何かに出逢う者たちの物語・外伝Ⅰ   作:ダークバスター

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注意:この話は、我がサイトのリリカルなのはSSと、ストライカーズ編(仮)のネタバレが含まれています。
   はっきりって、我がサイトの本編と矛盾が発生する可能性はきわめて高いので、ご注意ください。


追記:前書きに予告編で、本文に本編を記載したモノとなります




この日、俺は――機動六課の女性陣に殺されかけそうになっている。



























何故か、って?



























それは、ある昼下がり――気まぐれで溜まっていた有給を消化していた時だった。





























「へぇ~、新しい店ができたのだって?」
 俺――時覇は、何気にスバルに聞いた。
「うん。その店のケーキは、すぅごくおいしいのだよ! ティアも大絶賛だよ!」
 感心しながら、スバルの話に耳を傾けた。
 だが、これがあんな出来事を引き起こすとは……。
 あんな物、偶然でも作るんじゃなかった。



























 それから数日後のある昼下がり。
「最近思ったのだけどさ」
 と、皆が集まっているときに、俺は何気にこう言った。
「女性陣、太ったんじゃないの?」
 空気に、亀裂が入る音が聞こえてきた。
 その瞬間、ザフィーラと視察に来ていたクロノ、クロノに担がれたエリオ、たまたま遊びに来ていたユーノは、一目散に部屋から出て行った。
 その時俺は後悔した。
 俺も逃げればよかった。
 って、いうか、言うんじゃなかった。マジで。



























「このケーキから検出された成分の中に、極めて特殊なモノが発見された」
 その言葉に、女性陣から殺気と言う名の圧力が、俺に圧し掛かる。
 本当に、殺気だけで人が殺せる勢いだよ。
 それを見ていたクロノは、少し怯えた様に説明を続けた。
 その検出された成分の名は『シボウゾーカーン』安直かつ直球の名前である。
 だが、体内に入ると、本来なら排出されるはずの脂肪を体内に留めこませる性質がある。
 簡単に言えば、脂肪が付きやすい体質になる。
 俺がラギュナス時代に偶然開発した成分で、時空全土の女性を敵には回したくなかった。
 よって、速攻で処分した。
 が、どこぞの誰から拾ってきたのか、再利用する馬鹿が現れるとは。
 使った奴もそうだが、元を辿れば俺に行き当たるわけで……。



























「バルディシュ」
“イッ、イエッサー! ザンバーフォーム!”
 リボルバー式カートリッジシステムが、二回ほど唸りを上げる。
「レイジングハート」
“はっ、はい! エクセリオンモード!”
 こちらもコッキング式カートリッジシステムが、二発の弾丸を吐き出す。
 他にも、カートリッジシステムの鳴る音や、魔力の密度が散漫する。
 ハッキリ言って、怖いです。
 いくらなんでも、非殺傷設定された魔力攻撃でも、これだけくらえば死にます。
 ええ、死にますとも。
 何故か、って?
 その攻撃は全て――俺に向いているから。




























ラギュナスの長であり、技術開発に携わっていた俺――桐島時覇



























偶然できた産物『シボウゾーカーン』



























それを巡って起きた事件



























この人生で後悔した、数ある内の一つの出来事



























魔法少女リリカルなのはGaG



























第一後悔:デブ



























2007年



























公開予定!



























ホント……無暗に口にすることじゃないね。


























あとがき
 『gag』は文字通り、ギャグです。
 本気で書きます。
 ええ、書きますとも!
 ファンにはすいませんが、俺ロードを走ります!
 では。






制作開始:2007/4/27~2007/4/28

打ち込み日:2007/4/28
公開日:2007/4/28

修正日:2007/6/4+2007/7/20
変更日:2008/10/29


魔法少女リリカルなのはGaG(ギャグ編)
第一後悔≪クリック・オン!(予告編)/デブ(本編)≫


 

 あの戦いから四年後――新暦75年、機動六課が生まれた。

 なのは、フェイト、はやての三人が選んだ新人たちも加わり、事件へ立ち向かう日々。

 苦悩し、絶望しても、明日という光を目指し、立ち上がる新人たち。

 そんな日々の中での、ある日の出来事。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何かに出逢う者たちの物語・外伝Ⅰ――発生物語

魔法少女リリカルなのはGaG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 機動六課――ロストロギア、第一級捜索指定物・レリックの回収と、未確認機体の撃破が主な任務。

 四年前、ラギュナスが起こした事件――事実上抹消された事件である。

 ラギュナスとは――時空管理局の汚点であり、旧暦の遺産とも言われた、元管理局所属特殊部隊。

 主な目的は、時空管理局の裏のサポートと、法では裁ききれない罪人の処罰及び抹殺。

 しかし、時を重ねるごとに存在意義が変わり、すれ違いが発生し――対立してしまう。

 これにより、時空管理局・上層部は、ラギュナスをテロリスト集団として、世間に公表。

 それからラギュナスは、時空管理局と戦闘を繰り返すようなる。

 時には、次元世界を破壊。

 時には、時空管理局よりも早く救援活動を行う。

 時には、ロストロギアの回収・管理を行うなど、時空管理局と重なる部分もあった。

 目的は、時空管理局の打倒もしくは、無能だということを示すこと。

 そして、ラギュナスには、その目的に同意する者、己が利益のためなど、傘下に集まった。

 その中で、優れたものがリーダー、『長』と呼ばれるようになった。

 長の特別権限として、目的を自由に変更することができる。

 だが、一度目的を変更した場合、現長が何らかの理由で辞めない限り、決めた本人ですら変えることは許されない。

 最後に、長を自分の意思で辞める場合のみに限り、最後の特別権限を受けることができる。

 それは――ラギュナスの『永久の掟』というもの。

 ラギュナスが存在する限り、この永久の掟には、これから誕生する長ですら破る事は許されない。

 それと、自分自身の命が尽きるまでの間、前長として新長に対し、意見する事が許される。

 ただ、新長は全て前長に従う義務はないため、ほとんど意味の無い権限だと言える。

 時空管理局と対立してから、500年近く経ったある日の出来事。それは、ラギュナス解散及び時空管理局との、長い戦いに終焉を呼び込む出来事であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして――現在、新暦75年某月のある昼下がり……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第一後悔

デブ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 機動六課、ラギュナス分隊長――桐島時覇は、有給を消化するべく休暇を満喫しついる最中だった。

 正確に言えば、有給を取らされていると言った方が適切である。

 理由はいくつもあるが、もっともな理由は、人事部からの通達である。

 当たり前だが、時空管理局にも労働基準法がある。だが、この職は常に人事不足で、常に色んな事件が起きている。

 故に、有給はほとんど消化できない状況である。

 追加で言えば、結婚する前のクロノ提督の様に個人的に取らない物好きも入る訳で、有給が溜まる一方である。

 人事部も、頭を悩ませる一つの原因。

 で、桐島時覇は、2年近く有給を取らず、しかも人事部の追撃をことごとく回避していた。

 その間、墓参りなどは仕事の合間に行くなり、申請無しでの無断休暇などでしていた。

 だが人事部は機動六課、ロングアーチの隊長である八神はやて経由で、引導を渡したのである。

 これにより、桐島時覇と人事部の2年近くの戦いの幕が、ここに下りたのであった。

 それはさて置き――ともかく、やる事も無いので現在機動六課を徘徊している時覇であった。

 

「時覇さん!」

 

 廊下を歩いていると、後ろから声が掛かってくる。

 後ろを振り向くと、スバルが駆け寄って来た。

 彼女の服装は、外出用の服――彼女も、有給を取らされたのかと悟る。

 

「どうしたのだ、スバル――それは……ケーキか?」

 

 スバルの右手にある、ケーキらしき箱が目に入る。

 ただ、大きさから察するに、(目測で)ケーキ15個以上か、1、2ホールあるかないかの大きさがある。

 

「はいっ! 市街地の新しい店で、今大人気のケーキ屋さんなのですよ。これを手に入れるのに、開店3時間前から並びました」

「さっ……どこかのコミケか――いや、一夜あけが当たり前か」

「ええ、すでに200人くらい並んでいました。しかも、50人くらいが一夜あけっぽかったです」

 

 そう言いながら、少し凹むスバルと、あー、と唸る時覇。

 これから察するに、本当に欲しかったモノは手に入らなかったのだろう。

 そこで時覇は、何と無く尋ねる。

 

「一応聞くが、全員女性だよな?」

「はい、そうです」

 

 女性なのだから、せめて明け方くらいにしておけよ。などと考えが過ぎる。

 そこで、スバルが思い出したように、笑みを浮かべながら言った。

 

「よろしければ、ご一緒にどうですか? これから皆で食べるのですよ」

「いや、ここ数年甘いものにはご無沙汰だったから、ケーキ辺りになると甘ったるくて敵わん。すまないな――そうだ、アイツはどうだ? 勇斗は」

 

 ラジュナス4を背負う、若き戦士の名を上げてみる。

 スバルとティアナとは、現在、友達以上恋人未満の関係を築いている青年である。

 

「はい、ユウにも頼まれたので」

 

 その言葉に、時覇の方が下がる。

 

「あの馬鹿、女に行か――せるべきだな、この場合は」

 

 勇斗を非難しようとしたが、すぐにやめた。

 こういう場合は、女性の方が有利である。

 さすがの戦場を駆け抜けた男たちも、これには勝てない。

 まあ、例外もいるが、基本的には負けるのが普通である。

 

「あはははは」

「ふはぁはぁはぁはぁ。スバル、もう行ったほうがいいぞ。ケーキが溶けるし、不味くなるぞ」

「はい、それでは」

 

 スバルは走って、大広間へ向かった。

 故に、時覇は助かった。

 このあと起こる――正確には、明日の夜であるが――悲劇の幕開けとは気づかずに。

 

 

 

 

 

 ミッドチルダ中央街――リトルラガン裏手通り。

 ここは、占屋や骨董屋、情報屋などが並んでいる裏手通りで、一般人も利用するほど有名な場所である。

 しかも、お偉いさんから犯罪者までが利用する場所であるため、暗黙の了解が自然発生した事でも有名。

 そこに、時覇は歩いていた。

 多少悪びれた奴らもいるが、通り道の邪魔にならないように、隅っこでたむろっている。

 ゴミはちらほら見るが、それほどでかいゴミは落ちていない。比較的、綺麗な部類に入る。

 ついでに言えば、ここで犯罪は起きたことは無い。

 ある意味、安全な場所だと言えるが、余り長いはしないほうが良い場所でもある。

 治安は完璧ではないが、時たまだが揉め事はある。

 微妙といえば、そこまでの場所である。

 そんな場所を歩いていると、目的の看板が掲げられていた場所を見つける。

 そして、吸い込まれるようにドアを開け、店に滑り込んだ。

 職業柄というよりも、この瞬間に襲われる危険性があるため、素早く入るのがここでは基本である。

 

「時覇」

 

 店の奥から声が掛かる。

 老人臭い声であるが、列記とした20代前半の女性である。

 

「来たぞ。で、何かわかったのか?」

 

 店の奥――カウンターまで行き、両肘で寄りかかる。

 

「レリックの方はまだじゃが、面白い情報が入った」

 

 カカカッ、と、笑いながら言いつつ、カウンターの下から、あるモノを出してきた。

 それを見た時覇は、カウンターにツップした。

 思い出したくない思い出を思い出したからである。

 渋々起き上がりつつ、懐かしさを感じながら、あるモノを手に取る。

 

「こいつは……『シボウゾーカーン』じゃないか。こんなもんよく見つけたな、ってか、すでに破棄したモノがここにある?」

 

 感心から一変して、疑念に包まれながら答える。

 

「ラギュナス時代の若かりし思い出」

「勘弁してくれ。若かりしじゃなく、地獄の、だ」

 

 『シボウゾーカーン』の入ったビンを振りながら眺める。

 あの時は、本当に命が無くなっても可笑しくは無かった――いや、今生きているほうが可笑しいか。

 あの地獄を乗り越えられたのだから。

 そう鮮明に思い出した途端、全身に寒気が起こり、その時の嫌な予感が駆け巡る。

 

「おい……まさか――」

 

 外れてくれ!

 戦慄が走り、体は振るえ、全身から嫌な汗が噴出してくる。

 当たれば地獄。

 外れれば天国、ってか、大至急探し出し、データごと廃棄処分しなければならない。

 現物がある以上、どこかで量産されているのは明らか。

 だが、世界は無常で理不尽だった。

 

「うん、出回っているよ。しかも、すでに一般にも、な」

 

 満面の笑みで答える女性。

 終わった。

 時覇は、頭の中が真っ白になった。

 そして、そのまま地面につっぷしたのであった。

 しかし、本当の地獄はこれからであった。

 

 

 

 

 

「今日の訓練はここまで」

 

 あの日から二日後の夕方。

 なのはの終了宣言とともに、訓練は終わりを告げた。

 

「皆、大分慣れてきたみたいだね」

 

 満足そうに言うなのは。

 新人――スターズのスバルとティアナ、ライトニングのエリオとキャロ。そして、ラギュナスの勇斗と現在行方不明中の人間が一人。

 勇斗――羽山勇斗、なのはとはやて、スバルの父の先祖の故郷、地球出身。

 厳密に言えば、平行世界の地球出身と言う方が正しい。

 時覇もまた平行世界の地球出身であるが、こちらの場合は特殊なケースのため、説明が長くなる。

 が、これは別の機会に。

 

「慣れてきた、っと、言っても……ハードだな」

「あっ、アンタの……くんっれ、ん、の……方が、キツイ、は」

 

 呆れ口調の時覇対し、屍になりかけている勇斗が抗議の声を上げる。

 それに同意するように、スターズとライトニングの新人たちが、首を縦に振る。

 なのはやフェイト、ヴィータも同意のように苦笑する。

 

「そんなに厳しかったか? 普通だと思うのだが……」

 

 首を傾げながら言う。

 その言葉に、全員少し引いた。

 どう見ても、なのはがやっていた総合訓練時の三倍の量を、夕方の訓練だけでやらせたからである。

 ハッキリ言って、死んでも可笑しくは無い。

 だが、それでも生きているのは、しっかり勇斗の限界とさじ加減を見極めているからである。

 しかも、これをすでに一週間続けているにも関わらず、体のどこにも以上は無いと診断されている。

 訓練後のケアもしっかり行っている結果である。

 が、端から見ても異常なので、見ているだけで死にそうになる。

 

「まぁ、体が壊れてないのだから、それでよしとしようじゃないか! ……駄目か?」

 

 全員が苦笑しながら頷いた。

 

「とにかく、今日の訓練はここまで。明日は特別訓練をやるから、早めに、ってことで」

『はい!』

 

 なのはの言葉に、元気良く――と、まではいかないが、出せるだけの声で返事を返す新人たち。

 

「じゃあ、解散。フェイトちゃん、みんなを宜しく。時覇さんは、訓練内容について、簡単にじっくり話し合おう」

「うん、なのは」

「了解って、日本語が可笑しくなかったか?」

 

 笑顔で答えるフェイトに、首を傾げる時覇。

 原因は薄々判っているが、応じることに。

 新人たち、フェイト、ヴィータは、隊舎に戻っていった。

 ある程度見えなくなった時、なのはから切り出した。

 

「で、時覇さん」

「訓練のことだろ? あいつが望んだ事だ……これでネを上げるようなら、俺の下にいるより、なのはの下にいた方がいい」

 

 遠い目で、勇斗が通った道を見据える。

 まるで、勇斗本人の背中を見るように。

 これらか降り掛かる何かを見透かしたように。

 釈然としないなのはであったが、意図は何と無く判ったので、これ以上は追及しなかった。

 

「わかった。でも、訓練は見ている方の事も考えてね」

 

 念のために、もう一度釘を刺しておく。

 じゃないと、明日も同じメニューで訓練をする可能性が、非常に――いや、絶対にやるからである。

 

「了解、スターズの隊長さん。じゃ、データ整理が終わるまで、近くで待機しているぞ」

「うん♪」

 

 嬉しそうに声を上げながら、鼻歌を歌いつつデータ整理を開始した。

 

 

 

 

 

 データ整理も終わり、隊舎に戻ってきた二人。

 入り口でなのはと別れ、時覇は食堂へ直行した。

 食堂に入ると、エリオと勇斗がテーブルで何かを話し合っている。

 

「よう」

 

 手を上げながら、エリオと勇斗が座るテーブルへ行った。

 

「あ、時覇さん」

「ん、隊長」

「ああ、何話しているのだ?」

 

 椅子に座りながら尋ねる。

 

「はい、今回の訓練のことで、少し……」

 

 話しながら、何故か目線が泳ぐエリオ。

 勇斗がアイコンコンタクトで、気持ちを察してやれ、と投げかけてきた。

 察しはつく……理由は、なのはと同じか。

 そのアイコンタクトに、無言でうなずく。

 ただ追加で、訓練メニューの変更あり、と返した。

 勇斗も、無言でうなずいた。

 まさに、プロフェッショナルのやり取り。

 ただし、時覇は、なのは、フェイト、はやて、シグナムに。勇斗は、スバルとティアナに見抜かれてしまうのだが。

 その辺の詳しい話――とくに勇斗は、また別の話で。

 

「しかし、女性陣は毎度毎度遅いな。男性陣のことも、少しは考えてくれよ」

「あはは。ぼやかないでください、父さん」

 

 その言葉に、テーブル越しに少しこけた。

 

「エリオ……フェイトとは、正式なお付き合いもしてないし、結婚しろとも、一言も言ってないぞ?」

「え、でも、フェイトさんが、そう言えって」

 

 その言葉に速攻で念話を飛ばすが、向こうがシャットダウンしているのか、繋がらなかった。

 

「ちっ、フェイトの奴、完全にラインをオフにしてやがる」

「苦労していますね、隊長」

 

 にやにや笑っている、ラギュナス4もとい――羽山勇斗。

 未だに、好きな相手を絞り込めず、とんでもないことになっているのは否定する権利は無い。

 だが、勇斗もまた、同じ立場である。

 

「貴様とて、スバルやティアナのどちらかに絞りこめん貴様、だけ! には、言われたくないわ」

 

 別の話でと言ったが、簡単に言えば、二人は勇斗に好意を寄せている。

 だが、二人と釣り合う要素が無い、という建前を理由に、友達&仲間以上恋人未満を築き上げた。

 時覇も似たような状況ではあるが、事情が事情だけに、付き合ってくださいと気軽に答えられない。

 勇斗と建前、時覇は事情で逃げている。

 今の関係が壊れるのを恐れている。

 ただそれだけ。

 たかがそれだけ、されどされだけ。

 それだけが、人を、絆を、思い、考えを変えていく。

 言葉を力であり、言葉は思いを『言葉』という形に変化させたモノ。

 相手に告白。ひいては、永遠の――共に別つその時までの誓いをする。

 すなわち、人生の分岐点でもあり、今後を左右する。

 遊び半分な気持ちで、答えてはいけない。

 二人には、それを成しえる覚悟が出来ていないから、曖昧なままなのである。

 話は戻り――互いに睨み合いをしている勇斗と時覇。

 しかし、互いに目を瞑り、椅子に深く座り背を預けた。

 

『お互い様、だな』

 

 同時に声を出し、同じ事を口にした。

 似たもの同士とは、この事ではないだろうかと、エリオは思った。

 

『きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』

 

 どこからともなく、機動六課全体に悲鳴が上がる。

 いち早く突入したのは、時覇、勇斗、エリオ、フリードリヒ。

 今までどこにいたのだ、フリードリヒ。と、思ったが、どうやらテーブルの下にいたらしい。

 ともかく、複数の女性の声が聞こえた場所へ急行。

 

「グリフィス! 聞こえるか!?」

 

 時覇の顔、左辺りに魔方陣が展開され、その中央にモニターが表示される。

 時空管理局の技術力の結晶の一つである、通信回線。

 管理外世界97番の地球が、この技術を開発するには、まだ何百年後の話になる。

 

≪はい! 場所は――女性更衣室です!≫

「…………了解! 勇斗、エリオ、フリードリヒ! 敵は女性更衣室に潜伏しているそうだ、先行して牽制を!」

『了解!』

「ギャウ!」

 

 敵はいないと判りつつ、多少の犠牲はやむをえないと判断。

 よって、2人と1匹は、生け贄になってもらうことに。

 

≪あ――≫

 

 グリフィスは、否定の言葉を上げようとしたが、問答無用で時覇が回線を切った。

 

(悪く思うなよ)

 

 心の中で呟きつつ、先行する二人と一匹の冥福を、走りながら祈るのであった。

 

 

 

 

 

 で、言わずとも突入。

 デバイスを展開し、戦闘バリバリであった。

 しかし、そこに広がる光景は――男であれば、誰もが一度は夢見る光景が広がっていた。

 2人と1匹はその場で固まり、女性陣も固まる。

 見つめ合い、数十秒後。

 結果――

 

『きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』

 

 廊下からでも判るほどの魔力密度の増加を確認。

 念のためのシールド発動する、時覇。

 次の瞬間、

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「エリオぉぉぉぉぉぉぉぉのわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 雷音、爆発音、閃光音、衝撃音――が同時に上がる。

 二人は、隊舎を揺るがす爆発と共に、廊下に吹き飛ばされた。

 

「きゅいぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」

 

 フリードリヒは、全力で退避。

 あとで二人から裏切り者扱いされたのは、言うまでも無い。

 で、後から到着したフリをする時覇。

 その後、他の局員たちも到着。

 索敵結果、不審人物はいないと判明、女性局員――シャーリーに状況を確かめてもらうことに。

 他は周囲警戒と、吹き飛ばされた二名の手当て。

 で、出てきたシャーリーから一言。

 

「不憫ね……みんな」

 

 と、治療中の二人と、後ろの部屋にいる女性陣に哀れみな目を向けざるおえなった。

 しかし、時覇を含む男性陣は首を傾げ、女性陣は多少理解した。

 そこで、桐島時覇はどうリアクションを取れば良いのか、混乱してしまった。

 事情以前に、原因が自分にあることは薄々気が付いていた。

 心当たりは、2日前にスバルが買ってきたケーキ。

 あれにシボウゾーカーンが使われている可能性は、非常に高い。

 一日目は、それほど変化は無いが、問題は二日目からである。

 あれこれ考えている内に、近くにいた局員が怪しげに見てきたので、とにかく適当に言った。

 だが、これが拙かった。

 

「……ああ、体重が増えたのか」

 

 と、胸の所でポン! と、手を叩く。

 その瞬間――バインドが体全体に掛かる。

 

「うわぁ! ってか、首、首、首が絞まる! 絞まるから! ってが!」

 

 追加で、旅の鏡。

 リンカーコアがむき出しである。

 その言葉に、納得と恐怖が混ざった表情が、男性陣に広がる。

 女性陣からは、あきれと同情が混ざった表情が広がる。

 そして、そのまま入浴室へ引き擦り込まれていく時覇。

 普段は女性専用のため、男たちからすれば夢が広がる魅惑の場所。はいったらはいったで問題だし、犯罪になるからマズイが。

 しかし、今の地獄のオーラが漏れこんでいる場所へ、変貌を遂げている。

 結果は――目に見えている。

 故に、大体の人間は耳を塞いだ。

 

「うぁごがばぐげごどはぎぁみぐちてあっ――――!」

 

 こちらも言うまでも無く、隊舎全体に響いたのは言うまでもない。

 全員――助ける事無く、合掌したことも言うまでもない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから、14時間後の午前12時30分――機動六課、特別会議室・改。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これより、機動六課特別簡易裁判を執り行う」

 

 八神はやて隊長のからの一言だった。

 声と口は笑っているが、目だけが笑っていない。

 ついでに言えば、どす黒いオーラの炎と共に阿修羅像が背後に見える幻覚を起こしている。

 しかも、阿修羅像の目は、怪しく輝く。

 被告人――桐島時覇。

 問われている罪――女性の体重を増やしたこと。

 被害者――はやて、リインフォースⅡ、なのは、フェイト、カリム、キャロ、シグナム、ヴィータ、シャマル、スバル、ギンガ、ティアナの計12名。

 傍観者――機動六課の女性代表数名、ゲンヤ、クロノ、リンディ、レティ、アレフ、ザフィーラ、ヴァロッサ、他数名。

 そして、まずは八神はやて裁判長の指示が下される。

 

「判決――私刑、女性陣による集団リン――」

「ちょっと待てやぁ! 行き成り判決かよ! いくらなんでも弁解の機会はあるだろ、普通!?」

 

 時覇は、大慌てで撤回を求めた。

 反省文や罰掃除だったら文句は無かった。

 だが、このメンツからの集団リンチは、非殺傷設定でも確実に死ぬ。

 故に、命の危機から全力で抗議する。

 と、言うよりも、いきなり判決だったことに対してのだが。

 裁判は、本来裁判に当たるための前置き説明から始まる。

 そして、検事と弁護士の欠席の確認。

 その後、証人が現れる。

 という形らしい。

 だが、それを全てすっ飛ばし、いきなり判決なのだから、抗議の声は当たり前である。

 しかし、それを気にする事無く、次のスッテプに移る。

 

「フェイト・T・ハラオウン執務官」

 

 その言葉に、スゥ、と素早く立ち上がり、

 

「はい。今回の事件は、極めて悪質であり、多くの女性に苦痛を与えた事により、弁解の機会は不要となっています。従って、この判決には全くの違法性は――」

「大有りだから!」

 

 とんでもないことを口走ったので、言葉の途中でも被せる様に声を上げる。

 だが、バンッ! と、フェイトは机を叩いて真顔をこちらに向けて、指を刺して、

 

「ありません!」

 

 断言した。

 即答で。

 有名な某裁判ゲームの生きの良い声で。

 

「それでいいのか、執務官!?」

 

 もう、ノリが良いと言われるほどの言葉の流れ動作。

 

『異議無し!』

 

 リンディとレティが同時に叫ぶ。

 一休みも入らないまま、意見がすんなり通る。

 こちらもこちらで、有名な某裁判ゲームの如し。

 

「提督!? ってか、止めてくださいクロノ提督!」

 

 傍聴席のクロノの目を見て、助けを求むが……無言で目を反らした。

 見放された――と、思ったが、この流れを止める勇気ある者が現れるのなら、それは、真の無謀者である。

 空気を読めない人間ならば、断ち切ることは可能だろう。

 だが、この部屋に充満する質量を持った殺気、というべきものが体に巻きつくような感覚。

 女性陣の無言の圧力。

 歴戦の戦士――男どもは、肩を狭めて小さくなっているほどである。

 追加で言えば、一部の女性陣にはデバイスを展開済みや、鈍器や椅子などを露骨に装備している。

 この状況下での下手な庇い立ては、問答無用で私刑執行の巻き添えとなる。

 男女差別、下克上、そんな言葉はここには存在しない。

 ここでは、女が一番。

 あとはカス。

 時覇は、生きている価値すらなく、また死ぬ価値すらない存在。

 逃げるにも背を向けた瞬間、集中砲火を浴びることは、必然の極み。

 なんというか、無性に遺書を書きたくなってきた。

 これは生存本能――いや、生きた証を文章として残したいという、死への恐れ。

 こんなことで感じたくは無かったと悟る、機動六課ラギュナス分隊長、ラギュナス1、桐島時覇。

 そして、無言が支配する会議室・改。

 クロノに見捨てられ、うなだれていたがガチャ、ガチャという金属音が鳴り響き、顔を上げた。

 その瞬間、時覇は顔を青くしながら声を上げる。

 

「って、いうか、なんで皆デバイスを構えているわけ!? それ以前に今気づいたけど、いつの間に男どもいなくなっている訳!?」

 

 そう、いつの間にか、男性陣枠の傍聴席からひとっこ一人いなくなっていた。

 本当にいつの間に、である。

 まぁ、女性陣の殺気に耐えかねて、こそこそと出て行く姿が目に浮かんだが。

 そんなことよりも――私、桐島時覇は、ここから生きて帰れるでしょうか?

 いやむしろ……。

 そう思った瞬間、はやて裁判長が声を上げる。

 

「私刑執行――かかれ!」

 

 その返事が合図となり、各自デバイスや鈍器類を振りかざしながら、証言台に突撃を掛けてきた。

 周りから見れば俊足の如く。

 しかし、時覇には、全てがスローモーションになって見えた。

 そして、方向からデバイスやら魔法やらがピンポイントに飛んでくる中、ポツリと一言だけ呟いた。

 

「せめて、生かしてくれ」

 

 その言葉は、誰の耳にも届く事無く、撲殺音、爆発音、電撃音などなどの音にかき消されたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 で、それから3日後――機動六課、特別会議室。

 『改』が付いていたのは、簡易裁判を行うために、特別仕様に改装を行ったからである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このケーキから検出された成分の中に、極めて特殊なモノが発見された」

 

 その言葉に、女性陣から殺気と言う名の圧力が、俺に圧し掛かる。

 本当に、殺気だけで人が殺せる勢いだよ。

 それを見ていたクロノは、少し怯えた様に説明を続けた。

 その検出された成分の名は『シボウゾーカーン』安直かつ直球の名前である。

 だが、体内に入ると、本来なら排出されるはずの脂肪を体内に留めこませる性質がある。

 簡単に言えば、脂肪が付きやすい体質になる。

 俺がラギュナス時代に偶然開発した成分で、時空全土の女性を敵には回したくなかった。

 よって、速攻で処分した。

 が、どこぞの誰から拾ってきたのか、再利用する馬鹿が現れるとは。

 使った奴もそうだが、元を辿れば俺に行き当たるわけで……。

 

「――つまり、そのシボウゾーカーンというのが……」

「そぅや、エリオ。時覇が偶然開発した成分、シボウゾーカーン……まったく、ふざけるにも限度があるわ」

 

 少し怯えながら聞いたエリオの問いに、プンプン顔で答えるはやて。

 男性陣は怯え、女性陣は怒りのオーラが上がっている。

 だが、次の一言で鎮火した。

 

「限度に関しては、隊長たちにも当てはまるのでは?」

 

 包帯グルグル巻きのミイラ男もとい、ミイラ魔導師。

 

「うっ……まっ、まあ、お互い様と言うことで、な?」

 

 それに対し、平謝り。

 言わずとも、ミイラ魔導師に対して。

 三日前の集団リンチ後の次の日、シボウゾーカーンの情報が本部から届く。

 内容は――真犯人らしき人物と、サボウゾーカーン使用店舗の一覧。

 さらに、本来時間が掛かるはずの流通ルートと、販売元、ついでに製造場所まで特定済み。

 しかも、おまけでこれから広がると思われる買い手や、取引場所も特定済み。

 いたりつくせりの情報内容。

 早速はやては、各陸士部隊と連携を取るため、行動を開始――の前に、桐島時覇の治療を最優先とした。

 男性陣から簡易治療を受けていたが、本格的な治療を受けられたのは二日前。

 さすがは体魔武総覇術の使い手、拳の型と呼ぶべきかどうかは定かではないが、回復は早かった。

 が、微妙にふて腐れ気味。

 確かに、完全な元をたどればぶち当たるが、過程に関しては一切無関係である。

 

「この案件終わったら、勝手に休暇取らせてもらいますから」

「おいおい、事務処理は――」

 

 苦笑しながら、ラギュナス2――ゴスペルが言った。

 

「八神、ハラオウン、高町分隊長に回せば? いや、回せ」

「いや、それまず――」

「知るか」

 

 膝をつき頬に手を当てて、違う方向を向く。

 完全なふて腐れとなった。

 気まずくなる一同。

 さすがにやばいと思う勇斗だった。が、下手に言って状況悪化した場合、収集が付かなくなった厄介になるので黙る。

 

(ユウ、ユウ)

 

 スバルからの念話。

 その瞬間、苦い顔をする。

 内容は大体察しがつくからである。

 

(スバル……断るからな)

 

 こめかみを押さえながら、返事を返す。

 

(バカユウト、何とかしなさい)

(今度はティアかよ……勘弁してくれ)

 

 両耳を手で覆い、机に塞ぎこむ。

 ついでに念話もカット。

 最後辺りに、怒鳴り声みたいなものが聞こえてきたが、聞こえなかったことで片付ける。

 後が怖いけど。

 

「ま、まぁ、ともかくや。成分分析も完了したことで裏は取れたし、強制捜査の手続きも完了や。ほな、早速出動しようか」

 

 少し頬が引き攣りつつも、指示を出すはやて。

 引き攣る理由は、時覇の書類の量がハンパではないからである。

 

『はい!』

 

 それを知ってかしらずか、時覇以外返事をしたのであった。

 

 

 

 

 

 市街地、大通り――時空管理局陸士部隊によって、交通規制が行われていた。

 ここの所、事件らしい事件が起きていない場所での交通規制は、野次馬の格好の的となっていた。

 報道局の者たちも集まり、上空からはヘリが飛び交っている。

 

≪ここ、ミッドチルダ中央の市街地大通りの上空からお送りしています!≫

 

 逆三角形の真ん中に、レンズを思わせる水色の丸が描かれたエンブレムのヘリ。

 ミッドチルダ全土放送マイナーニュース番組、リッカスティルバード。

 信憑性は今一つのニュース番組であるが、行動力、汎用性が高い事が売りである。

 他のニュース番組では、少ししか扱わなくても、一週間に渡り放映する。などと、変わったことをする。

 だが、そのおかげで事件解決や、政治問題の不信点などが公となった場合が多い。

 ただ、公表してはいけないものを公表したり、逆に政治を悪化させたりなど逆の貢献をすることもある。

 よって、半分真実半分嘘で、好評を得ているという状況である。

 

≪私たちの下では、時空管理局の陸士部隊の方々による、交通規制が行われています≫

 

 カメラは、リポーターから地面に移り変わる。

 そこには、陸士部隊による交通規制の模様が写る。

 しかも、どうみても最近開店を向かえ、大人気のケーキ屋を包囲する陣形を取っている。

 

≪一応、一般公開されている情報では、食品の一部に極めて違法性の高い成分が使われていた。とのことで、その食品を扱っている店に強制捜査が入る予定となっています≫

 

 横からスタッフに渡された、小汚い紙切れに書かれた文章を読み上げる。

 そして、読み上げた途端、そのままポイ捨てした。

 

≪ん? あれは――最近設立された、機動六課のヘリコプターです! 見えますか、皆さん! カメラさん、向こう映して!≫

 

 その言葉にカメラが、リポーターが指差す方向を向くが、どこにもいなかった。

 さすがのカメラマンも首を捻った。

 目線でどこ? と、リポーターに問いかける。

 

≪あそこです! あの豆粒の!≫

 

 豆粒の発言に、カメラのレンズを絞る。

 絞る。

 絞る。

 さらに絞る。

 

「 あ 」

 

 カメラマンは声を漏らした。

 なんせ、言われたとおりに一機のヘリコプターが、こちらへ向かってきているのを捉えた。

 

 

 

 

 

「局長命令で、上空から降下して現場へ急行する。のを、カメラの前でやる」

 

 はやてが、フォワード部隊一同に伝達する。

 その言葉に、意図が掴めないで困惑する。

 

「時空管理局をアピールしろ、って事ですか?」

 

 勇斗が先陣をきり、質問する。

 

「そや。今期の受験者数が減っているのが、一番の原因や」

 

 なるほど。と、一瞬で理解する一同。

 それもそのはず。

 時空管理局は、主にロストロギアの回収と次元犯罪者の逮捕が主な仕事である。

 ロストロギアでは、モノによっては凶悪なモノもあり、それを回収する際亡くなる者がいる。

 次元犯罪者でも、似たようなモノである。

 ただ単に、捕まえるか、回収するかの二種。

 他にも別の安全な任務もあるが、代表的なのはこの二つ。

 どちらも死傷者が絶えない任務。

 しかも、犯罪は年々増加の一歩を辿りつつあり、人為不足は一層深刻となってきている。

 だが同時に、危険な仕事だということがより一層表面化している状況。その中で、ここらで若き者たちの活躍を見せて、より一層集まるように仕向けたいのだろう。

 

「しかし……上層部の考えは判るが、タイミングが悪いし、動機が微妙に不純だな」

 

 全身ミイラ男から、顔だけ包帯を外せる様になった時覇。

 

「仕方が無いよ。人為不足は、今も昔も変わらないから」

 

 フェイトがフォローするように、現状を言う。

 確かに、今も昔も変わらない。

 レティも、頭を悩ませている部分であった。

 

 

 

 

 

「ふぁ、くしゅ!」

 

 書類整理の最中に、くしゃみをするレティ。

 

≪大丈夫ですか? レティ提督≫

 

 モニター越しで、心配そうに見る新人のリーナス。

 彼女は、個人的にレティの手伝いをしている、物好きなことで本局でも有名な人物。

 

「ええ、大丈夫よ。誰かが噂でもしていたのかもね」

 

 コーヒーを啜りつつ、微笑みながらぼやいた。

 リーナスもまた、つられて微笑んだ。

 

 

 

 

 

 ヴァイスが操縦する、機動六課のヘリコプターは、現場の上空に到着した。

 下のほうでは、機動六課のメンバーが安全に着地できるように、人払いをきっちり行われた。

 

「じゃ、私から――」

「アタシが一番手に出る!」

 

 なのはの言葉を、上から重ねるようにヴィータが名乗りを上げる。

 さすがに目をパチクリさせる。

 

「そか、なら一番はヴィータからでええんか? なのはちゃん」

 

 なのはは、ニコリと微笑みながらうなずくが、

 

「先に出る」

 

 と、勝手に時覇が先陣をきって降下する。

 続いて奥のほうで座っていた勇斗が、勢い良く飛び出す。

 

(スバティア、また下で)

 

 スバルとティアナに、一方的な念話を送って降下した。

 

「ラギュナス4――羽山勇斗、出る」

 

 降下後に言うのは違反ではあるが、ラギュナス分隊に関してはとくにお咎めは無い。

 スバルトティアナから念話が飛んでいるが、勇斗は完全に無視した。

 その光景に唖然とする者、呆れる者、苦笑する者と様々である。

 

「アイツら……スターズ2、ヴィータ――出るぞ!」

 

 少し怒りマークを出しつつも、渋々降下した。

 それを気に、次々とフォワード陣が降下を開始。

 スバルとティアは、少し怒り気味で降下していった。

 降りたら勇斗を締め上げるのは、恒例行事みたいなモノになりつつある。

 そして、最後にはやて、ザフィーラ。

 

「じゃ、あとは宜しくや」

「了解、八神隊長」

 

 そう言って、はやてが降り、主の背を守るためにザフィーラも降りた。

 

 

 

 

 

 先陣をきった時覇が降り立つ。

 

「――――――――!」

 

 が、全身に激痛が走り、路面を転げ回る。

 待機していた陸士部隊の面々も、この行動には驚いた。

 

「って、隊長! 大丈夫ですか!?」

 

 続いて降下してきた勇斗が、時覇に駆け寄る。

 そして、ヴィータを初め、機動六課フォワード隊が降り立つ。

 しかし、途中で勇斗の上に影ができる。

 

「ん? ――のわぁ!?」

 

 そのまま確認する事無く、上空からの落下物の下敷きとなる。

 だが、その落下物は、

 

『ごめん、気がつかなかった♪』

 

 満面の笑みで謝罪する、スバルとティアナ。

 背後に見え隠れする、黒いオーラが怖かったりする。

 

(二人とも、カメラカメラ!)

 

 降下中のシャマルからの念話が飛んでくる。

 

((大丈夫です。ドジッ娘は、萌えのステータスらしいので))

 

 その言葉に、空中でこけるシャマルであった。

 そのあとすぐにシグナムに体制を立て直してもらい、地面に降り立つ。

 そして、最後にはやてとザフィーラが降り立つ。

 これで、完全なる機動六課フルメンバー集合である。

 ある意味、この光景は絵となる。

 ……女性陣の少し丸みを帯びた部分さえなければ。

 元々スタイルの目立つバリアジャケットの構造ゆえに……。

 結果、美少女から普通の女性に降格。

 カメラからは、堕落の声やため息などが聞こえてくる。

 

『……………………』

 

 その声を聞いた瞬間、女性陣は一斉に時覇を見る。

 先ほどまであった激痛は消える。

 その代わりに背筋に悪寒と通り越して、冷たい氷の刃が当てられている感覚に襲われる。

 これを一般的に、殺気と呼ぶ。

 エリオ、勇斗、ザフィーラにとっては、本当にいい迷惑である。

 とくにザフィーラは死活問題と成りかねない。

 

「と、ともかく、強制捜査を……」

 

 一足先に店の前に向かうが、やはり背後から来る圧力には、逃げ出したくなった。

 しかし次の瞬間、空気と流れが変わった。

 

「ふははは! 来たな、機動六課諸君!」

 

 その高笑いとセリフに、一同は戦闘体制に入る。

 全員での周囲警戒。

 

「シャマル!」

 

 時覇は、すぐさま激を飛ばす。

 

「はい! クラールヴィント、お願い」

 と、起動パスであるキスをする。

 

“はい”

 返事と共に、魔方陣を展開しようとするが横槍が入る。

 

「ふん! そんな索敵魔法なんぞ使わなくとも、こちらから出て行ってやるわ――とう!」

 

 その言葉と同時に、空に五つの影が生まれる。

 そして、背を向けながら原因のケーキ屋の屋根に乗り、思い思いポーズを決める。

 しかも、右から、黒、青、赤、黄、緑の順に並ぶ。

 それを見ていた一同は、目が点になった。

 そして、こう思ったことが一つになった。

 

(戦隊モノ?)

 

 そんな唖然を無視して、赤い変態は言葉を続ける。

 

「我らは――ごふぉあ!」

 

 赤が、セリフを言いながらこちらを向いた瞬間――吹き飛ぶ。

 

『れっ、レッド!?』

 

 慌てて赤い変態に、四人の変態が駆け寄る。

 周囲の人間は、もう何が何だか判らなくなってきた表情を浮かべる。

 

「誰だ!? 神聖な決めセリフの最中に先制攻撃を仕掛けた奴は!?」

 

 黒い変態が怒鳴り声を上げながら、周囲に睨みを利かせる。

 が、全員――とくに目が合ってしまった者は、全力で顔を横に振った。

 

「取り込み中すまないのだが――」

「何だ!?」

 

 黒い変態は、全力で声のする方を向く。

 そこには、時覇がいた。

 

「シボウゾーカーンって、知っているか?」

「知っているも何も、我々がこの店を開き、ケーキの中に仕込んだのだからな!」

 

 堂々と宣言する。

 次の瞬間、後ろから危険を感じた時覇は弾ける様に横へ飛ぶ。

 その次に、先ほどまで時覇がいた場所に、砲撃が通過する。

 店に直撃――大爆発。

 

『ぶぼあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ――……』

 

 5人の変態と悲鳴は瓦礫と共に埋もれていった。

 

 

 

 

 

≪……あ、え~と、何がなんだか……≫

 

 先ほどまで、下で起きていた状況を唖然と見ていたリポーターだったが、先の爆発で解凍した。

 カメラマンも、どう指示をすれば良いのか困惑する。

 少し経つと、悲鳴やら何やら聞こえてくるが、煙で良く見えない。

 

≪現場の近くのカメラって……私たちだけ!? なんで!? ……はぁ!? 経費削減って……いくらなんでも、あんま――≫

 

 カメラの映像はそこで途切れ、『しばらくお待ちください』というテロップが表示された。

 

 

 

 

 

 地面に伏せていた時覇が、恐る恐る顔を上げ、店の方を向くと瓦礫しかなかった。

 そして、起き上がり、砲撃の後を辿ると――杖をかざしたなのはが立っていた。

 それを見て悟る――ディバインバスターか、と。

 声を掛けようにも、何やら危険なオーラが見え隠れするため、誰も声を出せない。

 下手に出すと撃たれる。

 脳裏に過ぎり続ける。

 この沈黙に包まれた空間を打破したいが、打破するために案が無い。

 だが、その沈黙はあっさり破られた。

 

「ぶはぁ! いきなり何さらすのじゃい、ボケェ!」

 

 瓦礫を吹き飛ばしながら、起き上がる赤い変態。

 他の4人も、何とか瓦礫を退かして起き上がる。

 

「俺たちが何した――」

 

 そこまで言った瞬間、首に金色の鎌が当てられる。

 

「……俺たちが何をした、か、ですって?」

 

 一言――怖。

 野次馬や報道関係者は、恐る恐る逃げ始める。

 これ以上いたら巻き込まれると踏んだからである。

 しかし、交通規制している陸士部隊の方々には、いい迷惑である。

 なんせ、逃げることができないからである。

 

「れっ、レッドを放せ! この金色の死にがぁはっ!」

 

 黄色い変態の胸から、リンカーコアと手がむき出しとなっている。

 

「うふふふっ、少し黙ってもらえませんか?」

 

 旅の鏡を発動させながら言うシャマル。

 目が笑ってないが。

 他の3人も、デバイスを突きつけられて押し黙る。

 

「まずはいくつか質問します。『はい』か『いいえ』かで、答えてください」

「ちょっと待て! せ――」

 

 赤い変態の首に、金色の鎌が僅かに当たる。

 武器を下ろしてくれと言いたかったが、『はい』か『いいえ』以外の言葉は受け取らないらしい。

 

「まず一つ目。この事件の首謀者は、アナタ?」

「はい」

「二つ目、仲間はこれで全員?」

「はい」

「三つ目、手を組んでいる組織はある?」

「な――いいえ!」

「四つ目、シボウゾーカーンはどこで? 普通に話して良いわよ」

「はい、闇市で成分データを手に入れました」

「五つ目、ここ以外にも、シボウゾーカーンを使っている場所は?」

「取引先を揃えただけで、まだ発注は……」

「そう。……最後に、この成分を早急に体内から取り除くには?」

「……魔力エンプティまで、消費させることです。シボウゾーカーンの特性で、魔力に反応するらしいので。魔力が高い人の体内に蓄積された場合、とんでもないことになる、と」

「そう――はやて、命令」

 

 首から鎌を放すなり、ケンカキックをかまして吹き飛ばしながら言う。

 赤い変態は、勢い良く瓦礫に突き刺さる。

 

「リンディ提督とレティ提督、それにクロノ提督から権限もらっておいたから……だから、私刑執行や」

 

 満面の笑みのはやて。

 しかし、陸士部隊、機動六課男性陣、変態五人衆から見た笑みは、阿修羅の顔に見えた。

 そして、その言葉に機動六課女性陣は、次々とデバイスを構える。

 その光景に、名もなき――語っていないだけ――変態五人衆は、子犬のように震えた。

 いや、子犬という生易しい表現ではなかった。

 奥歯がガタガタ震わせ、中には失禁した変態もいる。

 それほどまでに、恐怖を覚えたのである。

 多分――いや、これから一生覚えるだろう。

 この光景を。

 この魔力の圧力を。

 この光を――決して、忘れることはない。

 足元には、大量の使用済みの弾薬。

 隊長各は、オーバーSランクで、何故かリミッター解除済み。

 副隊長ですら、ニアSランク。

 こちらも、何故かリミッター解除済み。

 後日、いつ限定解除したのか確認を取ったが、気合と根性で解除したという結論に達した。

 直接関係はないが、陸士部隊もとうとう逃げ出した後。

 それに気がついたエリオと勇斗は、ザフィーラと共に逃げようとした。

 だがすでにザフィーラは離脱済み。

 それに気がつき、双方は顔を見合わせて、大急ぎで走り出す。

 それに遅れて時覇も、後に続くが――

 

「バインドぉぉぉぉおおおおおおおお!?」

 

 色とりどりのバインドが、体中に絡みつく。

 しかも、そんなことはお構い無しに、エリオと勇斗は振り向くことなく走り続ける。

 

「エリオぅぉぉぉぉおおおお! 勇斗ぉぉぉぉぉおおおお!」

 

 それでも振り向くことなく走る。

 

「うぉい! せめて繰り向いてくれ! 頼むから!」

 

 が、そんな余裕などどこにもなく、ひたすら全力で走る。

 走る。

 走る。

 とにかく走る。

 元凶となる中心地から、少しでも遠くへ。

 

『ぎぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ――……』

 

 後方から複数の悲鳴が上がるが、振り向くことが怖かった。

 肉が殴られる音。

 骨が鳴る音。

 瓦礫に何かがつぶされる音。

 すり潰され、燃やされる臭いと音。

 とてもじゃないが、これ以上は表現したくはない。

 グロテスク系は、正直嫌いではないが好きはなれない。

 アニメや漫画の架空のもならギリギリであるが、本物は御免こうむりたい。

 命乞いや謝罪の言葉、恐怖による悲鳴も飛び交う。

 

「って、なんでお前らがこっちにくるのだ!? っうか、俺を盾代わりにする――」

 

 もの凄い寒気が、背筋を走る。

 本能が叫ぶ。

 逃げろ。

 逃げろ。

 逃げろ、逃げろ。

 逃げろ、逃げろ、逃げろ。

 逃げろ、逃げろ、逃げろ、逃げろ、逃げろ。

――ニゲロ!

 

「うわぁあああああああああああああああ!」

 

 気が狂ったように発狂し、バインドを振り解こうと暴れだす。

 だが、その程度で解ける代物ではない。

 顔を前に向けると――女性陣がデバイスをかざす姿があった。

 

「あ、ははっ……」

 

 乾いた声しか上げられない。

 一言――有給とって、当分バッくれるか。

 俺を盾代わりにしている変態五人衆は、全員失禁して気絶している。

 そんなことを知ってか知らずか、追い討ちを掛ける。

 

「バルディシュ」

“イッ、イエッサー! ザンバーフォーム!”

 

 リボルバー式カートリッジシステムが、二回ほど唸りを上げる。

 

「レイジングハート」

“はっ、はい! エクセリオンモード!”

 

 こちらもコッキング式カートリッジシステムが、二発の弾丸を吐き出す。

 他にも、カートリッジシステムの鳴る音や、魔力の密度が散漫する。

 ハッキリ言って、怖いです。

 いくらなんでも、非殺傷設定された魔力攻撃でも、これだけくらえば死にます。

 ええ、死にますとも。

 何故か、って?

 その攻撃は全て――俺に向いているから。

 

 

 

 

 

『ぎぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ――……』

 

 その瞬間、エリオと勇斗は耳を塞ぐ。

 だが、肝心の衝撃波が来ない。

 二人は走りながら振り向くと、時折小さな煙が上がる程度。

 まだ大丈夫。

 前を向き、全力で走る。

 

「うわぁあああああああああああああああ!」

 

 また振り向く。

 だが、何も起きてないが、逆にそれが恐怖を煽る。

 言うなれば、嵐の前の静けさ。

 再び前を向こうとした途端――振動。

 地面が揺れ、後方から爆発音と衝撃波が背後に襲い掛かる。

 衝撃波の影響で、エリオが前方に吹き飛んでしまう。

 勇斗も条件は同じだったが、体格のおかげで転げる程度で済むが、すばやく起き上がり、エリオに飛びつく。

 そのまま体を擦りながら着地。

 

「すっ、すいません! 大丈夫ですか!?」

 

 心配そう見るエリオ。

 

「だっ、大丈夫だ。お前が怪我したら、キャロが泣く――立てるか?」

「はっ、はい!」

 

 エリオが立ち上がると、一呼吸遅れて勇斗も立ち上がる。

 何と無く二人は後方を見ると、円形爆発ではなく光の柱が立ち上っていた。

 完全に固まる二人。

 そうすれば、あんな事が出来るのだろうか? と、言う言葉が互いの脳裏を駆け抜ける。

 勇斗はポツリと呟いた。

 

「……腹くくって、堂々と歩いて離れるか」

「……そうですね」

 

 互いに何かを悟り、再び背を向け堂々と歩き出した。

 巻き込まれようとも、その時はその時だと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして――あの恐怖の一日から、一週間後。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま~」

 

 疲れきった声を出して、実家の玄関を開ける時覇。

 

「あ、おかえ――ど、どうしたの?」

 

 妹――真里菜がリビングから顔を出し、玄関前まで出てくる。

 

「…………聞くな」

 

 その姿に、歴戦の戦士の面影は無く、ただ煤けて見えた。

 そして靴を脱ぎ、家に入る。

 兄の異様な姿に、真里菜は無意識に壁により道を空ける。

 幽霊の如く、フラフラしながら二階にある久しぶりの自室へ向かう。

 真里菜は、最後まで唖然と見続けた。

 

「ただいま~」

 

 玄関が開く音と、生みの親である母――桐嶋謳華。

 手には、何故か巨大な扇子――大盤之舞嬢(おおばんのまいじょう)があった。

 巨大の割には、大きさは100センチ、幅は20センチ。広げると、それなりの大きさを誇る。

 完全戦闘用に作られた、巨大扇子。

 しかし、今となっては、ただの不良撃退、粛清用と化している。が、基本的はファッションの一部となっている。

 

「あ、おかえり」

「ん? 時覇が帰ってきているの!?」

「うん、今二階に――って、ちょっと待って!」

 

 息子に会いに行こうと、階段を駆け上がろうとする謳華だったが、娘の真里菜に止められる。

 

「なに?」

「今は、そっとしておいたほうがいいかな~、と」

 

 兄を庇う妹の姿を眺める。

 どうやら、本当にやめて方がよいと悟る。

 

「判ったわ。夕食の後にでも聞きますか」

 

 その言葉に、うんうんと頷く真里菜。

 謳華も、うんうんと頷きながら、台所へ向かった。

 と、ここでチャイム。

 

「は~い、開いていますよ」

「どうも、時空速達運送・ジャンパーです。こちらに、サインをお願いします」

「はい、わかり――」

 

 そこで手が止まった。

 完全電子化の伝票に、どうサインすればいいのか判らないからである。

 なを、時空速達運送・ジャンパーに関してはスルー。

 

「あ、ここに印鑑をタッチして貰えれば構いませんので」

 

 伝票のある部分を指す。

 印鑑を電子化できる世界――便利である。

 

「母さん! 荷物受け取りに印鑑!」

 

 台所にいる謳華を呼ぶ。

 

「はぁ~――きゃあっ!」

 

 ガシャーン! と、音も廊下まで響いてくる。

 そのあと、転ぶ音、何かが割れる音、何かが倒れる音など、色々聞こえてくる。

 それに上乗せするように、黄色い悲鳴から痛そうな悲鳴まで。

 リビングの扉から、ボロボロの謳華が印鑑を持って出てくる。

 リレーバトンの様に受け取ると、その場に倒れこんだ。

 とにかく印鑑を取り出して、伝票に押す。

 その時の従業員の顔は、同情に染まっていた。

 

「仕事、まだあります?」

 

 その辺の男が見たら、一発で惚れそうな笑顔を向ける。

 とんでもない事になっている思われる台所の片付けを手伝わせるために。

 

「ありますよ……勘弁してください」

 

 サラリと流した。

 一応彼には、妻と子どもがいる。

 この10年間、真面目に勤務していたにも関わらず、リストラの危機にさらされている。

 何故、リストラになるのか検討がつかない。

 ここらで不祥事を起こすと、一気にリストラされてしまうのは必然。

 よって、当たり障りもないまま出て行った。

 

「…………っち」

 

 従業員が玄関を閉め、少し経ってから舌打ちする。

 労働力が確保できなかったからである。

 カオスのオーラが漂う台所に突入したいのは山々なのだが、母の手当てが先である。

 兄に手伝ってもらいたいが、ここは我慢する所。

 従って、夕飯は遅くなる。事だけは確かだった。

 

 

 

 

 

 腹の音が、部屋に鳴り響く。

 

「ん? ん~……ん?」

 

 顔を起こし、辺りを見回す。

 カーテンの隙間からは、赤い光が差している。

 時間は夕方。

 どうやら、部屋に入りベッドの上のねっころがった途端、寝てしまったらしい。

 ふと、下から物音が聞こえてくる。

 気になり、起き上がって部屋を出る。

 階段を下りて、リビングを覗くと――気配を消して、すぐ自分の部屋に戻った。

 厄介ごとは、これから一ヶ月間はコリゴリである。

 部屋に入り、再び眠ろうとしたが、通信が入る。

 通常回線は遮断していたが、緊急回線だけは切らなかった。

 一種の職業病である。

 

≪こちら、時空か――≫

 

 問答無用で通信回線を叩き切る。

 が、また回線が繋がる。

 

≪勝手に切るんじゃないのかしら?≫

 

 普段どおりのレティの顔が映し出される。

 

「レティ提督か……何のようだ?」

≪何時までボイコットするかと――≫

「一ヶ月」

 

 即答である。

 

≪少しくらい悩んでよ……≫

「断る。っーか、どうせ機動六課は、当分謹慎だろ」

≪もう解いたわよ……はやてからの伝ご――≫

「聞きたくは無い」

 

 耳を塞ぐ時覇。

 その行動に、ため息を漏らすレティ。

 一応SSランク保持者で、限定封印をしていない、機動六課の中で現最高クラス保持者。

 魔力にある障害を抱えているため、特別処置として、部隊の保有総合ランクの対象外となっている。

 彼がいる、いない、関わらず万年人事不足の時空管理局。

 全体から見ても、数少ない能力保持者の一人。

 彼がいれば、解決できる事件があると思うと、頭が痛くなる。

 

≪できればすぐに戻ってほしいのだけど……無理ね。だから、一週間以内には戻ってきてね≫

「…………了解」

 

 とりあえず返事だけはしておく。

 

≪じゃ、早い復帰を≫

 

 そこで通信は切れ、サークルモニターも消えた。

 ため息。

 空腹を思い出し、再び下へ行った。

 厄介ごとには関わりたくないと決めたばかりだったが、これが片付かないと飯は無い。

 仕方がって、渋々顔を出したが――

 

「なんでいるのだ、お前らが!?」

 

 そこには――何故か謹慎処分解除済みのはやてとザフィーラを含む、フォワード部隊全員がいた。

 

 

 

 

 

「では――いただきます」

『いただきます!』

 

 謳華の言葉に、リビングに大勢の声が上がる。

 テーブルには、豪華な料理――半分は時覇が、もう半分は真里菜と謳華が担当――が、並んでいる。

 誰にでも少し練習すれば出来る料理から、高級店の料理まである。

 オプションで、他国の珍味があるが、何を使ったのかは伏せるなり、偽ったりしている。

 具体的に一つ上げると、巨大ミミズのオリーブ炒め。

 ……まず、材料の調達から突っ込みがあると思うが、あえてスルー。

 そんなこととは露知らず、皆が食べていく。

 皆幸せそうな顔をしている。

 釈然としないので、完全に食事が終わってから、暴露すること決定。

 顔が青く染まるのが目に浮かぶ。

 などと考えていると、視線を感じ取る時覇。

 そちらを向くと、母がいる。

 

“ひ・み・つ♪”

 

 アイコンタクト。

 同時に悪寒が走る。

 逆らえば――死。

 黙秘をすることを選択。

 まだ死にたくはない。

 そのまま何事もなかったように、食事は進んだ。

 

「で、食事中だけどさ……改めて聞くが」

 

 時覇は箸を止め――深呼吸。

 次の瞬間、目をカッと見開き、部屋全体に響くように言う。

 

「なんで――お前らがここにいるのだ!?」

 

 バンッ! っと、テーブルを叩こうとしたが、まだ料理が全体で半分くらい残っているので、叩くことが出来なかった。

 この状態で叩けば、テーブルから何点か落ちる。

 皆の服や床が汚れる。

 お片づけ。

 そして、各服のお洗濯。

 この過程で、時覇に掛かる負担は――料理の後始末。

 続いて、全員分の着替えを用意するが、無い場合は自腹を切る。

 女性の下着はなしだが、罰の意を含め、服は全て手洗いで行う。

 結論――もの凄い負担がくる。

 以上。

 

「ふぇ? レティ提督から、何も聞いてへんかったか?」

 

 美味い料理に出会った感動に浸っていたはやてが答える。

 

「なに――あ」

 

 夕方ごろの通信を思い出す。

 仕事関係ではなかったらしい……だが、相手はあのレティ提督。

 事件を解決しても、次の事件を回してくるやり手。

 下手に用件を聞くと、仕事まで押し付けてくるからである。

 桐島時覇は、NOと言える人間。だが、中途半端なことは嫌なので、押し付けられた仕事でも最後まで完遂する。

 頼まれたら断れない性質なだけである。

 ……結局NOとは言えない人間だよな。

 後頭部を欠きながら、苦い顔をする時覇。

 

「あいかわらずやなぁ~、と、言いたい所やけど……なぁ?」

 

 愛想笑いをするはやて。

 やはり、一週間前の出来事を気にしている。

 その言葉に、女性陣は愛想笑いを浮かべあう。

 男性陣は一斉に味噌汁を、行儀が悪いが音を立ててすすった。

 時覇はこの光景に呆れて、ため息一つ。

 母と妹は、クエッションマークを頭に浮かべながら、首を捻り合う。

 

「ところで、頼みがあるんやけど――ええか?」

 

 子犬のような顔で聞くはやて。

 

「……当分、仕事タこるからな」

 

 根に持たないが、今回は完全に被害者なので機嫌が悪い。

 よって、問答無用で死刑宣告と呼ぶような条件を先に述べる。

 はやての仕事のデスクワークの半分は、時々と言いつつも大体時覇がやっている。

 

「はぅ……い、いいよ。それで頼みを聞いてくれんのやら」

 

 仕事の量、プラス反省文を考えると、頭が痛くなる日々が脳裏を過ぎる。

 

「ふん……で、用件は?」

「当分の間……一週間だけ、ここに止めて、な」

「帰れ」

 

 寝言は寝て言え。

 

「即答!?」

 

 本気で驚いている。

 しかし、今回ばかりは勝手が違う。

 

「一週間前のこと、忘れたのか?」

「はぅ!」

 

 言葉という名の拳が、はやての心を抉るように打ち込まれる。

 一週間? と、呟く妹と母。

 その言葉に、女性陣は愛想笑いのまま固まり、男性陣は黙々と料理を食べる。

 

「時に時覇」

 

 ダシャレとして捕らえられそうな言葉で呼ぶ謳華。

 

「ん――なに?」

 

 温くなった味噌汁を飲もうとしたタイミングで呼ばれ、口から味噌汁を放す。

 

「いいじゃない、たかが一週間」

「面白おかしいイベントを見たくて提示するな、母上――ん」

 

 謳華の企みを一発で見抜き、呆れつつ今度こそ味噌汁を飲む。

 そのタイミングを見計らっていたのか、謳華の目が怪しく輝いた。

 

「シグナムさんと一緒にお風呂」

「ぶふぅふぁ!」

 

 豪快に味噌汁を吹く。

 

『うわぁああっ!』

 

 目の前に座っていた、フェイトとシグナムが慌てて避ける。

 

「ごふっ、ごふっ――母さん!? ってか、フェイト、シグナム、すまん」

 

 二人に軽く平謝りするが――右肩が叩かれる。

 右を見ると――満面の笑顔のはやて。

 背後には、何故か風神が見える――なぜ?

 

「シグナム、あとで話があるから」

 

 その言葉に首を激しく立てに振る、ベルカの騎士にして烈火の将。あの名が高きヴォルケンリッターのリーダー。

 さらに左肩が叩かれる。

 左を見ると――微笑を浮かべるフェイト。

 

「少し、お話したいな」

 

 こちらの背後には、何故か雷神が見える――なぜ?

 パンッ! と、前から乾いた音が聞こえる。

 何と無く顔を向けると、頬を赤くしたなのは。

 

「はやてちゃん、フェイトちゃん、私も混ぜてよ」

 

 背後には――魔王ですら、裸足で逃げ出すような黒い何かが見える。

 各三人の横にいるスバル、ティアナ、エリオ、キャロ、勇斗が動くことができず、その場でガタガタ震える。

 ヴィータ、シャマル、リインフォースⅡも例外なく震える。

 シグナムは、夜に主はやてとの話に、顔を青くしながら体を振るわせる。

 ザフィーラは、獣の感で謳華と一緒に離脱済みだったりする。

 真里菜は真里菜で、のんびり兄の噴出した味噌汁の後始末中。

 脳裏にただ一言、こう過ぎる――恐怖、と。

 悪寒。

 絶望。

 失望。

 怒り。

 悲しみ。

 嫉妬。

 不条理。

 理不尽――そんな感情、感覚が押し寄せてくる。

 一週間前の出来事を持ち出して凌ごうと思ったが、これはこれ、と言って弾かれるのが目に見えた。

 よって、この三大最凶から逃げることはできないと悟るのは――早かった。

 掛かった時間――僅か3秒足らず。

 悟るより、諦めが適切だったかもしれない。

 そして、時覇は自分の部屋に引きずられていった。

 それから緊張の空気は消え、リビング全体に安堵の息が響く。

 

「隊長……生きていたら、今度なにか奢らせてください」

 

 上から異様な圧力を放つ場所に、ポツリと呟く勇斗。

 その言葉に同意するように、大体の人間が愛想笑いを浮かべる。

 それと、どこからともなくチーンという音が聞こえる。

 しかも近くからなので、何気に視線が向く。

 そこには真里菜がボソボソと御経を唱えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「若いことは、良きことかな」

「そうですね」

「ええ、本当に」

 

 何故かなのはの実家である、翠屋で屯っている謳華、リンディ、桃子であった。

 ちなみにザフィーラは、店の外でアルフとのんびりしているのであった。

 主役に合掌。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リインフォースⅡ(以後:リⅡ)「あの~、私のこと忘れていませんでしたか?」

 ごめん、ネタじゃなくて純粋に忘れていた。

リⅡ「ひどっ! 今すぐ追加文を!」

 無理、これ以上延ばすと、本当にキリが着けられなくなる。

リⅡ「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん! 作者のお馬鹿!」

 今度、メインで出してやるから。

リⅡ「本当ですか!?」

 ああ、面白おかしいイベントで。

リⅡ「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 皆さん! ――拍手でも何でも良いから、普通の話を書いてと送ってください! コメント付の同情票でもいいので!」

 号泣きしながら、自分から言うか?

リⅡ「アナタには判らないのですか!? メインの一人だったのに、急に脇役扱いされた者の気持ちが!?」

 ユーノだったら、説得力あっただろうに……

リⅡ「…………ユーノさん、ごめんなさい」

 合掌してやろうか。

リⅡ「はい」

ユーノ(以後:ユ)「まだ死んでもいないから! ってか、七話目とちょっとでて、八話目には――」

 またどこかでお会いしましょう~。

リⅡ「さよならです~、って、コメント付の同情票でもいいですからお願いします!」

ユ「僕のはな――」




あとがき
 ついに完成!
 一ヶ月近く掛かって書きましたが、真面目にやっていれば15日くらいには完成していたかも。(汗
 あ、でもバイトもあるからって、それは甘えだな、うん。
 で、現在(2007/5/23)において、過去最高枚数を誇る作品。
 ギャグになっているかどうかは不明だが、笑いがくれば良しです。
 もし、別の内容の話が読みたいのなら、拍手かメールを送ってください。
 次回に反映されるかもしれません――力尽きない限りは。
 ので、今後も宜しくお願いします。



 後半になって、カオス化してきた。
 で、終わり所が判らなくなり、ここで切りました。
 別に続けてもよかったのですが、マジで終わりなきSS――グダグダ話になるのは必然。
 それで、続きは別の話で語ります。






制作開始:2007/5/2~2007/5/23

打ち込み日:2007/5/23
公開日:2007/5/23

修正日:2007/5/26+2007/6/11+2007/7/20+2007/8/18+2007/10/6
変更日:2008/10/29
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