避けられない運命、定められた時。
覆す事すら出来ない出来事。
覆す事が出来る出来事。
運命と螺旋が、今動き始める。
この世界の、この国――日本という国の時間は、午後7時辺り。
その町から少し離れた森の中。
町と町の間の森のため、人が居ることは滅多に無い。ましてや、今は午後7時――夜の時間帯。
その森に、切り開かれたらしき場所に、魔方陣が出現した。この世界には存在しない力であり、幻想の類として扱われていたモノ――ミッドチルダ式と言われた魔方陣。その魔方陣は、一瞬だけ強い光を放ち、そして収まる。先ほどまで魔方陣しか無かったはずの上に、時空管理局の者たちが立っていた。
この世界には、存在しないはずの者たちであり、本来なら干渉が許されない。だが、干渉が許される例外がある。
まず1つ目は、現地の調査。
2つ目が、ロストロギアという代物の存在の調査と確認、及び回収。
3つ目は、時空犯罪者の探索と逮捕。
4つ目が、管理外での魔力反応の調査。
他にも、いくつか項目が挙げられるが、大きな項目は全部で4つ。次元世界の平和を守るための処置である――それが、時空管理局の弁解。しかし、傍から見れば、世界干渉とも取れなくも無い。だが、他の次元世界を巻き込んだ事故や事件も存在している以上、誰かがやらなければならない。故に、その正義が、権力の暴走に繋がらない事を懸念されても、可笑しくは無い。無いのだが、その監視機関が、全て時空管理局所属になっているのが可笑しいといえる。だが、それを知る者は、余り少ないのも事実であった。
話は戻り――時空管理局、次元管理局艦船≪アースラ≫のメンバーが、立っていた。
すぐさまリバンとカルナが、周辺の偵察に出た。一般人に見られたかどうかの、念のための目視確認に。一応、アースラから索敵を掛けているが、念には念を入れているだけである。何事にも、例外は存在するし、敵がいるかもしれないのだから。
「よし、先に目的のポイントまで行くぞ!」
クロノは、全員に指示を出す。彼は現在、アースラの艦長をしているので、現場に出る事は滅多に無い。だが、今回はアースラの前艦長であり、自分の親でもあるリンディ・ハラオウンが、指揮を執っている。さらに、副艦長として、人事部のレティ・ロウランもいる。2人は友人であり、付き合いも長いので、お互いが判る人選を選んだ結果である。
途中で、偵察に先行していたリバンとカルナと合流し、目的地が見える場所まで移動した。目的の人物である、桐嶋時覇が住んでいる街へ。
そして、森から抜ける手前辺りの茂みに、身を隠す。一応、魔法で一般人から見えなくする事も出来るが、魔力サーチを使われると、一発で場所が割れてしまうので使用していない。ステルス効果もあるが、そちらは魔力消費が激しすぎるとの事。結局、なるべく魔法を使わないのが、ベストなのである。
「あそこって……水多町?」
転送してきたアースラで構成されたチームの一人、なのはが街を見て呟いた。
「知ってるの、なのは?」
その呟きを聞いたユーノが尋ねてきた。
「うん、って言うか……あっちが、私たちが住んでいる海鳴町だよ」
苦笑しながら、水多町の反対側を指差した。
そこには山がある。その山を越えると、なのはやフェイト、はやてたちの家がある海鳴町がある。ここでは関係無い話だが、はやては中学を卒業したら、今住んでいる家を出て、ミッドチルダに移住する予定らしい。フェイトの方は、まだ秘密だが近々兄のクロノと姉的存在だったエイミィと結婚する事。付き合いのある高町家と離れるつもりも無く、このまま定住するそうである。
「と……隣町だったのか」
手で顔を覆うクロノ。他の魔導師たちも苦笑、呆れ、引き攣るしかなかった。
緊急でない限り、予定が組み立てられていれば、事前調査というものが存在する。それは、どの世界――というより、企業でも行う。今回は、一応緊急かつ極秘任務とはいえ、簡単な事前調査は行われる。例えば、行き先の場所の周辺地図の確認とか。いくらなんでもピンポイントに調べすぎである。
[ま、まあ~、地元だったんだし……それに家を留守にしなくても良くなったんだし、ねぇ?]
なんとかしようと、エイミィがフォローを入れる。
ある意味、彼女にも責任があると言える。一応、今回のオペレーターなのであるのだから。むしろ、フォローという名の責任転換か、逃れだろう。だが、それに誰も気がつく事はなかった。
「ま、まあともかく、クロノ提督、指示をお願いします」
黒髪の男性――ランガが指示を求める。
「ああ、そうだなぁ、ランガ執務管」
ランガに同意するクロノ。一旦深呼吸してから、全体を見てから言う。
「……では、先の指示道理、3人一チームとなる。第1チームがはやて、シグナム、ザフィーラ。第2チームがなのは、ユーノ、ヴィータ。第3チームが、フェイト、アルフ、デュナイダス。そして最後のチームが俺、ルーファン、ライガ。そして待機チームのシャマル、リバン、カルナだ」
チームの選別を述べるクロノ。
第1チームは、守護騎士の長であり、切り込み隊長の的な前衛のシグナム。守護騎士の主であり、司令官役でもある後衛のはやて。その付き添いのリインフォースⅡ。守護騎士にして獣であり、盾の守護の名を持つ防御のザフィーラ。さらに、主従関係なので、どのチームよりも連携が取れやすい。ただし、リインフォースⅡは、ユニゾンデバイスなので頭数には入っていない。
第2チームは、鉄槌の名の如く、突撃隊長的な前衛のヴィータ。エース・オブ・エーズの名を持ち、主砲系魔法がメインの後衛のなのは。地味であるが、サポート系のプロ中のプロである補佐のユーノ。前衛のプロと、中距離から超遠距離のエキスパートとのなのは。それと、なのはとは師弟関係かつパートナーである、サポートのエキスパートのユーノ。
第3チームは、高速移動によるかく乱と、前衛のエキスパートのフェイト。ファイトと連携が取れやすく、前衛とサポートがこなせる使い魔のアルフ。そして、中距離のプロフェッショナルと過言ではない、デュナイダス。
第4チームは、アースラの切り札でもあり、平均的な能力を持つクロノ。防御魔法に関しては一級品のルーファン。サポートに関しては、ユーノにも引けを取らないライガ。
最後の第5チーム、所謂(いわゆる)待機チームの中継管制役兼前線医療スタッフのシャマル。その護衛役で、索敵能力が非常に高いリバン執務官、武神と言われたカルナ教導官の2枚盾。
しかし、リンバは索敵能力が非常に高いのなら、探索に回すべきだと思うだろう。だが、ラギュナスの襲撃を想定し、各チームの場所を把握する為。そして、敵襲を警戒しての人選である。
人海戦術を行う場合は、待機している一般の武装局員を出せばいい。待機している理由は、チームが多すぎて連絡に支障を起こる可能性がある為。さらに、肝心な時に集まらない場合を考慮した結果――だと、同席した4人目の提督が決めた。
その提督の名は、カーキッ・クゥ・サー。時空管理局・上層部の人間――つまり、お偉いさんである。現在はブリッジにおらず、自分の宛がわれた部屋で、何か作業中との事。
そして、エイミィが通信で補足を伝える。
[各チームのリーダーは、はやて特別捜査官。なのは教導官。フェイト執務官。クロノ提督。シャマル特別捜査官補佐です]
選抜は、経験を積むには良い機会として、なのは、フェイト、はやてが各チームリーダーをする事に。ここは、ベテランで行うべきだが、ベテランがいないチームもあるので、この様な形になったのである。
そして、エイミィが言い終わると同時に、リンディに変わる。
[今回の任務は、ロストロギアの回収と桐嶋時覇という方の確保です。ラギュナスよりも早く彼と接触をお願いします]
どこと無く焦りがある言葉。それほど切羽詰った状況というか、緊張が漂う。
[では、クロノ提督]
「はい、リンディ提督……では、作戦開始!」
そして、森から12つの光が飛び立ち、水多町へ4方向に別かれていった。
ただ、その光は、魔力を持たない人間に見えることは無かった。
その理由は、簡単に言えば、魔力の認知度を下げた結果である。認知度とは、視界で知覚する度合いである。つまり、魔力の光の度合いをおとした訳である。さらに、魔法による誤認する様にしてあるので、もし知覚できたとしても、薄い魔力の光だけとなっている。
第二話
動き出す歯車
「はあ~、店が潰れたんじゃなくて改装工事かよ……紛らわしいんだよ、店長」
店長の嘘に踊らせられていた時覇。
あの後、木本に尋問を受けている時に発覚し、店長だけ叱られている最中だ。ちなみに、時覇が今までバイトしてきたところ、全て潰れて止めているのだ。しかも、最短記録が、ファミレスの一週間だった。潰れた理由は、初の休みの日に店が火事にあった為である。
お陰で、バイト探しは慎重になりすぎて、視察に行くほどのレベル。
「それにしても、改装工事なら仕方ないか……別の短期バイトでも、探すかな」
などとボヤキながら、大通りに出る。この道の名は、≪水多大通り≫といい、水多町の端から端まで真っ直ぐある大通り。言わば、この町の特徴の一つである。その大通りを沿って歩き、ふと駅前のデパートが目に入った。そして、『新規改装のため、在庫処分セール開催中!』という垂れ幕が掛かっていた。
時覇は、それを見てからその場で立ち止まるも、邪魔になるので道の端――ビル側による。そして、懐から財布を出して、中身を確認する。
札入れを見ると、1000円札が4枚。小銭入れを開くと、500円玉と100円玉が1枚ずつ。50円玉が1枚。10円玉が4枚。5円玉が2枚。1円玉が8枚。合計残金――4,708円。
今月のバイト代も大雑把に計算して、余裕があると判断する。
「……久しぶりに、本でも買おうかな」
財布を懐に戻して、デパートの中に入る。すると、垂れ幕に引かれて、色々な人が物色したり、眺めたりと行きかっていた。
「古き風、新しき風、変わりては、時代の流れ、世の定めとな」
などと、川柳を口にした。
しかし、その言葉は、デパートの中を行きかう人たちの騒音に、誰の耳に届く事無く消えていった。例え、聞こえたとしても一時の言葉ゆえ、漠然と流される……何気に口ずさんだ川柳のように。
打って変わり、水多町・東側上空。なのはのチームは、ロストロギアを重点において、捜索魔法をかけていた。
探索に長けている訳ではないが、魔力の多さによる広範囲探索が出来る。その利点を生かした探索を行っている最中である。なお、現在の所、目的の反応は無い。
(こちらはなのは、シャマルさん聞こえますか?)
なのはは、辺りをも回しながら、シャマルとの念話を続けた。通信を使うべきかも知れないが、通信モニターの光が、下から見えるとは限らない。
理由は、地面から空を見上げて、不自然な光が漂っている様に見えるからである。別の理由として、結界を張るという事は、ここに時空管理局がいますよと、看板を掲げるようなもの。目的の存在は、ラギュナスと同じ。よって、エンカウントしない限り、結界を展開する事は無い。
(ええ、聞こえますよ、なのはちゃん。定期念話ですね……どうぞ)
シャマルに念話を繋ぐ、なのは。シャマルは、中継の管制役も担っているので、会話はその場で記録され、アースラに送られる仕組みになっている。
(ターゲットらしき人物およびロストロギアの反応はありません。ユーノくん、ヴィータちゃん、そっちの様子は?)
シャマルに繋いだまま、ユーノとヴィータに念話を繋ぐ。この念話を繋いだ相手の記録をし、送られている。まぁ、無駄話すれば、アースラの上官2人に筒抜けと言う訳である。が、シャマルに繋がない限り、記録されない抜け穴がある。
(こちらユーノ。まだ見つからなかったよ、なのは)
(こちらヴィータ。こっちも同じだよ)
順に報告する2人。ユーノは割と穏やかだったが、ヴィータは少し焦り気味の口調だった。ラギュナスもいる可能性があるので、接触は控える為にかつ細かい地形把握を兼ねた探索である。アースラでも可能だが、建物の外装までしか把握できない。内部となると、やはり直接調べないと無理である。
ただ、魔法の無い世界と言っても、中が透けて見える魔法を妨害するように出来ていない。だが、現在のミッドチルダ――延いては、奇跡の様な魔法など、科学によって確立された魔法などには、存在しない魔法なので意味は無いが。その代わり、X線などに似たモノで、建物をスキャンする事は可能である。あと、熱源調査も。
世は、透視は不可であるが、スキャンは可能なだけの話である。
(わかったわ、引き続き捜索とお願いします)
(はい、わかりました……、ユーノくん、ヴィータちゃん、私は東の方を見てくるから)
と、東の町外れの方に、顔を向けるなのは。念話なので、本人以外は判らないが。
(うん、僕は町に下りて探してみる)
と、言いつつ降下していた、ユーノ。
(アタシは、なるべく二人の中間地点上空で索敵魔法を行ってるから)
ユーノとなのはの距離を測り始めるヴィータ。それを素早くキャッチし、シャマルにデータを送る。一応、シャマル側でも特定していると思うが、確認の意を込めて送ったのである。
理由はある――今から4年前のミッドチルダ暦67年。なのはが、謎の機動兵器に落とされた事があった。現在も、その機動兵器の所在は不明。その同系、または発展期と思しき機動兵器は、その事件以来、存在を確認できていない。
なお、機動兵器の形状は、現在のミッドチルダの技術を上回ったモノで、2足歩行する事が出来る獣人、というべきか。人の形状ながら、多数のアイカメラが搭載され、手は獣のように鋭く尖った指。背中に搭載された6枚のプレートらしきモノを使って、飛行する事が可能な機体。ただ、魔力を動力源に使用しておらず、完全に電力関係で動いていた。そのエネルギー源の電力も不明。
結果、姿形に、謎のエネルギー。そして、魔力を使用していない事と、現在の技術を遥かに上回っている事のみである。謎のエネルギーの該当世界も、管理内外共に無かった。現在も、エネルギーのみ捜索中で、過去に滅んだ次元世界を確認中。滅んだ世界ならば、調べない限り判らない。しかし、滅んだ世界を調査するなど、過去にタイムスリップでもしない限り、不可能である。何せ、滅んだという事は、既に存在しないのだから。
だが、当時の記録さえあれば、話は別である。記録上であれ、何か手がかりが掴めるかも知れないのだから。それを可能にするのが、無限書庫。文字通り、次元世界の全ての記録が集まる場所。
ただ、文字通り無限に近い量の情報なので、殆ど整理されていない。よって、探すだけでも時間が非常に掛かるのである。現在は、ユーノ・スクライアを中心に、管理局局員がチームを組んで、整理を始めている。だが、事件は常に発生し、資料を求める際、チームに依頼する。よって、資料整理は難航し、事件の資料捜索にチームの半分を持ってかれる始末。ユーノ本人も、クロノからの依頼で、事件資料を捜索する事もある。
どんなに忙しく、本来の資料整理を行いたくても、結局、何処も人材不足の一言で片付けられてしまう。未だに、ストライキが行いのは、ユーノの人望があってこそと言える。
(うん、わかった。二人とも、気をつけてね)
なのはのフィンフライヤーは一段と輝きを増し、先ほどよりも速いスピードで東側の街外れに飛んで行く。
(気をつけて、なのは)
(高町もな)
ユーノとヴィータが、それぞれの言葉で返す。そして、念話を終え、それぞれの行動に移った。
世界は、時間は、いつも通り川の如く流れ、メビウスの輪の様に回り続ける。
一方、はやてのチームは、水多町・中央駅前で桐嶋時覇を探すことに重点を置いていた。もっとも人が集まりやすく、人の行き来が激しい場所である。裏を返せば、ここを通る可能性があるという事。さらに、情報を集めるにも持って来いの場所である。
が、聞き込みのみが難航していた。理由は、知らないならともかく、変な目で見ているところである。一応、管理内世界であれば、管理局権限を見せれば問題は無い。だが、ここは管理外世界。時空管理局という、訳も分からない組織というか、作り話程度しかならない。下手すれば、この世界の警察に突き出される可能性がる。よって、早々聞き込みを取り止め、探索魔法による自力の発見を選んだのである。なお、この事は、既にアースラに話が通っているので問題はない。むしろ、少し同情された。
現在、はやては探索を終え、一足先にベンチでダレていた。やる事をやっているので、文句は言われない。むしろ、回復には、ちょうど良いかもしれない。主に精神面の。
「あぁ~……ん? シグナム、見つかった?」
先ほどまで唸っていたが、探索魔法で辺りを捜索しながら周って、戻ってきたシグナムに気がつき、迎えたはやて。シグナムも、はやてに気がつき、ベンチへ向かう。
「いえ、残念ながら」
ベンチの前に立ち止まり、首を横に振りながら答えるシグナム。
「そっか……リイン、そっちはどうなったんや?」
いつの間にか、シグナムの横にいた、リインフォースⅡ。普段の妖精の様に小さな姿ではなく、その辺の10児くらいの子どもと変わらない大きさでいる。まぁ、普段の姿でいたら、大騒ぎであるのは、目に見えている。
妖精は、ファンタジー。つまり、幻想の存在となっている。実際、ファンタジー用語のある程度は、化学現象から来ているらしい。ただ、昔妹の為に、姉が絵に描いた妖精と戯れる写真を撮って、世間を騒がせた出来事がある。理由は、妹の為。妹はやんちゃな性格で、よく森に入っては服を汚して、母に怒られていたそうである。その際、妹をかばう為に、妖精と遊んでいたからと嘘をついたのである。そして、証拠写真を持って行き、母を納得させた――と言う、実話がある。ただ、その姉が老いた頃に、嘘だと真実を告白。だが、ある1枚の写真だけ本物だと、その姉が主張した。
結果的に、その1枚以外は嘘だと判明したものの、その最後の1枚の結論が、どうなったのか定かではない。だが、本当に実在しているのならば、大発見とも言える。が、一般常識的には、動く実物を見ない限り、誰にも認められない。
そう考えると、いつものリインフォースⅡの姿は、格好の見世物となる。さらに、解析されれば生き物でない事もばれる。何せ、リインフォースⅡは、ユニゾンデバイスなのだから。よって、世間にさらに疑問を生み出すのは必然。
なので、知識はともかく、精神年齢的に問題の無い姿――10児くらいの子どもの姿が、適切といえる。
そんな管理内外世界の事情は、一旦置いておき――駅前周辺を限定に、密度の高い探索魔法を発動しているリインフォースⅡ。とは言っても、写真データしかないので、上手くサーチ出来るかに疑問が残る。
「いえ……こう人が多いと……」
少し落ち込むリインフォースⅡ。仕方ないといえば、仕方が無い結果である。
サーチ方法は、魔力を持つ者、となっている。だが、魔力が無いものから、微量に持っている者。さらには、なのはやはやての様に、強力な魔力を持っている場合がある。が、強力な魔力を持つ者は、特に管理外世界では珍しいのでる。
なお、この第97管理外世界では、基本的に魔力反応は、皆無に等しい。だが、無い――つまり、魔力値0と言う訳ではない。簡単に言えば、ミッドチルダにいる虫と変わらない。ただし、例外が存在するが、それは置いておく。
結果、時覇の魔力値が一般人と変わらない場合、顔と身なりで探さなければならない。
(お前のせいではない)
リインフォースⅡの手に握られているリードに繋がれているザフィーラが、念話で励ましの言葉を掛ける。
ちなみに、ザフィーラは子犬モードなので、念話のみの会話しかできない。子どもが、子犬とお話しする場面は、可愛らしい場面である。だが、子犬が実際に、人間に通じる喋っている場合は、異様な場面である。ってか、政府権限で、どこかに連れて行かれるのが目に見える。
「はい――!? マイスターはやて、微弱ながら反応がありました!」
はやての上着を引っ張りながら、慌てる様に伝えるリインフォースⅡ。
「ほんまか!?」
その言葉に、シグナムとはやての足元にいたザフィーラが、リインフォースⅡに視線を向ける。
「って、リイン、服が伸びてまうやないか」
「あ、ごめんなさいです、マイスターはやて」
引っ張り過ぎている事を指摘され、すぐ手を離すリインフォースⅡ。
確かに、服は人間の様に回復する能力を持ち合わせていない。人間でも、回復しきらない部分は存在する。だが、服の場合は、モロに出てくる。部分的には、袖や首元辺りが、1番判りやすいだろう。
「リイン、場所は?」
はやての変わりに、シグナムが尋ねる。
「はい、ロストロギアの反応があります。場所は……あのデパートの3階辺りからです」
その反応があったデパートを指差した。
そのデパートは、『新規改装のため、在庫処分セール開催中!』という垂れ幕が、風になびかれつつ、壁に掛かっていた。
「あそこか……主、どうしますか?」
シグナムの問いに、考えるはやて。
そして考えがまとまったのか、顔を上げ、シグナムを見る。
「シグナムは、私と反応を追う。で、ザフィーラがシャルマに連絡でいい?」
「わかりました」
(仰せのままに)
はやての言葉を、それぞれの返事で返すシグナムとザフィーラ。
「ではマイスターはやて、案内します」
それを聞いてから、リインフォースⅡは、はやてとジグナムを案内し、デパートの中に消えていった。
それを見送ったザフィーラは、すぐさま裏路に入る。少し奥へ進み、周囲を確認してから物影に隠れて、可愛らしい小型犬から、大型犬に姿を変える。体を軽く震わせ、もう一度周囲を確認、警戒しながら上空へ飛んだ。
(シャルマ、聞こえるか?)
ザフィーラは、早速シャルマに念話を飛ばす。
(シャルマ、聞こえるか?)
ザフィーラからの念話受けるシャマル。
「どうしたの、ザフィーラ? 定期連絡には、少し早いみたいね」
片手には、水分補給として先ほど配給された、ペットポトルのスポーツドリンク『アクエリアス』を右手に持っている。
軽く、口にアクエリアスを含もうとした時に、ザフィーラが念話する。
(ロストロギアの反応を確認した。今、主とシグナムが後を追っている)
(はやてちゃんとシグナム二人だけで?)
と、ザフィーラと念話中にアクエリアスを一口含み、ペットポトルに蓋とする。
(リインフォースもいるのだが)
八神家の末っ子の名前が抜けていたので、付け足す様に言うザフィーラ。本人が聞いたら、怒り出しそうな内容である。が、管理局内で『うっかりシャルマ』というあだ名がある。いや、あだ名というより2つ名か、呼び名の方が正しいのかもしれない。
「どうしたんだ?」
一旦、情報整理の為に戻っていたクロノが、シャルマに直接声を掛けてきた。そして、シャルマは、問いに答える前に念話を繋ぐ。ちなみに、同チームのルーファンとライガは、調査を継続している。
(ロストロギアの反応を確認した際、主とシグナムが後を追っているところだ)
「なんだって!? 場所は!」
念話なのだが、思わず声を出してしまったクロノ。いきなりの大声に、シャルマ、リバン、カルナの3人は、少しビクついた。それと、カルナは、持っていた『ファンタ・オレンジ味』という炭酸ジュースを、地面に落としてしまう。しかも、まだ一口しか飲んでおらず地面に落ちた際、石にぶつかってリバウンドしてしまったのである。炭酸故に、開けづらくなったのは、言うまでも無い。
(閉店の垂れ幕が掛かった、中央駅前のデパートの3階だ)
「……よし、リバン執務官、カルナ教導官の2名を向わせる」
右のこめかみ部分に、右手を当てて、言葉を放つクロノ。本来ならば、クロノのどうチームのルーファンとランガを向かわせるべきだが、探索能力ならば今言った2人の方が上であるから。一応、ルーファンとランガとは、後で合流予定である。
(頼む)
そこで、ザフィーラとの念話は途絶え、リバンとカルナの方を向くクロノ。
「聞いての通りだ。出られるか、二人とも?」
その言葉に、無言で頷く2人。
「シャマル特別捜査官も、あとから向かわせる」
「了解」
杖タイプのデバイス≪ストレージ・ロッド005≫を、バトンの様にクルクル回しながら答えるカルナ。文字通り、ストレージデバイスである。
時空管理局が、訓練生や一般の武装局員が支給するデバイスの試作性能強化版。
一時期であるが、訓練生や一般の武装局員の中には、優れた能力の持ち主がいる時ある。それによって、デバイスが使い手についてこられない状態を解消する為に、発案された試作計画。だが、訓練や一般の武装局員が使う事を前提に作られたデバイス。強化するにも、一から使い手のスタイルにあったデバイスを作った方が良い事から、白紙となった。
その産物の1つのデバイスで、全部で6本存在した。現在は、資料用に001・002の2本と、カルナが使っている奴の、全部で3本しかない。あとは、解体や使い手と共に亡くなっている。
「はぁ……カルナのあ――オホン。カルナ教導官、遊ぶなら先行ってますよ?」
と、浮遊魔法を展開して、空中で浮遊するリンバ。その右手には、父親の形見である鈍い黄金色の杖≪キングダム・ロット≫が、握られている。こちらも、ストレージデバイスであるが、本来はインテリジェントデバイスだった。デバイス名通り、王の杖の如く、鈍い黄金色の杖。コアは、宝石の様に、杖の先端の装飾品みたいに付いている。
そして、何故インテリジェントからストレージに変更したのか、理由はある。だが、愛称が悪かったという理由からではない。
父親の形見で、子どもの時だったリバンの子守の為に置いていたので、父親と共にこの世を去らずに済む。だが、父親の死を聞いたインテリジョンの人格プログラムが崩壊、蛻(もぬけ)の殻になってしまう。その際、リバンの要望で、インテリジェントの部分を再構築、ストレージにし直した。そして、現状に至る。
「ああ、ごめんごめん。それでは」
2人は、空高く上がり、薄い魔力の軌跡を残しながら、中央駅前に飛んでいった。
それを見送るクロノとシャマル。
「シャマル、今までの状況をアースラに報告を」
「はい、わかりました」
その指示に、空間モニターのキーパネルを展開・操作して、アースラに通信を繋ぐシャマル。
そして、クロノはユーノに新たに念話を繋げる。
「ユーノ聞こえるか、確保対象である桐嶋時覇を見つけたらしい。至急、はやてたちと合流してくれと、なのはに伝えといてくれ」
(わかったけど……今、肝心のなのはとの連絡ができないんだよ)
そうユーノから、少し焦った感じで返ってきた。
「なのはとか? ならヴィータとは?」
(それも駄目なんだ。けど、一緒にいるから……とにかく、なのはとヴィータを探したいいんだけど)
ユーノの言葉に、左手を顎に当て、少し考えるクロノ。本来ならば、すぐに捜索命令を出したい所だが、捕獲対象である桐嶋時覇を逃がす訳には行かない。
「……わかった、判断はそっちに任せる」
結局、曖昧な答えしか出せなかった。だが、もしラギュナスの妨害が発生したとしても、なのはとヴィータの2人が、早々落とされる可能性は低いと判断したからである。そこで、下手に増援を送り、返り討ちにはっては、それこそ人材の無駄となる。曖昧とはいえ、慎重に判断しなければならない。1つの判断が、後々問題となるのだから。だが、最適な判断を弾き出せる存在は、運や感の良い人間、未来が判る人間か、もしくは神くらいの様なモノ。ただ、神ですら、判断を間違える場合があるので、本当は存在しないのかもしれない。
(了解。何かわかったら、連絡する)
そこで、ユーノとの念話が終わる。
「クロノ提督、報告終わりました」
シャマルが、タイミングを計って、クロノの後ろから声を掛けてきた。
「ああ、ご苦労……すまないが、一人で向かってくれないか?」
「え、わかりましたけど、何か問題でも?」
クロノの言葉に、少し困惑するシャマル。
「どうやら、なのはと連絡がつかないらしくてな。これからユーノたちと合流する」
「なら、私も一緒に――」
手を出しで、言葉を止めさせる。
「駄目だ、今は任務を最優先にするべきだ」
少し落ち込むシャマル。なのはの心配もあるが、家族であるヴィータの心配するのは当たり前である。それを見越して、そのまま言葉を続ける。
「ユーノがいるんだ、すぐに見つかるさ。あいつの探索魔法には、いつも当てにしているからな」
軽く笑って見せるクロノ。
「第一、不本意だが、ユーノの補佐する形で行くだけだから、1人で足りる用事さ。ただ、危険になったら来てもらうが」
その言葉に、いつも口論している2人だが、それなりに信頼はしているのだなと、感じるシャマル。クロノの言葉通り、危険と判断すれば、すぐに連絡が飛んでくる。まぁ、妨害されなければという前提条件が発生するが。
[大丈夫だよ、シャルマ]
そこで、不意に空間モニターが、2人の前に展開される。
『エイミィ!?』
いきなりの登場に、驚く2人だったが、それを気にすることなく、エイミィは説明を始めた。
[クロノくんには、通信回線を繋いでもらった状態で、行く事が決まったから]
「通信を繋いだ状態……リンディ提督とレティ提督の案か?」
[そうだよ]
クロノの問いに、あっさり答えるエイミィ。クロノも、提督権限を持っているが、同じ権限でも質は低いし、第一2対1である。クロノの反論意見は、どう足掻こうが押し切られる。そう思い当たった瞬間、ため息を漏らす。いい加減、慣れたいという意味も含まれているのかもしれない。
「了解した。これより、第2チームと合流する」
「同じく、捕獲対象である桐嶋時覇の探索の為、第1チームと合流します」
クロノの言葉に、シャマルも続く。
[了解。2人とも気をつけて――クロノくんは、特に、ね]
そのエイミィの言葉に、顔を渋くするクロノと、クスリと笑うシャマルだった。
[本日は、当デパートをご利用いただき、まことにありがとうございます。今日の閉店時間は、8時となって――]
頭上からアナウンスが流れるが、時覇は特に気にする事無く、棚に置いてある本を眺めていた。今いる本のコーナーは、漫画が置いてある場所。アダルト本は、ここの本屋は取り扱っていない。ただ、近いモノは置いてあるが。
「う~ん……ほとんどいい本が、残ってないな~」
頭をかきながらぼやく。
本屋の棚という棚、コーナー関係無く一通り見たが、ほとんどいいのは残っていなかった。やはり、本屋では珍しい割引特価が効いているのだろう。既に、本屋の半分は無くなっているのが、良い証拠である。
「やはり最終日2日前は、お目当てはほとんど無い、か……しゃあない、諦めるか」
渋々本屋を出てきた瞬間、時覇は違和感を覚えた。
「…………」
そして、辺りを見回すと、ある一点に集中した。こちらをチラチラと柱の影から、見ている人がいたが、
「……自信過剰か」
そう言って苦笑しながら、エスカレーターを降りていった。だが、近くのベンチに座っていた3人は、違っていた。
エスカレーターから、完全に時覇の姿が見えなくなってから、緊張を解いた。
「はぁ……なぁ、シグナム、バレたかなぁ?」
未だにハラハラしているはやて。
「いえ、他の方を向いていたようです」
さすがのシグナムも、少しばかり焦ったのか、頬の辺りに一滴の汗が垂れていた。
「大丈夫です、マイスターはやて。時覇が見ていた場所は、私たちの後ろにある柱辺りですから」
はやてを宥めながら、時覇の視点場所が違うと報告するリインフォースⅡ。
なお、ベンチに座っている順番は、座っている側から見て右から、シグナム、リインフォースⅡ、はやての順である。
「後ろの柱?」
シグナムは、リインフォースⅡの言葉に従い、振り返ろうとするが途中で止め、はやてに顔を向けた状態に留める。そして、急かす様に話題を振る。
「ともかく、桐嶋時覇を追わないと」
「そうやな、シグナム。リイン」
シグナムの言葉に、事を起こす事を決め、リインフォースⅡに声を掛ける。
デパートには、子供には誘惑が多いので、実態を解いてデバイスの中に戻う事を考えた。が、下手に実体化を解くわけにはいかないので、姉妹の家族として行動する事に。
たがはやては、おふざけで自分は母親。シグナムは父親。リインフォースⅡは娘役。という設定を持ち出したが、仕事なの軽く流す事に。コレが仕事でなければ、はやては主権限でも使って行っていたかもしれない。などと、内心冷や汗を掻いたシグナムだったりするが、はやてが「今度の休みにでもやろうかな」という一言に、戦慄が走ったのは秘密である。
「はい、時覇さんの位置はトレース出来ていますが、ただ……」
「ただ、なんや?」
言葉を濁すリインフォースⅡだったが、無理に聞こうとせず、優しく聞くはやて。それが聞いたのか、次の言葉を口にした。
「はい、時覇さんから少し離れた距離で、あとを追う人がいるんです」
その言葉に、はやては焦った。
「まさか――ラギュナス!?」
その焦りが、つい大声を上げてしまった為、視線が集中する。それに対して、シグナムは、はやてに気づかれない様に、小さくため息は吐く。
「あ……あ~、行こうか、シグナム。なぁ、リイン」
「はい、主はやて」
「は、はいです!」
3人――はやてとリインフォースⅡは、顔を赤くしながら、その場を離れた。そのままエスカレーターからではなく、横の階段から時覇の後を追った。というより、この場を早く離れたい一身だったと思う。何故、エスカレーターを使わなかったのは、人が絶え間なく使っていて、駆け下りる余裕するらないからである。
同時に、柱の影に隠れていた者も後を追うように、階段を駆け下りて行った。
最後に、水多町・東側外れの上空。なのはは、ラギュナスのメンバーと名乗る男と、空中で向き合っていた。
その男の名は、ロングイ・バウンティト。男が、自ら名乗ったのである。そして、互いに向き合って、彼此二分は経過していた。
そんな沈黙を破ったのが、不意に口を開いたロングイだった。
「管理局に伝える。今すぐ桐嶋時覇から手を引け……お前たちには無価値な男である」
淡々となのはに言い放ちおえると、いつでも攻撃態勢に入れるようにしてあるロングイ。しかし、それで引き下がるなのはではなかった。
「悪いけど……それは無理かな」
そう言いつつ、レイジングハートを構えるなのは。いる場所は、上空故、バリアジャケットと髪の毛が、風に靡く。それは、ロングイも同じである。
「無理、か……ならば悪いが、当分病院で休暇とシャレ込んでくれ」
そう言いながら、ロングイの魔力が一瞬で高まった瞬間に、なのはは全身に怖気が走った。
ロングイの言葉と、魔力増大を感じ取ったレイジングハートが、なのはの代わりに障壁を体全体に展開する。あの4年前の再現をさせない為に。
が、次の瞬間――14発のディバインシューターみたいな攻撃が、四方八方から飛んできた。
「くうぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!」
絶え間なく魔力弾が、なのはの障壁を叩きまくる。直接ダメージが無くても、耐えるとは維持する。つまり、叩かれて脆くなった部分を元に戻しつつ、脆くなっていない部分を維持し続ける。その作業で、魔力を消費する。
基本に戻るが、魔力を使いには、精神を集中しなければならない。つまり、魔力と精神は、密接な関係なのかもしれない。つまり、精神にも負担が掛かってくる事を意味する。
結果、魔力の消費が激しく、精神疲労も大分溜まってしまった。だが、なんとか不意打ちの攻撃を防いだ。防いだのが、1発1発の攻撃力が並ではなかった。おかげで、攻撃が終わったと同時に、障壁は破壊された。
<マスター、無事ですか!?>
「な、なんとか……あ、ありがとう、レイジングハート」
デバイスらしからぬ慌て振りのレイジングハートに、少々息を切らしながら顔を向けて、礼を言うなのは。
<――マスター!>
だが、すぐにレイジングハートは叫んだ。それに反応し、前を向くと――目の前にロングイがいた。それを認知する事に、戸惑ってしまったのが、仇となった。
「――なぁ!?」
状況把握が今一の所であったが、反射的に後ろに下がる。
「邪魔して悪いが、ここでチェックメイトにさせてもらう――」
言いながら少し離れてから腰を落とし、体を横に捻り、左手をなのはの前に突き出す。それと同時に、デバイスが杖から槍に変形した。
<拘束一撃>
「――バインド・ストライク・ランサー!」
なのはの手を左右斜めの上に上げられ、両足も手と対照になる様に左右斜め下にバインドが掛かる。しかも、一瞬で。
「え――がぁ!?」
腹部目掛け、離れた距離を一瞬でゼロとなるほどの勢いで、矛先が突き刺さった。その衝撃で、なのはの意識は、闇に飲み込まれていった。
それは、一瞬の出来事だった。
いつの間にか、至近距離にいたロングイが、離れたなのはにバインド付きゼロ距離攻撃の直撃を与える。状況は、いつの間にか目の前にいたロングイが、拘束魔法でなのはを縛り、持っていた杖が槍に変形。その槍の先端に、魔力が集約させて矛を生成し、ゼロ距離の直接攻撃を鳩尾に受け、なのはは訳も分からずに気絶してしまったのだ。
しかも、鳩尾に突き刺した瞬間、魔力集約させて生成した矛を、爆発させたのである。いくらバリアジャケットが頑丈でも、内部からは意味をなさない。いや、無力といって言い。例え防ぐ事が出来なくても、耐えるには身体強化魔法しか方法が無い。
そのまま崩れ落ちるなのはを受け止めるロングイ。それと、なのはの手にも垂れていたレイジングハートは、機能停止ししたまま落下していった。
理由は、なのはを使ってきた衝撃が伝達し、システムエラーを引き起こして、機能停止を引き起こしてしまったのである。だが、ロングイは回収する事無く、むしろ気にする素振りも見せなかった。
「管理局のオーバーSクラスの魔道士……アレに使え――」
「うおぉぉぉぉぉぉおりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
上空から叫びと、強力な魔力の波動があった。だが、ロングイは顔を向ける事無く、デバイスに指示を出す。
「チェンジング・インフィニティ」
<了解――ディフェンダー・リフレクト>
そのまま叫びと、強力な魔力の主であるヴィータが、グラーフアイゼン振りかざす。
「吼えろ、グラーフアイゼン!!」
<了解、ラケーテンフォルム!>
ハンマーヘッドの片方が噴射口に変形すし、その反対側がスパイクに変形。噴射口から火が入り、ロングイ目掛けて回転しながら突っ込んでいったが――スパイクが障壁に当たった途端、一瞬だけ障壁が一段と輝きを増した。
それにより、ヴィータは目が眩み、同時に吹き飛ばされるように弾かれた。
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――……!?」
弾かれた衝撃が強かったのか、もの凄い勢いで町外れの森に落ちていくヴィータ。ついでに、叫び声を残していきながら。
「……ただ闇雲に突っ込めばいいという訳でもないのに」
ヴィータの落ちて行った場所から上がった煙を、見つめながらなのはを抱え、中央駅方面に飛んでいった。
「雑魚は……無視していいな」
そう呟きながら、なのはを抱えて飛び去った。一呼吸遅れて、ヴィータが落ちた森の方では、慌てて駆けつけたユーノが、落下したヴィータを発見する。
「ヴィータ! しっかりしてヴィータ!!」
回復魔法を展開しながら、必死に呼びかけるユーノ。たが、ヴィータは気絶していた。
「こちらユーノ! 緊急事態発生!」
緊急で、アースラに緊急通信を飛ばすユーノ。念話だと、盗聴される恐れより、伝達のロスがある。よって、緊急性が高い通信を入れれば、自動的にアースラに繋がる。
[こちらアースラ、どうしたのユーノくん? そんにあわ――]
「エイミィさん、大変なんだ! なのはとヴィータが、ラギュナスのメンバーと名乗る男、ロングイって奴にやられたんだ!」
[なんですって!? 状況は!]
エイミィは、通信越しでも判るほどの素早さで、キーパネルを叩いていく。
「ヴィータの方は、気絶しているけど……なのはが連れていかれたんだ」
[なのはさんが!?]
別の通信回線が開き、リンディが割り込んできた。表情は、少し切羽詰った状態である。
「はい。ロングイと名乗った男は、水多町へ飛んでいきました。目的は不明」
[わかったわ、すぐ各チームに連絡を入れるわ。ユーノくんは、一旦ヴィータ捜査官を連れてアースラに戻ってきて]
「わかりました」
そこで、通信回線は閉じられる。今頃、アースラのブリッジ内は、蜂の巣を突っ突いた様な状態だろう。
「……なのは、無事でいてくれ」
そう呟きながら、ヴィータと共に転送魔法で、アースラまで跳んだユーノ。
ただそこには、何かが墜落した様な衝撃後と、少し離れた場所に落ちたレイジングハートだけが残された。
ロングイは、なのはを抱えたまま、水多町上空を駆け抜ける。
その際、下に広がる街を見ながら、一言。
一言だけ呟いた。
『待っていろ、時覇』
「 ん? 」
ふと、歩みを止めて、東の空を見上げた時覇。そこに、米粒ほどだが白と灰色の光が見えたような気がした。
「……気の、せいか?」
何か釈然としなかったのか、首を傾げながら再び歩き出す。そして、そのまま公園の方に足がいく時覇。
気まぐれなのか、必然なのか……何かに導かれるように。
ただ、手の甲の緑色の水晶は輝く。
日常と非日常とは、太陽と月の様に、表裏一体の関係みたいだと考える。考える、いや、考えられるからこそ、可能性が生まれる。
可能性は、ありえる出来事、ありえない出来事の狭間に出来た言葉。
なら、その狭間には、何があるのか。それは、過程という言葉なら。過程は、そこまでの成り立ちを示す言葉。
つまり、可能性を示す事が出来るのは、過程が無ければ存在しない。
その過程が、どの様な結果を生み出すのかは……誰にも判らない。それが判るのは、未来予知がある人間か、もしくは神かもしれない。
だが、神ですら、間違う事もある。だから、一つ言える事がある。それは、『未知』。即ち、誰にも判らない。と言う事である。
交差する運命。
交差しなかった出逢い。
交差できなかった出来事。
交差しえなかった想い。
どこで、何が交差するのか。
どこで、何が交差しないのか。
過程という名の行動を起こす事で、何かが交差する。
それが、『結果』という言葉で、答えが示されるその時まで。
人々は、歯車の様に動き続ける。何かと、噛み合い続ける為に。
第二話
動き出す歯車
END
≪次回予告≫
ロングイと名乗る男に敗退し、捕まるなのは。
その頃、時覇を発見し、尾行するはやてたち。
だが、時覇の尾行を中断し、なのはの救出に向かう。
そして戦闘が始まり、フェイトの様子が……
次回
何かに出逢う者たちの物語・外伝
魔法少女リリカルなのは
~二つの運命と螺旋に出逢う者~
第三話
変局する状況
に、ドライブ・イグニッション!
あとがき
書き直し――と、言うより、追加修正版です。
お陰で、名前だけ、特に決まった設定が無かった、オリジナル管理局員。こいつらの設定を起こすのに時間が掛かった、掛かった。何せ、一度自分で読み直さないと、設定が判らないから。(汗
何せ、その場で追加して言った結果ですので。(汗
挙句の果てに、そのせいでチームの説明を書くのに、時間が掛かりすぎた。むしろ、そこが鬼門だった。でも、キチンとした資料を作成できたので、5分5分と言ったところ。
ただ……こいつが公開された現時点では、三話以降の話に食い違いが発生します。ので、その辺がご了承ください。
まぁ、追加修正で、これだけ増やせたのは、凄いものだなよ。満足してないよ。一話、1枚400文字の40枚(予告&後書き抜きで)を目指しているからね。ぶっちゃけ、雑誌の一話分の量です。(たしか)
少し、ページ数が足りなかったが、現時点(2009/6/19)ではこの位が限界らしい。
また改正すると思うから、今回はこの辺で。
最後に、妥協じゃないとだけ、言わせてください。
制作開始:2006/2/12~2006/2/20
改正日:2009/4/9~2009/6/20
打ち込み日:2009/6/21
公開日:2009/6/21
修正日:2007/9/15
変更日:2008/10/24