誰にも判る訳が無い
それが判るのは……
終わりの鐘が告げ、ある程度の月日が経った時
いつも道理の道、当たり前となった風景。
その場所を歩く青年がいた。
「……誰かに、着けられてるのか?」
後ろを振り向かずに、ただ呟く。
後方の反対車線の歩道に、はやて・シグナム・リインフォース。後ろには、謎の人物が時覇の後を着けていたが――
「ぃっ……」
後方から、ゴツンという鈍い音と、小さな声が聞こえてきた。
どうやら躓いたか何だかで、電柱に頭をぶつけていたらしい。声からして、女の子だと分かった。
「ストーカーなのか、ドジッ娘なのか……、どっちかにしてくれ」
すでに着けられていると確信したが、あまりにも間抜けなため、徹底的に黙認することにした。が、気になる。
何かの揉め事に巻き込まれるのは、基本的に御免被りたいのがモットー。
「この際、裏道に入って巻くか……、いや、それだと相手が危ないし、俺のせいにされかねからな……」
故に、ドジッ娘ストーカーを、振り切る計算を始めるのだった。
時覇がいる反対側斜線の歩道に、はやて・シグナム・リインフォースⅡが様子を伺っていた。
「なあ、リインフォース」
呆れながら、訪ねるはやて。
(なんでしょうか、マイスター?)
こちらも、呆れながら問いに答える。
「あの人、たしかに高い魔力の持ち主だけど……、本当に、ラギュナスの人かな?」
さすがのはやても疑いたくなった。
時覇を追いかけている人物は、たしかに魔道ランクAAかAAAクラスだった。だが、行動が行動なだけに、何とも言えない衝動に立たされる。
「ですが、我々の目的は彼の確保です。あの人物に、魔法や他の事を見られてはマズイのでは? 高町なのはや主のこともありますゆえ」
なるべく悟られないように、二人を監視するシグナム。
(右に同じです。あの人物がラギュナスでなかった場合は、荒事に巻き込んでしまいます。ですから、なんとか引き離さないと……)
時空管理局・魔道ランクS兼戦技教官・高町なのはは、六年前の春の時は、まだ普通の小学三年生だった。
だが、ユーノとの出逢いをキッカケに、魔道士の才能を開花させていった。
そしてこの六年間は、大いなる活躍と武装局員の育成などに、多大なる活躍をしていた。
また、ヴォルケンリッターの主・八神はやては、第一級ロストロギア関連事件・闇の書事件の際に、魔道士としての才に目覚めた。
しかし、どちらもロストロギア関係で目覚めた才能であり、同時に悲劇を出逢うことになった。
現在、なのはは今、確保対象の時覇の世界は、本来魔法というものが無いことになっている。
つまり、管轄外の人間に魔法を見せる訳にはいかない。
たしかに、人為不足であるが、管轄外の人間を管理局に誘うわけにはいかない。
したがって、相手がどうあれ、今は時覇からストーカーらしき人物を引き離さなければならなかった。
「しゃあない……魔法を使って、上手く時覇さんから、あのストーカーを引き離すんや」
「で、主。作戦は?」
シグナムは、はやてに尋ねながら、レヴァンティンを何時でも発動できるように手に握り締める。
「う~ん……、なんかあらへんか、リインフォースは?」
何故か、リインフォースに話を振るはやて。
(え、ええ! そ、そんなことを言われましても……あ、いい考えがあります)
少々戸惑いながらも、考えが思いついたリインフォース。
「なんや、どんな方法なんや?」
(ビルの裏に引きずり込んで、グルグル巻きにしてほっぽっておくってのは?)
その人非道的かつ時代錯誤のやり方を、満面に笑みで言うリインフォース。
それを聞いて、固まる二人。
ちなみに、足も止まった。
(……冗談です、ごめんなさいです)
引き攣った笑いを浮かべながら、謝罪するリインフォースⅡ。
「そ、そうか……じょ、冗談やな」
顔が引き攣るはやて。
「リインフォース。冗談にも、もう少し考えろ」
少々唖然とするシグナム。
(はやて、シグナム、聞こえるか!?)
いきなりクロノの念話が飛んできた。
それを聞いたはやてとジグナムは、驚いて大声を出しそうになったが、何とか押し留めた。
(く、クロノくん、どうしたん?)
(どうしたも、こうしたも……なのはが、ラギュナスと名乗る男に捕まったんだ)
その言葉に、三人は言葉を失った。
(な……、なんだって……)
言葉を無くすはやて。
(あとヴィータが、やられたんだが――)
(なんだって!? 様態は!)
勢い良く怒鳴るシグナム。
(お、おちつけ、シグナム。大丈夫……擦り傷程度だが、軽い脳震盪を起こして気絶しているが、明日までは安静にしてなければならないがな)
(そ……そうか)
安心するはやてたち。
(ところで、対象の時覇は?)
思い出したかのように、言い出したクロノ。
(ああ、現在捕捉して、後を追っているが……厄介な事が発生した)
(厄介な事?)
(ああ、時覇を着けている者がいるのだ)
(着けている者?)
(そうだ。魔力も感じる……ランクはAAかAAAクラスだと考えていいが……なのはと主の事もある為、迂闊には手が出せないんだ)
(そうか……なら、尾行を中断して、なのはの救出に当たって欲しい)
(せやけど、誰か見てへんと――)
(たしかに。だが、なのはが一撃で倒した相手なんだ……数で何とか押し切りたいんだ)
少し考えるはやて。
(わかった。大至急、この近くを捜索してみる。ええな、ジグナム?)
(はい、主)
頷くシグナム。
(すまない。そっちに武装局員を十五名送るから、指揮は任せる)
(ほな、了解や)
そこで、念話は終わった。
三人は頷き合い、裏の路地に入って行く。
そこで、適度な所で周辺を見回して、人がいないか確認する二人。
そして、いない事を確認すると――
「このへんかな……リインフォース」
「はい、マイスターはやて」
返事をしながら、シュベルトクロイツから、出てくるリインフォースⅡ。
「レヴァンティン!」
「ユニゾン――イン!」
第三話:変局する状況……
再び時覇が歩く歩道では――
「…………」
「……はう……あぐ……ぎゅう~」
女ストーカー? は、電柱、壁、看板、溝にはまるなどで、喰らった時のダメージの呻き声? が、度々聞こえた。
「しかたない……何かあっても、悪く思うな、よ!」
時覇は、勢い良く裏路地に走りこんだ。
「 !? 」
女ストーカー? も、時覇のあとを追う。
時覇は、只管走った。
一度も振り向かずに。
何度も曲がり、同じところを一回、二回……とにかく我武者羅(がむしゃら)に走った。
そして、既に使われていなかった水路に飛び込み、トンネルに入って身を隠した。
その数秒後、足音がだんだんと近くなって、時覇の後を追いかけてきた女ストーカー? は、足を止めた。
「くぅ~、逃がしちゃった……」
肩と顔を落す、女ストーカー? らしき人物。
「すいません、逃がしました」
時覇は息を殺し、相手に悟られない様に、なるべく動かないようにした。
(何を言ってるんだ?)
様子を見たくなったが、場所がバレる可能性があるので我慢した。
「……はい……管理局と合流……はい……わかった。じゃあ、またあとで」
(携帯電話を使ったのか?)
「さてと……バルディシュ」
“はいはい”
(もう一人いたのか!?)
だが、神経を張り巡られて、気配を読んだが、女ストーカー? 以外はいなかった。
そして、光が放たれ――
何かが勢い良く飛び立った音が聞こえ、どんどん遠ざかっていった。
もう一度、気配を張り巡らせて、誰もいないことを確認してから、トンネルから出てきた。
「一体なんだったんだ?」
時覇は、ただ呆けるしかなかった。
公園を中心に、半径三十キロメートルの結界が張られていた。
ちなみに、この結界を張ったのはラギュナスである。
そこには、三、四十の光が、二つの光を取り囲んでいた。
その二つの光は、何度もぶつかり合い、吹き飛びあった……、いや、片方の光が一方的に吹き飛ばされていた。
青白い光――クロノが、至近距離からのゼロ距離射撃をしようとするが――
「 く! 」
逆に吹き飛ぶクロノ。
そのまま回りの光――武装局員たちの方に吹き飛んで、受け止められる。
同時に、武装局員たちから、心配の声が上がる。
「その程度か……クロノ・ハラオウン提督?」
灰色の光――ロングイが、悠然と空中に立っていた。
そして、ロングイの持つデバイス――チェンジング・インフィニティが、槍から大剣に変形した。
完全に変形を確認すると、腰を落とし、射抜く様な体勢に入る。
「いくぞ――鉄心両断」
“ザンバー・ストライク”
物凄い音を上げながら、チェンジング・インフィニティの刃に、風を纏い始める。
「くっ、ブレイズキャノン!」
すぐ体勢を立て直し、武装局員から離れるとクロノのデバイス――S2Uの先端から、光が放たれた。
「いい攻撃だが……まだ弱い!」
そのままロングイは、ザンバー・ストライクを放つ。
ブレイズキャノンごと、クロノを叩き斬った。
「ぐあああああああああっ!」
全員が驚いた。
「クロノ提督!」
一旦離れ、待機していた武装局員数名が、再び吹き飛んできたクロノを受け止めた。
「ご無事で!?」
「あ、ああっぐ!」
胸を押さえるクロノ。
「この程度か……ならば、あとはたかが知れるな」
ロングイは、ザンバーモードを基本形態の杖に戻した。
「来るか? 雑魚ども」
「ならば、私が相手をしよう」
後ろから、女性の声が聞こえた。
「たしか……ヴォルケンリッターの将、剣の騎士シグナム……だったな」
ロングイは、ゆっくりと振り返った。
「ふん……良くしているな。……先ほどは、私の仲間を倒したそうだな」
「仲間……クロノ提督、ではなく……ああ、あの闇雲に突っ込んできた鉄槌の騎士ヴィータのことか?」
記憶を探り、何とか思い出した感じであった。
「あの娘に伝えとけ……不意打ちの時の掛け声は、心の中で叫べと」
「……言いたい事は、それだけやな?」
後ろ斜め下から、声が聞こえた。
「 ん? 」
ロングイが、そちらを向く。
「詠唱終了……ヴィータに怪我させたお返しや! ――ラグナロク・ブレイカー!」
はやては、いつの間にかロングイの死角で、詠唱を終了させ、こちらを見るや否や、ラグナロク・ブレイカーを容赦無く放つ。
一筋の閃光がロングイに着弾、爆発する。
「あ、主はやて?」
目をパチクリさせながら、驚くシグナム。
「は、はやて? それは……やりすぎじゃあ……」
容赦無い攻撃に、唖然とするクロノ。
他の局員たちも、その場で固まった。
『は、はやてちゃん……一応、なのはちゃん救出が、最優先なのですが?』
エイミィは口を引き攣らせながらも、はやてに通信を入れる。
「あ……」
怒りに我を忘れ、問答無用の砲撃をぶちかました事に固まった。
『……はやて捜査官』
通信から、レティの声が聞こえた。
「は、はい!」
その場で直立し、冷や汗を流しながら敬礼をする。
『後で話があるので、任務が終わり次第、私のところに来てください』
「りょ、了解しました」
空中で背筋を伸ばし、敬礼をするはやて。
『マ、マイス――プロテクト・ウォール!』
緊急防御プログラムを作動させたリインフォース。
その次の瞬間――九発のディバインシューターが、真正面に飛んできた。
しかも、その元が未だに晴れていない煙からだった。
「くぅぅぅぅぅぅぅ……リインフォース!?」
『大丈夫です! ロングイ、未だ健在です!』
だが、煙は一向に晴れない。
「エイミィ!」
クロノが叫んだ。
『ちょっと待って!』
『エイミィ!』
モニターから、クロノの叫びが飛ぶ。
「ちょっと待って!」
エイミィが、もの凄いスピードでキーボードを打つ。
そして、煙のスキャンデータが映し出される。
「そんな!? ……ありえない、こんなこと」
エイミィは絶句した。
「どうしたの、エイミィ!?」
リンディが呼びかける。
「は、はい! スキャン結果、出ましたが……」
エイミィは、メインモニターに解析したデータを映し出した。
「こ、これは!?」
リンディは、悲鳴に近い声をだした。
その解析モミターの結果には、『高町なのは』と出ていた。
その頃、桐嶋時覇探索別働隊では、異様な雰囲気に支配されていた。
そこには、はやてたちと合流するはずだった武装局員たちが、転々と傷つき、倒れている。
さらに、ザフィーラは特に酷く傷つき、アレフに抱えられている。
そして、その光景を蔑んで見ながら、空に浮かんでいるフェイト。
「何で……何でこんな事をすんだい……フェイト」
その目線の先には、見慣れた防護服を着たフェイトが居た。
「仕事ですから」
満面の笑みを浮かべるフェイト。
「だいじょ……う、ぶで、すか?」
増援に来たシャマルは、この状況を見て固まった。
何がなんだか判らない状況が、シャマルの視界に広がっていた。
他の二人も唖然としていた。
「あ、シャマルさん。どうしたんですか?」
平然と答えるフェイト。
その言葉に、シャマルは怒りを爆発させた。
「どうしたんですかじゃないです! フェイトちゃん、これはどういう事説明してください!」
「ええ、簡単な事です。私が後ろからザフィーラを斬っただけですから」
当然のように答える。
シャマルは言い返そうとしたが、リバンに止まられた。
「落ち着いてください、シャマルさん」
宥めるリバン。
「そうですよ、シャマルさん。いい加減にザフィーラ特別捜査官を回復させないと、ね。こっちはリンバ執務官にまかせ――」
「お前も手伝え」
調子に乗って、楽な方を選んだカルナを、睨みつけながら猫摘みした。
「……はい」
小さくなるカルナ。
一応、リンバは、カルナの教え子である。
「では、お願いします」
シャマルは、すぐさまアルフ元へ行った。
「さて……いきなりですが、拘束させてもらいますよ……フェイト執務官」
睨みつけながら言うリンバ。
「そうね。たとえ、リンディ提督の娘であっても……容赦はしませんよ?」
デバイスを構えるカルナ。
「悪いけど、アタシも混ぜてもらうよ」
二人の後ろに、アルフが立っていた。
「いいの?」
少し曇った表情で、問い掛けるカルナ。
「ああ……何でこんな事したのか、理由を知りたいからね」
暗くなった顔が、少し怒りの表情に変わった。
「なら、決まりだな……とにかく追い込むぞ、二人とも!」
叫ぶリンバ。
「何時でも問題ないよ」
不適に笑うフェイト。
その言葉が合図となり、三人はフェイトに飛び掛った。
「いくよ、バルディシュ・ネオ・アサルトバスター」
“はいよ、マスターさん”
水滴が落ちて、空洞全体に響く。
「うう~、くせ~」
時覇は鼻を摘んで、下水道を移動していた。
外では、また誰かにつけられる可能性がある為、遊びで覚えた下水道の中を歩いていた。
そして、マンホールの下にたどり着いた。
壁には、『公園近くの路地』と、特殊な字で掘り込んであった。
「お……ここ、ここ」
鼻から手を離して、壁に固定された梯子を上っていった。
マンホールの蓋を開け、外に出る際、念の為、人もしくは警察がいないか確認してた。
前に一度、マンホールから出てくるのを見られて、追いかけられた事があったからだ。
その時は、下水道で巻いたが。
「はぁ~……やはり、下水道は臭いな」
などと、当たり前のことをボヤく時覇。
「ん、よっ――と……、さて、公園、公園っと」
時覇は手に付いた埃を払いつつ、軽い足取りで早歩きした。
だが途中で、不自然なことに気がつく。
家に明かりは無い。
車も通らない。
人の気配も無い。
それ以前に、虫の息吹すら感じない。
ただ感じるのは、上空から特殊な気配が多数感じ取れる事だけ。
そして、遠くの方から、何かの音が聞こえてきた。
「ヤクザ同士の争いか? ……いや、音からして……鋼の鳴る音か、この音は?」
微かに鋼の音はするが、ジェット機が飛んだような音も混じっていた。
その瞬間、背筋に何かが走った。
しかしそれは、寒気でもなく、ましてや恐怖から来るものでもない。
待ちに待った何かがある。
そう、本能が伝えていた。
だが不意に、時覇のグローブの水晶が輝いた。
その本能を否定するかのように。
第三話:変局する状況……・END
次回予告
異常な強さを見せるロングイ。
フェイトは何故、ザフィーラを斬ったのか?
いつの間にか、結界内に居る時覇。
そして……シグナムは、爆発に――
次回・何かに出逢う者たちの物語・外伝 魔法少女リリカルなのは ~二つの運命と螺旋に出逢う者~
第四話:二つの決断
に、ドライブ・イグニッション!
あとがき
第三話の改正版、完成!
で、もうすぐラギュナスサイドの第六話が半分完成したが、途中から書き直しかも。
矛盾しているから。
話に。
以上です。
相変わらずBBSやメールで批判を受け付けます。
制作開始:2006/2/20~2006/2/24
改正日:2006/11/29~2006/12/17
打ち込み日:2006/12/17
公開日:2006/12/17
修正日:2007/10/4
変更日:2008/10/24