何かに出逢う者たちの物語・外伝Ⅰ   作:ダークバスター

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集うは仲間。
集うは想い。
集うは願い。
集うは善。
集うは悪。


第七話:集結

 

 

「ふぁ~ん……眠ぅ」

 

 ラフな感じに管理局地上本部の制服を着る、レーレ・ナ・エルティア。

 ラギュナスの決定で、今日の10時より運行が開始されるラギュナス制圧専用部隊――対ラギュナス迎撃専用特別特殊部隊・機動六課に潜入する事に。

 元々局員なので、偽造する書類はそれほど無く、特に問題視されることも無かった。

 そして、今いる場所は、ミッドチルダ南部臨海第11空港。

 数日前に到着予定だった2人――エリオ・モンディアルと、キャロ・ル・ルシエの出迎えである。

 何故、今日出迎えになった理由は、偶然にも2人が出発するはずだった空港で犯罪が発生。それにより、空港は一時閉鎖となり、出発が遅れてしまったのである。

 そんな訳で、サボりが目立っているとはやて部隊長からの指示により、迎えに来なくてはならなくなってしまった。

 仲が良くても、仕事とプライベートの区別はある。しかも、現在は上司と部下の関係。

 今までのツケが、回ってきただけの話なのだが。

 

「しっかし、5時に起こさなくても良いじゃない……まったく、もぅ」

 

 待ち合わせのベンチに腰を掛けながら、時々欠伸をしながら、待ち人を待つ。

 現在7時半、人もそれなりに増え始める時間。

 時折、レーレをちら見しているが、本人は気にしていない。触ってきたり、攻撃してきたり、ナンパしてきたりなどの、不快関係の事がなければ問題無い。

 すれば、人気のいない所まで連れてって、半殺し。

 少し遊ばない的な発言で、相手を惑わして。

 それはともかく遅い、来るのが遅すぎる。

 

「迷子にでもなったのか? それだけは勘弁だよ、ガキはガキでも局員なんだから」

 

 何気に黒くなりつつも、はぁ~。と最後にため息を吐いて、締めくくる。

 そこで、何かが近づいてくる気配があった。

 男だと判り、ナンパの類か思いきや、子どもの気配――やっと来たか? と、思いながら顔を上げた。

 そこには案の定、年頃の服を着た赤い髪の毛の男の子が、こちらに向かっていた。

 

「おそかったね……エリオ・モンディアル、だっけ?」

 

 確認の意を込めて、名前を言う。

 

「はい! エリオ・モンディアル、ただいま着任しました!」

 

 敬礼をしながら、元気良く返事を返すエリオ。

 それを見て、苦笑するレーレ。やはり、子どもは子どもだなと思った。

 ともかく、ベンチから立ち上がって、敬礼を返した。

 

「ええ。私は、レーレ・ナ・エルティア。フェイトさんから聞いてない?」

「はい、迎えに来てくれる人だと、伺っています」

「そう」

 

 何気に、年頃の子どもとは思えない口調と、落ち着いた雰囲気だと感じ取るレーレ。

 ラギュナスから機動六課に来る前に、一通りの人材リストには目を通してある。

 いくら怠け癖がある彼女でも、任務に当たる心構えは出来ている。出来なければ、選抜されていないし、この日まで生きてはいない。

 

「あとは……キャロ・ル・ルシエって娘を待つだけね」

「あの」

 

 辺りを見回すレーレに、声を掛けるエリオ。

 

「何?」

「今、時間は何時でしょうか? 場合によっては、迷子に成っているのかもしれません」

 

 その言葉に、レーレは空間モニターを展開して、時間を見る。確かに、遅い。

 そのまま航空情報にアクセスし、キャロが乗ってくる航空機を確認。すると、すでに着いていた。

 少しだけ、鬱に成りかける。

 局員が、迷子の報告をする訳にはいかない。恥でもあり、ネタにされる。

 

「もし、宜しければ……」

「 ん? 」

「僕が、探してきます」

 

 その言葉は、まさに有り難かった。

 正直に言えば、フェイトに悪影響は与えない様にと、過保護MAXの勢いで言われているのである。

 どうやら、レーレの存在自体が悪影響を与える様な言い方だったので、内心泣けた。

 

「よし、頼む」

 

 満面の笑みで、エリオの肩を叩きながら言う。

 心なしか、エリオは後ろに下がろうとしていたが、この際気にしない。

 

「では」

 

 そのまま走り去っていく。

 

「元気が良いね~」

 

 エリオの背中を見ながら言いつつ、ベンチに座りなおす。

 そして、満足感に浸るレーレだったが、そんなものは一瞬で終わった。

 

「管理局のキャロ・ル・ルシエさぁ~んぅ! いたら返事をしてくださぁ~ぃ!」

 

 思いっ切り後頭部を後ろにぶつけて前に飛び、床に蹲って左右に転がり回る。相当痛かったのであろう。

 満足感崩壊。レーレは、内心で愚痴る。

 もう嫌だ。今すぐ帰りたい。機動六課ではなく、ラギュナスに。

 あそこはやる事さえされば、文句は言われない場所なのだから。まぁ、不利益になると、第8部隊・バックヤード隊辺りから怒鳴られ、第6部隊・内外部調査風紀隊による指導がなされる。

 あそこも嫌だ。何、渡された経済論文本を読んで、どう解釈したか500枚ほどのレポート用紙に書く事。軽く1000枚超えた。

 その後、何か珍獣を見る様な目で見られたが。

 レーレは、一通り愚痴を零した後、立ち上がって体中の埃を叩いてからベンチに座る。

 そして、空間倉庫から冷えたビールに手を掛けるが、やめて隣に置いてあった『リーフ』というジュースを取る。

 このジュースは、ただの水であるのだが、『ナ・デュシュッン』という世界の奥地に湧き出る水である。

 しかも、奥地は禁地となっており、1年に数回決められた日以外の立ち入りは不可。

 魔力、霊力などの様々な結界が張られており、ラギュナスのメンバーでも突破は困難を極める。

 ちまみに、1本1万5000円という、缶ジュースでは有り得ない金額となっている。

 口を開け、一口含んだ所で――2人が来た。

 

「さて、行きますか。新たなる職場に」

 

 それだけ言って、缶ジュースを一気飲みした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第七話:集結

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――って、な訳で、あんまり長話だと嫌われる原因になるので、ここで終わりにさせて貰います。なのは隊長からは?」

 

 はやてから見て、左下にいるなのはに聞く。

 

「いえ、特にありません」

「フェイト隊長からも?」

「いえ、何も」

 

 なのはの隣にいたフェイトも、同じ事を言った。

 はやては軽く頷き、顔を前に戻す。

 

「では、これで終わりにします」

 

 拍手が起こり、はやては台から降りていく。

 

「では、私リインフォースⅡから、簡単にこれからの予定を伝えます」

 

 そう言って、説明がなされた。

 その説明の最中に、武装隊はなのはに連れて行かれた。

 そして、連れて来られたのは、駐機場前の広い場所であった。

 

「全員いますかぁ~!?」

『はい!!』

 

 その返事に、武装隊全員が返事を返す。

 

「では、大人数なので部隊分けを行います。選抜基準は、バランスやパートナー関係、交友関係などを総合的に検討したモノであります」

 

 そういうと、なのはの後方の頭上に、空間モニターが展開される。

 そこに、各メンバーの配置と、各リーダー名が表示されていた。

 スターズ分隊――高町なのはを筆頭に、スバル・ナカジマ、ティアナ・ランスターを含む、計5名。

 ライトニン分隊――フェイト・T・ハラオウン、エリオ・モンディアル、キャロ・ル・ルシエを含む、計6名。

 ツインズ分隊――レーレ・ナ・エルティアを含む、計4名。

 グラーフ分隊――八神ヴィータを含む、計5名。

 合計20名で構成された武装分隊。

 ツインズ分隊が1人少なく、ライトニン分隊が1人多いのか。それは、エリオとキャロの子どもが入るからである。

 それでも、また近い内に何名か配属される予定らしいので、さらに編成が変わる可能性があると、なのはが補足を加えた。

 

「では、これより各分隊の目的と、それに見合った訓練の説明に入ります」

 

 まず、スターズ分隊は、ティアナを筆頭にチームの連携を高める。ティアナにはリーダー適正があり、それを伸ばした方が、効率が良い判断した。

 次にライトニン分隊は、部隊数が多いが機動性メインで訓練が進められる。さすがに、フェイトに着いて来いという無謀な事まで要求しない。が、最低でも足腕纏にはならない程度になってもらわなければならない。

 3番目のツインズ分隊は、機動性もありつつ、小回りの利く部隊を目指す。最小の装備で、最大の成果を上げるために、基礎を徹底的に極める事。応用は、基礎の成果と見合わせてから、追々行っていく。

 最後にグラーフ分隊は、ヴィータを基礎として、突貫部隊に仕上げる。俗に言えば切り込み分隊で、一転突破を専門とする。多少重装備になっても、突撃能力を落とさない様に、瞬発性を高める。

 

「以上が、各分隊の目的と訓練内容です。詳しい訓練内容は、追々説明を行っていきますので。今回は、総合訓練を行います」

 

 その言葉に、分隊の武装局員たちがヒソヒソし始める。

 総合訓練――総合的な能力を駆使して行われる訓練。だが、高町なのはが行う総合訓練は、地獄だと言う噂があった。

 タカマチ訓練法と表側では言われているが、裏ではアクマチ訓練法と呼ばれていた。

 訓練を受けた者曰く――生き地獄。

 またある者は――生きっているって素晴らしい、と言った。なを、この者は根性が腐っていた人間だったが、これ以降真っ当な人間になったそうである。

 ほかにも色々あった、総合的な意見として――生き地獄で、受けた者は性格が変わる。

 つまり、性格を変貌させる中かが行われた事になる。

 それで1番有力なのは、お話を聞くためにディバインバスターを叩き込む。である。

 犯人に向かって、満面の笑みを浮かべながら放つ砲撃は、まるで悪魔を超え、魔王とまで言われている。

 余談であるが、裏社会では高町なのはは、管理局の白い魔王と言われている。ラギュナスでは、すでに廃っている呼び名であるが。

 今は、ラギュナスでは普通に呼ばれている。簡単に言えば、脅威と成りうる存在では無くなりつつあると言って良い。

 

「はいはい、ヒソヒソ話は終わり!」

 

 なのはは手を叩きながら、注目させる。

 

「ただ、今回皆を監督できるのは私とヴィータ三等空尉だけ。フェイト執務官は、八神部隊長と一緒に首都クラナガンへなっているから」

「はい、ではもう時間なので、あとをお願いします」

「はい、判りました」

 

 そう会話し、フェイトは隊舎に入っていった。

 

「では、訓練に入りたいと思うので、各自準備をお願いします。集合場所は――」

 

 こうして、対ラギュナス迎撃専用特別特殊部隊・機動六課の初訓練が成される事になる。

 

 

 

 

 

 組織ラギュナス本部、第8部隊・バックヤード隊。

 とある1室の窓際席に、1人の女性がダルそうにしながらも、それを感じさせないスピードで書類を片付けていた。

 

「レーレの奴、今頃どうしているんだろうな」

 

 そう物思いに耽る女性――リーリ・C・ダールド。

 第8部隊・バックヤード隊の中では下っ端の人間。故に、雑用ばかりこなしている日々を送っている。

 本来なら、第2部隊・偵察暗部隊所属のSS魔導師ランクのレーレとの接点は、本来は無い。

 が、レーレの日頃はサボり魔に近い人間で、医務室で酒盛りし、酒が切れれば消毒液であるアルコールを飲むというお馬鹿っぷり。

 その瞬間を、リールは目撃。余りの馬鹿さに、レーレにドロップキックを炸裂させ、アルゼンチンバックブリーカーを叩き込んだ。そしてそのまま、プロレス技の炸裂コンボタイム。

 その後、異変に気がついた者が医務室に入るや否や、地獄絵図と化していたらしい。

 詳しくは不明だが、部屋がぐちゃぐちゃになり、壁や床、天井に血の跡が付いていたそうである。

 

「どうした? 愛しの相方がいないから、寂し――」

 

 その瞬間、声を掛けてきた同僚の男性に打撃。それにより、強制的に姿勢を正せる。そして、そのまま背後に回って、腰に腕を回してロック。そのまま技を掛けると、窓を突き破ってしまうので方向転換後、ジャーマンスープレックスを行った。

 その業務が行われている部屋で、明らかに業務で鳴ることが無い音が響き渡る。

 誰もが一瞬だけ止まるも、いつもの事なのですぐに作業を再開する。

 

「何が愛しいと?」

 

 技を掛けた状態で呟くリーリ。

 

「…………すいませんでした」

 

 素直に同僚の男性は謝った。

 

「リーリ・C・ダールド」

 

 その美しいのか、奇妙なオブジェと言うべきか、技を掛けた状態で固まっている2人に声を掛かる。

 

「はい、何ですか?」

 

 そう言いながら、素早く立ち上がるリーリ。技を説かれた同僚の男性は、そのまま地面に沈んだ。

 そんな光景を見ながらも、何事も無かったようにする上司。その上司もまた、慣れた光景だと認知している証拠である。

 

「お前は働きすぎだ。有給を1回も使ってはいないだろう?」

 

 その言葉に、リーリは渋い顔をした。

 

「何か不満でもあるのか、ホリックワーカー君?」

 

 上司は、皮肉を込めて放つが、リーリは反論する。

 

「使いたくても、申請の仕方が判らなければ、どうしようもありません。第一、レーレの手綱は誰に預けろと?」

 

 これもまた、皮肉を込めて返すリーリ。

 その言葉に、上司は「うぐっ」と唸るも、不意に思い出したように言う。

 

「レーレと一緒に取ればよかったのでは?」

「日頃サボっている人間が、有給を貰えますか?」

 

 正論を言われ、黙ってしまった上司。

 ラギュナスの労働基準法は存在するが、ミッドチルダの労働基準法とは違う点がある。

 その中の1つに、申請を行えば、有給を給料に変換できるのである。

 が、その反面、無断欠勤やサボり、個人での組織の出費が大きい場合、給料の天引きや有給の消失となる。

 レーレは、無断欠勤はしないがサボりが多く、個人での組織の出費が大きい――訳ではないが、特定のモノの消費が激しいのが上げられる。

 ので、先の労働基準が適用されている。

 よって、レーレには有給が無いのである。

 つまり、有給を取れないレーレの休みは、自然と指定休暇のみとなる。さらに、その指定休暇の申請は、リーリが行っているのである。つまり、自然と同じ日になっているので、有給をとらないのである。

 ただ、有給を給料に変換申請を行うには、個人で行わなければならない。申請を行わなければ、有給は溜まる一方なのである。

 が、今レーレは敵のメンバーに入っているので、普通に有給を取ってもレーレに関する心配は無い。

 

「では、有給を使いたいのですが」

「……あ、ああ、判った。今から申請手続きを行うから、ついて来い」

「はい」

 

 という会話が成されていた。

 そして、上司の男性とリールが廊下を通っている時、休憩所から話が聞こえてきた。

 

「なぁ、ファミコンのZガンダムファイナルバージョン持ってない? オリハルコンと交換しない?」

 

 その言葉に、2人は立ち止まってしまった。

 

「ダークマテリアルとならいいぞ」

 

 その言葉に驚愕。

 

「ああ、あるけどさぁ。質が悪いから勘弁してくれないか?」

「どれくらい?」

「50パー」

「いいじゃないか」

「駄目だ。プライドで70パー以上でないと、取引に出していないんだよ」

 

 その言葉に、完全に固まる2人。ファミコンのソフト如きで、レアメテルで交換するなと叫びたくなる。

 

「仕方が無いな……わかったよ。俺が持っている中で、ギリギリ純度の高いダークマテリアルを出してやるよ」

「サンクス♪ リスティに、ダークマテリアル製の武装を頼まれているんだ」

「待て。なおさら純度が高い奴の方がいいじゃないか」

「確かにそうだけど……無いんだろ、良質の」

「……3日。3日だけ待ってくれ。純度95パーセント以上のダークマテリアルを見つけてやる」

「本当だな……なら、制作の準備を行っているから、手に入り次第頼む」

「心得た」

 

 それから声が聞こえなくなり、気配すら消えてなくなった。

 2人は慌てて休憩所を覗くも、そこには誰もいなかった。

 リーリと上司の男性は、互いに顔を見合わせる。

 この出来事は、後の新型の基礎となるのだが、それはまだ先の話である。

 

「今の何だったんでしょうね」

 

 と、レーレが呟く。しかし、上司の男性は言う。

 

「多分、第0か第5部隊の奴かも知れんな」

「第0か第5部隊……ですか」

 

 第0部隊・特別特殊隊。

 簡単に言えば、エリート部隊であり、魔法の他に別の力を持っている者が集まる部隊。長の直属ではないが、魔導師としてはラギュナスの中で最高品質の部隊と言える。

 第5部隊・技術開発部隊。

 色々な開発、製造を行う部隊。余計なモノを開発しては、一般に流してこづかいや資金を集めている時もある。

 中には、ラギュナスの掟に違反する者も現れるので、第6部隊・内外部調査風紀隊の定期的検査や、抜き打ち調査が行われている。

 

「まぁ、ともかく手続きを済ませようか」

 

 上司の男性は、そう言って先に歩き出す。

 リーリも、すぐに後を追う。簡単に言えば、今の事は聞かなかった事にしたのである。

 通路を通り、エレベーターで下の階へ。

 降りている途中、エレベーターの入り口と対となる壁は、全部ガラス張りになっており、開放的なモノとなっている。

 そこから見えるのは、世話しなく動く人たち。

 

 それをサポートするように動く起動機たち。

 起動機――兵器とは異なり、一般的な利用法をする為に制作された、サポートメカと言える。

 清掃、機材搬入、案内係などなど、多種多様なモノがある。

 すでに、外装は異なる物の、一般に出回っている。1番多く利用されているのは、ミッドチルダに時空管理局。

 低コストであるも、維持費は少々値はあるが、将来を考えると安いモノである。

 最近の物は、小さいバッテリーでも、熱エネルギーの再利用と太陽パネルが搭載されている。

 熱エネルギーは、大気の気候・湿度・温度などもちろん、稼動している最中の熱すらエネルギーに転換できるのである。

 だが、これはまだ試作段階なので、一般に出回るのはまだ先の話である。

 そして、エレベーターは目的の階に着き、先に上司の男性が降り、次にリーリが降りた。

 そのまま何人か入り、エレベーターは再び上に上がった。

 業務処理カウンターへ向かい、上司の男性の指示に従って、渡された紙に記入していく。

 している最中で、ここは本当に犯罪組織なのか疑いたくなった。どう見ても、一般の業務処理と同じで仕方が無いから。

 

「……あとは、先ほどのカウンターに出して、受理されればOKだ」

「判りました。ご協力感謝です」

「気にするな。有休消化してもらえないと、色々大変だからな。一応、この本部の表向きは、時空管理局の下請け会社なのだから」

「確かにそうですが……誤魔化さないのですか?」

「すれば、公共機関の連中に見つかった時の問題の方が、人手不足よりも大変だよ」

 

 シビアな話をする、リーリと上司の男性。

 ちなみにラギュナス本部は、ミッドチルダの首都レルスタンティドの北部にある。

 120階建の下請け会社で、管理局から一般の下請けを行っている。

 裏は組織ラギュナス、表は下請け総合会社。

 余は、一般家庭に使われているスポンジの材料から、新型デバイスのパーツまで、幅広く受け付けている。

 無理なものもあるが、大体の物は製造可能である。

 最近は、表の求人の集まりは良いが、質が悪い事この上ない。裏は、量は少ないが、質が良いと表と裏が均衡している。

 まさに、中国にある陰陽の関係である。

 が、表側は質が落ち、裏側は数が減った――これは少々痛手である。

 表は、定期的に関係ない人間を採用しておかないと、周りの一般人に不振がられる。

 裏は、戦力の拡大と保持、他の組織への圧力と威厳が保てないからである。

 

「人事部の奴らが、表の連中は質が悪いとぼやいていたな」

 

 男性の上司は、思い出したように言う。

 

「っていうか、人事部の律子さん、泣いてたよ。余りにも質が悪すぎて。それでも雇わなきゃいけないのかって」

 

 それに同意して、年上の友人である律子の泣き顔を、思い出しながら答える。

 

「あ~、建前は必要だからな。これだと経理部も――」

「泣いてはいませんが、発狂して発散していました」

 

 前に、経費を落そうとして行った時に、発狂しながら踊り狂っていたので、レーレに頼んで落としてもらった。

 その時、帰ってきたレーレの姿は、何故かボロボロだったのは気になったものの、何も聞かないであげた。

 むしろ、私が聞きたくなかっただけであるが。

 

「…………今度、何か差し入れするかな」

「でしたら、この休暇を使って、差し入れの品を買ってきますね」

「なら頼む。金は、あとで払わせてもらうから。でも、高いのは止めてくれ。俺が持たない」

 

 そう言って、その場を離れる上司の男性。

 リーリも、それを見送ってからその場を離れ、カンターに提出。すぐに受理され、今日から休暇が始まった。

 

「あ、今からレーレの職場にでも、冷やかしに行こう」

 

 

 

 

 

 海上演習場の空間シミュレーター。

 今、映し出されている空間は、廃墟の市街地である。

 その市街地のあちらこちらに、死屍累々と言わんばかりに、武装局員たちがボロボロに転がっていた。

 言わずとも新人たちもボロ雑巾の如く転がっているも、レーレも転がっては居なかったが、ボロボロになっていた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……絶対、危険手当……貰うから、ねぇ」

 

 息を荒くしながら、呟くレーレだったが、それが精一杯だった。

 何せ、訓練内容の中で『絨毯爆撃を掻い潜れ』と言うものがあり、内容は――魔力弾とゴム弾による爆撃地帯を通り抜けろ。

 正直言うと、全員中腹辺りで全滅した。

 上手く回避できたと思いきや、遠方からのスナイパーライフルによる狙撃。

 当たって怯んでいる最中に、爆撃に巻き込まれてアウト。

 鬼のようなメニューで、クリアできたものから抜けて行くモノだったが、結局誰一人も抜けられなかったのである。

 

(いっ、生きている奴……返事しろ)

 

 と、各武装局員に、念話を飛ばすも――ひとつも帰ってくる事は無かった。

 どうやら、自分以外、大地かコンクリートに沈んでいるのだろうと考える。

 

≪各武装局員に連絡≫

 

 そこで、なのはから空間モニターで、連絡が開かれる。

 モニターを見て聞いているのは、果たして何人居るのだろうか。

 

 

≪今からお昼だけど……状況から訓練すらキツイと思うから、午後の訓練はお休みで≫

 

 その言葉に、喜びの感情が湧き上がるも、一瞬でどん底に落ちる。

 

≪夕方の訓練は行うから、それまでに回復しておいてね。っと、言う訳で、一時解散します。集合場所は、空間シミュレーター前で、時間は5時からだから。遅れない様にね≫

 

 そこで、空間モニターは消える。

 レーレは、そのまま前に倒れ、地面に沈む。

 

「高町隊長……今の、止めです」

 

 そこで、レーレの意識は途絶えるのであった。

 なを、ラギュナスでも過酷な訓練があったが、この訓練は明らかにクリアさせないのが目的であった。

 過酷な訓練をクリアしたことによる驕りを生み出さず、自分たちがゴミだと言うことを刷り込む。

 

 自分たちは、ゴミだと、屑だと、蛆虫いかだと悟らせる――軍お達しの洗脳訓練の一種。

 過酷な訓練の日々を送らせ、従順な兵士を作り上げる。

 この訓練は、まさにそれに近いモノであった。

 

「…………今は」

 

 意識を取り戻したレーレは、空間モニターを出して、時間を確認する。

 空間モニターには、1230と表示されていた。

 

「12時半ジャストか……他の連中らは」

 

 少し重い体を起こしつつ、辺りを見回す。

 そこには、見える範囲ではあるも、未だに倒れている者、既に起き上がっていない者、意識は回復したが動けない者など。

 様々な状態ではあるも、未だに倒れている者の中には、壁に上半身が突き刺さっていたり、犬神家みたいな状態になっていたりなど。

 様々なオブジェが出来上がっているが、そのままにしておく。

 中には、手を貸してほしい者もいるかもしれないが、知らん振りしてもらえると助かる人間もいる。

 なので、見分けが付かない以上、そのままにしておくしかない。

 

「はぁ……昼、食べよう」

 

 重たい体を引き摺る様に歩くレーレ。

 背後では、意識を取り戻し始めた武装局員が動き出し、何かを始めたが、気にしないで食堂に向かった。

 

「お~い――って、瓦礫が!?」

「全員退避!! 退避!!」

「まだ埋まっている人間が!?」

「我が身第一だろぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

 

 その声と同時に、コンクリートが崩れる音が聞こえてくるも、知らん振りして向かうのであった。

 そのまま演習場を出て行き、コンクリートの階段を上って隊舎に向かう。

 途中で、バイクが横を通り過ぎたが、特に気にすることも無かった。

 そして、機動六課の食堂。

 メニューを見て驚いた。

 デスクワーク組の食事は、豪華のモノばかりだが、武装局員には素っ気無い料理しかなかったのである。

 エネルギー吸収を第一に考えた料理の数々――正直萎える。

 一応、豪華なモノも食べられるが、1週間に1度しか食べられない。

 しかし、それは正しいのかもしれない。

 腹いっぱい食べた後で、あの様な訓練に参加すれば、悲惨な状況がお目に掛かれる。

 ぶっちゃけると、ゲロの雨。

 掃除も大変だし、当分臭いも残る。

 あの訓練所は、最新式の技術で出来たモノ。そんな物に、早々とゲロを吐かれては困るのも判る。

 でも、何と無くではあるが、近い内に誰かがやるだろうと思った。

 なを、それが自分――レーレになりたくは無かったので、一段楽するまでは、酒や夜食を控えようと思ったりする。

 予想だが、ゲロを訓練中にはいた奴は、自己管理不良で追加メニューが課せられると睨んでいる。

 現に、ラギュナスの訓練時代でも、似たような事があったから。レーレも、追加を貰った口である。

 で、食堂で頼んだのは――少食の栄養満点メニュー。

 が、胃が受け付けずに吐いたしまった為、水をうがいしながら飲む程度になってしまった。

 他の武装局員も、似たり寄ったりで、無理やり食べたりして間食を目指そうとしている。

 正直、その選択は間違いだよと、心の中で呟くレーレ。

 これまた彼女は、訓練時代にやって吐いた口。まぁ、大抵の事は訓練時代で行った。

 ゲロを吐き、胃液をぶちまけ、泥の中で気絶し、恐怖の辺り失禁もした。

 1番酷い時は、便秘で調子が悪いと言ったら、いきなり消化のいい物を食わされ、強力な下剤を飲まされた。

 で、お腹に激痛が走り、下半身に痛みが下がった瞬間、レーレのお腹を抉りこむ様に殴りこむ。

 お陰で、人前で野糞をぶちまけた。

 次の日から引き篭もりになろうとしたが、無理やり部屋から引き摺り出されて、訓練に参加させられた。

 他の女性も、その被害にあった事もあると聞いた。

 しかも、男の場合はもっと酷い。野糞をぶちまけた後、顔面を突っ込まされるそうだ。

 それからは、従順になるか、反抗的になるかのどちらか。無気力になる事は無い。

 なれば、無理やり這いずり回される。

 逃げたくても、訓練中は逃がしてはくれない。

 何せ、訓練前に契約書みたいな物に、サインをしなければならない。

 細かい記載は省くが、『訓練中は、有給申請、除隊などの他の権限の申請及び発動を禁ずる』。

 よは、ベテランであれ、階級の高い人間であれ、訓練中は指定された休み以外は休ませず、途中で辞める事は許されない。

 でも、この訓練を終えた奴は、例外無く身体能力と経験と知識だけで、最低でもAAランク魔導師を潰すことが出来る。

 地形や装備、状況によって変わるが大体は叩けるも、何も無い平地で空を飛ばれたら終わる場合がある。

 地を這う者に、空を飛ぶ者には勝てない。簡単に言えば、攻撃が届かないからである。

 ただ、空を飛ぶ者は接近戦しか出来ない場合は、勝算が生まれる。

 簡単に言えば、カウンターを取って相手に取り付き、ゼロ距離で仕留めれば良いだけの話。

 その訓練で判ることは、戦い方にマニュアルなど無い。個人の都合などお構いなし。殺る前に見極めてから殺れ。逃げる事は恥じで在らず。生きていれば次がある。など。

 それを悟るのは、訓練を受けた人間それぞれ。

 レーレは、訓練で学んだ事は――何事にも動揺せず、どんな状況でも、常に自分を保ち続ける事。

 これが1番と言える。

 他にも多数あるも、これが1番大きい。

 ただ、それが我が道を行く状態と化してしまったので、良かったのか悪かったのかは微妙な所である。

 レーレは、食べ終わるとすぐに食器を片付け、その場を後にした。

 通路で自動販売機を見つけ、『新世界のバリブレンジョ』という飲料水が売っていた事に感動し、速攻で購入。

 一気飲みして、

 

「――――――――――――!!!?」

 

 吹きました。

 その味は、まさに新世界と言うべき味と言える代物だが、今の時代には合わな過ぎる。

 まさに先取りしすぎたモノ。

 

「――……仕事するか」

 

 まだ中身の入った缶を、ゴミ箱に入れ、資料室へ向かう。

 事前にメンバー情報は、ある程度は入っていたが、急遽変更になった人材と部分があるので、それの調査・確保である。

 が、放送の合図がなる。

 

『隊員呼び出しです。レーレ・ナ・エルティア三等空尉、ロビーにてご友人がお待ちです。至急ご足労お願いします』

 

 と、いう内容だった。

 

「友人……はぁ~、リーリも世話焼きだなぁ」

 

 などと、ため息交じりの苦笑を浮かべつつ、心を躍らせながらロビーへ向かう。

 それで、レーレはロビーを見た瞬間、思いっきりズッこけた。

 そこには、物凄く怪しく変装してきた人物が1名。

 サングラスにマスク、帽子に厚手のコート、ご丁寧に手袋までしてある。これでボイスチェンジャー装備していたら、もう完璧だな。などと、思いつつ、その人物に近づく。

 周りからも、さっさと済ませてくれと言う視線が、レーレに集中していた事もある。

 

≪遅いわよ≫

 

 レーレは、再びズッこけた。予想を裏切らない結果に。

≪ここのロビーは、よく滑るの?≫

「……違うわ」

 

 復活しながら、突っ込みを入れるレーレ。体中に付いた埃を払う。

 

「で、マジで誰?」

≪リが付く人、女性、貴女といつも一緒≫

「ああ、なるへそ。お久しぶり」

 

 変装した人物がリーリだと判り、安心するレーレ。

 これが長だったら、とんでもない事に成っていたかも。まぁ、やりかねないのが怖い所。

 

≪感想は?≫

「久しぶりに気絶したよ――訓練で」

 

 レーレは、それを言った瞬間、少しだけ透けた。

 その透けた姿を見て、懐かしいなと和むリーリ。

 端から見れば、この上なく不自然な光景であるが、その辺は誰も突っ込まない。むしろ、知らん振り。触らぬ神に祟り無し的に。

≪気絶って……うちの所だけだと思っていたけど、世界は広いね≫

「いや、この程度で広いって可笑しいから」

 などと、会話を弾ませる2人であった。

 

 

 

 それから時間が経ち――夜。

 夕方の訓練も終了し、ボロボロになりながらも、寮へ帰還する武装局員たち。

 が、1人だけ隊舎へ向かう者がいた。

 魔力ではなく、ラギュナス製の潜入装備をした黒い影。

 最新式の警備システムを搭載した機動六課の隊舎であっても、無駄であった。

 何せ、使っているシステムが――ラギュナスの関連会社なのだから。

 

「こちら、RX-78より支店へ」

 

 堂々とど真ん中に立っているのではなく、壁際に張り付いている。

 いくら管轄内とはいえ、別の独自の警備システムが存在するかもしれない。

 

≪こちら支店。誤魔化せる時間は、今から0000から0130までだ≫

「了解。0110くらいまでに終わらせる。失敗したら、処理を頼む」

≪……了解。ご武運を≫

 

 処理と言う言葉に、通信者は一瞬だけ黙ったが、すぐに返事を返した。

 処理――それは、文字伊通りである。

 ともかく、レーレははやての仕事部屋を目指す。

 そして、はやての仕事部屋のドアを、ピッキングツールを使ってロックを解除。

 扉を開けた瞬間――背後から、後頭部に冷たいモノが突きつけられる。

 

「動くな、ラギュナス」

 

 その言葉通り、腕すら上げず、そのまま硬直状態となる。

 声から男性だと判るが、それ以上は判らなかった。

 長や第3部隊の隊長・福隊長の様に、気配を明確に読み取る事はできない。

 気配といっても、どのくらいの距離で、どの辺に隠れているくらいはレーレでも判る。

 だが、先ほどの長や第3部隊の隊長・福隊長では、それに性別、大まかな年齢、慎重、体重、どの様な武装を持っているのか。など、明らかに異常な探知能力を保有しているからである。

 

「取引だ」

 

 男は、そう告げる。

 そして――この選択と言う名の言葉は、全てと狂わす小さな歯車の1つ。

 

「……レーレ・ナ・エルティア、我々の同胞となれ」

 

 また1つ、狂った無数の歯車。

 小さな、小さな歯車が、ゆっくりと動き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何かに出逢う者たちの物語・外伝

第二部

魔法少女リリカルなのはTIWB

~二つの意志と狂いきった世界~

 

 

第七話

集結

 

END

 

 

 

次回予告

 

対ラギュナス迎撃専用特別特殊部隊・機動六課が動き出してから、2週間目。

訓練は順調に進み、部隊の連度が増していく。

そこで、各武装局員のデバイスが強化される。

だが、そこでエマージェイシーコールが鳴り響く。

 

 

 

次回、何かに出逢う者たちの物語・外伝

魔法少女リリカルなのはTIWB

~二つの意志と狂いきった世界~

 

 

第八話:出動

 

 

 

運命は、ついに新たなる可能性を呼び込む――この混沌の世界に。





あとがき
 もろ日常会話的な様な話に。(汗
 っーか、ゲロの次は野糞……これを厳密な描写を書いたら、18禁小説ですなぁコレ。(汗
 書いておいてアレだが、何か過激になっていくなぁ~と。一応、拷問を描写予定であるが、そちらも過激。
 まぁ、エロを書くにし、ギリギリ描写しますかね。
 あとは、少しだけ少ない話が少ない事。(汗
 追々追加しますけどね。
 なを、本当は3日後の話を書こうと思いましたが、モチベーションの関係で話を結合。






制作開始:2008/7/2~2008/8/15

打ち込み日:2008/8/16
公開日:2008/8/16

修正日:2008/8/19+2008/10/1
変更日:2008/10/29
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