何かに出逢う者たちの物語・外伝Ⅰ   作:ダークバスター

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目に焼きついた光景を、時折思い出すことがある。
その時の出来事を思い出すも、それは美化されたり、胆略・省略されたりすることがある。
それは、時に自分なりに良過ぎるモノに変化する可能性が、非常に高い。
だが、それも『人間』という種の特性なのかもしれない。
ただ……純粋な思いは、世界には通じない。


第四話:魔法の手

 

 

「――――――――!?」

 

 悲鳴にならない悲鳴を上げるティアナ。

 爆発――砂煙の中から、右腕を失ったパイロンが姿を現す。

 

「なぁ!?」

 

 窓から見下ろしていたスバルは驚愕する。

 仕留めたと思った矢先の出来事。

 リインフォースⅡも驚くも、すぐに空間モニターを展開する。

 

「こちら、リインフォースⅡ空曹長!! 至急試験の――」

≪その要請を却下します≫

 

 リインフォースⅡの言葉を聞かずに、問答無用で切り捨てるなのは。

 

「何故ですか!?」

≪何故って……≫

 

 モニター越しから、ため息が聞こえる。

 

≪この程度のトラブルを解決できなければ、この試験を脱落させるべきだよ。いや――≫

 

 そこで、一呼吸。

 その間にも、瓦礫を力任せに押し上げながら、ティアナと同じハイウェイに立つパイロン。

 その姿は、ただの兵器には見えなかった。

 

≪管理局を辞めたほうが言い……命がいくつあっても、足りないから≫

 

 その言葉に経験上、納得せざる負えないリインフォースⅡ。

 敵に情けを掛けたことで、重症になりかけた経験がある故に。そして、上司にこう言われた――甘さは死を呼ぶ。

 主であるはやてからも、そう言われた。

 頭では判っていても、本能が理解していない証拠であると、唇を噛みながら考えるリインフォースⅡ。

 その間にも、パイロンはティアナに、1歩1歩確実に迫る。

 

「くっ――」

 

 ティアナは痛みを堪えながら、パイロンの足元に魔力弾を打ち込み、砂埃でカメラの視界を奪う。

 気休めだと判っていても、ほんの数瞬の隙が出来れば、少しでも動ける。

 その数瞬が命取りにもなり、何かの切っ掛けにもなる。足を引きずりながら、瓦礫の後ろに回りこむティアナ。

 その瓦礫に隠れつつ、少しでも離れるために動く。

 

「ティア、今行く――ウイングロード!!」

 

 スバルは、右腕を地面に叩きつけると、そこから青白い光の道が生まれる。

 そして、風の道――ウイングロードを駆け抜ける。

 パイロンは、攻撃目標をスバルに定め、口から低出力のバースト・ビームを乱射する。

 本来の出力だと、連射することが出来ず、チャージにも時間が掛かる。だが、低出力ならば、攻撃力がガタ落ちするが、それ以外問題は無く連射もできる。

 スバルはそれを掻い潜り、素早く接近するも――上空へ逃げるパイロン。

 しかも、ハイウェイから飛び出したので、このまま追撃しても叩き落とされるか、回避されれば地面に落ちる。

 だが、スバルは臆する事無く、更にウイングロードを出して駆け抜ける。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

 無謀と思えるほどの勢いで突撃するスバル。

 しかし、彼女のデバイスのリボルバーナックルの手が、青白く光り輝く。

 ウイングロードから飛び出し、パイロンへと進む。

 だが、パイロンの口のエネルギーが臨界点まで達している、いつでも撃てる事を意味する。

 スバルもその事は確認しているも、避ける事もせずに突き進む。

 それを驚く様に、ティアナとリインフォースⅡ、なのはが見入る。

 さらに、ヘリからフェイトとはやて、遠くから見ていた時覇にクアットロ、ディエチも驚く。

 スバルの使おうとしている技は、この世で今の所1人しか存在していないものなのだから。

 そして、互いに放つ強大な力。

 パイロンは、今の状態で放つことが出来る、最大出力のバースト・ビーム。

 スバルは、右手をパイロンの顔に目掛けて――スバルを助けた恩師の技を放つ。

 

「マジックゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ――」

 

 バースト・ビームが放たれる同時に、右手を前に突き出す。

 

「フィンガァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

 その手に輝く魔法は――希望を掴むことが出来たかもしれない、魔法の手であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第四話:魔法の手

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔法の手と爆発の粒子がぶつかり合う。

 均衡。

 互いの力をぶつけ合い、同じ力だった結果で生まれる現象である。

 だが、魔法の手――マジック・フィンガーによって、スバルが徐々に押し始める。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 バースト・ビームを拡散させながら、徐々にパイロンの顔に迫る。

 パイロンの放つ、バースト・ビームの出力低下が均衡を破る原因となっている。その原因の理由は、やはり破損である。

 たかが片腕を落とした程度と言っても、ビルの25階辺りから地面に叩きつけられているのだから、不調になるのは必然ともいえる。

 人間でも、いくら魔法で強化し防護服を身に纏っても、落ちれば良くて重症、悪ければ死。という結果が出るのだから、戦闘用とはいえ精密機械が落ちれば破損する。

 崩れた均衡は戻ることは無く、スバルはパイロンの顔を掴む。正確には、真正面から口を中心にして掴んでいる。

 

「りゃぁぁぁぁああああああああああっ――」

 

 スバルは、さらに強くパイロンの顔を掴む。

 出力が落ちたとはいえ、未だにバースト・ビームは放たれているが、真正面から抑えられて拡散されている。

 

「――ブレイク!!」

 

 右手がさらに輝きを増し、パイロンの顔を一気に握り潰す。

 さらに顔を潰したことにより、バースト・ビームのエネルギーの放出先が無くなった。

 スバルは、パイロンを蹴ると同時に後方へ跳び、1回転だけして空中でウイングロードを展開。その上に着地し、ハイウェイに戻る。

 その間に、パイロンは再び地面に落下し、地面にぶつかる前に空中爆発を起こした。

 ここに、最終ターゲットの破壊を確認――全ての項目をクリア。あとは、ゴールをするだけである。

 

「ティア!!」

 

 スバルの背後に、爆発と黒鉛が上がる。が、特に気にはしていない様である。

 

「大丈夫!?」

「怒鳴るな……行くわよ、ゴールへ」

 

 ティアナは、疲れきった表情ながらも、口を吊り上げた。

 そして、ゴール地点では、リインフォースⅡがハイウェイの先を眺めており、その横に時間が表示された空間モニターあった。

 リインフォースⅡは、遠目で見据えていると、ハイウェイの中心に砂埃が上がっているのが判った。さらに、その砂埃は徐々に大きく、こちらに迫ってくる。

 さらに目を凝らしてみると、その砂埃を発生させている原因が判る――ローラーブーツで走行するスバルと、背中に背負われたティアナの2人であった。

 

「来たですぅ!!」

 

 リンフォースⅡは、大いに喜んだ。彼女らが無事だった事に。

 

「見えた――ティア!!」

 

 ティアナは、素早く時計を表示する。

 

「残り14秒、まだ可能性はある!!」

 

 スバルはその言葉を聞いた瞬間、体内の残り少ない魔力を全て足につぎ込む。

 

「いっくぞぉぉぉぉおおおおおおおお!!」

 

 ローラーブーツは、一気に回転数を上げて、加速を掛ける。

 

「――って、止まる事考えてるの!?」

「――え!?」

 

 ティアナの言葉に、我に返ったスバル。この状況を冷静に把握。

 前には、ゴールがあるのも一目瞭然。今のスピードは、ブレーキを掛けても相当な距離が必要。だけど、その距離を稼ぐにも、ゴールの先には瓦礫の山がある。残りの魔力もほとんど無い。

 うん――無理。

 僅か1秒で悟ったスバル。ティアナも、何と無くだが雰囲気で悟る。

 ティアナは思う――この試験の後で、必ずシバく。

 互いに心に思いつつ、とりあえず出すモノは出しておく。

 

『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?』

 

 心の中とは裏腹に、正面のハイウェイを完全に封鎖させる量の瓦礫が、山となって待ち構えている。

 リインフォースⅡは、彼女らを止める術を持っていない為、そのままゴールを素通りさせてしまう。

 対処したくても、対処できない状況に慌てふためくのである。

 しかし、それを見てため息を吐きながら、右手を頭上に上げるなのは。

 

「はぁ~……レイジングハート、アクティブガード。あと、ホールディングネットを」

≪了解しました――アクティブガードとホールディングネット≫

 

 スバルとティアナがぶつかると思った瞬間、ピンク色の爆発が起こる。

 ヘリの開閉ドアからは、フェイトが片手に魔方陣を展開し、はやては魔道書を開いている。

 そして、ピンク色の爆発が晴れると、アクティブガードに引っかかるように乗っているティアナ。左のローラーブーツが脱げ、ホールディングネットの上にひっくり返った状態でいるスバルがいた。

 ティアナの表情は、痛みよりも疲れが強く、スバルを軽蔑の眼差しで見ている。

 スバルはスバルで、ティアナの視線に耐えられず、ひっくり返ったまま凹み続けている。

 

「こらぁ~!」

 

 その幼い声ながらも、怒鳴る言葉に2人は顔を向ける。

 

「危険行為は減点対象です! そんな事も判らない様では、魔導師としてはダメダメですぅ!」

 

 リインフォースⅡが、空中で全身で怒りを表している。だが、傍から見れば、それはそれで愛らしい姿を見せている。

 そして、初めてリインフォースⅡを見た2人の感想。

 

「ちっさ」

 

 ティアナが、唖然とした顔で洩らした言葉。

 

「ふぇ~」

 

 スバルが、ぽけぇーと出した言葉。

 そして、1つの影が差し掛かり、声が響く。

 

「まぁまぁ、そこまでにして」

 

 その言葉が放たれた方を向く。

 白いバリアジャッケットに、青いラインが幾つも描かれている。さらに胸には、トレードマークとも言える様な少し大きめの真っ赤なリボン。ツインテールに髪留めとして使われている白いリボンが2つ。

 手には、赤い水晶体が目立つ杖――レイジングハート・エクセリオンが握られている。

 時空管理局戦技教導隊所属・高町なのは一等空尉であった。

 彼女は、ゆっくりと降下していき――ハイウェイに立つ。

 

「なのはさん!」

 

 喜びの声を上げながら、リインフォースⅡはなのはの降下しながら元へ向い、なのはの顔の高さ辺りで静止する。

 

「リイン、ご苦労様。試験管の方も、それなりに良かったよ」

「はい、ありがとうございます!」

 

 そこで、敬礼をしながら感謝の意を述べる。

 なのはは軽く頷き、魔法を放つ。すると、ティアナの全身がなのはの魔力に覆われ、ゆっくりと上がり、山形を描きつつハイウェイに降ろす。

 

「ティアナだっけ」

「はい」

「足の治療を行うから、この場でもう少しだけ簡易処置を施すね」

「あ、それでしたら、私がやります!」

 

 と、言いながらその場で1回転してから、ティアナの側へ向かう。

 

「お、お願いします」

 

 そんなやり取りが行われている横を素通りし、スバルの元へ行くなのは。

 いつの間にか体制を戻し、その場に座り込んでいたスバルだったが、なのはが歩み寄ってきたことにより、慌てて立ち上がる。

 そして、昔――4年前の出来事を思い出す。

 空港火災。

 力を秘めていたにも関わらず、それを背けて無力と化していた自分。

 やさしく抱き上げてくれた、憧れの2人の内の1人。

 それが、目の前にいる。

 

「久しぶりだね、スバル」

 

 その言葉に、涙が溢れて来るのが判った。判ったが、止めることができない。

 

「なのは、さん」

 

 涙目になりながら、そう答える。

 だが――感動の涙はと衝動は、次の言葉で一気に冷める。

 

「スバル・ナカジマ二等陸士。あなたを、スパイ容疑で拘束します」

 

 その言葉に、困惑するスバル。ティアナもだが、リインフォース、ヘリにいたフェイトとはやては悟った顔をしていた。

 

「先の魔法――マジック・フィンガーは、犯罪組織・ラギュナスの長が使っている魔法です。よって、残念ながら、あなたを関係者として拘束します。同行を」

 

 

 スバルは、その場で1歩下がるも、ローラーブーツが地面に引っかかり、その場でしりもちをついてしまう。

 しかも、困惑の余り、気が動転して呂律(ろれつ)も回らない。

 

「とにかく、ティアナの処置が終わり次第、ヘリで本部に戻ります――リイン」

「はい、お任せくださいです」

 

 それだけ言って、ティアナの簡易処置に専念するリインフォースⅡ。

 そして、その近くに不時着しようとするヘリの窓から、フェイトが顔を出す。

 なのはは、スバルと適度な距離を保ちつつ、その場で待機。ティアナは、自分の足の処置を眺めている。

 

「フェイトちゃん」

「何、はやて?」

 

 その声に、振り向くフェイト。はやては、人差し指を立てながら言う。

 

「実はフェイトちゃん、あの空港火災の時にスバルって子のお姉ちゃんを助けたんよ」

「え、ホント?」

 

 そう言って、再び視線を外へ戻す。

 座り込んで、放心状態のスバルの顔を良く見る。すると、スバルよりも少し紫よりの長髪の女の子を思い出す。

 

「ああ、確か……陸士訓練生のギンガ、って子だったね」

 

 そう言いながら、フェイトとはやては、当時の事を思い出す。

 4年前、はやては陸士の研修、なのはとフェイトは休みを利用して、近くの泊まりで遊びに来ていた時だった。

 その日の午後4時辺りに、ミッドの臨海地区の爆発火災が起こる――この爆発は、初めはラギュナスの仕業だと誰もが考えるが、そのラギュナスのメンバーも救助活動に参加していた。

 初動が遅いと言われる陸の管理局だったが、そんな事は関係無く、あっという間に空港全体を飲み込む。近隣の救助隊と航空隊が緊急招集されるほどの大火災となった。

 本局のオーバーSランク魔導師、高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、八神はやても参加。

 なのはとフェイトは、先行して救助活動を行い、はやては積極的に指揮官役を買い、色々と指示を出し、被害を食い止めていた。ただ、裏を返せば、被害を食い止めることだけが精一杯だった。

 

「第2、3消化班は、燃料タンクの方へ! 4と6は第12ブロックへ!」

 

 管制用のトラクターの上に乗り、色々な空間モニターを展開し、あちらこちらに指示を飛ばす。

 その最中に、下から本局の制服を着たリインフォースⅡが、切羽詰った姿で現す。

 

「はやてちゃん、全然人手が足らないです!」

「そんなことゆぅても、首都から航空隊が来るまで持たせるんや」

「はぁ、はいです!」

 

 はやての言葉に、リインフォースⅡは慌てて敬礼し、下に戻ろうとするも、何かを見つける。

 

「あれは――はやてちゃん! 応援部隊の指揮官が到着です!!」

 

 その言葉に、指示を一旦中断し、地面に飛び降りる。

 そして、はやての元に小走りで来る陸士部隊の上官に、立ち上がってから敬礼する。

 

「遅くなってすまない」

「いえ、陸士部隊で研修中の本局特別捜査官、八神はやて一等陸尉です。臨時で応援部隊の指揮を任されています」

 

 そして、応援部隊の指揮官も敬礼を返す。

 

「陸上警備隊108部隊のゲンヤ・ナカジマ三佐だ」

 

 挨拶を交し合うも、周りで指示や激が飛び交う。それにつられて、ゲンヤは顔を向ける。

 

「はい、ナカジマ三佐。部隊指揮をお願いしたいのですが」

「ん? ああ、確かお前さんも――」

 

 はやては、胸元から十字剣のペンダント――待機モードのデバイスを取り出し、ゲンヤに見せる。

 

「広域型なので、消火の手伝いを」

「判った、こっちは任しておけ」

 

 そこで通信が入り、はやての右側に空間モニターが表示される。

 

≪はやてちゃん、指示のあった女の子を無事に救出したんだけど、そこでラギュナスの長と会ったんだよ≫

「何やてぇ!? 今どこにおるんやぁ!?」

≪おっ、落ちついて、はやてちゃん! 何でもラギュナスは、今回は無関係だから、身の潔白を証明するから救助を手伝うって≫

 

 その言葉に、はやてとリインフォースⅡ、ゲンヤが驚く。つまり、この火災現場にラギュナスが活動している。

 はやてにとって、長がいる事はまたと無いチャンスであるが、今は目の前の火災に集中しなければならない。手が届きそうで、届かない。故に、奥歯を噛み締めるしかないはやて。

 

≪それで、はやてちゃんからの指示で助けに行った女の子を、ラギュナスの長が助けていたんだけど……私に押し付けて、火の中に飛び込んで――って、女の子!!≫

 

 なのはが進んで説明した時に、自分が助け出した女の子の事を思い出す。

 

≪スバル・ナカジマ、11歳の女の子を救出。お姉ちゃんが、まだ中にいるらしいから、再突入するね≫

「…………了解や、無理はせんといてな」

 

 奥歯をかみ締めつつ、なのはに当たらない様に、なるべくゆっくりとした口調で言う。

 

≪了解≫

 

 そこで通信は切れる。

 しかし、主の感情とは裏腹に、リインフォースⅡはなのはの報告にあった女の子の名前に、何か引っ掛かりを感じた。

 

「ナカジマって……」

「家の娘だ」

 

 ゲンヤの言葉に、はやては怒りを忘れ、リンフォースⅡと共に驚く。

 はやては、無言のまま炎上する空港を見る。再び、ゲンヤに視線を戻して口を開く。

 

「ナカジマ三佐。後の事、よろしくお願いします――リイン」

「はい!」

「ナカジマ三佐のサポートを。終わり次第、合流や」

「はい、了解です!」

 

 リインフォースⅡの返事だけを聞いて、また振り返り炎上する空港の方へ走り出す。

 ある程度走ると、はやての全身が白い光に包まれ、砕けるように剥がれた瞬間――バリアジャケットを纏い、十字剣が特徴の杖のデバイス・シュベルツクロイツが握られていた。

 それから、数歩目で踏み込んだ足に力を入れ、高く飛び立つ。魔力で構築された黒い羽を少しだけ散らしながら。

 

「ったく、強引な嬢ちゃんだな」

 

 と、後頭部を掻きながら、はやてが飛んでいった辺りに目をやる。それから、目線をリインフォースⅡに移す。

 

「じゃ、指示を頼む」

「はいです、よろしくお願いします」

 

 互いに微笑み合いながら挨拶を交わした瞬間、2人の顔が引き締まる。

 各部隊への迅速な指示が要求され、1つの小さな間違いが大惨事に変貌する。その大惨事を未然に防ぐために、先を見据え、的確な指示と決断をする事が望まれるからである。

 心構えを確かに持ち、2人がトレーラーに乗り込んでいく。

 その頃、フェイトは別のオペレーターからの指示で、一般人の救出を行っていた。

 最短ルートを行くために、いくつかの壁に穴を開けて進んで行く。本当はやってはいけない事なのだが、人命が掛かっているので免除される。

 請求書は、多分保険会社が出すのだろう。できなければ、経理部が泣きながら出すだろうが、それは経理部が1番避けたい事である。

 が、そんな事は知った事ではないと言わんばかりに、壁抜きを行い続けていた。

 

「バルディシュ」

<了解――プラズマスマッシャー>

 

 爆発開通。大穴空けて、新たなる道を開拓していく。

 そして、爆煙を払いながら、辺りを見渡す。

 

「時空管理局です! 救助に来ました! 誰かいませんか!?」

「こっ、こっちです!!」

 

 声がする方――左を向くと、そこに簡易バリアに守られた3人の男女がいた。

 

「大丈夫ですか!? 今、強力なのを」

 

 フェイトは、3人の男女に駆け寄りながら、バルディシュを向ける。

 すると、バルデッシュはカードリッジを1つ吐き出し、魔法を発動する。

 

<ディフェンサープラス>

 

 今張られていたバリアより、大きくて強力なモノを張る。

 

「大丈夫ですか、おケガは?」

 

 片膝を付きながら、相手と同じ目線に合わせる。

 

「はぁ、はぁ……こ、これを張ってくれた、魔導師の女の子が――」

 

 と、言いつつ、フェイトの後方を指差す。それを、顔を向けて確認する。

 

「妹を探しに、アッチヘ」

 

 そこで、一旦目を瞑り、再び開きながら振り向く。

 

「判りました、皆さんを安全な場所まで連れて行った、すぐ――」

 

 フェイトの後方が爆発。慌てて振り向くと、地球の忍者という衣装のゲームで出てきそうな服装のクノイチが、機械兵器と交戦していた。

 ちなみに、髪の色は青でショートカット風の首の高さ辺りで纏めた髪型。長さは腰の辺りまであり、服の色は水色をベースに黒が所々ある服である、エロチックな感じの服である。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 機械兵器の射撃攻撃をかわし――刀を一振り。そのままクノイチは通り過ぎ、足でブレーキを掛け、止める。

 機械兵器にダメージはなく、外したとフェイトと3人の男女は悟る。が、その考えを大いに裏切る光景が広がる。

 機械兵器が振り返った瞬間、上下半分に別れ、上だけ振り返るという摩訶不思議な光景が生み出される。

 そして、機械はショートして爆発。

 まさに、神業というべき行いを目の当たりにするフェイトだったが、首に巻かれたマフラーのロゴを見て、硬直する。

 そこには『ラギュナス』と、ミッドチルダ語で書かれていたからである。

 そして、フェイトたちの方を振り向いた。

 

「管理局員が固まってどうするの?」

 

 呆れ口調で言われ、フェイトはハッと我に返る。それから、思考をフル回転させる。

 何が正しくて、何が間違いで。

 何が優先で、何が後回しで。

 

「その人たちは、私が運ぶから。貴女は別の人を――……当然の反応ね」

 

 近づいてきたクノイチに、バルディシュを突きつけるフェイト。

 

「当たり前です。ラギュナスは、例外なく――と、言いたいですが」

 

 そう言い、バルディシュを下げ、立ち上がる。これが、今が正しい答えだと信じて。

 

「奥に行った女の子を救出してきますので、この人たちをお願いできますか?」

 

 その言葉に、苦笑するクノイチ。

 

「当たり前じゃない。まぁ、魔導師でない私には、1度に3人も運ぶのは難しいけど……」

 

 クノイチの後方に、いつの間にか2人の男が立っていた。

 

「3人に対して、3人。これなら問題ないわ」

「……――では、お願いします」

 

 呆気に取られたフェイトだったが、思考を素早く再起動させ、クノイチと男2人の横を通り過ぎていく。

 クノイチも、その後を追うように見て、フェイトの後姿を捉える。

 組織よりも感情を選び、尊重すべきモノを見据えた彼女を。

 この狂った――我々ラギュナスが狂わせてしまった世界では、絶滅危惧種に近い存在の人間。

 昔は当たり前でも、今は非難される考え。

 こんな世界に、未だ彼女の様な人間が、まだ何人いるのかは判らない。それでも、時空管理局に所属しつつも、今の世界の考えに逆らう行いが出来る人間がいて、嬉しく思うクノイチ。

 彼女なら、世界を変える存在の1人になるのだろうと、核心を持てた。

 

「じゃ、この人たちを外へ連れ出すわよ」

 

 それだけ言って、男女3人をそれぞれ1人ずつ抱え、走り出す。

 クノイチの名前は――九帖 明菜(くじょう あきな)。

 時空管理局に、まだ発見されていない世界の住人であり、フェイトたちと2度と出会う事が無い。

 理由はいくつもあり、その中に未来の事も含まれるからであり。

 その中で、今上げられるのは、彼女はラギュナスの特殊極秘部隊の1人である。

 特殊極秘部隊は、ラギュナスの戦闘員および非戦闘員関係無く構成された部隊で、ラギュナスの中でも極秘扱いと成っている。

 また、特定の人間――最高権力者である長が該当しない時もある。つまり、もっとも信用できた人間しか知らない部隊である。

 裏を返せば、入りたての下っ端が知る事ができ、トップ辺りにいる人間が知らされない場合もある。

 その基準は、特別極秘部隊の5分の4以上の人間の信用を得なければならない。

 つまり、ラギュナス全体に信用が行き届いている人間でなければ、一生知る事ができない部隊なのである。

 明菜は、救助者を背負って、燃え盛る通路を駆け抜けていく。それは、自分が進むべき未来の道の様にも見えた。燃え盛る炎の道――燃える様な熱い人生なのか、業火の様な地獄の人生なのか、それを知る為に駆け抜ける。

 そう思いを馳せながら、自分の今成すべき事を成す。

 ただ、それだけで満足なのだから。

 そして、フェイトは魔導師の女の子が、進んで行った言われる道を突き進んでいた。

 魔法でホバーリングして進めばいいと思うが、魔力は無限にある訳ではないので、体力があれば走って節約すべきである。

 時折、横から爆発があるが、バリアジャケットだけで防げる威力なので、舞う爆煙を振り払いながら怯まず進む。

 走り続けると、通路の出入り口が見える。そこを潜ると、大きな直角型の螺旋の非常もしくは作業用階段に出る。

 手摺りから少し身を乗り出して、下の階を見渡す。すると、フェイトがいる階から2つ右下に、青く長い髪にリボンがポイントの女の子がいた。手摺りを伝って、四つん這いで前進しているのが目に入る。

 

「……ル……た……」

「そこの女の子!!」

 

 すると、女の子はその場で止まり、フェイトの方を振り向く。

 

「今助けるから、そこでじっとしていて!!」

 

 言い終わった瞬間、空港全体が揺れるほどの爆発が起こる。

 その振動の影響で、女の子がいた場所に亀裂が入り――次の瞬間、女の子がいた場所が崩れた。

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「あっ!!」

 

 女の子が瓦礫と共に落ちていく中、フェイトは手摺りを乗り越え、十八番の魔法を初度させる。

 

<ソニックムーブ>

「きゃあぁぁぁぁぁぁ――」

 

 女の子の悲鳴は途切れ、瓦礫は派手な音を出しながら、地面と激突する。

 女の子は目を瞑っている。

 史を覚悟せざる、終えなかった状況下で、死の風に吹かれていた。が、今は暖かく包まれた感覚にいる。

 さらに、下に下がるのではなく、上に上がる感覚が当たる。

 先ほどとは間逆の感覚であるが、死んだとう感覚でない事は何と無く判った。

 女の子は恐る恐る目を開けると、そこに黒い服が目に入り、目線をそのまま上に持っていく。

 

「遅くなってご免ね。ケガは無い?」

 

 フェイトは、優しく声を掛ける。執務官としての能力ではなく、自分自身の持ち味で話す。

 

「はっ、はい、大丈夫です」

 

 緊張気味で答える女の子。

 フェイトは、少しだけ周りを見てから、その場を離脱するように上昇する。

 そして、ある程度進んでから少女に尋ねる。

 

「妹さんの名前は?」

 

 その言葉に、少女はハッと顔を上げる。

 

「ぁ、ぁの……」

「どっちに行ったか判る?」

「あの、エントランスホールの方ではぐれてしまって。名前は、スバル・ナカジマ、11歳です」

 

 的確な答えに、少し驚くフェイト。

 すると、横に通信が繋がり、空間モニターが展開する。

 

≪こちら通信本部。スバル・ナカジマ、11歳の女の子≫

 

 空間モニターに、なのはに抱えられたスバルの姿が映し出される。

 

≪すでに救出されています。救出者は、高町教導官です。ケガもありません≫

 

 それだけ言って、通信と空間モニターが消える。

 それを聞いて、女の子は涙目になる。

 

「スバル……無事でよかった」

「了解。こっちは、お姉さんを保護。お名前は」

 

 そう言いながら、女の子に顔を向けるフェイト。

 女の子も、フェイトの方に顔を向ける。

 

「ギンガ、ギンガ・ナカジマ。陸士候補生、13歳です」

 

 女の子――ギンガは、そう答える。

 その答えを聞いて、少し加速する。

 

「候補生か……未来の同僚だね」

「きょ、恐縮です」

 

 それだけ言って、フェイトは更なる加速を掛ける。

 それで、外――リインフォースⅡの方では、ゲンヤをサポートしていた。

 

「補給は?」

 

 と、リインフォースⅡに尋ねるゲンヤ。

 

「はい、あと15分で液体補給車が10台到着予定です。あと、航空隊も2時間以内に主力部隊が到着だそうです」

 

 その言葉に、驚くゲンヤ。いくらなんでも、遅すぎるからである。

 

「おせぇじゃねぇか!? 連中は何をやっているんだ!?」

「それが、機械兵器が出現した様で、そちらにも態様に追われているそうです」

「くそぉ、こんな時に……要救助者は?」

「現在……12人です。魔導師さんたちの頑張りもあるのですが……」

 

 そこで、言葉が詰まるリインフォースⅡ。今の状況を、どう説明すれば良いのか、悩んでいるのである。

 

「どうしたんだ?」

「それが、やはりなのですが……」

 

 次の言葉に、ゲンヤは大いに驚くことになる。

 

「どうやら、ラギュナスが救助を手伝っているらしくて」

「本当にラギュナスなのか!?」

 

 体ごとリインフォースⅡに向ける。

 ラギュナスの一般人の認識は――残忍で冷徹、目的の為なら何でもする集団。っと、時空管理局のプロパガンダと刷り込みでなっている。

 実際、それに近い事はするも、きちんと一線は保っている。だが、その一線を越える者がいれば、容赦無く断罪している。

 簡単に言えば、紙一重状態であるが、時空管理局も似た様なものである。ただ、それが隠蔽・改ざん・誤認情報による情報操作によって、時空管理局は完全な白と主張しているだけなのである。

 

「ったく、どうなってるんだ、今回の件は!?」

 

 頭を掻き毟りながら、空間モニターに視線を戻すゲンヤ。

 リインフォースⅡも同じ気持ちだったが、主の気持ちを考えると、ラギュナスは完全な敵でしかないのだから。

 その主である八神はやては、火災現場上空にて、魔法詠唱を行っていた。

 

「ほの白き雪の王」

 

 世界に響くような声を、高らかに上げる。

 

「銀の翼もて」

 

 夜天の王たる威厳を放ち、王だけが持つ事を許された魔道書『夜天の書』の呪文を読み上げていく。

 

「眼下の大地を、白銀に染めよ」

 

 その瞬間、はやての少し上辺りの四方に、青白いキューブが4つ出現する。

 はやてがいる所から下にいる――彼らもまた宙にいる――局員2名が、下の炎上している建物内をスキャンしている。

 

「スキャン完了! 八神二尉、お願いします!」

 

 同じバリアジャケットを着ている片割れが、はやてに声を掛ける。

 ちなみに、声を掛けた方が髪の毛が黒く、もう1人は髪の毛が水色である。

 

「アーテム・デズ・アイゼス!!」

 

 呪文を言いながら杖を振り下ろすと、4つの青白いキューブは、炎上する建物目掛けて着弾していく。

 すると、その着弾視点から氷が広がり、次々と炎を掻き消していく。

 後々思ったが、この方法だとバックドラフトが発生する可能性があったかもしれないが。広域タイプだったので、隅々まで氷付けになったので問題は無かったりする。

 

「すげぇ……これが、オーバーSランクの力なのか」

「ああ、話じゃ制御が多少下手だと利いてはいたが……全然上手いじゃないか」

 

 そう、眼下に広がる光景を見ながら、ぼやく黒い髪と青い髪の局員たち。

 昔のはやてなら、確かに多少の巻き添えはあっただろう。

 だが、この程度の制御がリインフォースⅡ無しで出来なければ、ラギュナスには勝てない。

 たった2ヶ月で、制御を完璧にしたのである。

 大切な家族を奪われたと未だに信じている心が、はやてを駆り立て、強くしていく。皮肉と言うべきなのかは、まだ何とも言えない。

 ただ、今は力と権力が必要なのだと考えている。その為には、より功績が求められてくる。

 

「次の消火可能ブロックはどこや!?」

「はっ、はい! ただいま捜索します!」

 

 はやてに怒鳴られた2人の局員は、大慌てで二手に分かれて捜索を開始する。

 が、そこで全体通信が入る。

 

≪――こちら、航空魔導師隊!≫

 

 その瞬間、はやての表情は喜びに変わるも、内心で舌打ちをする。

 救援はありがたいが、功績の大半を持っていかれるのが気に食わないからである。

 

≪遅れてすまない! 現地の局員と臨時の魔導師に感謝する! あとはこちらが受け持つ!≫

「了解しました! 引き続き、支援を行います」

≪――っ……判った。引き続き頼む≫

 

 ほんの僅かだったが、舌打ちした様な音が聞こえた。どうやら、相手もこちらに手柄を持っていかれるのが気に入らないようである。

 が、最後ら辺に来て、美味しい所だけ持って行かせない。

 

「はい!」

 

 そう返事して、消火活動を再開する。

 空港火災は、沈下の一途をたどる事となるが、ラギュナスと謎の機動兵器の動向が気に掛かるはやてだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何かに出逢う者たちの物語・外伝

第二部

魔法少女リリカルなのはTIWB

~二つの意志と狂いきった世界~

 

 

第四話

魔法の手

 

END

 

 

 

次回予告

 

4年前の空港火災の翌日に、はやてのある思いが固まる。

その思いに集う事を約束する、なのはとフェイト。

そして、ラギュナスは、謎の機械兵器についての調査を、逸早く始める。

再び戻っては、スバルの処遇と試験の結果が通達される。

 

 

 

次回、何かに出逢う者たちの物語・外伝

魔法少女リリカルなのはTIWB

~二つの意志と狂いきった世界~

 

 

第五話:強制徴収

 

 

 

上の命令は絶対であり、逆らってはいけない。




あとがき
 何か、長くなっています。(汗
 しかも、まだ2話目の前半部分であり、今こちらは4話目。
 まだ、2話目の後半があるのに……まだ、話は長くなります。(汗
 ちなみに、アンケート(2008/5/4現在)は未だに続いていますが、そこで現実世界とクロスという声が僅かにありました。
 が、それはアニメの5話目、こちらの予定は立っていますが、話数がずれるのが目に見えているので未定にしておいて下さい。
 とにかく、そこ――まで、お楽しみに。(ここまで書いておけば、察しがついてしまいますが、どうなるかはお楽しみに!)






制作開始:2008/4/18~2008/5/4

打ち込み日:2008/5/4
公開日:2008/5/4

修正日:
変更日:2008/10/29
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