何かに出逢う者たちの物語・外伝Ⅰ   作:ダークバスター

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『明日、どうしようかな』編

 

 新暦75年7月□日もとい――7月6日

 昨日は大変でした。

 書類整理は、全て時覇さんがやってくれたそうですが……名指しの書類とかあったような……。

 でも、皆さんが帰ってくるまで、あと2日!

 何としてでも、持たせます!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何かに出逢う者たちの物語・外伝Ⅰ――発生物語

魔法少女リリカルなのはGaG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Ⅱ(ツヴァイツ)物語

リインフォースⅡの保母さん奮闘記

二日目:『明日、どうしようかな』編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 太陽は常に上がる。

 空に雲があるか、空気汚染で見えなくなるか、太陽自体なくならない限り、一定の速さで上がる。

 そして、一定の速さで沈んでいく。

 それは、当たり前のこと。

 大半の世界の、当たり前のこと。

 星もまた同じ。

 太陽が沈めば、空から大地を照らす、小さな光たち。

 大きな光は、月の光。

 星が集えば、満点の空。

 天に掛かる川となす。

 世界は違ぇど、空は同じではないだろうか?

 そんな空の下で、物語は語り継がれていく日々。

 描く出来事、人それぞれ。

 語り語られ――されど、世界は回る。

 時は動き続ける。

 止まる事無く続くこの世。

 

 

 

 

 

 機動六課、食堂の台所。

 蛇口から流れる水の音。

 その下には鍋がある。

 さらにその中にはザルがあり、麺が入っている。

 冷凍庫は開けられ、冷気が目に見える。

 そこから昨日用意しておいた、氷をガラガラとかき出していく。

 全部で14人分。

 調理中の勇斗は、熱い方で食べる。

 ただそうすると、子どもたちが騒ぎ出すので、適当な理由をつけてここで食べるつもりでいる。

 顔を上げ、柱に取り付けられた時計を見る。

 時間は、7時50分。

 隊長が起きる時間……だと思う。

 大きな汗を、1つ垂らしながら思う勇斗。

 

「仕事……大丈夫か?」

「なにがだ?」

 

 その声に後ろを振り向くと、

 

「トーレか、って、何でここに? 確か、他のナンバーズと一緒に局員旅行に連行されたんじゃなかったっけ?」

 

 コメカミを抑えながら、思い出すように言う。

 

「何、忘れ物をしたのでな」

「そりゃ、するだろうな。行く当日になってから聞かされたのだからな」

 

 どうどうとしているトーレに、苦笑する勇斗。

 

「ところで、何かあったのか?」

 

 その言葉に、額から脂汗がジワジワ出てくる。

 トーレはそれを察し、ため息を吐きながら首を横に振った。

 

「危険だと判断したら、すぐ連絡を入れるように。隊長に言っておいてくれ」

 

 それだけ言って、背を向けて歩き出す。

 

「判っている。ところで、そっちは?」

 

 出入り口の節に手を置きながら振返る。

 

「いつも道理だ」

 

 ふと、笑みを浮かべ、廊下へ消えていった。

 それを見送り、心の中で感謝。

 

「――って、作業、作業」

 

 と、料理が途中だったことを思い出し、慌てるように戻った。

 

 

 

 

 

 暗い部屋。

 カーテンの隙間から、僅かな光が伸びる。

 その光は、寝ている者の顔を照らす。

 

「――うッ……ん、ふぅん……」

 

 眩しいのか、ただ単に嫌なのか。

 寝返りをうって、体を反らす。

 そして、満足そうな顔になる。

 が、階段から駆け上がる音が大きくなってくる。

 しかし、寝ている男は気がつくことはない。

 何故か。

 寝ているから。

 そして、扉は開かれた。

 

「おっ、きろー!」

「起きろ、ゴラァ!」

 

 金色の髪と赤い髪の毛の女の子が、来年で二十歳(はたち)になる――正確には19歳だが――男の元へ飛び込んできた。

 しかも、タイミング良く男は再び寝返りを打つ。

 本能的に、ベッドから落ちて回避するためである。

 がだ、2人のちびっ子の方が早く――お腹の上にダイブ。

 鳩尾へ。

 しかも、目が覚め始めた瞬間。

 つまり、特大の目覚し、な訳で。

 今日も、住宅地に大きな声が響き渡るが、

 

「あら? 今日は少し遅いわね」

「でも、10分くらいの差よ?」

 

 などと、近所はいつも通りの出来事で通っていたりする。

 

 

 

 

 

 男の母親は、息子の部屋の方を見上げ、ため息をつく。

 この19年間、アニメとゲームにしか興味なかった息子が、本物に興味を持ってくれたことはありがたい。

 が、犯罪に走らないことを祈るばかり。

 パソコンゲームばかりやっていたので、現実と空想の区別がつくか心配だった。

 が、息子が蒼天の髪の女の子と、燃えるような赤い髪の女の子を――10歳も満たない女の子を連れてきたときは、反射的に電話を取ったことを覚えている。

 そのあと、2人の女の子の口添えもあり、誤解は解けたが……一週間ほど、ロリコン扱いした。

 おかげで、『ロリコン』という言葉が、トラウマになってしまった。

 蒼天の髪の女の子――リインちゃんから、言わないように念押しされた。

 が、学校で言われたらしく、発狂に近い行動を起こしたそうだ。

 それで、学校全体で、その言葉を禁句と指定したらしい。

 いや、本当に。

 その噂を聞いて連絡すると『はい』の2文字が、速攻で帰ってきた。

 そして、学校のプリントにも――『ロリコンという言葉を絶対に使わないでください。聞こえた場合、即刻強制退出を願います』――という文章があった。

 母親として恥ずかしいが、原因を作った者として、何も言えないのである。

 そんな事を思いつつ、料理を皿に盛り付けていると、バタバタと音が聞こえてくる。

 

「おばさん、アキ兄起きた~」

「起こしてきたぜ」

 

 と、ヴィヴィオとアギトがリビングに入ってくる。

 元気で何よりである。

 ちなみに、今のアギトはアウトフレームモード――リインフォースⅡの流量改造型――の姿である。

 大きさも、リインフォースⅡと同じくらいだが、少しだけアギトの方が背が高い。

 

「ありがとう、2人とも」

 

 母は微笑みながら答える。

 ヴィヴィオとアギトは、テーブルに着く。

 そして、2人にトーストと目玉焼き、ハムにキャベツを出す。

 飲み物は牛乳。

 まさに、代表的な朝食メニュー。

 カロリーから計算された、朝食メニュー。

 ベターと言われれば、そこまでだが。

 2人が喜んで食べているのだから、いいのだと思える。

 子どもの笑顔は、大人の喜び。

 世界は、常にそんな図式が成り立ち続ければ良いのだが、そうはいかない。

 生まれた時から、罪を背負う子などいない。

 そんなのは、ファンタジーゲームの設定だけにしてほしい。

 別にゲームにいちゃもんをつけるわけではない。

 ただ、世界は常に非常だと言いたいだけだから。

 今、この世界で子どもは虐待され、殺され、犯され、捨てられ、愛されない日々を贈らされているはず。

 そして、いつも大人の都合に振り回されるのは、子どもたち。

 力なき、発言力なき子どもたちの事など考えず、自分たちが良いという考えだけで進んでいく。

 真に子どもたちを思うのであれば、きちんと愛し、きちんと向き合い、きちんと話し合う。

 これが、親の当たり前の義務なのかもしれない。

 それでも、時は刻み続ける。

 世界は動く。

 人も動く。

 ただ言えることは……目の前にいる子どもだけでも、幸せにしたい。

 ただそれだけ。

 などと、いつの間にか大きな出来事を考えてしまった母。

 息子ではあるまいと苦笑する。

 

「息子、参上」

 

 と、最近日曜日でやっている特撮の真似をしながら入ってくる息子を見て、盛大なため息。

 いや、呆れたと言っても過言ではない。

 だって、娘同然の少女たちの前でやることか、ってか、そっちに連れて行くな。

 という手厳しい視線を送る。

 息子――彰浩(あきひろ)は、咳払いして誤魔化す。

 

「アキ兄、おはようございます」

「おはよ、馬鹿」

 

 丁寧なヴィヴィオに対して、手厳しい言葉を贈るアギト。

 これも、いつも通りの朝の挨拶である。

 あははと乾いた笑いを浮かべつつ、テーブルに着く。

 

「今日はパンか、珍しく……なくなってきたな」

 

 今まで朝食はご飯だったが、リインやアギト、ヴィヴィオが来てからは、パンが主流となった。

 最近気がついたことだが、リインとアギトは彰浩のことを理解しているご様子。

 この前、リインちゃんが大人の同人誌を見つけ、厳重注意をしていたのが印象的だった。

 しかも、同人誌の内容は『リリカルなのは』をベースにした二次創作。

 メインは――確か、シグナムとフェイトだったか。

 ……大分前に、一度ミンチにされかけた事を忘れたのでは? と、思うが、欲望に従ったご様子。

 で、アギトは彰浩を上手く使って、お菓子を出してもらっている。

 美味しければ、ルーテシアちゃんに持っていっている。

 息子も、多少集られているのは判っているが、何も言わずに出している。

 ……どうとれば良いのか、母親として気が気ではない今日この頃。

 

「ん? ヴィヴィオ、ここにジャム」

 

 と、彰浩は自分の右頬を指す。

 

「 ん 」

 

 釣られるように、左頬を触るヴィヴィオ。

 それを見て、苦笑する彰浩とアギト。

 

「逆だよ、逆」

 

 アギトがやさしく指摘しながら、変わりに拭ってあげる。

 多少きつい声だが、優しさはハッキリと判る。

 妹みたない存在だと、テレながら言っていた。

 微笑ましい朝である。

 馬鹿息子さえいなければ。

 と、息子――野山彰浩(のやま あきひろ)を邪険する母であった。

 

 

 

 

 

「で、今日も学校へ行きますか」

 

 身支度を終えた彰浩は、ノートパソコンが入ったカバンを背負う。

 そして、財布の中身を確認。

 今日は中古のアダルトゲームを購入するために。

 ヴィヴィオが着てから、ここの所まったく買っていないし、やってもいない。

 なのはやはやてからも、釘を刺されている。

 が、今日はなのはの元へ帰る日。

 アギトが多少うるさいが、モラルは守っている。

 あとは、賄賂を渡すだけ。

 計画は完璧だ――多分。

 さっさと改造データをネットから引っ張ってきて、さっさと見たいのを見て売ればいい。

 パソコンに情報は残るが、ソフトがなければ問題無い。

 まぁ、バレたらバレたで、女性軍からまた当分白い目で見られる日々だが。

 私刑執行付きで。

 前は、紫電一閃とライトニングザンバーを向けて、追いかけてきたを今でも鮮明に覚えている。

 未だに受けた場所が痛むのは、気のせいだろう。

 思い出して痛くなるのは、肉体に恐怖という記憶が刻まれた証拠なのかもしれない。

 そう思いつつ、部屋を出て、階段を下りていく。

 

「おい、彰浩」

 

 アギトが下から飛んでくる。

 今は、アウトフレームではなく、いつものデバイスモード。

 リインフォースⅡが『蒼き妖精』なら、アギトは『紅き妖精』である。

 青と赤。

 氷と炎。

 祝福の風と業火の炎。

 優しさと強さ。

 見ていた世界を変えた、2人の妖精。

 創造は創造。

 現実には起こらない出来事。

 しかし、今――目の前に、妖精は存在する。

 これを妄想と言って否定する者は、絶対いる。

 それは、自分の目で確認できていないからである。

 現実の定義とは『目の前で起きていること』。

 だから、目の前の出来事は、紛れも無い事実。

 始めて見た彰浩は、それを否定しない。

 いや、否定したくなかった。

 憂鬱(ゆううつ)だった――それなりに充実していた――日々を、根底から覆す存在が、目の前にあったのだから。

 自分の考えすら、否定する存在が。

 家族ですら、見方を変えた存在。

 お陰で、彰浩は『科学の魔法』に出会った。

 ただ、死に掛けたことがあった。

 大半はユニゾン解除後と、襲撃と訓練時に。

 それはまた、別の話で。

 

「どうした?」

「なに、アタシもついていこうと思って、な」

 

 その言葉に、アダルトゲーム購入計画は、一瞬で吹き飛んだ。

 諦めましょう。

 素直に感じたモノだった。

 

「別にいいが……見つかると騒ぎになるし、声を掛けられても、返せないからな」

 

 確かに、現実ではありえない存在である、妖精――ユニゾンデバイス、アギト。

 姿を消しても……想像はつくと思う。

 完全に、頭のネジが飛んだ人である。

 属に言う、痛い人。

 学校で発狂した時点で属しているが、これ以上変な属性はつけたくは無い。

 それでも学校に行っているのは、偉いのか?

 書いている作者も、一瞬だけ真剣に考えた。

 

「念話があるじゃないか」

 

 セオリーな解答。

 ここで捻りのある解答を出されても困るが、彰浩自身とくに問題はない。

 授業中に考えことは、普通みたいなものである。

 故に、思考切り替えは訓練する前から、ある程度できていた。

 何故できるのだと聞かれたときに、そのことを言ったら、勉強しろと言われた。

 当たり前である。

 

「悪い。念話できる状況の授業は、今日は無いのだ」

「え~、つまんねぇ~な」

 

 空中で胡坐をし、後頭部に両手を添える。

 器用と言うより、女らしさが感じない。

 萌えない。

 

「って!? って、燃すことはねぇーだろ!?」

 

 炎が飛んできて、髪の毛を僅かに焼く。

 髪の毛は、性質上燃えやすく、本来は僅かでは済まない。

 僅かで済んだ理由は、反射訓練のお陰である。

 あれは、死んだ方がマシだと思える訓練だった。

 お陰で強くなれたのだから、余り文句は言えない。

 

「と・に・か・く! 行くぞ、オラァ!」

「いっ、いて! 痛いから! ――ほら」

 

 アギトの空中蹴りコンボを後頭部に受けつつ、鷲掴み。

 アギト&リイン専用の大型胸ポケットに突っ込む。

 ちなみに、アギトは左で、リインは右である。

 が、時々定位置を交換する。

 表面上、仲が悪そうに写るが、意外と仲は良い。

 ただ、リインはアギトの不真面目な態度が嫌いで、アギトはリインの生真面目な部分が嫌いなだけである。

 靴を履く。

 

「いい加減、新しい靴を買ったら?」

 

 ボロボロの靴を見ながら言うアギト。

 中底は、すでに穴が開き、片方は分裂しかけている。

 

「ああ、昨日隠してあったアダルトゲームを売った資金があるから、今週の日曜日にでも行くわ」

 

 立ち上がり、玄関を開けながら答える彰浩。

 その言葉にため息が1つ。

 

「まだ隠していたのかよ。いったい何個あるのだ?」

「秘密だ。それに、やる時はお前らがいない時だけだ」

 

 玄関の横にある倉庫を空ける。

 そこに2台の自転車が置いてあった。

 1つは大きめのシティマウンテン。

 もう1つは……事故で亡くなった妹の自転車。

 高校2年の修学旅行先で、車に跳ねられた。

 その車は、そのまま逃亡。

 しかし、天罰が下ったのか、トラックと衝突して重傷。

 命に別状は無いが、両足切断。

 裁判結果は死刑。

 ひき逃げで、ここまで刑が重いのか?

 だがこの男、妹をひき逃げする前に、10人以上人を殺した凶悪殺人犯。

 殺した人の中に、お忍びで来ていた外交官の娘もいたからである。

 賠償金は規定額分貰えたが、それ以上はなかった。

 母は母で、ヴィヴィオ、リインフォースⅡ、アギトを自分の娘のように思っている。

 それはそれでいい。

 過ぎたことは返られない。

 変えてはいけない。

 変えれば、『今』の自分を否定する。

 だから、ひたすら前を向き続けろとは、言わない。

 時には振り返って、罰は当たらない。

 ただ、しっかりと一歩一歩、前に向かって進めばいい。

 それは、誰にでも当てはまること。

 だから、彰浩も進む。

 どこまでも。

 そして、自転車を路上に出して跨る。

 

「じゃあ――いってきます!」

 

 家族が家にいる、いない関係なく言う。

 出かける時の合言葉にして、一種の挨拶。

 最近は、言わなくなってしまったが。

 母に『家に人がいなくなる事を報せているみたいなものだから』との事。

 別に近所なら良いと思うが、今のご時世は危険に繋がることが多い。

 関係無いでは、済まされなくなってきた世の中にありつつあったと、実感した。

 だが、彰浩には別の意味もあった。

 我が家に対しての挨拶でもあるのだから。

 

「いってらっしゃい」

「いってらっしゃぁ~ぃ! 早く帰ってきてね!」

 

 母の挨拶と、ヴィヴィオの元気な声を背に受けながら、自転車のペダルを漕いだ。

 

 

 

 

 

 時空管理局地上部隊・機動六課、オフィス。

 そこでは、ただ1人黙々と書類整理をしている男がいた。

 

「一体、どれだけあるのだ?」

 

 主力メンバーの書類の量を見ながらぼやく。

 機動六課・ラギュナス分隊隊長、桐嶋時覇。

 時空管理局の三提督に並ぶ地位を持ち、地上本部のトップであるレギアス中将に意見できる人間。

 非公式であるが。

 だが、三提督の申請がない限り、名乗り出ることは無い。

 レギアス中将にも、意見しないでいる。

 この男の上に立っているのは、八神はやて二佐。

 男の現在の公式階級は、一等空尉。

 天と地の差の階級を持ち合わせながらも、使い分けることない。

 あくまで公式の記録の階級を名乗る。

 非公式は、緊急時か、守るべきモノを守るときだけ。

 もしくは、横暴やふざけた事を考える提督クラスの人間及び、最高評議会を黙らせる時だけ。

 今回は、確かに緊急ではあるが、部下を強制局員旅行に参加させた手前、権限を使うわけにはいかない。

 よって、地道に作業していく。

 が、中々減らない書類。

 この作業は嫌いではないが、飽きたのが本音。

 ウーノがいれば、作業効率が上がる。

 セインはこの作業は向いていないが、会話が弾むので飽きることは無い。

 何気にナンバーズと親しいのは、色々あったから。

 それ以前に、この機動六課にいることについては、また別の話で。

 

「ふぅ~、終わらないな……昼は、なのはの実家でいいか。育児関係の勉強にもなるだろうし」

 

 書類を整理整頓して、通信回線を開く。

 

「聞こえるか? リイン、勇斗」

≪はい、聞こえます≫

 

 もう何かを悟った顔のリインフォースⅡ。

 服が微妙にボロボロなのは気のせいだろう。

 後ろでは、何だか凄い事になっている。

 今思ったが、元に戻った時、この過ごした出来事を覚えているだろうかと心配である。

 下手すれば、数人立ち直れないかもしれない。

 ……記憶に残らないことを祈る。

 

≪感度良好、どうしたのですか隊長?≫

 

 昼ご飯の献立を考えている勇斗。

 もう、『お母さん』が似合うかも。

 いや、お父さんになっても安泰だな、こいつの家族は。

 

「昼は、なのはの実家の翠屋に行くぞ」

≪えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?≫

 

 予想通りのご回答。

 慌てふためく姿は、それなりに面白い。

 

≪正気ですか隊長!? あ、書類で発狂でもしたのですか?≫

 

 こっちは事態が収集後、特別訓練決定。

 彰浩を交えて、徹底的に弄り倒す。

 怨むなら、この馬鹿を怨めよ、彰浩。

 

 

 

 

 

「ふぇっくしゅ!」

 

 授業中に、大きなクシャミをする彰浩。

 しかも、クラスの視線を一身に……浴びはしなかった。

 数人ほど寝ているから。

 ついでに、これくらい少し驚かれる程度で、すぐに戻る。

 

「どうした? クーラーの効きすぎか?」

 

 男性教員が声を掛けてきた。

 寝ている奴は、時々起こすが基本的には無視。

 起こしても寝るから。

 

「いえ、ただのクシャミです」

 

 袖で口元を拭きながら、ノートを取る。

 そこで、左胸ポケットが僅かに動く。

 だが、そこには何も入っていない、ただの空間。

 そう、そのポケットには無意味で不自然な空間があった。

 

(大丈夫か? アタシがクーラーの温度を下げてくるけど?)

 

 アギトが念話をかけてくる。

 姿を消した紅い妖精。

 彰浩も見えないが、目に魔力網膜を展開すれば、半透明だが姿が見える。

 が、今は展開していない。

 

(いや、誰かが噂をしているのだろう。それに、自分で上げにいけばいいことだし)

 

 シャープペンを走らせながら、アギトに返す。

 

(ならいいけど……アタシが少し寒いから、上げてくれるか?)

 

 身震いしたのか、僅かに振動を感じる。

 64を思い出すが、あの振動よりは遥かに弱い。

 ってか、比べる価値すらない。

 それ程の天と地の差。

 少しくすぐったい程度である。

 

(判った)

 

 アギトの意思を尊重するが、自分も僅かに肌寒かった。

 汗をかいていたのもある。

 

「先生、クーラーの温度、上げていいですか?」

 

 軽く手を上げて、男性教員に尋ねる。

 

「ああ、別に構わんよ。ちょうど、俺も肌寒いと思った所だ」

 

 許可を得て、席を立ち上がり、クーラーのスイッチが取り付けられた壁に行った。

 

 

 

 

 

「準備は……こんな所か」

 

 時覇の目の前には、第一級特別戦闘装備と管理局の禁じ手の質量兵器が並べられていた。

 またの名を、時覇専用殲滅装備。

 簡単に言えば、単体での組織殲滅。

 ……簡単では無いか?

 それは置いて、何故、喫茶店翠屋へ行くだけに、このような装備を持ち出すのか。

 もう一度記載するが、機動六課の前線メンバーは全員子どもに。

 サポート陣は、強制局員旅行。

 特別保有戦力のナンバーズも参加。

 ラギュナス分隊にいるのは、隊長、副隊長(仮)、部下2名。

 しかし、部下1人は専門学生で、単位確保で学校に。

 副隊長は管理局の通信請負。

 部下は、子どもの子守。

 実質上、動けるのは隊長、1人のみ。

 これで呼び出しを受ければ、その組織、その犯罪者は哀れである。

 何せ、八つ当たりは必然と言えるのだから。

 地獄絵図?

 話題休題。

 ともかく、特殊装備を手早く取り付けていく。

 出し入れし易いか、簡単に確認。

 質量兵器――ハンドガンのカードリッジの出し入れ。

 腰に装備されたサバイバルナイフの位置を確認。

 

≪隊長、何やって……何ですか、その重装備?≫

 

 勇斗は、時覇の姿と目の前に置かれた重装備に、口元を引き攣らせる。

 引き攣らなければ、固まるか、唖然となるか。

 それ以外の反応もあるかと思うが、何かしらのアクションはある。

 

「建前だ」

 

 もの凄い建前である。

 言葉の。

 属に言う、言い訳である。

 が、この場合、言い訳も糞もないが。

 

≪はぁ。とにかく、急いでください。皆が待っています≫

「判っているさ。これを装備したら、すぐ行く」

 

 と、質量兵器――ジャックハンマーを持ち上げながら言う。

 ジャックハンマー、ショットガンに分類される銃器。

 全長787ミリメートルで、重量4.57キログラム。

 フィクションの世界では、とても好まれる武装の一つである。だが、現実の世界では国際法基準や、軍法基準に当たっている部分があり、忌み嫌われた銃である。

 魔力収納に仕舞えば問題無いが、管理局自体、質量兵器の使用が禁じられている。

 にも、関わらず、今から行く世界からも忌み嫌われた武器を持っていくのはどうかと思う。

 一応、管理局及び国連からは、特別許可は下りている。

 どうやって、地球の国連から許可を取ったのか不明でだが。

 

≪りょぅーかい≫

 

 呆れ口調で通信を切られた。

 

「使わなければ、使わないでいい」

 

 武器は、使ってこと真価を発揮する。

 銃は撃つ。

 剣は斬る。

 盾は防ぐ。

 だが、武器は戦う為のモノ。

 人を殺めることのできる、危険なモノ。

 使わないで済めば、それに越したことは無い。

 それは、永遠に叶う事の無い概念である。

 人が戦うことを、争うことをやめない限り。

 ジャックハンマーを、ドゥシン‘sの魔力収納に入れ、部屋を出る。

 外に待たせている、部下と子どもたちの元へ歩く。

 

「財布の中身は大丈夫、かな?」

 

 内心冷や汗をかきながら、一言呟くのであった。

 翠屋は、あくまで喫茶店なので、それなりに(多分)高い訳で。

 子どもたちは、育ち盛りの年頃な訳で。

 予想結果としては、財布が薄くなる可能性が非常に高い訳で。

 

「……ゴスペルに貸した金、今日中に少しでもいいから返してもらわないと」

 

 持ち手の少なさ――524円に、泣きたくなった。

 彰浩ではないが、少しばかり無駄遣いし過ぎた。

 

 

 

 

 

「ふぁっくしゅ!」

 

 本日二回目のくしゃみ。

 今は二時限目で、課題製作を行っている。

 本来は別の授業だったが、急病になったとのこと。

 アギトと念話をしながら作っていた。

 ちなみに課題内容は、ポストカード製作。

 イラストレーター、ポトショップを使って製作に当たること。

 キャラクターはイラストレーターを使い、背景をポトショップで製作。

 以外にも、立体感のある作品が完成した。

 内容は、アギトを模様した妖精が夜空を舞う絵。

 なるべく本人には、気づかれないように描いているつもりである。

 

(なぁ、彰浩。本当に大丈夫か?)

(平気だと思うが……熱は無いはずだ)

 

 鼻を手の甲で擦りながら、返事を返す。

 

(おでこ貸せ)

 

 と、アギトがポケットから出てきて、彰浩のおでこに自分のおでこをくっつける。

 彰浩は、不自然な体勢にならないように、考えているフリをする。

 

(ふむ……確かに、熱は無い様だな)

 

 少し釈然としないが、納得してくれたアギト。

 おでこから離れて、再び左ポケットの中へ。

 彼女のお気に入りの場所。

 しかし、不意に考えることがある。

 彼女――アギトは、融合型デバイス。

 デバイス――すなわち、『物』に分類される。

 彰浩は、人間。

 人間50年とはよく言ったものである。

 近年は70歳、80歳まで生きる人間は、生きる。

 さらに、100歳まで生きる人間もいる。

 最近(2007年時点)なのかは不明だが、人間の最大寿命年数は、150年らしい。

 細胞は、半永久的に崩壊と再生を繰り返す。

 だが、心臓は別である。

 心臓は血液を送るポンプであるが、皮膚細胞みたいに細胞分裂を起こさない。

 ゴムは使えば使うほど劣化し、色は黒ずみ堅くなっていく。

 すなわち、心臓はゴムと同じ。

 使えば使うほど、弱くなっていく。

 そして、心臓が動かなくなる。

 これを一般的に、『寿命』と呼ぶ。

 そう、人と物の寿命は違いがあり過ぎる。

 物の寿命は、確かに物によって変わるが、長いものでも1000年以上は存在することができる。

 しかし人間は、せいぜい7、80年が目安と考えても、あまりにも違いすぎる。

 だから、もし自分自身がこの世を去った時、彼女はどんな想いをするのだろうか。

 リインフォースⅡは、八神はやてのリンカーコアと密接な関係である。

 八神はやてがこの世を去れば、自動的にリインフォースⅡも、この世を去ることを意味する。

 だが、アギトは独立した存在。

 下手をすれば、永遠を生きることになる。

 それは、耐え難い苦痛ではないだろうか。

 不老不死。

 それは、誰しも喉から手が出るほど欲しがる物。

 それは、物語だけの架空の産物。

 だが、実際に存在したとして、使用した場合どうなるのか。

 自分だけがひたすら永遠を行き続け、家族、恋人、友人、知り合いがどんどん亡くなっていく。

 自分という存在を残して。

 それは孤独。

 耐え難い、心の苦痛。

 死にたくても死ぬことのできない体。

 人という種が滅びようとも、自分だけが最後の種として生き続ける羽目になる。

 自分の意思とは無関係に。

 それでも唯一救いなのは、彼女は『物』であって『不死』ではない。

 ただ、それだけの事と言えば、そこまでである。

 パソコンに表示されている作品に、アギトを重ね見る。

 いつか、こいつは一人ぼっちになってしまう。

 確実とはいえないが、理論的に考えればいきつく結果だが。

 腕を組み、背を椅子に預ける。

 ……馬鹿な事を考えるのはやめだ。それは、まだ先の話だ。

 ある程度時期が来たときに考えるべき課題で、まだ若造である自分が考えることじゃない。

 そこで考えを打ち切り、体を起こす。

 そして、ペンタブレットを持ち――アギトに似せた妖精を、アギト本人に書き直し始める。

 

(おい、これ……アタシ、か?)

 

 アギトの問いに答えず、黙々と作業を進める。

 完成した時、どんな顔をするのか考えながら。

 そういえば、リインもと騒がれるかもしれないが、次の課題の時にでも書くか。

 そう思いながら、ペンを走らせる。

 

 

 

 

 

 青い空。

 白い雲。

 美しく輝く緑。

 煌めく海。

 海水浴を勤しむ者。

 勝負を楽しむ者。

 ナンパする者。

 そのナンパを吹き飛ばす者。

 海には様々な人たちがいる。

 とくにナンバーズに声を掛けた男どもは、問答無用で痛い目にあっている。

 素直に下がるならば助かっているが、しつこい奴は以下同文。

 酷い場合は、ISを使わんとする勢いで仕留める。

 やり過ぎになりそうになった場合、ラギュナス分隊が慌てて止める。

 ロングアーチとは違って、サポートは通信から戦闘まで何でもこなす。

 ナンバーズ相手では、完全に止めることはできなくても、時間稼ぎは行える実力はある。

 しかも、ヒット&ウェイは、どこの次元世界の軍隊よりも素早い。

 全員が、気配と魔力反応を消すことができるため、レーダーなどの捕捉系に捕まることは無い。

 ただ、熱源探知系だと簡単に見つかる。

 こればかりはどうしようもない。

 熱は人間が動くために必要なエネルギーの1つ。

 訓練でどうこうできる問題ではない。

 話題休題。

 ここは局員強制旅行地、リゾート・アークディアスの海岸。

 それなり――ではなく、第一級リゾートで一流ホテルがある、高級リゾート地。

 局員旅行如きでは、まず来ることは不可能な場所。

 だが、ここに来ている。

 何故か。

 それは、犯罪組織ラギュナスだった頃、ここの第一級ホテルのオーナーがメンバーだったのでる。

 故に、良い場所を知らないかと相談した所、経営しているホテルを使ってくれとのこと。

 しかも、『タダ』で。

 だが、それは拙いので、局員旅行の旅費の分だけ払うことに。

 全然足りないのが現状であるが。

 ちなみに、本当の額は旅費の15倍から25倍くらい必要である。

 そして、ホテルの近くに海があり、その対に山がある。

 まさに、一流という名に相応しき場所である。

 確かに、色々な施設が揃ってこそ一流と言えるが、ここまで綺麗な自然が回りにあるのも一流と言える。

 そんな海では、別のホテルで止まる客など多くの人がいるが、車の如く大渋滞という訳ではない。

 互いが干渉しない程度に、場所が確保できるくらい余裕がある。

 

「う~ん、サイッ、コォ~♪」

 

 水着姿のクワットロが、日光浴を満喫している。

 他のナンバーズや、非戦闘員たちも、思い思い楽しんでいる。

 

「クワットロ」

 

 上から声が掛かり、体を起こして顔を向ける。

 

「トーレ姉さま。どうでしたか、そちらの方は?」

「ああ、中々楽しめたぞ。お前もどうだ?」

 

 水着姿のトーレが、ニヤリと笑いながら妹に勧める。

 

「私は遠慮しておきます」

 

 サングラスを掛けなおしながら、日光浴を受けなおす。

 それを見て、肩を竦めながら別の場所へ移動する。

 ウェンディは、サーフィンを楽しんでいるが、時折操作しきれず宙を舞っては海へ落ちる。

 ノーヴェは、海の家で料理をむさぼりつつ、ナンパを撃退。

 病院送りにしようと奮闘するものの、他のナンバーズやロングアーチ、ラギュナスの面々に止められているが。

 チンクはノーヴェとウェンディの監視役。

 目を離すと――とくにノーヴェが――問題が起こる確率が非常に高いとの事で。

 ウェンディは、ケガをしないか内心心配しているからである。

 サーフボードから、何度も投げ出されているのを見ていれば、心配しない方が可笑しい。

 普段はお堅いウーノも、それなりに羽を伸ばしている。

 他のナンバーズは、山へ行っている。

 海も良いが、山の方が好きとの事。

 そして、ロングアーチとラギュナスの面々も、思い思い楽しんでいる。

 スイカ割り――顔以外埋めされて、身動きが取れない奴らの近くで行う。

 まさに、恐怖の風物詩。

 オーバードライブが使える者は、とっとと発動して逃げているが、出来ないものは全力で叫んでいる。

 

「派手に楽しんでいるな……あ、ヴァイスが殴られた」

 

 ロングアーチの男性局員が呟いた言葉。

 オーバードライブを使えない1人の人間として、叫びも虚しく犠牲となった。

 が、彼は叫ばなかった。

 いや、正確には叫べなかった。

 理由は、口を塞がれていたからである。

 そこまで至った経由を説明――間違えて女性更衣室に入ってしまったという、主人公属性のお約束をやった。

 お陰で、アルトの許可の下に、私刑が行われたのである。

 被害にあった女性局員がやったのだが、最近勇斗から暇つぶしに剣術を習っているので、殺傷能力はそれなりに高い。

 よって――赤い何かが流れ出てくる。

 まぁ、剣術を習って無くても、それなりの強さで鈍器を使って殴られれば、血は出ます。

 で、悲鳴。

 当然の結果である。

 それを遠くで見ていたドゥーエは、やれやれと肩を竦める。

 

「姉さんや、注文の焼きソバですよ」

「ん、どうも」

 

 お金を渡しながら焼きソバを受け取り、その場で食べる。

 

「うん、美味いわね」

「あはは、ありがとうございます」

 

 それなりにゴツイおっさんが、笑いながら答える。

 本格的な夏はまだではあるが、それに勝る日ざしが彼ら、彼女らに照らされる。

 ……爆発が聞こえるのは、何故だろう?

 食べるのを中断して、遠くを見る。

 そこでは――バレーボールくらいの魔力弾使って、ビーチバレーを行っていた。

 どうやら、失敗すると爆発して吹き飛ばされる仕組みらしい。

 何か係員が笛を吹きながら近づくが、巻き添えを喰らい、一緒に吹き飛ばされる。

 呆れてモノが言えない。

 とりあえず見なかった事にして、焼きソバを食べるのであった。

 

「インドネシアにカツカレーは存在しないぃぃぃぃぃぃぃぃ――……」

 

 着水爆発。

 ラギュナス分隊、第2サポート班の副隊長の叫びだった。

 聞こえない、聞こえない。

 ちなみに詳しくは忘れたが、仏教の教えで肉を食べてはいけないという教えがある。

 ので、本場インド謳うカレー屋で、肉を使ったカレーが出た場合、その店は偽者だという事である。

 

 

 

 

 

 そして、山の方では、珍しくガリューと一緒に歩く、ルーテシアの姿があった。

 ちなみに、今来ている服は、麦わら帽子に白いワンピース。

 言うに問わず、ロリコンという不名誉な称号を得ている、彰浩が進めた服装である。

 これに関しては、母親も良いと太鼓判。

 ルーテシア自身も気に入ったらしく、出掛ける時は、この服を良く来ているのを目撃されている。

 

「ガリュー、どう?」

 

 その問いに、無言で頷くガリュー。

 今までの感謝の意を込めて、森の中を一緒に歩いていた。

 本当は、夕方まで自由で良いとガリューに進めたのだが、一緒にいる意志を見せた。

 ので、それ以上強制する事も無く、無言で気ままに進んでいた。

 こちらには、オットーにディード、ディエチ、セッテ。

 意外ながら、海で泳いでいそうなセインがいる。

 他にも海に興味が無い、もしくは好かないなど理由で、ロングアーチとラギュナスも何名かいる。

 海の方から爆発音が聞こえるのは気のせいだろう。

 森にいる一同は、そう決めつめて聞かないことにした。

 ただ、他の客は海の方へ飛んでいった。

 野次馬根性丸出しである。

 一部気にしないでいる者もいた。

 

「アキヒロ、何しているのだろう」

 

 その呟きに、ガリューは少し嫉妬した。

 が、彰浩に主であるルーテシアが色々と世話になっているので、その感情はすぐに消えた。

 ただ、ルーテシアを泣かせることをしたら、問答無用でヤル気なのは確かである。

 それはそれで、ルーテシアに怒られるのである。

 ……時と場合と内容によるが。

 

「セッテ! ターゲットがそっちに!」

「任せろ!」

 

 不意に左側から聞こえてくる声。

 セインとセッテみたいである。

 

「ディエチ、ネット弾!」

「無理。魔力規制があるから使えない」

 

 ディエチの正確無比の砲撃による、ネット弾による確保が行われるはずだったようだ。

 だが、ここはリゾート区。

 魔力規制が掛かる結界が張られ、一般人同様となっている。

 ただし、念話などの私生活関係の補助魔法には、とくに規制は掛かっていない。

 飛行魔法は別であるが。

 ともかく、何かを捕まえようとしているのだが、未だに捕まらないらしい。

 しかし、戦闘機人がISを使えないと、ほとんど一般人と変わらないご様子。

 まぁ、身体能力が平均より高いだけである。

 

「…………」

 

 ガサゴソと茂みが鳴り、叫びと悲鳴が飛び交う。

 日ごろ無関心に近いルーテシアでも、興味を引いた。

 戦闘機人が苦戦する相手が気になった。

 だが、知らん振りして数歩で足が止まる。

 また歩き出すが、数歩で止まる。

 人造魔導師とは言え、所詮は年頃の子供。

 気にならないのは無理な話である。

 結局、好奇心が勝ち、ナンバーズの声がする方へ向かう。

 茂みを掻き分け、ルーテシアの目に飛び込んできたのは――女性の下着を被った変態がいた。

 女性だけど。

 

「ふふふふふぅ……こんなお子さまみたいな下着を履いているなんて、だめじゃないセッテ」

「余計なお世話です!」

 

 顔を真っ赤にしたセッテが、勢い良く突貫するものの、あっさりかわされてしまう。

 デバイスが使えれば、攻撃やけん制の幅が増えるのだが、それも規制されているので使えない。

 憤りを覚えるセッテだが、彼女には勝てない。

 いや、ナンバーズ全員が一同に相手しても勝つことはできない。

 元、組織ラギュナスの戦技教導総隊長、ラギュナスナンバー24。

 長である時覇を含む、ラギュナス全体の戦闘技術の基本を教えた女性――イーチス・クララナ。

 ちなみに、旧名はガドライド。

 故に、ラギュナスの部隊にいる全ての人間の師匠と言える。

 ただ、彼女以上に強くなった者たちは結構いるが、気にしていない。

 想いを貫き通すには、最低でも彼女自身を超えなければならないと、公言していた。

 現在は魔法が無く、治安がしっかりとしている管理外で一児の母をやっている。

 本当に時折であるが、管理局かラギュナス分隊から依頼を受けては、戦技を教えている。

 夫と子どもには、魔法のことは話していない。

 そのため、出掛ける時は友人の家に泊まってくると言い、2、3週間は帰ってこないのは当たり前。

 それが原因で夫婦喧嘩をするが、長である時覇が仲裁に行き、夫とタイマンで話し合った。

 それもまた、何度目かの別の話。

 何度目かのともかく、今は変態戦士と化してしまったイーチスを如何にかするべきであるが、今の戦力では不可能である。

 理由はいたってシンプル――現在ナンバーズは、彼女から戦術のノウハウを学習中。

 つまり、イーチスは彼女たちの癖を良く知っているからである。

 2日3日で、弟子となった者たちの癖を見抜けなければ、ラギュナスの戦技教導総隊長は務まらない。

 ラギュナスは、それほどアクが強く、見極め切れなければ変な方向へ成長してしまう。

 その結果、本当の実力を生かせない、もしくは殺してしまう可能性が非常に高い。

 よって、長期間、短期間関係無く、僅か数日以内で弟子になった者たちの癖を見抜く必要がある。

 それは一般的に言えることだが、ラギュナスは違う。

 ラギュナスは、良くも悪くも、何らかの能力が特化した人間が集まる組織。

 たとえば、トイレ掃除が非常に上手い。

 たとえば、全次元世界の紙を見ただけで、種類と生産地を言い当てることができる。

 たとえば、魔力値だけでSSSランクいく。

 などなど、戦闘に無駄な事でも、それらを持った能力保有者に勝つことは、容易なことではない。

 ただ、その特化された分野で勝負した場合に限りますけど。

 その分野が、戦闘と全く関係なければ、足手まとい。

 その足手まといを解消するために、この戦技教導が誕生した。

 旧暦時代は、戦闘能力が全員高かったので、戦技教導しなくてもよかった。

 だが、近年モラルが低下しつつある様に、戦士の質が低下し続けているのである。

 旧暦では、ラギュナスの中で最低ランクは、AAランク。

 しかし今は、Bランクが最低ランクとなっている。

 その代わり、接近戦や遠距離がSランクなど、どこかだけが特化された戦士しかいなくなりつつある。

 今の時代は、それを求めているのかもしれないが、ラギュナスの掟により認める訳にはいかない。

 掟が一つ――ラギュナスは常に最強を歌わなければならない。

 無茶苦茶な言い分の掟ではあるが、打倒管理局を掲げていた以上、当たり前の言葉。

 組織ラギュナスの時は苦労したが、今は時空管理局所属ラギュナス。

 掟に縛られる必要性は、どこにも無い。

 よって、ラギュナスでない彼女は、依頼を蹴っても問題は無い。

 ただ、管理局自体武装局員の質が悪いので、依頼があれば飛んでくる。

 というのは建前で、純粋に先生をやっているのである。

 もし、学校の教師への道があれば、この魔法の道へ来なかった。

 学生時代、それなりに地位があった男を振ったことから、全てが狂い始めた。

 決まっていた進学先から、急な変更があった。

 合格から不合格への。

 しかも、合格内定通知が着てから、3ヶ月以上経ったあとに。

 何故と聞くが、向こうからは手違いだった。間違いだった。の、解答しか帰ってこなかった。

 納得ができなかった。

 間違いが起こらないよう、厳重に何度も確認を行った上で郵送されてきたモノ。

 それが、3ヶ月経ってから問題が発覚したなど、スキャンダルである。

 その後、親が裁判を起こすために裁判所へ手続きに向かった。

 そして、帰ってきたら、

 

「諦めて、別の学校にしなさい」

 

 そう言われた。

 あんなに真剣な顔で出て行ったのに、帰ってきたら幸せそうな雰囲気をかもし出しながら言ってきた。

 それからは、自分で動いた。

 妨害があろうが、無かろうが、関係は無い。

 ただ真実を知りたい――それだけだった。

 だが、無職は家にも世間的にも拙いので、滑り止め感覚で他校を受けたが、面接で不合格。

 仕方なく、他校も併合して何件か受けたが――全部不合格。

 場所によっては、面接すら受けさせてもらえず、門前払いを喰らった。

 明らかに可笑しい。

 異常の一言しか、頭の中に無い。

 今から職を探すにも、ほとんど無いので派遣アルバイトすることにした。

 だが、回ってくるバイト全てが、下請けか、女性では無理そうな土木関係の仕事。

 あからさまに、他の仕事があるにも関わらず。

 結局、仕事を辞めて、家も出た。

 親のスネをかじりたくないのではなく、何かを知っているにも関わらず、何も教えてくれない母とは一緒にいたくない。

 僅かな資金と私物。

 雨の中、傘をささずにさ迷っている中で、高級車が彼女のスピードに合わせるように横につく。

 彼女は足を止めると、車から高校時代に振った男が顔を出してくる。

 

「いい気味だな」

 

 その言葉に、全てを理解した。

 それなりに地位のある人間が出来る技にして、権利という名の力。

 この男が黒幕。

 これからの人生を狂わせた男が、目の前にいる。

 だが、それ以上何も言わずに、車は去っていった。

 怒鳴り声を上げようとしたが、逃げられた以上、何も言えない。

 近所迷惑である。

 不意に涙が出てきた。

 今までの努力が無になった事への悲しみか。

 この世に絶望した結果なのか。

 気がついたら、高い所にいた。

 しかも、建物の屋上で、手すりや金網も無い。

 放心状態になったのか、それとも死にたいという願望が強かったのか。

 踏み出すには、少し高めの段差を上れば、あとは前に倒れるだけ。

 全ての法則に身を任せれば終わる。

 見えない死神に導かれるように、段差に手を掛けた時、人生を変える切符が舞い降りた。

 

「人生、捨てるのは早すぎるのではないか?」

 

 イーチスは、その場に振り返る。

 フードを被り、ローブに身を包んだ者がいた。

 声からして男だと判った。

 しかし、いつの間に。

 だが、男は言葉を続ける。

 

「力が欲しいか?」

「…………」

 

 イーチスは無言のまま。

 

「復讐したくはないか?」

 

 再び問いかける男。

 

「在り来り過ぎて、どうでも良くなったわ」

 

 笑いを浮かべながら、イーチスはその場に座り込み、段差に寄り掛かる。

 

「この世界を変えたくはないか?」

 

 イーチスは、空を見上げる。

 男との言葉遊びには付き合っていたくはないが、多少は気が紛れる。

 目に雨が当たる。

 イーチスは目を瞑り、顔を下げて目を擦る。

 雨の水が取れて視界が開くが、雨が当たらないことに気がつく。

 止んだのかと錯覚するが、周りからは雨の音。

 顔を上げると雨は降っているが、男がいなくなった。

 そんな事は気にも留めず、再び空を見上げ、絶句する。

 そこには、傘になるように男が横のまま浮いていた。

 唖然とした。

 

「もう一度問う。力は欲しくないか」

 

 その言葉に、自然と笑いがこみ上げてきた。

 そして――高笑い。

 夢を見ているのか、それとも現実なのか。

 判らない。

 判らないが、一つだけ確かなことがあった。

 

「力は――いらない」

 

 力を使えば、私をこの様にした連中と同じとなる。

 それだけは嫌だった。

 だから断った。

 

「復讐したいけど、力でやったらアイツと同じになるから」

 

 ハッキリと言った。

 男は、イーチスの前に降り立ち――お姫様抱っこする。

 イーチスは驚くが、とくに暴れたりはしなかった。

 何と無く心地よかったから。

 

「……別の世界に行かないか? この世界とは決別して」

 

 その言葉に、イーチスは躊躇い無く頷く。

 再び男は、イーチスを抱えたまま空へ舞い――消える。

 この世界から、イーチスという女性はいなくなった。

 まぁ、この男が今のイーチスの夫であるが。

 それから、色々な経由を経て、今のイーチスがある。

 ……今やっている変態行為は、前師匠の影響なのかもしれない。

 話を戻して――そのイーチスたちのやり取りを無言のまま、眺めていたルーテシア。

 ガリューは半場呆れ、首を横に振った。

 そして、ルーテシアから一言。

 

「夫が見たら何とやら」

 

 子どもの言う言葉ではないが、イーチスにとって痛い言葉である。

 しかし、そのままとんでもない爆弾を投下する。

 

「あと、変態おばぁタリアン?」

 

 その言葉に、完全に固まるイーチス。

 何故かナンバーズたちも固まる。

 その瞬間――ガリューがルーテシアを抱えて飛び立つ。

 本能が叫んでいる――危険と。

 それも、第一級警戒態勢クラスの警報が。

 ナンバーズたちも、そろそろとその場から離れていく。

 その場でプルプル震えるおばぁタ――もとい、イーチス。

 活気溢れていた森は、今や夜の静けさと貸している。

 虫の鳴き声すら聞こえない森。

 透き通る空。太陽は顔を出し、遮る雲は疎ら。

 海は光の反射で輝きを増し、それを利用する人々の活気は増す。

 なのに、森だけが静かになっている。

 異様な存在と化している森の中心に、元凶がいる。

 その元凶は、今は俯いている。

 そして、断続的に何かを呟く。

 そう――笑うかのように呟く。

 本能から湧き出て自然に呟く。

 

「……――ふぅ、ふぅ、ふぅ、ふぅ――」

 

 勢い良く顔を上げる。

 目は赤く染まり、全身が黒く見えた――バーサーカー、いわゆる狂戦士である。

 この場合は…………変態、が、前に付くのだろうか?

 それと同時に覇気を放つ――こちらも、負けず劣らずの勢いである。

 それ以前に、覇気だけで逃亡した者たちを範囲に収め、捕捉する。

 もう何でもありと言った状況である。

 

「み・つ・け・た」

 

 それだけ言った瞬間――その場から消えた。

 疾風が舞い上がる。

 地面に生えた草は宙を舞い、木から生えた葉は飛び散る。

 その疾風の目の前に来れば、細切れとなり、塵と化す。

 それは神風と呼ぶべきか。人の手で起こせる風ではない。

 しかし――彼女は神ではない。

 今の彼女は……………………変態狂戦士なのだから。

 

 

 

 

 

 リゾート・アークディアスの海岸近くの森で、女性らしきと悲鳴と発狂、悲鳴にならない悲鳴が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

「 む 」

 

 パソコンを使って作業していた彰浩の手が止まる。

 

(どうした?)

 

 アギトが声を掛けてくる。

 視覚誤認の魔法を使って、彰浩の頭の上に寝そべっている。

 男で髪の毛を時々しか洗わない人間もいるが、彰浩の場合は毎日洗っているので問題は無い。

 

(いや、ガリューの声が聞こえたような気がしたのだが……気のせいか?)

 

 周りを見渡すが、今は確か別次元の世界へ入っているはずなので、聞こえるのは可笑しい。

 本来は何かあったと思うが、特に危険なモノは感じなかったので、今回はスルーしておく。

 むしろ、しなければ何かに巻き込まれている可能性が非常に高い。ので、今回念話の回線は隊長格以外遮断してある。

 

(いや、それ以前にアイツ喋れてのかぁよ!?)

(ああ、視線で会話しているから。ちなみに声は、こちらで適当に設定した)

 

 ちなみに声の質は、渋い男性系の声である。

 けして、今(2007年現在)話題の? 小安ボイスではない事は記載。

 

(何でもありだなぁ~)

 

 完全に呆れ口調のアギト。

 まぁ、当然と言えば当然である。

 

(ははははぁ。作業再開、再開)

 

 と、彰浩は再びパソコンと向き合った。

 それから数分後にチャイムがなる。

 

「よし、号令掛けろ」

「きりぃーつぅ、れぇい」

 

 そこで言葉は終わる。

 

「ありがとうございました」

 

 誰も言わないので、彰浩が言う。

 それを機に、各自片づけを開始する。

 

「おつかれさん」

 

 先生も、自分の片づけを始める。

 彰浩も作業していたデータを保存し、使用していたソフトを落とす。

 それを確認した後に、パソコンを落とす。

 このご時世なので勘違いは起きないと思うが、パソコンを下に落とす訳ではなく、電源を切る意味である。

 教科書やノートを纏め、シャープペンや消しゴムを筆箱に放り込んで、それらを持って席を立つ。

 教卓の前辺りで、先生の方を見る。

 

「ありがとうございました」

 

 もう一度、恒例の挨拶をする。

 

「はい、お疲れさぁん」

 

 こちらを見て、返事を返す。

 そして、そのまま教室を出て、すぐ横にある階段を下りる。

 この校舎は5階建てで、現在5階から降りている最中。

 なを、屋上の出入りが可能で、バスケができるようになっている。

 ついでにエレベーターもある。

 が、エスカレーターは無い――当たり前である。

 エスカレーターのある学校があるのなら、ぜひ1度見てみたい。

 そして、階段を降りて3階の廊下に足を運び、教室に入る。

 荷物を置いてから、再び廊下へ。

 その際、財布の中身を確認する――うん、あると肯く。が、アギトがいたことを思い出す。

 1階の廊下で販売している売店を諦め、コンビニへ足を運ぶ。

 

(アギト、何が食いたい?)

(えぇ~と……ジュウシィ特製中華まぁん!!)

 

 その言葉に彰浩は固まるが、すぐに再起動して歩き出す。

 おもむろに懐から財布を取り出して、中身を確認。

 なを、アギトが言った『ジュウシィ特製中華まん』は、普通の肉まんより1.5倍の大きさ。しかし、使っている材料が高級品なので、1個525円(税込み)するのである。

 現実の世界でも、(2007年)現在260円を超えた額の肉まんをコンビニで見たことが無い。

 ちなみに、その260円肉まんは、ファ○リーマートで販売中との事。

 俺はカロリーメイル(チョコレート味)を頂くか、カレーまん付で。

 と、彰浩とアギトのお昼は過ぎて行った――彰浩のお昼のご飯に関して、少々お怒り気味だったりする。

 なんせ、カロリーメイル2本入りと、カレーまん一個――計210円で済ませているからである。

 

 

 

 

 

 打って変わって、ここは平行世界の地球。

 時空管理局やミッドチルダへ移動できる次元世界である。

 ちなみに、先の彰浩のいる世界もまた地球であるが、地球の平行世界である。

 平行世界――パラレルワールドとは、ある世界(時空)から分岐し、それに並行して存在する別の世界(時空)を指す。当然ながら、いわゆる「四次元世界」や「異界」などとは違い、我々の宇宙と同一の次元を持つ。並行世界・平行世界とも呼ぶ。並行宇宙や並行時空といった呼称もよく使われる。

 で、こちらの地球は、なのはの実家――翠屋がある世界。

 その海鳴市が一望できる丘に、魔方陣が展開される。

 次元世界でも、もっとも親しまれている魔法式、ミッド式である。

 その上に、数十人の子どもと2人の男性が立っている。

 そして、魔法陣が消えると、子どもたちが散るように広がって辺りを見渡す。

 思い思い個々に騒ぐ子どもたち。蒼いロングヘアーの少女を除いて。

 学校の先生の如く、皆をまとめようとするが、中々纏まらない。

 それどころか、大騒ぎになる一方である。

 それを見て微笑む2人の男性であったが、片割れ――時覇が口を開く。

 

「そろそろ静かにしてやれよ」

 

 その言葉に、子どもたちは騒ぐのを止めて、時覇に注目する。

 大体の視線が集まったところで、ある1点を指差す。

 そこには――外国形式のお墓があった。

 それを見た子どもたちは、何と無く手を合わせ、目を瞑った。

 もう1人の男性――勇斗もまた、子どもたちと同じように手を合わせる。

 それから、少しして無言のまま、丘を降りていく。

 一筋の風が、『笑顔』を求めるように吹き抜けた。

 あとは、翠屋の前に来るまで静かだったが、視界に入るや否や、子どもたちが走り出す。

 

「――って、待て!?」

 

 大慌てで追いかける、時覇、勇斗、リインフォースⅡ。

 しかし、一足先に子どもたちが扉を開ける。

 扉は、カランカランと音を奏でつつ、何者も拒まずに受け入れる。

 

「いらっしゃいまぁ――」

 

 出迎えてくれたのは、まったく事情を知らない高町の母――桃子である。

 手には、作り終えたばかりにケーキがあった。どうやら、追加の品物だと思われる。

 で、案の定固まっている桃子。

 そのせいか、手に持っているケーキたちが徐々に傾きつつある。

 顔を出すように店の中を見る勇斗は、その様子を見て、素早く瞬速を発動。

 傾きつつあるケーキを、反対側から抑える。

 その感触に気がついた桃子は、同時に凍結が解除される。

 

「あ、あの~、勇斗くん?」

 

 来るべき嵐の前に、まずやらねば成らないことを進言する。

 

「まず……このケーキを起きませんか?」

「 ? ……あ! ごめんなさいね」

 

 笑顔を浮かべつつ、ケーキを空のケースと取り替える。

 そして、そのケースをバイトの娘に渡して、瞬速の如く勇斗の肩を掴む。

 

「――――!?」

 

 少し食い込んで痛いが、我慢する。

 

「この幼いなのはに似た子は?」

 

 もの凄いエガオで聞く桃子。

 さすがは魔王と呼ばれた娘の母親と言うべきか、この時は邪神に見えた。

 さすがは親子と言うべきだろう。

 全身冷や汗を掻きながらも、叱るべき人間が説明すべきなのだが――

 

「お昼は、ここで食べるから、好きなのを頼め。ただし、デザートは最後だぞ?」

『はぁ~い!』

「はいです!」

 

 何仕切っているのですか、隊長。俺を見捨てるのですか。

 と、目線で訴える。

 それに気がついたのか、隊長兼保母さん役の時覇がこちらに顔を向ける。

 あとは宜しく。

 と、めちゃくちゃ素敵な笑顔を浮かべつつ、親指を立てる。

 それに怒りを覚えるものの、それ以上の瘴気が打ち消し、代わりに恐怖を植えつけてくれる。

 ハッキリ言って、ありがた迷惑である。

 っーか、今日は無事に帰れるのかと、内心冷や汗である。

 とにかく何か言わないと、こちらが恐怖に耐えかねて発狂しかねない。

 

「えぇ~とですね、桃子様。詳しい事情は――」

「勇斗が説明します」

「はい、私が説明を――って、隊長!? この場合、貴方が説明するべきでは!?」

 

 しかし、もうこちらに顔をくける事無く、子どもたちと談笑する。

 完全に退路は無くなり、強制的に前進させられる。

 いわゆる、戦闘機、もしくは回天と呼ばれた魚雷に乗せられ、特攻をやらされる気分であった。

 で、現実逃避したいなぁ~、と考えつつも、門前は大魔神。後門は前進へ押し返す壁。

 …………完全に逃げ場無し。

 仕方なく、大魔神様にビクつきつつも、こうなった経由を説明するのであった。

 

 

 

 

 

「みんなぁ~、しっかり食べるのよ♪」

 

 機嫌良く言う桃子。

 

『はぁ~い!』

 

 と、声を合わせて返事を返す子どもたち。

 ちなみに、桃子の後方にあるカウンターの後ろには、屍が1つ。

 圧力に耐えかね、その場に転がっている。

 時覇は、屍と化した存在に手を合わせる。

 しかも、苦笑した状態で。ホンマ、鬼である。

 それはともかく、桃子は大判振るいを行い、子どもとなったなのはたちは、笑顔で食べる。

 それを見て内心で、今度ナンバーズたちを連れてくるか。と、思う時覇。

 この時点で、勇斗のことはすでに忘れている。

 悲しきサガと言う訳でなく、何と無く忘れていく。

 

「にしても、再び小さい頃のなのはを見ることができるなんて……桃子さん、感激」

 

 もう写真でしか見ることのできなかった、子どもなのはを生で再び見ることができる。親として、これ以上の感動はそうそう無い。

 

「所で、バイトの子は?」

 

 ふと時覇は、先ほどまでいたバイトの子たちがいない事に気がつく。

 

「あ、あの子は午後から用事があるから、早めに上がらせたのよ」

 

 期待の眼差しを向けながら、笑顔で答える。

 

「使うのでしたら……屍、もとい、勇斗を使ってください。俺は、この子達の面倒を見ないと拙いので」

 

 と、隣に座っていたカリムの頭を撫でる。

 カリムは食べるのを止めて、撫でられるままになる。

 これはこれで、別の引き金になるとは予想できなかった――が、別の話である。

 

「出来たら、もう1人欲しいのだけど……ねぇ?」

 

 桃子の目は、完全に時覇をロックオンしている。

 だが、ストックはまだある。

 彰浩というストックが。

 

「彰浩は、どうでしょう?」

「うん~……そうね」

 

 少々残念そうに言うが、何とか免れた。

 接客業は出来ない訳ではないのだが、食品関係は始めてである。

 管理局入局前は、ガソリンスタンド。

 入局後は色々あったが、公開イベントで案内係をやったことがある。

 まぁ、この2つだけだが、実績と言える。

 しかし、彰浩もガソリンスタンドでバイトしていたが、店長から『接客業は向いていない』と、御墨付きを貰っている。

 よって、命令でも嫌がるだろう。それ以前に、当分こちらには来ないだろう――いわゆる、無断欠勤である。

 だが、今目の前には、彰浩にとって女神に等しき存在がいる。

 ……時覇と勇斗には、魔神クラスの存在ではあるが。

 

「ただ……接客業が嫌いな人間で、俺が言っても来ないので、変わりに連絡を入れてもらえませんか、桃子さん」

 

 別の平行世界にいる――ただいま専門学校へ通っている――民間協力者にして、Wユニゾンという荒業を使うことができる男、彰浩。

 この時期は――CGクリエイター検定がある時期だと言っていたが、そんなものは知らない。

 こちらは緊急事態なので、彼には生け贄になってもらう。

 などと思っていると、カランカランと音がなる。

 店に誰かは言ってきた証拠なので、桃子が顔を出す。

 いつの間にか復活し、エプロンを装備していた勇斗が声を掛ける前に、相手から声が掛かってきた。

 

「勇兄~」

 

 と、言いながら、金髪で左右違う色の瞳の女の子が、レジに駆け寄ってくる。

 

「ああ、ヴィヴィオ。元気だったか?」

「うん♪」

 

 ふむ、さすがは幼女ハートゲッターというべきか――と、思った矢先、顔面めがけてお盆が飛んできた。

 とっさに顔を横に反らしてかわし、少し通り過ぎた瞬間にそれを桃子がキャッチ。

 手馴れていると言えば、手馴れている。

 

「どうした、ロリペドロフィン」

「喧嘩なら買うぞ、貴様」

 

 怒りの篭った言葉を投げつつ、戦闘体制の構えを取る。

 瞬速がもっとも負担が掛からない体制である。この脚の術は、初動が肝心である。

 まぁまぁ。と、桃子が間に入って静止させる。

 ヴィヴィオも、ケンカはめぇ~。と、言って来た。

 で、そのままヴィヴィオの指示で、時覇と勇斗は中央に正座して、お叱りを受ける。

 この辺は、血は繋がっていないのだが、なのはの娘だと感じる。

 2人は微笑ましく思いつつ、恐縮しきった態度を見せておく。ある意味、汚い大人の部分であるかは微妙。

 桃子も微笑みつつ、彰浩の家に電話を掛ける。

 彰浩は携帯電話を所有しているが、電源を切っていたりする事が多いので、直接家に掛けた方が確実なのである。

 誰も無くても履歴が残るので、すぐに掛け直してくるだろう。

 受話器から、恒例の音といえるプルルルルゥ……が、聞こえてくる。

 そのプルルルルルゥ……が、5回目に差し掛かった時、ラインが繋がった。

 

≪はい、もしもし≫

 

 受話器から彰浩の声が出てくる。

 

「あ、彰浩君、桃子です」

 

 顔が見えないのだが、何と無く軽い会釈を行う桃子。

 

≪あ、桃子さん、お久しぶりです。今日はどうしたのですか?≫

「ええ、実は――の前に、学校はどうしたの? 今の時間だと、もうすぐ授業が始まるはずだけど?」

 

 前に学校の時間や何やらを色々聞いたことがあり、それを照らし合わせると、彰浩が家にいるのはおかしい時間帯である。

 学校をサボる事はしないのは、桃子もわかっている。が、かといって、体調が悪いわけではなさそうな声。

 だが、その疑問はすぐに消える。

 

≪ええ、今日は2時限目で終了でしたから――で、実は何ですか?≫

「ああ、なるほど……で、実は――」

 

 それから、今までの事を簡潔に説明し、現状を伝える。

 一部、捏造と隠蔽があったが相愛ということで。

 

「――と、言う訳だから、少しだけ、ね? 桃子さんからのお願い」

≪うぅ~ん……半日だけでしたら≫

 

 彰浩は渋りながら答える。

 検定は今週の日曜日……2日後である。 つまり、一応勉強はしなければならないのである。

 

「ありがとう、彰浩くん♪」

 

 桃子は時覇と勇斗にOKサインを出す。

 しかし、時覇と勇斗は別の事を思い浮かべる。

 

(バイト、大丈夫か?)

 

 時覇と同じ、ガソリンスタンドでバイト中。すでに、1年以上やっているベテラン扱われる。

 が、未だに臨機応変で出来ない為、中途半端な新人に近い状態である。

 

「じゃあ、また後で掛け直すわね」

 

 そこで、桃子から受話器を置いた。

 

 

 

 

 

「お~い、一旦席に着け」

 

 教室で雑学の授業が終わったら、担任が担当教師と入れ替わる形で入ってきた。

 自分も含む生徒たちは、がやがやしながら座りなおす。

 全員が座るのを確認し、しぁゃべるの止めろと言う。

 しかし、完全に消えることは無く、ある程度収まった所で話を切り出した。

 

「今日は、これで授業は終了です」

 

 その次の瞬間、歓声が上がる。

 まぁ、学校の風物詩的な現象の1つである。

 

「静かにしろ。次の授業の担当者が、急遽来られなくなったので、これで終了と――」

 

 と、説明をする。

 少し聞き流しつつ、ノートに小説のキャラクターの説明を書く。

 

「――ってなぁ訳で、号令」

 

 その言葉に、全員が立ち上がる。当然、自分も。

 

「礼、さようなら」

 

 以上。あとは、各自でお辞儀。

 

「さようなら」

 

 声を出すのは、俺くらいかも。

 そんな事を思いつつ、各自さっさと教室を出て行く。

 彰浩も、カバンに物を詰めて教室を出る。

 そして、エレベーターを通り過ぎる際、いつも思うがある。

 降りごときで、エレベーターを使うのはどうかと思った。

 上りや10階以上下るなら判るが、最大5階までの高さしかないこの建物。

 足腰が弱くなる原因じゃないかと、余計なお世話的な事を思う。

 

(近くのエロゲー屋へ、レッゴー?)

 

 ニヤニヤと笑顔を浮かべるアギト。

 しかし、この顎――もとい、妖精と一緒に学校へ来た時点で、その目論見はカンパされている。

 なので、

 

(違うわ。飯食いに、一旦帰る)

 

 その言葉に、お腹の音が聞こえてきた。

 彰浩は、まだ平気である。つまり――発生源は、1つしかない。

 が、苦笑しつつ何も言わないでおく。

 あまりからかうと、前みたいに頭から炎が噴出しかねない。

 前というと、リインフォースⅡとアギトと出会い、共に行動していたある昼下がりの事。

 アギトがお腹の音を豪快に鳴らし、それを笑いながらからかった彰浩。

 それに、追い討ちを掛けるようにリインフォースⅡも、口元を押さえ肩を揺らしながら堪えている。

 2人のダブル攻撃に我慢の限界を超え――他の人がいるにも関わらず、髪の毛が燃えた。

 いきなりの発火現象に驚く周りの人たち。

 慌ててリインフォースⅡが消してくれたが、警察やら何やらが来てしまい、仕方なく事情聴取。

 しかし、本当のことも言えず、いきなり発火したと証言する。

 警察から所持品をすべて出すように指示され、全部出す。この時、2人の妖精はすでに撤退済み。遠目でこちらの様子を伺っていたらしい。

 結局、発火する道具なども無く、隠しているのではないかと踏んだ警察から、ボディーチェックを受ける。

 結果――原因不明ということで、病院で検査と治療を受ける。

 病院に来るまでの間、いつの間にか戻ってきていた2人の妖精が、バレない程度に回復魔法を掛けてくれた。

 おかげで、病院での検査結果も、髪の毛が軽く焦げた程度で終わった。

 だが、これが検査・治療後に受けた後では、回復魔法で治す訳には行かなくなる。

 それからは、生まれ育った世界では、絶対にアギトをからかわないと心に決めている。

 騒ぎになれば、確実に警察の御用となる。

 逃げるにも、見つかれば後々面倒な事態に発展する。

 それが現実である。

 

(今日の昼は……弁当だな、俺は)

 

 と、何と無く切り出す彰浩。

 

(弁当って――ああ、カバンの中の奴ね)

 

 今日は、4時限――1時限、1時間30分で、午前と午後に2時限ずつとなっている――だたので、教室で食べずに学校を後にしてきた。

 せっかく親が作ってくれた弁当を無駄にするわけにもいかない。無論、するつもりも無いが。

 そのまま駐輪場へ行き、自転車に乗って帰る。

 ちなみに免許は持っていないので、自動車はおろかバイクにすら乗れない。

 バイクに憧れはあるが、乗る気があまり起きない。

 それは子どもの頃、少しあった事と、自転車でも本当に時たまだが危なく車と接触しそうになる。また3度ほど軽くぶつかっている。

 いずれも、自転車のタイヤカバー部分が僅かにずれる程度で済んでいる。

 しかし、世の中の事故の状況も合わせると、いささか乗らないほうが安全と考えている。

 命あっての人生だから。

 

 

 

 

 

 ……ああ、確かに命あっての事。

 相棒である自転車は、今年の11月後半に接触事故で破損。

 修理するより、新品を買ったほうがお金も時間も早くて済む。

 が、それは4ヵ月先の話である。

 皆さんも、事故にはきお気をつけください。ですが、気をつけても相手からぶつかってくる事がありますので。

 最後に、保険屋を通した方が早いです。

 グダグダになるのは必然ですからね……人身事故は別ですが。

 

 

 

 

 

「けぶる空 焼ける大地 息をする たかぶり鎮めて」

(ふたりなら 見ててくれるなら 行けるよ 約束の通りに)

 

 と、自転車を進ませつつ、アニメソングを交互に歌っている。

 ちなみに歌は、maisov.com(http://maisov.oops.jp/)のより抜粋。きちんと許可は頂いております。

 

「いのちと いのちの 重さを 合わせて 信じる魂 在り処を重ねる unison we are the one」

(いのちと いのちの 重さを 合わせて 信じる魂 在り処を重ねる unison we are the one)

 

 そして、声を同時に合わせ、歌い上げる。

 のんびり進めつつ、なるべく声が高くならないように歌い続けた。

 まだ歌は途中なのだが、彰浩がそこで止める。

 そして、何と無く思ったことを口にする。

 

「ふむ……今度、本人に歌ってもらうか」

(えぇ~!? 教えるのかよ、ちょっと嫌だな)

 

 と、彰浩の提案に渋るアギト。

 この歌は、はやて、ヴィータ、シグナム、リインフォースⅡが歌っているモノ。

 それから、歌の続きを歌いながら帰宅。

 自転車を仕舞い、玄関へ向かう。

 

『ただいまぁ~』

 

 声を合わせながら、家に入る2人。

 

「おかえりぃ~」

 

 と、母が返事を返しつつ、出迎える。

 

「どうしたの、こんなに早くて?」

「ああ、今日は2時間で終わった」

 

 玄関を閉め、中に上がる。

 アギトも、自分に掛けていた幻影系の魔法を解除。

 正確には、視覚撹乱系の魔法の1種で、彰浩には向いていないと太鼓判を押された。

 喜んでいいのか、悪いのか――多分、喜んで悪いのだと思う。

 確かに、臨機応変の聞かない人間には、向かない魔法だと思える。

 

「そう、だったらご飯は――」

「アギトだけ頼む。俺には弁当がある」

 

 パンパンと、背負っているカバンを軽く叩く。

 

「あら、アギトちゃんも一緒だったの?」

「ああ」

 

 素っ気無く答える彰浩。

 

「ただいまぁ~」

 

 と、頭の上から降りて、アウトフレームを展開――子どもの姿になった。

 

「おかえりなさい、アギト。何が食べたい?」

「えぇ~と……」

 

 彰浩は、そのままに自分の部屋があるドアへ向かう。

 ドアを開けると同時に、母とアギトのやり取りを微笑ましく見つつ、部屋に入っていった。

 それから、カバンの中から弁当と水筒を取り出して、リビングへ。

 そこにはアギトが嬉しそうに座り、台所では母が奮闘している。

 だが、そこに1人足りないことに気がつく。

 

「あれ、母さん」

 

 台所まで行き、問い掛ける。

 

「なんだい?」

 

 手早く作業しながら、問いに答える。

 

「ヴィヴィオは?」

「あの娘なら、桃子さんの所だよ」

「ああ、なるほど」

 

 それだけ言って、戻ろうとする。

 

「戻るなら、これ持っていって」

 

 と、昨日の残りのおかずを渡される。

 鮭である。

 最近(2007/11月時点)値段が高騰していることで有名な魚。

 中国が買い占めているのが原因であり、日本が1匹200円で買いたくても、中国が250円出してくるのである。

 しかし、中国の250円は月収の4分の1らしいが、それでも買う家庭があるのだから驚きである。

 それが、月収が日本円にして1000円の家庭でも。

 ただ、俺はできたてのが好きなので、冷めたのは普通に格下げとなる。

 コンビニの鮭むすびは別物であるが。

 あれはあれで美味いから。

 ともかく、それを持ってテーブルに戻る。

 

「鮭か?」

「鮭だ」

 

 それだけ言って、テーブルの上に置く。

 

「暖めるか?」

 

 人差し指に炎を出すが、100円ライターぽい。

 が、言えば――俺が丸焦げ、アフロヘアー。

 治すのが大変なので、口には出さないでおく。

 それからは、たわいも無い会話を広げつつ、3人で昼ご飯を食べる。

 食べ終わったあと、アギトと母で後片付け。

 俺は俺で、自分の食器と残ったおかずを運ぶ事。

 そして、全部運んだ後は、布巾でテーブルを拭く。

 片付けが終わり、台所が開くと、彰浩が道具と材料を出し始める。

 3時のおやつを作るためにだが、そこで気がつく。

 ヴィヴィオは桃子へ。ルーテシアは旅行。

 つまり、アギトしかいないので、2人分で自分にも関わらず、癖で5人分もの材料を出していた。

 仕方ないので、明日学校に持っていって、適当な奴に食わせるかと考える。

 

「彰浩、今日のおやつは?」

 

 笑みを浮かべながら、訪ねてくるアギト。

 

「できてからのお楽しみ。だが、アイス系だと言っておく」

 

 つまみ食いしないように牽制しつつ答える。

 アギトはつまみ食いの常習犯なので、それなりに警戒している。

 1度だけ、調理中にイタズラで辛子系を入れたことがあり、罰としてアギトに全部食わせた。

 ただし、情けとして砂糖やクリームをある程度渡し、1週間ほどおやつ抜きがあった。

 以来、つまみ食いへ走ることとなるが、彰浩自身、余り怒らない事にしている。

 アギトに弁上して、ヴィヴィオやリインフォースⅡも来るからである。

 ただ、スバル辺りから年の高い人間には、お怒りを与える事もしばしば。

 手際良く作業を進め――完成。

 その名も『たこやき風シューアイス』である。

 小説を書くために、ネットサーフィンをしている最中に見つけたアイス。

 材料は簡単に揃うので、簡易的に作ってみた。

 まぁ、味のバランスはイマイチ。

 本来は、実際にある店の商品なのでかつ、個人的かつできる範囲内で。

 料理は一応できるが、本当に時たましかやらないので。

 アギトは待ちきれないのか、目をキラキラと輝かせ、口からは僅かに涎が垂れる。

 犬みたいだなと思うが、それはスバルの方が当てはまる。

 仕方なく、さらに2個乗せて、アギトに差し出す。

 いいのか!? と、目で激しく訴える。

 ああ。 と、彰浩は目で返答する。

 それを受け取るや否や、彰浩の手から皿は消え、いつの間にかテーブルにアギトが座っていた。

 ムーブより早いのか? と、思いつつ、作り終えたおやつをラップして、冷蔵庫に入れる。

 そこで受話器から、恒例の音といえるプルルルルゥ……が、聞こえてくる。

 電話はすぐドアの近くにあるので、手を拭きながら行く。

 そしてそのプルルルルルゥ……が、5回目に差し掛かった時、受話器を取る。

 

「はい、もしもし」

 

 受話器から彰浩の声が出てくる。

 

≪あ、彰浩君、桃子です≫

 

 いつもお世話になっている、高町なのはの母にして、どう見ても20代にしか見えない女性。

 ちなみに、娘であるなのはは、19歳になっている。しかも、出会ったときは修行を終えて就職していた。つまり、どう転んでも40歳以上は確定といっても過言ではない。

 が、本人の前で言えば、問答無用で魔王を超えた存在――魔神が光臨する。

 1度だけ、勇斗とザフィーラ、(念のために)ガリューを巻き込んで尋ねた事がある。

 …………あの時は、本気で眼力だけで死ぬかと思った。

 ザフィーラですら、『桃子さんの歳』と聞いた瞬間――音速でその場から逃げ出す。

 ガリューも、全力で逃げ出す始末。

 情けないと思った奴、1歩前に出なさい。生き地獄と言うものについて教えてやる。

 俺と勇斗、ザフィーラとガリューの4人で。

 ともかく、顔が見えないのだが、何と無く軽い会釈を行う彰浩。

 

「あ、桃子さん、お久しぶりです。今日はどうしたのですか?」

≪ええ、実は――の前に、学校はどうしたの? 今の時間だと、もうすぐ授業が始まるはずだけど?≫

「ええ、今日は2時限目で終了でしたから――で、実は何ですか?」

≪ああ、なるほど……で、実は――≫

 

 それから、今までの事を簡潔に説明し、現状を聞く。

 隊長絡みの桃子の電話はロクな事ではないが、桃子からの直接の頼みは断りづらい。

 別に人妻ラブではなく、いつもお世話に成りっ放しなので、この様な機会に恩を返すべきだと思っている。

 

≪――と、言う訳だから、少しだけ、ね? 桃子さんからのお願い≫

「うぅ~ん……半日だけでしたら」

 

 彰浩は渋りながら答えた。

 検定は今週の日曜日……2日後である。 つまり、一応勉強はしなければならないのである。

 

≪ありがとう、彰浩くん♪≫

 

 桃子は感謝の言葉を述べる。

 

≪じゃあ、また後で掛け直すわね≫

 

 彰浩は、心の中で3秒数えてから、音を立てないように受話器を置いた。

 セールス系は終わったあと、問答無用で速攻で切る。

 音を立てて。

 場合によっては、相手が言い終わる前に切る。

 マナー違反だが、時間と電気代の無駄になった報復攻撃。

 本音はウザイから。

 

「誰からだった?」

 

 アギトが、アイスを食べながら尋ねてきた。

 ちなみにアイスは、先ほど作った『たこやき風シューアイス』である。

 

「ん? 桃子さんから。緊急で、少し手伝って欲しいことあるのだと」

 

 肩を竦めながら答えるが、アギトの顔は険しくなった。

 

「いいのか? 2日後は検定試験だったはずだろ?」

 

 そこで最後の1個を食べる。

 

「うん。今度ルールーにも、あげよ」

 

 と、呟く。

 その言葉に、材料を揃えないと思いつつ、苦笑。

「半日だけだと言っていたから、何とかなるだろ」

 気楽に答える彰浩。

 多少諦めている部分のある発言。

 

「バイトもあるのに?」

 

 が、別のことを聞いてみるアギト。

 そこで固まる。

 

「……忘れていた」

 

 その言葉に、ため息をついたアギトであった。

 ちなみにその後、彰浩が受話器を取って、リダイヤルを押していた。

 

 

 

 

 

≪昨日、アメリカのとある遊園地で、女の子が両足を切断する事故が――≫

 

 またか、思う勇斗。

 ここ3カ月間(2007年頃に実際にあった事故)、遊園地と聞けば、そんなことばかりのニュースが流れる。

 始めの発端は、日本の遊園地のジェットコースターの事故だった。

 原因は、シャフトの金属疲労による切断。

 おかげで1人亡くなった。

 それを機に、各日本の遊園地を調査した。

 その結果、コスト削減による定期点検を行っていたことが原因だと判明。

 それは、1つだけの遊園地ではなく、各地の遊園地で発覚した。

 おかげで、遊園地は候補から外さなくてはならなくなった。

 子どもたちが、1番興味を引く場所の1つなのに。

 

「……これだと、遊園地は駄目だな」

 

 ポツリと呟く時覇。

 えぇ~。と、子どもたちから不満の声が上がる。

 

「えぇ~、じゃないの。もし、お前たちがケガをしたら、お父さんとお母さんがどんな顔をすると思っているのだ?」

 

 その言葉に、黙ってしまった子どもたち。

 それを見て、うぐぅの声を上げてしまう。

 桃子も何か名案が無いか考え、勇斗もどうするべきか悩む。

 が、勇斗が思い出したように言った。

 

「桃子さん」

「何、勇斗君?」

 

 おでこに当てていた拳を離して、こちらを振り向く。

 

「今日は、7月6日ですよね」

「ええ、そうだけど――って、ああ、なるほどね!」

 

 勇斗の言葉に、桃子は笑みを浮かべ、両手をポンと前に合わせる。

 子どもたちは、頭の上にクェッションマークを浮かべ、時覇は、なるほど。と呟く。

 

「いいですよね?」

 

 桃子に出るための確認を取る勇斗。

 

「ええ、笹の準備をお願いするわね」

「了解――隊長!」

 

 エプロンを外しながら、隊長である時覇に尋ねる。

 が、答えはすでに決まっていた。

 

「駄目」

「じゃぁ、行ってきます!?」

 

 ドン!! と、いう大きな打撃音と、ベルがカランカランと奏でる音が鳴り響く。

 その音の元に、勇斗が顔面から扉に顔が突き刺さった様な状態で、体勢を保っている。

 それから数秒後、ゆっくりと徐々にずり落ち、床に塞ぎ込む状態に入る。

 が、ガバッ!! と、いう効果音を出しながら時覇の方を、勢い良く向く。

 

「冗談だ。さっさと行って来い」

 

 勇斗は、やられた。と呟きつつ、鼻を押さえながら翠屋を出る。

 

「もう、時覇君。そんなことばっかりやっていると……桃子さん、怒っちゃうぞ?」

 

 満面の笑みを浮かべながら、優しく言う桃子。

 しかし、その笑顔が何と無く怖く見えてしまうのは気のせいだと、内心で言い聞かせる。

 だが、額から出た冷や汗が隠すことはできず、そのまま服に落ちる。

 

「あれ、暑いのですか?」

 

 と、リインフォースⅡが、いらない気遣いをする。

 だが、無下にする事はできず、適当にあしらう事に。

 

「まぁ、そうだな……けど、これ以上冷房を効かすと、お前やこいつらが風邪をひいてしまう可能性がある」

 

 現在の状況を逆手に取った言葉であるが、案外通るモノでもある。

 暑いからといって、ガンガン冷房を効かすと、お腹を壊す場合もある。

 それに今の状況とは関係無いが、クーラーを浴びすぎると、体の機能の一つである『汗をかく』という部分に支障が出る。

 中学生の時に聞いた話で、部活の最中に熱で女子が倒れたそうである。

 その女子は、常に汗をかく事無く、涼しい顔で動いていたという。しかも、運動中に加え、夏の時期である。

 つまり、汗をかく事は、排出物である体内の水であると同時に、体温を調節する為の重要な役割を果たしているのである。

 汗臭い、べとべとするなどは、体質の問題もあるが、人間が生活する為の重要な要素の1つである。

 ので、体温調節をクーラー任せにすると、後々大変な事になるのは必然である。

 ちなみに、扇風機に濡れタオルを置いて飛ばされないように固定して起動すれば、クーラーと同じ効果が生まれる。

 これは、昔やっていた深夜アニメの知識で、クーラーの原理を簡単に表したモノだと言っていた。

 ある意味お手軽であるが、乾いたらまた濡らさなければならない。という面倒な過程が生まれるが、体調の事を考えると、こちらを取るべきだと考える。

 話は戻り――子どもたちの体調を心配するフリをする。

 実際に心配だけど。

 

「確かに――って、リインも混ざっていませんか?」

「混ぜちゃいけなかったのか? 毒ガスでも発生するのか?」

「当たり前です! って、私は酸性とアルカリ性の混ぜるな危険の洗剤ですか!?」

 

 頬を膨らませて講義するリインフォースⅡの姿は、一生懸命背伸びをしている子どもそのものだった。

 

「あっははぁ♪」

「あっははぁ♪ ――じゃ、ないですぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

 

 と、叫びながら、彰浩の胸倉を掴んで前後に揺する。

 ぶべろぼらぁ――! と、聞こえるが、無言の万一致でスルー決定。

 それを見て微笑んでいる桃子だったが、袖が引かれているのを感じて、その方向を向く。

 

「あのね、あのね。笹で何するの?」

 

 桃子の裾を引っ張りながら、スバルが目を光らせている。

 他の子供たちも。

 その言葉に、向き合ってしゃがみ、スバルと同じ目線辺りで優しく教える。

 

「それはね、『七夕』って言う日なのよ」

「たなばた?」

 

 首を傾げるスバル。

 ほかの子たちも、首を傾げるが、なのはだけニコニコしていた。

 

「えっとねぇ、七夕って言うのは――」

「大雑把に言えば、織姫様と彦星様が、年に一度だけ会える日さ」

 

 と、横から勇斗が掻っ攫う。

 が、この大馬鹿者は、地雷を踏んだ。

 それも、思いっきり。

 例えるなら、地面の上にそのままで置いてある地雷を、満面の笑みを浮かべながら踏みつける様な光景である。

 

「うぇ、うぇぐ……うぐぅすん」

 

 その瞬間、桃子は勇斗を掴む。

 それも、勇斗が地雷を踏んだと認識する前に。

 むしろ、トーレのライドインパスルや、フェイトの真ソニックフォーム時のスピードを遥かに上回る速度で。

 

「勇斗」

 

 桃子は、満面のエガオで問いかける。

 ちなみにリインフォースⅡは、時覇が回収済み。

 駆け抜けるのが怖かったが、瘴気の中に置き去りにしておくのは、さすがに気が引けた。

 

「大丈夫、リイン」

「あぅ、はやてちゃぁ~ぁん」

 

 涙目を浮かべながら、はやての膝の上で塞ぎ込む、リインフォースⅡ。

 仕方が無いと言えば、仕方が無い事である。

「では――ゆっくり、お話を――」

 

 ジリリリリン!! っと、電話が鳴り出す。

 その瞬間、瘴気が一瞬で消えた。

 

「はぁ~い!」

 

 桃子は、電話に駆け寄る。

 瘴気だけで、ボロ雑巾になった勇斗に駆け寄るリンディ。

 

「だいじょうぶ?」

「あ、はい……ギリギリで」

 

 それだけダメージがあったのか。と、思いたくなるほど弱っていた。

 どうやら、あの瘴気は当てられるだけでダメージがあるらしい。

 フィールド系の魔法か何かかと、純粋な疑問が時覇の中に込み上げてくる。

 が、調査する度胸が無い。

 ……死にたくないから。

 

「あら、彰浩くんじゃない……ええ……分かったわ。都合がいい時にお願いね」

 

 と、それだけ言って、受話器を置く。

 

「彰浩が何だって?」

 

 平常心を保ちつつ、時覇が尋ねる。じゃないと、あの瘴気が復活してはたまらないからである。

 決して、勇斗の為ではなく、身の安全のため。

 

「それが、向こうのバイトの事で。こちらに来るが遅れるって」

 

 残念そうに言う桃子。が、すぐに、瘴気が爆発する。

 咄嗟にフィールド魔法を展開する時覇。

 子ども達全員を覆うことができたが、睨んだとおり、ダメージがある。

 勇斗は言わずとも、フィールド外。

 入れると破られる可能性が、非常に高いからである。

 目線で助けを求めるも、子ども達のために切り捨てる。

 生死が関わることならば、何が何でも助けるが、今回は別の意味での生死なのでスルーする。

 

「そぉ、そう言えば」

 

 そこで、クロノが声を出す。

 

「織姫と彦星って何ですか?」

 

 もっともな疑問が飛んで来る。

 この世界でも、保育園か幼稚園にいる先生からか、親から聞くしかない。

 が、どれも漠然的な事柄しか判らない。

 かぁと言って、子どもたちに教えるには丁度良い。

 

「じゃあ、話すけど。その前に――なのは、泣き止んでくれ」

 

 声を殺してぐずっているなのはを、膝の上に置く。

 これを見ていたカリムやフェイト、リンディたちが『なのはズルイ』と言って、たむろって来た。

 実に微笑ましく、なのはもぐずるのをやめて、笑ってくれた。

 

「それじゃあ、話す――」

「――前に、隊長!」

「昔、昔、ある世界に」

 

 ちなみに、今から話すのは時覇のアレンジヴァージョン。

 その間に、勇斗は桃子に引きずられて行った。

 高町なのは(19)が、『魔王』なら、高町桃子(35~45辺りだと推測)が『魔神』であると。

 

「たぃ――」

 

 そこで言葉が途切れる。

 何か、ドスッ、という音が背後から聞こえてきたが、聞こえなかった事にする。

 人間、長生きしたければ、余計なことに首を突っ込まない事。

 まさにその時である。

 そして、引きずられて行く音。

 遠ざかり、裏手からガタゴト聞こえてくるも、すぐに聞こえなくなる。

 全員完全スルー。

 誰も気に留めない。

 そんなこんなで、時覇の話は進んでいく。

 

「お兄ちゃん、お兄ちゃん」

 

 と、話の途中で、また袖を引っ張られる。

 

「 ? どうしたのだ、ティアナ?」

 

 向くと、そこにティアナが、不思議そうな顔をしていた。

 

「どうして、おりひめ様とひこぼし様は、年に1度しか会えないの?」

 

 その言葉に、時覇は苦笑した。

 今、目の前にいるティアナは5歳くらい。

 本来ならば、知っていても可笑しくはないのだが、彼女はミッドチルダ出身者。知るはずも無い。

 

「これから話すさ、じゃあ、続きを――」

 

 時覇は、再び語り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バカップル?」

 

 話が終わり、ティアナから出たお言葉にして、この場の第一声。

 うん、アレンジし過ぎた。

 ともかく、この後、大至急買出しに行かなくては。

 

「にしても――」

 

 未だに裏方の方から、何か音が聞こえる。

 

「終わるまで、ここで待機だな」

 

 今日も、今日という1日が過ぎていく、ある昼下がりの日。

 太陽はさんさんと輝き――世界を、時間を、人を照らしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三日目――最終話に続く。




あとがき
 大分お待たせしました!
 で、すいませんでした!
 もう、リインⅡメイン話じゃないですね。(汗
 ついでに、サブタイトルの入る場所が無い事に気がついた。
 追加不可です。(汗
 今回も、平行世界の説明文はここから拝借しました。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%A9%E3%83%AC%E3%83%AB%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%89
 ホント、ここのサイトは便利ですよ。
 で、今回出てきたオリキャラ――彰浩は、作者ダークバスターをベースにしたキャラクターです。
 周りの環境、色などを付けてそれなりにカッコ良くした存在です。
 一応言いますが、この物語では妹は事故死していますが、実際は生きていますので勘違いしないようお願いします。
 まぁ、物語を深めるためと、実際の妹を出すと本人に怒られるので。(汗
 縁起でもない話はここまでにして、家族全員寿命までめいっぱい生きていて欲しいものです。
 形あるもの、特に生命を持つ存在に限界があり、必ず死が平等に訪れる。
 で、事故の方は――書いていた時に、実際に起きた事件を書きました。
 予定通り書き終われば、2007年の8月に公開していたのですが、バイトで無理でした。
 ちょうど2件同時に改装工事に入ってしまったので、こちらのバイト先になだれ込んできたのですよ。
 正直、疲れました。
 その後は、ばたんきゅぅ~とバイトの繰り返しでした。
 書く暇ねぇ~。で、テンションダウンで、結果がこれです。
 が、手を抜いたつもりはございませんが、最初の文に書いてあった通り、リインⅡメインじゃなくなっている。
 最後の3日目は、計画性を立てて書きますかね。(汗
 ちなみに、本文にあった遊園地の事故は、2007年に実際に起きた事故です。
 本文の中に、簡単ながら詳細も記載。

 で、複数のキャラが、一場面に一斉に出ると――死ぬわ。書いていて大変ってか、辛くなって来る。
 ある意味拷問に近いかもしれないが、こんな事言っている時点で小説書きの初期の躓きか、末期のどちらかである。
 でも、やって勉強になったので、加減を覚える事にできた。

 そして、さらに気がついた! はやてを忘れていたような気がする!






制作開始:2007/6/25~2008/1/19

打ち込み日:2008/1/19~2008/1/20
公開日:2008/1/20

変更日:2008/10/29

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