何かに出逢う者たちの物語・外伝Ⅰ   作:ダークバスター

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第一話:嵐の前の日常

 新暦72年12月14日。

 ある次元世界の山奥。

 そこに、巧妙にカモフラージュされた建物があった。

 その周りには、兵器の残骸と管理局員の屍骸が転がっていた。

 そして、建物内から爆発音や銃声が鳴り響く。

 

「魔力と手持ちのカードリッジを常に確認し――くぉぁわ!?」

 

 リーダーらしき局員が怒鳴っている最中に、真横の壁に兆弾が起こる。

 それに驚き、慌てて身を屈める。

 

「先行した部隊は!?」

 

 別の所で伏せている局員に、状況を尋ねる。

 

「第7ブロックまで到達したようなのですが、弾幕が激しすぎて進行できな――」

 

 爆発。

 リーダーらしき局員は、とっさに来たばかりの道を戻る。

 再び物陰に隠れて、安否の確認のために怒鳴る。

 

「アソック5! アソック5、生きてるか!?」

 

 しかし返事は無い。

 

「アソッ――糞が!!」

 

 兆弾。

 それに毒気を吐きながら、持っていた質量兵器を乱射する。

 質量兵器名は、『アサルトライフル・TMUG02‐v2』。

 TMUG02は、形式番号でもあり、名前の一部でもある。

 ちなみに『タイプ・マギリング・ウェポン・ガン02‐バージョン2』の略。

 質量兵器でありながら、魔力による武装をいくつか備えている兵器の1つ。

 対AMF――アンチ・マギリング・フィールド――に対応できる、特殊人工金属『リオファルコン』を使っている。

 銃身辺りには、小規模のコイルが巻かれてある。これにより、プチレールガン的なモノが発射される。

 さらに、カードリッジに収納拡大として、変形できるデバイスと同じ原理を搭載させた。

 ただし、壊されると弾が無駄になるので、3000発しか入っていない。

 本来は、1万発以上可能である。

 なを、弾丸にも特殊コーティングが施されているので、ランブルデトネイターが普通に発動することが出来る。

 

「うぉらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 リーダーらしき局員は、次々と機動兵器を破壊していく。

 5体目が撃破されると、他の機動兵器は、すぐさま後退していった。

 しかし、銃声は収まらない。

 当たり前である、敵が視界から消えるまで打ち続ける。

 下手に背を向ければ、自分が死ぬ。

 それが、今の戦い全てに共通するモノである。

 完全に消えると、銃声が止む。

 それから、ゆっくりと顔を上げて周囲を見渡す。

 敵がいない事を確認してから、中腰で移動する。

 

「アソック5。アソック5、返事をしろ」

 

 徐々に視界が良くなる。先ほどの爆発と銃撃戦で、辺りに埃が舞っていた。

 忙しなく首を振っていると、自分と同じ靴が見えた。

 

「そこにいたのか、アソック5」

 

 気絶したのだろうと思い、そばによるが――上半身が無かった。

 どうやら、先の爆発で吹き飛んだのだろう。

 リーダーらしき局員は、頭を抱えた。

 アソック5――彼は、この部隊最後の前線の中継管制係だったのである。

 

「はぁ……これじゃ、増援も呼べねぇじゃん」

 

 その場に座り込み、懐から煙草を取り出す。

 胸元からライターも取り出すも、破片が突き刺さっていた。

 それを見て、一瞬だけ恐怖する。

 もし、胸元に入れていなければ、すでに死んでいたのだから。

 気持ちを落ち着かせたいものの、火が無い。

 ライフルを見るが、危ないのでやめる。

 プチレールガンが搭載される前なら、何とかなったのだが。

 顔の横から、ぬるりとライターが出てくる。

 そして点火。

 

「ああ、すまない」

 

 余りの同様に、味方が来たことにも気がつかなかったのか。と、内心でホッとする。

 ? 味方?

 今度は、全身が硬直した。

 後方に後ろはいない。

 いるのなら、別のルートか、先行した奴らのみだから。

 

「メーカーは?」

 

 女性の声。

 間違えない。うちの部隊に女性は、全員にバックスに回っている。

 しかも、デスクワーク系の存在。

 手を震わせながら、口元の煙草を取る。

 

「あ、アルディン……97、管理外の品、らしい」

 

 恐怖を抑えつつ、断続的だがしっかりと答える。

 

「アルディン、ねぇ~……判ってるじゃないか、君」

 

 嬉しそうな声。

 どうやら、自分と同じ煙草愛好家なのだろう。

 この味が判るのは、そうそういない。

 

「君となら、良い論戦ができると思う。けど――」

 

 白く、美しい手が、リーダーらしき局員の首を撫でる。

 

「敵、なんだよね」

 

 首に、パチパチと、痺れるような感覚に襲われる。

 

「――ごめんね。これも、長のためだから」

 

 その声は、どこと無く悲しそうだった。

 背後に魔力と、魔力と異なった力を感じ取る。

 勝てない。

 本能で悟る。

 

「だから、何も感じずに終わらせてあげるよ」

 

 そこで、視界は黒く染まった。

 

 

 

 

 

「リスティ」

 

 背後から声が掛かる。

 リスティと呼ばれた女性が、先ほど死体になったばかりの存在をゆっくりと地面に寝かしてから、立ち上がって振り向く。

 髪はショートで銀色。青い瞳に白い肌。

 美女さながらの顔立ち。

 着ている服は、ライダースーツの様にピッチリとした感じで、色は黒。

 背中には妖精の様な6枚の羽。

 

「何、ドクター?」

「先行していた部隊も片付きました。撤収して良いそうですよ」

 

 手に持ったメスをペンのように回す。

 髪は黒く、ユーノみたいな髪型で、茶色い瞳。

 中間の色で、ヘラヘラした印象を受ける。

 着ている服は、名前通り白衣――ではなく、何故か自衛隊が着るような戦闘服一式。

 柄は砂漠仕様となっている。

 

「危ないから止めてくれない。それに――」

 

 リスティの顔が険しくなる。

 同時に、羽も僅かに下がる。

 

「嫌いだって言ったでしょ」

 

 その言葉に、ドクターと呼ばれた男は肩を竦め、メスを懐から取り出したケースにしまう。

 リスティは、それを不思議そうに見る。

 

「何ですか?」

「い、いや、いつもの『アレ』に仕舞うのかと」

 

 いつもと違う動作に、少々面食らいの顔をする。

 

「ああ、これは私が最近、試作的に作ったメスでして」

 

 と、再びケースからメスを取り出す。

 

「『アレ』に仕舞ってあるのは全て鉄製でして。これはセラミックを加工、コーティングしたものです」

「セラミックねぇ~」

 

 リスティは、意味あり気な表情で、ドクターとメスを交互に見ながら答える。

 

「あの子の対策?」

 

 ドクターの目の前で、小指を立て、すぐ親指を立てるという繰り返しの動作を行う。

 それを見たドクターは、肩を下げながらメスを再びケースに戻す。

 

「ここにいたのか」

 

 リスティの背後から、声が掛かる。

 

「ああ、チンクじゃないか」

「やぁ、久しぶりだな。チン子――」

 

 ドクターの顔が爆発する。

 

「誰がチン子だ!? 誰が!?」

 

 真っ赤な顔をして、両肩を震わせながら怒鳴るチンク。

 まぁ、その言葉を全て平仮名にすれば、男の急所の名前になるからな。

 ってか、ローマ人に謝らないと。

 

 

 ダークバスターの豆知識

 リリカルなのはStSを見ている方なら判ると思うが、ナンバーズの名前は、ローマ数字の呼び方である。

 

 

「まぁ、まぁ、落ち着いて、な」

 

 と、チンクを宥めるリスティ。

 

「ドクター。長に言われたばかりでしょ?」

「まぁな」

 

 と、煙が晴れていくが、無傷だった。

 しかも、吹き飛ばされた後も無い。

 

「くっ……とにかく、ここを破棄するから、帰ってこいだそうだ」

 

 ドクターを睨みながら、伝言を言う。

 

「何時頃です――」

「20分後だ。すでにデータのバックアップや、搬送は完了済みだ」

 

 ドクターの言葉をぶった切る。

 

「そんな! では、私のはぁ!?」

 

 思いっきり焦るドクター。

 それを見て、チンクは内心微笑む。

 が、顔はポーカーフェイスを気取る。

 

「そんなモノなど知らん、自分で何とかしろ」

 

 ドクターに悟られないように答えるチンク。

 いい気味だと言って、仕返しに笑いたいが、ここは耐える。

 

「ああ、私の研究が! 研究がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ――……」

 

 その場に崩れ、四つん這い――ネット語で言う、『orz』になった。

 

「行くか」

 

 ドクターを、冷たい眼差しで一瞥して見るチンク。

 

「いいの?」

 

 さすがのリスティも困惑する。

 

「いいのさ」

 

 と、言ってリスティの手を引いていった。

 

 

 

 

 

 ある次元世界の山の麓。

 そこには、仮設テントが立てられていた。

 

「状況はどうなっている!?」

 

 女性が怒鳴る。

 襟首にある章から、提督クラスでないものの、それなりに高い地位の存在だと判る。

 

「はい! Aルートは順調に進行している模様。しかし、3人入り口付近でやられたそうです! Bルートは、前衛と後衛が分断し、前衛だけ先行させたそうです!」

「そうか」

 

 そこで、空間モニターに表示された地形マップを眺める女性。

 そこへ、慌てて駆け寄る女性局員がいた。

 

「シーナス部隊長! Aルートのグループからの通信が途絶えました!」

「なぁ!?」

 

 その場に緊張が走る。

 現場の中継通信は、特殊な機材を持った局員を通している。

 つまり、通信が途絶えるという事は、機材のトラブルか局員の死亡のどちらかである。

 女性――シーナスは、慌てて空間モニターに目線を戻し、瞬時にマーカーの数を数える。

 2つ足りないことに気がついた。

 どうやら、報告を受けている最中に、Bルートの局員も死亡したらしい。

 隊長は、歯を食いしばり、下を向く。

 ここまで来て、多大な犠牲を出しても、ラギュナスの拠点を制圧することが出来なかった。

 その隊長は、ラギュナスの拠点制圧を負かされていた。

 理由は簡単。情報を得るためである。

 現時点で時空管理局が、ラギュナスに対して把握できていることは少なすぎる。

 1つ、ラギュナスは旧暦から存在する犯罪組織。

 2つ、何か特殊な通信ラインがある。

 3つ、管理内外問わず、拠点及び協力者が存在する。

 4つ、何種類モノの機動兵器、戦艦を保有する。

 あとは、小話的な情報ばかりなのだが、明確であるのがこれだけ。

 殆ど謎だと言って良い。

 あの戦いから、もうすぐ2年経とうとしている。

 にも、関わらず、占拠できた拠点はゼロ。

 発見された拠点は、一週間前後に爆破解体されている。

 しかも、得られた情報は、ラギュナスの正式なモノでなく、メンバーの趣味で行われたデータばかり。

 確かに、非道な研究データも出てくるも、ラギュナスは1度も使ってきていない。

 近いモノの使った兵器が出てきても、合法的な代用品を使っている。

 しかし、ここで挫ける訳には行かない。

 そう思い、顔を上げた瞬間――乗っていたマーカー全てが、消滅した。

 

「…………――っ」

 

 シーナスの顔全体に、しわが寄る。

 そして、再び顔を下に向ける。

 前線メンバー全滅。

 仮設テーブルに、涙が1粒、2粒と落ちていく。

 また、何度目かの敗北。

 ベテランから新人まで、全て死んだ。

 どうせ、いつも通り、爆破解体が始まる。

 シーナスは、涙を流しながら言う。

 

「前線メンバー、全員死去……これより、最低限の機材を回収後、ここから離脱する」

『了解』

 

 仮設テントに、悲しく響いた。

 

 

 

 

 

「また、失敗か」

 

 ラガール提督が、報告書を読み終わって呟いた。

 

「他の部隊も失敗を繰り返していますが、確実に拠点を潰しています」

 

 秘書が、そう付け加える。

 秘書――彼女は、シーナスの同級生であり、幼馴染でもある。

 

「確か、君は彼女と……」

「はい、同級生であり、幼馴染でもあります」

 

 ラガール提督の言葉を、素直に肯定する。

 

「安心しろ、君が私情を出している訳では無い事は100も承知だ。だが……」

 

 そこで、椅子に背を預け、展開されている空間モニターを眺める。

 

「結果がこれでは、な」

 

 空間モニターには、シーナスが参加した任務の成功もしくは失敗の数。

 そして、成功は――ゼロ。

 無能という烙印を押されても、文句は言えない。

 だが、相手がラギュナスだと話は別になってくる。

 謎に包まれている組織、ラギュナス。

 目的、活動はともかく、運営方法や人事の確保など、不明点がいくつも挙げられている。

 人事に関しては、管理外世界の人間の可能性があると踏み、極秘裏に調査した。

 が、結果は惨敗。

 むしろ、関係があると思われる次元世界が、無法地帯、戦争中、消滅したなど、情報が当てにならなかった。

 資金援助を行っていると思われる存在も、人事と同じ結果であった。

 しかし、こちらは当てになる情報でありながらも、証拠不十分や、摘発すれば世界経済に影響を与えかねないモノばかり。

 完全に八方塞である。

 最後に、ラギュナスのメンバーは家族や仲間、友を裏切らない。

 故に、ここ2年くらいで逮捕したラギュナスのメンバーは、口を決して開かない。

 どんな拷問を受けようが、取引を持ちかけても。

 結束は固く、統制が取れている。

 

「シーナス部隊長に、当分休むように伝えておけ。今回までで、相当溜まっているはずだからな」

「はい、判りました」

「あと、お前も一緒に休め」

「……ありがとうございます」

 

 秘書は、ラガールに頭を下げた。

 

 

 

 

 

 ラギュナス。

 その言葉に、意味は無い。

 だが、その言葉を聞けば、誰もが恐れ、こう口にする。

 犯罪組織・ラギュナス、と。

 今やラギュナスを知らない人間は、管理外世界くらいである。

 しかし、風の噂では、その管理外世界で資金を調達しているという。

 また、メンバーの大半が管理外世界の人間だ。

 さらには、ラギュナスは神だという。

 デマや誤認などの情報も飛び交っている中、実際本当の事もある。

 流れた時は、ラギュナスのメンバー全員が冷や汗をかいたが、デマだと切り捨てられた事に安心した事もある。

 ともかく、今やラギュナスは一般常識になっていた。

 ミッドチルダ流行語大賞というものがあるが、ラギュナスは除外された経由もある。

 そして、どこかにあるラギュナスの本拠地、『長の間』で、ある事が起きていた。

 

「あ~、シグナム、様……弁解――」

 

 ベッドの上で、全裸の状態で怯える長、桐嶋時覇。

 

「あると思うか?」

 

 満面の笑みを浮かべつつも、背後に阿修羅と炎の幻影を浮かべ、レヴァンティン・滅を構えるシグナム。

 炎に関しては、幻影ではなく魔力のモノなのだが。

 

「嫉妬は醜い」

 

 と、これまた全裸のディエチが言う。

 ちなみに、股の辺りには、赤いシミがある。

 ここまで記載すれば判るだろう――男女関係の修羅場である。

 そこで、部屋の扉が開き、同時に3人の視線が集まる。

 

「長~、あの3人がかぇ…………」

 

 報告に来たメンバーが、部屋の光景を見て固まる。

 シグナムの気迫もあるも、そんなのは屁の河童的な顔でいるのが、恐ろしい。

 しかし、時覇はここぞと言わんばかりに、助けの目線を求める。

 

「…………失礼しました」

 

 無常に閉まる扉。

 これにより、もうここには誰も来ない。

 この修羅場が終わるまで。

 

「……覚悟は出来ているな、時覇、ディエチ――レヴァンティン!!」

<は、はい――バースト・スラッシュ>

 

 レヴァンティンの刀身が、マグマの様に赤く染まる。

 この魔法の効果は、相手を斬った部分をマグマの様に熱くする。

 しかも、効果が切れるのは、3日後。

 それまでの間、沸騰した鍋の如く、痛みが不規則に襲う。

 

「イーメルカノン、セット!!」

 

 布団を思いっきり捲ると、巨大な砲台が姿を現す。

 どう見ても、これを予想して隠して置いたのが明白に判る。

 そして、全裸のまま砲台形デバイスを修羅神――もとい、シグナムに向ける。

 ちなみに、イーメルカノンは、完成予定品のイノーメスカノンの試作品である。

 形は同じなのだが、エネルギー消費が激しく、砲身が3発までしか耐えられない。

 一応、最善策として、砲身がカートリッジの様に取り外しができる。

 

「ババァは帰れ――ドラグーン・ブレス!!」

 

 砲身が加熱され、集約さていく音は、まるで獣の様な雄叫びを上げる。

 同時に、互いの準備が整った。

 シグナムは飛び込み、ディエチは引き金を引くだけ。

 時覇は素っ裸で、動くことが出来ない。

 動けば終わる。

 全身全霊が告げている。

 そこで、ベッドから何かの袋が落ちる。

 落ちる瞬間、何もかもスローモーションになる。

 落ちる。

 落ちる。

 落ちる。

 落ちる。

 落ちる。

 地面に付いた。

 

「紫炎開斬(しえんかいざん)!!」

「ファイヤァァァァァァァァッ!!」

 

 2つの力がぶつかり合い、部屋全体が白く染まる。

 ただ、布団のシーツに赤いシミがあったが――食紅だ。

 決して、血ではない。

 

 

 

 

 通路に工事独特の音が鳴り響く。

 

「お~い、修復ナノはまだか?」

「ああ、今渡すよ」

「破棄したいモノがあるから、誰かカートを持ってきて」

「もう通路に置いてあるよ」

 

 と、メンバーの下っ端たちが、片付けと修復、修理を行っている。

 その手際の良さは、職人技である。

 が、彼らは修繕を行う者でなく、武装隊である。

 簡単に言えば、ただの慣れ。

 

「派手にやったな」

 

 ボロボロになった部屋を、作業の邪魔にならない位置から眺めるドクター。

 転送ポートから帰ってきた矢先に、振動。

 発生地点が、長の部屋と聞いて、大体検討がついた。

 今向いている方角の反対側では、補佐が時覇、ディエチ、シグナムの3人を説教中。

 

「いや、ドクターくん」

 

 後ろから声が掛かり、振り向く。

 

「ジェイルか、久しぶりだな」

「ああ、久しぶりだよ」

 

 そう言いながら、互いに握手を交わす。

 

「また、長かね?」

「説教されている所を見てきているだろ。お前の娘も、1枚噛んでる」

 

 その言葉に、ジェイルスカルエッティが苦笑する。

 

「私も、正直驚きの連続だ」

 

 そう言って、天井を見る。

 

「私が生み出した戦闘機人……それが、人と同じように感情をだし、恋をし……あんな行動まで起こすとは」

 

 あの行動とは、先のディエチの偽装口実の事である。

 

「彼――長には、感謝している」

「データか?」

 

 しかし、ジェイルスカルエッティから意外な言葉が返ってきた。

 

「データなど、どうでもいい」

 

 さすがのドクターも、この言葉には驚いた。

 

「今では、私の娘だと……家族だと思っている」

 

 その言葉に、ドクターは肩を竦めた。

 

「可笑しいかね?」

「まぁ、な。しかし、悪いことではない」

 

 ドクターは、ジェイルスカルエッティの問いに答えながら、歩き始める。

 ジェイルスカルエッティも、それに続く。

 

「そういえば」

 

 と、ジェイルスカルエッティが声を出す。

 

「ノーヴェとウェンディは、どこへ?」

 

 ここ10日ばかり、姿を見ていない娘の名を上げる。

 

「あの2人なら、こっちで作ったデバイスを使った訓練に出かけているよ」

 

 

 

 

 

「でぃりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 ノーヴェが、右手の篭手に搭載された粒子ブレードを向けて、叫びながら突貫してくる。

 

「甘いは砂糖で十分!!」

 

 それを迎え撃つのが、特別戦技隊・副隊長のトーラングス・L・ギーム。

 だが、彼はデバイスを持っておらず、簡易防護服も身に着けてはいない。

 第一、彼――トーラングスは、魔力が一般人クラスしかない。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ――」

 

 トーラングスの右手に、青白い光が灯る。

 しかし、ノーヴェは臆する事無く、突貫していく。

 

「――氣功・甲之覇気(きこう・こうのはき)」

 

 右手を突き出して、手の平で円を描きつつ、脇辺りに引っ込め、拳を握る。

 引っ込めると同時に、左手で円の軌道を描きつつ、右手に添えるように持っていく。

 ただし、右手に乗せることは無く、覆い被せるような形にしておく。

 

「――氣龍波(きりゅうは)!!」

 

 右手を体全体で、前に突き出す。

 すると、龍が飛び出して来た。

 だが、ノーヴェは驚く素振りの見せず、突き進んでくる。

 粒子ブレードを構えたノーヴェと、氣龍波が向かい合う。

 が、ノーヴェは急停止し、右へ跳ぶ。

 トーラングスは、氣龍波をノーヴェの避けた右――トーラングスから見て左へ向けようとする。

 しかし、彼女――ノーヴェには届く事は無い。

 

「ウェンディか!?」

 

 なんと、ノーヴェの後ろには、誘導弾があったのである。

 そのまま氣龍波とぶつかり合い――爆散。

 同時に、後方へ跳ぶトーラングスだったが、ノーヴェに先回りされていた。

 

「――せぃ!!」

 

 砂煙を上げながら、右下から左上に切り上げる。

 だが、間一髪で回避し、ノーヴェの腹に拳を打ち込む。

 

「――――かぁはっ」

 

 口から、胃液が吐き出される。

 腹よりも背中に衝撃が走り、背中を中心に全身に広がる。

 衝撃が突き抜けた証拠である。

 ただ、鳩尾には変わり無く、後から腹に痛みが生まれる。

 蹲るノーヴェに、トドメを刺そうと足を空へ上げる。

 しかし、トーラングスは左へ跳ぶ。

 先ほどまでいた地点に、魔力弾が地面に突き刺さる。

 次の瞬間、魔力の柱が立ち上る。

 地面貫通衝撃弾――通称、GPSB。

 魔法名は、ポール・フレア。

 ポールの如く、火柱が上がることから名付けられた。

 

(ノーヴェ、大丈夫ッスか?)

 

 ウェンディからの念話。

 しかし、ノーヴェは首を横に振った。

 念話を返す余裕すらないらしい。

 

「そこか!!」

 

 トーラングスは、ある方角を向きながら叫び、跳びだした。

 ちなみに、ウェンディがいる場所までの距離は、直線状にしても、5キロメートルは下らない。

 

「しまったッス!!」

 

 右脇にあるDヴェスパーをスライドさせて背中に戻し、慌ててその場から離れるウェンディ。

 だが、相手は猛スピードで近づいてくる。

 

「くっ――マイン、セット!!」

 

 手の平で生成した大きな魔力の玉を、後ろを向かず、適当に放り投げる。

 すると、大きな魔力の玉は、空中で大量の小さな玉にバラけて、ホウセン花の如く飛び散る。

 そして、近くの岩場に隠れ、大地との呼吸を合わせ、できる限り気配を消した。

 魔法名、ランダム・マイン。

 文字通り、辺りにランダムに拡散するが、爆発効果もランダムとなっている。

 炎、氷、石柱、水、爆発、束縛など、多種多様となっている。

 問題なのが、スカである。

 滅多に出てこない効果だが、出たら出たで、策略などに影響が及ぶ事である。

 一度、チーム戦をやった時に、大量のスカが出てしまい、ウェンディの属するチームがボロ負けした記録がある。

 故に、余り信用性が欠ける魔法であるが、けん制目的なら有効である。

 ちなみに、空中にも展開できるので、汎用性は高い。

 だが、トーラングスには無意味だった。

 

「――破!!」

 

 獣の様に、地面に向かって叫ぶと、地面に爆発が次々と起こる。

 覇気による衝撃で、大気を震わせ、大地を揺らして誘爆させる。

 

(改めて見ると、私ら――戦闘機人の存在意義が薄れるッスね)

 

 その光景を見ながら、冷や汗を流しながら内心で呟く。

 そこで怖気が走り、本能的にその場から跳び離れる。

 次の瞬間――背もたれにしていた岩が粉砕した。

 砂煙が上がるも、その中から敵がいると本能で悟り、座り込んだ状態で両手を上げる。

 完全に手詰まりである。

 

「…………知恵は付いた様だな」

 

 晴れていく砂煙の中から、トーラングスは歩いてくる。

 

「うッス、私の負けッス」

 

 笑顔を浮かべながら、思考を走らせる。

 トーラングスが歩く歩幅と、自分までの距離、到着時間、敵の能力などを絡める。

 結果――逆転不可能。

 離脱は可能であるが、五体満足は不可。足と腕1本ずつ持ってかれる。

 だが、ノーヴェだけ逃げられる時間は確保できる。

 

「見事だ」

 

 トーラングスが、関心の声を上げる。

 

「この状況化で、よく思考した。ノーヴェの戦闘能力も上がった」

 

 そう言いながら、ノーヴェがいる方向を向く。

 

「訓練は終了だ――ノーヴェを拾って帰るぞ」

 

 その場から跳んでいく。

 

「うッス!!」

 

 そう言いながら立ち上がり、ウェンディも後に続いた。

 

 

 

 

 

 まだ未登録の世界――名は、『ダーストレイド』。

 文明を築いて崩壊、また築いては崩壊を何度も繰り返してきた世界。

 そのせいで、多種多様の人種が育まれている。

 人間はもちろん、狼人、キメラ人、竜人、エルフ、獣人、物の怪人、魔物人など。

 とにかく、人をベースとなった人種が存在する世界。

 今ではハーフも存在し、さらにバリエーションを増やしている。

 ただ人間も含めて、先祖は全て人工的に作られた存在。もともと、戦争の消耗品扱いとして生まれてきたからである。

 故に生粋の人間は、この世界には存在しない。

 海の堤防で釣りをしている、ある2人を除いては。

 

「あ、そういえば」

 

 麦わら帽子を被った孤影(こえい)が、声を出す。

 

「どうした? ――っと、キタキター!!」

 

 緋龍(ひりゅう)が、聞き返しつつ、竿を持ち上げてリールを巻き上げる。

 使用している竿は、ガーディ社が作った釣竿――MAKISIMAMU。

 強度は鉄並みにあるものの、プラスチック並みに軽く、よくしなる。

 その理由は、ガーディ社が独自で開発した金属――『ゴルガーナ』。

 リオファルコンの製作過程で出来た金属である。

 が、コスト面では問題ないものの、生産するにも時間が掛かるので、支援会社に譲渡したシロモノである。

 今では高級釣竿として、釣りをするユーザーに好評となったブランド品である。

「今日、定例会議じゃなかったか?」

 ほのぼのしながら言う孤影。

 

「あっ――って、あぶね!!」

 

 一瞬固まった緋龍だったが、竿の引きに、思考が再起動する。

 

「どうする?」

「今、修羅場跡の片付け最中だから――おっと! 今は、大丈夫、だろ!!」

 

 リールを巻き、一気に竿を上げる。

 水中から、強大な――マグロ並みの――魚が出てくる。

 

「うげっ!? 釣り上げ禁止のバスバじゃねぇか!! 最悪だ!!」

 

 天然記念物級の魚――バスバ。

 捨てる場所が無く、全てが食材として使える事で、重宝される魚である。

 が、近年の研究で、汚染した水を浄化させる力がある事が判り、一切の捕獲を禁じたのである。

 しかも、ゴミを餌としているので、さらに水が綺麗になる。

 理由は、昔の戦争の影響で水が使えない時期が何度もあったからである。

 使えない理由は、毒ガスや放射線などが染み渡った事が原因である。

 故に、水の重要・大切さを一番理解している世界でもある。

 しかし、密漁問題が発生する。

 そこで法律が改正し、バスバの密漁対処として、その場で射殺も良い。である。

 よって、ここで見つかれば、射殺されても文句は言えない。

 

「ルアーは諦めろ」

 

 と、大分離れた場所から言う孤影。

 無論、私は関係ない事をアピールする為。

 

「白状者~!!」

 

 結局、泣く泣くリールを切ることにした。

 結果、孤影が6匹、緋龍が5匹。

 大量とは言えないものの、全てがマグロ並みの大きさなので、問題は無い。

 ちなみにクーラーボックスに入る訳でもないので、空間倉庫に氷付けにして入れてある。

 空間倉庫は、デバイスの変形の際、別パーツを取り出す時にある部分を、応用して作った物である。

 こちらも便利なので、別の支援会社に譲渡し、製品化されている。

 なを、時空管理局も使用しているほどであるが、発案・開発がラギュナスだとは気づいていない。

 

「あ~う~」

 

 手をブラブラさせながら、危ない足取りで道を歩く緋龍。

 余りの暗さに、不良やヤクザみたいな連中ですら、道を空けた。

 

「いい加減にしろよ」

 

 ため息を吐きながら、問いかける孤影。

 

「罰金されないだけマシだろ?」

 

 さすがに街中で、バスバの事を上げるのはヤバイので、伏せながら話す。

 

「たしかにそうだが……――まっ、とにかく戻るか」

「そうだな。俺たちが最後かもな」

 

 空を見上げながら、孤影が言った。

 空は青々しく、雲1つない。

 風も、優しく吹き付ける。

 しかし、それは――嵐の前の静けさであった。

 

 

 

 

 

 ラギュナス本部の中央の建物の中。

 中央全会議室と書かれたプレート。

 その左側には、両開きにも観音開きのもなる大きな扉がある。

 そこに、次々と人が入っていく。

 中には、時空管理局の人間もいた。

 そして、それぞれ適当な場所に座る。

 特に席の場所は決められてはいない。

 来られない者は、独自回線の空間モニターから参加する。

 

「これより、ラギュナス定例会議――通称、ラ定会を行います」

 

 と、時空管理局・提督クラスの女性が言う。

 歳は28だが見た目は19歳くらいで、髪はセミロングの黄緑。

 追加でモデル体系に、優しそうな顔立ちながら、キリッとした空気が漂う。

 

「まず今月の方針と達成率から――」

 

 いつも通りの報告から始まり、部隊の被害、ケガ人、死者、巻き込まれた一般人の数などを言っていく。

 その間にも、チラホラと入り口からと途中から入ってきた者がいたが、特にお咎めは無い。

「次に、各自の主に目立った報告を上げます。上がらなかった報告は、各自で確認をお願いします」

 時空管理局・提督クラスの女性――司会者が、左に展開されていた空間モニターを操作する。

 主な内容は、管理局によって見つかった基地の破棄と、私物の研究・発明内容について。

 前者は仕方ないとしても、後者はそろそろ見過ごせなくなってきた。

 

「――以上です。なを、個人で研究・開発している方々は、この会議が終わった後、報告書として提出してください」

 

 そういい終わると、辺りが騒がしくなる。

 報告された研究・開発内容は、ラギュナスの範囲内ギリギリの線ばかり。

 さすがに誰が開発したのかまでは挙げられなかったが、同じ部隊にいるとなると、とても他人事では無かった。

 1歩間違えれば、自分たちにも危険になるからである。

 一通り騒いだことを見越して、司会者が静止させようとすると、また1人途中参加者が入ってくる。

 

「――長!!」

 

 その言葉に、一斉に静かになる。

 

「報告はどこまで?」

「はい、こちらまで――」

 

 と、司会者は、手早く長――時覇に、空間モニターを見せる。

 

「…………うむ、続けてくれ」

 

 それだけ言って、会議室から出て行く。

 

「はい」

 

 返事を返し、頭を下げる。

 日ごろ、馬鹿な事やなんやらで、騒ぎを起こしている男といえで、長に変わりは無い。

 この男だからこそ、皆が付いて来てくれているのだから。

 

「ときちゃ~んぅ♪」

 

 上の席から、女性の声が聞こえる。

 

「リスティか、どうした?」

「何で戻るのかな~、と思って」

 

 その言葉に、周りの人間たちも首を縦に振る。

 

「シグナムのご機嫌取り」

 

 それだけ言って、とっとと出て行ってしまった。

 しかし、その言葉で大体察しがついたらしく、苦笑したり、呆れたり、笑ったりと様々な顔が生まれた。

 司会者も、その1人である。

 

「はいはい」

 

 パンパンと手を叩きながら、自分に注目させる。

 

「あと少し終わりだから、耳を傾けて」

 

 今日も、1日が過ぎていく。

 だが、ラギュナスの大半は考えた。

 時空管理局・円卓の守護者たちの動向を。

 そして、新暦75年4月を機に――再び戦火が舞い上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何かに出逢う者たちの物語・外伝

第二部

魔法少女リリカルなのはTIWB

~二つの意志と狂いきった世界~

 

 

第一話

嵐の前の日常

 

END

 

 

 

 

 

次回予告

 

均衡が続いていた戦い。

しかし、その世界の中で、2人の少女たちが試験に望む。

名は、スバル・ナカジマとティアナ・ランスター。

だが、試験中に使った、スバルの技は――

 

 

 

次回、何かに出逢う者たちの物語・外伝

魔法少女リリカルなのはTIWB

~二つの意志と狂いきった世界~

 

 

第二話:高みの試練

 

 

 

静止していた狂った歯車が、ゆっくりと動き出す。そう、ゆっくりと……。




あとがき
 難航していた、第一話が完成!!
 第二話も、完成次第アップしていきます。
 っーか、設定が物凄くなってきていますが、回収していきます。
 難関の第一話目を公開し、流れを作っていき、その流れが終わる。
 さらに、新た流れを作る際が、一番難しいですね。(汗
 最後に、リスティは『とらいあんぐるハート3』に出てくる方です。
 フィリスも出そうか検討中ですが、基本的にオリキャラが目立ってきますね。
 ではでは。






制作開始:2008/2/8~2008/2/14

打ち込み日:2008/2/14
公開日:2008/2/14

変更日:2008/10/29
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