは言えず形ばかりで、禍々しい何かを纏っている。
故に『存在』が、闇の書の暴走のリインフォース姿が一瞬だけダブって見えてが、すぐ消えた。
多分、闇の書事件に関わった者ならば、そう見えたかもしれない。
リインフォースは、主の願いを捻じ曲げて解釈し、素直に従っていただけだから。
そして『存在』は、ただ時覇を見下ろしていた。
管理局サイド編
第12話:命を賭けた一撃、そして閉幕へ
『存在』は左手を時覇に向けると同時に、指を鳴らした。
そして――時覇が居た場所から、大きな轟音と共に光の柱が立った。
純粋な魔力の攻撃――『光の柱』
着弾地点から直径10メートルから、50メートルほど吹き飛ばし、上空25メートルから200メートルまで柱が上る攻撃魔法。
ただ条件として、地面もしくは壁など、ぶつかった所から爆発が起きる。
しかも、ぶつかった場所の面積も関係してくるので、最低7、8メートルないと発動しないのが欠点である。
その攻撃は、ロングイと遠巻きに見ていた者たちも、直撃だと確信した。
だが時覇は――
「……せいやぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!」
と、その光の柱から出てきたのだ。
しかし、『存在』は表情を変える事無く、シールドを展開。
それと同時に、砲撃魔法を放つ時覇。
その砲撃は、『存在』の少し手前で全方向に拡散し、後方へ飛んでいく。
『存在』は、前にシールドを張ったまま後ろを振り向く。
砲撃は再び一点に集まり、『存在』に向けて打ち込まれる。
爆発。
シールドを張る事を確認しなかった為、時覇は感じ取った。
「クロガネ、フルドライブ!」
“了解、リミッター解じ――時覇!”
リミッター解除を行う瞬間、立ち篭る煙の中から魔力反応を確認し、時覇に激を飛ばす。
それにより、リミッター解除は無くなったのは言うまでも無い。
「 !? ――らぁ!」
クロガネの叫びに、懐から手の平サイズの円盤を間の前に投げる。
その円盤は宙に浮き、中心を軸に四方に分裂し、前方へ展開される。
篭る煙から、数十発の砲撃魔法が飛び出す。
だが、爆発後の煙から前方に四方八方飛んできた思いきや、右左、上下と変則的に飛ぶ。
左右上下、後方から打ち抜いた方が早いのだが、何故か砲撃は前方に展開されたシールドに集中砲火が降り注ぐ。
結果、当然ながら単位型バリア発生器を突き破ってきた。
とっさにクロガネを盾にして――雨荒しの如くの数十発の小さな砲撃を耐え抜いた。
そして煙が晴れると、『存在』は右手を掲げて、一発の小さな砲撃が生成中の姿があった。
「こなくそ!」
と、合図を待っていたかのように、言葉と同時に放たれる。
そして、時覇はクロガネを盾にし、クロガネに強化魔法をかける。
小さな砲撃はクロガネに当たり弾かれるが、時覇は衝撃に耐えられず後方へ吹き飛ばされる。
それに続くように、『存在』が突進を掛けてきた。
その構え、右腕には白き光が集い、左手には黒き光が集う。
ラギュナス内では、禁忌扱いの魔法――ヘル&ヘブン・ドライバー。
使い手によっては、自らの腕を破壊し、時には次元振さえ起こしかねない――人には、余りにも強大な力。
滅びしか呼び寄せない、破滅の魔法。
鐘は鳴る。
滅びの鐘か、それとも……。
緑が溢れ、清んだ蒼が広がる空、そして平原に生えた一本の木。
そこに腰を下ろし続けているマントを羽織った者は、リュートを奏でつつ、詩を歌い続ける。
この状況を見透かした詩を。
風に煽られ、木に吊るされた鐘が鳴る。
奏で続ける。
風が吹くままに。
廊下に足音を響かせながら、走り続けるユーノ。
そして、なのはが居ると思われる部屋の前まで来た。
「こっ、ここ、か」
少しばかり息切れ気味のユーノ。
しかし、シャマルはドアと言ったが、実物を見ると左右に開閉する少々大きめの扉だった。
続いて、ヴィータ、シャマル、ルーファン、ザフィーラの順に来た。
「ユーノ、少し下がってろ。先陣で出るから」
ユーノを扉から下がらせて、ヴィータが前に出る。
「グラークア――」
『ストップ!』
技を繰り出そうとしたヴィータを、全員で止めに掛かる。
「何すんだよ!?」
「いきなり扉を壊そうとするからです」
少し早口で、突っ込みを入れるルーファン。
「私が開けるから、開いた瞬間にヴィータちゃんが入れば問題無いから、ね」
と、宥めるシャマル。
「――行きます」
シャマルの掛け声と共に、重い扉が上下左右に開いた。
同時に白い煙も出てきたが、別に寒い訳で無く、熱い訳でも無かった。
半分くらい扉が開いた途端、ヴィータが飛び込んでいった。
続いてサポート役のルーファン。
完全に開ききった瞬間、ユーノとシャマル。
ザフィーラは、敵が侵入して来ない様に、廊下で待機している。
「ヴィータ、なのはは!?」
部屋の入り口付近で立っていたヴィータに声を掛ける。
ヴィータは無言のまま、前を指差した。
「なの――!?」
ユーノは唖然とした。
ヴィータが立ち止まっていた理由がわかる。
目の前には、なのはは確かにいたが、なのはの姿は無かった。
あったのは、なのはの――
「なのはの、リンカー……コア?」
動力源供給装置らしき中心には、なのはのリンカーコアがあるだけだった。
「ユーノさん、その奥に!」
その言葉に我に返ったユーノは、リンカーコアが浮かんでいる装置の奥を見た。
そこには、アリシアが入っていた生態維持装置のカプセルに入っている、なのはがいた。
「なのは!」
ユーノは、一目散になのはの元へ駆け寄った。が、あと数メートルの距離で、ユーノはいきなり吹き飛ばされた。
「がはぁ!」
何かを鳩尾に喰らうユーノ。
そして、前の空間が渦を巻く様に捻じれ、一人の少女が出てきた。
「ここから、通さない」
デバイスを突き立てて、なのはが言い放った。
禍々しい白い光と、緑色の光がぶつかり合う。
高速いや、瞬速でぶつかり合う時覇と『存在』。
描く軌道は様々だが、均衡は保たれている。
「っせい!」
ポシェットから、機雷弾を三個取り出して、左へ避ける様に投げる。
上の進行方向を塞ぎ――そのまま下の進行方向を塞ぐ。
そして、最後の機雷弾が、右の進行方向を塞ぐように爆発――するはずだった。
「な!?」
爆発する瞬間に『存在』は、機雷弾を凍結魔法で固め、爆発しない様にした。その機雷弾を掴み、そのまま投げ返してきたのだ。
「ちぃ――!?」
避けようとしたが、左足にワッカが掛けられていた。
「固定バインド!? いつの間に、ってあの時か!」
固定設置型バインドを喰らいながら、先の瞬速戦闘を思い出す。
しかし、クロガネで外そうとしたが、他のバインドが発動し、完全に動きを止められてしまった。
ご丁寧に、右のデバイスには三重のバインドのオマケ付き。
服に機雷弾が触れた。
「し――」
次の瞬間――炸裂爆発。
「っぐぁ!」
そのまま時覇は後方に飛ばされ、落下していった。
『存在』は、やっと終わりか。と、確信した。あとは、残っている者たちを殲滅するだけだと。
そう思い、後ろを振り向くと、時覇が技を繰り出す体制で待っていた。
少々驚く『存在』。
「体魔武総覇術、体の型――」
そう言いながら、すうっと『存在』の胴体辺りに、手の平を添える。
『存在』は、すぐさま後ろに下がろうとしたが、時覇がワンテンポ速かった。
「――無距・掌底破(むきょ・しょうていは)!」
“追加で――インパクト!”
オマケ付の中距離専用格闘攻撃をかます時覇とクロガネ。
しかも、体を捻る瞬間だったので、『存在』の横腹に直撃。
そのまま吹き飛び、落ちていくはずだった。
「 !? 」
“何!?”
驚く時覇とクロガネ。
それもそのはず。なんせ、どんな反応度の高い兵器であっても、僅かなワンモーションある。
だが、それすら見る事は無く反対側の脇に左拳ぶつけ、相殺していたのだ。
しかも、一寸狂わずの完全相殺である。
全くと言っていいほどの勘の良さ、もしくは未来予知の類である。
「ゲィム・オーバァー」
と、ゆっくりと一言、一言ハッキリと呟いて――吹き飛ぶ。
斜めに吹き飛んで地面に激突し、土の柱が立つ。
しかし、それだけでは収まる事無く、真っ直ぐに地面を抉りながら吹き飛び続ける。
そして、やっと静止。
砂煙は、着弾地点から抉った場所を中心に、数十百メートルにまで散開した。
地面に激突してから地面が抉れた距離は、推測500メートルほどである。
しかも、いい角度で地面と激突したので、綺麗に抉れた格好になっている。
「――ぐぁ……」
右の肘を胸に喰らったダメージは、それなりに効いた様だ。
素早く単位防御魔法を展開してので、ある程度は軽減したが、気休め程度の結果だった。
「……最終警告です。このまま立ち去れば、何も無かった事で終わります」
デバイスを構えて淡々と語る、なのは。
「君は……レニアスと呼ばれるロストロギアから生まれた、擬似生命体なのか?」
ユーノは、少し躊躇いながらも、デバイスを構え続けるなのはに言った。
そして、なのははその言葉に少し俯き、仮面を被った様な表情から、どんどん怒りの表情へ変わっていた。
「……アナタに……」
顔を上げる、なのは。
今まで感情が無かった顔に、完全な亀裂が入る。
目に涙を浮かべているのだから。
「アナタに、何が判るっていうのよ!」
“GDS(グラビトン・ディバイン・シュートの略)”
僅かに空間が捻じ曲がる。
大きさは、サッカーボールほどの大きさで、ユーノ目掛けて飛んで行った。
「――ん、ぷぱっがっ!」
ユーノは腹部に強烈な衝撃が立て続けに二度走り、口からゲロと血が混じったモノを吐き出した。
あと、足の踏ん張りがきかず後ろへ吹き飛ばされ、後方にいたザフィーラに受け止められた。
「大丈夫か、スクライア」
「がは、がは……な、なん、とか」
切れ切れながら、ザフィーラの問いに答えるユーノ。
それを見た、ヴィータは――
「よくも! ユーノの仇!」
と、勢い良くなのはに向って跳んでいく。
無言のまま、ルーファン調査官もヴィータの後に続く。
「ヴィータちゃん、ユーノさんまだ生きていますから!」
とか言いつつも、ヴィータのサポートに回るシャマル。
ユーノを壁際に連れて行ってから、外で待機していたアレフに念話を
(アレフ、聞こえるか?)
(どうしたんだい、ザフィーラ?)
冷静に聞くアレフ。
(大至急、こちらに来てくれ。スクライアが負傷した)
(ユーノが、誰にやられたんだい!?)
ザフィーラは、一呼吸置いて――
(レニアスというロストロギアから生み出された、高町なのはだ)
(なのはが!? って、ロストロギアがなんだって)
(詳しい話は、スクライアから聞いてくれ)
念話を閉じて立ち上がり、ユーノを守るように構える。
今戦っているなのはは、どうやら接近戦が得意らしく、ヴィータが苦戦していた。
「うわぁ!」
テートヒ・シュラークとシールドとの競り合いに負け、吹き飛ばされるヴィータ。
なのはは、吹き飛んだヴィータとの間合いを一瞬で詰め、デバイスをつけると――
「ゼロ・クラッカー!」
と、小型の爆発魔法を腹部にゼロ距離から叩き込む。
小規模爆発。
「――――!」
小型の爆発でありながら、爪先から髪の毛の先まで、体の隅々まで衝撃が駆け巡る。
そのまま地面にぶつかり、何度かバウンドする。
「ヴィータちゃん!」
とっさにヴィータに跳び付くシャマル。
「くっ!」
ジュースのカンくらいの大きさの筒を、腰から取り出す。
(皆さん、私の合図と共に、ここから出てアースラに!抗議は一切聞きませんので!)
ルーファンは念話を飛ばし、筒をなのはの前に放り投げる。
そして、カラン、カランと二回、三回と音を立てて転がっていく。
筒は二つに割れ――
(今です!)
閃光を放つ。
それと同時に、ザフィーラ、ユーノ、シャマル、ヴィータ、ルーファンの順に出て行ったが――
「しまった!?」
最後に部屋を出ようとしたルーファンが、ドア辺りでバインドを受けてしまう。
「ルーファ――がは、がは!」
ユーノは気がつき、名前を呼ぼうとしたが、まだ腹部にダメージが残っていたために、僅かな血を吐きながら咳き込んでしまう。
「ユーノ!」
「 !? アレフか!」
廊下から、アレフが走ってきた。
「ザフィーラ、これはいった――」
「すまないが、スクライアを頼む」
アレフの言葉を遮り、ユーノを渡すザフィーラ。
「ざっ、ザフィーラ!?」
バインドに捕まっているルーファンの元へ走っていく。
ルーファンを通り過ぎ、なのはに突撃を掛ける。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
だが、
「ぐぁあああああああああ!」
何かに吹き飛ばされたザフィーラは、バインドで捕まっていたルーファンにぶつかる。同時にバインドもとけ、そのまま巻き込まれるように廊下に戻ってきた。
ザフィーラは顔を少し上げて、何に吹き飛ばされたか確認した。
そこには、ローブの男がいた。
カラ、カラと、石が落ちてくる。
“生きているか、時覇”
「……がはっ、がはっ……ああ、なん――とか」
起き上がりながら、答える時覇。
ついでに簡単な身体チェックをする。
“しかし、よく生きていたな。今の防護服も貫通していたはずだか?”
「はあ、はあ、ふぅ……何、防の型――全点一点防御を使った、までだ」
“全点一点防御?なんだ、その即席みたいな名前は?”
「文字通り、本来人間は体を無意識に丸めるか、硬直するかでダメージを軽減させる傾向があるだろ。だが、それは場所によってはダメージを倍加させる危険性もある。故に、一点の部分の防御力を上げ、あとはそのダメージを逃がす場所として扱う我流体術みたいなモノさ」
“その言い方だと、半分は流派か何かから来ている言い方だな”
「まあな……また、追々話すさ。それより今は――」
上空から見下ろしている『存在』を見る。
“確かに。アイツを仕留めない限り、この戦いは終わらないからな”
「で、アイツが取り込まれてから、どれくらい経つ?」
“かれこれ、7,8分経っている”
「そろそろヤバイな……クロガネ、あと1分で蹴りをつけるぞ」
“了解した。出力最大、ガンドレット・フルバースト!”
その言葉に合わせるように、時覇は飛び立つ。
「…………――!?」
『存在』は、驚いていた。
確実に、しかも急所に入ったはずなのに、まだ挑んでくるのだから。
デバイスでありながら、恐怖を覚える『存在』。
だが、それは一瞬の出来事であり、時覇を抹消するのが己の使命なのだから。
そして、『存在』は体制を整える。
倒すべき敵を倒す。
それが、『存在』に与えられた使命であり、生まれてきた存在意義なのだから。
だが、ふと過ぎる事がある。
時覇を倒したら、己という存在はどうなるのか、と。
しかし、その考えは泡の様に弾け、消えていった。
相手が立ち上がってくる。
ならば、全力で排除すればいい。
後の事は、それから考えることにする。
そう結論がついた。
だから構え、詠唱を始めた。
「いくぜ、クロガネ!」
“ああ――バーン・ナックル・ゼロ!”
デバイスの手の部分が赤く光だし、一瞬静止して、後ろに引き、真正面に叩き付ける。が――轟音と火花が飛び散る。
片手だけのシールドで防がれた。
「くそっ――まさか!?」
このシールドは、先ほど時覇が使った行動と同じ原理だと気が付いた。
『存在』は、空いている片手でシールドごと、時覇を吹き飛ばし、右手で指をパチンと鳴らす。
そこで、時覇の周り――360度に、砲撃魔法が展開した。
しかも、最大出力後のオーバーブローにより、クロガネは使用不可の状態になっていた。
故に、自ら張れる防御魔法しか、対処のすべは無かった。
爆発。
爆発。
爆発。
爆発。
爆発――と、エンドレスの如く、数千発近くにも及ぶ砲撃魔法の直撃を受ける。
また再び地面に叩きつけられた。
“時覇、これ以上は危険だ! 悪いが、転送させてもらうからな!”
転送魔法を起動させるクロガネ。
「…………待て、クロガネ」
それを、うわ言の様に呟いて止める。
“しかし!”
「だったたら、何でアレを発動させなかった?」
“だがアレはお前の――”
「わかっている……わかっているから、言っているんだろうが」
“…………覚悟は、もうできているということか”
「ラギュナスを抜けた時からな」
“了解した……全システムオールクリア、最終安全プログラム解除……MHモード封印解除。これで、いつでも起動可能だ”
ゆっくりと立ち上がる時覇。
「ぐぅ」
少しよたつき、胸に痛みが走るが、全てに耐え……再び飛び立つ。
それを確認した『存在』は、今ある魔力を胸のコアに集め始めた。
それは、今取り付いている奴の魔力と、空気中に残存する魔力をかき集め、強力な魔法を叩き込まなければならないと判断したからだ。
そうではければ、また再び立ち上がってくる。
とにかく内と外の魔力を、必死でかき集める。
だが、それを優に超えた素早さで、距離を詰める。
「MHモード起動!」
クロガネの手の部分とコアが分離し、手だけ収納され、魔力で構成された手が出る。
その甲にコアが取り付くことで、生成完了する。
生成が終わると一気に間合いを詰める。
『存在』が、防御魔法を展開しようとするが、それよりも速く詰める。
そして――
「喰らえ、マジック・フィンガァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
と、間合いを詰めた時の素早さよりも、速くコアを掴み――
「ぅらぁ!」
胸の部分にあったコアを引き剥がす。
「――――!?」
『存在』が集めた魔力と、コアが異常なまでに輝き出す。
「クロガネ、アイツを!」
“だ――っち、転送!”
コアが取れた事により、ゴスペルは元通り戻っていたので、適当な場所へ転送させた。
その次の瞬間、時覇は二つの光に包まれ、爆発に巻き込まれた。
三度目の落下。
デバイスの損傷は激しく、中はともかく外の外装は殆ど破損している。
コアは、今にも砕けそうな亀裂が入っている。
挙句の果てに、時覇の魔力は今の攻撃で底をついた。
結果――地面と激突。と、思いきや、木や草に守られるような形で地面に落ちた。
簡単に言えば、枝と葉が落下速度を和らげ、生い茂っていた草がクッションの役割を果たしたからである。
受けた衝撃は、人を死に追いやるほどのモノではなくなった。
“……覇……が……くs……”
デバイスの発音言語機能辺りが故障したらしく、上手く声を出す事が出来ないクロガネ。
同時に時覇の意識は、既に闇に沈んでいた。
ここに一つの戦いが終わった。
だが、時覇は管理局に拘束されてしまう。
そして、なのはは救出できず行方不明。
アースラのメンバーは全員拘束、全ての権限の凍結。
人事の転属などにより、チリジリとなる結果となった。
全ては仕組まれた茶番劇だったのか?
答えはまだ、闇の中。
鐘は鳴る。
鳴り響き続ける。
運命が奏でるままに。
人が舞い、欲望が渦巻き、理不尽な命令が飛ぶ。
それは、今の人の業を表したかの様に。
管理局サイド編
第十二話:命を賭けた一撃、そして閉幕へ・END
次回予告
語れる物語では無い。
それでも語らなければならない物語。
現実はいつも残酷な結果しか訪れず。
ただ、流れに逆らう事を許されない日々を送る。
管理局サイド編
最終話:カーテンコール
に、ドライブ・イグニッション!
あとがき
やっと次回で、管理局ルート改正版が完成!
でも、一話から五話まで少し書き直し+ラギュナスルート書き書き。
書き書き、書き書き、書き書き、書き書……スイマセン、全然書いてません。
ラギュナスサイド。(汗
マジで、どうしよう。
ネタ、プリーズ? もうヤダって言ったら、話が続かなくなるんだよね。(汗
でも、ラギュナスサイドは、全力全壊はちゃめちゃなストーリー展開があります。
はっきり言って、今まで(現時点で)書いてきた小説の中でも、もっとも死人が出る話ですから。
これ以上は、ノーコメント。
誰が殺し、誰が死ぬのかは未定だが、最終話のイメージはしっかり完成できていますので。
あとは、前の話を構築するだけ。
改正版を書くのは必然かと。
それでも、満足できる作品は作りたいです。
では、次回の最終話でお会いしましょう。
制作開始:2006/9/3~2006/10/14
改正期間:2007/3/10~2007/3/16
打ち込み日:2007/3/16
公開日:2007/3/16
修正日:2007/9/14~2007/9/15
変更日:2008/10/24