妹が目標となった人が出来た様に、私にも出来た。
ある執務官に助けられたが、目標というより憧れとなった。
だけど、今目の前にいる人は、私が目指す目標となった。
追いつく事すら叶わないかも知れないけど――それでも、アナタを目指します。
ミッドチルダにある首都クラナガン。
ここの首都中央には、時空管理局地上本部がある。
つまりここは、管理局のお膝元と言っても過言ではない場所。
しかし、それでも事故は起き、犯罪も起こる。
それでも、1つでも無くそうと奮闘するものの、本局を敵視する男がいる。
レジアス・ゲイズ中将――地上本部のリーダーである。
彼が地上本部のリーダーになってから、着々と成果が上がっている。
だが、その反面、黒い噂が絶えない。
そんな地上本部のお膝元で、猛スピードで道路を駆け抜ける車が1台。
コレだけならば、スピード違反で減点か免停だが、乗っているのが――桐嶋時覇。
スピード違反だけでは済まない事、100パーセント。
首都には警備隊がいるが、さすがに魔導師相手では役に立たない。むしろ、お荷物である。
結論――そのスピード違反車を追っているのは、陸と空の武装局員。
さすがに街中で、しかも避難が行われてない区画で、魔力弾を発射する馬鹿はいない。
しかし、安全確保が出来れば、問答無用で打ち込んでくる。
だが、それを凄いドライブングテクニックで回避し続ける、ドライバーは銀髪の女性。
関係無い余談ではあるが、時覇は高校生で無免許なので運転できません。
運転しなくても、飛行魔法や転移魔歩を使ったほうが早いので、取っておりません。
よって、彼は運転できません。以上。
「彼とは、もう少し違った形でドライブしたかったですね」
冷静に呟きながら、S字ドリフトを決めながら、魔力弾を美しくかわす。
乗っている車が、スポーツカーで色は女性の髪の色と同じシルバー。
その光に反射する美しきボディは、まさに白銀の閃光であった。
動きは鋭いというより滑らかで、コレもまた1つの芸術と言わんばかりのドリフト。
タイヤが悲鳴を上げるのは仕方の無いことだが、動きに直角はなく円のような動きしか見ない。
まるで、魔法で制御しているのかと思うが、全く魔力反応が見当たらない。
乗っている2人には魔力反応は感知されるが、車には一切関知されなかった。
おかげで、一度見失うと探すのが大変である。
武装局員たちは何度か見失いかけた時は、肝を冷やした。
「S字走行に、三連続ドリフト、挙句の果てには片輪走行――って、どこかの漫画だよ!?」
思わず叫ぶ航空魔導師が1名。
確かに、峠を爆走してそぅな勢いである。
ただ叫びたいのは、他の陸と空の魔導師も同じである。
「――78部隊は右から回りこめ! ついでに85部隊も! で、俺たちも行くぞ!」
陸士48部隊の部隊長が指示を出しながら、他の部隊よりいち早く先行する。
そして、街中で行われている鬼ごっこは、壮絶を極めつつあった。
陸戦魔導師では、小回りが利くがスピードに追いつけず、航空魔導師は、ビルなどの建物に阻まれてスピードを生かしきれない。
初めは本局からの増援を拒んでいたレギアスであったが、現状を理解し、忌々しく思いつつも許可をする。
しかし、航空魔導師と同じく、スピードを生かしきれないが、陸戦魔導師以上に小回りが利く。
「小回りの利く陸戦魔導師たちは、広範囲に展開しつつ、囲むように包囲網を縮めろ!」
「航空魔導師どもは、空中から援護射撃! 上手く誘い込め!」
その指示通り、広範囲に散会しつつ包囲し始める陸士たち。
空から追いかける様に、行き先を塞ぐ様に魔力弾を打ち込んでいく空士たち。
おかげで、徐々に包囲網を縮めることに成功しつつある。
「行き場が――無くなってきたは、ね!」
勢い良くハンドルを右へ切る。
車のボディに反射した白銀の光を残しつつ、建物の中へ避難した。
が、急ブレーキ。
そこには、道を塞ぐ様に女の子が立っていたからである。
着ている服は、一般の服。
管理局では無いが、どこと無く訓練を受けている雰囲気を漂わせる。
「時空管理局の者です! ただちに逃亡を止めて、大人しく投降してください!」
所々震えている声だが、芯はしっかりとしている。
銀髪の女性は、無言で降りると少女に歩み寄る。
「――――!?」
少女は体を強張らせる。
が、ひぉいっと脇に抱えられる。
「え、え?」
混乱する少女であったが、抵抗する暇も無く、そのまま車の後部座席に押し込まれる。
正確には、混乱して状況把握が出来なくなっていた。
そして、銀髪の女性も運転席に戻り、再びエンジンを吹かす。
「しっかり掴まっていなさい、飛ばすから」
「え、あ、ちょっ――」
「あとしゃべらない方がいいわ。舌噛むから」
急発進する銀色のスポーツカー。
地面とタイヤの擦れた音と、少女の悲鳴を上げながら再び爆走する。
『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』
男と少女の悲鳴が重なる。
助手席では、先ほど目を覚ました時覇。
まだハッキリしない意識で、いきなり左右に振られる。
状況確認しようにも、何がなんだか判らない。
判ることは、車の中。
運転席に知らない女性。
後部座席に知らない少女、何故か半泣き状態。
ともかく、少女をあやす為に助手席に引っ張り出して、膝の上に座らせる。
危ないことだとは判っているが、本気で泣かれては困る。
だが、この選択が間違いだった。
何だか判らないが、ドリフト回数が異常に増えたからである。
右に揺れ、左に揺れ、また右へ左への無限ループとも思える地獄があった。
追っている管理局も、ドリフト回数について来られずに振り切られる。
が、また戻ってくる。
で、離される。
永遠の繰り返し。
追い詰めようにも、予測不可能な行動を起こしたために判断が鈍くなり、上手く指示を出せずにいる。
「あの安全運転希望、希望!」
時覇が叫び、少女は同意するように激しく頷く。
が、ドリフトに振り飛ばされるように却下された。
「うわぁぁぁぁぁぁって、前! 前!」
目の前は、道端に積み上げられたゴミの山。
インに寄ったのが失敗だったと、内心で吐きつつ、素早く魔法を発動させる。
そして、指が鳴ると同時に、白銀のスポーツカーはごみの山に突っ込んだ。
第三話:逃亡劇の中で
消防隊が放水を行っている。
「くそぉ! 全くおさまらねぇぞ!」
「ぼやくな! とにかくこれ以上被害を拡大させるな!」
「だから、もっと強力な消化剤を作ってくれって言ったのだよ、俺は!」
スポーツカーは炎上し、ゴミが拍車を掛けて炎の勢いを強めていく。
武装局員は、念のために付近の建物にいる一般市民を避難させる。
中には、犯罪を目論んでいた人間も見つかり、その場で御用となった奴もいる。
ある意味、地上本部として収穫はあったが、肝心の本命を逃がしたことに憤りを覚える。
とくにレギアスが。
その現場に、陸士108部隊部隊長ゲンヤ・ナカジマがいた。
「これは……逃げられてか?」
「ええ、車の中には誰もいなかったので。我々の目を欺くための――」
「いや、偶然だろう」
ゲンヤはその場にしゃがみ込み、地面を撫でる。
それに釣られて、局員をしゃがむ。
「これは急ブレーキを掛けたあとだ。多分、こんな所にゴミがあったとは、つゆ知らずって所だな」
急ブレーキの痕跡を目で追うと、未だに燃え上がる車の下に当たる。
消化作業は着々と進んでいる。
証拠は見つからないと思うが、一応調査しなければならない。
「……気が重いな」
「ええ」
炎が収まりつつある車を眺めて呟く2人。
消防隊が駆け回る中、2人に近づく局員がいた。
「ナカジマ三佐!」
その言葉に、2人は空を見上げる。
そこには女性の航空魔導師が降り立つ。
髪はロングで緑色。
統一された航空魔導師用のバリアジャケッドでは無く、オリジナルのモノだと、一般人でも判る。
「命令で、ナカジマ三佐は、至急犯人を追えとの事です」
その言葉に、ゲンヤの顔は険しくなる。
「本当か?」
「はい。あと、犯人が人質にした少女がいるそうなので、そちらの保護も行なえだそうです」
「行なえ、か……」
そう呟き、黙るゲンヤ。
追うのは当たり前だが、どこへ逃げたのか検討がつかない。
少女が人質となると、盾に使われたら手を出すのが難しくなる。
悩むゲンヤ。
「ゲンちゃぁ~ぅん!」
気の抜けた声が、現場に響く。
初めて聞くものや、まだ慣れていない人は辺りを見回したりする。
げんなりするゲンヤ。
その元凶は、ゲンヤに駆け寄って飛びついてきた。
だが、ゲンヤは素早く避ける。
ちなみに局員2人は、すでに待避済みある。
馴れとは怖いものでもある。
「愛しの妻ですよぉ~♪ ――ぎゃう!」
空振りしながらゲンヤにアプローチの言葉を述べるが、ポールに顔面が直撃して想いと言葉と共に砕ける。
そして、漫画の如く、衝突した状態のまま地面に沈む。
「おい! 呆気に取られてないで、消火しろ!」
「はぁ、はい!」
などと後方から聞こえるが、聞こえない振りしつつ、心の中で謝罪する。
で、元凶がノロノロと立ち上がり、バッと振り返る。
「酷いじゃないですか、ゲンヤさん! 内縁の妻を蔑ろにするなんて!」
上目遣いで、涙を浮かべながら言う元凶。
男なら、一発で陥落させれそうな勢いである。
が、ゲンヤには効かなかった。
むしろ逆効果である。
「誰が内縁だ! 俺の妻はクイントだけだ!」
多少来るものはあるが、『内縁の妻』の部分に反応して否定する。
前に一度、ギンガやスバルの前で言った事があり、2人に泣かれた。
それ以来、再婚はしないと硬く決め、チャラチャラした男には娘をやらないと、再度想い立った。
そして、そのままヒートアップしていく2人。
それに連動するかのように燃え上がる炎。
迷惑極まりない状況である。
「あの~、ナカジマ三佐に、ディアード一佐」
見るに見かねた局員が声を掛ける。
同時に、航空魔導師は両耳を塞ぐ。
『何だ!』
周りの空気が震える。
さすがは歴戦のお方、若造には出せない気迫があった。
ちなみに、ディアード――リーチャ・ディアードは、20代半ばである。
ので、こちらは女の意地であろう。
「いや、早く事を起こさないと……犯人が」
その言葉に、ハッとなる2人。
どうやら半ば忘れかけていた様である。
「この件は一時お預けだ、ここを任せていいか?」
ゲンヤは、リーチャに聞く。
一応リーチャの方が、階級が上であるが、四の五の言っている場合ではない。
「OK~。その代わり、部隊を少しだけ分けて。私の部下、全員別方面にいるから」
「判った。だったら、そいつらと合流していいか?」
「ええ」
簡単に答えを出すリーチャ。
仲は悪いのだが、仕事に関しては絶対な信用を互いに置いている。
ゲンヤは振り返り、部下に指示を出す。
「よし、お前ら、二手に別れるぞ!」
ゲンヤの言葉に反応する様に、火災は沈下した。
地下、下水道のある地点。
流れる水はヘドロと化し、異臭を放つ。
はっきり言って、よほどの物好きか、日の上を歩けなくなったか、定期掃除にきた清掃員くらいしか来ない。
「うげぇ~、ぺっ、ぺっ」
ヘドロの中から、男性が1人。
続いて、へ泥まみれの細長い存在と小さい存在もとい、女性と少女が1人ずつ、ヘドロの中から出てくる。
2人もまた、口にヘドロが入ったのか、一生懸命吐き出している。
時覇は、ある程度自分に張り付いているヘドロを払うと、少女のヘドロを払い始める。
「えぐぅ、えぐぅ――ぅえぇぇぇぇぇぇぇ……」
思わず胃の中のモノまで入ってしまった少女。
それの子の背中を擦る時覇。
さすがの銀髪の女性も、心配そうな顔をする。
原因を、重ね重ね作ってしまったのは自分自身であるが故に。
「所で……ここは――下水道?」
辺りを見回しながら、それらしき場所を口にしてみる。
「はい。ミッドチルダ、首都クラナガンの下水道です。造りは少々古いですが、未だに現役の場所の1つです」
「ああ、前に誰だか忘れたが、政治家のズラをかっぱらった際、逃走経路に使った記憶がある――って、アンタは?」
時覇の発言に、何やっているのだかこの人。という目線で見る2人。
しかし、銀髪の女性は軽く咳払いして、時覇を真っ直ぐ見る。
「私の名は、リイン。貴方を助けに参りました」
「俺を……?」
弱弱しく座っている少女を抱きかかえながら、その場に立つ。
少女は抵抗しようとしたが、力が入らず、成すがままとなった。
「ええ、その通りです……この場に留まっても仕方が無いので、歩きながら話しませんか?」
「確かに、この子の事も如何にかしないと拙いからな。なら――どの辺から出たい?」
再び辺りを見回しながら、リインに言う時覇。
「どの辺から――と、言いますと?」
首を傾げながら答えるリイン。
それを見て、言葉が足らなかったと悟る。
「ここの下水道は大体把握しているから、クラナガンのどこら辺に出たいか言えば、だいたいの所まで行ける」
「でしたら、転移装置がある場所へ行きたいのですが」
「だったら、こっちだ」
リインに背を向け、先に歩き出す。
それに続くように、リインは慌てて追いかけるのだった。
それから右へ曲がり、左へ曲がり、また右、また左と繰り返す。
時折壁に触っては――よし、このまま。間違えたから戻ると言った。
どうやら、見えにくいが窪みがあり、それを手の感触で読み取っていることが判った。
目が見えない、または目や耳共に障害がある人たちの為に、考案された点字の原理である。
途中、謎の部屋に入る。
中は、木箱や紙が散らばって、水道と電灯が取り付けられていた。
何故? と、首を傾げるリインに時覇が説明する。
「さっき、政治家のズラを奪った時に、逃げ切れなかった用の為だけに用意した、隠れ家だからさ」
時覇の説明に、リインと少女はダブルツッコミを入れるが、口に出さずに心の中で言う。
一々突っ込んでいては、この先後が持たないと本能で悟った。
「まぁ、とりあえず――あそこで口とかすすぐか」
と、水道を指差す。
出は悪いが、飲んでも問題は無いくらい綺麗な水が流れ出る。
この近くに浄化された水が通るパイプと、直接繋がっていたのが幸いである。
3人は、とりあえず口や頭を軽くすすいだ。
多少汚れた布が、未開封の木箱の中に残っていたので、3人で上手く分け合って拭いていく。
「そういえば、君の名前は?」
口を拭っている少女に問い掛ける。
「私ですか?」
その言葉に、時覇とリインが肯く。
すぐ言おうとしたが、口を噤む。
「言いたくは無い、か?」
少女は無言で肯く。
仕方が無いといえば、仕方の無いことである。
「だったら、無理に聞く訳にはいかないな。ただ、呼び方に不便だから……少女と呼ぶからな」
少女は無言のまま肯く。
肯定と取っていいのだろう。
「巻き込んでおいてなんだが、一応、地下道を出るまで付き合ってもらうからな。少女1人、置き去りはあんまりだ。ちなみに拒否権は無い」
再び肯く少女。
了解してくれるようであり、特に怯えている訳でも無い。
「で、2人ともいいか? そろそろ移動したいのだが」
その問いに、2人は肯く。
そして、木箱から荷物を取り出して背負う。
「じゃ、行くか」
そうして、本当に2度と使われる事の無い部屋を後にした。
それから、少しして目的の場所に到着する。
「この上だ」
その言葉に、2人は天井を見上げる。
正確には、天井近くにある壁に取り付けられた隔壁があった。
その場所だけは、年季の入った地下道には不釣合いである。
あからさまに、つい最近取り付けられたばかりと主張している。
「『イングランド研究所』と言えば判るか?」
その言葉に、リインはハッとする表情を出し、少女は首を傾げる。
「イングランド研究所は、2年位前に出来た首都クラナガンの特殊研究所で、魔法を使わない研究を進めている」
「魔法を使わない、ですか?」
興味を持ったのか、少女の目が好奇心で輝く。
「ああ。魔法ではない力――念力や妖力、精霊などの別の力を研究する場所なのだが、黒い噂も絶えないことで有名な施設の1つだ」
そう言いながら、壁に取り付けられている梯子を登る。
そして、隔壁まで上ると、左右の壁に触る。
壁を擦っていた手が止まり、その場所を軽く叩く。
すると壁の一部が開き、そこからキーパネルが顔を出す。
軽やかにキーパネルを押していく。
「これでよし」
その言葉と同時に、隔壁が開き始める。
開ききらないにも関わらず、先に入って先行しようとした途端――何かが飛んできた。
とっさに、その場から降りて、梯子の手すり部分に片手で捕まる。
開いている片手は、腰に回す――が、ポショットやデバイスが無いことに気が付く。
軽く舌打ちしつつ、飛んできたモノを見る。
飛んできたモノは、空中で回転してそのまま着地する。
そして、顔を上げる――あの時、デバイスに取り込まれた男である。
「お前は……誰だっけ?」
こけた。
しかも、顔面から地面にダイブ・イン。
うわぁ、と唸る2人。
時覇の言葉よりも、地面に突っ込んだ男の方が痛そうに見えたらしい。
いや、実際痛いが――色んな意味で。
「ゴスペルだ!」
「いや、初めて聞いたから」
ゴスペルの言葉に、純粋に答える。
ラギュナスのメンバーは、ある程度知っているが、抜けた後に入ってきた連中は知らない。
「で、どうしてここに?」
「どこぞのデバイスが、桐嶋時覇――お前を管理局から連れ出してくれと頼ま――」
ガゴン! と、斜め上から聞こえる。
それに釣られて振り向くと、隔壁が壊され、間から機動兵器らしきモノアイが浮かび上がる。
「……とりあえず、アレを協力して潰さないか?」
恐る恐る協力を要請してくるゴスペル。
「逃げるって方法は?」
「今の俺の姿を見てから言ってくれ」
「愚問だったな」
時覇の言葉通り、ゴスペルの服はボロボロで、服が破れている部分には傷や血が見えている。
そうしている内に、隔壁が引きちぎられていき――機動兵器が姿を見せる。
「あれは――パイロン!?」
リインが、悲鳴に近い叫びで言う。
ラギュナスが開発、所有する起動兵器シリーズの中で、もっとも強力で凶悪な機体。
たった1機で、5個中隊を相手にできるほどの能力を持つ。
しかし、どれくらい戦ったのか判らないが、ゴスペルはコレを相手に生き残ったのだから、SS+ランクはあると見て良い。
「俺は無装備、ゴスペルは負傷、リインは少女と一緒に逃げてくれ。こいつは、俺とゴスペルの2人で抑えきる」
「言葉が無茶苦茶です」
リインの鋭い突っ込みが炸裂するが、返している暇は無い。
起動兵器――パイロンが、隔壁から降りてくる。
地面に足が付いた瞬間に、ハジケ跳ぶ様に間合いを詰める時覇。
「――廻裏・魔!」
幼馴染が使ってきた氣功術の魔力版を、パイロンに入れる。
「――――」
パイロンは、臆する事無く右腕で防ぐ。
同時に、足に纏っていた魔力が掻き消される。
それと同時に、左手の爪を振るう。
が、防がれた事を利用して、そのまま後方へ跳び、一回転しながら着地する。
「ストライク・シュート!」
ゴスペルが牽制で魔力弾を放つが、装甲に当たった途端――掻き消される。
それを気に、パイロンは突進してくる。
しかも、時覇やゴスペルではなく――リインと少女に。
爪を露骨にむき出しにした事により、襲い掛かる恐怖が一回り大きくなる。
「なぁ!?」
「ぃ、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
驚きと恐怖の顔に染まる2人。
が――パイロンは、2人から見て右へ吹き飛ぶ。
そして、そのまま壁に激突。
瓦礫の下敷きとなる。
それを見ていて、何が起きたか判らないので混乱する2人。
目線を左へ送ると、そこには綺麗に着地している時覇と、カードリッジを入れ替えているゴスペルの姿があった。
「何がヤバイだ。装備無くても、十分強いじゃねぇか」
入れ替えが終わり、手の反動で銃の蓋を閉じる。
「そう言うお前こそ、今まで魔力弾が掻き消されていた事に、不思議を覚えたぞ」
ゆっくりと立ち上がりながら、集中力を高めていく。
「……小さいガキの悲鳴は、嫌いだからな」
「奇遇だな。俺も――だ!」
言い終わったと同時に左右分かれて跳ぶ2人。
次の瞬間、バスター系の攻撃が通過する。
「グゥオォォォォォォォォォォォォォォォォォゥ!」
パイロンは、のしかかっていた瓦礫を吹き飛ばすと同時に、雄叫びを上げながら立ち上がる。
そして、口にエネルギーがチャージされていく。
しかし、魔力反応は無い。
「先の攻撃は……これか?」
「ああ。魔力ではなく、電気エネルギーを使った固定武装だ……詳しくは忘れたが、掠っただけで終わりと考えた方がいい」
そう答えながら、構える時覇。
「そうか」
それだけ言って、銃――デバイスを構えるゴスペル。
一触即発。
完全に成り行きを見守っているリインと少女。
不意に少女は、リインに念話を飛ばす。
(リインさん)
その声にハッとし、左右を見回す。
袖が下へ引っ張られたので、顔を下に向ける。
それで、念話の送信者が判明。
(どうしたのですか?)
(何で2人は、今の内に攻撃をしないのですか?)
もっともな質問が来た。
(判りかねますが……多分、これ以上の戦闘は無理なのかもしれません。ですから、この一撃で決める――と、言うことでしょう)
(この一撃、で)
そこで念話は終わる。
…………。
…………。
…………。
…………。
…………。
…………ガラァ、と瓦礫が鳴った。
そして、それが――合図となった。
「……――ぁぁぁぁぁああああああああああああ!」
「ブラスト・エンドォォォオオオオオオオオオオ!」
『グァァァァァアアアアアアアアアアアアアアア!』
三者三通りの叫びを上げる。
風の如く、拳を構えて突っ込む時覇。
それに続くように、後ろから付いていくゴスペル。
一列になった事を好機と判断し、口からバスター系の砲撃を放つ。
その瞬間、ゴスペルがさらに速く走り――時覇の背中を踏み台にして、宙へ跳ぶ。
時覇もまた、踏み越えた事を感じると、さらに背を低くして砲撃をかわす。
上と下に分かれた事により、思考回路が混乱するパイロン。
それが勝敗を決した。
時覇は一瞬消えると、消えた場所の地面が抉れ、次の瞬間――パイロンの懐にいた。
この時も、現れた際、地面が窪む。
それから、アッパーをかます様に掌底を顎に入れる。
しかも、まだ砲撃途中なので、そのまま口が閉まるイコール――顔が爆発。
爆発する数旬前に、時覇は既に離脱済み。
「トドメ、ヨロ」
宙中で入れ替わるように下がる時覇に、進むゴスペル。
「ああ――ゼロ距離!」
顔の半分ほどを失ったパイロンは、その場でフラフラしている。
それに狙いを定め、全魔力を一点に集中させる。
「ボルティカル――シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥトォォォォォォォォォォ!」
まだ僅かに距離はあるが、デバイスのトリガーを引く。
この瞬間までに溜められた魔力が、一気に解き放たれ――パイロンを飲み込む。
同時に、魔力に押し返されるように徐々に、段々速く戻されるゴスペル。
次の瞬間――大爆発。
その衝撃で吹き飛ぶゴスペル。
時覇は、リインと少女に駆け寄り、風除けとなる。
地下道は煙に覆われる。
そんな中、少女は煙が襲い掛かるまで時覇を見ていた。
一撃。
多少違うが母が言っていた、打撃系スタイルの理想系そのものだった。
いつの間にか、少女は時覇を『怖いけど捕まえなければいけない犯罪者』から『目指すべき目標』に変わっていた。
妹が、管理局のエース・オブ・エースと言われた、高町なのはを憧れた様に。
少女――ギンガもまた、目標となる星を見つけた瞬間だった。
何かに出逢う者たちの物語・外伝
第二部
魔法少女リリカルなのはTTFS
~二つの軌跡と確定した未来~
第三話:逃亡劇の中で
END
次回予告
パイロンを破壊した時覇たちは、イングランド研究所の地下通路に入り込む。
何とか通過し――少女と別れる。
そして、舞台はミッドチルダから、別次元世界へ。
そこは、もっとも治安が悪い世界だった。
次回、何かに出逢う者たちの物語・外伝
魔法少女リリカルなのはTTFS
~二つの軌跡と確定した未来~
第四話:果ては、悪しき地にて
デバイス無し! ってのは、キツイなぁ~。
あとがき
う、上手くまとめられた~。(汗
下手すれば、前後編だったよ。(汗
いやぁ~、何とかまとまった。
で、少女はギンガ・ナカジマでした。
ちなみに、予告は次の話のキーキャラになる人が言っています。
第四話目は、予告を。
で、ぶっちゃけ、次の回でクイントさん出そうかと本気で思いましたが、思い止まりました。(汗
ここで出しちゃうと、もう修正が効かなくなるので――主に全体図のプロットが。
なので、ここは自重しました。
では、次もお楽しみに。
制作開始:2007/9/14~2007/10/4
打ち込み日:2007/10/4
公開日:2007/10/4
修正日:2007/10/16
変更日:2008/10/25